秋晴れの休日、真琴は近所の商店街に来ていた。休みの間に必要なものを買い出ししておこうと考えているためだ。
商店街には様々な店が立ち並ぶがその一角に子供達の集まる店があった。
ガチャガチャと言われるカプセルトイを扱う店で子供達が欲しいおもちゃを求めて小銭を出している。
しかし真琴はその中に見知った人物を見つけて足を向けた。
「慶次、何をしてるんだ?」
子供達のにぎやかな声に包まれながら同僚の名前を呼ぶとしゃがみこんでいた慶次が真琴を見上げる。
「おはよう真琴! ガチャガチャやってるんだよ。これ、メダル流行ってるんだー」
身軽な動きで立ち上がった慶次は嬉しそうに戦利品らしいオモチャのメダルを見せてくれた。
真琴はそれを真顔で眺め何に使うのか問いかける。
すると慶次はゲームだよと近くの子供を指差した。真琴が目を向けるとそばで子供達がメダルを使って何やら対戦ゲームをしているらしい。
「メダルに数字が書いてあるんだけど、これが攻撃や防御のレベルになってるんだ」
慶次は簡単に遊び方やメダルの用途を教えてくれた。慶次の手元には色とりどりのメダルがある。
「たくさん集めたほうがいいのか?」
「色によって属性とかあるからなー」
「へぇ……」
子供の遊びとはいえ単純な遊びではないらしい。そしてメダルをたくさん買うことも強くなる秘訣であるらしい。
しかしそんなところに慶次が混ざっているのはなんだか腑に落ちない。
「慶次も遊ぶのか?」
「まさか! これは今度の小児科でやる催しで使うんだよ」
慶次の趣味かと思ったがそれは違うらしい。そう認識した真琴は素直に感心した。
だが平和な時はひとつの破壊音によって終えられてしまった。
慶次は慌てふためきながらも子供達を避難させて商店街に現れた化け物を前にする。
「真琴逃げよう!」
変身できることを知らない慶次に腕を捕まれて真琴は半ば強引に逃げ出す。
ところがそんな二人の前に秀吉がいた。
「秀吉も逃げるぞ!化け物が出たんだ!」
慶次はなんの落ち度もなく避難誘導をしている。
しかし告げられた秀吉はその誘導に従う姿勢を見せなかった。
「徳川センセ、俺の勇姿を見ても惚れたらあかんよ?」
「はっ?」
いつもと変わらない笑顔と飄々とした態度の秀吉は手にしていた紙袋を慶次に持たせた。
休みということもあり、秀吉の私服には少なからずアクセサリーがついている。
しかしその繊弱な指にはめられた指輪は、異質なほどの大きさと無骨さを持っていた。
「秀吉、その指輪は?」
「ああ、これな」
真琴の問いかけに秀吉はゆったりとした笑顔を見せた。
「徳川センセ、もし絶望しそうになった時は言うてな?」
そう言いながら秀吉の人差し指が真琴の口に触れる。
「俺がセンセの最後の希望になったるからな」
「…………はっ?」
戸惑う真琴に目の前で秀吉は化け物へ向かいながら指輪を腰のベルトにかざる。
シャバドゥビ タッチ ヘンシ~ン
ベルトがしゃべり現れた魔方陣が秀吉の身体を通過する。
「さぁて、ショータイムやで」
そこにいたのは最近何度も見る「仮面ライダー」と呼ばれるものとよく似た戦士だった。
そばで慶次が歓声をあげるが、真琴は呆然と魔法を使う秀吉を眺めることしかできなかった。