ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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41話

「うへぇ。俺がリタイアした後でそんな事が起きてたんすか……よく無事でしたね?」

 

「流石に疲れたけどな。流石の俺も覇龍状態で赤龍帝と白龍皇を同時に相手にしてるような状況はもうこりごりだ。それよりお前、デュランダルと()り合ったってのに随分と元気そうだな」

 

「へへっ、王様の兵士ですからね! これぐらいとーぜんっすよ――いっつ!?」

 

「無理すんな。怪我悪化させやがったら本気で永眠させるぞ?」

 

「そりゃないっすよ王様ぁ!」

 

 

 色々とハプニングがあったがグレモリー先輩とのレーティングゲームを終えた俺は犬月達が搬送された病院へと来ていた。覇龍を使った影響か、それともあれほどの再生を繰り返した影響か知らないが地味に重い足取りで一番重症だった犬月の病室へとやってきたが……案外元気そうで心配して損した気分だよ。悪魔の天敵とも言える聖剣、それもデュランダル相手に体を斬られたり腕を斬り落とされたりとかなりのダメージを負いながらも戦い続けていたあの犬月が体の各所に包帯を巻くだけで済んでいるだもんな……しかも斬り落とされた腕もくっ付いているし。流石冥界でもかなり大きい部類、勤務している医者もかなり優秀と評判、レーティングゲームのプロ戦に出場している王や眷属もお世話になっているわけだ。あれほどの重傷でも時間さえあれば治療できるほどの治癒系統の魔力に秀でた奴らがゴロゴロいるしなぁ。もっとも……ダメージ自体はまだ完全に抜けきってないみたいで体を大きく動かすと痛みが走るようだけどな。たくっ、お前は黙って休んでろ。

 

 

「これでも回復した方なんすよ? なんか、転移した時は医者達も絶句状態だったっぽいんすからね! いやぁ~消滅した牙も斬り落とされた腕も治ってよかったっすわ! それが無いと犬になれないっすからね! いつつ、それはそうと水無せんせーやしほりんは大丈夫なんすか? 引きこもりは気にしてないけどあの二人はなんか、その……ダメでしょ! どうなんすか!?」

 

「俺も知らん。四季音が水無瀬達の病室に顔を出しているけど一番重症だったお前がその状態なんだ、問題ないだろ。まぁ、あとで顔は出すつもりだけどな」

 

「それが良いっすよ。きっと水無せんせーとしほりん、喜びますって! 引きこもりは分かんねぇっすけど」

 

「アイツはきっとふかふかのベッドで寝れる、合法的にサボれるって喜んでると思うぞ」

 

 

 平家で思い出したんだが家に帰ったらあいつにキスマーク付けないとダメなんだっけ? うわぁ、嫌だぁ。夜空だったら喜んでキスマークどころか色んなものを付けるけどアイツ(平家)にするのはちょっと無理。自分で言いだした事だけど無かった事にして――やめよう。変な事をして病んだら俺の身が持たない。

 

 

「引きこもりっすからね。あぁ、そうだ……いっちぃは大丈夫っすかね?」

 

「赤龍帝も怪我は問題無いだろ。お前がその状態になったって事は目を潰された程度であれこれなるわけがねぇさ。悪魔の身体にドラゴン宿してんだぜ? 少し休めばいつも通りの元気を取り戻すさ。もっともそれ以外は深刻なダメージを負ってるだろうがな」

 

「……どういう意味っすか?」

 

「覇龍ってのは禁手のように簡単に使える代物じゃないんだよ。封じられているドラゴンの力を強引に引き出して神に匹敵する力を引き出すのが覇龍だ。一度使えば圧倒的なまでの力を使える代償として使用者の命を問答無用で奪い取っていく……しかも赤龍帝が使ったのは不完全な覇龍、俺と違って別のモノを対価として消費してないから恐らく――悪魔としての寿命の大半を失っただろうぜ」

 

 

 その言葉を聞いた犬月は言葉を失った。当たり前だ……悪魔は長寿の生き物、数百年なんて余裕だし下手をすると万単位で生きていける種族だ。なんせ七十二柱と称される事になった最初の悪魔、言ってしまえば初代とも言える奴らが未だに生きてるしな。聞いた話だと初代バアルはバアル家現当主に命令もどきをしてるとか何とか……隠居してる意味ねぇじゃんって思うんだけどそれほどまでに強いって事なんだろう。そう考えると初代キマリスも同じぐらい強いんだろうな……前大戦を生き残ってるし弱いわけがねぇか。

 

 そんなどうでも良い事は置いておくか。どっかに行った奴を考えても仕方ねぇし。というより覇龍を使って何度も思うのはあの邪念、怨念、執念と言った負の海は手強いって事だ……気を抜くだけで俺と言う存在が無くなってしまうと錯覚してしまうほどの邪悪さ、一刻も早く覇龍並みの出力を出せる代物を作らねぇと何時死ぬか分かったもんじゃねぇ。それに覇龍を使うと平家が五月蠅いから余計にそう思う。

 

 

「悪魔は永遠に近い寿命を持っているが覇龍はそれすら簡単に奪い取っていく。お前も喉が乾いたら飲み物を飲むのと一緒で喉を潤す俺達が覇龍、飲み干されて空っぽの缶や瓶が生命力って考えれば分かりやすいか? ただでさえ白龍皇と称されるアルビオンの半減能力を神器に移植して生命力を失ってるってのに追い打ちをかける様に覇龍暴走だ……多分、百歳を超えるかどうかすら怪しいぞ」

 

「そこまでっすか……な、なんか治す方法とかない、んすか? こんなのって……あんまりっすよ」

 

「一応有るには有るぞ。先輩も運が良いのかそれとも運命として決まっていたのかは分かんねぇけど近くに猫又が居るからな。あいつらは仙術、生命力自体を操る術を使えるからな……それを使えば失った寿命を元に戻すことは可能だ。ただし焦ると逆に死ぬけどな」

 

「お、おぉ! ってことはあの猫又が居ればいっちぃは死なないって事っすね!! よっしゃぁ! いてぇ!? き、きずがぁ……!」

 

「騒ぐからだ。確かにあの猫又は仙術を使えるが夜空ほどじゃない。俺から言わせればあの白髪ロリが使う仙術は泥団子を作ってドヤ顔してるガキレベル、赤龍帝の生命力を刺激しても戻るのはほんのちょっとだろうぜ。ちなみに夜空は生命力減っちゃったぁ~と笑いながら失った分を即回復できるぞ」

 

「それ、もう次元が違いますね。生活に必要な道具を作った偉人レベルっすよ」

 

「うん。その時の俺の心境を理解してくれ……覇龍使ってこっちは瀕死状態だったってのに相手は一気に全快だぞ? ゲームでラスボスが全回復技を使うレベルで唖然としたわ」

 

 

 何時から使えるようになったかは知らないが少なくとも俺と初めて会った時は使えなかったはずだが今の夜空は普通に使ってるしなぁ。しかもそのレベルが馬鹿げているって言ってもいいぐらいだ。生命力を弄るってのは簡単なようで難しいはずなのに簡単にやってのけるしもう規格外すぎて呆れてくる……ホント、マジでなんなんだよアイツ!

 

 

『ゼハハハハハ。あれの中にある生命力は人間という器を超えているからなぁ! 恐らく何度も自分に使い続けた影響だろうぜ? 言っちまえばユニアの宿主の中身は一つの宇宙みたいなもんなのさ! あれほどの膨大な質量を保有しながら形を保てている規格外さには俺様も驚くしかできねぇよ。何をどうしたらあんなのが生まれてくるんだぁ?』

 

「知るか。一応言っておくがやってる事とかは規格外だけどアイツ自身は普通の女だぞ? 少女漫画大好きだしで熱血漫画も大好き、アニメやドラマも大好き、そして殺し合いが一番大好きと言う素晴らしい女だ」

 

「王様。女の子は殺し合いが一番大好きって言わないっす」

 

 

 そうか? 俺達の周りでも殺し合いをしている女はいっぱい居るだろ? だからきっと殺し合い大好きな奴もいるはずだって! でも相棒の言う通り、アイツの生命力は異常だ。覇龍という大きすぎる力を膨大な気を使って安定化させてるけどさすがのアイツでも寿命が減る時もある……でもそれすら即回復だもんな。長寿になるのか短命になるのか危うい橋を渡りすぎだろって思う時もあるぐらいの綱渡り状態。もっとも夜空本人は全然気にしてなさそうだけども。

 

 

「と、とりあえずいっちぃが治るって聞いて安心したっすよ! ゲームじゃ敵同士だったけど友達っすからね……へへっ、よかったぁ!」

 

「たくっ、本気で喜んでんじゃねぇよ。犬月、遅くなったがよくやった。聖剣デュランダルを倒したお前は前までのお前じゃない。ちゃんと強くなってるってことを理解しておけ――強くなったな」

 

「――はい! これからドンドン強くなります! 犬月瞬は王様の兵士でパシリで犬っすからね! 最強の犬族を目指していきますよ!」

 

「おう。でもその前に傷は治しておけよ? ゲームが終わって残る行事は体育祭だ。お前が居ないと俺が頑張る羽目になるからちゃんと治せ」

 

「うっす!」

 

 

 それを言い残して犬月の病室から出る――さて、今度はこの人の相手をしないとダメなんだよなぁ。めんどくせぇけど逃げられる雰囲気じゃないよな。

 

 

「別に中に入ってきても良かったんですよ?」

 

「……入れる空気じゃなかったのよ。キマリス君……少し、話をしたいのだけれど良いかしら……?」

 

 

 病室を出た俺を待ち構えていたかのように廊下に立っていたのはグレモリー先輩だ。普段とは違いこれでもかと言うほど気落ちしており、お転婆姫という印象からちゃんとしたお嬢様と言う印象にジョブチェンジしている。

 

 別に断る理由もないので俺は先輩を連れて病院内の休憩スペースへと移動する。椅子に座って何かを話そうとしている素振(そぶ)りを見せる先輩に自販機で買ったお茶を手渡すと少し驚いた表情でそれを受け取った。なんて言うか……気まずい。別に嫌いなわけじゃないけどなんか気まずい……俺達は別れ話を持ち出そうとしているカップルかってぐらい気まずいからとりあえず買った缶コーヒーでも飲んで落ち着こう。

 

 

「……ありがとう」

 

「いいっすよ。お嬢様のお口に缶コーヒーが合うか分かんなかったんで無難にお茶にしただけですし。それに飲み物有りの方が話しやすいでしょ?」

 

「そう、ね……キマリス君、その、少しだけ話を聞いてもらっても良いかしら?」

 

「どーぞ。流石の俺でも壁と話してろとか言いませんから好きなだけ話してください」

 

「ありがとう……」

 

 

 お茶の缶のフタを開けて一口飲んだ先輩は静かに、まるで懺悔するように言葉を放った。

 

 

「私ね、今日まで何も分かっていなかったんだって思い知らされたわ……イッセーや裕斗、ゼノヴィアという強力な眷属、アーシアという心優しい回復役、小猫、朱乃、ギャスパーという将来性のある眷属が傍に居て私は強いんだと誤解したまま生きていたという事をキマリス君、貴方に気づかされたわ。思えば……私は本当の殺し合いというものを少しも知らなかった……魔王の妹、グレモリー家次期当主、赤龍帝を眷属に加えた(キング)、色んな称賛に近い言葉を言われ続けて慢心していたわ……戦えば誰かが傷つく、当たり前の事なのにアーシアが撃破された時の私はなんで、なぜ彼女を攻撃したのって怒りの感情しか出てこなかった。ゲームでは当たり前なのに彼女は誰も攻撃できないと勝手に思い込んで、貴方に怒って、もう情けないわ」

 

「まぁ、確かにあのシスターちゃんって誰にでも優しいから普通だったら怪我とか負わせるのは躊躇いますよ」

 

「えぇ……イッセーも私もアーシアを大切に思っているから、大事だと心から思っているから怒ってしまった……本当にごめんなさい」

 

 

 重い、重すぎる、空気が重すぎる! いや確かに話を聞く空気だったから真面目に聞こうって思ってたよ? でも重いんだよ! 俺としては至って普通に戦っただけなのに何でこんな重い話を聞かされないとダメなんだよ? マジで帰りたい……帰って良いかな? いや帰らせてくださいお願いします!

 

 そんな俺の心境なんて分かりませんとばかりに先輩は言葉を続ける。

 

 

「お兄様の妹として生まれて私は甘やかされて生きてきたわ。お兄様の眷属、グレイフィア、お母様、グレモリー家の人達、自分は特別だと勘違いしてしまうぐらい多くの人から甘やかされてきたと思うわ……イッセーが居なければ私はライザーと結婚して此処には居なかったでしょう。コカビエルとの決戦も私ではなくライザーが動いていたはずよ……でも、それでもキマリス君はコカビエルを倒していたでしょうけどね」

 

「あぁ~はい、あの程度の雑魚に負けませんよーだって夜空の方が強いですからねー」

 

「えぇ……今までの私達は何だったんだというぐらいキマリス君は強いわ。聞かせてもらえないかしら……? どうしてそこまで強くなれたの?」

 

「……どうしてって言われてもそうするしか生き残る道は無かったんですよ。親父とその眷属、母さん以外は俺を目の敵と言うか邪魔者扱い、存在すら否定されてましたからね。だから生きるためには強くならないとダメだったんですよ……先輩? 言っておきますけど俺は最初から強かったわけじゃない。最初は多分、先輩と同じように甘やかされて生きてましたから」

 

「……そうなの?」

 

「前に言ったような気がしますけど俺、キマリス家に殺されかけたんですよ。母さんと人間界に遊びに来た時を狙われてね。その時の俺は黒歴史認定したいぐらい雑魚だったんで襲撃犯からの攻撃に泣きまくって情けなかったなぁ……はぁ、死にてぇ。本当に情けなかったんですよ? 人間である母さんに護られて、大怪我していくのをただ見てるしかなかったんですから――でもそれが有ったから相棒と夜空に出会えたんですけどね」

 

 

 それが人生で一番の幸運だったと思う。あの時、空から降ってきた夜空を見た時は普通に女神かと間違えるくらい綺麗だった……うん、あのせいで一目惚れしたんだよなぁ。命の危機を救われてコロッと落ちるとか俺はチョロインか! って思えるぐらい一目惚れなんだよな。はぁ……だから夜空を誰にも渡したくないから女王にしたいと本気に思ってるわけだしなんて言うか、俺って独占欲強いよな? 男として最低な部類だとは思うけどアイツを手に入れるため、アイツに追いつくために必死に強くなってここまで来たんだけど未だに届いて無さそうなんだよなぁ! 戦うたびにドンドン強くなっていくしもう本当に規格外! もういい加減抱かせろ! マジで抱かせろぉ!

 

 でも……ここまで俺が夜空に拘る理由はあれしかない。一目惚れしたってのもあるけど出会った時のアイツは人生に絶望したような顔してたからな。我ながらあの子の笑顔が見たいとかいうガキ臭い願いもしたもんだ。今はコロコロと表情を変えるようになったが心の底から笑ったのは見た事がねぇ気がする。なんというか、普段の笑いとそれって別物だと思うし。

 

 

「そこからは夜空が襲撃犯を抹殺! 俺は夜空や色んな奴らと戦っても生き残るためにここまで強くなりましたってわけです。だから全て切っ掛け次第だと思いますよ? 俺が夜空と出会って強くなったように、先輩も赤龍帝達に出会って強くなる、それで良いと思いますけどね」

 

「……そうだと良いわね。少なくとも、今日のゲームで今までの甘さを認識出来たから前に進めそうよ……これから先、私達は戦場に向かう。そこでは簡単に命を落とすかもしれないし誰もが甘いわけじゃない、卑怯な手や私たち以上の実力者と対峙する事もあるかもしれない。それを……イッセーとキマリス君の戦いを見てそう思ったわ……キマリス君から下級悪魔扱いされるのは当たり前よね。だって今までやってきたのは子供の遊びだったんだもの」

 

「あぁ~……すんません。俺って相棒の影響をかなり受けてるからあんな状況になるとプライドが高くなるんですよ。ドラゴンって独特の価値観を持っててめんどくさいんすよ……下級扱いしてまぁ、すいませんって言っておきます」

 

『ゼハハハハハハハ! それがドラゴンなんだぜぇ! さて、リアス・グレモリー。確かに貴様は無知でガキで見た目以外取り柄の無い雑魚だった。しかし自らの弱さ……それを認めた事だけは評価してやろう。俺様達は死すら生温い殺し合いを何度も行ってきた! 何度も、何度も、何度もだ!! もし俺様達を倒そうという意思があるのならば立ち上がれ! 前を見ろ! 腕が飛ぼうと足が飛ぼうとしがみ付いてでも立ち上がれ! 貴様は赤蜥蜴ちゃんを従えた唯一の悪魔だ。誇っていいぞ! ゼハハハハハ! さてどうする? これから貴様はどうするつもりだぁ?』

 

「――決まっているわ。諦めない。もう、子供の遊びは終わったわ……大人になるために前に進む。今の私が出来るのはそれしかないもの……キマリス君」

 

 

 何かを決意した先輩は立ち上がって手を差し出してくる。なんというかやっぱりしおらしい先輩よりドヤ顔してる先輩の方がらしいわ。

 

 

「私は貴方を、貴方達を超えるわ。魔王の妹でもない、グレモリー家次期当主でもない、ただのリアス・グレモリーとして貴方を超えて――倒すわ。だから、いつかまた私達と戦ってほしい。今度はこんなことは絶対に起こさないちゃんとしたゲームを貴方としたい」

 

「――くく、あはははは! そうですか。良いですけど俺と戦う前に倒れないでくださいよ? 今日だってかなり手加減してたんですから加減無しの全力で行くと四季音無双で終わっちゃいますからお気を付けを」

 

「えぇ。分かっているわ……それから、今日は本当にごめんなさい。暗い話しかしてないけれどこれだけはちゃんと、ちゃんと言いたかったから……」

 

「分かってますって。今日は不慮の事故だった、流石に過去の因縁でこんな風になったんだし俺にも責任有りますよ。謝りませんけどね。だから俺に勝って謝らせてください。あの時はすいませんでしたってね」

 

「ふふっ、そうね、必ず貴方に勝つわ」

 

 

 俺も手を差し出して和解の握手を交わす。色々あったけど引きずるほど心は狭くないと思いたいからこれでこの件は終了だ……しかしあの先輩から俺を倒す宣言が来るとは思わなかったよ。生徒会長の時にも思ったけど後ろから追いつこうとしてくる奴を見るのは何と言うか、良いな。俺も負けるかって思えてくるしやる気が出てくる。

 

 和解したので暗い話は置いておいて赤龍帝の容体を聞いてみたら傷自体は完全に治ってるらしい。ゲーム中に配布されたフェニックスの涙を渡して一気に治したそうだ……あっ、やべぇ。平家に渡していた涙回収してねぇぞ! い、いやぁ、うん、気づかなかったことにしておこう。きっとリタイアした時に没収してるでしょう!!

 

 

「犬月の病室前で聞いてたかと思いますけど赤龍帝は寿命、生命力と言えるものを失っているはずです。だから猫又に仙術を使わせて生命力が戻るように促してください。時間は掛かるでしょうけどやらないよりはマシです」

 

「えぇ、小猫にやってもらう事にするわ。キマリス君、色々とごめんなさいね」

 

「気にしないでください。ゲームが終われば敵対関係じゃないんですからね。と言うわけでそろそろ帰りますんでこの辺で失礼します……あっ、赤龍帝に俺は何も気にしてないから謝りに来るなって言っておいてください」

 

 

 それを言い残して先輩から離れて橘達の病室へと向かう。扉をノックして中に入ると三人共元気そうで家に帰る準備をしていたようだ……ちっ! もう少し早く来てたら着替えシーンを見れたかもしれないのか!! 畜生先輩め! あの長話はこれを防ぐためのものか! 何故か知らないが平家から変態と言う視線を浴びつつ水無瀬と橘にお疲れと言って頭を撫でると二人ともどこか嬉しそうな表情になった。うん可愛い。やっぱり女の子には優しくしないとダメだよな! うんうん! 影人形の攻撃を当てるとかやっちゃいけないよねとか思いつつ橘に謝ると何と言う事でしょう……逆に助けてくれてありがとうございましたとお礼を言ってきましたよこの子! 流石しほりん! きゃー結婚してー!

 

 

「さぁノワール、約束の時間だよ」

 

 

 時間は進んで深夜、場所は俺の部屋でとんでもない事態が起きている。待て、待て待て……うん、平家達の病室に行って一緒に家に帰ってきた。犬月はもう少し入院が必要だからいつもの騒がしさが地味に無い事を除けば普通に帰ってきたと思う。いやいやそんな事はどうでも良いから目の前で起きていることをどうしよう……マジでどうしよう。

 

 

「襲えばいいよ」

 

「それが嫌だから困ってんだろうが?」

 

「反応してる癖によく言うね、このこの」

 

 

 勝負下着と言って良いほどエロいもの着けている平家にノワール君のノワール君、つまり男の象徴と言うべきあの部分を足で軽く弄られる。やめろー! 男だから否応なく反応するんだからまじでやめなさい! と言うよりお前を抱くとは一言も言ってねぇだろ? しかし……エロいな。この時間帯に若い男女が一緒に居て片方は下着姿でベッドで寝そべっている。しかも黒だぜ? エロすぎだろ……おかしい、俺って貧乳好きじゃなかったような気がしないでもないけどやっぱり夜空の貧乳大好きだからきっと貧乳好きなんだな俺は! うん、なんか疲れとかが一気に襲ってきてもう何言ってるか分からん。

 

 

「キスマークを付ける、つまりはそういう事だよ」

 

「……意味合い的には合ってる、のかなぁ? はぁ……悪いが覇龍使って疲れてんだよ、だからマジでキスマークだけ付けてやるから普通に寝させろ」

 

「……しょーがない。でも添い寝は必須だよ」

 

「はいはい」

 

 

 というわけで童貞なノワール君はキスマークをどうやってつければいいか分からなかったが……そこは頼れる相棒、邪龍という頭のおかしい存在に教えてもらったので無事に平家の首筋に付ける事が出来ました。流石頼れる相棒! これからもよろしく頼む……具体的には夜空とヤる時にまたお世話になります。その時はマジでお願いします!

 

 

「黒井! その、本当にごめん!!」

 

 

 そんなこんなで体育祭当日、俺は校舎裏で赤龍帝に謝られていた。いやぁ、まさかゲーム翌日が体育祭だったのすっかり忘れてたぜ……そんな事はどうでも良いとしてなんで謝罪いらねぇって言ったのに何で謝って来るかねぇ? 俺的には覇龍対決が出来て満足、凄く大満足に加えて先輩とも和解してるんだし蒸し返さないで欲しいんだよなぁ。でも、これが兵藤一誠って奴なのかね?

 

 

「あの、部長から黒井は気にしていないって聞いたけどさ、やっぱりちゃんと謝りたかったんだよ……本当にごめん! 俺、あの時何が何だか分かんなかったけど黒井や部長達を殺しかけたって事は分かる……本当にごめん!」

 

「謝るなめんどくせぇ。別に気にしてねぇからもう忘れろって……俺的には覇龍対決出来て満足だったし先輩とも和解してるんだ、今更怒る必要がねぇんだよ。少しでも罪悪感があるならもっと強くなって俺を楽しませてくれ。それでチャラだ」

 

「そ、そうなのか……? でも、あぁ! いつか必ず、部長や皆と一緒にお前を倒す! 今度は覇龍なんてものは無しでな!」

 

「それでいい。いきなり呼び出されて何かと思えば……告白されるんじゃないかって内心ドキドキだったぜ?」

 

「するかぁ!? あぁもう、本当に気にしてないんだな……なんて言うか、黒井らしいって言うか、ホント凄いな」

 

「当然だろ? 俺は最強の影龍王だからな。ほら、さっさと戻らないと色んな奴らが困るぜ?」

 

「お、おう!」

 

 

 別に赤龍帝の事は嫌いじゃねぇからこれぐらいでちょうど良いんだよ。

 

 そして自分のクラスに戻ると体育祭が始まった。犬月が徒競走で無双したり匙君がパン食い競争でドジったり借り物競争で平家に連れ出されたりと色々と楽しかった。おい平家……お前のせいで周りからの視線が凄いんだが如何にかしろ! なんで「頼れる人」というもので俺の所に来るんだよ! ま、まぁ! 体育祭だし許すけどさ……!

 

 

「レイ君! 頑張りましょう!」

 

「おう。兵藤、俺達幼馴染コンビが勝利を貰うぜ。」

 

「いや! 俺とアーシアのコンビが勝つ! やろう、アーシア!」

 

「はい! イッセーさん!」

 

 

 こうして青春の一ページとも言える体育祭は続いていく。

 




これで「体育館裏のホーリー」編が終了です。
観覧ありがとうございました!

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