降り続く雨の隙間に破壊音と奇声が混ざる。車が燃えて人々が見守る中で二体の化け物はひとりの仮面ライダーによって倒される。
その圧倒的強さと雨に濡れる黄金の装備を周囲の人々は奇異や敬意の目で眺めていた。
やがて戦士は敵がいなくなるとすぐにどこかへ飛び去ってしまう。
しかし見ていた人間の数名は既に携帯で写真を撮りネットに流し始めていた。
寡黙で孤高の戦士が化け物たちを倒し去っていく。それはすぐにセンセーショナルな見出しをつけて新聞に載せられる。
休憩室で資料に目を通していた真琴は駆け込んできた慶次に目を向けた。
「仮面ライダーが街で化け物たちを倒しまくってるって!これ誰だよ!」
羨ましいと叫ぶ慶次を眺めていた真琴だが、自分に関係ないと認識するとすぐに目を背けた。
慶次はそんな真琴の隣に座ると「黄金の戦士なんだってー」と向かい側の幸村と話している。
幸村は気のない素振りで飴をなめながら適当に返事をしていた。
そこに政宗がやってきていつものように幸村へ甘いものばかり食べるなと説教を始める。
そんないつもの光景の中で真琴は横目に慶次が手にしている新聞記事を見た。
黄金の戦士は今週だけで十体の化け物を倒している。月城医大周辺に現れる化け物のほとんどはこの戦士によって倒された。
「これは仮面ライダーブレイドのキングフォームだよ」
新聞の写真を見ながら信長が教えてくれた。真琴はそんな信長に目を移す。
「中身は知ってるのか?かなり強そうだが」
「知らなくもないよ。ああ、そろそろカンファレンスの時間だね」
時計を一目見た信長は資料を手に歩き出す。真琴も続くように立ち上がり休憩室を後にした。
秋も深まり台風がいくつか日本に接近しているらしい。その日は朝から雨が降っていてテレビでは暴風警報が出たことを告げていた。
仕事を終えた真琴は暴風雨の中を帰るのも億劫と資料室へこもることを考えていた。なんなら仮眠室で寝ていても良いだろう。
そう思いながら渡り廊下を歩いていると中庭に山羊に似た化け物を見つけた。
なにもこんな嵐の日に現れなくてもと思いながら真琴は外へ飛び出しカードホルダーを装着する。
変身すると同時に真琴は強い雨の中を走った。そのまま化け物に突っ込むと建物から離すべく押し込んでいく。
だが不意に右脇腹を殴られ、それだけで軽く吹っ飛ばされた。
濡れた芝生に身体を滑らせ樹木に身体を激突させた真琴は咳き込みながら痛む脇腹に手を当てる。
咳き込んだ際に鉄のような味がしたのは吐血のためだろう。医師である真琴は自分の状態をそれなりに把握できていた。
それでも戦わなければと身体を起こす。今夜の当直は政宗で、信長も秀吉もいない。
よろめきながらも立ち上がるその間に、山羊に似た化け物は真琴に狙いを定めたように顔を向け突進してきた。
それでも動けない真琴は仮面の中でとっさに目を閉ざす。
「ロイヤルストレートフラッシュ」
機械じみた声が聞こえると真琴の眼前を轟音が走る。
驚きに目を開かせた真琴は目の前に迫っていた化け物が消えている事に気づく。
そして同時にかなり離れた横合いで爆発音を聞いた。
化け物が爆発したのを横目にしなから真琴はよろよろと歩き出す。
すると不意に延びた手が真琴の腕をつかみ支えてくれた。
「すまない……」
そう告げながら見上げたそこにいたのは金と青の装備に包まれた仮面ライダーだった。
真琴は突然の事に驚きながらも身体に力が入らず視線を落とす。
「仮面ライダー……ブレイド……」
ひそかにこの街で最も多くの化け物を倒してきたという謎の仮面ライダー。
その圧倒的強さは真琴もたった今目の当たりにしたばかりだ。
「……怪我はないか? 真琴」
そんな仮面ライダーからの不意の質問に真琴はつい返事を忘れてしまう。
そしてややあって我に返ると真琴は慌てて相手の手から離れた。だが足がふらつき立っていることもままならない。
「……すまない……大丈夫だ……」
痛む脇腹は雨で濡れているのか血で濡れているのかわからない。しかし見知らぬ相手の前で倒れるわけにはいかなかった。
そう思っていると唐突に目の前の仮面ライダーが光を帯ながら装備を消した。
強い雨に降られる中で見せた相手の真面目な顔を見た瞬間、真琴の中にあった緊張感が一気に崩れた。
装備を消しながら傾く真琴の身体を彼は慌てて抱き止める。
「真琴! 大丈夫かっ!?」
間近によく知っている声を聞きながら真琴の意識は闇の中に落ちていた。