ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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99話

「というわけで体験入学的なものをやるから参加しろよ」

 

「いきなり何言ってんの?」

 

 

 ホカホカの肉まんに嚙り付きながら何言ってんだコイツという視線を浴びせてくるのは規格外、最強の光龍妃、ノワール・キマリスの嫁と数々の異名を持っている片霧夜空。既に十二月に入っているというのに白いシャツに黒いミニスカ、そして素晴らしい絶対領域を生み出しているニーソックスという何処からどう見ても真冬の恰好じゃないですありがとうございました! いつも通り太ももが素晴らしいですね! そもそも自由奔放なコイツが季節なんて単語を知ってるわけないから恰好が時季外れでも全然おかしくは無い……常日頃から光り輝くマント(光龍妃の外套)を展開してる時点でお察しだ。まぁ、今回は珍しくマフラーを付けてるがどこで買いやがった? 似合ってるじゃねぇかよ最高だよ可愛いなおい!

 

 何故俺が夜空と一緒に居るかというと……放課後デートです。放課後デートです! 何度も言おう放課後デートだ!! メンドクサイ期末テストも終わって犬月や橘、平家にレイチェルと一緒に家に帰ろうとすると学園の入り口で俺を待ってやがった。この時だけは夢かと橘の破魔の霊力を浴びようかと思ったぐらいビックリしたね……だって普段だったら俺達の都合なんて考えずに転移してくるのに普通に待ってるんだぞ? そんな姿を見たらもうね! デートするしかないだろ! なんだか平家達の視線が酷かった気がするがきっと気のせいだろう。

 

 

「あん? 知ってるくせに何知らないフリしてんだお前?」

 

「いや知らねーし。何でもかんでも知ってるとか思ってんじゃねーよバーカ。ここ最近はちょっと色々と忙しかったの! てか肉まんうんめー!! やっぱり冬はホカホカの肉まんだよねぇ~うまうま!」

 

 

 公園のベンチに座りながら夜空は肉まんを食べている。勿論、これは俺の金で買ったものだが夜空とデートできるなら安いものだ……あぁ、安いものだ。うん。寒いこの時期に肉まんを求めてコンビニに買いに来た奴らを絶望させたとしても安いものなんだ! てか相変わらずよく食うなコイツ……コンビニにあった肉まん全部買いやがったしな! そんなわけで夜空の膝の上には大量の肉まんやアンまんなどが置かれているわけだが……ダメだ、絶対領域にしか目がいかない。うわぁ、触りてぇ。

 

 

「この変態~チラチラ見るなら兎も角、ガン見すんなし」

 

「仕方ねぇだろ……これでも高校生だぞ? お前の絶対領域とかガン見するに決まってんだろうが。ちなみに夜空、今日のパンツの色は?」

 

「ん? 黒だけど?」

 

「マジかよ。いや、お前って基本白か黒しか穿かねぇよな? 他の色にチャレンジしてみても良いんじゃねぇの?」

 

「ばっかじゃねぇの、そんな金なんてあるわけねーし。これでも金無しのホームレスみたいなもんだよ? 服とか買う余裕があったら食い物買うに決まってるじゃん」

 

「知ってる。その服とか俺が買ったもんだしな」

 

「にへへ~冬服とか買ってくれるんなら脱ぎたてホカホカパンツあげても良いぞぉ?」

 

「夜空、服屋行くぞ! 金額度外視で好きなもの買いやがれ!」

 

 

 夜空のパンツがもらえるなら服なんて安いもんだ。あれ……これって放課後デートっぽくねぇか? 一緒に街並みを見て、あーだこーだ話して、今日は楽しかったねまたデートしようって流れじゃないかこれ! うわ最高だな!!

 

 

「キモ」

 

 

 だからその豚を見るような視線はやめろっての……興奮するだろうが。

 

 

「んでー? 体験入学って何さ?」

 

「……あー、今度の休みにシトリー領に新しく学校が建設されてな。身分が低いだの魔力が乏しいだのって理由で学校に通えなかったガキ共を呼んで俺達が色々と教える事になった……面倒だけどな。んで俺や一誠、元士郎にサイラオーグと言った面々が参加するからお前もどうだって話だよ」

 

「ふーん。あの冥界によくそんなの建てれたもんだね。絶対さぁ! 老害共が五月蠅かったっしょ! だってあいつ等って純血主義だしさぁ!」

 

「まぁな。今の冥界には合わないだの必要ないだのと批判の嵐だったっぽいぜ? まっ! 色々と悪名だけは冥界中に広がってる俺の名前を出したら一気に鎮火したけどな。全く、批判するなら最後までやれよな……ここ最近使ってないグラムぶっぱ出来るってのによ」

 

「自分の命が大事なんだからそんなことするわけね―じゃん。ふーん、学校ねぇ~なんで私を誘ったのさ? 言っちゃなんだけど絶対に怖がられるっしょ?」

 

「それを言うなら魔法使いを虐殺したり好き勝手に生きてる俺が参加してる時点でもう阿鼻叫喚だっつうの。誘ったのは……なんだ、ほら、えーと……お前さ、学校とか行った事ないだろ? いや神器を発現する前は行ってたかもしれねぇけど……今日まで殆ど通ってないだろ? だからさ、あー、そのだな……」

 

「……遠慮なんてすんなし。キャラ違うっての」

 

「うっせ。こんな俺でも空気ぐらいは読めるんだよ……んじゃ、お言葉に甘えて遠慮なく言うぞ――お前に学校ってのを教えたい。だから参加しろ」

 

 

 隣に座る夜空の目を見て、真面目なトーンで伝える。少なくとも俺が夜空と出会ってからは学校に通っていたなんて話は聞いてない。親を殺す前に通ってた可能性もあるがそれでも少しだけのはずだ……だからコイツは学校の空気を知らない。教師のクソ真面目な授業を聞いてあー眠いと思う事も昼休みに食う弁当の味も、名前も知らないクラスメート達との良く分からない話とか色々な。あと夜空と一緒に学生したいのは俺の我儘だ……ガキ共のための体験入学? 知るかそんなもの。こっちは夜空と一緒に学生するのが大事なんだよ! 夜空の制服姿とか本当に最高なので是非とも! 是非とも参加してもらわないと困る!

 

 もっとも俺が本当に見たいのは普通の女の子として過ごしている夜空なんだけどな。

 

 

「ふーん、へー、ほー。めっずらしぃ~アンタがそんなにマジになるなんてさ」

 

「お前と学生出来るんなら真面目にもなるさ。ここ最近、前みたいに気軽に殺し合ったり話したりと出来なかったしな。ついでにぶっちゃけると伸び悩んでてなぁ……漆黒の鎧の先に進める気配が一切ねぇんだよ。昨日ヴァーリと殺し合った時にその事をぽろっと呟いてみたら自分を見返してみればどうだって言われてな……だから偶には良いかって事で寝ずに考えた。お陰で徹夜で眠い」

 

「……で? 答えは出たん?」

 

「当たり前だろうが。何十何百と自問自答した結果――あぁ、俺ってやっぱり夜空が好きなんだなぁってのに行きついた」

 

「ぼふっ!」

 

 

 その言葉を言った瞬間、食べていた肉まんを噴き出して息を整えている夜空の姿が目に入った。別に変な事を言ったつもりは無いんだがなぁ……なんせマジでこれしか思い当たらなかったしね。強くなりたいのはなんでかという疑問には夜空という答えが出て、これから何をしたいかという疑問には夜空と好き勝手に生きたいいう答えが出て、夜空のためなら犬月達を殺せるかって疑問には普通に殺せるという答えが出て、なんで俺は夜空の事を気になってんだという疑問には夜空の本当の笑顔が見たいと言いう答えが出て、結局俺は夜空が好きなのかって疑問には問答無用で大好きだって答えが出た。

 

 妖怪達と盃を交わした。それの何の意味がある? 最上級悪魔になった。それは必要か? D×Dに参加した。そんなの俺には関係無いだろ? 覇王になる。それが目指す場所なのか? 色んな疑問が俺の頭の中を駆け巡ったけど結局行きつくのは夜空だった。ハハハ、笑えるよな……最強の影龍王だの覇王だの妖怪の長と同格だの最上級悪魔だのと俺を唆す言葉にまんまと惑わされてたんだからな。ヴァーリには感謝しねぇといけないか……この答えに行きつくことが出来たのはヴァーリの言葉だったんだからよ。もっとも絶対に言葉にはしないけどさ!

 

 俺は夜空が好きだ。それに嘘偽りなんか一切無い。夜空の笑顔が見たいから、夜空を受け止めてやりたいから、夜空を護りたいから、夜空を手に入れたいから、夜空と一緒に生きたいから俺は戦ってる。強くなっている……助けられた恩返しとか同情とかそんなのじゃない! ただ俺は……隣にいる片霧夜空って女の子が好きなだけの混血悪魔だ。それで良い……それだけで十分だ。

 

 

「ちょ、ちょっ! なに真面目な顔してギャグ言ってんのさ! あはははははは!! は、腹いてぇ! の、ノワール! 無理! 無理無理無理! あははははははははは!!」

 

「てんめ! 人が寝ずに考えた答えを聞いて爆笑すんじゃねぇよ! ぶっ殺すぞ!!」

 

「だ、だってこんなの爆笑すんに決まってんじゃん! 何が寝ずに考えただよ! あはははははははは! そんなとーぜんの事をクソ真面目な顔して言うとかギャグ言ってるとしか思えねぇし!」

 

「……は?」

 

「だからとーぜんのことだって言ってんじゃん! あーお腹痛い……ひさっしぶりに爆笑したかも! なーにポカンとしてんのさ? アンタが私の事を好きなのはとーぜんの事、逆に私がノワールを好きなのもとーぜんの事っしょ? だって――」

 

 

 俺の隣で爆笑していた夜空が膝の上に跨り、自分の口を俺の耳元へと近づける。

 

 

「――アンタは私の(もの)でしょ」

 

 

 やべぇ、ゾクゾクする。声のトーンとか普通にマジな感じに加えてさっきまでの笑いがどこに行ったってぐらい無表情だもんね! これはドМになってもおかしくは無いな! 俺、道を踏み外しそう……!

 

 

「ノワールが私の事を好きだって言うのは当たり前、だって私もノワールが大好きだしさ。親ですら見放した私を追いかけて……私が何をやっても仕方ねぇなぁって言いながら付き合ってくれるほどの変人を私以外が貰ってくれるわけねーだろ。つっても誰にもやらねーけどさ……覚にも鬼にも不幸女にも駄肉アイドルにも焼き鳥にも絶対にやらない。邪魔するなら神でも魔王でも殺す。だからノワール、さっさと私に殺されろ。その体に私の物だって証明するために名前刻んでやるからさ」

 

「えっ? マジで! おいおい夜空……平家達に嫉妬してるからってサービスしすぎじゃねぇか? お前の名前を刻みたいなら何時でも良いぞ! 背中か!? 胸か! それともノワール君のノワール君か! いやぁ~でも出来ればクリスマスにしてくれない? 最高のクリスマスプレゼントになるからさ!」

 

「ヤダ」

 

 

 俺のトキメキを返しやがれ。

 

 

「……自分で言っておいて否定とかやめてくれません? 流石に不死身な俺でも傷つくぞ」

 

「だってさぁ~! 言われたから名前を刻むのって変っしょ? やってほしかったら私に勝ってから言えよ。いくらでもその体に刻んでやるからさ」

 

「言ったなテメェ! 絶対に刻ませるからな――ん? いやなんで俺が刻まれる側なんだ? 逆だろ。お前のその最高に綺麗な体を傷つけたくねぇけど俺の名前をお前に書きてぇわ」

 

「全然逆じゃねーし! さっきも言ったっしょ? ノワールは私の(もの)なんだってさ。昔から言うっしょ? 自分の男には名前を書くってさ」

 

「……それもそうか。まぁ、なんだ……とにかくお前からしたらくっだらないほど当たり前な事を俺は徹夜して再確認したってわけだよ。なぁ、夜空」

 

「なにさ?」

 

「お互い、変な事に巻き込まれっぱなしだな」

 

「……そうだね」

 

 

 ボフンと夜空は向かい合うのやめて俺を椅子代わりに身体を預けてきた。やべぇ最高のシチュエーションだとか思う前に一つだけ言わせてほしい……このマント、あったけぇ! 流石光を操る神滅具なだけあるわ! 暖房代わりになるとか素晴らしいね! あと何だろうか……どこからか変な威圧感を感じるぞ。まぁ、どうせ平家辺りだろうけど……ノワールの膝の上は私の場所、奪う奴は光龍妃でも許さないとかそんな感じでブチギレてるんじゃねぇかな? うわぁ、なんか当たってそうだなおい。

 

 

「私達ってさ、好きな時に殺し合って、好きな時に話をして、好きなように生きてたはずなのに気が付いたら異世界だーとか邪龍復活だーとかどーでも良い事に巻き込まれてる。楽しいから良いけどその代わりに私達の日常が崩れ去ったのはすっげームカつく」

 

「俺達はただ、周りが呆れるぐらい好き勝手に生きて、好き勝手に殺し合って、好き勝手に死んでいきたかっただけなんだけどな。気が付けば俺は名ばかりの最上級悪魔に妖怪のトップと同格扱いときたもんだ。ホント……どうしてこうなった」

 

 

 俺と夜空は何も話すことなく空を見上げ続けた。赤龍帝が先輩の眷属になり、フェニックス家の婚約騒動があり、コカビエルの事件があり、三大勢力の和平がありと数百年に一回起きるか起きないかの事件が次々と起こりやがった……それに面白いから、楽しいからって関わり続けた結果がこれか。自業自得も良いところって感じかねぇ? まぁ、楽しかったから良いけど夜空の言う通り、俺達の日常はとっくの昔に壊れてやがったんだなぁ。

 

 

「ノワール」

 

「ん?」

 

「その体験入学って奴に参加すっから……だから制服ぐらいは用意しといて」

 

「良いのか?」

 

「ノワールは参加してほしいんっしょ? 私の我儘とかに付き合ってもらってるし偶にはノワールの我儘にも付き合ってやんよ。にへへ~がっこうがっこう! ひっさしぶりに味わってみよっと! だから楽しみにしてるよ、ノワール! でも覚えとけよぉ~何があってもおかしくないからさ」

 

「……ばーか。それこそいつも通りじゃねぇか? 何が起きても俺はお前を楽しませるよ、絶対にな」

 

「……うん。じゃー当日を楽しみにしとけよぉ~! ばいば~い!」

 

 

 夜空はそれを言い残して既に冷えたであろう肉まん達と一緒に消える。寒いな……さっきまでの暖かさはどこへやらだ。まっ! 夜空が参加するなら俺もテンション上がるし何も問題ねぇか。

 

 そんな事を思いながら自宅へと帰ると珍しく平家が出迎えてくれた。なんだろうな……すっげぇ気持ち悪いぐらいニコニコしてるんだけど何があった? 俺の心の声は聞こえているはずなのに何も言わずに腕を掴まれてリビングまで移動、上着などをそこらへんに放り投げられてソファーに座らされた。え? なにこれ……何が始まるの? まさか夜空と放課後デートしてたから殺すとかそんな感じか?

 

 

「――なにこれ」

 

 

 そんな感想も普通に出てくるほど今の状態はおかしい。平家に無理やりソファーに座らされたのは良い……いつもの様に平家が膝の上に座るのもまぁ、良い。でもそこから問題なんだよ……まず右隣には酒瓶を持った四季音姉が座って右腕を掴んで逃がさないようにし、左隣には橘が素晴らしいアイドルスマイルを浮かべながら座って左腕を抱きしめる。なにこれ? あの、部屋着に着替えたいんだが離れてくれません?

 

 

「ヤダ」

 

「即答かよ……おい、犬月? 何が……マジで何があった?」

 

 

 先に帰っていたはずの犬月はリビングの片隅で体育座りをしながら震えていた。それはもう見事なまでにガチで恐怖しているような震えっぷりだ。マジで何があった? とりあえず大丈夫じゃねぇってのは分かったが説明してくれ!

 

 

「お、おおおおおお、おおれおれおおははっはは、だ、だだだだ、だいいいじょじょぶぶっすよおうさま! なになになになにもももも!!」

 

「分かった。落ちつけ犬月……レイチェル、マジで何が――えぇ……」

 

 

 比較的常識人なレイチェルに何があったか確認しようとすると恐ろしい光景が視界に映った。何かに絶望したような表情で椅子に座り、一心不乱に小声で何かを呟いているのは軽くホラーだと思うね! えーと何々……「皆さんのお話やキマリス様の態度で分かっていましたが改めて目の当たりにすると勝ち目がありませんわですけど私はキマリス様と契約しましたつまり光龍妃様に勝っていると認識しても良いのではですけどですけど――」とかすっげぇ早口で呟いてるところ誠に申し訳ないんだが……怖いぞ。

 

 右を見る。いつもの様に四季音姉が酒を飲んでいるのが見えるが目に光は無い。左を見る。いつもの様に橘様が笑顔でいらっしゃるが目に光が無い。前を見る。いつもの様に平家が座っているが目に光がある。うん! 平家だけ平常運転で他はアウトだわ! あれ……何時から俺の眷属は病み属性が付加されたんだ? 割と最初っからあったような気がしたけどここまで表に出すって相当だぞ……? おい、さっさと何が起こったのか話せ。

 

 

「ノワールと光龍妃の会話を聞いたら花恋も志保もお姫様もおかしくなった」

 

「……盗み聞き」

 

「してないよ。光龍妃が私達に見せつけ来た。ご丁寧に私の男ってことを強く強調してね」

 

 

 よぞらぁぁぁっ!! てんめ! あいつ! 何してくれてんだ!? いきなり私の物発言したのはこれか! おうおう嫉妬か! 嫉妬なんだな夜空ちゃん! 平家達とイチャついているのを見て嫉妬したんだな夜空ちゃん! くっそ……相変わらず可愛いなぁおい! 少しは俺にデレても良いんだぜ? ほらツンとデレの比率って結構大事じゃん! ゼハハハハハハハハハ! 自分の物発言するまで嫉妬してるとかすっげぇ可愛い! なんだろうな……今なら漆黒の鎧の先に進める気がする! 行けるぞ相棒! もう冬だが俺の春が来たんだ! 周りの状況? はっ! 知らんなそんなもん! 夜空の貴重なデレというか独占欲が見れて俺様、非常に満足です! 最高だなおい! これは徹夜して良かったと言えるな! だからすいませんけどお二方、目に光を宿してください。俺の顔を覗き込むように見てきてますが普通に怖いです。四季音姉、今にも俺の腕を握りつぶそうって感じで力を入れないでください。橘様、破魔の霊力的な何かが漏れ出していますので引っ込めてください。

 

 

「パシリパシリ」

 

「……なんだよ茨木童子。こっちは今それどころじゃねぇんだよ……体の震えが止まらなくて今日は怖い夢を見そうなぐらい恐ろしいものを見たからさっさと大天使水無せんせー待ち状態だからそっとしておいてくれ」

 

「パシリ暇そう。だから聞く。伊吹が怒ってる。理由を聞いても教えてくれない。気になる。伊吹が気にしなくても良いと言ってた。でも気になる。さっきまでの主様を見ていたら胸が痛くなった。今も痛い。伊吹に言っても教えてくれなかった。パシリなら分かる?」

 

「シリマセン。オレ、シリマセン。オウサマにキケバイインジャナイカ?」

 

「分かった。主様に聞いてみる」

 

 

 リビングの片隅で震えていた犬月と話をしていた四季音妹が近づいてきた。うーん、こいつはいつも通りだな! 目に光があるし癒し系オーラ的な何かが漏れ出している! きっとそうだ! てか犬月!! テメェ……! 俺の飼い犬なんだから助けろよ! あっ、首をブンブンと横に振って土下座し始めた。お前は平家か? なんで俺の思った事が分かるんだよ……?

 

 

「主様。パシリが主様に聞けば分かるって言ってた。教えて欲しい。さっきまでの主様を見ていたら胸が痛くなった。病気になった? 主様は分かる?」

 

「あー、何か食い過ぎたんじゃねぇか?」

 

「朝御飯とお昼ご飯しか食べてない。伊吹に聞いても教えてくれない。でも気になる。知っているなら教えて欲しい」

 

「……おい四季音姉」

 

「――イバラ、とりあえず後ろからノワールに抱き着きな。それで治るよ」

 

「分かった」

 

 

 四季音姉の命令絶対娘は言われるがまま俺の背後に回って抱き着いてきた。微かに感じるおっぱいの柔らかさに感動しながらもこの状況をどうしようか考えようか! えーとマジでどうしよう? 相棒、ちょっと俺の質問に――相棒? はぁ!? お呼びになった影龍は現在爆笑中です、しばらく経ってから再度お呼び出し下さい? ふざけんじゃねぇぞおい!! 流石邪龍だなって褒めたいけど今はそれどころじゃないんだよ! ヤバイ。マジでヤバい。いつの間にかヤンデレが広がってたんだよ! 頼むから答えてくれ相棒!

 

 

『ゼハハハハ。無理』

 

「相棒!? まさか俺を見捨てる気か!」

 

『だってその方が愉しいしなぁ!』

 

 

 オーノー、最強の味方が敵になりやがった。

 

 

「……はぁ、諦めるしかねぇか。んで? 何時までこうしてれば良いんだよ?」

 

「ずっとです」

 

「とりあえずノワール、動くな。動いたら潰すよ」

 

「主様、暖かい」

 

「膝の上は私の場所。光龍妃の匂いを消すでござる」

 

 

 これは約二名ほど通常運転だが残った二人はアウトだなぁ。逆らったら死にそうだししばらくこのままでいようかねぇ? つーか犬月、お前はいったい何を見た?

 

 ヤンデレ二人に挟まれながら水無瀬が帰ってきたら元に戻るだろうと思っていたが……帰ってきた水無瀬の目に光が宿ってなかった。なんでも保健室で仕事をしていたら突然俺と夜空がイチャついている光景が空間に空いた穴から映り、夜空の私の物発言を聞かされたそうだ。ヤバいな……マジでヤバい。三人が病んだとかシャレにならん。てかマジかよ……夜空とイチャついただけで心病むとかちょっと意味分かんねぇ! どんだけ俺のこと好きなんだよお前ら!

 

 

『我がおウよ! 帰ッテいたカ! さぁ! わレらを振るウのダ! 敵ハせいケん! あいテにとって不足なシ! ム、どウシた我がオうよ?』

 

「いや、初めてお前がまともに見えてちょっと泣きそうになっただけだ」

 

 

 この瞬間だけはグラムの扱いをマシにしてもいいかなと思えた俺だった。




ちなみに学校の入り口で待っているように提案したのは歴代光龍妃です。
観覧ありがとうございました!

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