ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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影龍王と若手悪魔
27話


「――帰りたくねぇ」

 

「いやいや、昨日いきなり冥界に帰るぞと言ってきたのは王様でしょ? 大慌てで支度したってのにその本人が帰る気を無くされたらこっちが困るっすよ」

 

「その方が焦るだろうなぁと思っただけだ」

 

「ひでぇ!?」

 

 

 駒王学園が夏休みに入った初日、俺達は我が家の玄関前に立っていた。理由なんてさっきの犬月の言葉通り冥界、キマリス領にある俺の実家へと帰るため……なんだけど今朝になって突然帰りたくなくなったんだ。恐らく俺の本能と言うべき部分が帰省すれば息子大好きオーラ全開の母親が襲い掛かって来るぞと言っているに違いない。確かに夏休みは俺も影龍王の再生鎧ver影人形融合を研磨すると決めてたし犬月達も今よりもレベルアップさせるつもりだったさ。しかし、しかしだ! そのためだけに俺が息子成分補充と称した抱き着きの被害にあって良いのか? いや良くない! 絶対に嫌だ! だからもう帰るのやめて引きこもろうぜ? ダメ?

 

 

「ダメ。私もお義母さんとお義父さんに会いたいもん」

 

「私もお義父様とお義母様にお会いしたいです! そして悪魔さんのご実家も拝見したいのでさぁさぁ! 早く行きましょう! 私、冥界に行くの初めてなので……エスコートをお願いします♪」

 

「よっしゃ! アイドルスマイルでやる気出たわ。とりあえず先に言っておくが今日から始業式の前日までは戻ってこねぇからそのつもりでいろよ? 我が家が天国だって思えるぐらい地獄にしてやるからな」

 

「主に恵が地獄だよね。ご愁傷様」

 

「だ、だだだ大丈夫、ダイジョウブデスヨ。私はノワール君の僧侶、僧侶ですから何が起きても大丈夫です。いつもの不幸と思えば何も問題はありません。はい大丈夫です」

 

「ぜぇんぜぇ~んだいじょーぶじゃないねぇ? わったしぃがかわってあげようかぁ?」

 

「お願いします花恋! 私! まだ死にたくありませぇん!! 恋人とイチャイチャしてエッチして幸せな家庭を築きたいですぅ!!」

 

「……王様、流石に水無せんせーが可哀想なんで優しくしてあげません?」

 

「ヤダ」

 

「お、おぅ……即答っすか」

 

「流石外道だね」

 

 

 当然だ。この夏休み中に水無瀬を禁手まで至らせる……何故なら今のままだと水無瀬が一番弱くなって俺達の弱点となってしまう恐れがある。神器使いにとって禁手は最終到達点であり通過点、その先は己が切り開いていくしかない狭き門が禁手だ。折角面白い神器を持ってるんだし至らせないと色々と勿体ないだろ? だから水無瀬には非常に申し訳ないが死んだ方がマシと言う地獄を味わってもらう予定だ。もっともそれは同じ神器使いの橘にも言える事だが橘は橘でやることがある……いずれは禁手に至らせたいけどな。

 

 俺が手を緩める事は無いと知っているからこそ水無瀬は自分よりも幼い体型の四季音に抱き着いて変わってくださいと頼み込んでいる。いやぁ、おっぱいが無乳に当たってるね。ポヨンポヨンと弾力があるクッションを浴びてるからか地味に四季音の表情が引きつってる……鬼を引きつらせるとは流石美乳! 俺も触って弄ってみたい! でも水無瀬よりもデカい橘のアイドルおっぱいの方が俺は興味があります!

 

 

「変態、下種、外道、鬼畜男」

 

「褒めるなよ。ほら水無瀬、泣いてねぇでさっさと立て。決定した事を悔やんでも仕方ねぇだろ」

 

「決定してるから泣きたいんですよ! 私の不幸体質もここまで来ましたか!? もういやですぅ!! こううんがほしいぃですぅ!! 恋人がほしいですぅ!」

 

「ガチ泣きかするほど嫌なんすね……まぁ、気持ちは分かりますけど。水無せんせー!! 何かあったら俺に言ってください!! 貴方のパシリ犬月瞬は何でもします! だから元気を出してください!」

 

「パシリ、お前荷物持ちね」

 

「にししぃ~いいにもつもちがいてらくちんらくちんぅ~あぁ、ぱしり~? 言っておくけど断ったら潰すかんね」

 

「……こんの引きこもりに酒飲みロリが!! 喜んで持ちますよこんちくしょー!!!」

 

 

 四季音に潰されたくないからか泣きながら女子勢の荷物を持ち始めた。流石パシリ、何も言っていないのに俺と橘の荷物も持つとか訓練されてんなぁ。橘本人はちょっと困惑してるっぽいけど気にするな。これがキマリス眷属内での犬月の立場だ……というか橘さん? 貴方、そのお菓子と言うか菓子折りというかお土産の山は何ですか?

 

 

「お義父様とお義母様にお会いするのに手ぶらでは申し訳ないですから。お義母様は冥界から出る事が少ないと聞いていますから主婦御用達の専門雑誌とかファッション雑誌とかいっぱい持っていけば楽しんでもらえるかなと思いまして……ダメでした?」

 

「い、いや……多分喜ぶと思う、うん」

 

「一人だけガチで好感度上げようとしてる必死さに引いてるよ?」

 

「ち、違います! 絶対に悪魔さんは引いてなんかいません!! そうですよね! ねっ! ねっ!!」

 

「ダイジョウブオレハヒイテナイカラアンシンシテイイヨ」

 

「ほら! 悪魔さんもこう言ってくれています! 早織さんも何かお土産ぐらいは必要だと思いますよ?」

 

 

 流石俺だ。見事な棒読みでも騙すことができる! これは俳優稼業もいけるかもしれんな。

 

 

「きっとノワールが俳優になったら女優を食いまくって追放されるよ。それと今は手ぶらだけどいつかノワールの子供という素敵なお土産を持っていく予定だから問題ない。手ぶらってエロい響きだよね、ノワール? 私の手ぶら姿見たい?」

 

「すっげぇ見たいが俺のガキを土産扱いすんじゃねぇよ……そもそもテメェのような引きこもりを嫁にするわけねぇだろ。精々セフレが良い所だっての」

 

「エッチ出来るならそれでもいいよ」

 

「マジで? お前が嫁だと色々と人生終わるがセフレなら話は別だ。俺が童貞捨てたらいつでもヤりに……おっとそろそろ黙らねぇとえっちぃの許しません委員会の橘がキレるからやめようか。んじゃ行くぞ? 影龍王と行く地獄巡りの始まりだ」

 

「おー」

 

「いぇ~い」

 

「荷物おもてぇ……お、おーっす!」

 

「はーい! はい?」

 

「……地獄は、嫌ですぅ!」

 

 

 俺達キマリス眷属は仲良く町へと向かう。そのまま適当な駅に入ってエレベーターに乗ろうとすると橘が普通の駅からいけるんですかという微笑ましい質問が飛んできたのですぐに分かると女天使が堕天するであろう笑みで答える……平家や四季音からは気色悪いと言われたのが非常に解せん。俺だって笑顔ぐらいできるさ、身も毛もよだつほど邪悪なのが笑みが大得意だぞ。これを得意と言わないでなんて言うんだよ……えっ、それは違う? 嘘だぁ。

 

 エレベーターに乗ろうとすると荷物を持った犬月が入らなかったのでその辺で待っていろと言い残して電子パネルに上級悪魔御用達のカードを向けて扉を閉める。そのまま下へ下へと降り続けて到着したのは本来の駅のホームとは少しだけ違うだだっ広い空間――毎回来て思うんだけど広すぎるよな? もう少し狭くても俺が良いと思うぞ?

 

 

「……ここは、どこですか?」

 

「上級悪魔が冥界に向かう時に使うホームだ。悪魔専用となってるから普通の人間は絶対にやってこれない。ただ真下に突き進んでくればいいという次元じゃねぇからな……もっともどこかの規格外は余裕で此処にも来れるし冥界に直接転移も可能というトンデモな事をしてくれてるが。はぁ、めんどくせぇが犬月を迎えに行ってくるからちょっと待ってろ」

 

 

 平家達が下りたのを確認して上のボタンを押すと一分もしないうちに元の場所、言うなれば普通の駅のエレベーター前まで戻ってきた。扉が開くと重そうな荷物を持った犬月が捨てられたワンコのように佇んでいた……マジで犬だ。尻尾があれば悲しみを表現しているぐらいに犬だ。なんだか哀愁が漂っていた犬月をエレベーターに乗せてまた降りる。これ、初見はテンション上がるけど二回目以降は転移魔法陣で問題ねぇから実質初回限定みたいなもんだよなぁ。無視して転移で済ませたいが犬と橘はこのルートを使わないと冥界入りできねぇんだよな……めんどくせぇ。フェニックスとグレモリーの婚約騒動の時は招待魔法陣で行けたというのにこういう時だけ堅苦しいんだから。

 

 そんな事を思いつつ平家達が待つ場所まで戻るとあまりの広さに驚いている橘と微笑ましい表情でそれを見ている平家達が居た。まぁ、退魔の家系とはいえこういう場所に入るのは初めてだろうし仕方ねぇか。合流した後は7番ホーム、キマリス家が保有するオンボロ汽車が停車している所まで移動。眷属を引き連れて歩く事十数分、お目当ての場所に辿り着くと初めて見たであろう犬月と橘が微妙な顔をした……だよなぁ。だって目の前に見えるのは今にもぶっ壊れそうなオンボロだし。なんで親父はこんなもんを冥界行き専用にしたんだよ……もうちっとだけ丈夫そうなのを選んでもよかっただろうに。

 

 

「お、王様? これ、大丈夫なんすか?」

 

「心配になるのは分かるが一応問題はねぇはずだ。なに、ぶっ壊れても冥界のどっかに落ちるだけだし心配すんな」

 

「するっすよ!? いや冥界どんだけ広いと思ってんすか!? てか死ぬわ!!」

 

「ノワール、落下したら抱きしめてね」

 

「わたしもぉ~」

 

「やなこった」

 

 

 汽車に乗り込むと見た目と反して豪勢なものになる。ホント趣味悪いよな……見た目オンボロで中身が豪華って誰得だよ? これで喜ぶ我が母親も凄いがこういう風にした(親父)もスゲェよ。

 

 

「荷物は適当な場所においてお前らは隙に座って良いぞ」

 

「了解……って王様はどこに座るんです?」

 

「残念な事に王と眷属は別々なんだよ。古いしきたりだが護らねぇと五月蠅くてなぁ、だから何か用事があったら一番前の車両まで来い。何もないけど来るのは無しだ――特に平家と四季音、テメェらはマジで来るな。来やがったら全裸にして放置プレイするからな」

 

「どんとこい」

 

「ろりぃ~によくじょーするならべっつにいいよぉ~? おさけぇおいちぃ~おっさっけぇ」

 

「……はぁ、とりあえず忠告はしたからな。犬月に水無瀬、橘に冥界に事を説明しておいてくれ」

 

「ういっす」

 

「あ、はい。それじゃあ、どこから説明しましょうか?」

 

 

 新入りは先輩眷属の奴らに任せて俺は一番前の車両に移動する。犬月達がいる車両は酒やら本やらが多く、暇つぶしのために遊び道具やらテレビが置かれているからぱっと見だとリビングのような雰囲気だが俺専用の車両はそんな事は無い。あるとしてもベッドと書物が収まっている棚、あとは冷蔵庫とトイレぐらいだ……広さ的にも丁度良いしもうこれが俺の部屋で良いよってぐらい居心地がいい。

 

 

「……あぁ~帰りたくねぇ」

 

『ゼハハハハハ! 宿主様の母上様は良い女だぜぇ? あれに好かれて何が不満なんだ? 年か? それとも実母だからかぁ? 昔は親子だからと言って恋愛してはいけねぇなんてクソのようなルールは無かったんだぜぇ。ヤればいいだろう?』

 

「なんで実の母親をそういう目で見なきゃいけねぇんだよ? 単にくっ付いてきて邪魔なだけだっての」

 

『なんだ面白くねぇ。しかし宿主様の弱点である以上、無下にも出来んぞ? 厄介だよなぁ……親子と言うものはよぉ。消し去ってしまえば宿主様はさらに高みへと昇れるというのに人間としての血がそれを邪魔をする……本当に厄介だ。この俺様でさえ母上様に危害を加えようとすら思えねぇんだ。なんでだろうなぁ』

 

「決まってんだろ……情が移ったんだよ。初対面であれからなんて言われたか覚えてるか?」

 

『当然だとも! 「貴方がノワールの中に居るドラゴンなの? 渋い声で威厳があるおじさまね!」だったかぁ? 呆れたぜ。地双龍、影龍王と称された俺様が威厳のあるおじさまだとよぉ! 笑っちまったぜ! 宿主様の中で見ていたが本当に弱い人間だというのにあれ(母上様)はなんであそこまで笑っていられるんだ? 不思議で不思議で仕方がねぇな! あれを物に出来た父上様はすげぇ悪魔だぜ』

 

「そりゃ、キマリス家現当主で純血悪魔だからなぁ。ウゼェけど」

 

『ゼハハハハ! 確かにウゼェが実力があるウゼェ奴だ! 俺様が保証してやろう!』

 

 

 邪龍、それも影龍王の相棒に断言されるとは本当にウザいんだなあいつ……なんだろう、いないはずなのに幻聴で親父の泣き声が聞こる気がする……気のせいだな。うん。

 

 

「――坊ちゃま。よろしいですかな?」

 

 

 ベッドに横になっていると白髪の爺ちゃんが俺の聖域とも言えるこの場所に入ってきた。もう七十は超えていると思われる見た目通り、顔はシワだらけで髪も地味に薄いが親しみやすい感じがする爺ちゃん……別に不審者と言うわけでもなくこの汽車を管理やら運用やらをしている責任者だ。確か此処で働いているのも趣味と言うか暇つぶしとかそんな感じだっけ? あんまり気にした事がねぇから覚えてねぇや。俺が本当に小さい時は遊び相手になってくれた事もある爺ちゃんだけど流石に次期当主と言う立場で高校に入ってからは会う事が少なくなった。最後に会った時なんて水無瀬達を冥界に連れて行く時に此処を利用した時だが流石悪魔、その時から見た目が全然変わってねぇ。親父が言うには初代キマリスが当主をしていた時代から居るらしいから実年齢は相当なもんだろう。

 

 

「あぁ、爺ちゃんか。なんか用?」

 

「坊ちゃまの眷属の中には新しく加わった者の登録の方に入りたいと思いましてな。坊ちゃまの事ですからこちらで勝手にやっても怒らないとは思いますが一度お伝えしてからの方が爺としては安心して行えるのですよ」

 

「安心も何も実年齢数千歳を超えてる実力者に俺程度が難癖つけれるわけねぇだろ。片方は悪魔と妖怪のハーフ、もう片方は退魔の家系出身。冥界の事は水無瀬が説明してるから多分その処置の方法も教えてると思うからスムーズだと思うぞ」

 

「分かりました。では自己紹介も兼ねて向かわせてもらいますよ。ほっほっほぉ、坊ちゃまも女子(おなご)には苦労しないようで何よりですわい。本命はやはり光龍妃ですかな? 爺としては家庭的な水無瀬嬢か坊ちゃまの理解者でもある平家嬢、四季音嬢をお勧めしたいところですがなぁ。それとも全部と言いますかな? それはそれで問題はありませんぞ?」

 

「ぶっ殺されてぇか?」

 

「おぉ、怖い怖い。それでは失礼しますぞ」

 

 

 そう言い残して爺ちゃんは後ろの車両へと向かい始めた。たくっ、水無瀬は兎も角として俺の理解者って何だよ? 誰が誰を理解してるって? 心の声を盗聴してる奴がいるんだし変な事言うんじゃねぇよ。まぁ、理解されてるなぁとは地味に思ってるが絶対に声には出さねぇ。

 

 それから時間が経ち、窓の外の景色が一気に変わる。人間界のような青空ではなく紫色の空、山や川という風景、宙に浮いた街やら何やらもある……ただし海は無い。だから海水浴に行きたい悪魔たちは人間界に足を運んで泳ぐそうだが代わりに滅せられる危険性もあるからその辺は自己責任。あぁ、そう言えば冥界で思い出したが犬月と橘に領土渡さねぇとダメかぁ……動くのめんどくせぇから家に帰ったタイミングで良いな。

 

 

「坊ちゃま。そろそろ到着いたしますぞ」

 

「んぁ? もうそんな時間か……寝たりねぇってのによ」

 

「お家の方でお休まれになってはいかがでしょう? 沙良様もお喜びになられます」

 

「逆に休めねぇと思うけどな」

 

 

 長時間汽車に乗っているからとベッドで横になっていたらもうすぐ着く時間まで爆睡してたらしい。はぁ……もう着くのか。帰りたくないでござる、帰りたくないでござる! とか平家みたいな事言っても仕方ねぇし覚悟を決めるかねぇ。

 

 後ろの車両、犬月達が居る場所まで向かうとゲームで遊んでいたのかかなり盛り上がっているようだった――女性陣のみで。犬月は少し離れた所で哀愁漂う雰囲気でオコジョ(独立具現型神器)と話し合っていた……いや単に独り言を言ってるだけか? おいおい、あんまり新入りをいじめんなよ。

 

 

「いじめてない。パシリがゲーム弱すぎただけ」

 

「はぁ?! テメェと酒飲みが結託して俺を狙い撃ちしてただけだろうが!! さらにしほりんと水無せんせーも味方に加えて俺一人で勝てるかぁ!!」

 

「これも修行だよ」

 

「ぜってぇちげぇ!! あぁ、てか白髪の爺さんが来たんすけどあの人って王様の知り合いっすか?」

 

「おう。初代キマリスが当主をしていた頃から生きてるガチの爺でおれがガキの頃に遊んでもらったまぁ、爺ちゃん? なんか変な機械向けられただろ? 今回はこいつに乗って冥界入りだが次回からは転移で問題ねぇから今のうちに景色を目に焼き付けとけよ」

 

「うぃーす。てかしほりんがさっきから窓の外を見てはしゃいでますぜ……いやぁ、揺れてますねぇ」

 

 

 視線を横に向けると冥界の景色を初めて見て興奮してるのか身振り手振りで何かを表現しようとしているのが見える……確かに揺れている。上や下にボヨンボヨンと揺れている。すげぇ! あれがおっぱいか……素晴らしいものだな。

 

 

「揺れてんなぁ」

 

「揺れてますねぇ」

 

「犬月、ビデオ」

 

「残念ながら持ってきてねぇっすわ。携帯のムービーくらいならありますよ?」

 

「画質悪いから却下」

 

「デスヨネ」

 

「そこの変態二人、もうそろそろ到着みたいだよ――お出迎えも来てる」

 

「はぁ? あぁ、うん。思いっきり到着地点で今の橘のようにはしゃいでる女がいるなぁ……誰だろうなぁ」

 

「いやいや……王様のお母さんでしょ。足不自由なのに大丈夫なんすか?」

 

「多分ですけど……ミアが近くに居ますし問題ないと思いますよ。それにノワール君が帰ってくるといつもあのような事になりますので……その、慣れてしまっていると言って良いかもしれません」

 

 

 前回も前々回も帰ってくると出迎えとして待ってんだよなぁ。足が不自由な癖になんてアクティブなのだろうか……今回は新入り二人が居るから家の中じゃなくて汽車が停車する近くで待機しているみたいだがバカだろ。せめて家で待ってろよ……つかあの蛇女もちゃんと言って聞かせろや!!

 

 目的地に到着したので俺達は汽車から降りる。荷物は犬月持ちだ、流石パシリ! 何も言われずに持つとかも最上級パシリとしてやっていけるぜ。全員が汽車から降りたタイミングで片手に杖を持ってぎこちなく歩いて近づいてくる我が母親に――予想通り抱き着かれました。おっぱいの弾力が凄まじいです。マジで四十代の胸じゃねぇぞおい。

 

 

「おかえりなさいノワール! はぁ、すぅ、はぁ、これよこれぇ! 今日からずっと家に居るのよね? お母さん嬉しいわぁ。皆もおかえりなさい、疲れたでしょ? これに乗ってくるとずっと座ってるから嫌なのよね――あん、もうノワールっ! 離れないの! 今は息子成分を補充してるんだから」

 

「ふざけんな! てか何時から待っていやがった!? 足悪いんだから家で待ってろ!! ミア! テメェも止めろよ!」

 

「ムリでっす☆ 沙良さまを止められる方はこの領地内には存在しません! あっ、おかえりなさいませーノワールさまー。お土産有ります?」

 

「メイドの癖に土産要求かよ? 真面目な橘がちゃんと持ってきてっからさっさと家まで運べ」

 

「イヤでっす☆」

 

「殺すぞこの野郎」

 

 

 おっぱいを揺らしながら満面の笑みを浮かべる蛇女に若干の殺意を抱きつつ、この抱き着いてくる母親をどうしようか考えたが……あらゆる手段を使っても勝ち目がないので考えるのを止める。俺も親父も母さんには勝てねぇもんなぁ。

 

 

「それじゃあ帰りましょう? ネギ君も待ってるわ。ミア、馬車はどこだったかしら?」

 

「既に待たせていますのでご安心ください。それじゃあノワールさまと眷属の方々、ようこそ! キマリス領へ! それでは帰りましょう☆」

 

 

 ミアに案内され、かなり待たされたであろう馬車に乗り込んで我が家を目指すが一言だけ言わせてほしい……引っ付いてくるこの見た目年齢詐欺の母親の魔の手から俺を助けてくれ。流石の俺でも精神力ががりがり削られてそろそろ倒れそう。




今回より「冥界合宿のヘルキャット」編の始まりです。
観覧ありがとうございました!

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