ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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遅くなって大変申し訳ありません!


116話

「……」

 

 

 重い。空気が重すぎる。息するのってこんなに苦しかったっけと誰かに聞きたいぐらい俺が今居る場所の空気が重すぎる。なんでこんな風になったんだっけ……えーと確か夜空と一緒にスカアハに挑んで敗北したんだったな。それは間違いない……が! なんつーか思い返すだけでもムカつくわ。だって漆黒の鎧状態の俺と黄金の鎧状態の夜空が共闘しても普通に負けたんだぜ? 俺と夜空がイチャイチャしながら戦えば神だろうと魔王だろうと負けはしないと思っていた矢先にこれだもんなぁ……師匠面するのはムカつくが実力は本物ってわけか。まぁ、この辺りは今よりも強くなってリベンジすれば良いだけだから置いておくとして今はそれどころじゃない――マジで何この空気?

 

 

「……」

 

 

 重い。本当に重すぎる。えーとマジでなんでこうなったんだっけ……? えっと勝手に師匠面してくるキチガイ系美女のスカアハに普通に負けて~とりあえず飯食うかと思ってたら食事の前にさっさと汗を流してこいとか何とか言ってこの温泉に転移させられて~なんか良く分からないけど夜空と混浴だぜやったーと歓喜の涙を流していたら先に入っていたらしい平家達と出会って……うん。これが全ての始まりだな!

 

 

「あのさぁ~邪魔だからどっか行ってくんない?」

 

「にしし……悪いね光龍妃。一応これでも眷属だからね、王の傍で護衛しないといけないのさ」

 

「この私が居るのに雑魚のお前らが居る必要ねぇんだけど?」

 

「念には念をって言葉を知らないのかい? 何時スカアハが襲ってくるか分からないんだ。今だけは共闘しても良いと思うけどね。それにだ――二人きりになんてさせるわけないだろう」

 

「ぁ?」

 

 

 俺に身体を預けている夜空がガチの殺気を四季音姉に向けているが相手も同じように殺気を返す。正直な所、夜空相手に喧嘩売れるのってこの中だとコイツ(四季音姉)ぐらいだよなぁ……水無瀬はまぁ、飯絡みだったら同じ事が出来るけど他の面々はまず無理だと思う。というよりもあまりにガチ過ぎてレイチェルが涙目になってるし。

 

 つーか周りを見渡してみると楽園過ぎるだろ……視線を下に落とせば全裸の夜空、全裸の夜空! そう全裸の夜空ちゃんが居るし左を向けば我関せずとばかりに腕に引っ付いている平家、仲良く引っ付いている俺達を羨ましそうに見ながら取り囲んでいる四季音姉、水無瀬、橘、レイチェルの四人……何故か視線はとある部分に集中気味だが気のせいと言う事にしよう。そして四季音妹とグラムの癒し枠二人は此処から少し離れた場所でぼけ~と湯に浸かっているよ。なにあのほのぼの空間! ちょっと俺も混ぜて欲しい!

 

 そして最後に自分達は無関係! 本当に関係無いので放っておいてくださいとばかりに耳と目を塞いでいる犬月と巻き込まれて困惑中の曹操。うん! なんだこのカオス空間? つーか四季音姉もそうだが水無瀬に橘にレイチェルの目がヤバい。絶対に二人きりにはさせないという鉄を通り越してオリハルコン並みの意志を感じるぞ。

 

 

「……犬月瞬。あれは、大丈夫なのか?」

 

「いつもの事っす。うんいつもの事っすね。きっと王様の事だから光だろうが雷だろうが炎だろうが喰らっても死なないんで心配するだけ無駄だよ。だから俺達はあっちを見ないようにしよう! というよりも俺……不可抗力とはいえあの面々の裸見てよく生きてるな……イキテルッテスバラシイ」

 

「……前から思ってはいたが苦労しているんだな」

 

「多分、この世界の中で一番苦労してると思う」

 

 

 自分達は無関係とばかりに仲良く談笑してるようだが助けてくれ。体感的に正妻と愛人がばったり出会っちまったような重い空気に耐えきれそうにないんだよ! 相棒に助けを求めようにもこの状況に爆笑して神器の奥底に引っ込むしさぁ! というよりもお前らどんだけ俺のこと好きなんだよ!? そこまで夜空とイチャイチャするのが気に入らないか!

 

 

「当然だね。だって私も含めてノワール相手だったら強引に迫られても喜んで股開くぐらい好きだし。ところでノワール、光龍妃の裸を見て戦闘態勢に入っているようだけど苦しくない? 今ならなんと私の下のお口に入れる事が出来るよ?」

 

「夜空とエッチした後でな。つーか気になってんだが犬月の奴、なんで鼻に石突っ込んでんだ?」

 

「私達の裸を見たら鼻血出した」

 

「マジか。殺してないとかお前ら心広すぎだろ」

 

「そもそもオイフェって人が男女分けずに裸にひん剥いたせいだしね。それに恵や花恋、志保にレイチェルは恥ずかしいけどパシリだったら見られても大丈夫なぐらい信頼してる。私も他なら兎も角、パシリなら問題無い。というよりも常日頃から男達に脳内限定で犯されてるし今更だよ」

 

 

 何事も無いかのように言ってるがそれはそれでアウトじゃね? まぁ、覚妖怪故に嫌でも聞こえてくるんだろうから仕方ないと言えば仕方ないか。つーかそれって駒王学園美少女連中全員に言える気がするぞ……グレモリー先輩は当然として姫島先輩にシスターちゃんにデュランダル使いに転生天使に黒猫ちゃんの妹にレイチェルにレイヴェル、水無瀬にヴァルキリーちゃんと続いていき平家に橘にシトリー眷属女性陣……あとはハーフ吸血鬼君辺りも妄想で犯されてそうだな。だって見た目女だし。うん、なんか笑えるぐらい数居るんだが……気のせいと言う事にしておこうか!

 

 ちなみに余談だが四季音妹は四季音姉が見せるなと言えば従うが基本的には見ても問題無く、グラムに至っては触ろうが何しようが別にどうでも良いらしい。なんという心の広さ……悪い男に引っかかったら大変だね!

 

 

「――おい」

 

 

 そんな事を思っているといきなり首を絞められた。誰にと言われたら目の前に居る女神以上に可愛い夜空ちゃんしかいない! 表情が抜け落ちたような顔をしながら的確に俺の喉へと手を伸ばしているのは見ていてかわいく思えてくる。実際可愛いんだけどね! しっかし爪と言うか指そのものを食い込ませるほど強く絞めているようだがまさか嫉妬か? もしかしなくても嫉妬ですか夜空ちゃん? 自分では無く隣にいる平家とばかり話していてズルいと思ったんですか夜空様! それだったら安心しろよ……俺の視線はお前に釘付けだぜ!

 

 だって目の前には夜空の全裸だぜ? 結構前に一誠の洋服崩壊で見て以来の夜空の全裸が目の前にあるのに他のおっぱいやら腋やらに目が行くわけがない。穢れを知らないであろうちっぱいを隠すことなく見せつけてくるに加えてわき腹や腰、お腹に夜空ちゃんの夜空ちゃんまで丸見え、そしてトドメとばかりにノワール君のノワール君を挟むふともも! この状況は夢が叶ったとさえ言える光景だ! 最高としか言えない。もしこのまま温泉エッチに発展したならばさっき負けたスカアハにさえ勝てるだろう……いや絶対に勝つね!

 

 そしてこの場の女性陣にも丸見えなんだが……ノワール君のノワール君がいつ出陣しても良いぐらい準備万端です。ただでさえ夜空のせいでヤバいのに隣の覚妖怪が指先で弄ってくるからさらにヤバい。そしてそれを見た周りの女性陣の目がヤバイの三連コンボ! これは酷いと思うのは俺だけか?

 

 

「この女神級に可愛い夜空ちゃんが目の前に居ながら覚と話しするとか……死にてぇの?」

 

 

 お前とエッチして俺達の子供を見るまでは死ぬ気はねぇな。

 

 

「アホか。少なくともお前とエッチして娘か息子産んでもらうまでは死ぬ気はねぇっての。何だ嫉妬か? おいおい嫉妬か? 安心しろよ夜空! 俺の視線は何時だってお前しか映ってないぜ! というわけで俺の細胞全てにお前の全裸姿を覚えさせたいんでこのまま見続けても良いか?」

 

「死ね」

 

 

 目の前が真っ暗になった上に激痛が走ったから多分目を潰されたんだろう。はいはい再生再生っと。

 

 

「いきなり目潰しやめろっての……たくっ、見られたくないんならタオルぐらい巻けよ。それはそれで俺は興奮するしな」

 

「別に恥ずかしくねーし。ただ……ちょっと早い、なんでもなーい! てかぁ!! ノワールからもこいつら邪魔だって言えよぉ~! さっきから見てきてウザいんだからさぁ!」

 

「そう言われてもなぁ……俺としては楽園だぜ? 右を見ても左を見ても美少女の裸が見えるし。ホントマジ最高! もっとも一番は夜空の裸だけどね!! だから四季音姉に水無瀬に橘にレイチェル、目に光を宿してください。そんな深淵のような目でこっち見ないでください怖いです」

 

「そ、そんな目はしてません! そ、それよりも悪魔……さん。あの、背中とか痛くないですか……? こ、ここに柔らかいま、枕がありますよ……? きっと凄くや、柔らかいです、よ?」

 

 

 人気アイドルが自分のおっぱいを持ち上げる姿ってかなりエロいと思うのは俺だけか?

 

 

「ぁ?」

 

「志保、表に出ようか。切り落としてあげる」

 

「……いっその事変化の術で大きくすればいいだけだ問題無しでもあれは無駄肉無駄肉」

 

 

 ちっぱい連合が圧倒的擲戦闘力を持つおっぱい相手にガチギレしたんだがスルーした方が良いな。てかそれよりも水無瀬にレイチェル、お前らも真似しようとするなっての……血が流れるぞ? 手当たり次第に掘ったとしか思えない穴に湯が入っているとしか思えない作りだから夜空の雷光一つで犬月と曹操が居る場所まで被害が行くのは確実だ。でもオナニー用に写真撮りたいから水無瀬は影の国(ここ)から帰った後で俺の部屋まで来るように。え? だって年上が自分のおっぱい持ち上げる姿って興奮するし!

 

 

「……」

 

 

 そして平家、夜空が離れた瞬間にノワール君のノワール君を触らないでください。

 

 

「――おい覚」

 

「どうしたの光龍妃?」

 

「いい加減この掴んでる奴離せ」

 

「ノワールが苦しそうだから楽にしてあげようと思っただけ。というよりもこれって私の仕事のようなものだし……光龍妃も一緒にどう? きっと喜ぶよ」

 

 

 土下座レベルで喜びますね。

 

 

「確かにこの夜空ちゃんのお尻に当たっててどうにかしたかったけどさ、毎回毎回触り過ぎなんだよ。ここまで許したつもりはねーんだけど?」

 

「――大丈夫、私って正妻じゃなくてもオッケーなタイプだし。ノワールの傍に居れるなら肉奴隷でも便器扱いでもティッシュ扱いでも良いしね。だから光龍妃の立場までは奪わないよ」

 

 

 夜空は平家を睨んだまま数秒間無言だったが特に何も言うことなく先ほどと同じように俺に体を預けてくる。なんか良く分からんが停戦協定らしきものが結ばれたようだ……どんなやり取りをしたかは知らん。ただ他の面々が血涙流しているのは恐怖としか言えねぇな……ここ最近思うんだがいったい何時から俺の眷属はヤンデレまみれになったんですかねぇ?

 

 

「割と最初からだよ」

 

 

 デスヨネ。

 

 

「……俺が言うのもあれだが良いのか?」

 

「まーコイツって私から奪うようなことしねぇし。ムカつくけど……あっ! すっげぇちょうど良いから言うけどさ――これ(ノワール)、私の(もの)だから手出したらぶっ殺す」

 

 

 その言葉と同時に遠く離れていたはずの犬月は曹操の手を取って即座にさらに奥へとダッシュした。居合わせてくれ犬月……反応速すぎじゃねぇか? てか俺のパシリなんだからいい加減主である俺を助けろよ! 夜空の一言でまた辺りの空気が重くなったんだからさぁ!!

 

 

「「「「……」」」」

 

 

 ヤバイ。空気が重い。なんか言葉では無く視線で殺し合ってるっぽいんだが……まぁ、いつもの様に殺し合いをしたら四季音姉以外は確実死ぬから比較的安全と言えば安全か。しっかし今更ながら俺ってモテすぎじゃね? なんだかんだでスルーしてたような気がするけどこの場にいる女性陣全員から好意持たれているとか男としては最高だと思う――ただし病んでるけども。やっぱりハーレム築くともれなくヤンデレ量産されるもんなんかねぇ? 暇なときにでもライザー辺りに色々聞いてみるか。だってアイツ、誰も病むことなくハーレム築いた男ですし!

 

 目の前で繰り広げられる光景を眺めつつ夜空の髪をクンカクンカしていると先ほどまで大爆笑していた相棒から龍門での呼び出しがあったと聞かされたので名残惜しい様子を見せながらこの場から離れる。決して……決して数歩離れた途端にダッシュしたとかではないから逃げたという視線を向けてこないように!

 

 

『――やっと繋がったか! おいキマリス!! お前いったいどこ……何で優雅に温泉に入ってるんだお前は!!』

 

 

 影龍王の手袋に埋め込まれている宝玉から一筋の光が上空に伸びるとデカいスクリーンみたいなものが投影された。視線を向けるとアザゼル、グレモリー先輩達、生徒会長達、ヴァーリ達、タンニーン様といつもと変わらない面々が映っていたが男性陣は「え?」と言いたそうな顔をし、女性陣は「ギャー!」と自分の目を隠し始める。男共は良いとしておい黒猫ちゃん以外の女性陣……その悲鳴の理由を是非聞かせてほしいんですがダメですか!

 

 

「だって温泉があるんだし入らないとダメだろ? いやーでもマジで助かったわアザゼル! お陰でヤンデレ達による修羅場から抜け出せた! んで? なんか用か?」

 

『なんか用か? じゃねぇぞキマリス! こっちではお前達キマリス眷属とレイチェル・フェニックスが行方不明になった以外にも色々あって大忙しだ! あと見て分かるように女が多いから下ぐらい隠せ。俺達も見たくはないものが丸見えだぞ?』

 

「隠すも何も温泉に入ってるしなぁ。別に問題ねぇだろ? 見られて恥ずかしいような鍛え方はしてないと思うし。え? もっと見たい? 仕方ねぇなぁ……ちょっとだけだぜ?」

 

『男のヌードなんざ見たくも無いわ! えぇい話が進まんからそのまま聞け! お前……今どこに居る?』

 

「影の国だが?」

 

『……何?』

 

「何って影の国だよ影の国。相棒の故郷、ケルト神話に登場する影の国に俺含めたキマリス眷属+α(アルファ)が拉致されてやってきましたー! いえーいスカアハ死ねば良いのにー! あっ、実行犯を言うと此処の女王こと頭がとち狂っている美熟女のスカアハで――だから槍生やすのやめてくれませんかねぇ?」

 

『『『『『ギヤァァァッ!?!?』』』』』

 

 

 俺の腹から槍が飛び出すのと同時に一誠達が悲鳴を上げ、何故か関係無いアザゼルの口から赤い液体が飛び出した。アザゼルに関してはそのまま倒れるかと思いきやテーブルに置いていた水を一気に飲み、そもまま何かの錠剤を口に入れてまた水を大量に飲み始めたから無事っぽい。でもなんかいつもの悪役面から年老いたジジイみたいな感じになってるような気がする……キノセイダネ!

 

 とりあえず再生再生っと。たくっ、この場に居ないのに人の腹から槍生やしやがって! 何度も再生するの面倒なんだからな!

 

 

「おいアザゼル、なんか口から赤い液体っぽいの飛び出したが大丈夫か?」

 

『天然のトマトジュースを噴出しただけだ。大丈夫だ問題ねぇ……それよりもお前さんは、いやお前さんなら問題無いか。それよりもスカアハだと? あのスカアハか!?』

 

「おう。影の国を支配する女王にしてセタンタを鍛え上げたで有名なあのスカアハだよ。まさか家にいきなりやってきて俺達全員を攫って行くとは思わなかった」

 

『それはこっちのセリフだ馬鹿野郎……クソ! 確かにお前の家からはルーン魔術の痕跡があったがまさかスカアハ本人がやるとは思わねぇっての! そもそもこの地にやってきたら俺達が気付いてもおかしくねぇの全く気付かなかった!』

 

『ゼハハハハハハハハ! あの若作り系キチガイクソ女を舐めんじゃねぇぜ! その気になればそっちにいるドライグにアルビオン、ヴリトラにも気づかれる事無くこの影の国へご招待できるからなぁ! 無駄に年寄りだからそれぐらいは楽勝も楽勝よぉ! だから悔しがる必要はねぇぜアザゼルちゃんよぉ!』

 

「ぶっちゃけ俺と夜空の二人に圧勝するぐらいだしな。多分だがルーン魔術の痕跡はわざと残したと思うぜ? あーと辿り着けるものならやってみろって感じか?」

 

 

 その言葉に再び絶句したようだがこんなのまだまだ序の口だぜ? だって本当に頭おかしいからなあの女!

 

 

『……影龍王。一つ確認したい事がある』

 

「何だヴァーリ?」

 

『キミと光龍妃が負けたと言っていたが本当か?』

 

「……本当だよ。漆黒の鎧状態の俺と金色の鎧状態の夜空で挑んで惨敗した。正直、二天龍と地双龍が協力して挑んでも普通に勝つだろうよ」

 

『そうか。ハハッ! ケルト神話のスカアハは表舞台に出ないが実力はトップクラスという噂があったが本当だったみたいだな。機会があれば戦ってみたいものだ』

 

『止めろヴァーリ。スカアハには関わるな……あの女はクロムとユニアを足して百倍したとしても足りないほど頭がおかしい女だ。もし影の国へ向かうと言うのであれば残念だが私はもう二度とお前に手を貸さん。絶対にだ! 関わりたくないでござる!!』

 

『俺もだぜ相棒。確かにスカアハは見た目だけならば美人……美人なんだが中身はアルビオンが言ったようにとち狂っている。もしアイツが俺達の目の前に出てくるようならば……ぼくはおっぱいドラゴンのどらいぐ! として赤の他人の振りをしてでもヤツから逃げるぞ』

 

『当然だな。我もあの女とは関わり合いになりたくもない。もしも出会ったならば即座に我が分身を連れてこの地を去り、生涯を終えるまで表舞台から身を引くだろう。いやむしろ今からでも遅くはないか……ソーナ・シトリーよ。済まないが我と我が分身は今日この日をもってお前達の前から姿を消す。文句があるならばスカアハにでも言っておけ』

 

『……否定したいが事実だからな。たとえ邪龍であろうと自ら進んで影の国へ向かうような真似はせん。それほど関わり合いになりたくはない女だ』

 

『ざまぁ、本当にざまぁだねクロム。これが愉悦って奴かな? お前の不幸でトマトジュースが美味いよ。とりあえずイッセー先輩達の下にあの女が来ないようにそのまま生贄になってろバーカ』

 

『とりあえず色々言いたいことあるけどなんか普段のギャスパーと違うぞ!?』

 

 

 なんという事でしょう。天龍に龍王が逃げる気満々に加えてハーフ吸血鬼……相棒曰くバロールが凄く良い笑顔で笑っています。流石ケルト出身の魔神、相棒と良く似てるわ。だって笑い方とかそっくりですし! ただあまりにも普段と違い過ぎて先輩達が言葉を失ってるみたいだが俺達は悪くない。全部スカアハが悪い。

 

 

『おいおいバロール。いきなり表に出てきて面白れぇこと言うじゃねぇの! テメェこそスカアハに拉致される可能性極大だろうが!!』

 

『だろうね。だがあの女の性格からして今はお前の宿主にご執心なんだろう? そうでなければ連れ去るなんて真似はしないはずさ。それに忘れたとは言わせないよ? お前達の行いのせいでヴァレリーが今も目を覚まさず寝たきりなんだ。これぐらいは言わせてもらわないとね』

 

『……ちっ、お見通しか。大正解だぜバロール! なんでか知らんがスカアハは宿主様にご執心でなぁ……このままだと一生出られんかもな』

 

『ワイングラスが今ほど欲しいね。今日ほど良い日は無いよクロム。ただ童貞でも魂でも何でもいいから捧げてお前以外をこっちに返してもらう様にお願いしなよ。尊くも無い犠牲で全て解決さ』

 

『ゼハハハハハハハハハハ!! 帰ったら覚えとけよバロール。この()と宿主様がテメェを男に抱かれてないと生きていけねぇ体にしてやるからよ!』

 

『二度と動けないようにお前の時間を止めてやるからその願いは叶わないよ』

 

 

 相棒がマジギレ状態になったのは良いけど巻き込まないでください。まだ俺童貞なんです! 男で童貞喪失はしたくないです! せめて夜空を抱いてからにしてください本当にお願いします! い、いや先輩方……指の隙間から男もいけるんだって感じの視線を止めてもらえません? 仕方ねぇんだよ! だって平家のせいで俺の性癖はかなり歪みまくってるんだしさぁ! ハーフ吸血鬼レベルの男なら……普通にいけるわ。多分これ相棒の影響かどうかは知らんがいけるいけないで言うと普通にいける気がする。あっ、なんか相棒がニッコリと笑った気がする。

 

 そんなカオスな空間になりつつあったのをバッサリと断ち切ったのはレイヴェルだ。俺の裸を見ないように自分の手で顔を覆ってはいるが指の隙間からコッソリと覗いているのは気づかないフリをしておこう……だって俺様紳士ですし!

 

 

『き、キマリスさま……れ、レイチェルはぶ、無事なのでしょうか……?』

 

「無事だぜ。さっきまでクロウと殺し合ってぶっ倒れてたけど今は……夜空相手に口で喧嘩売ってるな。すげー元気。なんかもうおっぱい揺れまくりで目の保養になるわ」

 

『その光景が見たいんだが!!』

 

「見ても良いが夜空も居るからさ、見た瞬間にお前ら全員殺すけど良いか?」

 

『すまんなんでもない!』

 

『……待て待て。クロウってのはあのクロウ・クルワッハか?』

 

「大正解。スカアハと殺し合う前にクロウ相手に眷属総出で殺し合ったんだよ。いやーマジで強いなアイツ! ふっつうに見逃されたわ」

 

『こ、ころしあい……さいきょうのじゃりゅう……きゅー』

 

『イッセーさん!? レイヴェルさんが倒れちゃいました!!』

 

 

 なんか自分の思考が追い付かなかったのかコントのように倒れたな。まぁ、黒猫ちゃんの妹ちゃんやらが支えたから怪我は無いだろうけど。でも確かに倒れたくもなるか……いきなり行方不明になったと思えば影の国に攫われた挙句、最強の邪龍と殺し合ったなんて聞かされれば誰だって気絶するわ。もっとレイチェル本人は俺の女王になるとか何とか言ってやる気だったけども……だ、誰の影響だろうねー!

 

 

「とりあえずレイチェルに関しては何とかしてそっちに返すから安心しろ。んで? 俺達の他になんかあったのか?」

 

『……その話題に行くまでかなりかかった気がするぞ。バアル家初代当主が何者かに殺害された……といっても十中八九、八岐大蛇だろう。聖遺物の炎なんざそいつしかいねぇしな』

 

「あららご愁傷様。でもサイラオーグ的には助かったんじゃねぇの? なんでもバアル家は引退したそいつの言う事しか聞かないとかなんとかって話だったしさ。これで好き勝手出来るんだし八岐大蛇に感謝しても罰は当たらねぇと思うぜ?」

 

『言うと思った。まぁ、それに関してはこっちも同意見だ。大王派のトップが居なくなったことでサーゼクス達も今以上に動きやすくなる。サイラオーグの前では言えないけどな……ただ疑問点が残っている。まずはどうやって八岐大蛇はバアル家初代当主の所まで誰にも気づかれずに辿り着けたのかだ。ぶっちゃけると光龍妃、いや邪龍達が絡んでるんじゃないかと思ってるが……どうだ?』

 

「さぁ? 夜空が何しようと俺はどうでも良い。つーか俺達が此処に攫われてから一直線で此処に向かったらしいから八岐大蛇の手助けなんざ出来ねぇと思うぞ? 何だったら聞いてみるか?」

 

『やめろ。お前は俺達に死ねと言うか』

 

「……ちっ」

 

『その舌打ちは聞かなかったことにするぞ。八岐大蛇を探そうにも行方が分からん以上、どうする事も出来ん……が恐らく近い内に俺達の前に現れるだろう』

 

「なんで?」

 

『紫藤イリナの父親がこっちに向かっているからだ。イッセー達の話じゃ明確な殺意を抱いていたらしいからな……それを狙って襲撃してきてもおかしくは無いだろう』

 

「ふーん。まぁ、頑張れ頑張れ。俺達には関係無いからそっちで何とかしろよ? あーそれとアザゼル……一つ聞きたいんだが良いか?」

 

 

 通信を切る前に気になっていたことを聞いてみる。あの女が得意げに言っていたあの言葉……落ち着いたら気になって仕方がねぇんだよ……! なんせハーデスが知っていた夜空すら知らない秘密かもしれないからな。

 

 

『なんだ?』

 

「――初代ルシファーとリリスが人間に何かしたって話、聞いたことあるか?」

 

 

 殺し合う前にあの女の『人間と言うものはルシファーの小僧とリリスの小娘によって手が加えられておるせいか成長幅は妾達以上だからな』とリゼちゃんの『う~ん、ママンが絡んでるから長生きすんじゃねぇかなぁ』という言葉、そしてハーデスの『そこの娘すら知らぬ真実、それを教えてやろう』という言葉は無関係とは思えない。さっきまでは夜空と共闘だヒャッハー状態だったからスルーしてたけどいざ落ち着いてみるとあれ? もしかして……? って感じになる。

 

 多分、この言葉通り初代ルシファーとリリスは人間に何かをしたのをハーデスとリゼちゃんが知った。そしてそれは巡りに巡って夜空……いや今を生きる人間に何かしらの影響を与えた可能性がある。問題は何をしたかだが……リゼちゃんとスカアハは確実に知ってるだろうがそれをアザゼル達が知ってるかどうかだ……!

 

 

『……いや、聞いたことが無いな。おいキマリス! お前……そこで何を知った?』

 

「いや、何かを知ったわけじゃねぇよ。知らねぇなら良いや、通信切るぜ」

 

『答えろキマリス!!』

 

「あっ! アザゼルー! なんか此処に曹操が居てー聖槍盗られちゃった! それだけ伝えとくぜ!!」

 

『――ゴハッ!?』

 

『ギャー!? 先生が血を吐いて倒れたー!!』

 

 

 口から大量のトマトジュース(仮)を吐き出すアザゼルを見てから龍門を閉じる。

 

 

「……なぁ、相棒」

 

『どうした宿主様?』

 

「スカアハに勝つぞ」

 

『――ゼハハハハハ。当然よぉ! 負けっぱなしは()も嫌なんでなぁ!!』

 

 

 何を知っているか分からないが夜空が関係するなら意地でも聞きだすだけだ。その内容によっては……俺は冥界を滅ぼすかもしれないがな。




「犬月瞬に対する好感度」
四季音花恋・・・裸を見られても問題無いが襲ってきたならば潰す。
平家早織・・・裸を見られても問題無いが襲ってきたならば切り落とす。
水無瀬恵・・・裸を見られても問題無いが極稀にラッキースケベ展開が発生する。
橘志保・・・裸を見られても問題無いが襲ってきたならば狐が電撃を放つ。
四季音祈里・・・裸を見られても問題無いが花恋がダメと言うならグーパンを放つ。
グラム・・・見ても良いし襲ってきても良い。普通にどうでも良い態度。
レイチェル・フェニックス・・・裸を見られても問題無いが襲ってきたならば燃やす。

結論、犬月瞬は勝ち組。

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