「の、ののののノワールく、君! い、インタビューって何をすればいいんでしゅか!!」
「最後噛んでるぞ? たかがインタビュー程度で何緊張してんだ? 犬月も水無瀬が緊張しすぎだって言ってやれ」
「そ、そそそそっすよよよ!! み、みみ水無せんせーはお美しゅうございますです! お、おちつくすすよ!」
「テメェも緊張してんじゃねぇよ」
親父から聞かされたテレビ局の取材当日、俺の目の前にはガチガチに緊張した水無瀬と犬月の姿があった。私服の上から白衣という保険医スタイルの水無瀬はテレビの取材だからか軽く化粧をして二十代っぽい感じで実にエロい。普段から軽めに化粧とかしてたけど今回のはちょっと違う気がする……そう言えば橘が水無瀬に何か教えてたけど取材とか用の化粧のやり方か? 流石アイドル、普通に手馴れているな。犬月は駒王学園の制服を着ていていつも通りだな。ただ緊張してるのか普段は隠している犬耳が現れていてピコピコ揺れている。なんか可愛いな。
まぁ、初めての取材という事で緊張しまくって噛みまくり状態なわけだが……四季音と橘、平家を見習ってもう少し落ち着けよ? あいつ等、今から取材だってのに酒飲んだりゲームやったり髪型弄ったりしてるんだぞ? 普通に聞かれた事に答えるだけなんだから緊張する意味が分かんねぇ。
「恵もパシリもそういうのには無縁の生活だったからね。仕方ないよ」
「そういうもんか? テメェら、とりあえず落ち着け。下手に緊張とかされるとこっちが恥ずかしいわ……今すぐ落ち着かねぇと水無瀬は裸エプロンで料理、犬月は……どうでもいいか」
「そこは俺も何か言ってくれません!? コンビニ行ってアイス買ってこいとかなんか無いんすか!? 水無せんせーの裸エプロン見たいっす!」
「流石俺の
「――おちつきますぅ! なんでノワール君はきんちょうしていないんですかぁ!! 裸エプロンいやですぅ! 緊張しないコツとか教えてくださいぃ!」
むにゅりと俺の胸板に水無瀬のマシュマロおっぱいが押し付けられる。うん、実にマシュマロだ。良い弾力で実に揉みごたえがありそうで俺様、最高に嬉しいです! さてそんな事は置いておいて……緊張しないコツって言ってもなぁ。そもそもなんで緊張するんだって俺が逆に聞きたいんだけど?
「……コツとか言われても俺は昔からパーティーやら色んなものに出席してたから慣れたって言えばいいか? 平家か橘、この馬鹿をどうにかしろ」
「水無瀬先生、えっとですね……今日はインタビューみたいですし緊張する必要はないですよ。気持ち的に授業をするみたいに考えていればいいと思います」
「むしろ恵は緊張してた方が不幸体質が発揮すると思う。目指せパンチラ」
「しないですよぉ! したくないですよぉ!」
「いや、でも……水無せんせーだったらいきなり服が吹き飛ぶってハプニングもありそうで怖いっすわ。あっ、俺はもう落ち着きましたんで大丈夫っす!」
「にししぃ~らっきぃすっけべぇ~めぐみん。のわーるぅ? わたしぃはおっさっけぇのんでていいぃ?」
「別に良いぞ。普段のお前らを見せたら次なんて来ねぇからな。ほら、俺の目の前で裸エプロンの恰好をして写真撮られたくなかったらさっさと落ち着け。それとも犬の恰好で散歩させられたいか?」
「……おねがいし、い、いえ! 落ち着きました! 落ち着きましたぁ!」
「一瞬だけそれって最高じゃないですか、と悩んだ恵でした、まる」
流石隠れМの水無瀬だな。それはそうと……いい加減離れてくれないかな? ノワール君ジュニアが臨戦態勢に移行しちゃうからマジで離れてくれると嬉しい。だって橘様が「悪魔さん? いい加減にしましょうね」と笑顔で訴えてきてますからね! あのさ、破魔の霊力を発現させてから笑顔が怖くなってきてるんだけどなんでですかねぇ? 今までのしほりんはどこに行ってしまったのだろうか――これはこれで俺的には有りだから良いんだけどね!!
水無瀬からの抱き着きから解放された俺は犬月達を連れて冥界へと転移する。俺達が訪れた場所は冥界の都市部にあるビルの地下、ここで俺達は若手悪魔特集なる取材を受ける事になるわけだが……確か此処って冥界の中でもかなりデカい事で有名な場所じゃなかったっけ? なんつうかすっげぇ場違いな気がする。
「お待ちしておりました。ノワール・キマリスさま、眷属の皆さま。会場へご案内いたします」
俺達が転移してきたこの場所は転移魔法陣専用、言ってしまえば来客や社員の方々が利用するスペース。そこでスタッフと思われる女性悪魔が俺達を出迎えた……ふむ、ちっぱいだな。年は俺達よりも上だけどこの膨らみ加減からするとBカップって所だな。いやどうでも良いけども。
スタッフに案内されてエレベーターに乗って上層部へと移動する。ビル内の光景は冥界のテレビ局と言えども人間界と似ているようで橘が懐かしいとか言いながら周りを見渡しているけど……壁に張られているポスターは趣味が悪いと思う。
「うわっ、すっげぇ……グレモリーやシトリー、バアルにアガレスの
見つけてもスルーしろよパシリ!!
「相変わらず極悪面だね。惚れ惚れしちゃう」
「にしし! さっすが私の王様だぁね! これ貰えないかねぇ~?」
「私も悪魔さんのポスター欲しいです!」
「わ、私も……」
「……お前ら、趣味悪いな。流石の俺でも引くぞ?」
その場に立ち止まって壁に貼られた自分のポスターを見ると崩壊した街並みをバックに瓦礫で作られた建物に座り込み、他者を見下しながら嗤っている俺がいた。先に言っておくがこれは俺の趣味じゃない……写真撮影も時に言われた事をその通りにやった結果がこれなだけだ! 何故か一発OKだったけどな!! いやそれ以前に誰が欲しがるんだよこんなポスター!? マジで欲しいって言ってる奴の趣味悪すぎだろ! サイラオーグ・バアルのような威風堂々、強者を思わせる覇気を感じさせるポスターとかグレモリー先輩と生徒会長、アガレスの姫君のような微笑んだりクールな視線だったりするアイドルポスターだったらまだ分かるさ、俺のなんてどっからどう見ても悪役じゃねぇか!! まぁ、王子様風にお願いしますと言われなかっただけありがたいけどね。
周りを見渡してみるが廊下に張られているポスターの大半がグレモリー先輩と生徒会長、アガレスの姫様だな。俺やサイラオーグ・バアルのものも張られているけどこのお三方はその倍以上に張られている気がする……冥界も人間界も美人だったそっち優先だよな。個人的に貰えるなら生徒会長のポスターだな。なんかゾクゾクする。
『ゼハハハハハ! 流石俺様の宿主様だぁ! 悪役が良く似合う良い男だぜぇ』
「まぁ、相棒を宿しているしな」
『そりゃそうだ! ゼハハハハハ!!』
「キマリスさまのポスターなんですけど凄く好評ですよ! 特に下級悪魔や混血悪魔の方々に大人気で女性悪魔達で作られたファンクラブもあるようですよ?」
「まじでぇ……趣味悪いな」
「……入らないと!」
「志保が変なのに入ろうとしている件について。とりあえずこのポスター欲しい、部屋に飾りたい」
「皆さまにお渡しする分として取っておいてますのでお帰りの際にお渡ししますね。さて、こちらがスタジオとなります」
なんで取って置いてるんだよと言うツッコミは心の中だけにしてちっぱいスタッフに案内されて入った先は収録が行われるであろうスタジオ。観客席もあるからかなり大々的にやるっぽいな……あっ、この場所の空気に飲まれて水無瀬がガチガチになってきた。犬月も目が泳いでるし結構ヤバいかもしれねぇな。その中でも橘や四季音、平家は普段通りなのは凄い。若干一名ほど吐きそうな顔してるけどきっと周りの心の声でも読んだからだろう……お前は俺の心だけ読んでおけ。そうすれば体調はそれ以上悪くなることはねぇだろ。
「お初にお目にかかります。私は冥界第一放送の局アナをしている者です。お忙しい中、出演していただきありがとうございます」
目の前に現れたのは巨乳の美女。おぉ! デカい!
「こちらこそ呼んでいただいてありがとうございます。でも、良いんですか? 俺は他とは違って混血悪魔ですよ? あんまり期待したほどの数字とか出ないと思うんですけど?」
「いえいえ……皆さんで行われたレーティングゲームの中で最も数字が高かったのはサイラオーグ・バアル様とノワール・キマリス様の試合です。どちらも王自ら戦うものでしたので視聴者の方々は大盛り上がりでした。調べた所、ノワール様はお子さんや下級悪魔、混血悪魔、転生悪魔の方に支持されているようですね。これは赤龍帝の兵藤一誠さんも当てはまりますがこちらは乳龍帝として主にお子さん達から大人気のようです」
「……乳龍帝?」
なんなんだそのあだ名を通り越して悪口のような二つ名は……? しかし天下の二天龍、その片割れが乳龍帝! 乳龍帝!! くくく、あははははは!! さいっこう!! 今度会ったら言ってやろう!
『ゼハハハハハハハハハッ!! あの赤蜥蜴ちゃんが乳龍帝! 乳を司る龍帝!! 面白すぎて俺様腹が痛いぜぇ!! これは広めねぇとダメだなぁ!! やっぱり最強の二天龍の新しい異名は周りからも言われねぇとダメだ! ドラゴンとして絶対にそうするべきだぁ! ゼハハハハハハハハ! 乳龍帝! 乳龍帝!! また名をおっぱいドラゴンてか!! 面白すぎて俺様もう無理、しぬぅ! ゼハハハハハハハハ!!!!』
相棒が素で爆笑するという珍しい事になるぐらい面白い事になってるな。気持ちは分かるけども!
「クロムが爆笑しているなんて珍しい」
「いっちぃ……! 頑張って生きろよ……! 俺はどんな二つ名であっても友達だからな……!!」
「……あの、赤龍帝がそんな風に言われている理由ってなんですか? あの、ちゃんと理由を聞いておかないと泣く存在が居るんで教えてください」
主に銀髪イケメン野郎に宿ってる白い龍がな!!
「は、はい……グレモリー様とシトリー様で行われたゲームで赤龍帝、兵藤一誠さんがおっぱい、おっぱいと連呼していた事がお子さん達に大ヒットしまして乳龍帝おっぱいドラゴンとして大人気なんです。ノワール様はまるで悪の親玉のようだとの事でお子さん達からは乳龍帝が倒してくれるとなっているそうですよ? ただ、その中でも悪役好きな子達からは大人気ですから安心してください!」
「それ、安心して良いのか悲しめばいいのか分かんないんだけど?」
「いや、でも……王様は悪の親玉ってのは納得っすね。毎回トンデモねぇ事しますし」
「むしろヒーローポジションだったらおかしい」
「根っからの悪役だもんねぇ~にしし!」
「ノワール君……今までの行いの結果ですよ……!!」
「悪魔さん! 私! どんな悪魔さんでも一緒に居ますから安心してください!」
橘さん? あの、お手を握りながら満面の笑みでグイッと近づいてくるのは良いんだけど否定してくれない? てかテメェら!! 誰が悪の親玉だ!? 誰が根っからの悪役だ!? この最強で最悪な俺様がヒーローポジションでも良いだろ! 昨今ではダークヒーローってのが流行ってたりしたんだぞ!! それで良いだろ!! 赤龍帝風に名付けるなら脇龍王ハーフドラゴンだな! うん、ねぇな。自分で言ってみて吐き気がしたレベルでねぇわ。
そんな事よりも世の子供達よ……俺が赤龍帝程度に負けたらキマリス家の領地が消滅して俺の両親も死ぬんで絶対に負けません。むしろ赤龍帝が負けるから泣く準備だけしておいてくれ。試合終了後に抗議の電話とか来ても俺は無視しますんでそのつもりでお願いします。それにしても橘の手は柔らかいな……流石女の子だ!
「お、おう。色々とツッコミどころはあるがそれは帰ってからにして……さっさと打ち合わせとかしません?」
「あっ、そうですね。では今回は若手悪魔特集という事でお集まりしていただきましたが質問に答えるのは主にノワール様です。やはり混血悪魔でありながら
「あーはい、分かりました」
はぁ、めんどくせぇ。こういうのはドヤ顔が得意な先輩とかクールな生徒会長とかがする事だろ……笑いものにされるのがオチだ。そもそも需要があるのは俺の母さんぐらいだぞ? きっと録画とかしているだろうなぁ、恥ずかしいからやめてほしいんだけどね。
「それから眷属の方にも質問がいくと思います。特に橘志保さん、水無瀬恵さんは歌姫と黒姫ということで人気急上昇ですからね!」
「わ、私ですか!?」
「そ、そうなんですか……? 歌姫、歌姫……! 嬉しいです!」
「しほりん! 水無せんせー!! やったっすね! 俺、俺ぇ! なんかスッゲェ嬉しいっす!!」
「おめでとう。私は質問が来ても答えたくないからノワールにパスするよ」
「おい」
そんな事したら放送事故だろ。適当な事言えば良いんだからそれぐらいはしろ、いやしてくれ。
局アナさんが言うには戦いの場で歌い始めた橘と印象が逆転した水無瀬にファンが出来ており、影龍王眷属の僧侶として注目されてるらしい。この辺りは前に生徒会長から聞いた通りだな……にしても犬月、平家、四季音にも質問があるとはねぇ。二人は兎も角、平家なんて一瞬で試合終了したから特に注目される事なんてないはずなのにな。まさか仕事場の奴らか? ありえそうで怖いな。
「――疲れた」
「そっすね……俺も王様の発言に対するツッコミで疲れたっす」
収録が終わった俺達は楽屋でぐったりとしていた。もうマジで無理……なんなのあの歓声? なんで俺が質問に答えるたびに「影龍王様ー!」とか「かげりゅーおー!」と言う声が飛んでくるの? そんなのはグレモリー先輩か生徒会長辺りにしてればいいんだよ!! と言うより犬月? 俺の発言で疲れたって言ったがそこまで変な事は言ってないぞ? 至って普通でいつも通りにお答えしただけだってのにその言い方はダメだと思うぜ?
「『注目している若手はいますか?』という質問に『サイラオーグ・バアルに白龍皇、あとはシトリー眷属の匙君』って答えたり『リアス・グレモリーさまとのゲームがもうすぐ行われますが今の意気込みをお願いします』という質問には『え? 雑魚相手に意気込みとか無いけど? 強いて言えば試合になるのか不安だから先輩にはぜひ頑張ってほしいって言えばいいです?』とか答えてたらそうなるよ。まさに悪役だった」
「普通言わないっすよ? それだけでもあれなのに『これから先の目標は?』って質問に『とりあえず夜空に勝つ。そんでその後にウザい老害共をぶっ殺す』って……ホント、王様って怖いもの知らずっすよね!? もう俺や水無せんせーやしほりんなんかドキドキしすぎて死にそうだったんすからぁ!!」
「いや、だって嘘言ったらダメだし俺からしたら普通だろ? いやぁ、お前のお蔭で会場は大盛り上がりだったわ。この王様頭おかしい、今年の冥界流行語大賞狙えるぜ!」
「狙いたくねぇっすよ!! それマジの感想だったんすからぁ!!」
おいおい……そのセリフが出るたびに会場が大ウケだったのに勿体ない事するなよ。まぁ、うん。確かになんかドン引きしてる感が出てたのは分かるよ? でも本当の事なんだから仕方ないじゃないか! 先輩たちの実力で俺達が負けるわけねぇし……むしろ四季音一人でも全然余裕なんだぞ? 慢心しすぎかもしれないがそれほどあの人達は弱いんだよ。実戦経験が無さすぎるってのもあるんだけど俺達と違って本気で殺し合えないから今より強くなれないんだろうな。俺達は……うん、俺が基本的に不死身だから四季音の本気とか橘の破魔の霊力とか水無瀬の反転結界とかフルで発揮しても全然問題無いからこそ本気で殺し合ってレベルアップが出来る。その違いが実力に出ているんだと思う――あとは自分の血とか種族とか否定してる奴が強くなれるわけねぇよ。
しかし犬月の言い分に水無瀬と橘が同意しているのが気に入らねぇ……そんなに酷かったか? 少し思い出してみるか――
『ではノワール・キマリス様に質問です。現在注目されている若手悪魔はいらっしゃいますか?』
『えーと、サイラオーグ・バアルに白龍皇、あとはシトリー眷属の匙君』
『なるほど……二天龍と称された赤龍帝、兵藤一誠さんには注目していないんですか?』
『いや、雑魚に興味を持っても意味ないでしょ?』
『王様ぁ!? せめてもう少しオブラートに包んでください! いっちぃが聞いたら泣きますよ!?』
『あのなぁ、自分にヴリトラのラインが繋がってるのに何も疑問に思わずに戦う奴を注目しろって言われても無理だぞ? その点、匙君には感動させてもらったんでお礼に殺し合いたいですね』
『お礼で殺し合いさせられるげんちぃの身になってくださいよぉ! マジで頭おかしいんだから王様はぁ!?』
ここまでは普通だな。我ながら素晴らしい回答だったと思う。
『で、ではリアス・グレモリー様とのゲームが近々行われますが今の意気込みをお願いします』
『え? 雑魚相手に意気込みとか無いけど? 強いて言えば試合になるのか不安だから先輩には是非頑張ってほしいって言えばいいです? あぁ、これでお願いします』
『すいません! 本当にうちの王様が頭おかしくて本当にスイマセン!!』
『パシリ、騒がしいし五月蠅い。だから黙って』
『にしし――それ以上騒ぐと潰すよ?』
『なんでだよ!? ハイワカリマシタダマリマス!! すんませんでしたぁ!!』
ここも普通だな。それにしても犬月のツッコミスキルが冴えわたっていて終始笑いが起きていた気がする……こいつは将来大物になりそうだ。流石俺のパシリ。
『……えぇ、で、ではこれから先の目標はありますか?』
『目標、目標ねぇ……とりあえず夜空に勝つ事ですね。そしてその後は老害共をぶっ殺す事かなぁ? 今のままじゃ俺よりはるかに長生きしている素晴らしい老害共には勝てないですしぃー蹂躙できるほど強くなってからぶっ殺したいと思っていまーす。まぁ、雑魚なんで夜空に勝てば自然とあいつ等も殺せるんですけどね――おいツッコミまだか?』
『もうやだ、この王様頭おかしい……俺は! ツッコミ役じゃねぇっすよ!? ってなんで観客の皆さんがえー!? って顔してんの?! こっちがえー!? って言いたいわ!! しほりん! 水無線せんせー! 助けて!!』
『……ごめんなさい瞬君、ノワール君はいつも通りだから……何も言えないの』
『本当に、悪魔さん……いい加減にしてください……!』
『いやいや、だってこれから先の目標って質問だぞ? 嘘言ったらダメだろ。平家、四季音、俺は何か間違ってる?』
『全然間違ってない。むしろ惚れ直した』
『さっすがぁわたしのおうさまだぁ~にしし!』
『――ほら間違ってないって言ってるぞ!』
『そいつらも頭おかしいんっすよ!? すいませんでしたぁぁぁっ!!!』
――うん、思い返してみても何も変な所が無い。だから俺は悪くないな!
「なぁ、思い返してみたんだが何も変なところなかったぞ?」
「……ありまくったっすよ。ありまくりでしたよ!! マジでもう少しオブラートに包むって言葉を覚えてください!!」
「無理」
「ですよねぇぇっ!!」
犬月の心の叫びが楽屋中に響き渡った。おいおい、お前も俺の眷属なら分かってるだろ? 俺がオブラートに包むって言葉を覚えるわけないだろ? 言いたい事を言って、好きな事言うのが邪龍なんだからさ。どこまでも自分勝手で最低最悪なドラゴンが俺なんだよ――だから諦めろ。
それにしても思い返してみたが水無瀬と橘の人気ってスゲェな。二人が質問に答えるたびに観客、特に男悪魔達からの声援が凄かった気がする。黄色い声援が上がるたびに水無瀬はビクッとなりながらも質問に答えていたし橘はその声に「ありがと~応援よろしくね~♪」と笑顔で返していた。流石アイドル、その辺のスキルは会得済みでしたよ! でも……平家には疲れたわ。まさかマジで質問の答えを俺に言わせるとは思わなかった。まさかの「めんどくさい、ノワールにパス」を何度も聞くとは思わなかったぜ!
ちなみに四季音は酒を飲みながらちゃんと答えていた。鬼は嘘つかないからその辺は真面目だったけど……酒飲むなよ。
「あら、キマリス君」
収録を終えて楽屋でしばらく休んだ後、自宅へ帰るために廊下を歩いていると目の前から美少女集団……とそれに交じったイケメン一人と出会った。相変わらず今日もクールですね生徒会長。そして匙君? なんかすっげぇ固まってるけど大丈夫?
「あぁ、生徒会長も収録でしたっけ?」
「えぇ。キマリス君達は……もう収録を終えて帰る所ですか?」
「そんな所です。もう、疲れました……良い大人やガキから影龍王様ーやらかげりゅーおーやら言われてもうどうしようって言った感じですよ。あっ、ポスター見ましたけど流石生徒会長、お美しいですね」
「あ、ありがとうございます。お世辞とはいえ貴方から言われると変な感じですね」
「酷くないっすか? 俺だって混血悪魔であると同時に普通の高校生ですよ? これぐらいは言いますって」
「いやいや……普段の言動を思いだ、せ、い、犬月!? どうしたぁ!!」
「げんちぃ……おれ、つかれた、つかれたよぉぉっ!」
「そうか!! 知ってた!! なんか黒井の奴はいつも通りの事してるんだろうなぁって思ってたぞ!! 犬月……あとでコーラ飲もう!! あとお疲れ様!!」
疲れた足取りで匙君に近づいた犬月は――泣き始めた。男同士が何かを分かり合いながら友情を育んでいる図はイケメン同士じゃなかったら吐く所だが……この二人ならまぁ、大丈夫だろう。絵的にも何も問題ない。後ろにいるシトリー眷属の女性陣も何かを察したのか同情風の視線を犬月に向けているし生徒会長も一体貴方は何をしたんですかと聞いてきたけどさ、真面目に質問に答えていただけなんだけどそれが何か間違ってた? 平家や四季音は問題無いって言ってるし俺も素晴らしい回答だったと自負してるんだけど?
「犬月の事は放って置いて生徒会長達も頑張ってください。あっ、匙君! 俺からのお土産で注目している若手悪魔は居ますかって質問に匙君の名前を言ったからきっと質問いくと思うぞ! 頑張れ!!」
「黒井テメェ!? 何してくれてんだ!? なんか嬉しいような悲しいようなすっげぇ微妙な感じなんだけど!? でもありがとう!!」
「おう。まっ、これに関してはマジだから喜んでくれよ? いつか殺し合おうぜ」
「死ぬからお断りします!!」
「えぇ~? しょーがねーなぁ。とまぁ、色々と取材は大変だったんでそろそろ帰ります。生徒会長達も頑張ってください」
それを言い残して俺達は最初に訪れた地下のスペースへと移動して自宅に転移する。俺と平家、四季音以外は取材の疲れが出たのか温泉に入った後はすぐに部屋に戻ったけどそこまで疲れたかねぇ。俺達三人はまだ元気、スッゲェ元気だから今からえっちぃ事しても何も問題ない。もっともちっぱい二人を抱く気分にはならねぇけども。
「そこは抱こうよ。ノワールに抱かれる準備は何時でも出来てる」
「わたしぃ~はべっつぅにい、いいよぉ~? みせいちょうろりぼでぇのよさをたたきこんでやるぅ~」
「お前らで童貞卒業は死にたくなるからさっさと部屋戻って寝ろ。なんだかんだで疲れただろ? 主に平家、吐きそうだったけど大丈夫か?」
「何とか持ち直した。もう、死ねばいいと思う。テレビ業界の裏事情をよく知るいい切っ掛けになったよ……志保、よくあの中でアイドルやってたって尊敬した」
「そこまでか」
大方、プロデューサーや監督の心の声を呼んで枕関係の事を聞いたんだろう。偏見だけどテレビ業界ってそういうの多そうだしな……しほりん、大丈夫? あの狐がいるから多分大丈夫だろうけどなんか心配になってきたよ。よし抱きに行こう!!
「変態」
「どうせぇ~しほりんをだこうとかおもったんでしょ~? このきっちくぅ~にしし」
「ヒデェなおい」
こうして俺達のテレビ収録は幕を閉じた。
観覧ありがとうございました!