ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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39話

『リアス・グレモリーさまの騎士一名、ノワール・キマリスさまの兵士一名、リタイア』

 

「相打ちか……」

 

『ゼハハハハハハハッ!! あのパシリもやるじゃねぇの!! デュランダル使いをぶっ殺すとは最高だぁ!! ゼハハハハハハ!! 男を見せたな犬月瞬よ! 俺様、超嬉しいぜ!!』

 

 

 背後で歌って踊る橘の声をBGMに俺は新校舎の屋根の上でフィールドを見渡していた。悪魔の天敵である聖剣、しかもデュランダル相手に怯むことなく立ち向かって相打ちとはな……よくやった。お前は誇っていいぞ。なんせ自分の役割をきっちりと果たしてくれたんだからな……これでお前の事を貶す奴がいるならば俺はソイツを殺そう。たとえそれが別勢力の奴らや冥界の老害共だったとしても遠慮なく殺してやるさ。俺の兵士は格上の相手に挑んで引き分けた、その事実だけは覆さないし消させはしない。犬月、お前は立派に戦ったよ、立派に自分の役目を果たした上で俺の兵士として十分な働きをしてくれた男だ。あとは俺達に任せて休んでな――ちゃんと勝利してやるからよ。

 

 

「――ふぅ、悪魔さん。少し休憩しても良いですか?」

 

「あぁ。十分以上も歌ったり踊ったりして疲れただろ? しばらく休んでろ」

 

「はい!」

 

 

 さて、これで先輩の残る駒は女王の姫島先輩、騎士の木場裕斗、僧侶のアーシア・アルジェントにギャスパー・ヴラディ、そして兵士の兵藤一誠。対する俺達は四季音、平家、水無瀬、橘……数の上では一人ほど少ないが犬月が相打ちで厄介な聖剣持ちを倒してくれたから何とかなるか。もっとも俺と四季音だけで問題なさそうだけどね。

 

 

『ノワール、花恋のお蔭で無事に離脱できたよ。吸血鬼が恵を探しているけど止めた方が良い?』

 

「だな。四季音」

 

『うぃ~? 別に止めても良いけどさぁ。アイツ、変化してるから本体を見つけないとダメージになんないよ?』

 

「だったらあぶり出すまでだ。水無瀬、新校舎まで戻ってこい、ちゃんと敵に見つかるように移動しろ」

 

『は、はい!!』

 

『そんじゃ私は準備しとくよ。ちゃんとタイミング合わせなよ?』

 

 

 分かってるさ。ちゃんと水無瀬を死なせないようにしねぇとな――さてと、止めるか。

 

 

「影人形」

 

 

 真上から飛来してくる極大の雷光、それに影人形のラッシュタイムを叩き込んで防ぐ。威力的にも十分に魔力を練られた良い一撃で強力だと思うが……俺から言わせたらまだまだ弱い部類だ。夜空の光なんてこれ以上、いや数百倍は強いし痛い。ついでに言うとこの程度の攻撃を防げなかったら最強の影龍王の名が泣くし問答無用で夜空に殺されてる。

 

 近づいてくる人影を見ると背中に悪魔の羽を生やした姫島先輩が笑顔で俺達を見つめていた。白を基調とした巫女装束を身に纏い、雷を迸らせている姿はまさに雷光の巫女と言う異名に相応しいと思う。ついでに笑顔が似合うお方だけど現在の笑顔はちょっと怖い……やっぱり人間が怒った時で一番怖いのは笑顔だよな。俺も橘が笑顔で何か言いたそうにしてる時とかすっげぇ怖いし。

 

 

「あらあら、今のは魔力を強く込めましたのに防がれてしまいましたわ」

 

「まぁ、確かに込められていましたね。魔力が、ですけど。雷光って言うなら堕天使の光をもう少し強めたらどうですか? この程度の攻撃で俺を倒そうとか……舐めてるとしか言えませんよ?」

 

「うふふ。えぇ、確かにそうですわね……でも、私は今の力で貴方を倒しますわ! 雷光よ!」

 

 

 再び放たれる雷光をその場から動かずに影人形の拳で粉砕。やっぱり雷光っていうよりも普通の魔力を変化させた雷だよな……なんで堕天使の力を嫌ってるのか分かんねぇけど使えるんだったら普通に使おうぜ? でもこの戦い方を見た感じだとシトリー戦や今までの戦いと戦闘スタイル的には何も変わってなさそうだ。僧侶寄りの女王、言ってしまえば魔力極振りで紙装甲ってのが俺の印象だけどこの撃ち合いを見る限りじゃ多分当たってるな。女王の駒ってのは騎士、僧侶、戦車の良い所を全部持つ反面、器用貧乏になりがちなんだよなぁ。強い人は強いけどちゃんと育てないと今のように決め手に欠けるしさぁ……でも俺は夜空を女王にするけどな!! あいつの規格外っぷりを見てると女王の駒でも転生できるのか分かんねぇけど!!

 

 橘を背中に隠しながら影人形のラッシュと雷光のぶつかり合いが続く。夏休み前の俺だったら影人形の拳が吹き飛ぶ事態になってただろうが今の俺はあの時より数倍強くなってる……はずだ。夜空と戦うとその辺が不安になるけどきっと強くなってるはずだ。姫島先輩の相手を影人形に任せて俺は地上に視線を向けるとイケメン君が別の所に向かっているのが見えた……あの方向は水無瀬がいる方角だな。よし、ちゃんと見つかってくれて俺は嬉しいぜ!

 

 

「っ!!」

 

 

 飛んでくる雷光をワンパンで粉砕、影人形を姫島先輩に接近させて拳を放つと障壁を展開して防ごうとした……でもさぁ、アンタの障壁って強度弱いよなという疑問の通り、影人形の拳はガラスを割るように簡単に障壁を貫いて姫島先輩胴体に叩き込む。僧侶方面に特化させるのも良いけどさ、女王ならもうちょっと防御、いや戦車の特性に意識を向けた方が良いよ? 今のままだと魔力ぶっぱの雑魚になるからさ。

 

 

「橘」

 

「は、はい!」

 

「命令。そこで飛んでる紙装甲女王をぶっ殺せ」

 

「――はい!」

 

 

 別に俺が倒しても良いんだが橘にも戦闘経験をさせないと今後に響く。け、決してめんどくさいとか思ってない! うんうん! うちの僧侶はグレモリー眷属女王にすら勝てるんだよーって色んな奴らに自慢したいだけ! だって雑魚相手に本気になるとか大人げないじゃない? そうそう、だからこれは一種の橘に対するの試練みたいなものだ!

 

 

『嘘。めんどくさいって思ってる』

 

「……あぁ、そうだよ! 悪いですかねぇ! 影人形のワンパンで落ちる女王相手になんで俺が戦わないといけねぇんだ? あんなのうちの橘さんで十分だ」

 

「あらあら。随分自慢の僧侶さんなのですわね。志保ちゃん、遠慮はしませんわよ」

 

「はい。私は悪魔さんの僧侶です! 悪魔さんのために――貴方に勝ちます! キー君!!」

 

 

 気合十分の橘の背中に悪魔の羽が生える。そして姫島先輩のように空を飛んで空中戦を始めた……白! 白だぜ相棒!! やっぱりうちのしほりんは清楚系の白が似合うよな!!

 

 

『俺様、紐パンだったら興奮してたぜ』

 

 

 流石相棒! その言葉には俺も同意だ! アイドルが紐パン……素晴らしいと思います!

 

 姫島先輩が得意の雷光を放つに対して橘は自分の両手に破魔の霊力を集めてそれを矢のように放つ。あの矢自体も破魔の霊力だから一発でも掠れば悪魔相手だったら大ダメージは免れないだろう。もっともそれ以外の相手、例えば普通の人間が相手だったら霊力自体の威力は低いから撃っても意味無いんだけどな。でも今回の場合は姫島先輩の雷光に「魔」力が混じってるから威力は落ちて無さそうだ……相殺されてるけど。やっぱり歌での支援と並行して遠距離攻撃も鍛えさせた方が良いな。今の橘は歌に魔力を乗せて支援する方向性だから遠距離での撃ち合いにはまだ不慣れらしいし。

 

 

「キー君!!」

 

 

 独立具現型神器の狐が雄たけびを上げて全身に雷を纏いながら姫島先輩に接近する。その目と纏う雷からは確実に仕留めるという強い意志のようなものを感じる。流石は橘大好きな狐だな……それ以外の存在には容赦ねぇ!

 

 

「甘いですわ! 私の雷光は……イッセー君が褒めてくれた雷光はその程度の攻撃では防げませんわ!!」

 

 

 指先に集めた魔力を雷に変換して一気に放つが……さて姫島先輩? その狐は橘が操作しているんじゃなくて狐自体が意志を持って動いているんだぜ? つまり何が言いたいかと言うと――

 

 

「グゥゥゥゥゥ!!」

 

 

 ――単調な攻撃はその狐にとって障害でも何でもないんだよ。

 

 

「そんな!?」

 

「キー君!! いっけぇ!!」

 

 

 放たれた雷光を難なく躱した狐は前転するように周りながら雷を放出、電流のコマとなって姫島先輩を襲う。ダメージを受けないために障壁を張る姫島先輩だが俺命名紙装甲女王の名は伊達ではなく……かなり必死に防いでいるようだ。えっ? マジで? マジでやってんのあの人? どんだけ魔力極振りなんだよ?

 

 

「くぅ……こ、このままでは、危ないで、すわねっ!」

 

「ええいっ!!」

 

 

 主の言葉に狐は瞬時に真上へと飛ぶ。姫島先輩に襲い掛かる脅威は電気を放つ狐から霊力を拳に纏わせた橘へと変化した……うわぁ、あの子ったら拳を握って障壁殴ってるよ。男らしいけど見たくはなかった!! 障壁に拳を突き立てた橘はそこからラッシュ、ラッシュ、ラッシュの雨を叩き込む。魔力や霊力で身体強化をしているから僧侶の橘でも結構な威力の打撃を行えるらしい……腰が入った良いパンチですね!! 見たくありませんでした!!

 

 そんな事を思っていると水無瀬に仕込んだ影人形に動きがあった。うん? おいおい、まさか残り全員で水無瀬を攻撃とはなかなか大胆な事をしてくれるな――あぁ、停止世界の邪眼は無理だわ。

 

 

『ノワール・キマリスさまの僧侶一名、リタイア』

 

 

 上空からそんな放送が聞こえた。当たり前か……停止させられてからの先輩の魔力攻撃は防ぎようがねぇしこれは怒る事は出来ない。しかしまさかあの先輩が赤龍帝達と一緒に前線に出てきたって事はもうなりふり構ってられないって感じかねぇ? それとも俺が煽ってキレた? なんかそれが当たってそうだな。俺としては水無瀬を撃破させられた事に関しては心底どうでも良い、いや良くないけど撃破された相手の事を考えていても意味は無いからもう忘れよう。本来だったら水無瀬を囮に相手の誰かを新校舎内におびき出してから四季音の一撃で新校舎事撃破しようぜ作戦が出来なくなったのは痛いな……影人形もその時の防御として仕込んだものだしな。仕方ねぇ、隠れている四季音にもう少し大人しくしていろと伝えろ。そんでお前はこっちに来い。

 

 

『りょーかい』

 

「水無瀬先生……!!」

 

「これでゼノヴィアちゃんの分は取り戻しましたわ……志保ちゃん、貴方もここで倒します! 歌と破魔の霊力は脅威ですもの!!」

 

「――はい! 私も覚悟を決めました!! 姫島先輩をここで倒します! 悪魔さん!!」

 

「うん? あぁ、別に良いぞ」

 

「――行きます!」

 

 

 上空から狐の雄たけびが聞こえるのと同時に一つの雷が橘に落ちる。相手の姫島先輩が雷光を放ったわけじゃない……狐自らが雷となって橘に落ちたそれはダメージを与えるものではなく、狐自身が変化した証の雷だ――橘の首筋を護るように茶色のマフラー、それこそ独立具現型神器である雷電の狐の別形態。独立具現型神器所有者の中には神器自体を変化させて武器や防具にする事もあったと調べたら分かったので橘にも同じような事が出来るか聞いてみたら――わずか一日で完成させましたよ! その時は唖然としたね!!

 

 マフラーをなびかせて拳を握り、姫島先輩に向かっていく橘に止めるべく放たれた雷光が襲い掛かるがそれらをマフラーから放出された電気の障壁で防いでいく。改めてみるとさ……アイドルがマフラーなびかせて殴りに行くってどうなの? カッコいいけど! カッコいいけどさ!! なんか違うよね!?

 

 

「なんて、防御力なのかしら……!!」

 

「キー君の防御は鉄壁です!! えいっ!!」

 

 

 橘の拳は姫島先輩が展開した障壁を捕らえ――亀裂を入れた。それを見た姫島先輩は後ろへと飛んで今までで一番デカい雷光を放った。恐らくそれを放って距離を取ろうと考えたんだろうけどうちの橘様はなにをとち狂ったのかその雷光を真正面から受けながら真っ直ぐ進み、破魔の霊力が込められた拳を叩き込んだ。え、えぇ?! 覚悟ってそういう覚悟!? あの、えぇ!? ちょ、ちょっと橘様!? 何してんの!?

 

 

「……いたい、です! でも!! 犬月、さんはもっと、もっと痛い思いをして頑張ったんです!! 私、もこれぐらいは出来ます!!!」

 

「志保、ちゃん……」

 

「これで、終わりですっ!!」

 

 

 ゼロ距離からの破魔の霊力を叩き込まれた事で撃破判定が下る。勿論――相手だけだ。確かに雷光のせいで橘もダメージを受けているが電気の障壁のお蔭か橘の気合のお蔭かは分からないが如何にか撃破判定を貰う事は無かったようだ。ふぅ、冷や冷やさせないでくれ。

 

 

「志保。無理しすぎ」

 

「ご、ごめんなさい……えっと、犬月さんの覚悟を見たら、つい」

 

「可愛く言ってもノワールは絶句状態だよ」

 

「俺様、何も見ていない」

 

「悪魔さん! ちゃんと! ちゃんと見てください!!」

 

 

 どこの世界に拳握りながら雷に突っ込むアイドルを見てキャーカッコいい! って言えるんですかねぇ? 俺達のしほりんは一体どこへ行ってしまったんだ……! きっと全てはガチムチハゲがいらねぇことを教えまくったせいだな! もう一度絶対に殴る!!

 

 俺が絶句状態に陥っていると真下の地面にグレモリー先輩が現れた。ご丁寧にイケメン君、シスターちゃん、ハーフ吸血鬼、赤龍帝を引き連れてだ……まだ赤龍帝は禁手化してないか。流石に長時間は無理だから温存してたって感じかね?

 

 

「……朱乃も倒されたようね」

 

「そっすね。うちの拳系アイドルのお蔭でなんとか倒せましたよ……あのすいません、さっきの光景を見てまだ心の余裕が持てないんで少しだけ待ってもらって良いです?」

 

「ダメよ。ねぇ、キマリス君。お互いの駒が少なくなってきたから総力戦と行かない? 何度も考えたけれどこの戦法以外、貴方を倒せそうにないの。勿論私も後ろで指揮をするなんて事はしない……皆と一緒に戦って貴方に勝つわ!」

 

「あぁ! 黒井!! 小猫ちゃんやゼノヴィア、朱乃さんの敵討ちだ! 行くぜドライグ!!」

 

『気を付けろよ相棒!! 奴は歴代最強の影龍王だ! 気を抜けば死ぬぞ!!』

 

「知ってる!!」

 

 

 なるほど。全部の駒を総動員して俺を倒しに来る作戦か。理に適ってるし先輩らしい脳筋っぷりだよ――俺好みでいい作戦だと思うよ。

 

 

『ゼハハハハハハッ!! 赤蜥蜴ちゃん! いや乳龍帝ちゃんよぉ!! 俺様に勝てるとでも思ってんのかぁ? やーいやーいおっぱいどらごーん!! おっぱいどらごーん!! 俺様の宿主様との力の差を見せつけてやるよ!!』

 

『くっ、う、うおぉぉぉぉぉん! うおぉぉぉぉぉん!! 俺は赤龍帝!! ドライグだ!! 乳龍帝ではない! そんな、そんなドラゴンではないのだぁ!!』

 

『はぁ? おいおい冗談だろう赤蜥蜴ちゃん!! 乳龍帝だろう? おっぱいドラゴンだろう? 良いじゃねぇか!! 乳を司る龍帝って素敵だと思うぜぇ!! きっと世の男共から拝められる存在になるだろう!! ゼハハハハハハ!! さぁ! 来い乳龍帝!! 昔のように楽しい殺し合いをしようぜ!!』

 

『うおぉぉぉぉんっ!! 貴様は絶対に言うと思ったぞ!! 相変わらず性根が腐ってる邪龍め!! それもこれも全部相棒が悪いんだ!! 俺は、乳を司る龍帝なんかじゃない!!』

 

『安心しろドライグ、俺様、ちゃんと、ちゃんと分かってるから』

 

『分かっていない!! その口調のお前は絶対に分かってはいないんだ!!』

 

「なんか、うちの相棒が活き活きとしてるんだけど?」

 

「すまんドライグ……!! 本当にごめん!!」

 

 

 伝説の存在、二天龍と称された赤龍帝ドライグがガチ泣きしているんだけどさ……気持ちは分かる。俺も脇龍王とか呼ばれたら同じ感じになりそうだからな。もっとも相棒はそんな二つ名すら喜んで名乗るだろうけども。

 

 そんなくだらない会話をしていると赤龍帝が鎧を纏った。どうやら此処に向かってくる間にカウントしてたみたいだな……まぁ、どうでも良いや。個人的にはドライグのガチ泣きが哀れ過ぎて何も言えない。うちの相棒がなんかスイマセン。俺は言葉では言わないぞ! ちゃんと心の声で言うからな!!

 

 

「まぁ、あれだ。やるか」

 

「お、おう!! 言っておくけど負けねぇぞ!! 俺だって……俺だって強くなってるん――」

 

 

 影のオーラを纏って一瞬で移動する。その場所は赤龍帝――ではなくシスターちゃんの真上。誰もが、いや平家以外は俺が赤龍帝と戦うと思っていたから妨害される事なく真上を取る事が出来たけどさ……確かに俺は「やるか」って言ったよ? でも赤龍帝と戦うとは一言も言ってないんだよねぇ。何故か驚いた表情をしている可愛いシスターちゃん目掛けて影の砲撃を叩き込むと地響きが周辺に鳴り響く……はい終わり。サブターゲット討伐完了だ。ちゃ、ちゃんと手加減したから許してもらえるよね!! 誰に許されるか知らねぇけどさ、しかしこれでやっと赤龍帝と殺し合える……なんだよ平家? その相変わらずの外道っぷりだねって顔は? 当然だろ? 回復役は真っ先に潰さないとこっちが不利になるんだからな。

 

 

『リアス・グレモリーさまの僧侶一名、リタイア』

 

「ふぅ。んじゃやるか赤龍帝? 何時でも良いぜ」

 

「――あー、しあ」

 

「あん? どうした? 掛かってこないのかよ? 屋根の上から降りてきてやったってのに突っ立ってんじゃねぇよ」

 

「あっ、ノワール」

 

「なんだ?」

 

「どうやら逆鱗に触れたっぽいよ」

 

 

 平家の声と同時に赤龍帝のオーラが高まった。それはヴァーリと夜空のタッグを相手にしていた時よりもさらに強いドラゴンの波動……くくく、あはははははは!! なんだよ! やれば出来るじゃねぇか!!

 

 

「くろいぃぃぃっ!!!」

 

 

 上空に飛ぶと赤龍帝も追尾するように追ってきた。左腕の籠手に内蔵されている聖剣アスカロンに力を譲渡したのかその拳を雄たけび上げながら叩き込もうとしてくる。流石の俺も龍殺し(ドラゴンスレイヤー)なんて喰らいたくないのから影人形を生み出して防御するが……ちぃ、ガチで逆鱗に触れたらしいな。威力がすっげぇ!!

 

 

「なんで、なんでアーシアを攻撃したぁぁっ!!!」

 

「回復役を潰すのは常識だろ?」

 

「アーシアは戦えないんだぞ!!!」

 

「戦場に出てるのに戦えないってのはおかしいだろ……だったらゲームに参加するんじゃねぇよ」

 

「ふざけんなぁぁぁぁ!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

『ObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtainObtain!!!』

 

 

 無限に力が高まる赤龍帝と無限に力を奪う影龍王()

 

 怒り狂う赤龍帝の突進を影人形のラッシュタイムを叩き込みながら応戦、同時に力を奪っていくがやっぱり夜空と同じく力が高まっていく相手には意味ねぇな……奪ってもすぐに倍加されて元通りだ。龍殺しが宿る片腕に触れないように影人形と共に赤龍帝にぶつかり合うと周囲の景色が衝撃によって吹き飛んでいく。おいおいマジかよ……ヴァーリと殺し合ってた時よりも力が高まってんじゃねぇか!!

 

 アスカロンの刃を出現させた赤龍帝はそれを突き刺そうと突進してくる――

 

 

「ちぃ!! くっそ!! は、離せぇぇ!!!」

 

 

 ――が複数の影人形を出現させて突進を止めて取り押さえる。夜空みたいに馬鹿かってぐらい光を放ってくるなら兎も角、ただ闇雲に突進は俺相手だと自殺行為だぜ? 一応、テクニックタイプを自称してるしな。これが夜空やヴァーリが相手だったらこんな手を使っても即効で消されるだけだけど……今の赤龍帝相手なら普通に通用するか。

 

 

『っ! 相棒!! 今すぐこの人形から離れろ!! 力が吸われているぞ!!』

 

「そんなのすぐに倍加すればいい!! 黒井をぶん殴る!! アーシアを、アーシアを攻撃しやがってぇ!!」

 

『落ち着け!! 吸われているのは相棒の力だけではない!! 鎧を持続させる力……それも奪われている!! このままでは禁手化が解ける!』

 

「嘘だろ!?」

 

『嘘ではない! クロムの力は存在の力を奪う……理論上は可能だ!! しかし前の影龍王もここまでの事は出来なかったはず……相棒! どうやら奴は奪う力を選択できるようだ!! くっ、生前のクロムと同じ事が出来る所有者だと!?』

 

『ゼハハハハハハ!! 言っただろうドライグぅ! 俺様の宿主様は歴代最強だってなぁ!!』

 

「ほらほら。俺を殴るんだろ? だったらさっさと抜け出してここまで来いよ。じゃないと……禁手化が解けるぜ?」

 

 

 真下から赤い魔力が飛んできたので影の翼を展開して遮断する。こっちも怒りで力が跳ね上がってるなぁ……そこまで大事だった? あぁ、大事だったね。でも俺の目の前に連れてきたんだから倒されても文句は言えないぜ? もっともこの場に居なくても四季音に探させて潰したけどな。つまり……置いてこようが連れてこようが結果は変わらないんだよ。はい残念でした!!

 

 

「キマリス君……! 色んな暴言や最初のような戦い方は私も許せたわ。でも、私とイッセーの大事なアーシアを傷つけた事だけは許さない!! ここまで怒らせたのは貴方が初めてよ――消し飛ばしてあげるわ!!」

 

 

 あらら、先輩がガチギレしてやがる。他の所ではイケメン君と平家、ハーフ吸血鬼と橘が戦っているけど平家は兎も角、橘は相手が悪いな……停止させられたらそこで終わりだし。よそ見をしているとまた滅びの魔力が飛んできたので影で防御、お返しに影人形を生成して先輩を殴ると今度は赤龍帝がキレて取り押さえていた影人形を吹き飛ばして向かってきた。何この連鎖? めんどくせぇ!!

 

 

「くぅろぉぉぉいぃぃ!!!!」

 

「うぜぇ……耳イテェから叫ぶな」

 

「うるせぇ!! テメェ!! アーシアだけじゃなく部長まで殴りやがって!!! ぜってぇ許さねぇ!!!」

 

「おいおい。王を攻撃するのはゲームでは当たり前だろ? それ自体否定してんじゃねぇよ……たくっ、主殴られて仲間倒された程度でキレんなよ。殺すわけじゃねぇ、ただの遊びだろ?」

 

「それでも、それでもテメェをぶん殴る!!」

 

『落ち着け相棒!! 怒りに飲まれるな!!』

 

 

 圧倒的な力の塊、赤いドラゴンのオーラで捕えていた影人形を吹き飛ばして真っ直ぐ俺に向かってくる。龍殺しが込められた赤龍帝の攻撃を余裕で躱すがすぐに体勢を立て直して今度は極大の砲撃が飛んできた。真っ赤で赤龍帝の力が込められた良い砲撃だ……でも無駄だけどな。即座に影人形を生成してラッシュタイムを放つと同時に威「力」を奪っていくが……どうやら影人形で防御するその一瞬を狙っていたのか赤龍帝が突進してきやがった。怒りの声を上げた赤龍帝は影人形の足止め程度では止まらず、龍殺しが宿った拳が俺の胴体に叩き込まれた――がはっ……! 初めて、喰らったけどいってぇなぁ!! しかも俺の鎧を全部吹き飛ばすほどの威力かよ!!

 

 連続で殴ろうとしてくる赤龍帝に影の砲撃を浴びせて背後に吹き飛ばし、その一瞬を使って鎧を復元させる。赤龍帝が体勢を立て直す前に背中から生やしている影の翼を多く広げ、影の弾丸を放つ。避けようとする赤龍帝だが足止め用に影人形を生成したからそれを振り切る事が出来ず……無数の弾丸をその身に受けて地上へと落ちていく。俺が影人形頼りの男だと思ったか? 残念、確かに極振り状態だけど自由自在に影を操ればこの程度は余裕だよ。しかし……おいおい、これでリタイアとかやめてくれよ?

 

 

「イッセー!!」

 

「大丈夫です、部長……!! くっそ!! 強い……あの人形から逃げれねぇ……!! がはっ!?」

 

 

 上空から一気に急降下して地面に横たわる赤龍帝を殴る。その衝撃で赤龍帝が纏っていた鎧が吹き飛んでしまうが俺には関係ない……はぁ、つまらねぇ。これで終わりかよ? 夜空やヴァーリと戦いてぇわ。

 

 

「く、ろいぃ……!!」

 

 

 首を掴んで宙に浮かせると苦しいのか呻き声を上げるがこれも俺には関係ない。別の所から先輩の攻撃が飛んでくるけど影の障壁、影人形で簡単に防げるから脅威にすらならない。

 

 

「弱い。マジで弱い。さっきの一撃は確かに効いたぜ? 強い良い一撃だった。でもそれだけなんだよ……何の苦労もしてないテメェが俺に勝てるとでも思ったか? 俺はな、ここまで強くなるのにかなり苦労したんだよ……夜空と戦うために、母さんを護るために、自分を護るために必死で頑張った。赤龍帝、護りたいならもっと強くなれ。このままだと本当に乳龍帝って二つ名で馬鹿にされながら一生を終えるぜ?」

 

「ぐ、ぁ……!」

 

「と、まぁ……これで終わりなんだけどな。病院で仲間が送り込まれてくるのを黙って見てな」

 

 

 首を掴んで締め付けながら止めを刺そうとすると――禍々しい気質をした赤いオーラが赤龍帝から噴き出した。あっ、やべぇ。やり過ぎた……マジでぇ!?

 

 

「イッセー!? どうしたのイッセー!?」

 

「ちぃ!!」

 

 

 近づこうとする先輩を抱き抱えて新校舎の屋根まで飛ぶ。その途中で橘に影人形の攻撃を浴びせてリタイアさせることも忘れない……でも流石平家だな。俺の心の声を聞いていたのか自分から腹に刀を差してリタイアするとはやるじゃねぇの。あと、悪い橘……あとで何か奢るわ。

 

 地上に残されたのはオーラを噴出し続ける赤龍帝の姿。赤い鎧を身に纏い、老若男女の声を吐き出しながら殺意を帯びた目で俺を見つめる。

 

 

「我、目覚めるは――」

《始まった》《始まってしまったのね》

 

 

 その声は不気味だった。本来の兵藤一誠の声に交じってこの場に居ないはずの誰かの声が混じっている。気色悪いと表現できるほどの声色だ。

 

 

「覇の理を神により奪われし二天龍なり――」

《もう止められない》《止める事は誰にも出来無い》

 

 

 呪いの言霊により、赤龍帝の姿が変化していく。あぁ、クッソ……これはゲームしてる場合じゃねぇぞ!

 

 

「無限を嗤い、夢幻を憂う――」

《全ては影龍王の責任》《敵である影龍王を倒せ》

 

 

 ご丁寧に神器の歴代思念は俺をご指定かよ……ふざけんな! って言いたいが引き起こしたのは俺だよな。ちょっと、いやかなりやり過ぎた……まさかシスターちゃん倒して先輩傷つけただけでこうなるとは思わねぇよ。

 

 

「我、赤き龍の覇王と成りて――」

《憎き影龍王を殺すため、我らは再び滅びを選択しよう!!》

 

「「「「「汝を紅蓮の煉獄へと沈めよう――」」」」」

 

『Juggernaut Drive!!!!!!!!!』

 

 

 俺達の目の前に現れたのは兵藤一誠ではなく、一匹のドラゴンだった。




観覧ありがとうございました!

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