ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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18話

「こりゃまたとんでもねぇことしてるなぁ」

 

「そりゃエクスカリバーを一本に纏めようってしてるんすよ? これぐらい派手じゃなかったらどうするんすか」

 

「それもそうか」

 

 

 グレモリー眷属と共に堂々と正門から入り進んでいくと校庭に出た。既に赤龍帝と犬月の二人は昇格を行って女王へ変更しているからか普段よりも力が高まっているけど現段階で女王状態が強いのは犬月だな。この辺は悪魔慣れしてるかしてないかの違いだろう……それはそうとマジでとんでもない事をしてんなぁコカビエルちゃん。まさか校庭に魔法陣に描いて聖剣(エクスカリバー)()本地面に突き立てているなんてねぇ。あれ四本? てことは最後の一本の支配の聖剣は手に入ってないって事か。

 

 でも別れていたのを一本にするんだし強力なのは変わりないか。しかも見た感じもうすぐ終わりそうなんだけど……気のせい?

 

 

「イケメン君? あの魔法陣の真ん中にいるのが協力してる司祭様?」

 

「……はい、バルパー・ガリレイ。狂っている狂信者です」

 

「そりゃ狂ってないと狂信者って言わないわな。てかマジで禿じゃん、夜空の太もも見た罪はとりあえず死んで償って貰わねぇとな」

 

「そんな理由なの……貴方、光龍妃とどういう関係なのかしら?」

 

「ごく普通の殺し合うお友達?」

 

 

 本当は違うけどグレモリー先輩に言うならこれで十分。だって呆れて視線を上空に向けてるもん。禿司祭はこの際どうでも良いから俺も目的の人物へと視線を向けると上空にバカじゃねぇかと思えるほどのデカい椅子を浮遊させてそれに座っている悪人面の男――コカビエルがいる。足を組んで余裕そうに俺達を見下ろしているところ大変申し訳ないがそこまで強くないのに何故余裕そうなのか? たぶん四季音でも勝てる……あぁ、どうだろ? 悪魔になって光が弱点になってるし精々互角?

 

 周りを見渡してみると校庭の魔法陣付近に居るのは禿司祭と顔半分を仮面で覆い、もう半分が酷く腫れている白髪の男に犬月が殺したくてたまらない銀髪の女。あれ? 俺がコカビエルを相手にしてアリス・ラーナを犬月、そんではぐれ悪魔祓いをイケメン君か聖剣使いが相手をするとなると……他の奴は観客になるな。うわっ、四季音がキレそう。

 

 

「ようこそ影龍王、そしてサーゼクスの妹よ。俺の名はコカビエル、堕天使の幹部……と、自己紹介はいらないだろう。この場に来てくれたことを感謝するぞ」

 

「えぇ。ごきげんよう墜ちた天使の幹部さん。私はリアス・グレモリー、この土地を魔王様より任された悪魔よ。私の土地で何をしようとしているか知らないけれどこのような事をしてタダで済むと思っているのかしら?」

 

「思ってはおらんよサーゼクスの妹。俺は戦争が起こせれば十分なのさ、さて俺と戦うのは影龍王か? それともサーゼクスか? セラフォルーか? まさかリアス・グレモリー、お前か? 止めておけ、影龍王ならば勝機はあるがお前程度では俺は倒せん。それとも……魔王は来ないとでも言うつもりか?」

 

「魔王様はまだ来られないわ。貴方と戦うのは影龍王よ! 私は……私達はもし彼が貴方に負けた時に魔王様が来られるまでの時間を稼ぐわ!」

 

「ククク……サーゼクスはまだ来ないか。随分と余裕じゃないかサーゼクス・ルシファー!」

 

 

 掌で顔を隠して高笑いをし始めたコカビエルを見て思ったのが……隙だらけじゃね? 夜空や白龍皇だったら会話中でも隙はねぇぞ。やっぱこいつ三下の部類だわ。というより先輩先輩、まさか俺が負けると本気で思ってるんですかね? 思いっきりドーンと背後に文字が出そうなぐらいドヤ顔でしたけど普通に勝ちますよ? だって堕天使の幹部って言ってもピンからキリまでいますし。雷光と呼ばれるバラキエルって人だったらまだ分かんないけども。

 

 俺のそんな考えを察したのか分からないがコカビエルは自身の目の前にデカい光の槍を作り出して俺達の方へと放ってきた。一般的な堕天使が放つモノよりもはるかに巨大で強力、隣にいる先輩は冷汗が出ているのが見ていてわかる。でも言わせてほしい――

 

 

「――弱い。影人形(シャドール)

 

『ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!!!』

『ObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtain!!!』

 

 

 禁手化して鎧を纏い、そのまま光の槍へと突撃。こうして近づいてさらに分かる……夜空が放つ光の方が数万倍は強くて威力あるな。流石規格外ってか? 幹部クラスが放つ光よりも強力なものを放つ人間を人間の括りに入れて良いのか分かんねぇ。

 

 背後に影人形を生成、向かってくる光の槍にラッシュタイムを叩き込む。両腕からそれぞれの能力を発動している事を知らせる機械音声が流れ始めて影人形が殴るたびに光が徐々に小さくなっていく。一分も掛けずに槍を防いだ後でコカビエルの方を見るとそいつは笑みを浮かべていた。面白いと、楽しませてくれそうだという事が丸分かりな笑みだ。流石戦闘狂っていうべき? 気持ちは分かるけどね。

 

 

「流石だな影龍王! 光龍妃と殺し合っているからこその力か!! なぁ影龍王? 俺と共に来ないか? 貴様もドラゴンを、邪龍を宿している者ならば闘争がどれほど大事か分かるだろう? 俺と来れば死ぬまで殺し合いが出来――ぐうぅっ!?!?」

 

 

 黒のオーラを放ち、空に軌跡を描きながらコカビエルに接近して顔面を普通に殴る。椅子に座って余裕そうにしているのが俺的に非常にムカつくから顔面に拳を叩き込んだまま体を捻り、雑魚(コカビエル)を地面に叩き落とす。攻撃してきたという事は殺し合いの始まりだって言うのに悠長に会話しようとしてんじゃねぇよカス。なんかイライラしてきたからこの怒りを発散させるために奴が座っていデカい椅子を影で包み込んで能力発動、それなりの硬度を持っていた椅子は数十秒もすればクッキーのように脆くなり自然に崩れ落ちていき最後は砂になった。

 

 

「立てよ幹部様。まさか十数年しか生きてない男の拳一発で沈んだりはしないだろ? ほら早く、早く。堕天使の幹部なんだろ? だったら早く俺と殺しあえよ!」

 

「――ククク! 面白いぞ影の龍!!」

 

 

 地面に落ちた事を無かった事のように翼を広げて俺の前まで飛んできた。さぁ、始めようかコカビエル……殺し合いをさ!!

 

 

「先に言っておくけどテメェ程度が引き起こす戦争には興味ない。暇になったら俺自身で引き起こすさ」

 

「そうか。ならば此処で死んでおけ影の龍よ!! 他の奴も退屈しない様に遊び相手をくれてやる!!」

 

 

 地面に複数の魔法陣が描かれなにかが転移してくるのが見える。それは俺達の身長を軽く超すほどの巨体、首が三本生えている犬――人間界で有名な魔物の一体、ケルベロス。確かに地獄の番犬と呼ばれるほどの魔物で比較的強い方ではあるが……四季音相手だしなぁ。

 

 

「酒飲み! この犬はテメェに任すぜ!」

 

「にしし! ケルベロスが相手かい……こりゃ暇になるねぇ。ノワール、これ終わったら相手してくれない?」

 

「言うと思った。いくらでも相手してやるよ」

 

「ケルベロスを相手に暇に……? いいえ! 確かにこの人数ならば例え地獄の番犬と言えども苦戦することは無いわ! イッセー! 小猫! 朱乃! 裕斗! 私達グレモリー眷属の力を見せつけるわよ! アーシアは後方に下がって治療に専念してちょうだい!」

 

「わっかりました部長! 行くぜ! 赤龍帝の籠手ァ!!」

 

「ふむ……フリード。統合したエクスカリバーを使え。既に統合は完了している」

 

「おっけ~いやぁ、凄いねこの剣!! もう何でも斬れそうだわぁ! 辻斬りの気持ちわかっちゃう俺様ってかっちょいぃ~!」

 

 

 上空に飛んでいるから地上の戦闘が丸見えなんだけど……うわっ、流石にケルベロスと言えどもやっぱり四季音には勝てねぇか。なんかワンパンで数十メートルは打ち上がってんだけど?

 

 

「おいアリス・ラーナァ!!!」

 

「呼びましたか?」

 

「聞かせろ……なんで俺の両親を殺しやがった!? 何の理由で殺したか聞かせやがれ!!」

 

「その問いに対する答えは一つです。仕事でしたから殺しました」

 

「……やっぱりかよぉ! そんじゃ、俺もテメェを殺すのは仕事だぁ!!」

 

「ご勝手に。ですがこの人数が相手となると使わざるを得ませんね――禁手化」

 

 

 まさかの禁手化できんのかよ? うわっ、これ犬月単体じゃちょっときついか? 人間の身で禁手化に至っているという事はかなりの場数を踏んでいると考えて良い。世界の流れに逆らうほどの劇的な変化が無ければ禁手には至れない……犬月、死ぬなよ?

 

 銀髪女の目の前には一本の剣が生まれている。刀身が光の刃でそれ以外は一般的な剣の装飾だ……眩いほどの光の刃の剣を握りしめ、銀髪女は犬月と向かい合う。

 

 

光刃創造(ホーリー・エフェクト)の禁手、光刃を操りし(ジル・ザ・リッパー)切裂姫(・ホーリーパペッター)。この剣で確実に貴方を殺しましょう」

 

「禁手化……王様や光龍妃以外でも出来る奴がいんのかよ……! 舐めてんのか!? 何で一本しか出さねぇ!? さっきみてぇに複数生み出せんだろうが!!」

 

「その問いに対する返答。私の禁手化はこの一本だけです。ですが――」

 

 

 瞬時に犬月の背後に回り込んだ銀髪女は剣を振るう。女王状態だからかかすり傷程度で済んだようだがそれにしても速すぎるな……禁手化としての能力かなんかか?

 

 

「禁手化としての力の全てを一本に集めています。ただの一本の剣だからと言って油断していますと死にますよと忠告しておきます」

 

「――そりゃ、どうもぉ!!」

 

「良い眷属だ。殺気も中々のモノ、影龍王眷属に相応しいと褒めておこうか」

 

「テメェに褒められてもなぁ」

 

 

 神々しいほどの光の槍を複数飛ばしてきやがったので影人形のラッシュタイムで防ぐ。下手に躱すと地面にいる奴らがあぶねぇしな……特にシスターちゃんとか戦闘できないから誰かが護っていないとヤバい。一応その役目は赤龍帝がガードとして近くにいて他の奴らはケルベロスと戦ってるみたいだけどそれでもヤバい事には変わらない。聖剣使いが持つエクスカリバーのお蔭で魔物相手は楽そうなんだけど……すまん、あの程度で圧勝できないとかマジ足手まとい。

 

 なんて事を思っていたら真下からケルベロスが打ち上がってきた。反射的に拳を突き立てて影をケルベロスの体の中に流し込んで力を一気に奪うのと同時に殺したけどあぶねぇなおい……四季音ぇ! テメェなんだその顔!! 惜しいとか言いそうな表情してんじゃねぇよ!?

 

 

「もうちょっと速くした方が良いかねぇ?」

 

「ふざけんなこんの合法ロリィ!! テメェマジで全裸にひん剥いて犯すぞ!! 邪魔すんなって言ったよな!?」

 

「暇なんだもんしょうがないじゃんか。この程度、お酒飲んでても余裕なんだよ、っとはいシュート!!」

 

 

 またしてもケルベロスの頭を掴んで俺に投げつけてきやがった……ふざけんのも大概にしろよこのロリ鬼!! 影人形でコカビエルを相手、俺は片腕に影を集約して黒いオーラ状へと変異させて投げられたケルベロスを掴み影で覆う。先ほどと同じように力を奪うのと同時に缶を潰すように力を入れてケルベロスちゃんを握りつぶして殺害……力の上昇にはなるんだけどめんどくせぇ。マジでめんどくせぇ。

 

 

「……すっげぇ、これが黒井の眷属の力なのかよ」

 

「力だけなら小猫以上だわ……イッセー! 私に力の譲渡を!!」

 

「私にもお願いしますわイッセー君!」

 

「はい! 俺だって何もしてこなかったわけじゃないんだ! 行きますよ部長! 朱乃さん!」

 

「四季音、シスターちゃんの傍から離れるな」

 

「は~いなっと」

 

 

 上空を高速で移動しながらコカビエルを殴る。後ろの方に吹き飛ぶけど逃がしはしない……黒のオーラ状に変異している腕を伸ばして奴の身体に絡みつかせるように掴む。さてもう終わりかなとか思ったら自分の背から生えている翼を凶器に変異させて俺の腕を切断、そのまま距離を取られてしまった。流石に加減しているとはいえ反応速度は中々だな。

 

 腕を再生させて再び地上を見るとはぐれ悪魔祓いとイケメン君が対峙しているのが見えた。流石に四本のエクスカリバーを一本に纏めたからかそれぞれが持つ能力を使えるみたいだな。高速で動いて斬り合ってる二人を見て少しだけ羨ましくなる……コカビエルが予想以上に弱すぎてなんかやる気出ない。

 

 

「俺と戦っているというのによそ見とは余裕だな!」

 

「だってアンタ弱いんだもん。なんかやる気でねぇ……あぁ、そうだ。地面に描かれてる魔法陣からヤバい感じがするんだけどなんかしてるの?」

 

「既にエクスカリバーの統合は終わり、あと二十分もすればこの町が吹き飛ぶんだよ! 防ぐには俺を倒すしかないぞ影の龍よ!」

 

 

 放たれた槍を影人形のラッシュタイムで防ぐ。でも良い事を聞いたな……その顔、驚愕のものに変えてやるよ。ただ問題は出来るかどうか……いや大抵の事は出来ると思えばできるんだし大丈夫だろ。この町が吹き飛んだらその時はその時よ。

 

 

「相棒」

 

『ゼハハハハハ!! 可能だぞ宿主様! 魔法陣の中心に腕を突き立てろぉ!!』

 

 

 コカビエルの胴体に影人形の拳を一発叩き込んで吹き飛ばした後、一気に地上に降りて魔法陣の中心を殴る。地面に突き立てた腕から影を放出して魔法陣全体を包み込むようにするとこの場にいる全員が何をしようとしているんだという顔になった……面白い事だからちゃんと見てろよ?

 

 

『ObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtain!!!!』

 

 

 影龍王の手袋が持つ能力の一つ、『影に触れた存在の力を奪う』を発動して魔法陣の力を根こそぎ奪っていく。コカビエルを倒さないと防げない? ふざけるな、この程度の術式なら俺の、いや相棒の力なら簡単に壊すことができるんだよ。腕を地面に突き立ててから時間が経つのと同時に魔法陣の光が弱くなっていき、一分ほど経った後に残されたのは先ほどまでの光が失われた魔法陣として描かれた模様。これならたとえ時間が経っても町は吹き飛ばないが……マジで町を吹き飛ばすには十分すぎるモノだなこりゃぁ。上昇率が半端ねぇぞ。

 

 

「なにを、した、何をした影龍王!!」

 

「魔法陣の力を根こそぎ奪っただけだが? これなら二十分経っても魔法陣の所だけが軽く抉れる程度で済むだろ。ねぇどんな気持ち? 自分を倒さないと防ぐ事ができない術式をこんなにあっさりと壊されてどんな気持ち? あはははははは!!! その顔さいっこうぉ!! 最高だぜコカビエルゥ! 堕天使の幹部でも驚いたらそんな顔すんだなぁ!!」

 

「――キサマァァァ!!!」

 

 

 上空を覆うほどの光の槍、もし落ちれば駒王学園は間違いなく跡形もなく消滅するだろうという規模のモノを俺目掛けて放ってきた。周囲の奴ら、いや四季音以外はマジかと言いたそうな表情だ。俺もマジかと思ってる……煽った結果がこれかよ。流石にこれは影人形単体じゃ無理だし二人で防ごうかね。

 

 上空に飛び上がり降ってくる光の槍に向かって影人形のラッシュタイムを叩き込みながら俺は変異している腕を振るって槍全体を影で包み込む。流石にこの規模だと腕が焼ける様に痛いが死ぬほどじゃない……夜空のを防ごうとすればこれの数倍は痛いしな。ついでにさっきから頻繁に色んな所から力を奪い取ってるお蔭で俺の力が上昇してるんだ……今更この程度止められないわけがない。

 

 極大の大きさを誇っていた光の槍は徐々に小さくなっていく。そしてやや時間は掛ったがどうにか力を全部奪い取って消失成功……光のせいで片腕が消滅したけど影を集めて再生する事で元通り。実質犠牲無しで防ぎきりました! でも白龍皇だったら数秒で消せるんだろうなぁ、触れてるだけで半減させれるとかホントチートだわ。

 

 

「……無限の影を生み出し、全ての力を奪い取る。伝説通りの化け物か」

 

 

 禿がボソッと呟いたけど丸聞こえだぜ? というか伝説通りじゃなかったら地双龍とか呼ばれてねぇし。

 

 あまりの出来事にコカビエルもやや放心状態。変化が無いのは犬月と銀髪女、イケメン君と聖剣使いとはぐれ悪魔祓いぐらいか。あいつらの場合は自分の戦いに夢中になっててそれどころじゃないって感じだけども。

 

 

「マジで化けもん、こりゃこの場から逃げた方が良いかねぇ?」

 

「フリード! 貴様には結晶を三つ使っているんだ! 逃げることは許さんぞ!!」

 

「あぁ~ヤダヤダ、勝手に埋め込んでおいてそれ言っちゃうのぉ? 俺っち、今エクスカァ~リバァ~ちゃんもってんのよ? 斬っていいのかな?」

 

「……結晶だと?」

 

 

 イケメン君が疑問に満ちた声を上げた。それは俺も気になった……エクスカリバーを使えるほどの逸材が大量にいるはずがねぇから何かしらの事をしたんだとは思っている。その答えを禿司祭は高らかに笑いながら説明してくれたよ――胸糞悪くならない事だったけど。いや普通だったから拍子抜けって奴?

 

 聖剣計画――聖剣を使うためには因子が必要なのは各勢力も知っている。この計画はそれを持っている奴らを一カ所に集めて因子を抜き出して聖剣を使えるほどの因子に集めるというものらしい。それを体内に埋め込むことで使えない人間も聖剣使いとして所謂転生みたいなものにできるそうだ。ゼノヴィアって奴の口ぶりだとどうやらこの場にいないイリナって奴はそれのお蔭で聖剣を使えるようになったらしい。いやそれは良いんだがそこにいる銀髪女もその口か?

 

 

「もっとも彼女のような天然物もいるがねぇ。ほら、最後の一個だ。既に量産できるほどの研究成果は出ている。欲しいならくれてやろう」

 

 

 流石禿司祭、空気読んだね。なるほど……人工的に増やされた方じゃなくて生まれつき聖剣を使える体質ってわけね。そんな奴が教会に属さないで金で引き受ける殺人鬼もどきとか世も末だな。

 

 光り輝くほどの結晶体、それをイケメン君は重い足取りで近づいてその胸で抱きしめる様に地面に膝をついた。涙を流して懺悔をするように自分の気持ちを独白、先輩たちもその空気に飲まれて戦うのを止めてそれを見つめている――その時だ。ドクンと俺の心臓が強く打った。イケメン君に抱きしめられている結晶から声が響く……伝えたい、彼に力を与えたい、苦しみから解放したいという声が無数に渡って頭の中に響く。うっぜぇ……うぜぇし五月蠅い、はいはいやればいいんだろやれば!!

 

 霊操を用いて結晶内にある霊魂を外へ放出、イケメン君の周囲に幽霊として具現化する。マジで後で何かしらのモノで返してくれよ? 俺がこんな事するのはこれっきりなんだからな!

 

 

「およ? ノワールが空気を読むなんてめっずらしぃねぇ」

 

「頭の中に声が響いて五月蠅いんだよ。はいはい、なんか面白いこと起こりそうだから邪魔は無しな」

 

 

 怒りの感情に包まれているコカビエルを殴って影で拘束、そのまま影人形のラッシュタイムを叩き込む。逃げようとしてるみたいだけど今回は翼を開けない様にしている上、能力で力を奪っているから早くしないと赤龍帝にも殺されるぐらい弱くなっちゃうぜ? あとラッシュタイムを耐えきったらの話だけど。ついでとばかりに禿司祭とはぐれ悪魔祓いも影で拘束して完全にイケメン君が起こそうとしているステージを整えました! 俺って優しぃ~いや他の奴らは逃げられたらめんどくせぇからだけど銀髪女の方は犬月が血だらけになりながらも相手してるから問題ないだろ。

 

 イケメン君は幽霊となった少年少女と話し合い、強い意志を持った瞳でエクスカリバーを見つめる。なるほど――至ったか。

 

 

『そのようだぜぇ。禁手化するぞ』

 

『兵藤一誠、見ておくと言い。これが――禁手に至った者の姿だ』

 

 

 多くの、いやグレモリー眷属の強い声と自身の気持ちが合わさった結果なのかイケメン君の手には一本の剣が握られている。それは輝くほどの光と禍々しい闇が混ざり合ったようなもの……マジでぇ? 光と闇を融合しやがったよ!!

 

 

「……聖魔剣、だと!! なんだそれは!? ありえない……聖と魔の融合なぞあり得るはずがない!! フリード!! 早くこの影を斬り裂け!」

 

「んな事言ってくれちゃっても動けねぇんだっつぅの!! あぁクソ! ちゃっちゃと離せやくそ悪魔ぁ!!」

 

「ヤダ。にしても光と闇の融合ねぇ……面白いもの見れたからもう満足だ。コカビエル? お前との遊びは此処までにするわ」

 

 

 影人形のラッシュタイムを浴び続けたせいで顔面は腫れて四肢の骨とか色んな所が折れてるだろう。弱弱しい瞳で俺を睨みつけてくる。はぐれ悪魔祓いはコカビエルの姿を目にすると負け濃厚と判断したのか統合されたエクスカリバーを変化させて影を切断、そのまま逃走を図ったがイケメン君がそれを許さなかった。エクスカリバーを叩き折る、たったそれだけの思いが禁手まで至ったんだ……俺の影に触れて力を奪われていたはぐれ悪魔祓いじゃ勝ち目はない。いくつかの剣劇の後、エクスカリバーは叩き折られて本人もイケメン君に斬られて終了。この場に残されているのはコカビエルと禿司祭と銀髪女だけだが……もう勝ち確定だな。

 

 

「……戦況は不利と判断。まさかここまでしぶといとは思いませんでした」

 

「あいにく、王様と殺し合ってるんでねぇ!! しぶとさには結構自信あんのよ!!」

 

「そうですか。犬月……貴方は犬月と呼ばれていましたね。この勝負は貴方に譲ります。次は必ず――殺すと言っておきましょう」

 

「逃がすわけねぇだろうがぁぁ!!!」

 

 

 騎士に変更したのか圧倒的な速度で銀髪女に接近するも一閃を受けて膝をつく羽目になり、その瞬間を狙って銀髪女はどこかに転移していった。怒りの咆哮を上げているがあの実力差で生き残っただけでも成長しているって思えばいいさ。よく頑張ったな犬月。

 

 

「アリス・ラーナ……! しかし何故だ……何故このような事が起きている……まさか、く、くひひひ! そうか! そう言う事なのか!! 聖と魔のバランスが崩れているという事は――神は死んでいるという事かぁ!!」

 

 

 うわっ、気づいちゃったよこの人。たったあれだけの事でそれに気づくなんてホント狂ってるな。

 

 

「神が、死んでいるだと……ふざけるなバルパー・ガリレイ!! そのような戯言は――」

 

「聖剣使い? ごめん、それ事実なんだわ」

 

 

 コカビエルを拘束しながら地面に降りる。既にコカビエルちゃんの力は最初に会った時よりも大きく減っていてグレモリー先輩でも殺せるぐらいまで低下している。そんな事は置いておいて今は俺の発言で驚いている聖剣使いとシスターちゃんをどうするかだなぁ……隠しておけばよかったんだけど禿司祭に言われちゃったしもうバラしていいよね? 一蓮托生って言葉あるし大丈夫大丈夫。

 

 

「どうやら先の大戦で聖書の神は四大魔王と一緒に死んでるらしい。俺が知ったのは相棒、影の龍クロムを宿していた前の所有者がその事実に気づいたからね。一般的には神はまだ生きていると伝えられてるようだけど実際はもうお亡くなりになってて存在しないってわけだ」

 

「う、嘘だ……神が、死んでいる……? 嘘を言うな影龍王!! それ以上神を侮辱するならこの場で斬るぞ!! この命に代えても必ず!!」

 

「く、ククク……その、通りだぁ!! 貴様らが崇めている神は先の大戦で死んでいるんだよ!! 貴様らの祈りなんぞ最初から届いてはいないのさ! ミカエルの奴が裏で色々としてるから存在するように見えるけどなぁ……そこの小僧が聖魔剣とやらを作れたのも神と魔王が死んでいるからこそだ!! しかしまさか影龍王が知っているとは思わなかったぞ……この件を知っているのは各勢力のトップとその一部ぐらいだからなぁ!」

 

「まだ話せたんだ。結構タフだな」

 

 

 視界の端で聖剣使いとシスターちゃんが崩れ落ちるのが見えたけど俺のせいじゃない。事実に気づいた禿が悪い。だから先輩方、そんな批難染みた視線止めてくんねぇかなぁ? 殺しちゃうよ?

 

 なんか悪者扱いされてムカつくからさっさとコカビエルをぶっ殺すとしよう。そもそも元はと言えばこいつがこんな事をしなければ神が死んでいるなんてバレる事が無かったんだし。いや、起こしてくれたからこそイケメン君は禁手に至って犬月も一歩前に進むことができたわけだが……あれ? そうなるとコカビエルって良い奴? んなわけねえか。てか白龍皇に殺すねって言ったから殺しとかないとなんか恥ずかしい。お前コカビエルも殺せないのとか言われたらマジでキレそう。

 

 

「んじゃついでにもう一個ネタバラシするわ。コカビエル、今回の企みなんだけどアンタん所のトップは知ってるみたいだぞ?」

 

「……なに?」

 

「白龍皇から言われてね。だから此処で死ななくても身内(アザゼル)から粛清されるってわけだ――まぁ、此処で死ぬんだけどね」

 

「……アザゼルが、知っている……白龍皇、か、影龍王!!! まさかキサマァァァァ!!!!」

 

「殺していいよって白龍皇に言われたからちゃんと殺すよ? まさかとは思うけど殺せないとでも思ってた? 単に遊んでただけで最初に一撃で仕留めれたんだよ。それじゃあ――さようなら」

 

 

 拳をコカビエルの心臓付近に突き立ててそのまま引き抜いた。遊びとはいえここまで時間が掛かったのは色々と手を抜き過ぎたかもしれない……まっ、いっか。ちょうどお迎えが来たようだし。

 

 上空に大きな穴が開く。そこから出てきたのは眩いほどの圧倒的な白い全身鎧を身に纏い、背に光翼を生やしている存在と我らが規格外。あのさ……何でヴァーリと夜空が一緒にいるわけ? そもそもなんだよその丼? まさかまたラーメンデートか!? 俺がこうして殺し合っている間にデートしてたのか!?

 

 

「驚いた。本当にタイミングが合っているなんてね」

 

「でっしょぉ~? だってノワールと私って心で繋がってるもんねぇ。ラーメンうんめぇ~やっぱ白龍皇が選んだ店って最高だね!」

 

「それはよかった。さて影龍王、コカビエルを渡してもらえるかな?」

 

「ほらよ」

 

 

 死体となったコカビエルを近くの地面に放り投げる。ヴァーリはゴミ(コカビエル)を拾うために地上に降りてきたけど……なんで鎧纏ってんの? あぁ、素顔を見せたくないからか。さて残るのは俺の影に拘束されている禿司祭だけなんだけど……これって聖剣使いに渡せばいいのかなとか考えていると夜空がそいつを見た瞬間――禿司祭の頭部が吹き飛んだ。本来あるものが無くなったせいで周囲に赤い液体をまき散らすゴミと化したけど光線、所謂ビームみたいな光を頭部に当てて殺害しやがったよあの野郎……そこまで嫌だったか!

 

 

「お前何してんの?」

 

「変態だもん殺さなきゃダメっしょ? 人の太もも見てオナニーしようとしてる奴は死ぬべきだね。だからノワールも死ななきゃダメだぜ? だって私のパンツでしたんでしょ?」

 

「何で知ってんだよ。いやそれは良い……おい白龍皇! なんで夜空と一緒に居んだ!! 内容によっては今ここでぶっ殺すぞ!!」

 

「光龍妃からお腹が減ったと言われてね。先ほどまでおすすめのラーメン店で食事をしていたんだよ。まさかあそこまで食べるとは思わなかったが……何か不満でもあったかな?」

 

「大ありだが……その分だと会計がすげぇことになっただろうし今回は良いや。さっさとゴミを持って帰ってくれ。さっさと家に帰って寝たいんだよ」

 

「了解した。しかし助かったよ影龍王、俺もコカビエル如き戦うのは疲れるだけで楽しくはないんでね」

 

「だろうな」

 

『――無視か、白いの?』

 

 

 宿敵に相手にされていないからなのかやや怒り気味の赤龍帝――籠手内からドラゴンの声が聞こえる。そう言えば此処に二天龍と地双龍が揃ってるな……すげぇ光景だ。

 

 

『起きていたか、赤いの。どうやら出番はあまりなかったようだな』

 

『宿主がお前達より弱いからな。これからだよアルビオン』

 

『そうか。我ら二天龍、そして地双龍の中で今のお前は弱いぞ? 強くならねば私には勝てない』

 

『ゼハハハハハハ!! 面白い事を言うな白蜥蜴ちゃん! この前は無視してやがったのに相方見つけた途端饒舌になりやがって!』

 

『貴様の声は聞くに堪えんからな。少しは静かにしていろクロム! あと私の名はアルビオンだ!』

 

『クフフフフ! クロムに自己紹介をしても無駄ですよ。ドライグ、夜空は貴方の宿主に興味を持っています。強くならねば殺されますよ?』

 

『あぁ。肝に銘じておこう』

 

 

 此処はいつからドラゴンの同窓会になったんだ? 周りも異常な光景に絶句してるんですけど……約二名ほどさっきの神は死んだ発言で意気消沈してるようだけど俺は悪くない。結局、話が終わると白龍皇は別の所に転がっているゴミ(はぐれ悪魔祓い)を拾って夜空と共に転移穴を使ってどっかに行ったけどなんで一緒に帰るんだよ……いや良いけど、万単位の飯代払わされたようだし今回は許してやろう。

 

 

「さて終わったな。犬月、生きてるか?」

 

「……へへ、王様ぁ。俺って弱いっすね……女一人にすら勝てねぇなんて弱すぎるっすよ」

 

「そうだな。禁手化してたとはいえ人間相手にその様じゃ次に会ったら殺されるだろうぜ」

 

「……そうっすね、だから強くなる! 今度は殺せるように!! もっと強くなるっす!!」

 

「にしし! 良い眼だねぇ~よし分かった。じゃあ私が鍛えてやろう、鬼と戦ってれば人間程度簡単に殺せるぐらい強くなるさ」

 

「……お願い、します。いやテメェより王様の方が強いから王様でお願いします!」

 

「はぁ? 犬風情が舐めた口聞くと叩き潰すよ」

 

「こっちは何も問題なしか。先輩? そっちのシスターちゃんの様子は?」

 

「貴方のせいで強いショックを受けて気絶しているわ。どうしてくれようかしら?」

 

「元凶は夜空によって死んでますけど? 俺はただ補足をしただけに過ぎませんし……それに神の死はいずれバレましたよ。普通に考えれば誰だって気づくような事で隠しきれるような事じゃないですからね」

 

「……この後、色々大変よ。それは分かっているわよね?」

 

「分かってますよ。俺も先輩も神の死を知った以上は魔王様やらなにやらに呼ばれるかもですねぇ。その時は色々とお願いしますよグレモリー先輩。んじゃそう言う事でコカビエル討伐お疲れさまでした」

 

 

 四季音と犬月を率いて来た道を戻る。コカビエルが死んだことで魔法陣も意味は無くなり、エクスカリバーもイケメン君の手によって破壊された。禿司祭は夜空によって殺害されてはぐれ悪魔祓いもヴァーリが持って行った……既にやる事が無くなったからこの場にいる意味もない。学園の入り口付近でシトリー眷属と平家達が待っていたのでコカビエルを殺した事を伝えて家に帰宅。流石にまだ一緒に住んでいない橘は自分の家まで転移させたけど……お役に立てましたかと首を傾げて聞かれたらお役に立ったよと言うしかないだろ! だって可愛いもん!

 

 こうして若干色々とあったもののコカビエルが引き起こした事件は解決した。ただし欲求不満だった四季音が甘い声を出しながら殺し合おうと言ってきたのは言うまでもない……我慢しろよ。




光刃創造《ホーリー・エフェクト》
所有者 アリス・ラーナ
分類 創造系
能力 『光の刃の刀剣を任意に創造可能』

オリジナル神器でこの作品では聖剣創造の下位互換となっております。

観覧ありがとうございました!

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