チューリップハットのあの男は、真琴の目の前で「この世界にも仮面ライダーが生まれてしまった」と言っていた。
ならばと真琴は全力で頭を巡らせる。
信長が変身したあれは、チューリップハットの知らない仮面ライダーなのかと。
秋晴れが心地よいある昼下がり、真琴は多忙の中でなんとか信長と光秀と話す時間を作ることができた。
信長が変身して以降、あの事件での負傷者の対応などに追われて忙しい日々が過ぎていた。そのためまだ信長から何も聞けない状態でいたのだ。
信長の腕をつかみ半ば強引に地下の研究室へ連れていくと既に光秀が来ていた。
「お疲れ」
三成と向かい合うように座る光秀の目の前には真琴が拾ったカードデッキなる代物が置かれている。
真琴は信長の腕をつかんだまま光秀をまっすぐに見つめる。
「信長のこと、知ってたのか」
「緋田が変身できることは知ってた。だから徳川からカードデッキを預かっても平気だと踏んでた。もしもの時は緋田たちが戦えば良い話だからな」
光秀の説明を聞きながら真琴は自然と信長に目を向ける。
「なんで変身できるんだ?」
「僕が選ばれたからだよ」
真琴の質問に信長はいつもと変わらない余裕を含んだ態度で返してくる。
しかし真琴にはそんな信長の言い分が欠片も理解できない。
「鳴滝という男は信長が変身できることを知らないのか?」
「ああ、世界を渡り歩く男がいるらしいね。けれど真琴が不安に思うことはないよ。そんな不審者は僕が真琴に近付けさせないからね」
質問の答えになっていないことを告げられた真琴は素直に信長の手を離した。
真面目にやればできる男なのに今は真面目にやるつもりがないらしい。
ならばと真琴は光秀に視線を戻す。
「どうして医大に化け物が現れるんだ?」
「ライダーがいるから、だろうな。連中はライダーさえ倒せば自分らの世界を作れるとか考えてるぽいからな。大ショッカーの支配する世界ってやつ」
光秀は真琴の質問にきちんと答えてくれた。そのためすんなりと納得して、大ショッカーという名前を頭に刻み込む。
「とりあえずこの患者や医大を守ることが最優先だ。俺にも戦わせてくれ」
意を決した真琴はそう言いながら手を差し出した。
すると三成が渋い顔でカードデッキを取り出してくれる。
「調べた結果ですが、真琴は2号ライダーというもののようです。つまり正規のライダーよりも能力に劣るということになります」
「そうなのか」
「ですので気を付けてください。あまり前に出すぎず、時には緋田たちの協力を求めることも考えてください」
石黒の注意を受けながら、真琴はその手にカードデッキを受け取った。