ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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15話

「――んで? どうして此処に来たか説明してくれる?」

 

 

 場所は保健室、時刻は昼休み。俺は保険医専用席に座りながら微弱な殺気を放ち、来訪した二人を見つめていた。その二人は俺が放つ殺気に微かに身体を震わせながら言葉を必死に出そうとしているみたいだけど……やめてくれないその反応? なんかこっちが悪い事をしている感じがして嫌なんだけど。でも俺の後ろにいる男、壁に寄りかかってる犬月よりははるかにマシだけどなぁ。

 

 

「……」

 

「しゅ、瞬君、落ち着いてください」

 

「わーってるっす……王様が手を出していいっていうまでは我慢します」

 

「それ落ち着いてないですから!?」

 

 

 腕を組み、今にも襲い掛かろうとする衝動を抑えながら犬月は殺意を帯びた眼差しで二人を見つめている。その様子に水無瀬は落ち着かせようとしているみたいだがその程度じゃ無理だわな。両親を殺されたっていう怒りと憎しみは言葉程度で払えるもんじゃないし――何より来訪している二人が犬月が大嫌いな天界勢力の方々だからな。だがイラつきの半分はそれなだけでもう半分は別にあるようだけど。

 

 椅子に座りながら俺と犬月からの殺気という洗礼を受けている二人は数日前に教会で会った二人組だ。片方は緑色のメッシュを入れている美少女、もう片方は栗色の髪をしたツインテールでこちらもまた美少女。白いローブを羽織ってはいるが先ほどチラッとローブの中身が見えたけど……まさかのボンテージっぽい服装だったよ。こいつ等がまさかの痴女属性持ちかと思ったのは内緒だ、平家が居たらバレるけどこの場にいないからセーフセーフ。

 

 

「……」

 

「聞こえなかった? なんで此処に来たか教えてくれない? まだ昼飯食ってないからさっさと終わらせたいんだけど?」

 

「は、はい! す、すいません!」

 

「イリナ……いや、気持ちは分かるが私達はただの交渉に来ているだけだ……悪魔祓いが悪魔に怯えていてどうする?」

 

「だって影龍王なのよ! 普通に戦ったら勝てるわけないじゃない! ゼノヴィアだってそれは分かってるでしょ!」

 

「……まぁ、そうだが」

 

「漫才しろって言った――」

 

「言います言います! こ、コホン――数日前、各教会で保管していたエクスカリバーが強奪されました。それを手引きした組織の名は神の子を見張る者、その幹部であるコカビエルと思われます。情報ではこの町のどこかに潜伏しているとされているため私達及び神父を潜入させています……しかし神父は何者かによって殺害されており協力者がいると思われます。教会で貴方が探していたはぐれ悪魔祓い、それが関与していると考えてもいいでしょうか?」

 

「まぁな。こっちも神父殺害の件で面倒事が回ってくる前に片づけたかったが犬月の鼻でも探しきれなくてな。一カ月以上前の話だがこの町に堕天使が潜入してそれに協力していたはぐれ悪魔祓いが今もなお姿を現していないんだよねぇ。片腕切断と顔半分を潰しているから目立つとは思うんだがなぁ」

 

 

 白龍皇の話でははぐれ悪魔祓いが自発的か唆されたとかで協力していると言っていたしあの男でまず間違いないだろう。狂信者っぽかったし俺と同じでやられたらやり返すを信条にしてる性格っぽかったしな。でもこいつらは別の協力者がいることはまだ知らされてないみたいだな……エクスカリバーを使えるほどの聖剣使いをこいつらが知らないわけないしあれほどの実力者だ、危険視してもおかしくはない。だというのに一向に話しに出てこないという事はまだ情報を得られていない――あるいは捨て駒だから与える必要がないって所か。

 

 

「奪われた聖剣は天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)の三本です。私とゼノヴィアが所有するエクスカリバーを除いて三本が敵に奪われています」

 

「……三本? 残った二本はまだ無事って事かよ?」

 

「正教会で保管している祝福の聖剣(エクスカリバー・ブレッシング)は強奪から免れています。残った一本は――」

 

「最後のエクスカリバーは前大戦後から行方不明だ。だからこいつらの分を合わせて計六本が現存するエクスカリバーなんだよ。支配の聖剣の事、知らないのか?」

 

「すんません……てっきりエクスカリバー全部天界側が持ってるもんだと……それでも半分は奪われてるってわけっすね。だらしねぇ」

 

「……すまない影龍王、彼の様子が先ほどから変なのだがどうしたんだろうか?」

 

「こいつの両親が悪魔祓いに殺されたせいでお前らの事は大嫌いなのさ。お前らから何かしてこない限りは犬月を襲わせるようなことはしないよ。話を戻すが奪われたのはエクスカリバーだけなんだな?」

 

 

 その言葉に同意するようにイリナと呼ばれた女の子が首を縦に振った。

 

 数ある聖剣の中からエクスカリバーだけを奪い取った? ドラゴンを殺す龍殺しを宿した聖剣アスカロン、エクスカリバーに並ぶ聖剣とされる聖剣デュランダルとか他の聖剣も天界勢力は保有しているはずだがそれを無視してエクスカリバー三本だけ……気になるな。たとえ聖剣を扱う者が少なくとも保有しているだけで天界勢力を弱体化させることは可能だろう。天使と言う種族自体は弱点、所謂エロ攻撃をすれば抗う奴らも多いがそれと同時に堕天する奴もいる。だから悪魔的には天使はあんまり怖くないんだよな……聖剣以外。

 

 

「そっちの状況は理解した。それじゃあ本題だ――アンタ達は俺をどうしたい?」

 

 

 エクスカリバーの事は置いていてここからが本題。天界勢力に属するこいつらが態々生徒会長、そして俺に接触してきたという事は何かしらの考えたあっての事だろう。それが分からないとこっちもやりようがないんだよね――どんな事を言われても断ってコカビエル殺すけど。

 

 

「私達の依頼、いやお願いと言うのは他でもない――影龍王。今回の件に貴方は関わらないでほしい」

 

「はぁ? 何で悪魔の俺達がテメェらの言うこときかねぇといけねぇんすか? 頭大丈夫か?」

 

「生憎本気さ。神側である私達の事情に悪魔が絡んで困るのはそちらだと思う。下手をすれば堕天使と悪魔の戦争に発展しかねない。こちらに被害が無ければ双方がぶつかり合ってくれるのはありがたいがそれは避けたいだろう? そもそも上は堕天使と悪魔、今回で言うならコカビエルと貴方達の誰か、またはほかの人物が手を組んでいると考えているんだよ」

 

「そりゃそうだ。エクスカリバーを失って得するのは俺達だしな」

 

「あぁ。だからこそ上は悪魔と堕天使を信用してはいない。しかし事情を説明せずこの町で暴れるのは侵略行為とみなされてしまうからこうしてこの場に来させてもらった。影龍王、貴方の答えを聞きたい」

 

 

 信用していないねぇ。そんなこと言われたらこっちがどんな事を言ったとしても意味無いと思うんだけど……分かってんのかね?

 

 

「その答えの前に最後に質問させてもらう。コカビエルを討つのは誰だ? 天使長(ミカエル)? それともお前達か?」

 

「私達だ。このエクスカリバーと共にコカビエルを討つ」

 

「俺に勝てなかったお前らが堕天使の幹部、古より聖書に記されたコカビエルを討つのか? くくく……死ぬ気か?」

 

「覚悟の上だ。私もイリナも死ぬ覚悟はできている」

 

「はい。神のために死ねるのなら本望――っ?!」

 

 

 水無瀬と犬月、目の前にいる女二人の呼吸が止まる。神のために死ねるなら本望、死ぬ覚悟はできているか……面白すぎて腹痛いわ。俺程度の攻撃を避ける事も一太刀すら与える事が出来ず、あの程度の殺気にビビってる分際で死ぬ覚悟はできていると来たか――三下風情が舐めた口きいてんじゃねぇよ。

 

 

「今の言葉で俺の答えは決まった。もう話すことはねぇからさっさと帰れ」

 

「なっ!? まだ答えは聞いて、いない……!」

 

「聞こえなかったか? 帰れって言ったんだよ。下級の悪魔や魔物しか殺した事が無い三下が凄い玩具を手に入れて調子に乗ってんじゃねぇよ。お前ら空飛べるか? 飛べないだろ。普通の人間は空を飛ぶことができないのは常識だ。その常識の中にいるお前らはコカビエルには勝てない。相対した瞬間に周囲もろとも光の槍放たれて即死させられるさ」

 

「そ、それは戦ってみなければ――」

 

「戦う前から決まってんだよ。お前らコカビエルをなんだと思ってんだ? 三大勢力が覇権を賭けて争った戦争を生き残ってんだぞ? 数十年生きて経験を積んでいるならまだ分かる。俺や赤龍帝、光龍妃や白龍皇のような神滅具を持っているなら分かる。でもお前等が持っているのはエクスカリバーの出来損ないだろうが。それに言ったな? 上は俺達悪魔と堕天使を信用していないと……だったら俺が言う事なんて信じないんだろ? だから俺の答えは()()だ」

 

「あ、あの! ゼノヴィアはそういうつもりで言ったのではなくて……」

 

「――いや、イリナ。此処は大人しく帰ろう」

 

「ゼノヴィア!?」

 

「元はと言えば私の発言のせいだろう? 此処は大人しく引かないと影龍王に殺される……今の殺気がその答えだ」

 

 

 半分ぐらいの殺気だけどな。夜空の本気の殺気に比べると天と地の差があるけどこいつらからしたら殺されるというほどのものだったらしい。一度夜空の殺気を味合わせてみたい気がする……多分ショック死するぞ? だって俺ですら呼吸って何だっけとか一瞬だけ思うほどの濃さだしな。

 

 二人は渋々といった様子で保健室から出て行った。まぁ、あんな事を言ったけどこの土地って俺のじゃなくてグレモリー先輩のだからあっちが関与しませんとか言ったら俺は何もできないんだけどね。でもコカビエルは殺すわ、だって面倒事に巻き込もうとしてるし白龍皇に殺すねって宣言しちゃったもん。

 

 

「……ノワール君、あんな言い方をして大丈夫なんですか?」

 

「さぁな。でも俺の言った事は間違ってないと思うぞ? コカビエル相手にたった二人、夜空以下の身体能力のガキが挑んでも即効で返り討ちにあってエクスカリバーを盗られるだろ。その後の末路なんて言いたくもねぇが……慰み者にされるぞ」

 

「見た目は美少女、天界側の悪魔祓いなんだから処女確定。はぐれ悪魔祓いや堕天使からしたら極上の獲物っすね」

 

「だから悪者扱いされること覚悟で協力してくださいと言わせようと思ったんだが最後の最後まで言わなかったな。信仰する神は、あぁいや、流石神を信仰する信者様だ」

 

「今何か言い直さなかったっすか?」

 

「気のせいだ。とりあえず飯食おうぜ――午後の授業を飯無しはキツイ」

 

 

 危うく聖書の神は死んでいると言う所だった。流石の俺でもあれはトップシークレットだという事は理解しているから世間にバレるまでは黙っておこう。平家にはバレてるけど……流石に心を読む覚妖怪に隠し事は無理だな。俺の処理的な意味でのおかずやらなにやらもあいつは心と記憶を読んで知ってやがるし。高校二年生の男の秘密を呼吸するように知ろうとしないでいただきたい。

 

 放課後になって帰宅しようとしているとオカルト研究部の部室付近からドラゴンのオーラを微弱ながら感じた……あぁ、もしかして先輩の方にも行ったのか。それは良いんだがなんで戦ってんだ? まさか喧嘩売った? バカでしょ。

 

 

「それで? あの女はいつ此処にくるの?」

 

 

 深夜、夕食を食べ終えてリビングでゆっくりしていると俺の膝を枕にして携帯ゲーム機で遊んでいる平家がそんな事を聞いてきた。あの女……あの女……もしかして志保、じゃなかった橘の事か?

 

 

「当たり前。眷属にしたんでしょ? いつ来るの?」

 

「いや何時って言われても橘の準備が出来次第だが……なんか機嫌悪くないか?」

 

「別に。アイドルに手を出した鬼畜野郎と思ってるだけ」

 

「おい」

 

「にししぃ~ふぁんにころころされちゃうよぉ~? のわぁ~るぅもわるだねぇ~」

 

「鬼畜ドS野郎。いやー犯される―」

 

「清々しいほどの棒読みありがとう。いや……俺だって橘がまさか即答するとか思ってなかったんだぞ? アイドルだぞ? 人気急上昇中のアイドル橘志保が即答だぞ? 驚くだろ」

 

「ま、まぁ……お話を聞いていた限りでは何時かはと思っていましたし私は反対しませんよ――同じ僧侶、若い、明るくてスタイル抜群……か、勝ち目がな、い……!」

 

「恵。今日は飲もう、お酒飲めないけどコーラ出してくれるなら朝まで付き合うよ」

 

「おっさっけぇ~くれるならいつでもつきぃあうぅ~にししぃ」

 

 

 なんだろうかこの疎外感。俺って王だよな? お前らは俺の眷属だよな? なんだか邪魔者扱いされてるようで酷く悲しいです。たくっ、こんな時の犬月はどこに行ってんだか……行動起こすの早すぎんだろ。

 

 

「仕方ないよ。だって犬っころだもん」

 

 

 何という酷い言葉だろうか。

 

 あの悪魔祓いが現れたせいか、または昨日であった銀髪の女の事を伝えたからなのかは知らないが飯を食って部屋に籠りますわと言ってから今も出てきてはいない。つうかそもそも部屋の中にはいねぇしな……転移で外に行ったのがバレバレだし気づかないと思ってのかねぇ。俺を欺こうとか百年以上は早いんだよばーか。昨日出会ったあの銀髪女を逃がさず殺しておけばまだ少しはマシになったのかねぇ?

 

 

「ムリ。復讐は自分の手で付けなきゃ一生悔やむ」

 

「だよな」

 

「でも……ノワール君が出会ったその女の人が――瞬君の両親を殺した人だなんて思いませんでした」

 

 

 橘を眷属にした事を昨日の深夜にこいつらに伝えた時は犬月の喜びようは凄まじかった……けどその次の俺の言葉で一気に真逆の反応を示した。俺が戦った銀髪の女、その特徴を伝えた途端にテーブルを思いっきり叩いて狂気を孕んだ笑みを浮かべて笑い出した。あの時ほど犬月の本性、いや本音を見れたと嬉しく思った事は無い。アリス・ラーナ、その女こそ犬月の両親を悪魔祓いの奴らと一緒に殺した人物らしい。忘れたくても忘れられないみたいで今でも人形のような無表情を夢に出てくるそうだ……大方、今も町中を散策して見つけ出して殺そうとしてるんだろうな。

 

 

「どうするの?」

 

「あん? 放っておけばいいだろ。あいつの復讐だ、殺すも対話するもあいつが決める事で俺達が関与する理由は無い」

 

「ひっどいおうさまだぁ~」

 

「邪龍を宿した(キング)だからな」

 

 

 むしろ俺が良い王だと思っていたのかと聞きたいがきっとこいつらの事だ、最低最悪の王とか言うだろう。普通なら眷属の一人が復讐に走っているなら止めるだろうけど俺は止めない。自分でやろうとした事を止められたら腹が立つだろう……俺だって嫌だ。俺が嫌だから他の奴にも同じことはしない。戦いを挑んで死にかけたら助けるがそれ以外なら不干渉を貫くつもりだ。

 

 

「……やっぱりノワールってバカだね」

 

「ヒデェなおい」

 

「のわーるだもんねぇ~」

 

「ノワール君ですからね」

 

「……相棒、俺の眷属が酷い事を言ってくるんだが?」

 

『ゼハハハハ! 犯せばよかろう? 主従関係を叩き込むならそれが一番よ! 宿主様の前任者共はベッドの上では野獣だったぜぇ? 複数の女相手に満足させるほどの絶倫よ。それはもう――』

 

 

 何だかどうでも良い話をし始めたからさっさと退散しよう。平家や四季音はへぇやらほぉと言った反応だったけど水無瀬は顔を真っ赤にしながら耳を傾けるという処女丸出しの反応だった。お前……眷属になる前に俺に言ったセリフを今一度思い出せ。いや思い出すな、なんだか面倒な事になりそうだし。いや逆レしてくるっていうなら俺は拒まんぞ。いや嘘だから抓るな……痛いから!

 

 結局その日、犬月が戻ってきたのは早朝になってからだった。そのせいで終始眠いだの帰りてぇだのと平家化していたけど自業自得だ。殆ど寝てねぇんだからな。

 

 

「キマリス君。此処に呼ばれた理由は理解できていますね」

 

 

 時刻は飛んで放課後、生徒会室に俺は呼ばれている。この場にいるのは生徒会長のソーナ・シトリー、オカルト研究部部長のリアス・グレモリー、そしてこの俺の三人と二人の女王のみ。俺は女王がいないから俺一人だけの参戦なんだけど……すっげぇ気まずい。お前何してくれたんだみたいな視線が凄く痛い。

 

 

「天界側、エクスカリバーの所有者二人に対する行動ですか?」

 

「その通りです。今回の一件は下手をすれば三すくみの状況に影響が出ます。それは貴方も分かっているでしょう?」

 

「そうですね。下手をすると戦争に発展しかねない……だというのに高圧的な態度を取ったからこうしてお叱りの場を設けたというわけですね。これでも親切心だったんですよ? たった二人でコカビエル相手に死にに行くようなガキを引き留めてあげようとしたんですから誉めてくれても良くないです?」

 

「確かにあの二人でコカビエルに挑めば無事では済まないでしょう。でも此処は私が治める領地で貴方はその領地を訪れている他所の混血悪魔。いくら影龍王の貴方といえども好き勝手は許されないわ。貴方は一体何を考えているのか教えてもらえないかしら?」

 

「そうですね――うちの眷属の一人を楽にしたい、と言ったらどうです?」

 

 

 俺の言葉に驚いたような反応をされたけどこれは本気も本気、所謂本音って奴だ。

 

 

「……どういう意味ですか?」

 

「先日、俺は堕天使の一派に依頼を受けたと思われる女に襲われました。名前はアリス・ラーナ、神器持ちで有りながらエクスカリバーを行使できるほどの実力者。そして俺の兵士、犬月瞬の両親を殺した集団の一人だそうです。そんな事が分かっていた以上、関わるなと言われてはい分かりましたと言えないんですよ。その女を殺すか生かすかは犬月次第ですがこのまま復讐心を持っているよりは自分で決めた事をして納得させた方が良いでしょう?」

 

「そのために私達を巻き込むというの?」

 

「先輩の騎士だって復讐心に染まっているじゃないですか? それを放って置いてる時点で俺と同類だと思いますよ」

 

 

 俺の言葉にグレモリー先輩は黙り込んだ。きっと反論したいが自分の眷属の一人、木場裕斗の復讐心を消しきれていない事は事実だから何も言えないんだろうな……生徒会長はなんだか呆れて頭を抱えてるっぽいけど。頭痛かな? お薬飲んだ方が良いですよ?

 

 

「それに二人とも誤解しているようですけど俺は影龍王ですよ? 最低最悪で、自分勝手で、自己中で、自己満足の塊で、他人の事なんか微塵も考えていない邪龍の宿主ですよ。たとえ間違っているとしてもこれが俺のやり方で誰にも文句は言わせませんし邪魔もさせません。でも流石に戦争を引き起こすつもりはないんで犬月が本気で暴走しかけたら死ぬ一歩手前まで叩き潰してでも止めますので安心してください」

 

「……はぁ、そのような振る舞いをしているから周りから誤解されるんですよ」

 

「誤解させておけばいいと思いますよ? 俺は好き勝手に生きて、好き勝手に夜空と殺し合う生活さえできればそれで良いんで」

 

「悪魔らしいわね。でもそうね……私も裕斗の暴走を止められてはいないわ。昨日もエクスカリバーを所有している相手に殺意を抱きながら戦いを挑んだんだもの。私の領地でキマリス君が何をしようと構わないわ。ただ魔王――いえ、お兄様に迷惑をかけるというのなら私も本気で対処させてもらうわ」

 

「流石に魔王様に喧嘩売るようなバカは夜空だけですよ。そこまで落ちぶれちゃいませんって」

 

「そう信じたいです。ではこのお話はこの辺にしておきましょう……所でキマリス君、貴方は女王を持つ気はないの? このような場で王を支える役目もあるからそろそろ必要になってくると思うのだけど?」

 

「確かに必要ですけど俺の女王候補があまりにも厄介でかなり先になりそうですね。あぁ、でも僧侶は先日埋まったんで後日紹介します。俺的には学園に転入させようとも考えてますがその辺はそいつの了承を得てからになりそうですね」

 

「貴方が選んだ僧侶……興味あるわね。私の僧侶もそろそろ封印が解けても良いと思うのだけれどまだ私の力不足という事かしら」

 

 

 重苦しい空気は一瞬にして和やかな空気に変化した。

 

 さて色々とあるけど犬月……お前はどんな選択をする? 無数の選択肢があるが選ぶのはお前だから好きなものを選べよ。そして決めたなら決して後悔はするな――お前の心はお前だけの物だからな。




観覧ありがとうございました!

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