「よ、ようこそお越しくださいましたわ! キマリス様、このレイチェル・フェニックスが歓迎いたしますわよ!」
俺の目の前でドレス姿の金髪ツインテの美少女がその大きな胸を揺らし、存在感のあるドヤ顔をしている。可愛い。
北欧の主神ことオーディンが来日してから翌日、俺はフェニックス家の双子姫と称されているレイチェル・フェニックスの実家……というかどうあがいても城にしか見えないお家に足を運んでいた。目の前では背後にドンッ! と言う擬音が付きそうなほどの存在感を放っているレイチェルがいるけど……デカいなぁ、やっぱデカいわ。俺より年下で確か平家と同い年だったはずだけど発育でここまで差が出るとはねぇ。夜空はまぁ、うん。かなり昔から今と同じようなホームレス生活だったらしいから子供体型とちっぱいなのは仕方がないだろう。しかし、しかし! 平家と四季音のちっぱい、絶壁、壁コンビはどうしてあそこまで発育が……やめよう。なんか後で殺されかねないしセクハラ祭開催の予感がする。ただでさえ橘からえっちぃのはいけません! って怒られてるのにガソリン投入は拙いと思う。もうそろそろ破魔の霊力パンチが飛んできてもおかしくないしな! しかしそうだとしてもレイチェルのおっぱい素晴らしいと言うしかない! だって男だもん! 悪魔だもん! 実に素晴らしいと思います! 出来れば脇を見せながら揉ませてくれたりしないかねぇ?
「ご招待いただきましてありがとうございます。えっと、こちらうちの領地で採れた果物なので良ければ食後などにどうぞ」
「ありがたくいただきますわ。キマリス領で作られている果物は美味ですもの、お父様とお母様も喜びますわ」
「そう言っていただけるならありがたいですね」
お土産として持ってきた果物を受け取ったレイチェルは近くに居たメイドに手渡して色々と指示をし始めた。流石お嬢様……メイドに指示を出す姿とか様になってるね。
さて、なんで俺が冥界でも上流階級と名高いフェニックス家に来ているかというと――目の前にいらっしゃる双子姫の片割れ、レイチェル・フェニックスから直々にご依頼が有ったからだ。昨日の夜、いきなり家のリビングに転移してきたから驚いた……マジで驚いた。だって来るとか何も聞いてなかったし普通に焦るわ。
アポ無しで俺の所に来た理由は結構前に冥界中で凄く話題になっていたフェニックスとグレモリーの婚約騒動の件だ。それ自体は赤龍帝がレイチェルの兄、ハーレム思考満載だがただし妹思いというめんどくさい性格をしているライザー・フェニックスを一騎打ちで倒した事でご破談となり、両家の当主もお互いに納得しているので一応問題は無い。しかしその騒動で負った傷は深かったようで……うん、どうやら大観衆の目の前で下級悪魔、しかも悪魔になりたてだった赤龍帝に敗北した事でずっと引きこもってるらしい。確かに同じ男として同情したくもなるわ……もうすぐ手に入るはずだった女とフェニックス家としての名声、どっちも一気に無くなったんだからな。
「でも、いきなり俺の所に来た時はビックリしましたよ。あれ、俺ってフェニックス家に何かしたかなと本気で考えたぐらいに焦りました」
「も、申し訳ありません……アポイントメントも無しにお伺いした事はフェニックス家としてあるまじき行為だと思います。でも、そろそろ私もお姉様も、お兄様の眷属も我慢の限界でしたので……お忙しい中、本当に申し訳ないですわ」
本当に申し訳なさそうな顔はやめてください。虐めたくなります。
「別に忙しくはないんで……いや、北欧の主神様の護衛に禍の団のテロ対応を考えたら忙しい部類に入るのか? でも今の所は特に問題無いんで気にしないでくれるとありがたいですね。フェニックスの双子姫の貴方を泣かせたと知られたら何を言われるか分かんないですし」
「え、えぇ。分かりましたわ……コホン、キマリス様。今回お呼びしたのは先日お話しした通りです――私の兄、ライザーを立ち直らせてください」
そう。俺が此処に呼ばれた理由は現在引きこもりと化したライザー・フェニックスを立ち直らせてほしいとレイチェル自身からお願いされたからだ。歩きながらレイチェルは現在のライザーの様子を説明してくれたけどかなり深刻のようだ。一日中、部屋の中に引きこもってはレーティングゲームの仮想ゲームを行うか、チェスの強い領民を招いて一局するか、オナニーするという生活を繰り返してるらしい。まぁ、最後のオナニーは俺の勝手な想像だけど当たってると思う……だって男の引きこもりだぜ? するでしょ? 平家でさえしてるのにあのライザーがしないわけがない! 言葉では言えないけどな!!
俺自身も噂や冥界のマスゴミ共が書いたゴシップ記事とかで大変そうだなぁってのは知ってたけどレイチェルの口ぶりからすると本当にヤバいようだ。でもさぁ、俺の所に来るのがおかしいと思うんだよね? こういうのって当事者というか婚約相手で会った先輩達がなんかするんじゃないの? しかも俺って邪龍で基本的に好き勝手やる性格だから多分、逆効果だと思うよ? もっとも原因となった婚約パーティーに双子姫から招待されたり若手悪魔の会合の時も夜空関連で迷惑かけたから断れないんだけどね。元々断る気も無いけど……なんだかんだで「混血悪魔」だからと目の敵にする奴らとは違い、普通に接してくれる子だしさ。
「あの、分かってるとは思いますけど俺の性格上、好き勝手にやるんで下手すると悪化する可能性がありますけど良いんですか?」
「構いませんわ。むしろそれぐらいの荒療治でなければお兄様は治りません! お母様もキマリス様ならば大丈夫、何をしても問題無いと言っていますもの! それに私達フェニックス家は不死、そう簡単には死にませんからキマリス様のお好きなようにお兄様を叩きのめしてくださいませ!」
『ゼハハハハハ! つまり死ぬ一歩手前まで叩きのめしても良いってわけか! 良い女だなぁ。それを分かってくれる奴が少ないってのによぉ。宿主様、こいつ眷属にしようぜ? 駒も余ってんだろう? 腐らせるよりは使った方が良いぜぇ?』
「アホ。んな事すれば各地で暴動が起きるわ。とりあえずやるだけやってみますよ」
「お、お願いいたしますわ! そ、それはそうとキマリス様……? わ、私はお姉様と違って眷属悪魔になっておりませんの。で、ですからいつでもお誘いは――い、いえ! 何でもありませんわ! この私が眷属悪魔になるわけが無いですもの!」
「何を当たり前のことを言ってるんですか?」
なんか途中まで眷属にしてくださいと言う雰囲気だった気がするけどそこは空気の読める邪龍であり上級悪魔の俺様だ! 気づかなかった振りをしてスルーするぜ! もっとも仮に眷属にするとしても現在の手持ちの駒でキマリスとフェニックスは兎も角、周りの貴族悪魔達が納得する地位が無いんだよね。全てにおいて納得がされるであろう女王は夜空固定、アイツを転生できるか知らんけどとりあえず固定状態、騎士と兵士の駒に至っては論外だ。レイチェルをそんなもんで転生させたら周りから文句しか言われないから絶対に無し。まっ! そもそも俺の所に来たら不幸続きで最悪死ぬかもしれないからフェニックス卿や夫人もダメって言うだろうけどね!!
「そう言えばレイヴェル様は……あぁ、あっちに行ってるんですね」
「えぇ。今日はグレモリー家主催の乳龍帝おっぱいドラゴンのイベントのスタッフとしてそちらに向かっていますわ。もう凄く活き活きとしていましたからきっと楽しんでいるかと。お姉様からもキマリス様にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんわと伝えてほしいと……本当に、お呼びしたのに不在で申し訳ありませんわ」
「別に気にしてないんで良いですよ。恋する女の子は猪突猛進らしいですし」
「……そういうものですの?」
「そうらしいですよ?」
平家と一緒にやったエロゲーでもそんな事言ってたしな! 多分あってるだろ!
そんなこんなでライザーが住んでいる部屋に到着。長い廊下と無数の部屋で何が違うのか分からなかったが部屋の前でライザーの眷属達が呼びかけているから普通に分かった……というより言わせてほしいんだけど凄くね? 年上から年下と幅広く眷属にしてるしさぁ。ハーレムって男の夢だよなぁ……実際にすると辛いけど。ソースは現在の俺の生活な!
「か、影龍王様!」
「ユーベルーナ、お兄様は……まだ、ですか」
「はい……私達が呼びかけても無駄のようです」
「かなり酷い状況ってか? おーい、焼き鳥さん? 負け鳥? 引きこもり鳥? 貴方の妹の友人もどきノワール君がきましたよー、殺し合いましょー?」
『――か、影龍!! 影龍王だと!? な、なんのようだ、なんのようだぁぁ!!』
気軽にノックしながら声を掛けたら悲鳴に近い返答が帰ってきた。うわぁ、これかなり重症じゃん。なんだろう……無性にトドメを指したくなってきた! ドSの血が騒いできたぜ!
「何の用だって言われてもこの可愛いレイチェルさんから引きこもったテメェを何とかしろよとお願いされたからこのクソ忙しい中、めんどくせぇのに来てやったんだぜ? そんなわけで入って良い?」
『は、入るなぁ! 俺は、俺は忙しいんだ!! レイチェル!! すまないが帰っても――』
「お邪魔しまーす……って鍵かかってやがる」
『人の話は最後まで聞け! ふ、ふふふ! 俺は部屋にいる時はいつも鍵を掛けているんだ! さぁ、さぁ帰ってくれぇ!!』
「――レイチェル?」
「な、なんでしょうか?」
「扉の修理代はうちの親父に請求しといて」
背後に影人形を生成、得意のラッシュタイムを目の前の扉に放って強引に開閉。周囲に轟音が鳴り響いてライザーの眷属はドン引き状態だがそんな事は知らん。せっかく来てやったのに帰れってのはどういう事だ? レイチェルには優しい言葉で言ったけど本当はクソ忙しいんだぜ? 自由奔放の主神様の護衛をする羽目になったしな! あと昨日のおっぱいパブに行けなかった怒りを引きこもった鳥にぶつけてやろう! 俺だって地味に行きたかったんだよぉ!
「ひ、ひいぃぃ!? お、おま、おまえぇ! なにしているんだ!!」
「何って扉壊しただけだけど? 大丈夫だって、修理代はこっちというかうちの親父が持つから」
「そんな事を言っているんじゃない!! 俺は帰れと言ったはずだ、言ったはずだぁ!」
「帰れって言われたら帰りたくなくなるのが悪魔の常識だろ? てか……ホントに重症のようだな」
扉を壊して中に入った先で目にしたのは自分のベッドに入り込んで震えているライザーの姿だった。あれ? おかしいな……婚約前に見た時はかなり堂々として俺様、カッコいいだろうと言いたそうな態度だったのにどうしてこうなった? たった一回の敗北でこうなったってわけ? 嘘だぁ!
「お兄様! キマリス様が来ていただいたというのにその態度は何ですか! ほらっ……! ベッドから出てください!」
「せーの!」
「えーい!」
「やめろぉ! やめてくれぇ!! 」
レイチェルと双子らしい女の子がライザーをベッドから引きはがそうと奮闘している。うーん、巨乳が揺れて元気なロリ娘が頑張ってるのを見ると胸が熱くなるな。でもなんでこんな風になってんだ? たかが一回負けた程度だろ? あぁ、そっか……俺は混血悪魔でライザーは純血悪魔だからその辺の価値観の違いか。
「えっと、確かアンタってライザーの女王だったよな?」
「え、えぇ……ユーベルーナと申します」
「そうか。んじゃ悪いけど俺とライザーの二人きりにしてくんない? 別に殺すとかしないから安心してくれ」
俺の言葉に奮闘中だった三人と周りにいたライザーの眷属は何かを言いたそうにしながらも部屋を出て行った。それを確認してから壊した扉を影人形を変化させて影扉というべきもので塞ぎ、この部屋と廊下を遮断……よし、これでこの部屋は俺とライザーの二人きりだ。なにすっかなぁ~? 別にボコっても良いんだがここまで雑魚になり下がったフェニックスだとやる気が出ない。あとすっごく帰りたい。
ライザーはベッドに潜り込み、俺はその辺にあった椅子に座る。テーブルにはチェスが置いてあって参考書っぽいのもあるから色々と作戦を考えたりしてたんだろう。なんで引きこもってんのにゲームの事を考えてんだこいつ? 素直にオナニーでもしとけよ。
「……なんのつもりだ?」
「あん?」
「なんのつもりだ……俺を、俺を笑いにでも来たか? そうだよな、あれだけ偉そうにしていた俺が今ではこの様だ……笑えよ、好きなだけ笑えばいいさ」
「ぷ、くく、あははははははははは! ってすれば満足? 暇なら一局どう? 正直、アンタがこのまま引きこもってても俺は気にもしないし関係ないけどさぁ、アンタの妹から頼まれたんだよ……叩きのめして治してくれって。だから帰るに帰れないから壁に話すと思って色々愚痴聞かせろよ」
「……手加減はしないぞ」
「生憎、手加減されても勝てねぇよ。俺ってこういうの苦手だしな」
反対側の席に座ったライザーは婚約パーティー前のような状態じゃなかった。髪はぼさぼさで服もだらしないって言っても良いぐらいだ。レイチェルとかが何も言ってなかったのは恐らく飯とかは引きこもりにありがちな扉の前に置くパターンだったからだろう……誰かが来た時だけきちんとした服装をしてそれ以外はこんな感じという生活の繰り返し。本当に暇人だなコイツ。
「……何故笑わない」
「笑う理由が無いし正直、どうでもいい」
「俺はお前をクソガキと言って下に見ていたんだぞ? 今の俺の姿を見てざまぁみろとか思っているだろう? 当然だ。あんな大観衆で俺は下級悪魔に負けた……混血悪魔くん、俺は――ドラゴンが怖いんだ」
「へぇ。ちっ、えっとこういう時は……ほいっと」
「今もお前と話しているだけで怖い、ドラゴンの逆鱗が怖い、何をしてくるか分からなくて怖い、圧倒的な暴力が怖い、もう……ドラゴンという単語や存在を見るだけで震えが止まらないんだよ。また俺を倒しに来るんじゃないか、嘲笑いに来るんじゃないか、奪いに来るんじゃないかと悪夢が止まらない……敗北した後の周りの視線が怖い……怖いんだよ混血悪魔くん。惨めだろう? カッコ悪いだろ?」
チェスの駒を動かす手が震えているから言ってる事はマジのようだ。なるほど……赤龍帝の逆鱗というか先輩を取り返すという意地に負けて恐怖症にでも陥ったってわけか。上級悪魔にありがちな典型的なパターンだな。地位や名誉、生まれ持った力に過信してるから一度でも負ければ心が折れて立ち直れない……俺とゲームをしたアスタロト家の次期当主も同じようになったらしいからなぁ。なんで鍛えようとか思わないんだろうね? もしかして特訓するのがカッコ悪いとか思ってんのか? ガキだろ。鍛えないで強くなれるわけねぇじゃん。
しかし……こいつ、チェス強いな? 普通に負けたんだけど。
「俺の勝ちだ……用が済んだら帰ってくれ」
「嫌だ。もう一回だ……マジで強すぎんだろ。勝ち逃げとか許さねぇぞ?」
「……仕方ないな。全く、王ならばチェスが得意であるべきだ。レーティングゲームはチェスをモチーフとしているんだ。常識だぞ?」
「生憎、俺はそういうのには拘んない主義なんだよ。てかグレモリー先輩とのゲーム前にも言ったはずですよ? ドラゴンの逆鱗に気を付けろって。それにたった一回負けた程度でその様は普通に笑える、すっげぇ笑える。あのさぁ……なんで負けを糧にして強くなろうって思えないんですかねぇ?」
「お前と俺は違うんだ! 俺は純血悪魔でお前は混血悪魔……同じ元七十二柱でもその差があるんだ! お前に、お前に俺の苦しみが分かるはずが無いだろう!」
「当たり前だろ? 他人なんだし。ここでお前の気持ち、よく分かるよっていう奴は馬鹿だろ? あとさぁ……帰りたくてもテメェの妹の片割れから頼まれたから帰れねぇんだよ! いい加減外に出ろよ!」
「ふざけるな! それが出来たら苦労はしない!! 貴様はたった一回の負けと言ったな? お前にとってはその程度でも俺達純血悪魔、貴族にとって一回の負けは重いんだ! お前に負けたのであればまだ、まだ良かったさ! なんせ影龍王で若手最強だからな! だが俺が負けたのは……悪魔になりたての弱い下級悪魔だ。どれだけ惨めで、どれだけ恥を晒したか……お前には分かるまい!」
「だから分かんねぇっての。あぁ、クソめんどくせぇ……あのさぁ、俺は敗北しまくって此処にいるんだぜ? 負けて負けて負け続けて……血反吐吐くんじゃねぇかって思うぐらい惨めで、恥晒して、体中の骨という骨を折って、それでも夜空に勝つために鍛え続けて此処に居る。恥晒す事の何が悪い? 惨めで何か問題ある? 下級悪魔に負けたアンタと何の力も無い人間に護られて、子供の女に窮地を助けてもらった混血悪魔。どっちが惨めでカッコ悪いと思う?」
親父やセルス相手にどれだけボコボコにされたのか数えきれないだろう。禁手に至ってからはそう言うのが無くなったけど逆を言えば至る前までは弱かったんだ……少なくとも人間の母さんに護られて人間の夜空に助けられるぐらいに俺は弱かった。
「……それとこれとは違う。言ったはずだぞ? 俺とお前は――がはぁ!?」
なんかもうウザくなってきたから胴体に影人形の拳を叩き込む。面白いようにくの字に身体が折れてその場に崩れ落ちたけどさぁ……フェニックスだしまだ問題ないよね?
「ウザい。本当にウザイ。もういいや……帰る。はぁ、時間の無駄だったわ。最初は兎も角、今は混血悪魔の俺でも普通に接してくるレイチェルやレイヴェルの兄だから根性あるかと思ったけど見込み違い。ホント雑魚。下級悪魔に負けるのも頷けるわ……忙しいのに時間作って来たのに無駄だったからレイチェルには色々としてもらうかねぇ? とりあえずおっぱい揉むか。単純そうだしきっと俺が文句言えば何でもしてくれんだろ」
「――っ!」
真下から炎の手刀が飛んできたので影人形でそれを止める。あれあれ? さっきまで死んだも同然だったのに何でいきなり復活してるわけ? 狙ってやったとはいえシスコン過ぎないか? 気持ちは分かるけどね!! そしてやめない! やっぱり言葉で復活させるより殺し合った方が手っ取り早いんだよ! トラウマが出来たんならそれ以上のトラウマで上書きすれば良いだけだしな!
「あれあれぇ~? どうしたのライザー君? この手は何? まさか怒った? 怒っちゃった? そんなわけないよねぇ! だってたった一回の負けで引きこもったライザー君がこの程度で怒るわけないよね! うん、死ね」
影人形のラッシュタイムを叩き込んで遠くの壁に飛ばす。威力も加減無しの全力、普通の奴ならまず死ぬだろう……でも相手はフェニックス、特性は驚異的なまでの再生能力だ。現に今も壁に激突したライザーが炎を纏いながら立ち上がってきてるし。なんだよ……ドラゴンが怖いって言う割には気絶しないで立ち上がれるじゃねぇか。それが出来るのになんで引きこもってんだよ。
「混血悪魔くん……? さっき、なんて言ったかな?」
「うん? あぁ、もしかしてレイチェルのおっぱい揉むで発言で怒った? 別に良いだろ? かなりの無駄足でこっちの事情を無視してまで来させられたんだからそのぐらいしても良いだろ。だって単純そうなのは変わんねぇんだし――はい残念」
「くぅ……! ぁっ、おま、お前ぇ! 単純と言ったか……! レイチェルが……俺の妹がお前をどれだけ慕ってるか、分かってるのかぁ!」
「知らん」
再び影人形のラッシュタイムを叩き込んで壁に激突させる。なんだろう……相棒からレクチャーを受けてるけどちょっと癖になりそう! やべぇ……愉しい! すっげぇ愉しい! 相棒も良いぞ良いぞとテンション上がってるしやっぱり俺って邪龍だわ!
心の中でそんな事を思っているとライザーが不死鳥のように再び立ち上がった。やっぱりフェニックスの再生能力ってチートだよな? どういう原理で服まで再生するんだろうか……俺も服まで再生させたいんだけど真似できるかな?
「俺の妹は、レイチェルはな……お前に助けられたあの日から周りに隠れて特訓してるんだ……! 貴族悪魔として相応しくないと思いながらな! それを単純と、単純と言ったか!! 俺の事はいくらでも罵るが良いさ! しかし、しかし妹の侮辱は許さん!」
「流石シスコン。復活キーは妹か……でもさぁ、忘れた? 俺は邪龍を宿してる混血悪魔だぜ? 好き勝手に生きて、好き勝手に殺し合って、好き勝手に死んでいくを信条としてる頭のおかしい存在だ。立ち上がるのは勝手だが俺に勝てないんじゃ――あの単純娘の処女、貰うぜ?」
「ふざけるなぁ!」
炎を纏って突進してきたので即座に転移魔法陣を展開、俺とライザーを部屋の外……もっと言ってしまえばフェニックス家の上空に転移する。殺し合いするんならあんな狭い場所じゃなくて広い場所が良いしな! さてフェニックスとの殺し合い……楽しみだなぁ! 下種キャラ演じて良かったぁ!!
「家の外……そうか、最初からそのつもりだったか混血悪魔くん!」
「あの部屋で殺し合うより広い方が良いだろ? さて――矮小な存在のテメェがどこまでやれるか楽しみだ。せめて鎧を纏わせてくれよ?」
「――良いだろう! 引きこもったとはいえ俺はライザー・フェニックス! 鳳凰、不死鳥と称された悪魔だ!! 受けるが良い!! 我が一族の業火を!!」
飛んでくる灼熱の炎をその場から動かずに影人形のラッシュで吹き飛ばす。威力もそこそこで確かに下級ドラゴンの鱗ぐらいは削れるな。でも影人形の防御を突破するには足りねぇよ……それはそうとフェニックス家の翼って俺達のようなコウモリの翼じゃなくて炎の翼なんだよなぁ。なんか特別っぽくてズルいというかなんというか……あら? 騒ぎに気づいたのかレイチェルとライザーの眷属が庭っぽい所に集まってるな。よし! そこにライザーを叩き落すか!
影人形を操作して火の鳥のように空を飛翔するライザーを捕らえてラッシュを放ち、地面に叩き落とす。いくら空を飛ぶのに慣れてても俺の影人形からは逃れられないって知っとけ……いやぁ、楽しい!
「お兄様!」
「ライザーさま!!」
「来るな! 流石、若手最強と称される影龍王……! 一撃一撃が重い、重すぎる!」
「そりゃ夜空と殺し合いしてるしねぇ。それぐらい無いとあの規格外はダメージ受けないんだよ。ついでに知ってるかどうか分かんねぇけどこの前、テメェをボコった赤龍帝を倒してるんだよね。自慢になるか分かんねぇけど一応言っておくわ――お前、弱いわ」
「……あぁ、あぁそうだろうさ。俺は、下級悪魔に負けるような男さ」
地面に落ちたライザーは立ち上がる。その姿、その目は先ほどまでとは比べ物にならないほど強いものだ。これさぁ、もう依頼完了で良いんじゃね? ここまでなったらもう大丈夫だろ!
「たった一回の敗北で心が折れて、引きこもっていた惨めな男……しかしだ……! 俺は! 妹が侮辱されて怒らないほど腑抜けてはいない! それが上手くお前の口車に乗せられたとしてもだ! 混血悪魔くん――不死鳥と称された我が一族の特性を思う存分味合わせてやろう!」
「――へぇ。だったらやってみろよ
「良いだろう! 見ているが良いレイチェル! 眷属共! これが、これがライザー・フェニックスが復活した証! その業火よ!!」
「お兄様!!」
「レイチェル……この兄の雄姿を見ているが良い!! 混血悪魔くん! 妹は渡さん!!」
この日、フェニックス領の上空で灼熱の花火が上がった。何度も殴っては再生、再生しては殴られを繰り返したライザーだったがその姿は府抜けていたとは思えないものだった。とりあえず逃げれないようにして影人形二体によるダブルラッシュタイムで普通に勝ったけどなんだかんだで楽しかったよ。俺って地味に自分と同じ再生能力持ちと戦った経験が少ないから良い経験だったしフェニックスの再生能力の力を何度も経験したおかげで影龍王の再生鎧の再生能力に変化を加えられそうだしね。
死闘もどきが終わるとレイチェルや何時の間にか現れたフェニックス夫人からお礼を言われて何故か夕食に招待されたけど……居心地悪かった。だってフェニックス夫人が「うちのレイチェルはレイヴェルと違って誰の眷属でも無いわよ」と遠回しに眷属入りを進めてきたからすっごくめんどくさかった! おい、フェニックス家大丈夫か? 混血悪魔の眷属に娘を加えようとか正気の沙汰じゃねぇぞ?
まぁ、そんな事が有ったけど――無事にライザー・フェニックスはドラゴン恐怖症やら引きこもりは治ったようだ。何でも赤龍帝にリベンジをして先輩の巨乳を揉むとか言ってたけど……覇龍化すると思うんでやめた方が良いぞ? あとどうでも良い話だが親父からフェニックス家で何をしたのという電話が来たが……何をしたんだろうな?
観覧ありがとうございました!