ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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24話

「――おいおい、いきなりどうなってんだこりゃぁ?」

 

 

 全身が停止していく感覚に陥ったのでドラゴン、相棒のオーラを強めてみると世界が灰色に変化した。身体に変化が無いか確認してみるがどうやら問題ないらしいが……問題は別にあるらしい。俺の背後にいた四季音を除いた犬月達がまるで石像になったように動かなくなっている。試しに犬月の顔の前で手を振ったり橘と水無瀬のおっぱいを触ってみるが変化なし……やべぇ! 指が埋まるぜ!? 流石に揉み過ぎてバレたらあれだし指で突く程度で終わらせるけどやわらけぇ。流石アイドル! 水無瀬も中々の代物で俺は嬉しいぜ!

 

 

「あんた何してんの?」

 

「おっぱい突いてるだけだが? お前は無事そうだな?」

 

「当然じゃん。そこで固まってる赤龍帝のようにはならねぇよぉ~だっ! にしてもすっげぇ! 周囲一帯を停止させる魔法なんて誰が使ったんだろ!! ノワール! 気にならない?」

 

「停止ねぇ……確かにこいつら(犬月達)が動かない理由はそれっぽいがここまでの規模となると大魔法使いと言って良いレベルだぞ? つか夜空は当然として四季音、お前はなんで無事なんだ?」

 

「変な感覚があったから妖力で全身を覆っただけよ。しほりんとめぐみんのおっぱいつついた事は後でバラしとくねぇ~にしし! おっこられるぅ~よぉ?」

 

 

 四季音に言われた事を脳裏で想像、いや妄想してみるがどう考えても「……あ、悪魔さん、せ、責任! 責任とってください!」とか「の、ノワール君! 胸を触るというラッキースケベイベントをもう一度起こしてください!!」とか言われる未来しか見えない。そしてはい喜んでと言う俺の姿もばっちりだ!

 

 周りを見渡してみると他にもどうやら俺と四季音を除いたキマリス眷属の他にグレモリー先輩のダブル騎士を除いた方々、生徒会長と副会長も同じように固まっていた。片方は聖魔剣、もう片方は聖剣を握ってるからそれの力で停止状態から抜け出したってわけか……俺と夜空、ヴァーリはドラゴンの力によるものだけど赤龍帝が固まってるとかちょっとなぁ。まぁ、ドラゴンとしては一番弱いし仕方ねぇのかねぇ。

 

 

「俺にミカエル、サーゼクスにセラフォルーは当然として動けるのはヴァーリに影龍王に光龍妃、そんで聖魔剣と聖剣デュランダルか。恐らく赤龍帝ももう少しすれば動けるようになるだろう。さて今の状況を確認したいんだが……外を見てみろ」

 

 

 アザゼルの言う通り窓の外を見てみると上空にデカい魔法陣が展開されており、そこからゴミのように黒いローブを纏ったなにかが降ってきていた。あぁ、魔法使いか……となると三大勢力のトップが話し合うと分かっていた上での行動――テロリストと考えて良いな。

 

 

「うっわ、ゴミが大量じゃん」

 

「数も数十って感じじゃなさそうだ。おい、まさかこれを起こすためだけに平家の能力を封じたわけじゃねぇだろうな?」

 

「んなことするかよ。俺だってこの状況になるなんて思っていなかったさ、恐らく奴らはハーフヴァンパイアが持つ停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)を力を強化、または譲渡する能力か何かで強引に禁手化させてるんだろう。視界に映ったものの時間を止めるあの神器ならこのぐらいは造作もねぇはずだ」

 

「ハーフバンパイアぁ? 何処に居んのそんな奴? つかどんな奴?」

 

「俺も遠目でしか見た事ないが金髪の美少女のような男だったか? 犬月が膝を折ってありえねぇとか嘆いてたのは覚えてる。そういえば此処に居ないですけどどこに……あぁ、そういうことですか」

 

「はぁ? なんで此処じゃなくて別の場所に置いてきてんの? バカでしょあの牛乳(うしちち)。死ねばいいのに――殺していい?」

 

「それやったら魔王様が怒るからやめような」

 

 

 窓際に立ち、影人形を生成して地上からこの校舎を攻撃している奴らに突撃させる。一発二発、影人形自慢の拳を叩き込んで絶命させていくがどうにもいつもの勢いが出ない……くっそ、射程距離ギリギリだから霊子の体を保つのがやっとか。

 

 俺の頭の上に居る夜空も片腕を突き出して指を鳴らす――それと同時に極大の光線が放たれる。それは真っ直ぐ曲がる事なく進んでいき結界の壁に当たって消えるが先ほどまで地上に居た魔法使いの半分は肉片残らず消滅。これで通常形態なんだもんなぁ。マジで規格外。

 

 

「やっぱノワールって遠距離技無いからこういう時って弱いよね。一個ぐらいは作っといた方が良いよぉ?」

 

「うっせ! 俺もその辺は気にしてるが遠距離はこれでも伸びてる方なんだよ! お前が異常なだけだ」

 

「私は普通だよぉ~だ!」

 

「これが普通なら他は何なんだって話になるが……サーゼクス、そっちはなにか分かったか?」

 

「グレイフィアが調べた所、やはりギャスパー君、リアスの僧侶が居た場所が敵の本拠地のようだ。まさか彼を利用しようとするなんて思わなかった……リアスに申し訳ないよ」

 

「ではどうしますか? 私達が表に出れば短時間で襲撃者を倒す事が出来ますがそうなると……」

 

「こっちから出れば敵の思い通りになる。恐らく奴らは俺達を表に出すことが狙いだろうな、時間を掛ければ停止世界の邪眼の力がドンドン増して俺達ですら停止させられるかもしれん。あのハーフヴァンパイアの潜在能力はヴァーリ並みと考えて良い」

 

 

 そんな話をしていると赤龍帝とグレモリー先輩が動き出した。どうやら先輩は赤龍帝に触れていたから一緒に動けるようになったらしい……運の良いのか悪いのか分かんねぇな。訳が分からないって顔をしているお二人にサーゼクス様やアザゼルが状況を説明すると案の定、先輩がキレた。でも言わせてほしいんだけど……そんな神器を持ってる奴を単独で放置してたアンタも責任あると思うんだけど? 流石にもう言葉では言わないけど。

 

 三大勢力のトップ勢が動けないので誰が元凶(ハーフヴァンパイア)を助けに行くかって話になると真っ先に先輩が名乗り出た。そりゃそうだろ、此処で他人に任せてたら俺はもうこの人を先輩とは呼ぶことは無かった。てか今更だけど最強の女王ことグレイフィア様がいらっしゃったのね……あれ? 何処にいたんだろ? 俺が来た時にはこの部屋に居なかったと思うんだけど……そう言えば真っ先にヴァーリに話しかけてその後は夜空との漫才してたからスルーしてたかもしれない。

 

 

「リアスが向かうとして問題はどうやって旧校舎まで向かうかだね。道なりに進んで邪魔をする魔法使いを倒していくというのもあるがそれだと時間が掛かり過ぎてリアスも疲弊してしまう」

 

「お兄様! 部室には未使用の戦車の駒があります。キャスリングでなら可能ではないでしょうか?」

 

「……なるほど。グレイフィア、キャスリングの転移に合わせて何人か一緒に転移は可能かな?」

 

「この場では簡素な術式でしか展開できませんので……多くても一人かと」

 

 

 流石の魔王様や最強の女王でも転移魔法が使えない状況じゃお手上げか……まぁ、此処に居る規格外様は絶対に問題ないだろうなぁ。だってあれ魔法じゃなくて仙術の類だし。

 

 

「夜空、お前の転移術でどうにかできねぇか?」

 

「出来るに決まってんじゃん。私を誰だと思ってんの? でもやりたくねぇーよぉだ。なんでこの私がガキの尻拭いで手を貸さねぇといけないのさ。元はと言えばこの牛乳が元凶を一緒に連れてこなかったからじゃねぇの? お強い上級悪魔さんなら一人でも余裕っしょ、だからやりませーんてつだいませーん」

 

「おいおい……ヴァーリ、お前も黙ってないで何とか言ってくれ」

 

「良いんじゃないか? そもそも助ける必要があるとは思えない。旧校舎諸共滅してしまえば問題ないだろう」

 

「俺もそれやった方が手っ取り早いんとは思ったがそれやると魔王様の機嫌が悪くなるんだよ。ぶっちゃけ俺も平家が能力封じの首輪付けて此処に来てんのになんで先輩の所だけ不参加オーケーなのか意味分かんねぇからその方法で進めたい。何? 純血悪魔の眷属と混血悪魔の眷属だとそんな差があるわけ? うわっ、考えたら手伝う気が失せた。さっさとそいつ諸共殺そうぜ」

 

「ちなみに手伝いって何する気だったん?」

 

「さっき赤龍帝にちょっと言い過ぎたかなって思ったから詫びも兼ねて四季音を護衛に付けようとな。でもいらねぇよな? だって純血悪魔様だし。夜空、ゴミと一緒に周囲纏めて吹き飛ばすぞ」

 

「オッケー! それなら大賛成だっつぅの!!」

 

「待ってほしい。キマリス君、リアスの眷属の件は私がそうするように伝えたんだ。彼は自分の神器を制御しきれない、この会談で暴走をしてしまえば悪魔側(こちら側)としても困るからね……誤解を与えてしまって済まない」

 

 

 へぇ、神器が制御できない? あははははは! ばっかじゃねぇの。その程度なんて平家は毎日味わってるさ。聞きたくもねぇ同年代のゲスな心の声やら胡散臭い教師の心の声、本当なら耳を塞いで引きこもりたいはずなのにあいつは逃げないで学校に通ってんだよ。まぁ、引きこもってる日の方が多い気がするけどそれでも前に進んでる……目の前の人が魔王じゃなかったら今の言葉を吐いた瞬間殺してたな。

 

 

「……状況は理解しました。でもこれだけは言わせてください。たかが神器を制御できない程度で特別扱いするなら関わらない方が良いですよ。時間の無駄でそいつに変な優越感を与えるだけですから……てか、堕天使の総督に神器が暴走しない、または抑える装置でも貰えばよかったじゃないですか? うちの平家にしたようにね」

 

「耳がイテェが確かにその通りだ。妖怪としての能力を封じる首輪自体は楽に作れたんだが神器ともなると面倒でな。一応ここに試作品二つがあるが先に渡して此処に置いとけばよかったぜ」

 

「ノワール、別にいいじゃん。これが悪魔だって事ぐらい産まれた時から知ってたっしょ? 良い奴ほど裏ではエグイことするのは世界の常識、だから私は悪魔に転生とかしたくないの――だって魔王が身内贔屓してる勢力なんてロクな所じゃねぇし」

 

「……そう言われるとロクでもねぇな。悪魔側から別の勢力に移動するべきかぁ? 上の老害共も俺が王やってると嫌っぽいし」

 

「んじゃ私と来る? ホームレス生活確定だけど全勢力に喧嘩売るのも結構楽しいよぉ?」

 

「そうすっか。正直悪魔側に居るメリットがねぇし……あぁ、でも母さんが人質にされかねないから冥界ぶっ壊せるほど強くなってからにするわ」

 

「にしし! ちなみに私はノワールとならどこに付いても良いよ。私も光龍妃と一緒で楽しければいいしさぁ」

 

 

 地上に湧く虫共(魔法使い)を影人形で駆逐しながらそんな会話を続ける。しかし夜空と一緒に全勢力に喧嘩を売るっていうのはかなり魅力的な話だ。だって夜空と一緒に居られんだぞ? 最高じゃねぇか!

 

 

「――黒井」

 

「あん?」

 

「あのさ、俺って悪魔になってまだ日が浅いしお前みたいに強くもない……だけど! ギャスパーだって本当は此処に来たかったって事は知っててくれ! アイツは女装趣味で女よりも女物の服が似合ってる奴だけど必死に自分の神器を抑えようと必死なんだよ! 目の前の奴が動かなくなって生気の無い眼で自分を見てくるのが怖いんだって言ってた……それが嫌だから必死に頑張ってるんだよ! だから俺の友達を、仲間を悪く言うのだけはやめてくれ」

 

 

 多分これはこいつの本心だろう。なるほど……俺とは真逆だ、誰かのために一生懸命になれるなんて幸せ者だよ。少なくとも俺は無理だ。

 

 

「……お人よしだな。たくっ、俺も神器を宿してる身だ。その苦労は嫌と言うほど味わったさ……まぁ、言いすぎたってのは理解してる。悪かった……ただ俺がキレてんのは人の眷属には無理を強いて自分の身内には甘いって所を見せつけられたからだ。別にそいつに苦労を否定してるわけじゃねぇよ」

 

「……黒井」

 

 

 普通に考えたらキミ達はこれ付けてでも出席、欠席は認めないと先生に言われたのにその先生の身内には辛かったら欠席しても良いよってなれば誰だって俺のようにキレるさ。たとえそれがガキの嫉妬であろうとな。なんつうか、平家の苦労を知ってる身だと余計に頭にくるんだよ……それが魔王様であってもだ。というより様付けるのもめんどくせぇから呼び捨てでいよな。心の中ではもう呼び捨てにしとこう。

 

 でも橘に構い過ぎって言われたが平家にも甘いよな。多分一番過保護にしてる自信はあるから今も停止状態で助かったよ……さっきの流れを見せたら地味に怒るだろうし。

 

 

「たくっ、めんどくせぇな。夜空、お前の気が済むまで殺し合いに付き合ってやるから転移術で目的の場所まで繋いでくれ」

 

「うわっ、やっさしぃ~でもその甘さっていつか自分を殺すよぉ~? まっ、死なねぇと思うけどさ。しっかたねぇからこの夜空ちゃんが手伝ってやんよ。誰が行くん? 名乗り上げないとぶっ殺すよ」

 

「わ、私よ!」

 

「あと俺もだ! 部長一人で行かせられねぇしギャスパーを助けたい!」

 

「ふんふん。うんでそこの鬼も一緒で良いんだよね?」

 

「あぁ。王として命じる、その二人の護衛として手助けしろ……美味い酒奢ってやるから」

 

「――別にいらないよ。偶にはノワールのお願いぐらいはきかないとねぇ。そん代わり! 今日の晩は私を、だ、きぃ枕にしな! 良いね!」

 

「なんだそのお願いは……セクハラすんなよ?」

 

「にしし! 極上の快楽ってのを味合わせてやるから覚悟してな!」

 

 

 セクハラすることは確定かよ。

 

 流石に転送座標があいまいなのか入り口に転移穴を繋いだようで三人は救出するためにこの場から消えた。行く前にアザゼルから赤龍帝用の腕輪とハーフヴァンパイア用の腕輪を渡していたけど……すげぇな。あれ一つで赤龍帝の禁手化の対価代わりになるとかトンデモねぇ代物だ。

 

 そんな事よりも四季音の奴……なんで抱き枕にしろなんて条件を出しやがったんだ? まさかあいつも橘に構いすぎって感じで嫉妬か? 鬼の嫉妬とか怖すぎるんだけど……これでしなかったらガチギレするよな。だって酒呑童子で嘘嫌いだし。マジで詰んでるな。

 

 

「ハーフヴァンパイアは赤龍帝に任せたとしてだ……ヴァーリ、影龍王、光龍妃。お前さん達は外で陽動を頼みたい。いくらテロリストと言えども二天龍に地双龍が出て来たらビビるだろう。影龍王の不満も分かるが今は頭の片隅にでも置いておけよ――ちなみにサーゼクスの所が嫌なら俺の所に来て良いぜ? 幹部クラス以上の席を用意してやる」

 

「ぶっちゃけ悪魔側(こっち)より堕天使側(そっち)の方が居心地良さそうなんで心揺れてるんですけど?」

 

「おうおう存分に揺れてこっちに来い! もちろんお前さんの家族も一緒で良いぜ。駆け落ちしてきた悪魔と人間の夫婦ぐれぇ居ても問題ねぇからな」

 

「アザゼル、彼は冥界を背負う若手の一人だ。不用意な勧誘はやめてもらいたい……たとえ彼が私自身に不満を持っていたとしてもだ」

 

「お前さん達は身内に甘すぎるからなぁ。まっ、考えておいてくれや。聖魔剣とデュランダルの使い手は別方向の敵を頼むぜ。」

 

「分かりました!」

 

「うむ。デュランダルの錆にしてくれる!」

 

 

 魔王様、いや魔王にお願いされたからかこの場で動けるダブル騎士さん達は己の武器を手に外へと飛び出した。正直なところ此処に居てもらった方がありがたいんだけどねぇ。だって邪魔になるし。

 

「――相棒」

 

『いつでも良いぜ宿主様! その怒りを虫にぶつけてやろうぞ! 俺様も先の魔王共の行いにはムカついてるんでなぁ!! 殺して殺して殺しまくるぜぇ!!!』

 

「流石だぜ相棒!!」

 

『Ombra Dragon Balance Breaker!!!』

 

「うっわ、殺す気満々じゃん! 良いよ良いよぉ!! 堕天使風情の命令って考えるとイラつくけど今回はノワールに免じてやってやろうじゃん! いっくよぉ~ユニア!!」

 

『えぇ。私達に喧嘩を売ったことを未来永劫後悔するように蹂躙しましょう』

 

『Luce Dragon Balance Breaker!!!』

 

「アルビオン。やはり彼らは面白いな」

 

『そうだな。今までの地双龍ではないとだけ言っておこう』

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!』

 

 

 俺達は鎧を身に纏う。俺は禍々しいほどの棘が特徴の黒いドラゴンを模した鎧、夜空が山吹色のドラゴンを模した神々しいとも言える鎧、そしてヴァーリは背中の光翼が特徴の純白な鎧だ。俺達が揃って飛び出してきたもんだから魔法使い共はかなり戸惑っている様子だ……いや、夜空が此処に居る事に驚いている? おいおいまさかこの規格外……何か知ってんのか?

 

 

「――まぁ、いいや。とりあえずすっげぇムカついてるから死ねよ雑魚どもぉ!!!」

 

『ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!!』

 

 

 片手に影を集めて地面に拳を突き立てる。集めた影を水を床に撒いたように地面に侵食させ、魔法使い共の足を絡めとる。大多数を相手にするなら点よりも面で攻めた方が良い、だからこその広範囲に影を広げたんだ。足を絡めとられたゴミは逃れようと火の玉やら氷の刃やらを飛ばしてくるが影人形のラッシュタイムで防ぐ……ほらほら、早くしないと自分の力どころか生命力すらなくなっちまうぜ?

 

 

「に、逃げろ!? 影龍王の影に触れれば死ぬぞ!?」

 

「は、はなせぇ!! い、いやだ、死にたくないぃ!!」

 

「死にたくないならテロなんかすんじゃねぇよ」

 

 

 地面に広げた影を一気に俺の方まで引き戻す。捕らえているためそんな事をすれば当然、魔法使い共も一緒に俺まで近づいてくる……さぁ、処刑タイムだ。網に囚われた魚を影人形のラッシュタイムでミンチ肉にするため徹底的に叩き込む。慈悲なんていらないし俺はまだ優しい方だ――上空では夜空とヴァーリが大暴れしてるしな。でもなんとなくヴァーリの奴に覇気が無いというかやる気が無いようにも見える……相手が雑魚だからか? 確かにこの程度で取り乱す下級も下級だから無理もねぇか。

 

 しっかし夜空の奴……手当たり次第に光放ってるが旧校舎、にぃ!? 高笑いしながら放った極大の光が旧校舎に向かいそうだったので影を生み出して旧校舎全体を包み込む。かなりの衝撃が建物内に響いただろうが崩落とかはしないだろう……あの野郎! あの中には四季音がいるんだぞ!! 他はどうでも良いが四季音を殺されたらこっちが困るんだよ!!

 

 

「おい夜空ぁ!! テメェ!! 四季音を殺す気か!?」

 

「およ? あっ、ごっめぇ~ん! 適当に撃ってたらそっち行っちゃったぁ」

 

「行っちゃったぁ、じゃねぇんだよ!! あぁもう! ヴァーリ! テメェもちっとはやる気出せや!!」

 

「これでも楽しんでいるんだがな」

 

 

 魔法使いに囲まれて魔法の集中砲火を受けているヴァーリだが障壁で防ぎ、魔力の波動で薙ぎ払った。奴の神器――白龍皇(ディバァイン)の光翼(・ディバイディング)は『触れた相手の力を十秒ごとに半減させる』と『半減した力を自分の糧にする』という二つの能力を持っている。完全に俺の、いや相棒の上位互換だよな……こっちなんてゲームで言う1ずつしか減らせないのにヴァーリは触れるだけで半分減らせるんだしな。さてここで相棒の声を聞いてみよう……どうなってんだよ?

 

 

『宿主様よぉ、確かにアルビオンの奴は俺様の能力の上位かもしんねぇが俺様が得意としてるのは影を生み出す方だ。捕食と呼ばれた能力はついでなんだぜ』

 

「負け惜しみじゃねぇよな?」

 

『ゼハハハハハ!! 全盛期ならば分かるが今の奴は聖書の神に力の大部分を封じられてるだろうぜぇ! 俺様やユニアと同じようにな! だからガチで殺し合えば俺様達が勝つさ。宿主様は最強にして最高、最悪の影龍王だからなぁ!』

 

「褒めんなよ、照れるじゃねぇか」

 

 

 ゴミ(魔法使い)の集団に影人形を向かわせてラッシュタイム、俺は影を地面に広げて逃げ惑う奴らを捕らえて力を奪いつつ一気に引き寄せる。そのまま球体上に影を変化させて捕らえた奴全員を内部でプレス……中から痛いだの死にたくないだの潰れるだのという雑音が聞こえるが気のせいだろう。あっ、ブチュっていった。多分このまま影を消したらトマトジュースが出来上がってるだろうが飲みたくはねぇ。

 

 とか遊んでいたらこの辺り全域に光が降り注いだ。勿論旧校舎にも飛んで行ったので全力で護ったさ! なんで俺があいつら(赤龍帝達)を護らねぇといけねぇんだよ!! こんな事なら四季音を向かわせるんじゃなかった!! てかダブル騎士達は生きてるか? いや生きてるよな! だって先輩の眷属だもんね!

 

 

「うぅ~ん、虫のように湧いて出てくるぅ! ノワール! あれぶっ壊して!!」

 

「だから旧校舎狙うなって言ってんだろうがぁ!! 壊してぇなら自分でぶっ壊せ!!」

 

「めんどい!! てか飽きた!!」

 

「素直なお言葉をありがとう!!」

 

 

 全身から影を上空に伸ばしてゴミが大量に降ってくる魔法陣を包み込む。そして能力を発動して魔法陣の力を奪い取っていくと先ほどまで俺達が居た会議室から奇妙な魔力の波動を感じた。振り向けば褐色肌の美女とアザゼルが外に出てきたんだが……あの褐色誰だ? なんつぅか褐色ってエロいよな。あぁ、違うそうじゃなくて転移魔法が封じられている中でやってきたってことは敵か。

 

 魔法陣を包んでいる影を一旦消してアザゼルの方を向く。

 

 

「おいアザゼルさんよぉ、そいつ誰?」

 

「旧魔王、レヴィアタンの血を引く女だよ。しっかしたった数分でこの惨状かよ……お前達はもうちったぁ加減しろって。特に光龍妃、お前さんは何回旧校舎を狙ったら気が済むんだ」

 

「すぐに助けない赤龍帝と牛乳が悪い! 鬼は……ドンマイ!! つーかそこのおばさんって私をなんだかっていう組織に勧誘してきた奴じゃん。なんでいんの?」

 

「影龍王は想定していましたが光龍妃……! まさか貴方が此処に居るとは思いませんでしたよ。私達の申し出を断ったのでてっきり来ないものかと思っていましたからね」

 

「私は自分の気持ちに赴くままに行動すんの。テメェごときに指図される筋合いはねぇんだよぉだ!」

 

「なるほど……お前達旧魔王派は光龍妃を自分の組織――禍の団(カオス・ブリゲード)にスカウトしたってわけか。残念だったなカテレア・レヴィアタン、こいつは恐らくどの組織、神話体系ですら手元に置く事が出来ねぇ存在だ。唯一それが出来るとするなら……そこに居る影龍王ぐらいさ」

 

 

 はい! 思いっ切り女王にしようと頑張ってます!

 

 しかし禍の団……か、俺は聞いたことも無い名前だが聞く限りだとトンデモねぇ組織っぽいな。しかも旧魔王派って事は前大戦で死んだ魔王の血筋かよ、そんな奴らが参加してる組織のトップってのはどんな奴だ? 並大抵の存在じゃ御しきれねぇぞ。

 

 

「てか夜空、そんな事あったんならもっと前に――っ!?」

 

 

 上空に居る夜空に近づきながら声をかけた瞬間、別の方向から攻撃を受けた。何かが当たる直前に影を生み出して盾にしたが勢いは殺す事が出来ずに地面に落とされた……誰だ、って言っても答えなんか決まってる――ヴァーリ!!

 

 

「防がれたか。流石影龍王だな、意識外からの攻撃ですら反応するか」

 

「……テメェ!! いきなり何すんだよ!!」

 

 

 起き上がって上空に居るヴァーリに吠えるように叫んだ。それと同時に旧校舎から赤龍帝と先輩、四季音が目的の人物を救出したのか出てくるのが視界の端で見える……まっ、あの二人に加えて四季音がいるんだ。雑魚相手だったら無双するだろう。でも今はあいつだ! 意識を逸らしたら殺される……! アイツ相手によそ見なんて出来ねぇからな!

 

 

「ヴァーリ……そうかい、お前が裏切り者か」

 

「なんだアザゼル? 裏切者が居る事を知っていたのか?」

 

「馬鹿野郎。俺を誰だと思ってんだよ? 今回の会談でテロを行うタイミング、ハーフヴァンパイアの所在は外部の奴だと無理がある……だからテロが起きたタイミングで裏切者がいるってのは予想出来てたさ。もっとも俺の予想では光龍妃かと思ってたが――まさかお前とはな」

 

「ふふっ、確かにそうだろうな。俺は光龍妃と出会い、何度も戦う事で己の欲を満たしていた。強者と戦いたいというたった一つの欲をね。でも足りないんだよ、俺の好敵手である兵藤一誠があまりにも弱すぎる残酷な運命に少しばかり悲しんでしまったと言うべきかな?」

 

「そこで私達は彼に声を掛けました。その場に光龍妃が居た事は予想外でしたが白龍皇と光龍妃、どちらか片方か両方でも参加してもらえれば十分でした。あなたが彼を放置していたおかげで今回のテロはスムーズに行う事が出来ましたよ」

 

「……ヴァーリ、お前はオーフィスに下るってのか?」

 

 

 オーフィス、確かそいつは無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)と称される世界最強のドラゴンの名前だ。そうか……カオスなんたらってのを率いているのはソイツか。マジかよ、確かにオーフィスほどの存在がトップなら性格に難有りだろうと強者であろうと従うか。

 

 

「協力するだけさ。元々俺が目指す野望はもっと先にあるんでね。それにアザゼルの傍に居るよりもこっちにいた方が都合が良いんだ、好きな時に光龍妃と戦えるからね」

 

「いやぁ~まさかカオスなんたらに入れば私と好きな時に戦えるかもよぉとか言ったらオーケー出すとは思わなかったね。でも毎日はダメだぜ? 私だってノワールと殺し合うっていう大切な義務があるんだからさ」

 

「分かっているよ。俺の方もしばらくは忙しくなりそうなんでね、キミとは戦う時間がなさそうだ」

 

「ありゃぁ~残念。まっ、いいけどねぇ~でもでも私って気まぐれだからヴァーリの組織とか潰しちゃうかも知んねーけど許してね?」

 

「好きにするといいさ。俺はこの組織に愛着を持ってはいない」

 

「……話の横から邪魔すっけどよ。夜空……お前、知っててスルーしてたな?」

 

「うん。だってテロだよ? 面白そうじゃん! 教えちゃうと対策されて私の楽しみが減っちゃうしぃ。でもなんかゴミの集団見たらウザかったしノワールがちょこっと魔王に虐められてたからこうして掌返しでぶっ殺してるんだから帳消しって事にしてくんない? あっ、ちなみにノワールの近くに居る吸血鬼君の所に魔法使い送ったの私だから。ヴァーリに頼まれちゃってさぁ~なんでも従来の転移魔法陣だと足が付くとかなんたらで私のだったら問題ないんだってさ。面白そうだったしコカビエルの時にご飯奢ってもらったからそれぐらいならいっかなぁ~ってね」

 

「……そうかよ」

 

 

 マジで何してくれてんだよこいつ。言ってる事とやってる事が滅茶苦茶でガキの我儘みてぇにコロコロ変わりやがる。いやその前についさっきのハーフヴァンパイアって誰? とか周囲が停止する前のユニアの言葉すら嘘かよ!! 手が込み過ぎてというかこいつ(夜空)だからそうなんだろうって納得しちまったじゃねぇか!! まぁ、夜空の性格とかを一番理解できてるとは思ってたがここまでとはな――やっぱ俺の女王にはこいつしか相応しいのは居ねぇな! さらに欲しくなった!!

 

 

 

「黒井! 大丈夫かよ!?」

 

「問題ねぇよ。悪いな、うちの馬鹿がそっちに迷惑かけてた」

 

「い、いや……でもマジなのか? だってあの人はライザーの時に俺に手を――」

 

「マジだよ。あいつはそういう性格だ。そん時はお前が片腕をドラゴンに献上したのを知って面白いから手助けしてやろうと思っただけさ……面白い事優先で他人が傷つこうが死のうが関係ない。ただ自分が楽しければそれでいいんだよ」

 

「そのとおぉ~りぃ!! でもカオスなんたらってのには入ってないのはホントよ? 私はオーフィスの下で働きたくないし逆に倒したいって派だからさぁ。ごめぇ~んね?」

 

「今更かわい子ぶってんじゃねぇよ。むしろお前で安心したわ」

 

 

 上空に浮いて夜空とヴァーリに向かい合う。俺の背中にアザゼルが背中を預ける形で近づいてくる……まさか堕天使の総督と背中を預ける体勢になるとは思わなかった。でもこいつ等を二人相手は流石の俺でも厳しいが何とかするか。

 

 

「影龍王、カテレアは俺に任せろ。お前さんはちとキツイだろうがそっちを頼むぜ」

 

「自分だけ楽な方を選ぶとかチキンな総督だな」

 

「おうおう言うねぇ。言っとくがカテレアもかなりの実力者だぜ? まっ、お前さんには勝てねぇだろうがな。俺がそいつらと戦わねぇのはヴァーリの渇きを満たせるのはお前さんぐらいだって思ってるからさ。俺が戦った所であいつは何も感じねぇんだよ」

 

「……まっ、だろうな」

 

「それにお前さんにとってもいい経験になるだろうぜ――あいつはルシファーだからな」

 

 

 アザゼルの口から信じられない言葉が聞こえてきた。ルシファー、その名は冥界においても何を置いても重要視されるほどの存在の名前。確かにヴァーリは魔力を使ってたから俺と同じ混血悪魔なんだろうなとは思ってたがフルネームまで聞かなかった……なんか言いたくなさそうな感じだったし俺もただのヴァーリとして殺し合ってた。マジかぁ~フルネームはヴァーリ・ルシファーだったのかよ……そりゃ才能で勝てねぇわけだ。

 

 その言葉で驚いていたのは俺だけじゃなくてヴァーリの隣に居る夜空と地上に居る先輩、そしていつの間にか会議室から出てきた魔王二人とミカエル、そして俺の眷属と先輩の眷属、生徒会長達。どれも信じられない表情をしてヴァーリを見ているけど一番驚いているのは先輩だ……そりゃそうだ。自分の兄がルシファーの名前を与えられたのにここにきて本物が出てきたんだからな。

 

 

「そうとも。影龍王にも光龍妃にも言ってはいなかったがここで明かそう――俺の名はヴァーリ・ルシファー。前魔王の血を引く父と人間の間に生まれたハーフなんだ。俺は白龍皇でありルシファーでもある存在……奇跡と呼ぶにふさわしいとは思わないか?」

 

 

 上空で白龍皇の光翼と悪魔の証である翼を生やしたヴァーリが兜で分からないがきっと笑みを浮かべたまま俺達を見つめている。

 

 純白な光の翼、複数の漆黒の翼を自慢するように見せる奴の姿は……悔しいがカッコよかった。




長くなりそうだったので区切りました。
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