123話
これは夢なんだろう。
黒、黒、黒と辺り一面がその色で染められている世界が見える。黒色……いや影での作られた城の内部、豪華な装飾すらない真っ黒いだけの部屋を俺は真上から見下ろしている。ただしかしそれだけだ……見えるだけで体を動かせるわけでも何かに触れるわけでも無く、ただ
だからこんな風に無理やり神器内に意識を送られる切っ掛けらしい切っ掛けは無いと言っても良い。しかし起きてしまった以上は仕方がないので目が覚めるまで楽しむとしようかねぇ? なんか面白そうだし。
《我らが悪魔が宿敵である女王と決着をつけるようだ》
上から下まで真っ黒のローブを着た誰かが突如現れ、胡坐をかきながら先の言葉を言った。顔は見えないが声からして男、真上から見ている俺からすれば歴代影龍王の内の誰かだろうという認識だ。
《や~れやれ、ようやくかよ。待たせ過ぎだって話だ》
数多の屍の上で座り込んでいる男が声を上げる。こちらはローブこそ着ているが顔を見せている。しかし表情はまるで削り取られたかのように黒い何かで覆われており分からない……が俺はこいつを知っている。確か俺が歴代共を自分の呪いで染めようとした時に一番早く同意した奴だ。
ソイツは趣味の悪い屍の山という椅子に座り込み声が荒々しく上げて周りに問いかけ始めた。
《なぁおい? お前らもそう思うだろ?》
《私としてはもう少し先かと思ってたけどね》
《左様。次々と起こる……なんと言ったか? そうイベントという奴だ。それがある故にまだ起こらぬと思っておった 》
《我らが悪魔が決めたのなら異論は無い。それともアンタらは反対なのか?》
《まさか。むしろ大賛成してるわよ。ようやくあの女王を跪かせる事が出来るんだもの》
《反論などあるはずが無かろう。我らが悪魔が決めたのならば我らはそれに付き合うのみ》
男、女、少年、少女、老人と影龍王の手袋を宿していたであろう者達が次々と現れる。そのどれもが真っ黒いローブを身に纏い、表情が黒い影で塗りつぶされている。それらが現れた事を見た屍の山に座った男は呆れた声色で話し出す。
《反対だの賛成だのくっだらねぇ。殺したいなら殺す、犯したいなら犯す、食いたいから食う、寝たいから寝る。俺達の存在意義なんざそんなもんだったろ? アレがやるっつうなら俺はやりたいようにやる! それで十分だろうがよ 》
《然り。我らは各々がやりたいようにやる事を我らが悪魔より許されただろう。ならその通りにするだけの話。それとも臆したか?》
《それこそあり得ない。かの女王との決着は必要不可欠な事だ、逃げ出すくらいならばこの
《その選択は間違いではない。現に我らはそれ
腕も動かせず、足も動かせない俺は会話を聞くことしか出来ないが……まさか俺を呼んだ理由ってそれか? マジかお前ら……いきなりなにやってんの?
《それこそ決まってんだろ。やりたい事をやる、全てはこれなんだよ。今さら俺達が何かした程度で強くなるんならとうの昔にやってんだろうが? アレの勝利を願うんなら俺達がやりたいようにやれば良い! 今から楽しみだぜ……あの強がってる女が屈服する瞬間! 女は男に勝てねぇという事実! その全てを教え込めるんだからよぉ! 》
《然り。此処に居るのは――代目のようにどうしようもないクズしか居ない。我ら全てを受け入れた
《勝てるか勝てないかじゃない。勝つんだよ、僕達は。そもそもそれしか目指してなかっただろう? どうせならそんな当たり前な話じゃなくてもっと先の話をしようよ。何の話かって? ハハハ、あの女王の調教する事に決まってるだろう? あの女王って絶対尻穴弱いと思うからそこを重点的に調教するように
《言わなくても我らが悪魔なら既に攻める事は確定している。あの女王は尻が弱点だろうからな》
《見るからに弱そうよね、尻穴》
《うむ》
《一度その快感を味わえば即堕ちするだろうな》
うん、俺もそう思う。
《お前達は何も分かっていない!
《言われなくても我らが悪魔なら既に実行まで秒読み状態だ。もっとも一番手はあの鬼だろうがな。むしろそうするべきだと伝えるべきだ》
《生やされた鬼が自分を慕っている鬼を犯す。最高という奴だな》
《触手はどうする?》
《あの
《ならばよし》
《お前ら女神の血シリーズに影響されただろ》
まぁ、そもそも俺の呪いで染め上げたからなぁ。影響されても仕方ないネ!
《早く覚妖怪を屈服させたい》
《そもそもあれはもう屈服したと言っても良い状態だろうが》
《あのアイドルとAV堕ちプレイを――》
《既に我らが悪魔のやりたい事リストに入っている》
《あの魔剣をメス堕ちさせたい》
《既に我らが悪魔のやりたい事リストに入っている》
《保険医といけないプレイを――》
《既に我らが悪魔のやりたい事リストに入っている》
《バロールをメス堕ちさせるべきだ》
《マイクロビキニを着せたのだから遅かれ早かれ必ず行うだろうな》
《あの不死鳥姫を調教したい》
《既に我らが悪魔のやりたい事リストに入っている》
《母娘丼》
《必ずやってくるから安心しろ。なんならおかわりもあるぞ》
そこは否定してくれませんかねぇ? 俺もそのイベントは絶対に発生するだろうとは思ってるけどそこは否定してくれませんか? あとツッコミご苦労様。
《どいつもこいつもエロ系しか頭にないのか? やりたい事と言ったらまず第一に殺戮だろうが。悪魔は殺す、天使も殺す、堕天使も人間も獣も神も例外なくだ! 殺して殺して殺しまくって歓喜の声を上げようぜ!》
《他の奴らの気持ちも分かるわよ? だって
《一緒にしてもらっちゃ困るな。そんなアホらしい理由で殺されたのは影龍に唆されて堕ちた元善人共だけだろ? 俺は他の神滅具使いとの殺し合いの果てで死んでんだ。叶うならばあの狗とはもう一度殺し合いてぇな》
《あの狗か。確か――代目はアレの保有者に敗北していたな? 安心するが良い、我らが悪魔ならば必ずやあの狗相手にも勝利するだろう》
《ヴリトラとも殺し合いたいものだ。あれほどの素直な欲の持ち主は中々居ない》
こっちはこっちで殺戮系の話題が飛び交っている。流石俺の先輩方、頭がおかしい。改めて思うが俺って良くコイツらを呪いで染め上げれたな……ま、この程度なら別に嫌悪するわけじゃないから問題無いけども。だって生きているなら誰だって思う感情を言ってるだけだしな。
《それで良い。あぁ、それで良いんだよテメェら。堅苦しい空気よりもこっちの空気の方が
数多の屍の上に座る男は真上……つまり俺を見て――
《なぁ、後輩。俺達は俺達で好きにやるからよぉ、テメェも好きに生きろや。そんで俺達をもっと楽しませろ。お前は俺が心の底から従っても良いと思った男なんだからな――あと腋よりも胸だろばーか》
――影で削り取られた顔で静かに嗤った。
◇
「……いや腋だろ」
いつもの朝、見慣れた天井が視界に映る。普段あまり夢は見ないような気がするが珍しく夢を……しかもとびっきり良い夢を見た気がする。しっかし歴代の奴ら、滅茶苦茶はしゃいでるなおい! 俺が夜空と決着をつけると聞いて各々出来る事を探すとか……そこまで親切だったっけ? ありがたいような気がするけど俺としてはお前らじゃなくて夜空の夢が見たかった。具体的に言うとエロエロイチャイチャ系の奴な!
「影の国で散々したくせに何を言う。あとおはよう」
「あんなのイチャイチャの内に入らねぇっての。つーか珍しいな? お前がこんな早起きするなんてよ。そしておはようだ」
俺の左腕に抱き着くように寝ている平家が若干眠そうな目で俺を見つめてくる。コイツがベッドの中に居ること自体は別段驚くようなことでもない……というよりも昨日は争奪戦に完全勝利した平家を引き連れてエロゲして眠くなったからそのまま一緒に寝たしな。そもそも平家相手にゲームを挑むこと自体が無謀だぞと発案者の橘に後で言うとして――右腕が滅茶苦茶気持ち良い件について。
チラリと右腕を見るとすーすーと寝息を立てているレイチェルが居る。パジャマ姿で俺の右腕を絶対に離さないという強い意志を持って抱き着いているのだろう……平家には無いそのおっぱいの感触が非常に素晴らしい。最高だね! 季節は冬だというのに薄めのパジャマと言うのもまた良い! まぁ、それはそれとしてなんで居るんだ? 確か争奪戦という名のゲーム大会は平家の圧勝だった気がするんだが?
「お姫様達だけで潜り込み券を賭けてゲームしてたみたい」
「なるほど、それに勝ったのはレイチェルというわけか」
「協力するフリをして普通に裏切りとかあったから凄く醜い争いだったね。知りたいなら話す――うん、後で話してあげる」
そんな……そんな面白そうな事を黙ってろとか言うわけないだろ。とりあえず昼飯辺りに頼むわ。
「……きま、りす、さま……?」
平家と話しているとレイチェルが目を覚ました。寝起きの美少女ってなんか……良いよね! 多分歴代の何人かは同意してくれる気がする! まぁ! 俺は腋こそ至高だと思ってますしぃ! 夜空の腋が一番素敵だと思ってますからぁ! おっぱいの魔力には負けませんけどね!!
「おはようさん」
「おはよう……ございます……」
もぞもぞと右腕に抱き着く力が強まった事により俺は一つの考えに至る。
やっぱりおっぱいも良いよね!
「即落ち乙」
「仕方ねぇだろ。むしろこれやられて即落ちしない奴なんざヴァーリぐらいだぞ」
まぁ、あの戦闘狂でラーメン好きなクソイケメン白龍皇様はそもそも女と一緒にベッドの中に居ること自体ないだろうが。そんな事が起きてたらあの黒猫ちゃんが美味しく頂いてるだろうし。
そんなこんなで今日は終業式なので三人仲良くリビングへと向かう。途中、平家がレイチェル相手に卑しいだの無駄な努力乙だの身体使っても光龍妃に勝てないだのと煽りのような何かを言っては仲良く喧嘩してたのは言うまでもない。うーん! これだよこれ! 影の国に向かう前に起きてた日常的風景! そうこれなんだよな! 流石に朝っぱらからヤンデレ系イベントは起きるわけないし今は水無瀬が作る朝飯でも食べて夜空との決戦だけを考えようかねぇ。
「あっ! おはようございます♪ 悪魔さん♪」
初っ端から満面の笑みにも拘らず目に光が無いアイドルと出会ったんですけど?
「おはようさん。たちば――シホダケカ?」
「はい♪ 花恋さん達ももうすぐ起きると思うので悪魔さんは先に座っててください。今、水無瀬先生がご飯作ってますから♪」
あのー滅茶苦茶怖いんですけどー! 声のトーンは普通、笑顔も非常に素晴らしいのに目に光だけ無いんですけどー! あとなんか隙見せたら食われそうな感じがするんですけどー! おかしいな……クリスマスにはみんなのアイドル橘志保が一日限定で復活するというのに今のままではファンの子達が泣いてしまいますよ! しかも今回に限っては鬼や妖怪共が「しほりん居る所に我ら有り!」とか何とか言って親衛隊もどきするというのに……まぁ、この状態でもあいつ等にとってはご褒美か。
しかしなんでまぁ……こうなってんだ?
「ノワールと光龍妃の仲を改めて理解したからこそ焦ってるんだよ」
「マジか? 理解も何も俺の眷属になる前から分かってたと思うんだがなぁ」
「……女性と言うものは頭では理解できても心は理解できないのですわ。えぇ、私も志保さんと同じ気持ちですもの」
頭と心の両方で理解してくれませんかねぇ? あとレイチェル? 目に光を宿してくれません? 平家の煽りに屈したらダメだぜ!
そんなこんなで起きてきた四季音姉妹にグラム、犬月と合流し水無瀬が作った朝飯を食べる。白米に味噌汁、おかずが何点かという一般家庭ならば至って普通な和食だ。テレビのニュースを見ながら食べ続けるが流石水無瀬、俺好みの味付けだ……橘やレイチェルが作る飯も美味しいし俺好みの味付けになってきてるけど俺としては水無瀬が作る飯が一番だな。
「あー先に聞いとくが終業式終わった後、なんか予定有る奴いるか?」
俺の質問に対して犬月達はそれぞれ特に無いと返答してくる。まぁ、分かりきってた事だから問題無いとして……おい犬月? お前目が死んでるけど大丈夫か? まさか今の状況で心にダメージを負ってるんだったらもう諦めろ。うん……諦めろ! 大丈夫だって! ただ平家とグラムと四季音妹を除いた女性陣の目が狩人になってるだけだからさ! いつもの事いつもの事!
「……あのさ、その捕食者みてぇな視線止めない?」
「悪魔さん? 何を言ってるんですか?」
「にしし~あっさかぁ~ら~へんなこと~いってるぅ~このかわいぃおにさんがぁ~そぉ~んな怖い目をするわけないだろう?」
「最後だけ素に戻るんじゃ――ハイスイマセンダマリマスアーゴハンオイシイー!!」
屈するな犬月! 負けるな犬月! お前が最後の砦だ!
「ノワール君、朝から変なこと言わないでください。それよりも予定を聞いてどうしたんですか?」
「え? 普通に思った事聞いただけなんだが……まぁ、良いか。いや影の国から帰ってきた時にも言ったがクリスマスに夜空と決着つけるからその打ち合わせ的な? まぁ、話し合い?」
「……キマリス様の様子から分かっていましたけれど本当に決着を付けますのね」
『ツまり我ラの出番トいウ事だな! ヨカロう! わレらを思うゾンぶん使うが良イ!』
「いや使わねぇけど? てかなんで使うと思ってんだお前?」
『ナヌぅ!』
「はいはーい、グラムは飯でも食ってろーっと。あの王様? 打ち合わせって一体何するんすか? 特に俺達が準備するようなことってないと思うんけど?」
「ノワールと光龍妃が戦ってる最中に邪魔者が来たらどうなるか予想してみれば?」
「よーし分かった! 分かったっすよ王様! 全力で邪魔が入らないようにしますね!」
平家の言葉で犬月や他の面々……いや四季音姉は既に知ってるし隣に座っているレイチェルは察してたみたいだな。ぶっちゃけ平家の言う通り、俺と夜空が殺し合ってる最中に乱入してくる奴が居たら……どうなるかはお察しだ。乱入者が悪魔だった場合は普通にキマリス領とフェニックス領以外の場所を消し飛ばすし他神話体系、特にギリシャ辺りだった場合は即戦争するつもりだし。
もっとも寧音に八坂、ぬらりひょんが配下を連れて決戦場所である地双龍の遊び場を囲むらしいから乱入できるもんならしてみろと言えるけどね。そもそも平家が居る以上、乱入する前に分かるだろう……相変わらず便利だなコイツ。
「いつでもどこでも色んな意味で使える女だよ。もし妖怪たちの中に邪魔しようとする奴が居たらベガルタで斬っとく」
いやお前、単にベガルタ使いたいだけだろ……頷くなし。
影の国内でクロウ・クルワッハと殺し合った際に愛刀が破損したのは記憶に新しい。俺が新生亜種禁手に至り、どうにかこうにかこっちに戻ってくる時にオイフェから手土産感覚で渡されたのが「ベガルタ」という一本の刀。本来は「剣」だったようだが神滅具に封じられる前の相棒がケルト神話の英雄、ディルムッドと殺し合った時に破損させたようでその残骸をオイフェとウアタハたんが「刀」に作り直したようだ。
相棒レベルの硬さで無ければ刃こぼれしない超頑丈とのことで実際に四季音姉がぶん殴っても壊れなかった……それを破損させた生前の相棒は凄いとしか言えねぇな。ちなみにディルムッドさんだが相棒曰く喧嘩売られたからぶっ殺したらしい……ど、ドンマイ?
「あれ凄いよ? 花恋相手でも壊れないし大抵の相手なら軽く振るだけで真っ二つ……前まで使ってた刀より耐久力と切れ味が何倍も上という超高性能。最高だね」
『ゼハハハハハハハハ! そりゃぁウアタハたんのお力が入ってるしなぁ! ベガルタはモラルタに比べて破壊力がねぇがさおりんが使うならそれで十分ってもんよ! そもそもモラルタはデュランダル並みに扱いがムズイしなぁ』
「あーなんかオイフェが波動的なもんバンバン放ってたな。あれモラルタかよ……」
『おうよ! ゼハハハハハハハハ! 宿主様はぐらむんがあるから必要ねぇだろうがな! 借りようと思えば借りられると思うぜ? その代り……分かってるな?』
スカアハが修行だヒャッハーするんですね、分かってます。
そのまま適当な雑談をしながら食べ続ける。そして食べ終えた後は四季音姉妹とグラムを残して学園へ登校、終業式も特に何事も無く終わる事になった。ただ残念な事に元士郎に関しては八岐大蛇との戦闘で負った傷が完治していない為、今日は出席していない。周りには見知らぬ誰かを庇って怪我したという美談になっていたが……ま、まぁ! あながち間違いでも無いね! だって転生天使ちゃんの母親とか俺も知らないし!
そんなどうでも良い事を思いながら長いようで短かった二学期が終わり、最後になるかもしれない冬休みが始まった。
・歴代影龍王
当初は覇を求めていたが現影龍王であるノワールがそれを受け入れた上、自身の欲という名の呪いで染め上げた結果、エロ系や闘争系や殺戮系など幅広い欲に目覚めた集団。
最近の日課は眷属女性陣相手に行うエロ系談義と強者との殺し合い談義、あとついでに魔法使いの魂相手に色々とエグイ事をして怨嗟の声を上げさせる事。
各々が好き勝手にするため統率は取れそうにないが現光龍妃である片霧夜空に対しては「尻が弱点」という共通認識を持っているらしい。
今回より「影龍王と光龍妃」編が開始します!
観覧ありがとうございました!