「みんなぁ~! 今日は来てくれてありがとう!!」
「うぉぉ! しっほりぃん!!」
隣で犬月が吼える。それは犬のようにワンワン鳴くものではなく目の前のステージで煌びやかな衣装を身に纏い観客である俺達に向かって笑顔を振りまいている天使――もといアイドルに向かって全力で叫んでいる。いや本当に来てよかったわ……球技大会とか堕天使襲撃とかその他諸々の疲れなんて一気に吹き飛ぶぐらいの笑顔だわ。マジで笑顔最高、笑顔がもう神でいいよ。あんな笑顔が神だったら誰も勝てないし戦争する気すら起きねぇだろ悪魔的に。
ステージで全身全霊、一生懸命歌っている橘志保から対価として貰ったチケットで会場入りをしたわけだがその場所は何と数人しか入れないらしい超VIP席みたいな場所だった。確かネットで見た限りじゃ当選率が凄く低かった気がするんだがそれを二枚くれるなんてマジ女神……なんだけど、そのさ、うん。いやイベントは楽しいんだよ? 志保と他数人のアイドルがユニット組んで歌ったり、ソロで歌ったりと見ていて凄く楽しいさ! でもな――
「どうした影龍王? ステージを見ないのか?」
――なんで此処に白龍皇がいるんですかねぇ?
「こんな場所に一生縁がないテメェがいるから集中できないんだよ」
「それはすまないな。確かに何故ステージで歌っているだけでこれほどの歓声が起こるのか今も理解できないが終わるまでは何もするつもりはない。俺の事は空気とでも思っているといいさ」
「テメェみたいなトンデモ野郎を空気に思える奴がいたら見てみたいね」
「光龍妃は出来ていたぞ?」
「あれは規格外だからノーカンだ」
ダーク色が強い銀髪に蒼い碧眼、世の男が羨むほどの容姿のイケメンの名はヴァーリ。二天龍の片割れである
「とりあえずイベント終わったら付き合えよ」
「構わない。俺もキミに用事があったからね」
「ならちょうどいいな。付き合いの対価は殺し合いでどうよ?」
「それは魅力的だな」
なんとも微妙な空気の中、イベントは滞りなく進んでいき現在は握手会の真っ最中。志保を含めた数人のアイドルが横一列に並んで俺達観客は好きな子の所に並び今か今かと握手が出来るのを待っている。本来ならば憧れのアイドルと触れ合えるという事でワクワクドキドキな声を上げる奴が多いと思うが――そんな事は全然なかった。
「握手会というのはこれほど静まり返るものなのか?」
「自分の容姿を少しは気にしろ。テメェみたいなイケメンが此処に居る事自体が罪なんだよ」
「それ王様も当てはまるっすよ……他の奴らからしたら二人ともイケメンの部類っすからね」
「ふむ……よく分からないな」
「一生理解できねぇと思うからさっさと忘れろ」
どうやらヴァーリほどのイケメンがこの場にいるのが不思議でならない他の観客たちは一斉に俺達の方を見ている。それはアイドルの子達も例外ではなく、あっイケメンだ! みたいな視線で見つめてきている……イケメン死すべし慈悲はねぇ。マジで話し合い終わったら殺し合おうかな。
犬月、俺、ヴァーリの順で志保の列に並んでいるがかなり目立っているのは確かだ。なんせ他の普通の容姿から言っちゃあれだがキモイ容姿まで幅広い奴らがいるからな。アイドルもヴァーリみたいなイケメンなら喜んで握手するだろうけど他の奴ら相手はちょっとキツイだろうに……志保様すげぇな。普段は落ち着いているのに今はアイドルとしての顔で思いっきり笑顔で握手をしている。俺なら無理。まぁ、そんな事は置いておいて目の前の犬月はかなり警戒しているけど当たり前だ……こいつが白龍皇だって知った時は奇声を上げかけたぐらいだ。普通は思わないよな……そんな存在が
「今日は来てくれてありがと♪ 応援よろしくね!」
「――やっべぇマジ可愛い。うわやっぱアイドル最高だわ!」
俺の前に並んでいる犬月が志保と握手をしてテンションが上がっている。こいつやっぱり犬だよな……犬っころとか呼ぶとキレるけど俺の目には尻尾がブンブン振っている姿が見える。そして順番は俺の番となり一歩前に出て向かい合うと――
「来てくれてありがとう! 志保、すっごくうれしいよ!」
――やべぇ、マジ可愛い。うちの酒飲みとか引きこもりとか規格外とかこの可愛さを見習ってほしい割とマジで。ホント可愛い、笑顔可愛い、アイドルってやっぱり最高だな! そのまま握手をすると掌には女の子の柔らかい手の感触と紙のような何かの感触がある……なにこれ? 握手をしながら志保を見ると思わず惚れちゃいそうなほどの笑顔で返された。はい可愛い。
握手を終えてその場から離れた後、手の中にある紙を開くと今日の夜に呼んでも良いですかと言う内容と連絡先と思われるものが書いてあった。そういえばお得意様なのに連絡先交換してなかった……いやその前に現役アイドルからのお誘いだよ、お兄さん嬉しいね。これファンの方々に知られたら殺されるんじゃなかろうか? 襲ってきたら逆に殺すけど。
「犬月、俺はこれから白龍皇と色々やるからさっさと帰れ」
「う、うっす! 王様もお気をつけて……白龍皇ってかなりやばいんしょ?」
「あぁ。才能面なら俺は背伸びをしても勝てないと思えるほどの天才だ。正直、殺しあったら勝てるかどうか分かんねぇな」
「……なんかあったら呼んでください」
「おう」
心配そうな犬月を家に帰らせて俺はアイドルとの握手が終わったヴァーリと共に適当な飲食店に入る。その前に言わせてほしいんだけど銀髪碧眼のイケメンであり現白龍皇がアイドルの握手会に並んでいるという事実に少し笑いそうになった。写メ撮っておけばよかったかなぁ。
「――で? お前みたいな奴がアイドルのイベントに何の用事があってきたんだよ? 奢ってやるから素直に言いなさい」
「それはありがたいな。回りくどいのは苦手でね、単刀直入に言わせてもらおう――橘志保が保有する神器にアザゼルが興味を示していてね。それの確認に来たんだ」
「アザゼル……
「一応ね。アザゼルには昔から世話になっていて頼まれたら断れないんだ。光龍妃に関しては強い相手と戦いたいというのはドラゴンの本能だろう?」
「まぁな。んで?
「独立具現型の神器があの場に居たと言うのなら満足は出来たかもしれないな」
「……あいつの神器の特徴まで知ってるのかよ。堕天使陣営は志保をどうする気だ? 事と次第によっては俺も黙ってねぇぞ? 一応お得意様なんでな」
「なるほど。影龍王も彼女に目を付けていたというわけか。眷属に加えるのかな?」
「そうだと言ったらどうする?」
「どうもしないさ。アザゼルも無理やり仲間に引き入れるような事もしない、それに影龍王が狙っているというなら手を引くだろう。元々珍しい神器を持っていたから興味を持っただけだろうし俺が此処に来たのも独立具現型神器の持ち主には何かと縁が合ってね。どんなものなのか見て見たかっただけなんだ」
こいつが下らない嘘を言うとは思えないから恐らく本心だろう。たとえラーメンに並々ならぬ拘りを持っているとしても神器や戦闘に関しては素直すぎるからな。その辺は一回会ったっきりの俺でさえ分かるぐらいにな……だからこそ何でラーメンに拘りを持ってるのか理解できない。夜空から聞かされた時は素で驚いたぐらいだぞ――つかなんで夜空とラーメン食べ歩きデートしてるんですかねぇ? 殺されたいんですかねぇ?
それは置いておいて神器が見たかったと言ってるが多分あのオコジョ、楽屋の中にいるんじゃねぇかな? 流石にイベント中も一緒とか無理だしな。
「影龍王が狙っているならばこちらからは手を出さないことを言っておこう。そうだ、面白い事を教えておこうか」
「あん?」
「最近の神父殺し、あれを行っているのははぐれ悪魔祓いだよ。コカビエルに唆されたのか自発的に協力しているかは分からないがね」
「コカビエル……おい、この町で何をしようとしてやがる?」
「先に言っておくがアザゼルは今回の件には関与していない。
「――戦争か。悪魔と天使ともう一度殺し合いをしようって事かよ」
「大正解」
なるほど……だからエクスカリバーを持った信者がこの町にやってきてたってわけか。コカビエルほどの存在が魔王の妹が治めるこの町でデカい事をすれば必ず魔王の耳にも入る、それは即ち戦争を仕掛けるという目的を教えるのと同じ事。個人的には戦争が起きても向かってくる奴を殺せばいいから良いからどうってことは無いが……他人が引き起こしたことに巻き込まれるのは癪だな。
コカビエルが何かしようとしているに加えて俺のお得意様も堕天使勢力に地味に目を付けられた。ちょうど支援役が欲しかったから先手打つか……問題はオッケーと言ってくれるかだが言ってみるのはタダだし今日の夜にでも交渉してみるか。
「んで? その企みに白龍皇様はどうする気だ?」
「アザゼルは戦争を望んではいないし俺もコカビエル程度が引き起こす戦いには興味がない。影龍王であるキミが倒してくれるのならば今回は見物しても良いが?」
「あの程度なら覇龍を使わなくても問題ねぇし負ける気もない。流石に堕天使の総督相手はちとキツイけどな……教えてくれた礼だ、コカビエルを殺してもいいんならこっちで勝手にやらせてもらうぜ?」
「構わない。アザゼルには俺から言っておこう――それでどうする? 戦うかい?」
「喜んでと言いたいがそれはコカビエルを殺してからだな。他に頼むものが無ければ会計するけど?」
「食事をするほど空腹でもないからね。ごちそうになるよ影龍王」
「あいよ」
コーヒー二人分の会計を済ませた後、俺達は別れる。堕天使勢力の幹部の一人、コカビエルが駒王町で戦争を起こすために何かをしようとしている……ドラゴンっていうのは面倒事に巻き込まれる種族だな。
『ゼハハハハ。それがドラゴンよ』
「なんだ起きてたのか? 珍しく静かだったから寝てるのかと思ったぞ?」
『白蜥蜴と話そうと思ったんだがあの野郎、無視決め込んでてなぁ。だから黙っていたわけよ。それでどうする宿主様? あのアイドル娘を眷属に加えるのかぁ?』
「横取りされたくねぇしな。独立具現型神器の所有者って知られた以上、あの子に何が起こるか分かんねぇし俺の支配下に置いておけば一応は安全だろう? ご立派な影龍王って名前があるしな」
『ゼハハハハハ!! その通りだぞ宿主様! 悪魔らしく貪欲に、己の好きな事をすればいい! アイドルを独占するのもまた一興よ!』
「ゲスい言い方だなぁ。間違ってはいねぇけど」
紙に書かれた連絡先にメールを送って適当に時間を潰していると志保からメールが返ってきた。今日は駒王町のホテルに泊まる予定で明日には帰るらしい……まさかアイドルとホテルで密会? うわ何その犯罪臭。凄く悪い事をしている感じがするけど眷属になるように交渉するだけだからセーフセーフ。
「――相棒」
『あぁ。気を付けろよ宿主様』
約数時間ほど適当にぶらついて時刻は夜。家に帰っても特にやることが無いので暇つぶしで町の中を歩いていると少し前から誰かに尾行されているような感覚があった。悟られない様に背後を見てもそれらしい姿は見えない……しかし舐めまわすように、殺意を帯びた視線が確かに俺の身体を射抜いている。時間帯も時間帯だし誘い出してみるか……裏路地を通って人気のない場所へと移ってみると先ほどまで姿を見せなかった尾行者と思われる
「よぉ、さっきから人の後をつけまわして何の用だよ?」
現れた人物に問いかけた。月明かりに反射するほどの銀髪で頭の横で束ねてサイドアップって奴にしている女……年齢は二十代、水無瀬より少し上って所か。日本で銀髪なんて珍しいが西洋人形のようで表情が無表情とかちょっと怖い。
「――此処に来た以上、気づいていたと判断しています。お初にお目にかかります、駒王町内に存在する神父、または悪魔を殺害するように依頼を受けましたアリス・ラーナと申します」
「依頼ねぇ……んで? 俺に何の用?」
「影龍王と呼ばれる貴方の実力を測りに来ました。今回の依頼において最も危険視する人物ですので」
「ククク、その依頼ってコカビエル? それともはぐれ悪魔祓いか? どっちでもいいが売られた喧嘩は買わせてもらうぞ」
「噂通りの戦闘狂と判断します――参ります」
目の前の女は両手の指の間に刀身が光の刃となっている短刀を出現させて俺に放る。生成速度から投擲に至る速度が手馴れてやがる……が、これは囮だな。
前方から迫る光の短刀を影人形の拳で叩き落し、背後から迫るであろう者からの攻撃を防ぐべく影を生み出した。そして生み出した影に"なにか"が触れたと思った瞬間、周囲に吐き気がするほどの聖なるオーラがはじけ飛んだ――聖剣かよ!
「何故、気づきました?」
「幻術だって分かってたからな。てか手に持ってる奴……聖剣か?」
「肯定。
「使えるって事は聖剣使いかよ……しかも神器持ちか」
影人形の拳によるラッシュを叩き込んだがまるで霧のように霧散して姿が消えた。気配も無く先ほどまで感じていた殺意すらまるで最初から無かったかのように消えている。呼吸音もしないとなると俺の呼吸に合わせてやがる……暗殺者かなんかかよあの女?
でも――見つけたぜ。
「っ!」
先ほど攻撃した方角に影人形を動かしてラッシュタイムを放つと拳圧で地面が軽く抉れたのと同時に何かが上空に飛んだ音がした。幻術で姿を消して移動したと思わせて実際はそのまま後ろに飛んでいただけだ、戦闘中で誰もが思ってしまう小さな錯覚を利用したみたいだが俺には効かないぜ? 真上を見上げると降り注ぐのは光の刀身をしたナイフの雨、さっきのように幻術を操るとなるとどれかが偽物でどれかが本物だ……でも関係ないよな? 全部叩き落せばいい。
俺の真上全てを覆うように影人形のラッシュで降ってくるナイフの雨全てを防ぐ。最初は手ごたえがあるが今は殆ど無い……幻術か。すると狙いはこっちだな! そう思った直後、俺の死角に聖剣を持った女が潜り込むように接近して一閃――
「……流石にこの程度では傷一つ負わせられませんか」
「生憎、俺の影人形によるガードは天下一品だぜ」
――聖剣の刃と影人形の拳がぶつかり合う。一太刀入れれるかもしれないというチャンスすら防がれたというのに目の前の女は表情を崩さず後方へと距離を取った。今の感じだと防がれると分かってた上で攻撃してきやがったな……全く怖い怖い、聖剣恐怖症になりそうだ。でも強いな……人間にしては戦い慣れてやがる。エクスカリバーを使えるほどの逸材が天界勢力じゃなくて依頼を受けたから殺しに来ましたとかちょっとおかしいレベルだ。
「現状で貴方を殺すには手数が足りません。今回は引かせていただきます」
「逃がすと思ってんのかよ?」
「逃げ切ります」
「――だったら逃げ切って見せろや!!」
加減無しの影人形のラッシュを叩き込むと聖剣で応戦し始めた。女が距離を取れば即座に詰め、光の短刀による雨を降らせばそれを叩き落とす。それを繰り返していると予想外の出来事が起きやがった――酔っ払った普通の一般人が俺と女の殺し合いの場に現れて目撃しやがった。舌打ちをして一瞬だけそっちに意識が向いた瞬間、女は流れるような仕草で男の頸動脈を切断、
「逃がしたか」
『ゼハハハハ! だらしねぇぞ宿主様! 慢心した結果がこれじゃあユニアの宿主に笑われるぜぇ?』
「言い訳に聞こえるかもしれないがちょっと気になることがあった――あの聖剣、依頼人から借り受けたって言ってたよな?」
『だなぁ。という事は教会であったあの聖剣使い共はあれを取り返しに来たと見ていいだろう』
「白龍皇からの情報を纏めるとコカビエルは戦争を起こすためにこの町で何かをしようとしている。そして天界勢力が保有している聖剣のいくつかを所有している可能性がある。教会であった聖剣使い達はそれを取り返すためにやってきたかもしれない……要約すると堕天使が悪いか」
足元に広がっている元酔っ払いの男、今は四肢と他の骨が砕け散っている死体の姿となったものを魔力で吹き飛ばす。先ほど放ってきたゴミを影人形の加減無しラッシュで吹き飛ばしたからこんな風になってしまった。女もその一瞬の隙を使って脱出していったようだし踏んだり蹴ったりだぜ。
少しばかりイライラしたが志保からのメールが届いたのと同時に頭を切り替えて魔法陣で転移。視界に映ったのはごく一般的なホテルの内装と部屋着姿のアイドル、橘志保の姿。やっぱりさ……謎の犯罪臭がするんだけど気のせいじゃないよね? うわー俺様悪魔だから悪い事しちゃいそーだわー。
「悪魔さん、今日は来ていただいてありがとうございました」
「中々楽しかったぞ。こっちこそあんないい場所のチケット貰ってよかったのか?」
「はい。悪魔さんを呼ぶなら一般席よりもVIP席の方が良いですから。あ、あの……今日一緒に来られたお二人は――悪魔、ですか?」
「まぁ、そうだな。白髪の弱ヤンキーっぽいやつが俺の眷属でもう片方が白龍皇っていう俺以上のトンデモ野郎だ。でもよく分かったな? 普通の友達を連れてくるとかもあるだろ?」
「少しばかり魔力を感じましたので……銀髪の男の人からは怖い、と言って良いのか分からないですけど悪魔さんと同じようなものを感じました。でも白龍皇……あの人がそうなんですね」
「二天龍は色々と有名だからな。それで今日呼びだしたのは何か用事か?」
「は、はい! えっと、今日のイベントは、どうだったでしょうか……? あっ、えっと! 人払いの術を使ってますんで他の人は入ってきませんので安心、あ、安心してください」
「アイドルが人払いの術使えるとかどうなってんだよ」
「アイドルですから」
流石アイドル。いやアイドルって何だよ? あとすいません……その人が誰も来ませんからいろいろ大丈夫ですみたいな目はやめてほしい。俺も男だからちょっとまずい。さて冗談は置いておいてイベントの感想ねぇ、白龍皇のせいで集中できなかったが楽しかったのは事実だな。
「楽しそうに歌ってるなとは思ったな。やっぱ笑顔っていいもんだな」
「そ、そうですか……よかったです」
だからその本当に嬉しそうな表情止めてほしいマジで変な気分になる。相棒も少し黙ってくれないかな? 何が押し倒せだよ? んな事したら平家に知られて殺されるぞ? アイツ地味にヤンデレ属性持ってると俺は勝手に思ってるからな!
そんな事は置いといてだ。こっちはこっちの用事を済ませようか。
「あぁ~そうだ、ちょっとばっかし交渉があるんだけど?」
「交渉ですか……っ!? あのえと、えっと!? きょ、きょうはそのだ、ダメです! 準備も何もしてないのでダメです! で、でもどうしてもっていうのなら――」
「いや違う。考えてるのとは全然違うからな? 交渉っていうのは俺の眷属になってくれないかってだけだ」
「はい喜んで」
「いきなりだから戸惑うだろうがちょっと事情が変わってな……堕天使陣営のトップがお前の神器に興味を持ったみたいで横取りされるのも癪だからこっちに引き込んでおこうかなぁと思ったんだよ」
「あの、ですから喜んでお受けしますよ?」
「……え?」
「いつでも眷属にスカウトされても良いようにお父さんとお母さんは説得済みです。アイドルになったのも私は此処に居ますよとその……アピールみたいなものですしいつでも心の準備は出来てました。ですので喜んでお受けします」
衝撃の事実が此処に判明。今まで謎だったアイドルデビューの理由ってそれかい……お兄さん凄く驚いたわ。
というわけで相性がいいと思われる僧侶の駒を渡して無事に眷属に加わったけどなんだろうか……色んな所から苦情が来そうだぞ。主に赤龍帝とか匙君とかその辺りから。犬月はきっと喜ぶだろうな、あいつ犬だし。
「俺の眷属になっても何かしろとか特にないからアイドル続けるなり自分の好きなようにしてくれ。あっ、でも今この町で起きてる事で少しだけ手伝ってもらうかもしれない」
「構いませんよ。私、もう悪魔さん……主様の方が良いです?」
「やめてくれ……流石にそれは俺の心が変になる! 普通にノワールでも今まで通り悪魔さんでも何でもいいがそれだけはやめてくれ」
「そうですか――残念です」
「あん?」
「い、いえ! こ、コホン――橘志保! 悪魔さんの僧侶として頑張ります♪ 応援よろしくね!」
満面の笑みとポーズ有りで言われてしまったら今日一日の感想として俺はこれだけしか言えないだろう。
アイドルってやっぱり良いね!
観覧ありがとうございました!