ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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21話

「――で? 家に来ないで直接こっちに来た理由を、理由を……離れろっ!!」

 

「もうっ、動いちゃダメよ。折角親子の再会なんだからもう少し息子成分を補充させなさい。はぁ……これよこれなのよぉ、年に数回しか息子に会えないなんてお母さん寂しいの」

 

「だから離れろって言ってんだろうがっ!! おい蛇女! これどうにかしろ!! テメェこいつ専属のメイドだろうが!!」

 

「沙良さまのお邪魔は出来ません☆ メイドとはそうなのでっす!」

 

「殺されてぇのかテメェ!!」

 

 

 昼休み、俺達キマリス眷属五人はとある二人を連れて保健室を訪れていた。現在の状況はと言うと……美女に抱き着かれてます。いや美女って言っても実の母親なんだけど四十超えてるくせに見た目二十代と言う謎がある我が母親――沙良・キマリスに後ろから息子成分補充と称して抱き着かれてる。俺を椅子に座らせてその隣に座って抱き着くという器用かどうかは知らん事をしてくるが……離れてほしい、マジで離れてほしい。何処の世界に母親に抱き着かれて喜ぶ男がいるんだ……? 俺はマザコンじゃねぇしさっさと引き剥がしたいんだが強く出れないのも事実。片足が不自由なこいつ(母さん)を突き飛ばすだのなんだのは流石の俺でも出来ねぇよ。

 

 

「そもそもノワールさまがご実家に帰ってこない事が原因でっす! 親子の感動の再会なんでっすから諦めてください☆」

 

「帰ったらこうなるから帰らねぇだけだ! あぁもうウゼェ! いい加減離れ、離れ……もう好きにしろよぉ」

 

 

 全てに絶望した顔されたらもう何も言えなくなるから止めてくださいお願いします。見ろよ? 犬月と橘が驚きのあまり固まってるぞ……平家と水無瀬は何時も通りって感じだけど見てないで助けてくださいお願いします。

 

 

「お義母さんをノワールから離すなんて所業、私は出来無い」

 

「流石(さとり)でっすね、よく分かっていらっしゃいます☆」

 

「それほどでもない」

 

「あの……色々とツッコミ所が多すぎてあれなんすけど、王様に抱き着いているのがお母さまで良いんすよね? こっちのでっす口調の女誰っすか?」

 

「こちらはハイネギア・キマリス様の僧侶のミア、そしてノワール君に抱き着いている方がお義母様の沙良様です。えっと、沙良様はノワール君を溺愛と言いますか……その、大好きですのでいつもこうなります」

 

「可愛い一人息子なんだから同然よ。恵も早織もお久しぶりね、ノワールと仲良くしてる? この子ったらネギ君に似ないで不愛想だから迷惑をかけてない?」

 

「問題ないですお義母さん、毎日求められて――もがもが」

 

「早織? 何を言おうとしてるのかしら? え、えぇ! 何も問題ないですからご安心くださいませ、おほほほほ!」

 

「もがもが!!」

 

 

 漫才するぐらいならこの状況をどうにかしてくんね? てかキマリス領の実家に帰らないのもこれ(母さん)が滞在中ずっと離れないから帰りたくないだけだ。何処の世界に息子溺愛好き好きオーラ全開の外見詐欺年増と一緒に居たいと思う? あれ……文字にしてみると色々とアウトな気がする。その辺りのマニアにはたまらない感じがするんだけども……気のせいだな!

 

 それはそうと水無瀬? そろそろ平家が死にかけてるから離そうか。

 

 

「この方が悪魔さんの……あ、あの! 私、その、橘志保と言います! 悪魔さんの僧侶になりました! え、えっと……お義母様とお呼びしても……?」

 

「勿論呼んで頂戴。貴方が志保ちゃんね? 話は聞いてたけど私ってノワールに幼馴染の子が出来たらいいなぁって思ってたのよ。ほらこの子って一人っ子だし昔から仲の良い子がいなかったから幼馴染になってくれた貴方にお礼を言いたかったの。ありがとう、これからもこの子の事をお願いね?」

 

「は、はい!」

 

「いや待て、幼馴染って設定だぞ? 分かってるか?」

 

「勿論分かってるわよぉ」

 

「……全然わかってねぇなこりゃ」

 

「なんか王様と真逆っすね……あっと、俺は犬月瞬っす。王様の兵士してます」

 

「初めまして。沙良・キマリスです。ノワールからお話は聞いてるわ、見どころのある子が眷属になったって。これからもノワールと仲良くしてね? あとお母さんって呼んでも良いのよ?」

 

「い、いやぁ、か、考えておきます……」

 

「ハッ!? これは私も挨拶する流れでっすね! ミアでっす☆ ハイネギアさまの僧侶でキマリス家のメイドやってます! 何でも言ってください☆」

 

「んじゃ帰れ」

 

「いやでっす☆」

 

 

 この蛇女……実年齢百歳ほどの癖に女子高生風の恰好しやがって恥ずかしいと思わねぇのか? いやこの発言は冥界に居る女悪魔たちに喧嘩売るから止めとこう。ちなみに俺が蛇女と呼んでいる理由はこいつの種族的な意味でだ。ラミアと人間のハーフだから蛇女。ラミア族ってのは足が蛇のようになっているんだがこいつは半分だけ人間だからちゃんとした足がある……もっともラミアの血を強めれば変化させられるらしいけど。俺よりも百歳ほど年上だが敬意を持った態度なんて絶対に無理、というより笑みがムカつくからぶん殴りてぇ。

 

 

「もう今日は離れたくないわ。このままくっ付いてていい?」

 

「それやったら問答無用で親父に送り届けるが?」

 

「あら? ノワールが家に帰ってきてくれるの? だったらそれでいいわ! 偶には親子三人で暮らしましょう?」

 

「ちっげぇよ!! テメェだけ帰す、帰らせ……今日は家に泊めてやるからマジで離れろよぉ」

 

「……あの王様が手も足も出ないなんて、この人すげぇ」

 

「悪魔さんがあんな風になる所は初めて見ました」

 

「そりゃノワールってお義母さん大好きだし。多分お義母さんをケガさせたら世界滅ぶよ?」

 

「まぁ、大好きと言うよりも大切といった感じですけどね。今までのノワール君の態度を見てたら分からないでしょうけど……私も最初に見た時は驚きましたし」

 

 

 当たり前だろ? 母親だぞ? 大切にしないといけねぇだろうが。

 

 

「そういえばあの鬼はどこにいるんでっすか?」

 

「仕事中だよ。お酒飲んで働いてると思う」

 

「うわぁ平常運転でっすね。とりあえずそろそろノワールさまを助けますね☆ 沙良さま、そろそろ教室に戻らないとノワールさまが遅刻してしまいますよ?」

 

「あらもうそんな時間? まだ半分も補充してないのに時間が経つのは早いわぁ」

 

 

 どんだけ息子成分とやらの蓄積がおせぇんだよ。ようやく抱き着きから解放されたので先に立ち上がって母さんに手を差し伸べる。いや……そのどうしたのみたいな顔止めろっての。良いから気づけってんだよ。

 

 

「……次、平家の教室行くんだろ。案内してやるからさっさと掴まれ」

 

「ノワール……それじゃあ甘えちゃおうかしら。もう優しい息子に育ってくれてお母さんは嬉しいわ」

 

「テメェがその辺でぶっ倒れたりなんだりすると色んな奴が迷惑なんだよ」

 

 

 周りからの微笑ましい視線を浴びつつ母さんの手を取って支えになる。昔の事件のせいで片足が不自由になってからは基本的に蛇女(ミア)が傍に居てサポートしてるけど今日ぐらいは良いだろ……一応息子だしさ。平家の教室に着くまで歩きが他よりも遅い母さんからは迷惑かけるわね的な事を言われたけどこのぐらい迷惑でも何でもねぇよ。むしろセクハラしてくる四季音の方が迷惑だ……つか周りの視線もウゼェ。こっち見んじゃねぇよ。

 

 やや時間は掛かったが無事、平家のクラスに到着した。別に母さんは平家の親ってわけじゃないが地味に溺愛している上、平家自身も懐いてるしもう親みたいなもんだろって感じだ。始めて平家を紹介した時に覚妖怪だってことを説明したら「心が読めるの? 素敵じゃない! 以心伝心出来るなんて夢のようだわ!」と素で言いやがった時は吹き出しそうになったもんだ。流石あの親父と結婚しただけはある。

 

 

「ありがとうノワール。助かっちゃったわ」

 

「だから零樹だって言ってんだろうが……平家、ミア、頼むわ」

 

「お任せされた」

 

「りょーかいでっす☆」

 

 

 母さんを二人に任せて俺達は自分のクラスに戻る。はぁ、これで少しは落ち着ける……なんだよ? その何か言いたそうな視線は?

 

 

「犬月、何か言いたいならさっさと言え」

 

「んじゃ遠慮なく。王様ってお母さんのこと大切に思ってんすね」

 

「……当たり前だろうが。人間なのに身を挺して悪魔の攻撃から俺を護ろうとしてくれた奴だぞ? 原因が俺だってのに親だから当然だって顔して痛い思いして死にかけて……そんな奴を嫌ったりできるかよ」

 

「確かに良い人ですよね……初対面の俺にお母さんって呼んでいいよなんて言う人いませんよ? 白髪でいかにも不良だっていうのに一瞬マジかって思いました」

 

「え? 犬月さんの髪って綺麗ですし私は羨ましいなぁって思いますよ?」

 

「……しほりんマジ女神。いやぁ! もうこれは頑張らないとダメっすね! 何を頑張るか知らねぇけど」

 

「特訓を頑張れば良いんじゃねぇか? まぁ、お母さん発言はあれ(母さん)からすればマジで呼んでほしいと思ってるからお前さえ良ければ呼んでやってくれ……あんな風にしてても自分は人間だから俺達よりも早く死ぬって理解してるからさ、子供に囲まれたいみたいだしさ」

 

「王様……その、が、頑張るっす」

 

「私! お義母様の娘になります! はい!」

 

 

 人間だから早く死ぬのは当たり前、精々長生きしても七十か八十くらいで死んじまう。親父もそれが分かっていながら母さんと結婚したんだよな……あのクソ親父が文句も言えねぇぐらいの笑顔で結婚してよかったなんて言うくらいだ。親父からしたら思いっきり良い女なんだろうなぁ。あと橘様! 手を握らないでください凄く役得です!

 

 ややしんみりとした会話をしながら教室に戻ると他の保護者に交じってこれまた美人が居た。緑色の長髪でなんて言うべきか……橘がそのまま成長して大人のエロさを身に付けたみてぇなそんな感じ。というより橘の母親ですね。いやぁ今日もお美しい!

 

 

「――あら? キマリ、いえ零樹君、志保もどこかでお昼でも食べてたの?」

 

「お母さん!? あ、あれ……今日って来られないんじゃなかった?」

 

「仕事が早めに終わったから来てみたの。お久しぶりです、志保の事で迷惑をかけていないかしら?」

 

「全然全くこれっぽっちも迷惑にはなってませんよ。むしろ俺の存在が迷惑なんじゃないかと思い始めてるぐらいです……えっと、親父さんは仕事ですか?」

 

「えぇ。あの人は忙しいから……貴方はえっと、犬月君でよかったかしら……?」

 

「はい! 犬月瞬と言います! どうぞ犬とお呼びください」

 

 

 跪きながら挨拶してるところ悪いがお前マジか? 相手人妻だぞ? 気持ちは分かるが男のプライドを……無理だな。俺も跪きたいし誰だってそうだろう。いやそれにしても……遺伝子ってすげぇ。一目見て親子だって分かるほど似てるし成長したらこうなるんだろうなって事が分かりやすい。親父さん羨ましいぜ。

 

 でも思い返してみればこの人も橘の親父さんも退魔の家系で俺達みたいな異形と戦ってきたんだよな。今は退魔の仕事を引退して普通の仕事をしてるみたいだけど一回ぐらいは戦ってみたかった……いやそれよりもこの人(橘の母親)がいる職場ってどんなのなんだ? きっとスゲェ人気なんだろうなぁ。だってこのエロさだぜ? 胸デカいし大人の魅力有りで最強属性の人妻……最高じゃねぇか――いや、冗談だから抓らないでくれないか?

 

 

「……エッチです。お母さんじゃなくて私を見てください」

 

「いやそれはそれで問題だろ……あぁ、えっと、一年の方に俺の母親もいるんでもしよければ今晩家にでもどうです? 橘とも話したいでしょうし親父さんもご招待したいんですけど……?」

 

「あらそう……えぇ、ではお言葉に甘えてお邪魔させてもらうわ。お母様にも一度ご挨拶しておきたかったもの」

 

 

 と言うわけで今晩は結構な大人数での食事になりそうだ。俺達キマリス眷属に母さんとミア、橘の両親と数えてみればスゲェな……でも思いっ切り余裕ある我が家もスゲェ。そんなやり取りをしていたせいかクラスの奴らからの視線が凄かった……いやこんな美人親子と一緒の食事とか羨ましいとか思ってんだろうけどウゼェしさっさと消えてほしい。

 

 結局残った授業は母さんがいないので比較的楽に終わった。問題があったと言えば橘の母親があまりにもエロくて美人だから父親勢の視線がそっちに向かってたという事と帰り際に匙君から聞いた魔王様二人が来ていたという事だ。前半は男として納得するしかないが後半はどうでも良いな……身内の方々が三年生に居るから来るのは当たり前だとは思うけど俺には関係ないし。むしろ挨拶に来られたらどうしようとか思ってたけどこっちには来なかったようで一安心だな。

 

 

「――いやはや、キマリス様から食事のお誘いとは光栄です。娘と妻共々お礼を申し上げます」

 

 

 時刻は夜、全員揃った事で小さなパーティーが始まった。料理と作ったのは水無瀬とミアと橘の三人という料理上手な面々、味はかなり保証されている。母さんも自分も手伝うとか言いやがったが足が不自由な奴がキッチンに立ったら色々と危ないので俺の犠牲という大きすぎるモノを支払って阻止した……そのせいでさっきまで息子成分補充と言って抱き着かれたが怪我されるよりはマシだろう。

 

 ちなみに俺の親父は参加していない。仕事らしい……ざまぁ。

 

 

「別にそんな大したものじゃないですけどね。こちらこそ橘志保さんを眷属にしてからご挨拶に伺えてなかったので申し訳ないですよ」

 

「いえいえ。キマリス様はお忙しいでしょうし私達のような者に気を使ってくださらなくても構いません。今後とも、娘をよろしくお願いします」

 

 

 橘の親父さんはやや厳格そうに見える四十代の男だ。そんな人が自分の半分も生きてないガキ相手に頭を下げるとかちょっと困る……いやこの人的には本気で言っているんだろうけどなんというかその、どう反応すればいいか分かんない。

 

 

「もうっ! お父さん恥ずかしいからその辺にして!」

 

「そうよ。折角の美味しいお料理なんだからもう少し楽にしたらどう?」

 

「お、おぉ! う、うん……そうしようか」

 

「にししぃ~のわーるにけいごとかひつようないんだよぉ~だぁ、だってぇえらくないもんねぇ」

 

「でっす☆ ノワールさまに敬語とか死にたくなるんでそろそろタメでいいです?」

 

「テメェらは敬えというかマジで敬語で話せ。四季音! ちゃんと飲む量加減しろよ?」

 

「いぇ~い」

 

「いつも通りだし気にしたら負けだよ。お義母さん、お皿取って」

 

「はいどうぞ。うふふ、こうして大人数で食べるのは良いわねぇ。家だとみんなバラバラで好きに食べてるから新鮮よ」

 

「基本私たちって自由でっすからね☆ 団体行動とか無理無理でっすよ」

 

「それを纏めているノワール君のお義父様は凄いんですよね……ノワール君はお義父様似ですね」

 

「止めてくれ……死にたくなる」

 

 

 なんだろうか、どこからか似てるって言われたら死にたくなるって言われたとガチ泣きしてる奴がいる気がする。具体的にはいつも仕事をしているデスクで。セルス……すまんがポンコツの相手頼むわ。

 

 各々が会話をして料理を食べる。親同士の苦労や悩みもあるらしく母さんも結構楽しんでいるようだ……お互いの息子や娘の自慢話さえなければ俺も橘も凄く楽だっただろう。そんな楽しいパーティーも終わりを告げて女子勢全員が地下の温泉に向かったのでリビングには男三人……何と言うか騒がしい奴らが居なくなって一気に静まり返ったぞ。

 

 

「親父さん、酒飲まないんですか?」

 

「残念ながら酒の類は苦手でして……炭酸飲料を貰えますか?」

 

「どうぞ」

 

 

 俺も犬月も一応未成年だから炭酸飲料を手に持ってるがまさか親父さんが酒が苦手だとは思わなかった。厳格そうだし寝る前の晩酌を嗜んでいるようなイメージだったけどそうじゃないんだな。炭酸飲料の缶を渡して俺達三人で乾杯、傍から見たら男子会と呼べるような光景だ。

 

 

「しほり、あぁえっと、志保さんの親父さんって退魔関係だったんすよね? なんつうか王様の眷属に娘が入るのって抵抗とか無かったんすか?」

 

「退魔を生業としている者にとってはありえないと言われるでしょうな。しかしキマリス様には娘を助けてくださった恩がありますし娘も望んでいましたから親としては反対する理由もありませんよ。それに私も妻も娘がキマリス様のお得意様になりたいと伝えられた時から決めておりましたからね」

 

「……あの、すっげぇ信頼されてるところ大変申し訳ないんですけど、あの、俺って最低最悪な奴ですよ? 普段からぶっ殺すとか言うし態度悪いしもうあんないい子の傍に居て存在じゃないですよ?」

 

「ご自分の母君をあれほど大切に扱っている方が悪い者であるはずがありません。キマリス様の事情は存じております……()()は必要な事でしょう。この場には私達三人しかおりませんから少しは楽にしたらどうでしょう?」

 

 

 過大評価されてるようだけどマジでごめんなさい……そんなんじゃない! いや、自分の立場というか混血悪魔だから舐められたらダメだな的な事は思ってるがそんなんじゃないぞ? 普通の最低最悪自分勝手自己中野郎なんだけど何故此処まで過大評価されてるのか理解できねぇ。あれか? 橘助けたからか? きっとそうだな!

 

 

「確かに周りに女しかいねぇんでこうした空気も大事っすよね。王様、つうわけで無礼講ってことでどうっすか?」

 

「普段から無礼講じゃなかったか?」

 

「あれそうでしたっけ? まっ、いいっすけど――親父さん、どうやったらあんな良い奥さんと出会えるんすか!!」

 

「犬月君……男とはカッコ良さ、誇りを見せれば女子(おなご)はイチコロです。私も若い時はやんちゃでしてなぁ、妻と出会ったのもそんな時でした」

 

「マジっすか! 俺の誇り……あれ? なんか見つからねぇんだけどちょっと拙いかもしんねぇ!?」

 

「生きていく中で誇りは見つかるものです。焦らずゆっくりと進みなさい」

 

 

 誇り、誇りかぁ。俺もねぇなそんなもん……今を好き勝手生きて夜空と好き勝手に殺し合ってれば満足だし。大人になるとこんな風に言えるようになるのかねぇ? 親父さんも修羅場を潜ってきてるっぽいし色々とあったんだろう。でも誇りか、まだ見つかりそうにはないな。結局橘の親父さんと犬月の二人が気が合うのかカッコ良さや誇りについて語り始めたが……やべぇ、混ざれねぇ。いや別に良いんだけど。

 

 まぁ、でも誇りかどうかは知らんけど一つだけ、たった一つだけあの日から決めてる事はある。

 

 

「――母さんを護るってのは誇りなんかね」

 

 

 邪龍を宿す者としては最悪な事だと思うけどたった数十年だしこれぐらいは許してほしいと思う。




観覧ありがとうございました!

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