ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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30話

「相棒……!」

 

『あぁ! 宿主様ぁ!!』

 

「――出来たぁぁぁっ!!!」

 

 

 歓喜の声を上げながら地面に大の字になって横たわる。冥界に帰ってきてから約二週間ほど、水無瀬の修行の合間に俺自身の特訓と影龍王の再生鎧ver影人形融合の強化を行っていたが――とうとう完成した! 疲れたぁ!! まさかここまで時間が掛かるとは思わなかった……影人形融合を初めて作った時はすっげぇ簡単だったのにその強化となると今まで以上に俺自身の強化が必須だったとは思わなかった。でも、出来た! 俺だけの武器で俺達だけの切り札!!

 

 

『まずはおめでとうと言っておこうか。やったな宿主様ぁ!! これは俺達の武器になるぜ! ゼハハハハハハハッ!! これを目の当たりにした悪魔共はキャーコワイィ! とか言って引きこもりたくなるほど恐怖を味わうだろう!! 流石俺様の宿主様だぜぇ! 想像をはるかに超える成長っぷりに俺様、涙が出ちゃう!』

 

「ありがとよ……犬月達も死ぬ思いをしてレベルアップしてるのに俺だけ立ち止まったままじゃカッコつかねぇしな。完成させる事が出来てホントに良かったよ……もっとも、一番の収穫は水無瀬が禁手に至った事だけどな」

 

 

 若手悪魔の会合が終わり、アスタロト家次期当主とのゲームが決定してから俺達は今以上に特訓に集中した。理由なんて単純だ――アスタロト家の奴らに圧勝する事。それだけを考えて特訓に特訓を重ねてきた。特に犬月はセルスと親父のコンビ相手に戦っていたが今では四季音と共にドラゴンと殺し合いをしているらしい。何回も死ぬ!? 死ぬっすぅ!? と叫んでいたのは記憶に新しいが……諦めてはいないらしく何度叩きのめしても立ち上がる諦めの悪さがドラゴン達を地味に恐怖させたとか何とか。お前は邪龍か。

 

 平家は東雲が使う「蒼天一刀流」という剣術を完全に会得したらしい。なんでも覚妖怪だから真似るのは得意とか言ってたけどそういう次元じゃねぇだろ……東雲も唖然としてたぜ? でもどこか嬉しそうだったけどな。今は剣術と魔力の扱いを同時に鍛えてるみたいで順調にレベルアップ中だ。

 

 橘は親父の僧侶、ミアともう一人の僧侶であるムキムキハゲに色々教わった結果……アイドルって何だっけ状態になっちまった。いや自分なりの魔力の使い方を考えろって言ったのは覚えているしその結果、あの使い方を思いついたのは素直に凄いと思う。でも……お前ってアイドルだよな? 休業してるとはいえアイドルだよね? 絶対にムキムキハゲのせいだろ!! テメェマジでうちの癒し枠になんてもんを教えてんだよ!! あの犬月でさえ絶句してたんだぞ!! 多分……悪魔や魔物相手だったらよほどのことが無い限り負けないんじゃないかなぁ。あっ、俺でも下手すると死ぬ。マジで死ぬレベル。

 

 そして一番の成長株の水無瀬は俺との鬼ごっこと称した殺し合いの末に禁手に至った。どうやら亜種のようで俺好みの能力に変化しやがった……俺とコンビを組めばやりたい放題できるだろう。禁手に至った時は水無瀬も信じられないという顔をした後、感極まって大泣きし始めて困ったのは記憶に新しい……つい流れで俺の胸を貸したけどやっぱりおっぱいって素晴らしいな! むにゅだぞ? 俺の胸板にあの柔らかいマシュロおっぱいがぶつかって変形したんだぞ? 最高じゃねぇか!! とりあえず時間掛かった罰と称して数分間揉んだけどあれは良い感触だった。マジでマシュマロだった。

 

 四季音? あぁ、アイツはいつも通りだよ。ドラゴン相手に無双して妖力が数倍膨れ上がってた。流石酒呑童子に血を引く存在ってか? 出鱈目すぎんだろ。

 

 

『だなぁ。やっぱりあれは良い女だぜぇ、俺様好みの能力まで発現しやがったんだしなぁ。宿主様、アスタロトなんざ敵じゃねぇ!! 徹底的にいたぶって嗤ってやろう!!』

 

「そうだな。今の俺達は負ける気がしない……でも油断は禁物だ。ルール無用の実戦なら兎も角、ルール有のゲームだからな。審判の判断次第で軽いダメージでも撃破判定されかねない。その辺も注意していかないとダメだと思うぜ……もっとも、犬月達が負けても俺が無双するから別に良いんだけどな」

 

『宿主様に勝てる奴なんざユニアの宿主か白龍皇、魔王のようなトップ勢だろう。あとはサイラオーグつったかぁ? アイツもだろうぜ。ゼハハハハハハ! 宿主様! もっと強くなれ! 歴代最強の影龍王の名に恥じない様にもっともっともっとぉ! ありとあらゆる存在を駆逐しろ! 喰らい尽くせ!! 歴代を俺様達色に染め上げるのも時間の問題よぉ! それさえ完了すれば――出来るぜ。覇龍の強化版がなぁ!』

 

「あぁ。相棒が負の邪念に染め上げた歴代達の半分は俺達色に染め上げた……あと半分か。道は長いな」

 

『あったりめぇよ! 俺様が染めたんだぜ? 楽な道なわけがねぇさ!』

 

「威張るな……ちっ、本当なら少し休んで状態維持の特訓をしたいが時間的にアウトか。たくっ、若手悪魔のためのパーティーって名目の親父世代の交流会になんで出席しねぇとダメなんだよ」

 

『サボっても誰も文句は言わねぇと思うぜ?』

 

「サボったら母さんが五月蠅いんだよ」

 

 

 そんなわけで誠に遺憾ながら参加しないとダメなので特訓を中断、自室に戻ってベッドに横になる。恐らく疲れていたのか一気に夢の中へご招待されて気が付けば昼間だった……でもびっくりしたわ。目が覚めたら右隣に平家、左隣に橘、そして俺の体の上に四季音が何故か居たんだもんな。右は壁、左は素晴らしい、身体の上はお察しですが……せめて橘が体の上に乗れよ!! そうすればノワール君のノワール君が起き上がって素晴らしい事になるから!! ちなみに水無瀬はじゃんけんに負けて潜り込めなかった模様。悲しい。

 

 

「死ねばいいのに」

 

「元はと言えば人が寝てるベッドに潜り込んだテメェが悪いんだろうが。水無瀬と橘はいつでも潜り込んでも良いが壁のテメェらに添い寝されてもなにも嬉しくはないんだよ」

 

「ちっぱい好きな癖に」

 

「生憎、俺が一番好きな女の部位は脇だ。おっぱいも嫌いじゃないけどな」

 

「知ってる」

 

 

 それもこれも四六時中ノースリーブミニスカ姿というどっかの規格外が全部悪い。あそこまで脇を見せられたら好きになるに決まってんだろ……脇ってエロいよな。異論は認めねぇ。しかし橘さん? なぜ貴方はメモ帳か何かに書いておられるんですかねぇ? まさか見せてくれるの? よっしゃテンション上がるわ! いやだからその変態っていう視線止めてくれない? 俺はМじゃねぇから興奮しないぞ。攻められるよりも攻める方が大好きなドSだ。

 

 そして夕刻、準備が整った俺達は汽車に乗って会場であるグレモリー領を目指す。何度か長距離移動用の魔法陣を通って駅に着いた後は俺の使い魔、ヴィルを含めたワイアームの集団の背に乗って空から会場入りをする事にした。なんだかんだで普通に乗り換えとかするよりも速いし騒がれる心配もない……ワイアームと言う種族は飛行が得意だから快適な空の旅も楽しめる。まさに一石二鳥だ。ドラゴンに乗る事が初めてなのか橘は終始興奮していたけどそのせいでおっぱいが縦に揺れていた……素晴らしい。

 

 

「――あれ? タンニーン様?」

 

「むっ、影龍王か。直に会うのは久しぶりだな」

 

 

 あらかじめ決められていた着陸ポイントに到着すると俺達以外のドラゴンの姿があった。圧倒的なまでの力の塊、ドラゴンの中で悪魔に転生して最上級悪魔となった存在――タンニーン様。その近くにはグレモリー先輩や生徒会長、その眷属達が居るけどなんで一緒に居るんですかねぇ? まさかまた魔王か? またシスコンなのか? もう悪魔側から堕天使側に移籍も検討しようかなぁ。

 

 

『ゼハハハハハ。久しいなぁタンニーンちゃん。なんだなんだぁ? なんで赤蜥蜴と一緒に居んだよぉ? テメェが一介の悪魔に構うなんざ珍しいじゃねぇの』

 

「サーゼクスから頼まれたのだ。今は赤龍帝を鍛えているがお前は……言わなくても分かるぞ。強いな、今代の影龍王は歴代の中でもトップクラスかもしれん。昔に会った時よりも成長し続けているようで何よりだ」

 

『あったりめぇよ! 俺様の宿主様は最強の影龍王だ!! 今度のゲームなんざ圧勝よ! にしてもいいのかぁ? 最上級悪魔のテメェが下級悪魔を鍛えるなんざ不公平だぜ? ちったぁ自分で訓練ぐらいできねぇのかよ?』

 

「そう言うな。最弱の赤龍帝が育たねば禍の団との戦いで死ぬかもしれん。そう言った事を考えての判断だろう――まぁ、言いたいことは分かるがな」

 

「……文句言いたい気持ちはありますけどタンニーン様にはこっちの我儘も聞いてもらっていますし流します。領民のドラゴンはどんな感じですか?」

 

「楽しんでいる様だぞ。特に影龍王の兵士の諦めの悪さには畏怖の念も感じる奴もいる。良い眷属だ、酒呑童子共々ちゃんと育てるがいい」

 

「ありがとうございます」

 

 

 最上級悪魔で先輩ドラゴンのこの人に褒められるのは悪い気はしない。後ろの方では照れた様子の犬月、普段通りの四季音と言う対比が出来上がっている。どっちもドラゴン相手に一歩も引かないで戦いを挑んでるようでタンニーン様の領地に住んでいるドラゴン達はかなりテンションが上がってるらしい。それを聞かされている先輩達はドン引きしてるけど……あっ、なんか赤龍帝だけは共感できる部分があったのか犬月と熱い握手をして抱き合ってる。お互い涙を流しているところを見るとドラゴンと殺し合いをした奴しか分からないものがあるんだろうな。

 

 

「犬月ぃ!! お前も!! お前もドラゴンと戦ってたのかぁ!! 辛かったよなぁ!!」

 

「いっちぃ!! 辛いぜ!! めっちゃつらいぜ! 何度死んだか分かんねぇよぉ!!!」

 

「俺もだぁ! 部長のおっぱいの感触も味わえず山に籠って修行だぞ!? 死ぬって言ってるのに何度も火を吐かれて野宿して……大変だったんだぞぉ!!」

 

「俺もだぁ! ししょーは大丈夫このぐらいでは悪魔は死にませんって言って思いっきり殺す気で来るし酒飲みと一緒の場所でドラゴンと戦ってたらなんか横からぶっ飛ばされてきたのに当たるし! もう死ぬぅ!!」

 

「犬月ぃ!!」

 

「いっちぃ!!」

 

「――すまん、本当にすまんお前等!! 俺も……俺もドラゴンと戦えばお前たちの苦労を分かる事ができるのか……! 会長!! 俺も、俺もドラゴンと戦わせてくださいぃ!!」

 

「匙!?」

 

「げんちぃ!!」

 

「匙ぃ!!」

 

「兵藤!! 犬月!!」

 

 

 なんか男の友情が芽生えてる気がする。いやそれよりも取り乱した生徒会長可愛い。マジ可愛い、これを写メ撮ってセラフォルー様に送ったら感謝されるんじゃないだろうか。

 

 

「感動のシーンをしているけどさぁ、タンニーン様に鍛えてもらえるなんて贅沢にもほどがあるのに泣く要素どこにあんだ?」

 

「ノワールと違うから普通だと思うよ。良いじゃん、どうせ魔王と総督の援助有りで強くなっても評価されない時はされないんだし。きっと最上級悪魔に鍛えてもらったって知られたら色んな所から文句来そうだけど私達には関係ないからスルーしとこうよ」

 

「……本人が目の前に居るのにズバッと言うなぁ。事実だから否定できねぇけどよ」

 

「否定してください……お願いですから否定してください……!! も、申し訳ありません!! よく言って聞かせますから!!」

 

 

 否定とか無理だよ無理。だってタンニーン様がサーゼクスから頼まれたって言ってたしその通りだろ? 此処にはいないがアザゼルも先輩たちの特訓の手伝いをしてるだろうしズルいにもほどがある。これがもし「サーゼクスから頼まれた」じゃなくて「リアスから頼まれた」だったら先輩に対する好感度と尊敬ポイントが急上昇だったんだけど残念ながらそんな事は無いよねぇ。はぁ……死ねばいいのに。

 

 

「……いえ、事実だから気にしなくてもいいわ。でもキマリス君、それは貴方も同じ事よ? いくら影龍王でも評価されなければただの上級悪魔になってしまうわよ?」

 

「あっ、俺は評価とか全然どうでも良いんで。むしろ上級悪魔として扱われてもいないんで低評価だろうとなんだろうと痛くも痒くないんですよねぇ。まっ、今の言葉は魔王様からの支援を受けられない多くの悪魔達からの言葉って事で許してください。タンニーン様がただの下級悪魔を鍛えるなんて滅多にないんですからこれぐらい言われても文句はないでしょ?」

 

「まーた喧嘩売ってるっすよ……まぁ、いっちぃ。王様はお前らの事を嫌ってはいないんで安心しろって。普通にツンデレ体質なだけだからさ。前に偉い悪魔全員に喧嘩売ったのもそれっすからね」

 

「はぁ? 何バカな事言ってんだ? あれは普通に共感できたのに権力に囚われてるアホ共に呆れたからやっただけだよ。良いじゃねぇか、混血や下級がゲームを学べる学校があってもよ。あんな目に合うのは俺ぐらいで十分なんだよ……と言うわけで生徒会長? 前に言った事はマジなんで支援が必要なら遠慮なく言ってください」

 

「……えぇ。影龍王の支持があるなら実現は近いわ。もし実現したら……王として何を学ぶべきかをキマリス君が先生として生徒に教えてもらいたいわ」

 

「ざーんねん。俺が教える事が出来るのは反逆精神ぐらいでそんな大層な事を教えられるわけないですよ。それじゃ先に会場に入るんでこれで失礼を……タンニーン様。もしお時間がありましたら一度手合わせをしていただけると幸いです」

 

「構わん。今代の影龍王がどれほどのものかを確かめてみたいしな。クロム! 珍しくお前が協力しているんだ、見捨てるんじゃないぞ」

 

『ゼハハハハハハッ!! 俺様が宿主様を見捨てるわけねぇだろ! 俺様の息子だぜぇ? 親として傍に居るのは当然なのよぉ! じゃあなタンニーンちゃんに赤蜥蜴! 次に会ったらきっちりと殺してやっから覚悟しとけよ!』

 

 

 先輩方と別れて先に会場内へと入る。本来であれば各御家の方々にご挨拶をするべきなんだろうが俺様の有名度の格は違うからな! 会場入りをした俺達を見て先ほどまで盛り上がっていたのが嘘のように静まり返って全員が俺達を見ている。平家曰く「さっさと出ていけ」だそうだ。流石俺様だ! 晩飯分を食ったら帰るとしよう。特訓優先で此処に来たのも親のためだしな。

 

 それを理解している平家は近くのテーブルの料理を無言で食べ始め、四季音は酒寄越せと叫びながら手当たり次第の瓶や樽を飲み始める。水無瀬は四季音を止めるべく行動を始めるけど無理だろ……だって鬼だぜ? 自分の欲優先で酒があるなら飲みきるまで飲むのが礼儀って考えてる奴だから止まるわけがない。そんな光景を見ていると俺達に遅れて先輩方が会場入り……するとどうでしょう! 先ほどまで静かになっていたのが嘘のように盛り上がりました! いやぁ、美人に弱いってのは人間も悪魔も同じなんだな。

 

 

「すっげぇ人気。流石グレモリーとシトリーってかぁ? 王様の方が強いのにどうしてこんな差があるんすかねぇ?」

 

「純血悪魔と混血悪魔の違いだろ? 悪いな、こんな王様じゃ悪い空気にしかならなくて辛いだろ?」

 

「全然。むしろこっちの方が居心地良いっすわ。王様が主でよかったすよ」

 

「はい! 私も悪魔さんが主様でよかったです! あと、悪魔さんじゃなかったら悪魔に転生なんてしません!」

 

「……変わってんなぁ」

 

「とか言いつつ内心では喜んでいるノワールであった、まる」

 

「嘘言ってんじゃねぇよ」

 

 

 いつの間にか隣に立っていた平家に心で思った事を暴露されてどうしようとか思ったがいつも通りだし気にしなくていいか。しっかし大変だねぇ? 魔王の妹で容姿端麗だから色んな所に挨拶に行かないとダメとかめんどくさいだろうに。その点で言えば俺達は話しかけられる事なんてないから静かに飯だけ食えるからありがたい――と思っていた時期が俺もありました。

 

 

「ご、御機嫌よう。キマリス様、お話ししてもよろしいかしら?」

 

「この私たちがお声をかけたのですから当然受けてもらえますわよね?」

 

 

 空気を読まずにフェニックスの双子姫が話しかけてきた件について。マジでどうしよう……いやそんな事よりもデケェ。ドレス姿だからとある一部分が自己主張してるから目線がそっちに行っちまうよ。背が低いのに何でこんなにデカいんだ? ロリ巨乳って流行ってるの? うっそだぁ!! 俺の近くに居るロリ枠ってちっぱいなのにどこで差が付いた。

 

 

「――当然ですよ。お久しぶりです、レイヴェル様にレイチェル様。フェニックスとグレモリーの婚約パーティー以来ですね」

 

「えぇ。キマリス様もご活躍なされているようで何よりですわ。もっとも私の恩人ならば当然ですけども! 」

 

 

 豊満なお胸を張ってドヤ顔、凄く可愛いです。

 

 

「お噂ではアスタロト家の次期当主とゲームをされるようですわね。キマリスさまならば勝利は確実、私やレイチェルも応援しておりますから敗北などなされないようにお願いしますわ」

 

「流石にあの程度に負ける事は無いですよ。まぁ、応援感謝します」

 

「えぇっ! もし敗北されたならば許しませんわ! フェニックス家の名誉のためにもぜひ勝利を飾ってくださいませ」

 

「……なんでキマリスとアスタロトのゲームの勝敗がフェニックス家の名誉になるんでしょうか?」

 

「色々とありますの。お母様もキマリスさまならば妹を眷属に――」

 

「こ、コホン! コホンコホン!! お、お姉様ぁ? 赤龍帝も会場にいらしたのですしご挨拶されて来てはいかがかしら? えぇ、フェニックス家の双子姫と称されたお姉様なら当然行きますわよね!」

 

「な、何故私が赤龍帝のような下級悪魔にあ、挨拶をしなければいけないの! め、目が怖いわよもうっ。で、でもそうね……下級とはいえ赤龍帝ですもの挨拶をしなければフェニックス家の恥になってしまいますわ。キマリス様、申し訳ありませんが妹をよろしく、よろしくお願いしますわね!」

 

 

 胸を揺らしながら離れていく縦ロールだからレイヴェルだけど……めんどくせぇ! ツンデレがマジでめんどくせぇ!! あの態度は絶対に惚れてるのに気のない振りを見せないといけない、だけど話をしたいっていうのが丸分かりでマジでめんどくせぇ!!!

 

 というよりレイヴェルが眷属云々って言ってたけどまさかフェニックス夫人はレイチェルを俺の眷属に加えようとしてんのか? おいおい正気か? そんな事をしたら冥界中から暴動が起きるぞ?

 

 

「……お姉様のお見苦しい所をお見せしましたわ」

 

「あぁ、うん。赤龍帝に惚れたんだろ?」

 

「えぇ……お兄様を倒した時の雄姿にコロッとですわ。もうっ、姉妹だからと言って此処まで似なくても――ち、違いますわ!! 私は赤龍帝にひ、一目惚れなんてしていません! えぇっ! 私の好みは別ですもの!」

 

「……ノワール。このお姫様が言ってることは嘘だよ。ちゃんと赤龍帝に惚れてるから応援してあげなよ」

 

「マジかよ。えっと、姉妹仲よく、な!」

 

「違いますわ!! 覚妖怪……嘘を言うのも大概にしてくださる? 普段からそのような事をされるから貧相なお胸を持ってしまっているのですわ。嫌ですわぁ、下級悪魔はこれだから困ります」

 

「……肩こりに悩まされなくて楽ちんだし問題ない。それにデカすぎて引かれるよりはマシ」

 

「僻みかしら? あらごめんなさい。私、毎日肩こりに悩まされてしまっていますの……あぁ、分けて差し上げたいですわぁ」

 

「斬り落としてほしいなら今すぐ落とすよ?」

 

「……王様ぁ、なんすかこの空気……!」

 

「持つ者と持たざる者の対立だ」

 

「おっぱいとちっぱいの戦争っすね。俺なら迷わずフェニックスに付きますわ」

 

「デカいもんなぁ。ちっぱいも嫌いじゃないんだけどデカいのを見るとどうしても目が行っちまうし揉みたくなるよなぁ。レイチェルのだったら迷わず揉みたいね」

 

「流石っす王様……! 普通は言いませんよ!? 目の前に居るのに!?」

 

 

 大丈夫だって。レイチェルは平家との口喧嘩もどきで忙しいし聞いてない聞いてない。でもマジでデカいな……レイヴェルも体型の割にはあるけどさ、姉妹でここまで似るもんかね? しっかし赤龍帝もスゲェな。グレモリー眷属の他にレイヴェルまで落とすとは……ドラゴンってやっぱりスゲェな。流石宿すだけでハーレムを築ける存在だよ。

 

 そんな事を考えていると体が重くなった。理由は分かっている……俺の視界には素晴らしい光景が見えているんだからな……! すべすべもちもちの太もも! そして柔らかい感触! 頭の後ろに当たる素晴らしい感触!! はい来ましたー! 規格外の夜空ちゃん登場です!!

 

 

「テメェ、いきなり人の体の上に転移してくんじゃねぇよ。太ももの感触が素晴らしいですありがとう!!」

 

「でっしょぉ? この夜空ちゃんの太ももの感触を味わえるんだから許してね♪ てかぁ!! なぁんで冥界に居んのさぁ!! ノワールの家に行っても誰も居なくて寂しかったじゃん!! あっ、ノワールのベッドなんだけど私の匂いついてるけど気にしないでね。何日か使わせてもらったからさ」

 

「マジかよ。サンキュー夜空、なんなら匂いが抜けなくなるまで使ってくれても構わんぞ。いやむしろ使え! 使ってください!」

 

「えぇ~? そうなるとノワールのオカズになっちゃうしなぁ~? てかマジでなんで冥界に居んの? 探すのスッゲェ疲れたじゃんか!!」

 

「仕方ねぇだろ? 若手悪魔の会合っていうくっだらねぇ行事に呼ばれたんだしよ。てかお前の方こそ音信不通だったが何してたんだよ?」

 

「うん? ヴァーリとラーメン食べて~殺し合いして~オーフィスと遊んで~色々お散歩してたよぉ? てかさぁ! 赤龍帝に一発文句言いたいんだけどぉ!! 私のお気に入りの私服が消し飛んで困ってんだけどぉ!!」

 

 

 俺の肩に座っている夜空はぷんぷんと無い乳を揺らしながら文句を言っている。そう言えば着てる服が今までと違うな……今まではノースリーブミニスカだったのに今着てるのは半袖シャツとミニスカだ。うん? 半袖? おい脇は? 脇はどうした? テメェと会う理由の半分以上はお前の脇を見るためなんだけど何故隠す! いや待て……半袖からチラッと見える脇ってのも素敵じゃないだろうか。どう思う相棒!!

 

 

『ゼハハハハハ。俺様、どうでもいい』

 

「おい」

 

「何がどうでも良いん? つかさぁ――何この空気? うっぜぇんだけど」

 

 

 まぁ、夜空が怒るのも無理はないな。和気藹々、楽しくパーティーしましょうとしている時に光龍妃が現れたんだ。動揺もするし警戒もする……目の前に居るレイチェルも固まってるし犬月達も同様だ。周りに居る貴族悪魔たちも同じような事になってるけどそっちはウザい。部屋の入り口付近では衛兵が待機してるがまさか捕らえようとか無謀な事を考えてるんじゃないだろうな? しかも外に変なのもいるな……気の流れっていうか妖気って言えばいいのか? そんな感じの奴が一点に集中してやがる。しかも最初からじゃなくていきなり現れた感じだな――あぁ、そういう事ね。

 

 

「さぁ? 別に気にしなくて良いんじゃねぇの。夜空、ここにある飯は全部タダ飯だから好きなだけ食って良いぞ」

 

「マジか!! よっしゃぁ! 食べるぅ!! ノワール、皿とってぇ」

 

「テメェ、人の頭に食べかす落としやがったら押し倒して処女奪うからな」

 

「出来るもんならやってみなぁ~うんめぇ!! さっすがごちそうだよね! 最高に美味いぃ!」

 

 

 この野郎……いつか絶対押し倒して孕ませてやるぅ!

 

 

「……なぁ、夜空」

 

「ひゃにぃ~?」

 

「お前さ、外に変なの連れてきただろ?」

 

「ありゃ。この距離でも気づくん? なんか成長してない? まぁ、ぶっちゃけると禍の団の一人を適当な場所に落としたよぉ? ヴァーリに頼まれちゃってさぁ……そうだよ聞いてよノワール!! あのさぁ!! ヴァーリの所にすんげぇ巨乳の猫又がいんだけどこれがマジでデケェの! もうスイカ並みだぜ!? ありえねぇっしょ!! あっ、なんか機会があったらノワールに会いたいって言ってたよぉ? ドラゴンの子種が欲しいんだってさ」

 

「マジで!? おい、マジで巨乳か? 美人か? マジで子種欲しいの?」

 

「らしいよぉ? ヴァーリにエッチしよって言ったら断られたんだって。んで同じくらい強いノワールに目を向けたって事さ。モテるねぇ~うりうり、ふとももサンドぉ」

 

 

 自分の太ももで俺の頭を挟み込む夜空だがなんとなくキレかけてる……嫉妬か! おぉ嫉妬なのか!? よっしゃまだオスとして見られてるって考えて良いな! てか禍の団の一員を落としてきたって何気にとんでもない事してんじゃね? まぁ、どうでもいいけど。

 

 

「……王様、なんか今、禍の団の一人を落としてきたって聞こえたんすけど? いや確かにさっきから外の方で変な妖気を感じるけど……まさかそれぇ!?」

 

「だろうな。でも俺達には関係ないしほら、周りに居る俺達よりも強くて偉い悪魔さん達が成敗してくれるって」

 

「いやいやいや!? そこは止めましょ!? 光龍妃とガチで話し合えるのって王様ぐらいなんだから止めてくださいよぉ!!」

 

「ヤダ」

 

「もうやだぁ! この王様マジで頭おかしぃ!!」

 

 

 失礼な奴だな。俺ぐらい悪魔として、邪龍として頭が正常な奴はいないぞ。このやり取りを聞いていた周りの悪魔さん達は衛兵を呼んで俺達を取り囲んだ。ご丁寧にフェニックスの姫であるレイチェルを護るように俺達から離してな――まぁ、犬死にご苦労さん。

 

 一瞬の光、たったそれだけで俺と夜空を取り囲んでいた衛兵が消し飛んだ。俺の肩に座っている夜空は器用に俺の頭をテーブル代わりに持っていた皿を置いて先ほど衛兵を呼んだであろう貴族悪魔を指パッチン一つで消し飛ばす。この容赦なさっぷりは流石光龍妃だなと褒めたいぐらいだ。

 

 

「うっぜぇ。私がノワールと楽しく話してんのに邪魔すんじゃねぇよ。なんかムカついたからここ消し飛ばすかぁ!」

 

 

 ほらぁ。余計な事をしてくれたから他の上級貴族たちの命も危なくなった。個人的にはどうぞお好きに消し飛ばしてくださいなんだけど双子姫が居るから流石に止めるか。もし来てなかったら止めずに転移して上空から光に飲まれる会場を見たかったなぁ。

 

 

「……余計な事してくれたなぁ。夜空、とりあえず消し飛ばす前に俺と殺し合わないか? 今なら――面白いものが見れるぜ?」

 

「――へぇ。そっかぁ! そんじゃ今すぐ殺し合いすんぞぉ!! にひひ! 面白いもの大好きぃ! だからノワールは大好きなんだぁ!!」

 

「俺もお前の事は好きだぞ。だから付き合ってくれ」

 

「え? ヤダ」

 

 

 おかしい。今の流れだと照れて女の子な夜空ちゃんが見れると思ったんだけど普通に流されたと言うか断られた件について……マジでぇ!? まぁ、はいと言われても困るんだけどさぁ、このなんて言ったらいいの? すっげぇ空しい気分になってんだけどなんだろう……泣きたい。

 

 

「はぁ……夜空、殺し合おうか」

 

「いぇーい!」

 

「……しほりん、さっきの王様が主でよかったってセリフ、取り消してもいい? し、しほりん? あ、あの志保様?」

 

「今のって普通に告白ですよね、えぇそうですよね、きっときっと本気で言いましたよね。確かにお二人は私が出会う前からお知り合いで仲が良いでしょうけどもいきなり言いますか、言っちゃいますか。私、胸には自信あるんですけどもしかして悪魔さんは小さい方が良いのでしょうか? い、いえそんな事はありませんあるはずがありませんとも。本では男の人の大半は胸が大きい人が良いと書いていましたし私の寝間着姿にも興奮してくれていましたからきっと大丈夫、大丈夫です自信を持ってください橘志保。相手は強大でも私は悪魔さんの僧侶なんです。えぇ、僧侶なんです僧侶になったんです」

 

「――せんせー!! しほりんがこわいぃ!! そんな酒飲みなんて放って置いて帰ってきてくださいっすぅ!!」

 

 

 とりあえず俺のテンションと橘の様子が激変、ついでに周りの空気も最悪なので戸惑った様子のレイチェルに今度遊びに行くと言って夜空を肩車したまま会場を後にする。出る前に夜空が思い出したように先ほど消滅した貴族悪魔のご家族と思われる方々を見つめて――光を放って消滅させた。まぁ、自業自得だよな。いやぁ、流れる様に惨殺するのはいつ見ても惚れるね。

 

 

「んじゃ! はっじめよっかぁ!!」

 

「はいはい。言っておくがまだ完成したばっかで未調整だ、お前との殺し合いで調整していくからガッカリすんじゃねぇぞ?」

 

「しないってぇ! さぁ! ユニア!! いっくよぉ!!」

 

『えぇ。始めましょうクロム! 貴方と貴方の宿主が得た新しい力を見せてください!』

 

『ゼハハハハハッ!! 後悔すんじゃねぇぞユニアァ!』

 

「――死ねよ!! 夜空ぁ!!」

 

「――殺してやるよノワールぅ!!」

 

 

 何度もぶつかり合う中で俺は思った……先輩の事を悪く言えないなと。先輩には魔王が居るように俺には夜空が居る……あぁ! 魔王なんかよりも最高に頼りになる奴が傍に居る!!

 

 こうして俺達の特訓期間は過ぎていく。




お願い、死なないでディオドラ!
あんたが今ここで倒れたら、アーシアとの輝かしい未来はどうなっちゃうの?
オーフィスの蛇はまだ残ってる! ここを耐えればノワールに勝てるんだから!

次回、「ディオドラ死す」。デュエルスタンバイ!

※嘘予告です。

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