ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

1 / 140
始めまして、木の人と言います。
何度目かになる新作投稿……気長に頑張ります。


プロローグ

 どうしてこうなった。

 

 今日は必ず訪れる休日、毎日酒を飲み続けている合法ロリは外出、引きこもりは布団の中に引きこもり、唯一の常識人は学園で仕事……つまり俺が一人でいられる絶好の機会だったはずだ。何をするというわけではないが酒臭い合法ロリからのセクハラもない素晴らしい日だったはずなのに……なんで、なんで――

 

 

「あははははは! 楽しいよぉ! もっともっと! もぉ~っと楽しませてぇ!!」

 

 

 ――なんでコイツと殺し合いをしてるんだろうな。

 

 

『いつもの事だろう?』

 

「うるせぇぞ……全く、相変わらずの出鱈目さだなおい。影人形(シャドール)でさえ弾ききれないぞ」

 

『ゼハハハハ! 流石はユニアの宿主だ! どうする宿主様? 降参するか?』

 

「冗談。アイツに負けたら目的が果たせねぇ」

 

 

 身に纏っている鎧の破損個所を修復するのと同時に背後に影人形を作り出す。黒い粘土が人の形をしているそれは顔を半分に引き裂くように一つしか無い眼を開いて真上を見据える。俺もその視線の先を見据えると先ほどから高笑いのような何かをしている光り輝く物体……いや鎧を着た女がいる。

 

 目を瞑りたくなるような光るマントを背に堂々と地面に立つ俺を見下ろしているのは俺の反存在――片霧夜空(かたぎりよぞら)

 

 

「おっ! 立ち直ったねぇ!! いいよいいよぉ! さぁノワール!! もっと熱いのを私の奥底にドスンと叩き込んでみなよ!」

 

「お前、自分の性別を少しだけ考えろ」

 

「嫌だなぁ~私が普通の女の子だってノワールも知ってるで、しょ!!」

 

 

 真上で浮遊していた夜空の姿が消え、数秒も経たずに背後から威圧感を感じる。影人形の拳で襲い掛かってくるであろう蹴りを止めるとその場から轟音が鳴り響く。

 

 目の前のこいつ(夜空)は普通の人間だ。人間という括りのはずなのに中身はそれを覆す……ただの人間が拳と蹴り一つでビルを叩き割れるか? 普通ならできない。それを呼吸するようにやってのけるのがこいつだ。今日も俺の部屋に無断で転移してきては暇だから殺し合おうよと笑顔で言ってきやがった。禁手化状態だから分かりづらいがコイツも合法ロリに近いんだよな……18で身長150前後は拙いと思うぞ? いやそんなことは置いておいてだ――距離を取らねぇと!!

 

 

「そ~れそれそれぇ!!」

 

「ちぃ……シャドォールゥ!!!!」

 

『ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!』

 

 

 一度距離を取って体勢を立て直すと夜空が笑いながら腕を振るう。たったそれだけで光の球体が弾丸のように、そして雨のように俺に降り注ぐ。この光に一度でも触れてしまえば俺の身体は煙を上げて消滅してしまうだろう……何故ならこいつが操る光は俺の天敵だ。なんせ俺は悪魔と人間の血を引いてるからな……そのおかげで相棒と出会えたんだが今は置いておこう。てか俺が大嫌いな天使と堕天使、そいつ等が扱う光と同性質を操れる夜空の神滅具(ロンギヌス)は頭がおかしい。

 

 だからこそ影人形の拳で全てを叩き落とす。光で吹き飛んでいく箇所も俺の、いや俺と相棒の能力で瞬時に修復が可能だからこその芸当……と言っても雨を全部叩き落せるかと言われたら無理と答えれる。

 

 

「相棒」

 

『ゼハハハハ! 突き進め宿主様!! ユニアの野郎に一撃を喰らわせてやれぇ!!』

 

「上等!!」

 

『夜空。クロムが何かをするつもりですよ』

 

「知ってる! だから真正面から迎え討つ! これぞ王道!!」

 

 

 俺が纏う鎧、それの手の甲に埋め込まれている宝玉から聞こえる相棒の声を聞き今一度覚悟を決める。一度息を吸い、それを吐く。そして強く地面を蹴って背後から魔力を放出し宙に浮かんでいる夜空の元へ真正面から向かう。それは夜空も同じだったようで光を集め、一瞬でビル三階分ぐらいのデカい光球を作り出して放り投げてきやがった――触れれば消滅、だがそれは俺とクロムなら防ぎきれる!!

 

 影人形を前面に出し拳を握らせ前面まで迫ってきた光球を殴らせる。一発、二発、三発、海を割るかのように影人形の拳で光球を防ぎ割りながら夜空の元へと向かう――そしてそれは数秒後に訪れた。突き抜けたのと同時にこぶしを握り締め、影人形ごと殴ると腕に凄まじい衝撃が走った……足だ。夜空の足、黄色い全身鎧に包まれた足が俺の拳の先にあった。

 

 

「タイミングばっちしぃ!!」

 

「うるせぇ! お前の蹴り受け止めるだけで周囲の地面が吹き飛ぶんだよ! 俺の領地を壊す気か!? 」

 

「いいじゃ~ん。此処冥界だしさ」

 

「理由になってねぇ!」

 

 

 夜空の足を掴んで一気に引っ張り俺に近づける。そして空いている拳で胴体を殴ろうと思い振りかぶるとこいつは一瞬で体勢を立て直してある技を繰り出した。

 

 

「ひっさぁ~つ! 貧乳回避!!」

 

 

 俺の拳は夜空の胸の前を通過してカウンターの蹴りを背中に喰らって地面に叩き落された。あれこそ夜空が最も得意とし、既に数百と殺し合いをし続けている中で必ず発動される技……貧乳回避。胸がない、絶壁と言えるほどの夜空の小柄な体だからこそできる回避方法なんだがこれを使われると一つだけ厄介な事になる。

 

 

「よぉ~し回避完了! さてノワール……誰の胸が貧乳だってぇぇぇ!!!!!」

 

「……酷い言いがかりを見た。これで何度目だよ」

 

『自分で言ったセリフを相手が言ったと脳内変換し八つ当たりをする。流石ユニアの宿主だ』

 

 

 背中の痛みを我慢しながら立ち上がると予想通り、夜空がブチ切れていた。自分の胸が壁なのを人一倍気にしているらしく壁、絶壁、無乳という単語が聞こえたならばとりあえず制裁と心に決めているらしい。そのセリフは自分が言っても同じのようで今のように酷い言いがかりと八つ当たりを喰らう羽目になる……牛乳飲めよ。

 

 

「もう怒ったぞぉ! 喰らえひっさぁ~つ!! ろりーたきぃ~っく!!」

 

「いい加減、いい加減さっさと沈んで帰りやがれぇぇ!!!!」

 

 

 轟音を鳴り響かせながら俺を夜空は殺し合いを続ける。

 

 理由なんてないし俺達が殺し合うのにそんなものは必要ない……ただ挨拶をするように全力でぶつかるだけ。既に数百と殺し合ったせいでこの場所の地形が大変な事になってはいるがそこはきっとキマリス領の観光地として宣伝できるだろう。

 

 だから今日も俺――ノワール・キマリスと片霧夜空は殺し合う。




観覧ありがとうございました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。