ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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26話

「やっと……終わったぁ」

 

「にししぃ~おっつかれぇ~いやぁつっかれったねぇ」

 

「テメェは酒飲んでただけだろうが……一番体力も怪力も持ってんのによ」

 

「いいじゃぁ~んかぁ、せきりゅ~てぇのおせわしたんだしさぁ」

 

 

 三大勢力の会談、途中でヴァーリの離反と夜空の暇つぶしによってドラゴンを宿した俺達四人による殺し合いに発展したが珍しく夜空が女の子したため、誰も死ぬ事無く無事に終了した。先ほどまで俺達との戦いで崩壊した校舎の修復やゴミ(死体)の片づけなどで居残りをさせられてたが三大勢力の兵隊や俺達キマリス眷属、グレモリー眷属などの頑張りによってわずか数時間程度で終わり、こうして我が家に帰還してきたというわけだ……もっとも三十分ぐらいは橘と水無瀬によるお説教で俺は動けなかったけどね。どうやら片腕が吹っ飛んだり上半身が吹っ飛んだり、挙句の果てには足以外が吹っ飛ぶという光景は流石の橘でもびっくりの連続だったようであまり心配させないでくださいというありがたいお言葉を言われてしまった……でもそれを止めると俺と夜空の殺し合い自体が成立しないから無理なんだよね。

 

 そんなわけで家に帰ってきた俺達は適当に会話をした後、各々の部屋に戻っていった。恐らく犬月達は初めての経験でかなり疲れがあったんだろう……にしても平家が静かだったな。あいつの事だし俺の心の声関連で何か言ってきそうなものだったんだがなぁ?

 

 

「たくっ、まさか橘と水無瀬から説教されるとはな……新入りの橘はまだ良いとして水無瀬は何度も見てるんだし怒る理由なんざねぇだろうによ」

 

「しほりんがおこってたのはぁ~こうりゅうきぃのはだかをみたからっしょぉ~? こいするおとめはねぇ~がまんできないんだよぉきっとぉ」

 

「なんだそりゃ?」

 

 

 説教の内容だが橘と水無瀬と言う我がダブル僧侶、またの名を美乳巨乳コンビからあまり女相手にヤろうぜとか裸をじろじろ見るなとの事。でも仕方ないと思うぞ? だって俺は男なんだから。まぁ、長引いた理由は相棒のせいなんだけどね……二人の説教に思う所があったのかいきなり声高らかに「男だったら女の裸には興味があってもおかしくはぜぇ? ついでに言うと男の娘の裸にも興味があるのも仕方がない! つまり見た目が女だったらとりあえず何でもいいんだよ!」と叫びだした。カッコよかったぜ! 相棒の素晴らしいお言葉は今でも心に響いているぐらいだ!

 

 

「つかそろそろ着替えたいんだが? 女天使すら堕天する俺の肉体美でも見たいのか?」

 

「――はっ、ばっかじゃないの」

 

「いきなり素に戻んなよ。冗談だじょーだん、俺程度で天使が堕天してたら天界勢力は既に壊滅してるっての。まぁ、それは良いとして着替えて良いか?」

 

「言いに決まってるさ。アンタの体をつまみに一杯飲むから」

 

「酒よりオナニーしろっての」

 

 

 ヴァーリや夜空との殺し合いで何度も体をふっ飛ばされては再生を繰り返していたため現在も禁手化状態だ。流石の俺でも全裸で後片付けとかはしたくねぇし……鎧とかは簡単に修復できるんだが中に着ている服とかまでは戻らねぇんだよな。この辺りが優しくねぇ。

 

 鎧を解除して全裸になり、四季音に見られながら部屋着に着替える。なんというか視線に敏感だと自負しているけど思いっきり俺の大事な部分をガン見してるじゃねぇか……流石鬼、堂々としてる。でも顔がちょっと赤いぜ? 酒のせいかなぁ?

 

 

「……うわ、風呂で見るよりすご――違う違う! 違うかんな!! さ、酒が不味くなった! 気持ち悪いもん見せんじゃないよ!!」

 

「俺が風呂入ってる時に乱入してくる奴が何を言ってんだ? こっちはテメェのちっぱいに何度もお世話になってんだからお前も俺のを見てお世話になりやがれ」

 

「なっ、なな! ば、バカじゃないの!! ふんっ! ノワール程度のお、――(ピー)程度でお世話になるわけないだろ! 変な事ばっかり言ってると潰すよ!!」

 

「鬼の怪力で潰されたらキマリス家は断絶するっての。ほら、時間も遅いからさっさと寝ろ……ってそう言えばお前を抱き枕にしないとダメなんだったか?」

 

「とーぜんだよ。約束したかんね! 破る? 破っちゃう? 鬼さん怒るよぉ――じゃなくて、ほら」

 

 

 俺のベッドに座っていた四季音が立ち上がって俺の腕を掴んで強引にベッドの上に寝かせる。そして俺の頭を自身の膝の上に置いてどういうわけか撫で始めた……なんだこの状況?

 

 

「なにこれ?」

 

「もういいさ、もう誰も見てないし聞いてない……あっ、さおりんは聞いてるかな。でも一番先に気が付いてたし何も言わないさ」

 

「……だから何がだよ?」

 

「強がらなくてもいいさ――眠いんだろう?」

 

 

 髪を撫でながら母性ある声色、あぁ……くっそ、なんで見抜かれたんだろうな。犬月も橘も水無瀬も騙せたってのに……なんでこいつと平家は騙せねぇんだよ。

 

 

「――いつからだ?」

 

「アンタの戦車だよ? 終わった後のアンタの顔を見ればすぐに分かるさ。今すぐ倒れたい、でも周りに人がいるから大丈夫な振りをして強がっていないとダメだってね。さおりんだって心を読まなくてもそれぐらいは分かってたはずだよ? だってアンタに依存してるからね。依存ってのは言い換えればノワールをちゃんと見てるんだ、疲れも辛さも悲しさも全部見抜いてるよ」

 

「……そっか」

 

 

 四季音の膝枕のせいか、先ほどまでの殺し合いの疲れのせいか異常なまでに眠い……でもさっきの言葉通り周りに他人が居たから無理をして倒れそうな体を動かして、大丈夫な振りをして強がった。倒れたら俺はあいつ等よりも弱いって思われるのが……嫌だったからな。

 

 

「四季音……俺は、つよかった、か」

 

「あぁ、強いさ。私の主様だ、弱いはずがない。私を倒したんだぞ? 酒呑童子のこの私と戦って勝利したノワールは強い。だから今は休みな……影人形融合ってのは未完成なんだろ? そんなもんをあんだけの殺し合いで使ってあんだけ再生してればぶっ倒れるのは当り前さ」

 

「……あぁ、その、とおり――」

 

「話すな。鬼の膝で今は眠りな」

 

 

 その言葉を最後に俺の意識は失った。

 

 そして誰かに呼ばれるように目を覚ますと……そこは城だった。影のように黒、黒、黒という色しかない影の城。ここで誰に呼ばれたか俺はすぐに理解した――全く、寝かせろよ。

 

 

『ゼハハハハハ。お楽しみの所を悪いなぁ宿主様』

 

「お前が空気を読む性格なんてしてねぇだろ」

 

 

 目の前には一匹のドラゴンが居た。俺が見上げなければいけないほどの巨体、姿は黒の鱗に気持ち悪いぐらい不気味な棘のような突起が無数に生えている四足のドラゴンだ。聞こえる声は吐き気を催すほどの邪念に近いものを感じさせるそいつの正体こそ――俺の相棒、影の龍クロム。

 

 

『俺様だって邪龍の端くれだ。それぐらいの事はするぜぇ? だがあえて読んでいないだけよ。ゼハハハハ! 何故俺様が此処に呼んだか分かるかぁ?』

 

「知らねぇよ。でも此処に来たって事は現実の俺は意識を失ったって事か……四季音の前とはいえカッコ悪いな、くそったれ」

 

『仕方なかろう。影龍王の再生鎧ver影人形融合、あれは失敗作だ。宿主様が求めた理想から生まれた贋作で欠陥品よ。確かに霊力を全身に流す事で身体能力強化、生まれる影に自我を宿らせるというのは面白い発想だが所詮それまでだ。覇龍には届かねぇし宿主様もその様だ』

 

「……あぁ、ヴァーリと夜空、あの二人と殺し合って思いっきり使っただけでこの様だ。あれ以上との相手と今後戦うなら全然足りねぇ」

 

『その通りだぜぇ。宿主様の亜種禁手にはどういうわけか不死能力とも言える再生が宿ったとはいえだ、まだまだ宿主様は弱い。最強だが弱いんだ、俺様はそんなものは認めねぇし今のままで満足するなら今すぐ殺してやる。弱い影龍王なんざ必要ねぇしな――だからこそ問うぞ宿主様、さらに強く、さらに狂気の世界へと足を踏み入れたくはねぇか?』

 

 

 恐らく嗤っているんだろう。俺が分かりきった答えを言う事に期待している……だよな、俺がその答え以外を求めると思ったか?

 

 

「その答えは――Yesだ。もっと強く、俺を下に見た奴らを殺して蹂躙して高笑いできるほどの強さを求めるさ。だからこそ聞くぜ相棒――俺と共に生きるか?」

 

『――ゼハハハハハハハハハッ!!! あぁ! 俺様は宿主様以外に影龍王とは認めねぇ!! 俺様はなぁ、嬉しかったんだぜ? 歴代の奴らは俺様の声を聞いてダメだ、嫌だ、そんな事できないってガキのような正義感で否定してきやがった……でもなぁ、宿主様だけは違った。違うんだぜ、俺様の言葉を聞いて否定する事なんてしねぇで素直に鵜呑みにしやがった! 弱いと思った、雑魚かと思った、クソみてぇな甘ちゃんかと思った。しかし実態はとっくの昔から壊れていやがった!! ゼハハハハハハハ! もっと強く! もっと最悪に! もっと破壊を楽しもうぜ宿主様!! そのためならば俺様は邪龍、いや地双龍として全身全霊を持って力を合わせよう!』

 

「あぁ、力を合わせるぜ相棒。夜空に勝って、ヴァーリにも勝って、赤龍帝にも勝って、最強の影龍王として高らかに嗤おう。だからまずは――影龍王の再生鎧ver影人形融合の進化から始めるか」

 

『あぁ! 確かにそれは欠陥品で失敗作だが現状では俺様達の切り札だ。磨き上げ、さらに昇華させようぜ我が宿主様!!』

 

 

 俺も相棒も誰も聞いていない、誰も見ていないこの空間だからこそ互いに笑いあった。あの日、影龍王の手袋を発現させた日の夜だ……こんな風にいきなり夢の中でこいつに出会った時は驚いた。正直お漏らししたぐらい怖かったな……でも、どこか安心する感じがしたんだ。

 

 

『初めましてだなぁガキ。俺様こそテメェの神器に宿っている影の龍クロム様よぉ! 挨拶したくて呼んじまったぜ! 今日からクロム様とでも呼びやがれ?』

 

『……なんか大きいな』

 

『あん? なんだガキィ? 俺様を見てビビってんのかぁ? ゼハハハハハハ!!! これは最弱な影龍王だなぁ! 最悪だ! ユニアに笑われちまう! あの程度も跳ね返せねぇガキが俺様の所有者かよ! ふざけんじゃねぇ!!』

 

 

 初対面の時は今のように笑いあう事すらなかった。こいつ(相棒)は俺を見下して、俺は俺でなんかデカいドラゴンだみたいな事を思ってた。

 

 

『神器転移のランダムには逆らえねぇ……くそったれが。仕方ねぇから我慢してやるか、おいガキ。テメェは強くなりてぇか?』

 

『……なりたい』

 

『そうかそうかぁ。だったらまずは――近くの奴らを殺す事から始めろ。俺様の能力を使いながらだ、殺して殺して殺しまくる。殺戮の果てにお前が欲する強さを得られるぜぇ!』

 

『分かった。やるよ』

 

『――はぁ?』

 

 

 その時の相棒のマジかよって顔と声は今も忘れてない。いやそれよりも昔の俺って純粋すぎねぇかなぁ……殺していれば強くなれると言われてはい分かりました! だもんな。いや、流石に親父達に止められたせいで殺人はしてないけど止められなかったら本気でしてたんだよな……多分、母さんのあんな姿を見たせいだと勝手に思ってるけども馬鹿だった。

 

 

『おいおいマジかよ。ガキ、テメェは俺様が言った言葉を理解してんのか? 殺しだぞ殺し? テメェは殺人した事あんのか?』

 

『……ない』

 

『だったらなんで俺様が殺せって言ったら殺すっていうんだぁ?』

 

『だって強くなりたい! もっと強く……強く! そのためならどんな事でも言う事聞くし何でもやるさ!』

 

『……ゼハハハハハハハハッ!! 面白れぇ! 初めてだ! 俺様の言葉を聞いて嫌だ、そんな事できねぇなんて偽善者ぶった事を言わねぇ奴は初めてだぁ!! そうか、そうかぁ! ゼハハハハハハハ!』

 

『な、なんだよ! なんで笑うんだ! 俺は変な事を言ってないぞ!!』

 

『違う! 違うぜぇ!! テメェより前の奴らはさっきの言葉を聞いてなんて言ったと思う? そんな事は出来ない、嫌だ、やりたくないなんてクソみてぇな言葉を言いやがったんだぜぇ! 今回もそれかと思ったが……ゼハハハハハハハ! まさか素直に受け止める奴がいるとは思わねぇよ!!』

 

『そうなのか? だってアンタ、あぁ、えっと』

 

『クロムだ、邪龍の中でも最強と呼ばれた影の龍クロム様だぜぇ』

 

『クロムって強いんだろ? なんか見た目も黒一色でカッコいいしさ! 歴代って人は良く分からないけどバカだったんじゃないかな? 俺も多分……頭良くねぇけど』

 

『……ちぃ、調子が狂うぜぇ。俺様を見てそんな事を言いやがったのもテメェが初めてだ。まぁ、なんだ、俺様は邪龍で悪いドラゴン様だぜ? それでも俺様の言う事を聞くかぁ?』

 

『当たり前だろ! だって強くなりてぇもん!』

 

 

 ガキだった、無知だった、あの惨劇を見て弱いと知ってしまったから強くなりたいと心から思ったからこそ目の前の奴の邪悪さに気が付かなかった……いや違うな。知っててそれに飛び込んだんだ。その結果が今の俺達なんだけど俺は後悔なんてしてないしむしろありがとうと感謝するさ。

 

 

『――そうかぁ、ゼハハハハハ! ならば今この時より俺様の宿主様と認めてやる! 必ず宿()()()を強くしてやる! 誰よりも強く! ユニアの宿主を殺せるほどに! 地位や名誉に縋り付く雑魚すら蹴散らせるほど強くなぁ!』

 

『あぁ! もっと強くなる! これからよろしく!』

 

『ゼハハハ、偶にはこういうのも悪くねぇ……あぁ、よろしくな』

 

 

 あの時の相棒は慣れてなかったのかすっげぇ恥ずかしそうな声だったな。邪龍だしそう言うのには慣れてなかったんだろう……絶対に言わないけど昔は相棒の事を父さんと思ってたんだぜ? 親父やセルスとの特訓で失敗しまくった時とか慰めてるのか分からねぇ言葉を言ってきたり的確かどうかわからねぇアドバイスをしてくれたりと頼れる存在だったからな。今は父さんというよりも相棒、背中を預けれる最高のパートナーって感じか。

 

 

『なんだぁ? 過去の事でも思い出してたかぁ?』

 

「まぁな。相棒、一緒に強くなろう。たとえその先に破滅が待っていようと蘇ってでもその先に進み続けよう」

 

『あぁ。邪龍はしつこくて頭がおかしい種族だ。俺様も宿主様も頭がおかしいからなぁ!! 行こうぜ! 覇道の神髄へ!』

 

 

 多分、相棒はかなり嬉しそうな声だったと思う。ようやく理解者が現れた、そんな感じに思えるぐらい喜びに満ちた声だったと思う。

 

 その後、意識が覚醒するように目が覚めた。怠い体をなんとか起こすと酒の匂いがした……視線を横に向けるとベッドの隣でいつものように酒を飲んでいる四季音が居た。その格好は俺のを勝手に拝借したのかワイシャツオンリーという朝には刺激的すぎるものだが……ボリュームが足りねぇ。せめて橘とチェンジしろ。それだったらテンション上がるから。

 

 

「……ぁ、朝か」

 

「おはよう、ホントに疲れてたんだねアンタ。水いるかい?」

 

 

 四季音から水を受け取って一気に飲み干す。流石に昨日はかなり疲弊してたらしく水の冷たさが体に浸透してすっげぇ気持ちいい。

 

 

「サンキュー……悪いな、カッコ悪いところ見せた」

 

「別にいいさ。アンタと私の仲だろう? 今更気にしても遅いさ」

 

「そうかよ。あぁ、四季音?」

 

「なんだい?」

 

「――お前、やっぱいい女だわ。いつか抱かせろよ」

 

 

 それを言い残して部屋から出る。何故かって……俺の部屋でうあぁぁやら奇声を上げ始めた合法ロリから逃げるためだ。アイツって鬼のカリスマが出てる時はカッコいいが根っこは初心なんだよなぁ、中身もカリスマ纏った状態だったらいいのに。

 

 

「あんまり花恋をいじめない方が良いよ。あれって少女趣味の初心な鬼なんだから」

 

 

 リビングに来ると先に起きていた平家がソファーに座りながら携帯ゲームで遊んでいた。朝起きた時も四季音がワイシャツ一枚だったけどどうしてお前も同じなんだ? パンツ見えてるぞ?

 

 

「見せてるから問題なし」

 

「そうかい」

 

「あっ、おはようございますノワール君。今ご飯作っていますから先に顔と歯を洗ってきてください」

 

「あいよ」

 

 

 言われた通りに洗面所で顔を洗い、歯を磨いてついでだからと風呂にも入る。そして戻ると起きてきた橘や犬月、先に起きていた平家と共に朝飯を食べる。四季音はどうやら先ほどのセリフのせいで部屋に引きこもったらしい……おい鬼、いつもの態度はどうした?

 

 飯を食べ終えてそのまま学園に登校、昨日の殺し合いのせいで形も残らず崩壊していた校舎はまるで無かったかのように元に戻っている。そりゃ、頑張ったもんなぁ。主に三大勢力の兵隊たちが。

 

 

「よっ、昨日ぶりだな影龍王」

 

 

 時間は進み、放課後。俺達全員は保健室に集まっていた。理由なんて簡単に説明できる――堕天使の総督が訪ねてきたからだ。どうやら話を聞くと教師としてこの学園に通う事になったらしい……総督が教師とか世も末だな。しかもオカルト研究部の顧問にもなってあいつらの成長を手助けするそうだ。多分この辺りは魔王辺りが妹のためにとかありそうだけどここまで露骨に贔屓するか。

 

 

「まぁ、そう言うな。俺としては赤龍帝と影龍王、どっちも手を貸したいところなんだぜ? どうだ? これを機にオカルト研究部と心霊探索同好会を一つに纏めるってのは? そっちの方が俺としてはありがたいから是非そうしてくれ」

 

「俺がグレモリー先輩の命令を聞かねぇとダメとか死にたくなるんでお断りします。それにオカルトと心霊は違いますから……で? 要件はそれだけですか?」

 

「んなわけあるか。今回俺が来たのは昨日の会談時に襲ってきた集団――禍の団(カオス・ブリゲード)の抑止力の一つとしてお前さんに頼みたいと思ったからだ。実力は昨日の戦いで見させてもらった……たくっ、若手悪魔っていう括りを超えている。魔王の妹ですらお前には勝てねぇだろうな。だからこそテロ対策の戦力としてお前さんに、影龍王眷属に頼みたい」

 

「混血悪魔の眷属に頼らないといけないなんて冥界終わってますね」

 

「全くだ。本来ならば最上級悪魔を含めた成人悪魔が率先してやらなければいけない……だが先の騒ぎで俺の組織の大半が禍の団に入っちまってミカエルの方もまた同じ、サーゼクスの所もだそうだ。皆、今の世界で仲良くしましょうとは考えたくねぇんだと」

 

 

 天使が離反と言うのは世も末だ。どうやら聖書の神が死んだ影響で堕天を逃れる術を知っていた奴らが何名か居たらしい。もっともテロリスト側に入った瞬間に堕天したそうだけども……わずか一日でここまで事態が急変するとはな。だからこそ楽しいんだけども。

 

 

「そこでだ、まだ企画段階だがもうすぐ行われる若手悪魔の会合に集まったお前たち若手悪魔同士での模擬戦をやろうと思う。サーゼクスもその辺りはちゃんとしてるんだぜ? 普段はシスコンだがな。対テロリスト対策として若手悪魔を成長、戦力へと持っていくのが狙いだ。悪い話じゃねぇだろ? お前さんは手を繋いで仲良くしましょうと言うより戦闘の方が興味ある、ヴァーリと同じだから分かってんだよ」

 

「ドラゴンですからね。でも今の若手悪魔と言うと……要注意はサイラオーグ・バアルか、流石の俺でもあの人の拳を受けたら大ダメージは免れないし最悪殺されますからね」

 

「リアス・グレモリー、ソーナ・シトリーは気にも留めねぇってか?」

 

「雑魚に興味を持っても仕方ないですよ。生徒会長の方は四季音のみでも簡単に倒せますし先輩の方は……赤龍帝が厄介ですけど水無瀬が居れば対応できるレベル。だから現状はライバルとは思ってませんよ」

 

 

 赤龍帝対策として自分の名前が出たからか俺の後ろで水無瀬が驚いていた。いや困惑しているところ悪いが当たり前だろ? お前の神器は性質を逆転させるんだし倍加を減少にする事も理論上は可能だろう? もっとも通常形態じゃあんまり意味は無いから夏休み中に禁手化させるけどな。いやぁ、楽しみだわ! あれやこれやで虐めてやる! ぐへへ! とか思ったら平家にキモイとか言われるからそろそろやめるけど。

 

 

「ほう、なるほど……逆転する砂時計(ロールバック・ストーン)か。確かにその神器なら赤龍帝の倍加にも対応できるが持ち主のスペックが足りなきゃ話にならねぇぞ? いやお前さんの事だから……なるほど、夏休み中に禁手に至らせようって事か」

 

「良い機会ですしそろそろ至らせないと俺達が困りますから。俺を護ってもらわないと弱い混血悪魔は簡単に死んじゃいますし」

 

「再生できる癖によく言うぜ。まっ、当日を楽しみにしてるとだけ言っておこうか。時間取らせて悪かったな影龍王――ヴァーリが迷惑かけた礼にいつか一杯付き合ってくれや。そん時はうちの女堕天使を抱かせてやる」

 

「マジで? そういう事なら喜んで一杯どころか何杯でも付き合うぜ。ドラゴンの性欲って地味に馬鹿に出来ねぇからその辺はそいつらに覚悟してもらえるとすっごくありがたい」

 

「おうおう任せとけ! 何回でも連戦するがいいさ!」

 

 

 悪い笑みを浮かべながらアザゼルは保健室から出て行った。どうやらそのままオカルト研究部に向かったらしいけど俺としてはどうでも良い……女堕天使、つまりは美女や美少女! よっしゃテンション上がってきた!

 

 

「変態」

 

「変態です悪魔さん」

 

「男だから仕方がない。犬月、そん時はお前も連れてってやるよ」

 

「――お供いたします王様、地の果て地獄の底までも俺は貴方のパシリとしてお供します」

 

「男ってホント馬鹿ばっか。ところで恵を禁手に至らせるって話は本当だよね? 知ってるけど一応聞いておくよ」

 

「当然だ。貴重な夏休みだぞ? 水無瀬には悪いが仕事は使い魔に任せてひたすら禁手に向かって特訓だよ。言っておくが拒否権はねぇからな? 俺達の背中を護れるのは橘とお前だけだ。夜空も信頼してるがそれ以外は信用してねぇ、お前達が俺達を護るんだ」

 

「は、はい! 私、頑張ります!」

 

「……花恋や早織、志保のように強くはないですけどノワール君の僧侶として精一杯頑張り、いえ護ります。勿論瞬君もね」

 

「へへっ! あざっす水無せんせー! 俺も夏休み中は特訓あるのみ! もっと強くなって必ずアリス・ラーナをぶっ殺す! 王様の事だから合宿みたいなのやるんでしょ?」

 

「あぁ。犬月、平家、四季音、橘の四人にはそれぞれ師匠を付ける。遊びじゃねぇから気合入れておけよ? もし遊んでたらぶっ殺すからそのつもりでな」

 

「あの……私は誰と特訓を、ま、まさか……」

 

 

 多分今の俺はニィと不気味な笑みをしているだろう。心を読んだ平家はガンバと他人事、他二名も気づいたのかうわぁと言う表情だ――そりゃ水無瀬ちゃん、決まってるじゃない。

 

 

「お前は夏休み中ずっと俺の傍で特訓だ。先に言っておくが――マジで殺す気でやるから必ず生き延びろよ」

 

「――ずっと、ずっと一緒……」

 

「恵がずっと一緒と言われて嬉しいような地獄が確定していることに落ち込めばいいか凄く悩んでる」

 

「とりあえず喜べばいいさ。まっ、地獄は先だ。今は……くっだらねぇ日常を楽しもうぜ」

 

 

 これから忙しくなりそうなんだ、つまらねぇ日常で休んで楽しんで殺しを楽しもう。

 

 それから数日後、天使、堕天使、悪魔の三大勢力が和平を結び、今後は協力する事を誓い合った。その名は駒王協定、俺達が通う学園の名前から取られたそれは争いを続けていた勢力が一つになった事を意味している。まるで地双龍と二天龍を封印した時のようにな……まっ、俺はどうでも良いけど。夜空と殺し合ってくっだらない日々を過ごせればいい。

 

 そして――慌ただしくなった一学期が幕を閉じた。




駒王学園高等部 心霊探索同好会
顧問教諭 水無瀬恵(僧侶)
部長 黒井零樹/ノワール・キマリス(王)二年生 残る駒「女王」「騎士1」「兵士6」
副部長 平家早織(騎士)一年生
部員 犬月瞬(兵士)二年生 / 橘志保(僧侶)二年生
戦闘員 四季音花恋(戦車)

観覧ありがとうございました!

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