ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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100話

「なぁ、犬月」

 

「なんすか王様?」

 

「気が付いたら体験入学当日になってたな」

 

「そっすねぇ」

 

 

 現在、冥界中の貴族共を騒がせているシトリー領内に建てられた噂の学園――D×D学園に俺達は訪れていた。見た目は人間界に存在し、俺達も通っている駒王学園に似たような外観をしているが規模などは若干小さい感じだ。なんでもあのセラフォルー様が珍しく……凄く珍しく! そして本当に真面目に後々の事を関係者達と話し合った結果、人間界にある学校を参考にしようという事になったらしい。あまり派手にし過ぎると学校反対派の上層部や貴族共が五月蠅いだろうからそれ自体は悪くないと思う……がそれを聞いた時はあの魔王様は偽物かと本気で思ったのは悪くないと思う! そんなわけでどの学校を参考にしようかって話になったらしいがセラフォルー様と生徒会長の意見が珍しく一致したことにより俺達が通う駒王学園がモデルとして選ばれたわけだ。理由としてもどこに何があるかとかが生徒会長や俺達がすぐに分かって有事の際に対処しやすいとかなんとか……まぁ、今まで通ってた学校と同じなんだから当然と言えば当然だ。

 

 ちなみにD×D学園ってのは俺達キマリス眷属も何故か参加する羽目になった対テロリストチームの名前から取っている。俺達キマリス眷属、先輩達グレモリー眷属、サイラオーグ達バアル眷属、生徒会長達シトリー眷属、ヴァーリ達、アガレス眷属に天界勢、アザゼルに闘戦勝仏こと孫悟空、規格外パート2等の面々によって構成されてる。改めて見てもヒデェなおい……なんだこの過剰戦力? 普通に二天龍に地双龍の片割れ、龍王に神滅具保有者複数所属とか世界滅ぼせるぞ。まぁ、それは置いておいてこのチームの名付け親はヴァーリの所に居る黒猫ちゃんの妹……うん、妹ちゃんでドラゴンとかデビルとかダウンフォールとか「D」から始まるものが多いから「D×D」らしいけど……間の「×」はなんだよ? 普通に「DD」じゃダメなのか? まっ、どうでもいいけどさ。

 

 

「犬月……お前さ、ここ数日のこと思い出せるか?」

 

「いやぁ~すいませんけど思い出そうとすると体の震えが止まらなくなるんで忘れたってことにしたいんですよね。はい、覚えてません!」

 

「現実逃避すんな、頑張って思い出せ」

 

「ひっでぇ!? 元はと言えば王様が原因でしょうがぁ!! 俺、俺! 本気でげんちぃの家に泊まりに行こうかって考えてたんすからね! 俺は鈍感な方じゃないと自負してるんで言いますけど……」

 

 

 犬月が右を見て左を見た後、俺の背中を押して少し離れた場所へと押していく。恐らく近くに居た平家達に聞かれたくないからだろうが……悪魔だから普通に聞こえると思うぞ?

 

 

「……引きこもりも酒飲みも水無せんせーもしほりんも姫様も王様の事が恋愛的な意味で好きで……あと茨木童子もきっと王様の事を同じ意味で好きだと思いますよ! グラムは知らねぇけど! 兎に角……どうするんかホントに? 今後もあんな感じになるのはちょっと辛いんですけど……?」

 

「そんなもんはアイツらに言えっての……今は目に光もあるし態度とかも元に戻ってるから大丈夫だろきっと! てか俺が夜空に惚れてるって平家も四季音姉も水無瀬も知ってるだろうし……橘とレイチェルに関してはなんとなく察してたと思うんだがなぁ。俺だって予想外だっての……悪いな犬月、何だったら一人暮らしでもするか? あの地獄は元凶として俺が最後まで面倒見るしかねぇしな。最悪、刺されてもなんとかして生き返るさ」

 

「殺傷沙汰とか普通にあり得るんでおっかないこと言わないでくださいよ……いやぁ、自分で言った事っすけど流石に逃げることは出来ないですって。俺、王様の飼い犬(へいし)ですし。ここまで来たら最後まで付き合いますよ。あと王様? 水無せんせー達があんだけ表情や態度に出すって事は王様の事を心の底から好きだからだと思いますよ。引きこもりはあんまり変わってなかったけどきっと同じっすね。俺としてはすっげぇ羨ましいっすわ! いっちぃほどじゃねぇけどハーレムとか男の夢ですし一度は女の子に囲まれたいですしね!」

 

「……ばーか。だったら頑張って強くならなきゃな。眷属を持てるようになればハーレム作れるぜ?」

 

「うわーそこは譲るとか言ってほしかったわー」

 

 

 俺の言葉を聞いた犬月は校舎の壁に寄りかかりながら冗談交じりな声を上げる。別にやろうかって言っても良かったんだがまぁ、なんだ……それはアイツらに悪いしな。こんなクズで大馬鹿でキチガイな男を好きだって思ってるんだし冗談でもそんな事は言えるかっての。さてそれは置いておいてマジでここ数日間なにしてたっけ……? あー思い出した思い出した! うん! 忘れよう! さっさと忘れた方が良い気がする!

 

 だって――

 

 

『おはようございます。ノワール君、今日は早いんですね。もうすぐ朝御飯が出来ますから先に顔を洗って歯を磨いてください』

 

『悪魔さん、おはようございます。お隣良いですか?』

 

『き、キマリス様! お、おはようございますですわ……よ、よければお隣、良いでしょうか……?』

 

『めぐみ~ん、おっさっけちょうだぁ~い! にししぃ~よわなきゃやってられなぁいぃ』

 

『ダメです。昨日はいつも以上に飲んでいたのでもうありません。既に頼んであるので届くのを待っててください』

 

『がーん! うぅ~のわぁ~るのせぃだぁ~ねこれは――にしし』

 

 

 ――目に光が無い状態でこれだぜ? 周りから見たら至って普通の朝の一時って感じなのに平家と四季音妹とグラムと犬月以外の女性陣の目がヤバかったしな! 目に光が無い状態であんなに談笑出来るとか女って怖いと本気で思ったわ! 犬月なんざ「イヤーキョウモミナセセンセーのゴハンハオイシーデスネー」と意識朦朧状態だったからな……よほど怖かったんだろう。だが頑張れ! 頑張るんだ犬月! 将来病んでる女と付き合った時にきっと役に立つはずだから必死に頑張れ!

 

 

「悪魔さん? 犬月さんと何を話しているんですか?」

 

 

 背後から橘に話しかけられたため、犬月がビクッと体を震わせた。振り向くとそこには駒王学園の制服を着ている橘が立っている……目に光は宿っており、普段見る可愛らしい仕草だがここ数日間の様子を見てきた俺達としてはすっげぇ怖く感じる。あのぉ……本当に元に戻ってますか? いきなり目の光が無くなったりしません? 一応、アイドルなんだからヤンデレスマイルとかいけませんよ橘様! ファンの方々の性癖が歪んじまうからな! あっ、刺すなら誰も居ないところでお願いします。

 

 なんか知らないが平家から死ねばいいのにって言いたそうな視線が向けられたけど元はと言えばお前らが原因だからな! ここ数日間の俺と犬月がどれだけ心にダメージを負った事か……!

 

 

「ヤンデレ状態の花恋達に囲まれても涼しい顔してたくせによく言う」

 

「当然だろうが。お前らが病む程度で嫌うわけねぇだろ? というわけで刺したかったら何時でも来いよ?」

 

「……いや、まぁ、王様は鎧さえ纏ってたら不死身ですけど生身で刺されたらきっと痛いっすよ?」

 

「大丈夫だろきっと」

 

「すっげーポジティブっつうか馬鹿っすね! やっぱ頭おかしいわこの人!」

 

「あ、悪魔さん! その、さ、刺したりとかし、しません! その、ちょっとお話しするだけです!」

 

「お話という名の監禁だけどね」

 

「ち、違います!」

 

 

 流石覚妖怪、嘘を見抜くのがお上手でなによりだ。平家と橘の微笑ましいかどうか分からないやり取りをBGMに周りを見渡してみる……普段学園で働いている格好の水無瀬は全くもうって感じで平家達を眺め、駒王学園の制服を着ている四季音姉妹は普段と変わらず酒を飲んだりぼけーとしたりしている。よし、今は元に戻ってるな! レイチェルは……こっちも変わらないか。流石にガキ共を相手にする時に昨日までの状態だとアウトだしね! グラムは知らん、本気で知らん! なんせ周りがヤンデレに変化していた状況であっても普段と変わらなかったしね! てか普通に癒されました。チョロインでこんなに癒されるとは思わなかったけどな……しっかしあれだな、うん。全員元に戻ってくれて何よりだ……昨日までの状態だったら何も知らないガキ共がビビるかもしれねぇしな。

 

 

「おっ、いたいた」

 

 

 校舎の中に続く扉から出てきたのは駒王学園の制服を着ている元士郎だ。ただし腕にスタッフの証明っぽい腕章をつけている……あっ、ちゃんとD×D学園って彫られてる! 無駄にすげぇ!

 

 

「よっ、なんか知らないが呼ばれたんで来たぜ」

 

「そりゃ呼ぶだろ……会長は中に居るから案内するぜって見た目通り駒王学園と同じ作りだから迷う事は無いだろうけどな。本当に……ありがとう」

 

「何に礼を言ってるのか分からねぇけど礼なら大工仕事をしたそこの可愛い鬼姉妹に言えよ。俺はただ上層部に嫌がらせがしたかったのと生徒会長の夢が面白そうだったから手を貸しただけだしな」

 

「そのおかげでスムーズに建てる事が出来たんだっての。えっと、四季音さん達もありがとうございました!」

 

「にししぃ~きぃにしなぁ~い。おにさぁんはぁ~おっさっけぇ~のためにはったらいたぁからねぇ~」

 

「伊吹の手伝いをしただけ。礼を言われることじゃない」

 

「……はは、すっげぇなホントに。よし! 会長が待ってるから付いてきてくれ」

 

 

 というわけで元士郎に案内……というか普通に生徒会室へと向かう事になった。道中、広場っぽい所でサイラオーグがガキ共に正拳突きを披露していたり、一誠を前に一列に並んでいるガキ共がいたり、パンツらしきものをもぐもぐしているファブニールの体にガキ共が乗っていたりと色んな光景が見えた。周りにも両親らしき大人が微笑ましい感じで眺めているから企画としては成功の部類に入るだろう。あっ、ヴァーリもいる! ヴァーリが居る!! 一誠から少し離れた場所にヴァーリが居る!!! 何をするわけでも無く握手会っぽい事をしている一誠を眺めてる! なんかあの光景……ちょっと笑えるんだけど!

 

 指をさして爆笑しそうになるのを堪えつつ歩いていると俺達に気が付いたらしいガキ共の集団が「影龍王!」やら「歌姫だ!」やらと騒ぎ出して手を振ってきたので軽く手を振っておいた。なんて言うか……偶には良いか。

 

 

「ノワール君」

 

「んあ?」

 

「誰かに言われる前に手を振りましたね」

 

「……偶には良いだろ」

 

「はい。それじゃあ今度は笑顔で……ひゃん!? の、ノワール君!!」

 

「なんかその分かってますって顔がムカついた。はぁ……生徒会長には俺だけいれば良いからお前らはガキ共の相手をしてやれ。終わったら俺も行くからさ」

 

「ういっす!」

 

「はい!」

 

「私はキマリス様とご一緒させてもらいますわ。一応、キマリス様の契約者ですもの! 常にお傍に居るべきですし……な、なんですか覚妖怪! な、何も間違ってはいませんわよ!」

 

「別に。ただ傍に居るならお姫様より私の方が良いに決まってる。だって覚だし」

 

「それはそれ、これはこれですわ! ぐぬぬ……! さ、覚妖怪……停戦協定ですわ! この場はご一緒に、なぜ無視しますの!!」

 

「停戦協定はんたーい。ノワール、色んなものが五月蠅いから早く行こう」

 

「ま、待ちなさい覚妖怪! 独り占めは許しませんわ!」

 

「……此処でもいつも通りなのは本当に凄いよ」

 

 

 騒ぎ出したガキ共の相手は犬月達がするから少しは落ち着くだろう。しっかし四季音姉妹もなんだかんだでやる気になってるのは意外だな……まぁ、アイツらも鬼の里でガキ共の相手をしたこともあるだろうから慣れてるのかねぇ? てかグラム……お前趣旨分かってるか? いきなりイケメン君の近くに行って「良く分からぬが聖魔剣と戦えばいいのだな!」って感じで張り切ってるけど全然違うからな! どんな状況でもブレねぇお前が逆にスゲェよ。

 

 そんなこんなで平家とレイチェルを共に生徒会室まで移動すると忙しそうな生徒会長とそれを補佐する数名のシトリー眷属の姿があった。俺達が入ってきたことに気が付いたのか書類などに目を通すのをやめてこちらを見てきた。

 

 

「キマリス君。今日は来てくれてありがとうございます」

 

「べっつに暇だったんで良いですよ。此処に来るまでちらっとどんな感じなのか見えましたけど中々好評っぽいですね」

 

「えぇ。二天龍やキマリス君、そしてリアス達が参加すると情報が広がってから体験入学希望者がドンドン増えました……この場所に居る子供達は魔力が乏しい、家柄が低いなどの理由で学校に通えなかった子達ばかりです。このD×D学園が将来の道を増やせるように私達が頑張らないといけません……しかし白龍皇が参加してくれるとは思いませんでしたけどね。キマリス君から誘われたと聞いた時は驚きました」

 

「いやぁ~俺や一誠が参加するならヴァーリも居た方が盛り上がるでしょ? 天下の白龍皇にして最強のルシファーに会えるに加えて何でも良いから指導してもらえばそいつにとっても嬉しいでしょうし」

 

「確かにそうですが……いえ、人手が多い方が良いのは変わりませんから何も言わないようにしましょう。キマリス君、良ければこの後に行われる眷属を率いる(キング)による授業に参加してもらえないでしょうか? リアスとキマリス君による授業ともなれば子供達も喜ぶと思うのですが……?」

 

「……まぁ、良いですけど逆に怖がらせても知りませんよ?」

 

 

 俺の返答に生徒会長はまるで水無瀬のように大丈夫ですよって言いたそうな表情を返してきた。元士郎からも子供達の中でおっぱいドラゴンと影龍王は大人気らしいので全く問題無いなんてことを言われたが……俺だぞ? 好き勝手に生きて、好き勝手に殺し合って、好き勝手に死んでいくを本気で思ってるような俺がガキ共相手に授業とかダメだろ? まぁ、きっと親が参加するなって止めてくれるだろう。

 

 とりあえず俺の隣にいるノワールが先生とか笑えるって顔をしている平家の頬を引っ張りつつ外にいるグラムを見張っておけと命令する。だって体験入学だってことを理解してるのかしてないのか分からん以上、ストッパーは必要だ……俺? 無理無理、グラム握ってガキ共の目の前で「ゼハハハハハハ! 今からこのチョロイン魔剣の実力を見せてやるぜ!」って感じで影龍破をぶっ放す未来しか見えない。やって良いならやるけど流石に怒られるし今は自重しておくつもりだ……ガキ共からリクエストがあったら問答無用の大サービスとしてやるけどな!

 

 

「しょーがない。私も子供の心の声なんか聞きたくないしグラムの首根っこを掴んでおく」

 

「そうしろ。辛かったら俺の心の声だけ聞いとけよ?」

 

「りょーかい」

 

 

 それを言い残して平家は生徒会室から出ていく。それを見届けた後はレイチェルと共に授業が行われる教室へと移動するが……道中、広場の方で化け犬状態に変化した犬月が四季音姉相手にお手とおかわりにお座りという芸を披露していたのが目に入り――若干だが泣きかけた。俺の気のせいじゃなかったら犬月の奴、ノリノリじゃね? いや、ガキ共が楽しそうにはしゃいでるから問題無いんだろうが……お前……お前!

 

 ちなみになんでレイチェルと一緒に教室に向かっているかというと……話の中で王と女王の関係がいかに大事かって話す事があるらしく、女王の座が確定している夜空が居ない俺のために急遽! 代役としてレイチェルが一緒に話す事になった。うわぁ、平家じゃねぇけど心の声が丸分かりだわ。どうするかねぇ?

 

 

「では現在、各方面で活躍されている(キング)のお二人にお話をしてもらいましょう」

 

 

 教室に入り、授業が始まる。目の前にはワクワクドキドキと言った感情を隠しきれてないガキ共が椅子に座って俺達を見ている。隣には先輩と姫島先輩、逆隣りにはレイチェルといった並びでガキ共を見つめ返しているが……夜空ちゃん? あのー、俺の女王の癖に遅刻とかちょっとあり得ないんですが? このままだとガキ共の脳裏にキマリス眷属の女王はレイチェルだって刷り込まれちゃいますが良いのか! 俺は良くないからさっさと来い!

 

 教師として教壇に立っている男が俺達の方に手を伸ばしてくる。えっと……誰だコイツ? 顔も見たことないってことは雇われ教師的な感じの奴か。流石に全員若手だと色々と苦労するだろうって理由でセラフォルー様辺りが手配したのかねぇ?

 

 

「リアス・グレモリーよ。まだ王としては新人だからあまり深く話せないかもしれないけれど一つでも身になる話をできたら良いと思っているわ。ほら、キマリス君も……」

 

「……あー、ノワール・キマリスだ。つっても色んな意味で冥界を騒がせてるから自己紹介とかいらないと思うんですけど……? とりあえず俺は王として最低最悪だからあまり真似するんじゃねーぞ?」

 

 

 俺の言葉にガキ共は「はーい!」やら「ヤダー!」など各々が思った事をそのまま言葉にしてきた。な、なんて純粋な眼差しなんだ……吐きそう。

 

 

「そんで先輩? 何話せばよかったんでしたっけ?」

 

「王と女王の関係がどれだけ大事かというのと王としてこれまで感じた事を話すのよ。もうっ、ソーナから言われてないの?」

 

「いや、正直な話……先輩には姫島先輩が居るから良いですけど俺って女王不在ですよ? どれだけ関係が大事かって言われても答えれな――レイチェル、お任せくださいませ私が居ますわって表情は何だ?」

 

「コホン。わ、私はキマリス様の契約者ですわ! つ、つまり女王の座が不在のキマリス様を支える立場として一番適任だと思われます。フェニックス家の姫としてもキマリス様に恥はかかせられませんしこの場はわ、私を女王と思って話してく、くれても良いですわ!」

 

「……どっちかって言うと女王の代わりって平家が一番近いんだがなぁ。まっ、良いか」

 

 

 断ったら断ったで面倒な事になりかねないし適当な事を言って終わらせよう。どう考えても後で平家が構って構って女王に近いのは私的な事を言ってくるだろうがその時はその時だ。夜空? 土下座してでも誤解を解くに決まってんだろ。

 

 

「そんじゃ、まずは俺から話すか。えーと王と女王の関係ねぇ……まぁ、知ってるか知らないかは知らねぇけど俺達キマリス眷属には女王が居ない。なんでと言われたら女王候補のヤツが良いよって言ってくれないからだ……マジでいい加減、俺の女王になってくれねぇかなぁ。毎回女王になってくれって言ってもヤダの一言だし……ヤバい泣きたくなってきた。いや、それはそれで置いておくが基本的に女王の役目は平家、あーと俺の騎士の覚妖怪が担ってる。此処にいるレイチェルは俺が「邪龍」として契約してるから平家が忙しかったらレイチェルが代わりにって感じになるな」

 

 

 俺が話し始めると騒いでいたガキ共が一気に静かになる。なんと言うかそこまで真面目にされるとこっちも困るんだがなぁ……いや、別に良いけど。

 

 

「でだ、女王が居ない俺から言えるのはまぁ、これか? どの口が言うんだって言われかねないが――そいつをちゃんと見ろ。例えば俺の騎士の覚妖怪だが能力として相手の心を読む。お前らだって自分が考えている事や言いたくない事を勝手に聞かれたくはないだろ? だから他の奴らも覚妖怪を嫌うわけだ……俺としてはどうでも良いけどな。たかが心を読む程度で嫌ってんなら他の事なんざ出来るわけがねぇ。つーかかなり便利だぜ? 言葉に出さなくても伝わるしな! まぁ、なんだ……こんな風に教えるなんざやったこと無いからからなんて言えばいいか全く分かんねぇけど兎に角だ! お前達が眷属を持った時、ちゃんとそいつ等を見てやれ。種族が何だとか身体能力が異常だとか世界中に危害を加えているだとかそいつのやりたい事をやって色んな所に迷惑かけてるだとか関係無い。そいつはそいつだ。そうすれば自然と関係が良くなる……らしいぞ? あっ、俺達は例外だからな! 特に男の子に一つ言うがハーレムだけはやめとけ! 周りの女が病んだら心が死ぬからな! 刺されたり監禁されたりしても良いと思えるんならハーレムを築いてもいいぞ!」

 

「……キマリス様! 話がズレていますわ!」

 

「いや大事だろ? 眷属なんざ王の趣味丸出しだせ? ライザーだってハーレム築いてるだろ?」

 

「そうですけどお兄様の場合は頭が病気なだけですわ! ほ、他の方々と同じにしては失礼です!」

 

「病気って……ライザーが聞いたら泣くぞ?」

 

「事実ですから仕方ありませんわ」

 

 

 プンプンと腕を組んでおっぱいを強調する仕草をしたレイチェルだが……やっぱデカいよなぁ。ちなみにハーレム云々はここ数日間で俺が感じた事だから何も間違ってはいないはずだ! ぶっちゃけると夜空一筋な俺が平家達まで愛せるかと言われたら……分かんねぇ。夜空が寿命で死んだらまぁ、うん。応えるかもしれないけど結局それって夜空の代わりっぽくてなんか嫌だし恐らく応えることは一生無いだろう。夜空がハーレム築けば良いじゃんって言わない限り。

 

 俺とレイチェルの漫才っぽいことが受けたのかガキ共は笑っている。よしよし、俺の話は終わったんで先輩! お願いします! いやぁ~赤龍帝を従えているグレモリー先輩だからきっと俺より素晴らしい事を言ってくれるに違いない! 頑張ってください先輩! 応援してますよ先輩! だから呆れたような表情で見ないでください興奮するじゃないですか!

 

 

「次は私の番ね……そうね、私自身もまだ上級悪魔としても王としても未熟で教える事なんて出来ないわ。だから今から話す事は今日まで私が感じた事ということで聞いて欲しい。私はキマリス君とは違って女王……朱乃がいるわ。幼いころからずっと一緒に居た大切な友人……いいえ、家族よ。生まれて初めての眷属が後ろにいる朱乃がいたからこそ私は一緒に前に歩くことが出来た。そして他にも私にはもったいないぐらいの幸運が巡ってきて裕斗、小猫、ギャスパー、イッセー、アーシア、ゼノヴィア、ロスヴァイセを眷属に迎える事が出来たし、誰もが素晴らしいという言葉や将来有望だと私を褒めてきた。皆も将来、眷属を持つことがあるかもしれないけれどそこで勘違いをしてはダメよ」

 

 

 ゆっくりと、そして確実に自分が感じた事をガキ共に伝えようとしている先輩を見て思わずうわぁ、ガチすぎるって引いた俺は悪くないと思う。

 

 

「素晴らしい眷属を持ったとしてもそれは自分の強さなんかじゃないわ。慢心してしまえば折角築いた関係を無かった事にしてしまうの。今日まで色んな戦いに参加する事があってそのどれもが私以上の力を持った相手、イッセー達が居なかったら私はこの場に居なかったかもしれないし大事な眷属……家族を失っていたかもしれない。でもその経験は私にとっても間違いを治す切っ掛けになったわ……格上との相手、ううん、キマリス君やサイラオーグ、そしてイッセー。私よりもはるかに強い人たちが傍に居たから慢心していたと気づくことが出来た。だから皆が王になった時、慢心なんてしちゃだめよ? どれだけ強い眷属が居たとしても王である私達が本当の意味で強くならないといざという時に頑張れないもの。ごめんなさい、ちょっと難しい話になっちゃったかしら……?」

 

「さぁ? 今の内から王の苦労やらなにやらを聞けて良かったんじゃないですかね? まぁ、ガチすぎて引きましたけど」

 

「もうっ! 真面目になるわよ! キマリス君だって珍しく真面目に言っていたじゃない」

 

「いや……俺って普段から真面目ですけど? 凄くまともにやりたい事をやって、好きなだけ殺し合って、至って普通な一日を過ごしているんですけどー! あー、先輩がガチなこと話したせいでガキ共がポカンとしてるじゃないですか……仕方ないなーもう! んじゃ予定変更でなにすっかなぁ? おし、夢でも語るか!」

 

 

 何やら真面目な空気になったのが個人的に我慢ならないので一気に変えることにしよう。決して! 決して先輩がガチで語った事に引いているわけじゃない! つーか王になった時の苦労なんざ実際に王になった時に考えれば良いんだよ。まぁ……今の内から特訓しておけば権力しか取り柄が無い上級悪魔程度は軽く殺せるようになるだろうから間違っちゃいないんだけどね。

 

 

「というわけでいきなり自分の夢を言えってのは無理難題っぽいから特別に俺の夢を聞かせてやろう! ゼハハハハハハハハ! マジで特別だぜ? 精々、参加しなかった奴らにでも言って自慢するが良いさ。さてと……俺の夢だがガキの頃から、いや影龍王になったあの日から変わってねぇよ。光龍妃が、いや……あー、夜空が好きだから手に入れるのが俺の夢だ。馬鹿らしいって言ったやつはもれなくチョロイン魔剣の斬撃を受ける役に抜擢すっから覚悟しとけよ? 良いか、権力が取り柄の家柄に生まれた奴らはお前らの夢を簡単に笑う。でもな、言わせておけ。お前らは悪魔だ! 好き勝手に生きてやりたい事をやる種族に生まれたんだから自分の夢に向かって突き進んでいけ! はいというわけで俺の夢暴露は終了で……そこのキミ! 夢は何だ?」

 

「え、えっと! 魔王様になりたいです!」

 

「おっ、マジで! だったら早くなってくれよ! いやぁ~ほら、今の魔王って働かねぇだろ? シスコンに魔法少女にニートに良く分からん奴とか終わってるしさ! お前が魔王になってくれれば比較的まともになってくれると思うんだよ! 応援してるぜ! その夢を笑ったやつには影龍王が応援してたとでも言っとけ! 即効で黙るはずだからな! よし次! そこの女の子!」

 

「はい! おっぱいドラゴンのお嫁さんになりたいです!」

 

「お、おう! 競争率が高いが俺は応援しよう! そのためには……とりあえずおっぱいでも大きくしておけ! それだけで一誠は喜ぶはずだ! 大丈夫だ! うちの覚妖怪とか鬼とかどっかの規格外みたいにか――ちっぱいにはならないようにちゃんとご飯は食べればおっぱいは大きくなる! きっとな!」

 

 

 どこからか分からないが壁と言おうとしたらとてつもない殺気が飛んできたので言葉を変えたけど……夜空、お前見てやがるな? どこに居るか分からねぇけど居るなら来いよ! 俺の彼女ですってガキ共に紹介するからさ! だってこれはいわゆる作戦という奴だからな! 純粋なガキ共に夜空が好きだと言えばきっと……きっと間違いなく「あっ! 影龍王の彼女だ!」的な感じで指さしてくれるに違いない! 外堀から埋めるという言葉はなんて素晴らしいんだろうか……さてと、背後にいるレイチェルをマジでどうしよう。俺の背後に隠れてガキ共から見えないから気づかれてないけどきっと目に光が宿ってませんよね? えぇ……これもダメなのか! なんてメンドクサイ!

 

 あと先輩達からのあらあらやら困ったものだわ的な視線を向けられているが無視だ無視。折角の体験授業だ、真面目ばっかじゃ疲れるだろ。

 

 

「よし! それじゃあそこの男の子! 夢を言ってみようか!」

 

「ぼ、僕は……僕はお父さんより強くなりたいです!」

 

 

 恥ずかしそうにしながらもハッキリと答えてくれたガキの目は真っすぐ俺を見ていた。その言葉に一番驚いていたのは教室の後ろで見学していたこの子の親父っぽい奴だ……きっと心の中では思っていたけど口には出してこなかったんだろうな。あぁ、たくっ。仕方ねぇなぁ!

 

 俺は教壇から降りて夢を語った男の子の近くへと向かう。変な事を言ったのかと思われたのかアワアワとし始めたが頭に手を置かれた瞬間、その動作を止めた。

 

 

「親父よりも強くなりたいか」

 

「うん! いつかお父さんより強くなって悪い人から守りたい!」

 

「そうか。だったら後ろを向いてみろ」

 

 

 俺の言葉に従って男の子は後ろを向いた。柄じゃねぇが今回だけ特別だ。あぁ、らしくねぇ。

 

 

「良いか? お前が越えるべき親父さんは近いように見えて遠いぞ。親ってのは大人げねぇからな……自分のガキにカッコつけてぇからお前が追い抜いた瞬間、後ろから逆に追い越すなんざ普通にあり得る。今から言う事は内緒な? 俺だって親父を超えたなんて思っちゃいねぇよ……王としても親父の方が上で、男としてもまだ負けてる。いつか勝つけどな! だから……なんだ、お前の夢は簡単なようで難しいぞ? 今日までお前や奥さんのために頑張ってる男をそう簡単に超えれるとは思うな……でもいつか超える時が来る。安心しろ、最低最悪な影龍王相手にハッキリと言葉に出来たんだ! 今すぐじゃなくても数年、数十年、数百年後には超えられる。その時になればそこらの上級悪魔よりもお前は強くなってるはずだ」

 

「……」

 

「……あー、涙目になるな。泣くなら自分の夢が叶った時だけにしとけ。お前が強くなるのを楽しみにしてるぜ! 他の奴らの夢も聞きたいがこれ以上は生徒会長から怒られかねないんで次の機会な!」

 

「「「「「えー!!」」」」」

 

「ゼハハハハハハ! そんな声を出しても無駄だぜ! 俺に夢を聞かせたかったらこの体験入学を全力で楽しみな! そうしたら……気が向いたら聞いてやるよ!」

 

 

 こうして俺にとって初めての授業っぽいものは終わった。




観覧ありがとうございました!

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