ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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23話

「――うげぇ、トンでもねぇっすね」

 

 

 犬月が上空を見ながらややビビった声色で呟いた。そりゃそうだろ……三大勢力のトップが集まってるんだ、自分の兵を連れてこなきゃ戦争に発展した時に負けるだろ? でも犬月がビビるのは分かる。辺りが闇に染まった深夜の時間帯、俺達が普通に通っていた駒王学園を取り囲むように悪魔、天使、堕天使が群れを成していがみ合ってんだからな。一歩間違えば即戦争、そんなギリギリの綱渡りとも言える三大勢力トップ勢による会談がもうすぐ行われようとしている……すげぇな。

 

 俺を筆頭に犬月、平家、水無瀬、四季音、橘が駒王学園入り口から中に入って新校舎の会議室を目指す。影龍王として有名だからか知らないが上空から沢山の視線を感じる……ウゼェ、マジウゼェ。比較的常識人ポジションの水無瀬と橘は表情が固まって動きも硬い。緊張し過ぎて手と足が一緒に出ているのが妙に可愛らしい。犬月は周囲の空気に圧巻、四季音はいつものように酒が入った瓶を持ってやや興奮気味、平家は……なんだろうな、普段聞こえる心の声が聞こえないからかおっかなびっくり状態とでも言うべきか? 心を読まれていない今なら言える! 可愛いぞ平家!

 

 

「こ、これから三大勢力の偉い方達がお話をするんですよね……? ちょ、ちょっと怖いです」

 

「そ、そうですね……ノワール君、私達は傍に立っていればいいんですよ、ね?」

 

「おう。だからそこまで緊張しなくていいぞ? こいつ(四季音)のように普段通りにしてればいいさ……ところで四季音? その格好ってすっげぇエロいんだけど胸チラとかする予定有る?」

 

「にししぃ~みたいならぁ~みてもいいよぉ? これはゆいしょただしきぃおにのせいそうなんだしねぇ~」

 

「鬼って露出狂の気でもあるの?」

 

「しらなぁ~い」

 

 

 一応大事な会議だから俺達学生組は駒王学園の制服、水無瀬は保険医としての恰好だが四季音は和服……と呼んでいいのか分からないが和の雰囲気が残っている大胆な物を着ている。ブラの代わりにさらしを撒いてその上から羽織を着て胸元を大胆にも開けた状態、そして下はミニスカ……なんだこの露出狂幼女。そう言えば出会った当初もこんなの着てた気がするが正直な所全然覚えてねぇ。でもなかなか良いと思うぞ? 俺的には戦闘になったらさらしが破れて恥じらう姿とか見れたらそれだけでもう満足だ。

 

 

「……ノワールが変態の目をしてる。くぅ、心が読めないってこんなにも辛いなんて……!」

 

「みたいぃ? みせいちょうぼでぇのちっぱいみたいぃ? このまえみたのにのわーるぅのえっちぃなんだからぁ」

 

「――ノワール君、そのお話を少し詳しくお願いします」

 

「――悪魔さん、私、お話ししたいです♪」

 

「単に俺が風呂入ってたら乱入してきただけだ。そもそもこれぐらいは前々からあったぞ? 平家も同じような事してるしな」

 

「ノワールの体って鍛えてるから結構良い体してるよ? でもムカつく事に襲ってこないんだよね。部屋に戻ってオナニーしてるくせに」

 

「襲ったらそのまま人生の墓場行きだしなぁ」

 

「なんつぅか、王様ってヘタレなのか肉食なのか分かんねぇ時があるんすけど? あとこのお二方はどうしたらよろしいでしょうかね?」

 

「放って置けばすぐに治るよ――ノワール、多分明日以降からこの二人も乱入してくるかもだけど襲ったら分かってるよね?」

 

 

 平家や四季音の絶壁なら兎も角、水無瀬と橘のおっぱいを生で見れるとかマジでご褒美じゃねぇか。良いぞ良いぞ! 俺は拒まないからいつでも乱入してこい! アイドルの生乳と保険医の生乳とかマジで天国……おかしい、こいつ(平家)は心が読めないはずなのに何故変態と視線で伝えてくるんだ? まぁ、流石に俺と一緒に居たら分かるか。というよりこれから大事な会議なのにどんな会話してんだろうか俺達は……緊張するよりは良いか。

 

 階段を上って会議室の前までやってきた俺達は一呼吸してから扉を開ける。中に入るとまず目についたのは壁に寄りかかっている銀髪イケメンのヴァーリ、その手前付近に座っているアザゼルだ。一緒のテーブルにはサーゼクス様とセラフォルー様、頭の上に天使の輪っかを付けている金髪優男――天使長ミカエルが仲良くと言って良いのか分からないが座っていた。他には生徒会長と副会長がいるけど夜空やグレモリー先輩がどうやらまだのようだ……よっしゃ! 最後じゃねぇだけラッキーだ。

 

 しかしセラフォルー様が珍しく正装なのは以外だ。噂と言うか冥界とかでは魔法少女みたいな恰好が多いと聞いていたから一瞬誰だみたいな感じになった。これが生徒会長と姉妹なんだから血筋ってすげぇよな。

 

 

「やぁ、影龍王。こういう場で会うと新鮮な気分にならないか?」

 

「まぁな。こういった経験は中々出来ねぇからありがたい……と言っておいた方が色々と問題にならなくて済むからそうしとくよ」

 

「流石に緊張の類は無しか。後ろに居るのがキミの眷属かい?」

 

 

 適当な場所まで歩いてヴァーリと会話をするけど後ろにいる四季音を除いた犬月達は緊張し過ぎて表情が固まっていた。あの平家でさえ慣れない環境(心が読めない)で不安な様子……しかしこのメンツでも表情一つ崩さず普段通りとは流石俺の戦車だな。正直な所、夜空が居なかったら俺の女王になってたのはこいつだもんなぁ。

 

 

「影龍王のノワール・キマリス君とその眷属です。彼の存在は皆さんご存知でしょう?」

 

「えぇ。天界においても要注意人物として認識していますからね。初めまして、天使の長をしているミカエルです。こうして直に会うの初めてですね」

 

「そうですね。ノワール・キマリス、後ろに居るのが俺の眷属です。俺と四季音……あぁ、えっと、そこで酒飲んでる奴以外はこういった場を経験するのが初めてなんでお手柔らかにお願いします」

 

 

 初対面のミカエル相手に自己紹介をするとヴァーリが観察するような視線で四季音を視始めた。なんだ? 惚れたか? んなわけねぇか。

 

 

「……桜色の髪、あぁそうか。アザゼル、彼女がそうなんだな」

 

「そうだ。鬼の中の鬼、人間でも鬼と言えばこの名を呼ぶ奴が大多数なほどの有名な存在――酒呑童子。まさかこの目でその血筋の奴を見る事になるたぁ人生何があるか分かんねぇわな」

 

「……四季音の事、知ってたんですか?」

 

「知ってるも何も影龍王が鬼と三日三晩殺し合ったって話は俺達の間じゃ有名だぜ? 幸い周囲の地形だけが犠牲になって死傷者は出なかったようだがお前等やりすぎだ。たくっ、成長中とはいえ影龍王と真正面から殺し合えるほどの鬼って誰だって調べたら酒呑童子の血を引く奴っていうじゃねえか。ヴァーリが戦いたいと言って五月蠅かったんだぞ」

 

「太古の世界、鬼を率いたほどの存在と戦えるんだ。これほど高揚するものは無いさ」

 

「だそうだぜ?」

 

「にししぃ――酒呑童子って言っても私は分家出身さ。本家の奴は今もどっかで力を蓄えてるかそのまま滅んだかまでは知らないけどね。でも白龍皇からのお誘いならちょっと興味あるよ、一つ手合わせしてみたいねぇ」

 

「殺し合いはこの会談がご破算になったらにしろよ? もっともヴァーリと戦うのは俺だからお前は……外の大群でも相手してろ」

 

「はぁ? 白龍皇と戦わせてくれてもいいでしょ? 邪魔するならノワールから殺して白龍皇と戦うよ?」

 

「俺を殺せるならそうしろよ」

 

「おいサーゼクス、今の悪魔は眷属と殺し合うのがトレンドなのか?」

 

「影龍王眷属は私達の考えでは及ばない領域に居るようだからね。普通の悪魔ならばしないと言っておこうかな」

 

「そりゃノワールだしぃ当たり前じゃん」

 

 

 不意に体が重くなった。もちもちすべすべ肌の太ももが視界に入る……あぁ、俺の真上に転移して肩車状態ってわけか。ありがとうございます! 太ももの感触だけで飯五杯くらい食えそうです!

 

 

「おい夜空、重いからさっさと降りろ」

 

「はぁ? おもくねーし! この超絶美少女夜空ちゃんが駄肉付けてる女より重いわけねぇし!! 良いじゃん、この夜空ちゃんのすべっすべな太ももに挟まれて女の子の大事な所が頭の真後ろにあるんだよぉ? 役得でしょ?」

 

「正直、この会議に来て良かったとすら思えるな」

 

「なら良いじゃん!! てか誰こいつ? こんな……こんな……ねぇ、アンタ何歳?」

 

「え、えっと、あの……十七、です」

 

「――神殺すか」

 

「もう死んでるぞ?」

 

 

 夜空の素晴らしい太もものせいでよく見えないが恐らく、恐らくだが自分のちっぱいと橘のおっぱいを見比べて絶望でもしたんだろう。そりゃ年上の夜空が年下の橘に発育で負けてたらそう思ってもおかしくはない……揉めば大きくなると言うがもし本当なら揉んでやるぞ? ねちっこくだがな!

 

 

「つか新しく眷属増やしたってこの前言っただろ? まさか聞いてなかったのか?」

 

「聞いてたさ! でもなにあれ!? デケェ! 何食ったらあそこまでデカくなるのさ!! 何でこの私が年下に胸で負けなきゃいけねぇの!? あぁもうノワール! ちょっと私の胸揉んで大きくしてよ! 何なら処女奪って良いから!」

 

「マジかよ!? あの、サーゼクス様、セラフォルー様。二時間か三時間ほど離れるんで先に会議始めて、いってぇ!? 平家テメェ!! なにすんだよっ!!」

 

「ちょ!? ゆらすなぁ~!!」

 

「別に。ただ虫がいたから駆除しておいた」

 

 

 いきなりのケツにタイキックとかこいつ女だよな……いやそれ以前に主にタイキックするなっての。というより肩車状態で揺れたというのに頭のてっぺんが素晴らしい事にならないとは悲しい。マジで悲しい。揺れろよ!! 少しでもいいから揺れてくださいお願いします!

 

 

「……あ、あの、犬月さん……あの、その」

 

「えっと、あの人は光龍妃っていう王様の反存在らしいっすよ? 普段はあんな風に仲良いらしいけど殺し合えばガチで遠慮なんてしないで殺し合うっていうちょっと変わった関係っすね」

 

「悪魔さんから規格外とか、その、眷属になる前からそういうお話は聞いていたんですけど……今分かりました……あの人が最大のライバルっ!」

 

「……えぇ。志保ちゃん、その認識で合っていますよ」

 

 

 何故夜空が欲してやまないお胸をお持ちのお二人が嫉妬に近い視線をこいつ(夜空)に向けてんだ? おい平家、ちょっと何が起きてるか……無視!? そっぽ向くとか可愛いな!

 

 

「やはり光龍妃と影龍王は面白いな」

 

「お前の面白いはどんな面白いなんだろうなぁ。おい影龍王に光龍妃、イチャつくのも良いがもうちったぁ静かにしろっての。俺達が目の前に居ても通常運転する奴はお前たちぐらいだぞ?」

 

「はぁ? 堕天使程度が私に指図しないでよ。殺されたいの? てかさぁ~赤龍帝どこよ? まだ来てないの?」

 

 

 恐らく堕天使の総督を堕天使風情と言える人間は世界中探してもこいつだけだろうな。流石の俺でも素の状態でも言えねぇわ。

 

 

「そうだ。きっと忙しいんだろうぜ? なにしてるか知らねぇけど」

 

「ふぅ~ん。ねぇねぇ? ノワールにヴァーリ、ちょっと殺し合いしない? 私達ってかたっ苦しい話し合いとか嫌いじゃん。終わるまで殺らない?」

 

「別にいいぞ」

 

「俺も異論はないな。ふふっ、影龍王と光龍妃、両方と戦えるとは来たかいがあった」

 

「待て待て……ほんっと自由だな。流石にお前さん達が殺し合いを始めるなら俺達は全力で止めるぜ? 下手するとこの町が吹き飛ぶしな」

 

「そうなったらテメェら殺すだけだけど……まっ、いっか。しょーがねぇから女の子らしく待っててあげるぅ」

 

 

 こいつは女の子と言って良いのか分からねぇけど騒ぎを起こさないでくれるんならそれで良い。見ろよ? ミカエルとセラフォルー様がドン引き状態だぜ? 天使長と魔王一人をドン引きさせた人間ってこいつだけじゃねぇかな。あと後ろに居る生徒会長達もドン引きしてるみたいだけどそっちは知らん。

 

 流石に騒ぎ過ぎたから大人しく待っていると扉が開いてグレモリー先輩ご一行が到着。おせぇ、ゆっくりし過ぎだろう……なに? 自分は特別だから遅くなっても問題ねぇとか思ってんの? 俺達でさえ十分ぐらい前に来たってのに数分前とか笑えるな。

 

 

「私の妹とその眷属です。影龍王と共に今回の一件で活躍してくれました」

 

「活躍っつっても犬とじゃれ合ってただけじゃん」

 

「夜空ちゃん、ちょっと黙ろうかぁ。いくら本当の事でも言わないのがお約束だ」

 

「え? マジで? そっかぁーじゃあ仕方ないね」

 

 

 たとえケルベロスとじゃれ合ってただけでも活躍したんだよ。あぁそうだ、活躍したと思うよ。きっとそうだし魔王様も活躍したっていうんだからきっと活躍したんだよ。しっかし改めてみるとスゲェな……目の前には三大勢力のトップ勢、二天龍と地双龍が集まるなんて今後絶対にあり得ねぇぞ。

 

 夜空の小言にサーゼクス様も苦笑の表情を浮かべている。下手に刺激すればこの場に居る半数以上が死ぬから何も言えねぇだろうなぁ……でも事実だし気にしない方が良いと思いますよ?

 

 

「さて、全員集まった所で今回の会談の条件を確認したいと思います。私達は神の不在を知っている、その件を認知しているという前提で話を進めたいと思います」

 

 

 そんなわけで会談開始。ミカエル、アザゼル、サーゼクス様にセラフォルー様が各々の陣営の話を真剣……一部(アザゼル)は冗談か本気か分からない発言をしたりしていたが多分順調に進んでいるんだと思う。夜空は既に飽きたって顔してるけど……まぁ、お前ってこういう話し合いって好きじゃねぇしな。俺も欠伸でそうでちょっと厳しいけどその点生徒会長や先輩は凄いわ。背筋伸ばして真剣に聞いてるもんな。俺は無理、どうぞ勝手に適当に話し合ってくださいって感じだからあそこまでは無理だわ。

 

 話が進んでいくとついに本題であろうコカビエルの一件について話し合う時が来た。サーゼクス様が俺の方を向いてどういう経緯で白龍皇との密約を交わしたのか聞いてきた……え? 普通にアイドルのイベントで会ったからそのまま飲食店行っただけなんだけど?

 

 

「密約、密約かあれ? 普通にアイドル……えっと、俺の眷属に休業してますがアイドルが居ましてその子のイベントに行ったら偶然会ったんですよ。そこに居る白龍皇がつまらなさそうにしてたんで飯に誘ったらコカビエル云々という事になってじゃあ殺すよと言って終わりです」

 

「それに行かせたのは俺の指示だ。独立具現型神器を保有してるってのは前々から情報を得ていたからな。そういった神器とは昔から縁があるコイツを行かせれば何かあるんじゃねぇかと思って行かせてみたんだが……まさか帰って来たら影龍王がコカビエルを殺すと言っていたなんて聞かされたんだぜ? 素で驚いたっつうの。だがこっちとしてはめんどくせぇ裁きだのしなくて済むしありがたかったから干渉しないで放置してたけどな」

 

「こっちもコカビエル程度が引き起こした事件に巻き込まれて迷惑でしたし負けるつもりもなかったので介入してこなくて助かりました」 

 

「そりゃそうだ。お前さんに勝てるのはほんの一握りだろうぜ。ヴァーリか光龍妃か俺達か……全く、今代の地双龍はどっちも変に成長してるからおっかねえ」

 

「つまり悪魔はこちら側に内緒で堕天使と一時的な共闘をしていたと考えてもいいでしょうか?」

 

 

 ミカエルが疑問に満ちた声色で聞いてくる。全員の視線が俺に向いてくるけどめんどくせぇ……いっか。そっちがその気ならこっちだって考えがあるぞ。

 

 

「さぁ、仮に共闘していたとして何か問題でも? そちらにこれと言った被害は無いですし無事にエクスカリバーも戻ってきたんだから批難される覚えはないですよ? 俺達が居なければエクスカリバーは一本に統合されてゴミの玩具になっていましたしね。あぁ、そう言えば俺の所に来た聖剣使いが言ってましたよ? 上は悪魔と堕天使を信用していないってね……その言葉が事実なら俺が言う事なんて信用していないんでしょう? だったら別に良いじゃないですか。天界側の聖剣使いじゃなくて堕天使側の幹部を殺して勢力を少しだけ崩したんですからむしろラッキーだと思いますけど? まぁ、とりあえず以上が白龍皇と会話した経緯やらです」

 

 

 言葉の途中でチラッとだけこの言葉を言った張本人を見る。いやー誰だろうなぁこんな事言った人って。

 

 

「……なるほど」

 

「コカビエルごときが死んだ所で影響が出るとは思えないがな」

 

「うんうん。だってあいつ弱いもんねぇ」

 

「――では次はリアスからも先日の事件を話してもらおう」

 

 

 この空気の中で話すのは非常に苦しいだろうけど大丈夫! 天下のグレモリー先輩ならきっと余裕だよな! だって純血悪魔だし余裕余裕。なんか背後から喧嘩売り過ぎとか言う視線を感じるけど気のせいだな……一応これでも加減したんだぞ? 褒めろよ。

 

 

「――以上が私、リアス・グレモリーとその眷属が関与した事件の報告です」

 

「ありがとうリアスちゃん☆ ノワールちゃんもありがとうね☆」

 

 

 セラフォルー様、その笑みが怖いです。

 

 俺達の素晴らしい報告が終わった後は堕天使の総督、アザゼルに今回の一件について意見を尋ねたサーゼクス様だったけど流石と言うべきかのらりくらり、本音と適当を織り交ぜての言葉だったから天使長ミカエルでさえ苦笑する始末だ。平家が能力を封じられていなければこの人の心の声を聞いてみたかったが仕方ない……優男の心の声とか多分ゲスだろうけども。

 

 そんなわけで話は進んでいったがアザゼルの口から和平と言う単語が出た瞬間、この場の空気が変わった。そりゃそうだよな……トップに立つ人物が戦争したくない、和平結んで仲良くしようぜとか言ったら誰だって驚くわ。

 

 

「えぇ~? 和平結んじゃうの? つまんないぃ~」

 

「おいおい……こっちとしてもこれ以上小競り合いしてたら滅んじまうんだ。ちったぁ許せよ光龍妃。サーゼクスにセラフォルー、ミカエル、お前たちの意見はどうなんだよ?」

 

「こちらとしても願ってもない申し出だ。次に戦争をすれば確実に滅んでしまう、種の存続を考えるならば和平を結んで手を取り合った方が良い」

 

「こちらも堕天使、悪魔と和平を結びたいと考えていました。勿論これは双方を信頼しての判断です」

 

 

 ありゃ、さっきの俺の発言にちょっとだけイラついた? でもそれ言ったのってそっち側の人物だし俺は悪くないぞ。

 

 ちなみに和平自体はサーゼクス様達は乗り気で話を進めている。頭の上からつまらないぃとか殺し合いできないぃとか文句を言っているのは夜空だけだ。別に殺し合いあったら俺とすればいいだろ? 何時でも相手してやるぞと頭の上にいる夜空を宥めていると話しは別の方向に向かい始めた。どうやら赤龍帝が何かを発言するらしいけど……何言う気だ? なにやらシスターちゃんと話をしてるみたいだけど変な事言って場を凍らせる事だけはするなよ。なんだ平家? そのお前が言うなって視線は……お前やっぱり能力封じられてねぇだろ!?

 

 

「――アーシアを何故追放したんですか?」

 

 

 赤龍帝がミカエルの方を向いてハッキリと言葉を吐いた。追放……追放ねぇ、なにそれ?

 

 

「犬月、追放って何?」

 

「うぇ!? あ、えっと、いっちぃから聞いたんすけどあのシスターって神器のせいもあるんでしょうけど元は聖女って呼ばれるぐらいすんげぇ偉かったらしいんですよ。でも傷を負った悪魔を癒した所を他の奴に見られて迫害された後に追放……みたいっすよ?」

 

「傷を負った悪魔ぁ? 教会に態々現れたってのか?」

 

「いや、場所までは知らねぇっすけど……どうしたんすか?」

 

「バカじゃねーの。何処の世界に傷を負った状態で聖女様なんつう奴の所に出向く悪魔が居るのさ。ありゃら、罠に引っかかったってわけかぁ。世間知らずもここまで来ると笑っちゃうね」

 

「もう少しこっち側の常識を叩き込んでおくべきだったな。つかこれって天界側からしたら大損でこっち側に文句言えるぞ」

 

「だろうねぇ。文句言われる筋合いねぇし単に無知だっただけっしょこれって。本当かどうか知らねぇけどさ」

 

「――どういう、意味だ……!」

 

 

 赤龍帝が怒りの声色で俺達を見た。どういう意味と言われてもそのまんまなんだが? まぁ、説明してやるか。

 

 

「どういう意味も何も罠に引っかかっただけだろって話さ。何処の世界に傷だらけで聖女様の前に出る悪魔が居んだよ? そんな事すれば滅される可能性大だろうが」

 

「……で、でもアーシアは優しいからそれを知ってたかもしれないだろ!!」

 

「優しい? んな不確定なもんのために命賭けるってか? じゃあ聞くぜ――今その悪魔はどこに居る?」

 

「……は?」

 

「だからそのシスターに傷を癒してもらった悪魔はどこに居るんだって聞いてんだよ。お前、自分の主を見てみろよ? その子に癒しの神器を持ってたからシスターであっても眷属に加えたんだぞ? 他の奴も傷を癒せる能力を持つ女が居れば欲しくなるさ。それだけその子に利用価値があるって事は理解しろ……あと犬月から聞いたが癒した所を教会関係者か誰か知らねぇけど見られて追放って所も怪しすぎる。タイミング良すぎるし今日まで接触が無いとかありえねぇ」

 

「そりゃそうだ。うちの末端に居た奴もそいつの神器が強力だったから狙ったに過ぎねぇ。悪魔の駒を持ってる奴なら是が非でも欲しくなるだろうし眷属にすれば冥界で悪魔どもがやってるレーティング・ゲームにおいても優位に立てるほどの存在価値だ。傷を癒してもらってはいさようならってのは文字通りバカのする事だぜ」

 

「……じゃ、じゃあアーシアは……!」

 

「だーかーらーさっき言ったじゃん。罠に引っかかったって」

 

「まっ、あくまで仮説みたいなもんだし不幸だったって考えれば良いだろ。そいつが居たからお前は今その子と一緒に居られるんだしむしろ感謝したらどうだ?」

 

「ふ、ふざけんな!! アーシアが悲しんで辛い目にあって……一度殺されて、感謝なんて出来るわけねぇだろ!! これ以上そんな事言うならぶっ飛ばすぞ!!」

 

「雑魚がいくら吠えても犬の遠吠えみたいなもんだってことに気づけ。もう少し悪魔の事を勉強した方が良いぞ? お前が思っているよりも悪魔ってのは下種で最低で己の欲しか考えてねぇ奴らばっかだ。あんまり言いたくねぇけどお前の王もお前の神器が強力だから手に入れようとしたって考えた方が良いさ……今はどうかは知らねぇけどね」

 

 

 色んな所から殺気だのなんだのの視線が飛んでくるけどどうでもいい。だって事実だろ? 赤龍帝の籠手を宿している奴を見つけたら誰だって欲しくなる。まっ、フェニックス家でのやり取りで大切に思い始めたのは見てて分かるけどな。

 

 一触即発の空気の中、ミカエルが追放した理由を語った。流石天使長、こんな空気でも説明してくれるとはまさに天使だな。男だけど。どうせなら女に天使と言いてぇわ……しっかし天界が管理するシステムに不具合が出かねない神器保有者は即追放とか天使と言う名の悪魔だな。信仰が足りなくなれば機能しなくなるとか欠陥も良い所……なんだけどそれが普通か。

 

 

「さて、面白いぐらいに世界に影響を及ぼしそうな奴らに話を聞こうぜ。赤龍帝の話も面白かったがそっちに関しては俺にしかできない事で返すとしてだ……ヴァーリ、暇そうにしてないで質問に答えろ。お前は世界をどうしたい?」

 

「強い奴と戦えればそれでいいさ」

 

「だろうと思った。んじゃ次は影龍王、お前さんは?」

 

「好き勝手に生きて好き勝手にこいつ(夜空)と殺し合えればそれでいい」

 

「こりゃまた想像通りなこって……光龍妃はどうなんだ?」

 

「うぅ~ん、ノワールと殺し合って私が退屈しなければ他はどうでも良い。だから私の楽しみを奪う奴は誰だろうとぶっ殺すよ」

 

「……どうしてお前らは想像の斜め上を行く事を言わねぇんだ全く。最後に赤龍帝、さっきのやり取りは既に起きちまった事で過去には戻れねぇんだ。いったん忘れて俺の質問に答えろよ」

 

「……えっと、正直、世界をどうこうとか黒井やその人みたいに殺し合いたいとかそんなのじゃなくて……今も後輩の面倒を見て頭がいっぱいなのにこれ以上とかちょっと考えられないです」

 

「なるほどな。しかしお前さんがそう思っていても他は違う。それほど前にお前さん達は世界に影響を及ぼす存在だってこった……しかし分かってなさそうだから簡単に説明してやるとすっかねぇ。赤龍帝、和平を結べばリアス・グレモリーと子作りし放題、逆に戦争になっちまえば一生童貞のままさ」

 

 

 その言葉の瞬間、赤龍帝の表情が変わった。ありゃさっきまでの怒りなんて既に吹き飛んでるな……単純な頭に敬意を表するよ。しかし子作りか……この頬に当たるすべすべもちもち肌の太ももや頭の真後ろに当たる素晴らしいぷにぷに肌の所も自由に触れるんだよな……さいっこうだな!

 

 

「ノワール、なんか赤龍帝が変だけどそんなに子作り大事なん? 前もアンタは私を抱きたかってたけど戦争するより優先するもんなの?」

 

「そりゃ、男イコール子作りだからな。なんだ? 抱いて良いなら今すぐ抱くぞ?」

 

「人間だから死ぬまでには処女卒業したいけどさぁ、今はそんな感じじゃないんだよね。てかアンタって眷属いるんだしそっちで発散しなよ。きっと喜んで妊娠すると思うけどぉ?」

 

「それやったら本格的に下種悪魔だろうが。眷属イコール性処理要員って考えてるバカと一緒にはなりたくねぇな」

 

「ふぅん」

 

 

 そのふぅんは一体どういう意味なのか詳しく聞かせてほしい。抱いて良いのか抱いちゃダメなのかだけでもいいから教えてほしい! マジでそろそろ童貞卒業したいから俺達の利害一致してるしヤろうぜ!! とか考えているのが丸分かりだったのか平家から再びタイキックを喰らう始末。おい……お前本当に能力封じられてるんだよな? 故障か? 故障してるのか!?

 

 

「……子作り。俺には今の所、不要なものだな」

 

「お前さんはもう少しそっち方面にも興味を持ってくれればなぁ。顔は良いのに戦闘、戦闘とどこで育て方を間違えたのやら」

 

「俺は昔からこうだったさ」

 

「そうかい」

 

『――宿主様、気を付けろ』

 

『――夜空、来ますよ』

 

『――ヴァーリ』

 

 

 ドラゴンの声が聞こえた瞬間、世界が灰色の世界に変わった。




観覧ありがとうございました!

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