青春も、萌えもんも摩訶不思議すぎて訳が分からない 作:黒虱十航
あれから何時間たっただろうか。電流がびりびりと体中に流れ正直もう、なれてすらいた。何ならもう、違和感すらないぐらいのレベルで感覚すら遮断され始めていた。麻痺、ってこういうことを言うんですね。流石です。異世界の警察さんは、本気で殺しに掛かってくる。どこぞの闇組織。
「おいっ、てめぇさらった萌えもんはどうしやがった」
急に牢獄に走ってやってきたのは先程の警察さんだった。は?なに言ってるんだろうこの人たち。俺がさらった奴は背負って来てたじゃん。正直意味が分からず形式的に話す。
「つい、出来心でやってしまっただけなのでさらった萌えもんには何もしていません。安心してください。もしかしたらトラウマを植えつけてしまったかもしれませんがそれについては償う所存です」
俺がぼぅっとしながら言うものの警察さんは納得しない様子。何だよ、これ以上何をいえばいいって言うんだよ。もう無理だっつうの。ていうか俺殺したらこの世界に神が存在しなくなるからほんとにこいつら困るんじゃないのかね、その点は大丈夫なんですかね。まあ、運び神さんが何とかしてくれるでしょ。
「違うだろ。お前がさらったのはあの萌えもんじゃないだろ?まさか仲間がいるのか?早く吐きやがれ。ふざけてんじゃねえぞ偽善者が。あの謝罪も全部嘘だったんだろう?」
ああ、なるほどな。誘拐犯がさらったのはあの子じゃなかったんだな。うん、知ってたよ。当然だよね。だってこの子ちょっと前まで群れにいたような口ぶりだったし明らかに野生にすんでいる萌えもんだよね。でもなぁ。今更言いづらい。こうなったらあれだ。適当にどこに隠したとか言っておこうかな。
「そうだなぁ。近くに森があるだろ。あそこに隠した。はっはっは。まじで受けたよ。俺の嘘の謝罪に驚くほどに認めやがってそれで心配してる素振りまで見せてよぅ。急に優しく哀れんでるようになったときは笑いを隠すのが大変だったぜ。いや、面白かった面白かった。いい顔を見せてもらったぜ」
「テメェ・・・!!!!」
俺がいっその事悪役に徹してやろうかと暴言をはくと電流が無茶苦茶流れているらしいが正直全然効かないぜ。何せさっきので慣れたからな。はっはっは。全く慣れって怖い。
「ほら、さっさといかないと死んじまうかも知れないぜ。今頃、もう死んでるかもなぁ・・・。全く警察だとか言ってるくせに全然役立たずの警察だなぁ」
「っち・・狂いやがったか。行くぞ」
俺の相手をすることすら放棄しその警察官は走って行った。おそらく俺が言った嘘に踊らされて森にでも行ったんだろうな。だが、それは無駄だぜ。誘拐された萌えもんと被害者にはかわいそうだと思うけど俺は完全にこの事件の部外者。俺に問いただしても意味無いぜ。全くああ、疲れた。何か慣れてきたせいでこのままでも全然動けるようになったし暇つぶしに何かやってようかね。宇う
しばらくしてまたしてもそいつらはやってきた。警察。だが俺を捕まえた女性警官だ。それと家族らしき3人。母父子の3人というのをみるにおそらくこいつらが被害者。何か悪いな、と思うがしょうがない。さあ、さっさと裁いて心だけでも解放してやれよ。
「おい、この方達が被害者だ。何か謝罪の弁は無いのか」
「特に無い。さっさと裁け。好きなようにな。萌えもんは見つかったのか?」
少し気になったので聞いてみると女性警官はうなずきながら話した。
「見つかった。だが今、重傷を負って病院だ。命に別状は無いといえお前の罪は重いぞ」
「ねえねえお姉さん。ゆーかいした人誰?」
「誘拐したのは、ここにいる男の人だよ」
まだ、幼い子供が女性警官に訪ねるのを見ながら驚く。正直、びびった。まあ、森は広いし隠すとしたらそこしかないからいてもおかしくないんだけどホントに見つかるとは。
「おかーさん、おとーさん。お姉さん。この中には一人お兄さんがいるだけだよ?ゆーかいした人逃げたの?」
「ゆうちゃん、違うよ。ここのお兄さんが誘拐した人だよ」
「ここにいるお兄さんは一人だけだよ?もしかしておかーさんには別の人も見えるの?」
訳の分からん会話に見えるが俺には理解出来た。この幼子、俺が誘拐犯じゃないと見抜いてやがる。俺の腐ったオーラ、目をみて尚俺がそうでは無いといえるという事は実際誘拐現場にいてなおかつ素直な場合だ。素直だって心が過ごしでも汚れていれば俺が犯人だと思ってしまうはずだ。
「えーっとお譲ちゃんはそんなにショックだったんだね。貴様、貴様は萌えもんだけじゃなくこの子にまでトラウマを植えつけたんだぞ。お前の罪はおも」
「お姉ちゃん。そこにいるお兄ちゃんは悪いことしてないよ。優しいお兄ちゃんってだけだよ。責めないであげてよ。私知ってるもん。キュウちゃんは、悪そうなお姉さんにさらわれちゃったんだよ?このお兄さんはすごく優しそうだしお兄ちゃんがかわいそうだよ」
どこまでもこの少女は、純粋だな。俺を責めようとする女性警官を少女が制止する。女性警官も彼女の両親もおそらくだが、この子があまりにも辛い過去だったんで記憶から葬ってしまっているんだと思っているのだろう。だがな。俺がみる限りこの子はそんなに弱くない。あくまで真実をみている。泣きたい時は泣いて笑い時は笑って。優しい人には優しくしてきっと優しくない人も優しくするだろう。俺だって心が洗われるレベルだ。
「貴様にはそれ相の罰が待っている。この子を傷つけた分と萌えもんをさらった分。死ぬより辛いと思え」
女性警官はそういってから被害者家族を送っていった。あの少女は、おそらくゆうちゃんは両親に哀れまれる形で
去っていった。何か、あの子には申し訳ないことをしたな。それにしても女性誘拐犯、か。それが本当ならそいつを捕まえてやりたかったな。まあ、いっか。そんなことを思いながら寝ることにした。
翌日。またしても来客がいた。昨日来たゆうちゃんとかいう少女。どうやら一人で来たようだ。まあ,牢獄自体には来るのは難しいけど一度きてしまえば何度も来るのは簡単なのだろう。それでも親御さんは気が気でないだろうけど。ホント親御さんすみません。
「ねえねえ、お兄ちゃん。何でお兄ちゃん棒の中に入ってるの?」
「それはね、悪いことをしたからだよ。ここは危ない人が来る場所だからもう来ちゃだめだぞ。危ないし」
純粋な目を向けてくる少女に俺はそういって後ろに下がった。もう、少女が声をかけられないように。
「悪いことって何?きのーのお姉ちゃんはゆーかいしたって言ってたけど誰の萌えもんをゆーかいしたの?お兄ちゃんは、ゆーかいするような悪い人じゃないでしょ?」
「そうか?目もオーラも腐ってるだろ。それにこんなところに普通に馴染んでるだろうしな。優しくしてるように見えて何か企んでるかもしれないだろ?」
見た目で判断、というのは間違ってはいない。チャラくてうざい奴はぱっと見てもうざいし真面目そうなやつはオーラが真面目だ。いくらお茶らけて隠していても俺にはわかる。ぼっちには陰湿なオーラが出てるし。
「お兄ちゃん、何で嘘ついてるの?森にいるだなんて誰が考えても分かることだし私だって思ってはいたもん。けーさつのひとも疑ってたけど自白してるしって話してたよ。」
「ぐっ・・・・」
「何で、『嘘ついてるの?』」
不意に言われた言葉に俺は何も言えなかった。