ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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17話

「――エクスカリバー破壊作戦を開始して数日経つが特に何も起きてねぇみたいだな」

 

「だねぇ~のわーるぅてきにはぁざんねんぅかなぁ?」

 

「まぁな。こっちもコカビエルから何かしらの接触があるかなぁとか思ってたけど特にないしな」

 

 

 時刻は夜、水無瀬が作った晩飯を食べ終えた俺はリビングでいつものようにソファーに座りながらテレビを見て寛いでいた。普段であれば平家が俺の膝を枕にして何かしらの事をしているが今回は平家の代わりに四季音が隣に座っている。その手に酒が入った瓶を持ってご機嫌な様子だけど漂ってくる強い酒の匂いで少し、いやマジで吐くかもしんねぇ……本当なら距離を取りたいし逃げたい所だがこの鬼は俺の腕を掴んで逃がさないようにしてやがる。くっそ! 平家は部屋に引きこもってゲーム、水無瀬は風呂、犬月は宣言通り赤龍帝達と一緒に外に出ているから助けも呼べない……唯一俺の心を読んでいるであろう平家はゲーム優先で絶対に部屋から出てこないだろう。そもそもなんで腕掴んでるんだよ? これが肉食系女子の積極性なのか?

 

 てか犬月、いい加減帰ってこい。心優しい大天使水無せんせーがお前のためにレンジで温めても美味しい夕食を作っているんだぞ? マジでいい女だよなぁ、結婚するならこれぐらいの女子力が欲しい。

 

 

「そろそろこっちから探して見っかなぁ。夜空に聞けば場所ぐらいは分かんだろ」

 

「だろうねぇ~こうりゅうきぃはいろんなとっころぉにいってるもんねぇ~にしし、こっかびぇるとたたかうならわったしぃもさんかするよぉ――仲間外れにしたらぶっ飛ばすかんね」

 

「痛い痛い腕折れるっての!?」

 

 

 余程嫌なのか掴んでいる俺の腕を軽く力を込めて握り始める。軽くとは言ったがなんかミシミシと音がしててすっごく痛い。マジで痛いし……流石鬼、かなり加減してもこの握力ときたか。戦車だっていうのもあるだろうけどそれにしたって握力あり過ぎだ。

 

 

「堕天使の幹部と戦えるなんて滅多にないんだ。この私を抜きにして自分だけ楽しもうだなんて思ってないよね?」

 

「流石に思ってねぇよ。どうせコカビエルに賛同している奴らも一緒に出てくるだろうしお前にはそいつらを相手にしてもらおうと思ってる……んだよその顔? 嫌なのか?」

 

「嫌だね。最近おもいっきり戦ってないから身体がねぇ。分かるでしょノワール」

 

「その気持ちはよく分かるよ。だけどコカビエルは俺の獲物だ――いくらお前でも俺の楽しみを奪う事は許さねぇ」

 

 

 四季音の顎下に指を入れてクイッと少し上を向かせる。今のセリフは俺の本心、折角楽しめそうな戦いだっていうのに誰かに盗られるのは我慢ならない。有無を言わさない視線と空気を放っていると何故か知らないが徐々に四季音の顔が赤くなってきた……なんだろう、なんか可愛いな。鬼と言っても見た目は美少女、子供体型なのと酒の匂いさえなければさらに良かったがそれでも美少女だ。というか酒が入っている時と抜いてる時の差が激しすぎんだよ……ギャップが合って良いとは思うけどさ。

 

 

「っ、あ、し、しょうがないね! でも今度強い相手が出て来たら譲らないと、お、怒るかんね!」

 

「はいはい。その時は頼りにしてるよ」

 

 

 顔の赤みを隠すためか酒が入ったボトルを一気に飲み始めた。にしても本当に酒強いよな……鬼と言う種族だからなのかこいつの一族がそうなのかわかんねぇけど昔、親父達と飲み比べをして酔いつぶれる事なく圧勝してたな。眷属にしてから一緒に暮らしてるけど一度もこいつ(四季音)が本当の意味で泥酔、酔いつぶれる所なんて見た事ねぇが……一回だけ俺の目の前で酔いつぶれてくれねぇかなぁ。その時は日頃のセクハラのお返しとして色々と……変な事考えると平家になんか言われそうだし止めておこう。

 

 四季音の様子を見た後はテレビに視線を移す。そこで流れているニュースは『橘志保、アイドル活動休止!』というタイトルがデカデカと前面に押し出されている。今更ながらもっと反対しておけばよかっただろうか……アイツの歌と笑顔に元気付けられた人は多いだろうからなぁ。

 

 

「ノワール君、お風呂空きましたのでいつでも……あら、志保ちゃんのニュースを見ていたんですか?」

 

 

 後ろから水無瀬が話しかけてきた。エロい、いやエロイな……二十代の風呂上り寝間着姿とか高校二年生にとっては目に毒だ。ごく一般的なパジャマだけどそれがエロい。

 

 

「どの局も同じことしかやってねぇんだからしょーがねぇだろ。橘が人気過ぎた結果だが学業優先での休業ってだけでここまで騒がれるもんか? あいつからしたらすげぇ迷惑だろうに」

 

「仕方ないですよ。志保ちゃんの笑顔と歌で元気付けられた人もいますでしょうから。志保ちゃんは大丈夫なんですか?」

 

「問題ねぇよ。事務所の方も休業に関しては認めてるし橘自身もちゃんとテレビで説明したしな。これで不満に思ってる奴はファンじゃねぇよ。でもこれ……休業したのと同時に男と同居とかバレたらヤバいんじゃね?」

 

「ファンにコロコロされるね。にしし! ノワールの女たらしが招いた結果だからどうなるか楽しみだね」

 

 

 確かに色々と拙いだろうが学園内では無理だが外では認識疎外の術を使うらしいからまずバレないとか言ってたな。一応俺の方でもこの家周辺で橘の姿が別人……と言っても少し似ている人程度に見える様にするから大丈夫だとは思う、けどやっぱ不安だな。俺自身も橘志保のファンの一人だからあいつが高校卒業してちゃんと復帰できるように頑張らないと。

 

 テレビのニュースを話のネタにしていると携帯に連絡が入った。ディスプレイに映っていた名前は何という事でしょう……先輩だよ。うわっ、なんだろうすっごく嫌な予感しかしない。

 

 

「――はい、黒井です」

 

『キマリス君。話をしても大丈夫かしら?』

 

「問題ないですよ。それで何か用ですか?」

 

『今から外に出られる? イッセーと小猫、キマリス君とソーナの兵士が勝手な事をしていたの。お灸を据えてあげたいから一緒に来てもらえるかしら?』

 

「分かりました。場所はどの辺です?」

 

 

 あちゃ~バレたか。声からして地味に怒ってるな……可哀想に。こっちは怒る気はさらさら無いがあのお二人は厳しいからねぇ。

 

 グレモリー先輩から場所を聞いて四季音と水無瀬に出掛けてくると伝えてから転移。次に俺の視界に入ってきたのは公園で赤龍帝と匙君、白髪ロリ――そして血だらけの犬月だった。俺がやってきたのと同時に先輩方が転移してきたけどまず目に入ったのが血だらけの俺の眷属だったんだろう……凄く驚いてた。誰だって目の前に血だらけの男が居たらビビるわな。

 

 

「おう、さまぁ……カッコわりぃところ、みせてるっすね」

 

「全くだ。アリス・ラーナにでもやられたか?」

 

「……そっす。四肢のどっかを斬り落とされなかっただけラッキーでしたよ……全然、勝てなかった」

 

「当たり前だ、負の感情丸出しで勝てるほどあいつは甘くねぇぞ。んで? このまま黙って帰る気じゃねぇだろうな?」

 

「んなわけ、ねぇっすよ!」

 

「良い返事だ」

 

 

 影人形を生み出して包帯のように変化させ、犬月の身体に巻き付けて止血を行う……この場にシスターちゃんが居たら回復をお願いしたかったがいない奴の事を考えても仕方がない。周りも突然の事態に驚きを隠せないようだが生憎キレてるわけじゃないから安心してほしい。

 

 

「影人形を変化させて包帯代わりにした。動きにくいと思うが我慢しろよ。犬月、アリス・ラーナはどこに居る?」

 

「……あざっす。あいつの匂いはどこにもねぇけどイケメン君や聖剣使いの匂いを追えば問題ねぇっすよ」

 

「んじゃよろしく」

 

「待ちなさいキマリス君」

 

 

 犬月を連れてこの場を離れようとするとグレモリー先輩に引き留められた。うわっ、めんどくせぇ……黙って逃げて良いかな?

 

 

「どこに行くのかしら?」

 

「犬月と戦った女の所ですよ。何か問題でも?」

 

「あるわ。貴方……イッセーがこのような事をしていた事を知っていたのね。何故止めなかったのかしら?」

 

「止める理由がありますか?」

 

「……どういう意味かしら?」

 

「個人の自由を奪う事なんて誰にもできませんよ。俺にも先輩にも生徒会長にもね。確かに夜空と飯食ってる時に赤龍帝達が密談してたのを見てましたし犬月からも聞いてました。でも本人たちがやりたいって言ってるんだからやらせておけばいいと判断したまでですよ。それに前に言わなったでしたっけ? 俺は最低最悪で自己中で自分勝手な邪龍様ですよ? 止めるとかめんどくせぇ事するわけないですよ」

 

「そうだけど……でも、貴方も王よ。眷属の行いでもし戦争になったらどうするつもり?」

 

「その時はその時ですよ」

 

「……はぁ、キマリス君。貴方のその考えが間違っているとは言いません――ですがいずれ、その考えは誰かを不幸にします」

 

「不幸、不幸……くくく、くっくく……! あはははははは!!」

 

 

 笑えるな。不幸になるか……生徒会長ってば面白い事を言ってくれるよ全くさぁ! 不幸を通り越して災厄に近い邪龍をこの身に宿してるってのに不幸になる……やっべ腹いてぇ!! もう真面目な生徒会長からそんなギャグ言われると俺もうどうしたら良いか分かんねぇ!!

 

 いきなり笑い出した俺に驚き、いや恐怖を抱いてしまったのかグレモリー先輩も生徒会長も、この場に居る犬月を除いた全ての人物は一歩だけ後ろに下がっていた。

 

 

邪龍()にとって不幸は普通ですよ? 今までずっと不幸だったんですから。ガキの頃に自分の家の奴らに殺されかけて、神滅具宿してる事が分かったら上は掌返し。自分で与えた地位の癖に陰で罵ってあいつ等ホント暇だよな。マジで近い将来あいつらぶっ殺すか……まぁいいや、生徒会長」

 

「……なんですか」

 

「不幸、その程度だったら俺は何度も味わってますよ。よく分かっていないようだから言わせてもらいますけど――ドラゴンを宿してる奴の人生を軽く見てんじゃねぇよ」

 

 

 犬月を連れてこの場から離れる。ドラゴンを宿している奴の運命は酷く残酷だ。強い力はさらに強い力を引き寄せる……良い奴も悪い奴も関係なくな。ガキの頃にキマリス家の奴らに母さんと一緒に殺されかけて運よく夜空に出会い、助けられた。その日から地双龍、影龍王として光龍妃と殺し合う日々が始まったんだ。それが嫌だってわけじゃない……やめたいというわけでもない。俺がムカついているのは自分の価値観で不幸と言う言葉で纏められるのが一番ムカつくだけだ。

 

 犬月も俺の苛立ちが分かっているのか終始無言だった。イケメン君達の匂いを追って案内はしてくれてはいるが言葉は話さない。悪いな……気を遣わせてよ。

 

 

「ほう。これは面白い奴が来たものだ」

 

「黒井君!?」

 

「影龍王……何故此処に!?」

 

 

 案内された先にいたのは傷ついた様子のイケメン君とゼノヴィア、ダメージを負って膝を地に付けているイリナ、それらと相対するはぐれ悪魔祓いとアリス・ラーナ。色々とカオスな状況だが上空で笑みを浮かべている黒い翼が生えた男――コカビエルの存在感がヤバい。背に十の翼を生やして俺の到着が嬉しかったのか狂気染みた表情になっているけどきっと俺も同じだろう。

 

 

「コカビエル。やっと見つけたぜ」

 

「ククク……まさか影龍王が直々に俺の前に立つとはな! この町に来てよかったとすら思うぞ!!」

 

「そりゃどうも。あのさ、アンタを殺す気でいるんだけど良い?」

 

「ほう。俺を殺すときたか! 良いだろう!! では殺し合お――ごほっ!?」

 

「――なるほど、そういう事か」

 

 

 即座に禁手化、影龍王の再生鎧を身に纏いコカビエルに突撃して腹に一発拳を叩き込んだ。その時の感触で全て理解した……目の前にいる男は本体ではない。恐らく幻術、しかもエクスカリバーによって作られた高度なものだ。いわば有幻覚と言うべきか? すげぇなエクスカリバー。それを使っている奴もすげぇけど。

 

 

「コカビエル。アンタ此処にはいないな?」

 

「――よく分かったな。この俺がこんな場所に訪れるわけないだろう? 高みの見物をさせてもらっているさ」

 

「……なんだと!」

 

「きゃっは~! うちのボスがそう簡単に出てくるわけねぇだろ! ねぇねぇどんな気持ち? 見つけて喜んでいたのに実はいませんでしたとかどんな気持ちィ~? つかテメェ!! この僕ちんの美しいお顔を台無し死してくれたあ~くまさんじゃあ~りませんか? し・ね・よ――ぶへえ!?」

 

 

 人の速度じゃない速さで近づいてきたはぐれ悪魔祓いをぶん殴って黙らせる。あらら、顔半分潰れてるのにもう半分も潰れたな。良い男が台無しだぞ? でも殴った時の感触的にこいつは実体だな……コカビエルだけがこの場にいないという事か。

 

 

「状況は不利と判断します。擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)と共に一度撤退します」

 

「いたい、いたぁ~い! 顔がぁ~つ・ぶ・れ・たぁ!! つかこんのクソビッチ! 何逃げようとしてんだよあぁん? おいてかないでぇ~!」

 

「ククク……影龍王! お前との決着はこの場よりもふさわしい場所で行おう! 場所は駒王学園だったかな? 魔王の妹二人と貴様が通っている場だ、エクスカリバーの集約にはふさわしい」

 

「ま、待て!!」

 

 

 イケメン君の言葉も空しく銀髪女とはぐれ悪魔祓いはどこかに消えた。今の言葉が本当だとするとコカビエルは駒王学園に居るって事か。そこでエクスカリバーを一つにしようというわけね……幻術を使った偽物でこの場を訪れるとは案外用心深いな。流石幹部、やることが小物っぽいけどエクスカリバーの一本を持っていかれたのは最悪だな……エクスカリバーが一本になるための駒が揃いつつある。

 

 地面に降りて一番ダメージが大きいであろうイリナに近づいてみると戦闘服と思われるボンテージっぽい服が破れていて非常に目に毒だ。すげぇ……デカい。俺と同年代でこの発育なの? 平家さん涙目じゃねぇか。

 

 

「このダメージじゃ復帰は無理だな」

 

「そ、そんな事はありません! まだ戦え――うっ……な、ん……で」

 

「貴様! イリナに何をする!!」

 

「足手まといで邪魔になるから気絶させた。聖剣も無くこの傷のままコカビエルを追っても完全に邪魔になるし人質にされたら困る。俺以外の方々はお優しいから人質ごとぶっ殺すという手は考えないんでね……文句があるならかかってこい。まぁ、傷云々って言ったら犬月にも言える事だが休めって言っても聞かねぇしもし仮に人質になったら迷わず殺すから問題なし。さてどうする? コカビエルを追うか此処で俺に気絶させられるかの二択だ。好きな方を選べ」

 

 

 腹パンで気絶させた女を担ぎながら残った二人に殺気を織り交ぜた視線を向けると無言で武器を下ろして頷いた。手も足も出ずに此処で潰されるよりも一緒に追った方が得策……そんな判断が出来ているようで何よりだ。さてこいつをどうすっかなぁ……生徒会長にがん投げしよう。確かこの人の領地って医療が発展してる所だし預けておけば回復するだろう。

 

 二人と犬月、俺と荷物(イリナ)の四人で再び転移、先ほどの公園に戻ってくると何故か赤龍帝と匙君が主二人にお尻ぺんぺんされていた。うわぁ、眷属って言ってもペットじゃねぇんだからそれは無いだろ。戻ってきた俺達に気づいたのか視線をこっちに向けてきたので荷物を生徒会長に放り投げてコカビエルが駒王学園に居るという事を教える。勝手にやるとマジで魔王様に告げ口されてお叱りを受けそうだしな……でも何故だろう。そうなったらあの規格外がこの二人を殺す未来が見える……多分一瞬で死ぬだろう。だってこの人たち弱いし上級悪魔の中では中くらいだし。

 

 そんなわけで橘を除いた俺達キマリス眷属、先輩率いるグレモリー眷属、生徒会長率いるシトリー眷属と聖剣使い一人が駒王学園に集まった。目的は俺達からも伝えられた情報が事実だという事が判明したのでコカビエル討伐戦を開始するためだ。確認作業が必要なほどの嘘を言うほど暇じゃないんだけどねぇ……仕方ないけど。

 

 

「これより駒王学園の周囲を結界で覆います。これで外には被害は出ないでしょう」

 

こっち(キマリス眷属)からは三名ほど結界構築に人員を出す。平家と水無瀬、お前らは残れ。四季音と犬月は俺と一緒に中でパーティーだ」

 

「……あと一人は、もしかして新しい僧侶ですか?」

 

「そういう事。呼んだからもう少ししたら来る……あっ、来たわ」

 

 

 近くの地面に魔法陣が描かれてとある人物が転移してくる。それは巫女装束のような白い着物を身に纏っている俺の新しい僧侶――橘志保。肩にはオコジョを乗せており、少し急いできたのか息が乱れている……その仕草が地味にエロい。その人物の登場に真っ先に驚いたのはグレモリー、シトリー両陣営の兵士二名で目を擦って夢かみたいな反応をしている。確かにいきなりテレビでしか見れないアイドル橘志保が巫女っぽい服装をして魔法陣から出て来たら驚くよな。

 

 

「お、遅れてすみません! 橘志保! ただ今到着しました!」

 

「いやいきなり呼んだこっちが悪いんだし気にしてねぇよ。てかなんでその格好?」

 

「私の戦闘服です。悪魔さんは一度見ていたと思うんですけど……?」

 

「……あぁ、そういえば初めて会った時はその格好だったな。なんせ結構前の事だから今の今まで忘れてた。その服装、似合ってるぞ」

 

「あ、ありがとう……ございます」

 

「女たらし」

 

「おいこら。いきなりヒデェ事言うな――あん? なんだ赤龍帝に匙君? なにこの肩に置かれた手は?」

 

「黒井……いや黒井様、一つだけ聞かせろ、いや聞かせてください!」

 

「あの……橘志保さん、いやしほりんがなんで此処に居るんだ!?」

 

「俺の僧侶だからに決まってんだろ」

 

「はい! 数日前に悪魔さんの僧侶になりました。橘志保です! アイドル活動は一時休業しちゃったけどよろしくね♪」

 

 

 いつものように素晴らしい笑みとポーズで挨拶をした。うん揺れたね、ホント揺れたわ。マジでデカい。

 

 

「ほんものだぁぁぁぁ!! うぉぉぉぉぉ!!! 会長の兵士やっててよかったぁ!!」

 

「悪魔やっててよかったぁぁぁぁぁ!! お、俺! 兵藤一誠! よ、よろしく!!」

 

「兵藤テメェ! 俺は匙元士郎っていうんだ! よろしく橘さん!」

 

「はい。よろしくお願いします! えっと、近々駒王学園の方にも転入予定なのでよかったら仲良くしてもらえると嬉しいです」

 

「するする! 仲良くしよう!」

 

「俺は生徒会に所属してるから何かあったら言ってくれ!」

 

 

 男二人の異常な盛り上がりに俺達はドン引きだった。流石アイドル……笑顔を崩さない素晴らしい笑みだ。平家から聞いたが心の中でも赤龍帝と匙君の反応は嫌がってるような感じではないらしい。流石アイドル! すげぇ……アイドルの鏡だわ。しかし橘が来ている巫女服っぽい服装だけど機動性を地味に重視してるのか所々に素肌が見えるようになってやがるな。特に腋、腋見えてるよ! いやぁエロいわぁ。アイドルの脇が見放題とか王やっててよかったよ割とマジで。

 

 

「というわけで橘も学園に通う予定なので色々とよろしくお願いします。一応パパラッチとかそこらへんの対応はこっちでもするんで迷惑になるようなことはしないことはお約束します」

 

「お願いします。ですけど……まさかアイドルの方を眷属にするとは思いませんでした。キマリス君の趣味ですか?」

 

「んなわけないでしょ。あいつ、退魔の家系で昔、あいつの両親に召喚された事があってそれが縁で今まで契約のお得意様だったんですよ。ただとある情報筋から堕天使が狙ってるみたいな事を聞いたんで先手を打つために眷属にしました。あの……まさかさっきの事を根に持ってます?」

 

「さぁどうでしょうか」

 

「うわっ、根に持ってるよこの人……おっとそうだ。橘、来てもらってあれなんだが今回は結界構築に力を貸してほしい。長くなるから説明を省くが学園の中に悪人がいるからそれをぶっ飛ばすまで外に被害が出ないように頼む」

 

「分かりました。結界でしたら得意ですし全然問題ありません。悪魔さんのお役に立てるならいっぱい頑張りますね!」

 

「……相棒、俺泣きそう」

 

『良い子だなぁ。どっかの大酒のみやヒッキーも見習ってほしいぜぇ』

 

 

 こんな良い子が俺の眷属でいいんだろうか? いや良いな! 癒し枠が必要だったし何も問題は無い! あと脇が素晴らしいです!

 

 橘は後ろに控えていた平家達と合流して色々と挨拶をしたりしている。うんうん、仲良い事は素晴らしい事だが平家がすっげぇ微妙な顔してる。仲良くしなきゃいけないけどなんか嫌みたいなそんな感じ。橘の心でも読んだんだろうけどあんな良い子が俺みたいなゲスっぽい事を考えるわけねぇのに何であんな変な態度になってんだか……まさか自分より女の子らしい奴がやってきて俺を奪われるとか思ってんのか? やっぱ可愛いなあいつ。

 

 

「コホン。では状況を纏めます。現在コカビエルは賛同する者を連れて駒王学園内に潜伏しています。私たちシトリー眷属とキマリス眷属から水無瀬先生、平家さん、橘さんの三名が周囲に結界を張りますが一時的でしょう。コカビエルが本気を出せばこの辺り一帯を焦土にできますから……リアス、魔王様に報告は――」

 

「……しているわ。お兄様が此処にやってくるまで一時間弱、私達は足止めと言った所ね。今の私達ではコカビエルには勝てないもの……キマリス君、貴方ならコカビエルに勝てる?」

 

「勝ちますよ。あの程度なら覇龍を使わなくても問題ないですが……問題はあの規格外が乱入してくるかもしれないって事です。夜空からは今回の件には関わらないと聞いてますけどやっぱりやめたぁ~とか言って転移してくるかもしれません。そうなればおれは夜空を抑えないと周りが死ぬんでコカビエルを放置する事になりますね」

 

「そう……来ないことを祈りたいわね」

 

「まぁ、それが無い限りはコカビエルはお任せを……先輩、犬月の治療をしてもらいありがとうございました。これであいつも心置きなく戦えます」

 

「戦力は一人でも多い方が良いもの。お礼ならアーシアに言ってちょうだい」

 

「既に言ってますよ。でも王である貴方にも一度、ね」

 

 

 シスターちゃんの神器によって犬月は完全回復している。だから学園内に居るであろうアリス・ラーナともう一度本気で戦えるというわけだ……コンディションは万全で落ち着いている。今度はさっきのような状態にはならないだろう。期待してるぜ俺の兵士君。

 

 グレモリー先輩の騎士、イケメン君も落ち着いている様子だけど心の中はドロッドロだろうなぁ。暴走してうちの眷属に被害が出そうになったら有無を言わさず叩き潰しておこう。聖剣使いの方は……片割れが心配なのか別の方角を見ているようだ。生徒会長の領地にある病院で手当てを受けてるようだし死にはしないんだから殺し合いに集中してほしいよ。

 

 

「――では行きましょう。コカビエルの野望を打ち砕くわよ」

 

「――行くぞ犬月、四季音。俺の楽しみを奪ったら殺すぞ」

 

 

 こうして俺と先輩は眷属を率いて学園内に入っていく。

 

 それは殺し合いの始まりを意味しているが関係ない――普通に殺すだけだしな。




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