海軍所属のオリ主の話   作:かろんたバンズ

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1話、賞金稼ぎは辛いよ

「姉ちゃん、おれ金稼いでくるよ!」

 

姉ちゃんにそう宣言して祖国を飛び出し海を出て気付けばもう3年。あの頃はこの海を舐めてた。そろそろ俺、死ぬかもしれない。

アネハラグーロ王国の貧民街で育った俺達姉弟はとにかく貧しかった。来る日も来る日もゴミ漁りをし、その日食う飯にありつくのも大変だった俺達姉弟だった。くっ、遠目で見た貴族が羨ましくて仕方がなかった。そんな俺達にもある日転機が訪れた。

それは海賊だった。

 

姉ちゃんの下僕のガバがある日報せてくれたんだ。ガバってのは子供の癖にやたらとでけえ奴のことな。いつも鼻水垂らしてる。

あそこの飲み屋にいる奴らのボスを倒すだけで100万ベリーが貰えるぞって。その人らは街の人に迷惑掛けてて皆に嫌われているんだってさ。でも僕は言ったんだ。普通に考えたらあんなデカイ大人を子供だった俺に倒せるわけないじゃんって。大人みたいにデカイガバなら倒せるかも知れないって? でもお前バカじゃん。 あいつ殴りかかって来た。俺も殴り返して泣かしてやった。ざまあみろ。

 

そしたら話を聞いていた姉ちゃんは俺にこう言ったんだ。あいつらが酔っ払っているところを、この鉄の棒で後ろから思いっ切りぶん殴れば子供の力でも簡単に倒せるよって。なるほどそれなら勝てるかも知れねえ。姉ちゃんは頭が良いな。

 

だから俺とガバは夜の皆が寝静まった頃に酒屋に忍び込んで一人一人叩いて回ったんだ。血が吹き出して倒れていって、次の日の朝には街の人に感謝されてお金がたくさん貰えたんだ。こんな大金初めて見た。

 

そのお金で貧民街の皆でお腹いっぱい食べたし、姉ちゃんはピカピカなネックレスを買ってた。皆が笑顔だった。

俺はまたご飯を沢山食べたかったし姉ちゃんが喜ぶ顔を見たかったから海賊が来たら貧民街の皆で襲ってお金に替えてたんだ。

 

俺達のグループはどんどん人数が増えていった。

でも困ったことにこの国にはそんなに沢山の海賊は来ないんんだ。

グループ全員を食べさせる為のお金とお姉ちゃんが買い物をする為のお金を賄うにはもっと大量の海賊を倒さなければならない。だから俺はグループの仲間数人を連れて海に賞金首狩りに旅立った。

 

姉ちゃん達に送り出された13歲夏の出来事だった。ガバは姉ちゃんから離れたくないって国に残った。

 

「糞ガキ共はこっちか!」

 

そして今の俺は16歲で、仲間は既に1人死んでしまった。いつも通りに海を彷徨い沖に泊まっている海賊船を見つけ宝を奪い賞金首を仕留めようと考えていたが相手が悪すぎた。億なんて流石に聞いてないって。そんな強い奴は偉大なる航路に篭ってろ。

船に忍び込んだ段階でもう気付かれた。見張りの男に見つかり発砲されて仲間が1人死んだ。しかもその音で船長らしき男と船員がぞろぞれ出てきやがった。なんで昼なのに外に出てなく船の中にいるんだよ。手配書を覚えるのが上手い仲間が言うには船長の顔は懸賞金がジャストで1億ベリーの超大物。俺はバレてなかったから後ろから奴の頭をぶん殴った。けど気付かれて避けられた。こんなにつええやつだったら一目散に逃げるのなんて当たり前だね。

皆で全力疾走で駆け出したよ。

 

「出てきやがれ"鉄棒"の糞ガキ共!」

 

鉄棒ってのは俺達のグループの通称。3年もこの海で賞金稼ぎをやってたらいつの間にか名前が付いちゃってた。武器が皆鉄の棒だから鉄棒ね。

今は運良くあった森の中に隠れている。かなり背が高い木があって草も長くて身を隠すには充分。

異常にデカイ巨漢の男が船長だ。腕にはデッカイ砲身を付けててその怪力さが伺える。両腕に付いててすげえ重そうだ。よくそんなの付けてて歩き回れるな。

ひとしきり叫んだ後癇癪を起こしたのかも知れない。わーわー喚いているのを部下達が宥めているのが分かる。

いいぞ、このまま諦めてくれ。

 

「あのガキ共は絶対ここで仕留めるぞ」

 

 

なんだってそんなに必死なんだよ。いつもなら気配を消して隠れたら海賊共は直ぐに諦めてどっかに行くってのに、諦めが悪い奴らはめんどくせー。

 

 

「へい、お頭。ここらの傘下の奴らの被害がもう無視は出来ねえでさあ」

 

「ああそうだ、もう1年以上も前から奴らに好き勝手やられてる。流石に我慢出来ねえ」

 

 

あれ? もしかして最近懸賞金が高めの癖に大したことないなーって奴らってこいつらの仲間だったの? そりゃあこんなに懸賞金がたけえやつの傘下なら危険度は跳ね上がるよな。

 

 

「"火砲"のアトラー様を舐めた奴らに制裁が必要だよなぁ!」

 

「制裁を!」「制裁を!」「制裁を!」

 

 

船長の男が腕の砲身を前に突き出したのが見える!

部下の男達が同時に合唱する。はっきり言って異常な光景だと思う。砲身が光り始めた。

何かをする気だ。

 

……

……

 

やばい!

 

 

「Fire!!!!」

 

その砲身から巨大な爆炎が吹き出した!

それは森全てを巻き込む威力だ。一気に木々に点火した炎は余韻すら残さず全てを焼き尽くしてしまった。それはその男の怒り様を代弁するかのような力強さ。

仲間達の悲鳴が聞こえた気がした。でも実際には聞こえなかったのだろう。喉が熱すぎて声なんて出ないのだから。

 

でも俺は無傷でいる。なんでかは分からないけども、ちょうどあの火砲の射程から外れていたらしい。運が良かった。

でも仲間は多分皆死んじゃっただろう。それはとても悲しいことである筈だけど、悲しさよりも怒りの感情の方がとても強い。そしてなによりも怖い。

 

「これで全員死んだろ」

「そうでしょうなあ」

「一応確認するぞ、奴らの死体を集めて持ってこい」

「集める? なにをでさあ。それはなんで」

「死体をだよ! そんで干して晒して見せしめにするんだ。このアトラー海賊団に楯突く奴の末路って奴を知らしめるんだ」

「なるほど! 流石はお頭です!

おいお前ら! 今すぐ死体を回収しろ!」

 

すると海賊達は焦げだらけになった俺の仲間を集めて行く。ついさっきまで一緒に楽しそうに話していた奴らがこんな姿になるなんて辛すぎることだ。

俺はただ隠れることしか出来ていないのが余計に。

 

「これで全員だな?」

「すいやせんお頭、それは分かりやせん。

それにこの傷じゃあ顔もわからないくらいぐちゃぐちゃでさ」

 

部下の男が殴られている。

 

「大体奴らの数なんて全く数えていねえんでさ、何人いるかなんて分かりやせん」

「くっ、これは俺のミスだな。お前らにそんな気の利いたことが出来るわけがねえか」

「でもお頭、心配いりやせん。この攻撃から逃れられる餓鬼なんて存在なんてする訳がないんでさ」

 

どうやら俺達の人数を把握していなかったようだ。でも俺は把握している。あそこに集められたのは俺を除いての仲間全員だ。

 

絶対に見つからないように息を潜める。俺はここで捕まって死にたくなんてないんだから。汗粒1つでも落とすのが今は恐ろしい。

 

「まあいいだろう、こいつらを晒し首にするぞ」

 

海賊達が大きな声で合図をして去っていく。

奴らの声が遠ざかり姿が見えなくなってもまだ隠れる。

 

 

どれくらい時間が経ったのか分からないけれど漸く安心できた。

でも安心出来ない。

今この瞬間に奴らが戻る可能性があるのだ。

 

「賞金稼ぎはもうおしまいだ……」

 

取り敢えず姉ちゃんのところに帰って、それから考えよう。




次は国に帰ります。
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