それからしばらくは化け物も現れず平和な日々が流れていた。ただ休憩室に行くとTVでは謎の戦士と化け物について特集が組まれ、慶次と長政が熱心にそれを見ている。
「なあなあ真琴、あのヒーローってどんな人だと思う?」
「はっ?」
話題から逃れるように資料を読んでいた真琴は不意の問いかけに眉を浮かせた。
驚きながらも慶次を見れば「テレビ見てなかったのかー」と嘆かれる。
そこで信長に呼ばれた真琴は逃げるような気分で視線を移した。
「時間があるのならモニター室に行かないかい」
「何かあるのか?」
「ドイツで行われたオペの映像が手に入ってね。とても珍しい症例だから一緒に見たいと思うんだけど」
信長の誘うような視線を受けた真琴はすぐに立ち上がっていた。
「見る」
「ふふっ、ふたりきりでモニター室なんて何かが始まりそうだね」
「勉強会か?」
冗談めかした信長の言葉の意図に気づかないまま真琴は休憩室を後にした。
信長と共に廊下を歩きながらそろそろ夏も終わりかと窓の外に目を向ける。
真夏に現れたチューリップハットのあの男はあれ以来現れていない。
それに光秀がカードデッキと呼んだ変身用の物体も三成に渡したままになっている。
地下へ向かう途中、一階へ差し掛かったところで激しい破壊音が飛んできた。
真琴と信長は同時に走りだして修復途中の正面玄関へ向かう。
すると今度は駐車場に現れた化け物が三匹現れ車をなぎ倒していた。
駐車場であるため入院患者はいないが、通院患者や見舞いの為に来院した人々が逃げ惑っている。
真琴はそんな人々を避難させながら携帯電話を取り出した。三成に頼んであのカードデッキを持ってきてもらうにしても、まずは人々の安全を確保する必要がある。
「信長! この人たちと一緒に逃げろ!」
やってきた警備員と共に避難誘導をしながらそばにいる信長にも声をかける。
しかしそんな真琴へ向けられたのは不遜な、けれど余裕を含んだ瞳だった。
「その必要はないよ」
いつもと変わらない態度で告げた信長の手元にカブトムシに似た金属製の物体が飛来する。
「なぜなら僕は選ばれし男だからね」
それを手にした信長は白衣をはためかせてメスホルダーに装着した。
「……変身」
驚きに目を見張る真琴の目の前で信長の身体が銀色の装甲に包まれる。
無骨な装甲に包まれた信長はメスホルダーからメスを取り出すと化け物へ向けて投げつけた。
芋虫のような化け物の一匹にメスが刺さる。
その隙に信長は腹部のカブトムシ型装置に手をかけた。
「キャストオフ」
カブトムシの角の部分を作動させると信長を包んでいた装甲が離脱する。
離脱した装甲は勢いよく前方へ飛んでいき化け物へ激突した。その勢いに化け物が吹っ飛ぶのを眺めながら真琴はため息を漏らす。
信長のベルトがチェンジビートルとしゃべる中で深紅の装甲が露となる。
そして仮面ライダーとなった信長はゆっくりと化け物へ向かって歩きだした。
「僕と真琴のイチャラブフォーリンラブオンリーワンを邪魔するなんて……許されないよ!」