海軍所属のオリ主の話   作:かろんたバンズ

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2話、アネハラグーロ王国への帰還

俺は帰ってきた。

西の海に存在する1つの王国、アネハラグーロ王国に。大して大きくもない、むしろどちらかと言えば小さい方の国。

実に3年ぶりの帰還だ。今まで賞金を運ぶのは運び屋の仲間に任せていたからな。

 

「あ、バロジーニ様だ!」

 

あの頃と比べてなんだか活気が増したような人が増えていて物売りがやたらと多い貧民街を練り歩いているとどこかから自分を呼ぶ声が聞こえた。

この声は確か……

 

「ビルカか? おーおー大きくなったな」

 

女の子のビルカだ。自分より2つ下の可愛い妹みたいなやつだ。

 

「バロジーニ様ほどではないよ! 身長どんだけ伸びてるのさ!」

「ん? そうか? 自分じゃそんなに変わった気はしないけどなー」

 

たしかに身長は伸びてるかも知れない。旅立ち前が150cmで現在が190cmだから。でも世の中には3m以上ある人が多すぎてそんなに大きくなった感じはしないかな。

 

そんな下らない会話に華を咲かせていたらグループのメンバーが集まってきた。皆口々にお帰りだの俺は今何してるだの語ってくれた。

なんでも俺達賞金稼ぎ組が贈った仕送りで飯を食べるだけに留まらずそれを元手に会社を作ったらしい。姉ちゃんが主導になって。

 

掃除だとか新聞配達に色々な商売やらを始めたようだ。

 

「他のグループの奴らは? 黙ってないだろ、大人の奴らもいるし」

「ああね、それなんだけどね。もう他のグループなんてないんだよ」

 

ありゃ? ないってどういうことだ。

俺がいた頃なんて少なくとも20はグループがあって悪い大人達が犯罪とかもしていた位なのに。

 

「色々あってね、後でボスに聞いた方がいいよ。それより他の人達はどうしたの?」

 

その質問に正直に答える事は辛いことだ。だから俺は誤魔化すことにした。

 

「先に姉ちゃんに報告してからお前らに話すよ。

姉ちゃんには聞きたいことも出来たしどこにいるんだ?」

「ボスならね、あっちにいるよ」

 

そう言って仲間達が指さしたのは内地の方にあるデッカイお屋敷がたくさんの場所だった。

 

「は!? なんであっちに姉ちゃんが入れるんだよ!」

 

向こうは貴族が住んでいるエリアだ。俺達貧民街の住民には全くもって無縁な場所で、立ち入りも禁止されている筈だ。

 

「ボスはね、お貴族様の妻になったんだよ!」

 

凄いでしょ! というようにドヤ顔をしてくるビルカと貧民の子ら。

正直言ってよく分かんね。どうしたら貧乏人が貴族になれるんだか。

 

「じゃあもしかして俺もう姉ちゃんに会えないの!?」

 

重大なことに気付いてしまってつい叫んでしまった。

 

「ん? なんで会えなくなるの?」

 

「だって貴族の館にいるんだろ? 貧民じゃ入れないだろ!」

 

「どうして? 何言ってるかよく分かんないよ」

 

ビルカだけじゃなく皆が頭にはてなを浮かべている。

いやなんで分からないんだ? お貴族様に会いに行けないのはこの町の常識だし、他の国でもお貴族が住んでいる場所には1度だって入れたことは無かった。

だからこれはこの街だけのルールではなくて世界の決まりなのに。

皆は会えると言っている。

 

だから聞いてみる。

 

「お前らは会いに行けてるのかよ」

 

「うん、当たり前じゃん」

「でもね、ちょっと会いに行くのは面倒くさいんだよ」

「だって身体をシャンプーまで使って綺麗に洗って、」

「香水をつけて、」

「綺麗な服を身に付けて、」

「姿勢もね。でも僕達は喋っちゃいけないんだよ。口を開けていいのはビルカだけなの」

 

会いに行けるのは本当らしい。

変な心配をして損をした。

 

じゃあ今から会いに行ってくると言うと今はダメだと言われた。予約をしなくちゃいけないから明日になるそうだ。

ついでにもっと綺麗な服をこれから買ってこなければいけないそうだ。

 

少女ビルカが案内してくれるそうだ。他の子達は仕事をしなければならないと解散だ。

みんな本当に働いているんだ。

 

「お洋服のお店はこっちー」

 

貧民街にしては少し綺麗な店だ。昔なら無かったし襲撃対象になるような店。

 

「ちょっと待って、お金ないんだけど」

 

「それなら心配しないで」

 

「俺奢られたくないぞ? 年下に」

 

「違う違うそういうのじゃないって、失礼しまーす」

 

店の中には狭い店に所狭しとびっしり服がある。果たしてこんなにあってもこの貧民街で買う人がいるのだろうか。

 

 

「やっほー来たよー、そいでこっちがバロジーニ様」

 

ビルカが紹介するとひどく驚いていた。貴族になった姉ちゃんの弟というのは非常に有名らしい。なんだか感謝されてお代もいらないと言われた。

 

他の店でも似たようなことが続いた。買い物をしてもお代はいらねえとか、ボスの弟君に畏れ多いだとか。特に買い物もしない店だけど、感激されて感謝された。

 

途中で気付いたけどこれはきっと挨拶回りなのだと思う。

明らかに買い物もしない店が多すぎるのだ。

もう数十件は回ったと思う。時間も良い時間だ。

 

「こんなものかな、これで全部回り終えたよね」

「やっぱそうなのか?」

「そうって何がそうなの」

「この挨拶回りのことさ、一体どうしてこんなことに付き合わされてるのか」

「なんでってそりゃあボスの弟の英雄の凱旋だよ?

しないわけないじゃん」

 

英雄だって?

誰がいつ英雄になったってんだ。俺はずっとこの島には居なくて、海賊狩りをし続けていただけだ。それがいつ英雄になる要素があるのか。

 

「だってバロジーニ様のお陰で皆がお腹を空かすことなく居られるようになったし、お仕事だって出来るんだよ?」

「そんな事をした覚えは全くないんだが」

「覚えがないの?」

「ああ」

「ホントのホントに分かんないの?」

「ああ」

「ホントのホントのホントに?」

「だから何度も言わせるなよ!」

 

俺のしたことなんて、仲間を死なせた事くらいなのに。なんでこの女はそんなことも分からずに、俺が何かしたような口を聞いてくるんだ。

 

「バロジーニ様達が賞金稼ぎに出掛けて行ってくれたお陰で私達は今こうして生きて、仕事していられるのに」

 

そんな事を言ってくるけど大したことじゃない。だってただ海賊達を倒したり宝を盗んだりしていただけだから。

 

「ボスに聞いた話では全部で1億ベリーを超えるんでしょう、3年間で。

ビルカ達残った人達じゃ今の仕事をたくさんしてもそんなにお金に出来ないもん」

 

ビルカは俺達が集めたお金がどれだけ凄いことなのか、こんな事が出来るようになったのか。色々なことを話してくる。

そしてひとしきり話したら2人でご飯を食べて解散だ。

 

「バロジーニ様が何に苦しんでいるのかは分からないけど、私達は救われたんだよ」

 

ビルカは俺より全然背が低いのに、俺の頭を撫でると明日の朝に迎えに来ると言って行ってしまった。

 

今いるのは一軒家の大きな家で、汚いけど大きな野ざらしでない安全な家だ。3年前ならこんな家はなかった。

 

寝ようと思うと、つい昨日までいた仲間達のことが頭に浮かんでくる。みんな孤児で親はいない。

俺と同じだった。

何か人の役に立つことなんて全然出来ない、大人達には直ぐに死ねなんてずっと言われていた。

でも皆のおかげで、英雄なんて俺は言われるようになってるみたいなんだ。

 

俺は泣いた。




次はお姉ちゃんの館に行きます。
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