「悪いな、こんな場所まで来てもらってよ」
「ヴリトラ復活祭が始まるのに来ないわけないだろ? いやぁ~楽しみだなぁ! 匙君が死ぬか生きるか分からない祭りとか心がドキドキする」
「やめろぉ! 縁起でもない事言うなよ!? こっちは今すぐ帰りたいんだから出来ればもっと優しい言葉とか言ってくれ!!」
「えぇ……」
「そこまで嫌か!? うわぁんっ! かいちょー!! かいちょー!!」
俺と匙君、そしてアザゼルが居る場所は――堕天使領にあるグリゴリの研究施設。聞いた話では堕天使勢力が独自に神器所有者を集めて暴走しないように自らの力を扱えるように特訓を促しているとかなんとか。詳しくは知らないが恐らく元から人員不足気味堕天使勢力の手下として使える様にでもしていたんだろう。しっかし……予想していた通りの場所である意味新鮮だわ。普通に研究所って言える内装と見た目だし職員の殆どが白衣装備だ。うむ……白衣美人って素敵だと思います! 偶に水無瀬の白衣姿がエロいと思う時があるからきっと俺は脇好きであり白衣好きでもあるんだろう。
まぁ、そんな事は置いておいて目の前で匙君がガチ泣きしながら逃げようとしているので影人形でそれを止める。だって今回の祭りの主役が逃げたらダメだろドラゴン的に。というよりもそこまで泣く事は無いだろ? ヴリトラが目覚めたら今よりも格段に強くなれるから良い事尽くしで喜んでも良いと思うんだがなぁ。とりあえず一人でも寂しくなくなるよ! 話し相手が出来るよ匙君!!
「は、はなせー! 俺は帰る! 会長の元へ帰るぅ!!」
「別に帰っても良いが……良いのか? その場合、ただでさえクールな目つきの生徒会長から「この役立たずが」とか「ゴミ」って感じで見られると思うぞ?」
「……いぃ、じゃねぇ!! いやだー!? なんか心にグッとくるけどそう思われるのは嫌だぁ!!」
まぁ、匙君はドМって感じじゃないし当たり前か。もっとも俺も生徒会長からそんな目で見られたら興奮するけどな!! ちなみに夜空に同じことされたら普通に喜びます。
「だったら諦めてヴリトラ復活祭しようぜ? というよりさっさと始めてくれないと俺の特訓時間が無くなるんだよ……アザゼル、頼んでたものは?」
「あるぜ。たくっ、いきなり手伝う代わりに物を寄越せって言ってきたかと思えば……ヴァーリの奴も同じ事を言ってきやがったし本当に似てやがんな。しっかし良いのか? お前さんの要望通り北欧の魔術の中で防御系統が載ってる書物を持ってきたがヴァーリのように攻撃系の一つぐらいは覚えても良いんじゃねぇか?」
アザゼルの言う事はもっともだ。今の俺は霊操で影人形を生成、使役してそれに相棒の力を使用する戦い方……言ってしまえば守備に転じた戦い方だ。一応精霊術式とかもやろうと思えば使えるが俺としては
「下手に付け焼刃のモノを覚えても仕方ないだろ? 俺の持ち味は相棒が生み出す絶対防御の影を使った盾役。攻撃よりも防御をさらに高める方が良いんだよ。剣というか攻撃の役目は夜空とか犬月達に任せれば良いしな」
「なるほどな。確かに歴代の光龍妃は攻撃、歴代の影龍王は防御を得意としていたからその考えは間違っちゃいねぇ。俺自身も地双龍の二体が封じられる原因となった戦いに参加していたからお前さん達の力がどれほど強力かってのも重々理解してる。キマリス、お前さんも気になっていただろうミドガルズオルムの言葉だが――事実だ」
「……やっぱり相棒は俺の禁手のように不死身だったんだな」
「あぁ。当時の四大魔王も、聖書の神も、そして俺も全盛期の地双龍を相手に苦戦をしたもんだ。無限に影を生み出して俺達の攻撃を防ぎ、ダメージを与えても嗤いながら再生する影の龍クロム、圧倒的なまでの光力を保有し攻撃に秀でていた陽光の龍ユニア。正直な所……聖書の神が居なかったら俺達は滅んでたぐらいだ。四大魔王も俺もあの神の領域までは到達してなかったしな。それにこれは俺個人の考えだが当時の地双龍は全力を出していなかったんじゃねぇかって思ってる。封印される事すら楽しんでたんじゃねぇかとな……どうなんだ影の龍?」
『ゼハハハハハハハ! さぁ? 俺様もユニアもそんな大昔の事なんざ覚えちゃいねぇなぁ! もしかしたら全力を出していたかもしれないし違うかもしれねぇ。それはテメェらが決める事だ! ゼハハハ! 俺様は今の生き方が嫌いじゃねぇからどうでもいいんだよ!』
結構長い間、一緒に居るから声のトーンで嘘か本当かぐらいは判断できるが……これはマジで楽しんでる方だ。全く……俺と生きてるこの時代が楽しいとかマジか? なんか嬉しいじゃねぇの!!
「……そうか。キマリス、残念な事に二天龍及び地双龍に関する書物はかなり少なく、あのタンニーンですらドライグ達の情報を漏らしてはいない。ドラゴンのプライドってのがあるんだろうな。だから今から言う事は神器研究の第一人者としての考えだ……恐らくお前さんの亜種禁手は影の龍クロムが保有していた再生能力を引き出しているんだろう。『影を生み出す能力』、『存在の力を奪う能力』、そして『不死とも言える再生能力』の三つが過去、俺達が対峙した際に見た能力だ。歴代の影龍王でも最初の二つは発現していたが再生能力までは使用してなかった……つまりあの神が何らかの理由で切り離し、封印したと考えてもいいだろう。
「へぇ。じゃあ二天龍、ドライグやアルビオンも似たような事が起きるかもしれねぇのか……うわぁ、あの天才のルシファー様がさらに強くなるとかエグイな」
「まぁな。しかし最悪な事に当時の二天龍と正面から戦ってたのは聖書の神と四大魔王だ。俺も一応その場所に居たが……このまま二天龍と戦ったら俺達は滅亡するって気が付いてな。後方に引っ込んで逃げたからどんな能力を使ったか見当もつかん!」
そんな敵前逃亡しましたとドヤ顔で言われても困るんだが? いや組織の長として間違った事はしてないけど……良いのかそれで?
しっかし「影生成」「捕食」と続いて「再生」で良いんだよな……? 亜種禁手の名前も「再生」鎧だし多分間違ってはいないだろ。とりあえず相棒やユニアはこの事実に確実に気が付いてたな……それでも言わなかったのは自分の情報を漏らさないためか、俺に情報を与えて惑わせたくなかったか、あるいはめんどくさかったかのどれかだな。個人的には最後だと思うけどね!
「……なんか、話を聞いてると黒井ってやっぱりスゲェんだな。会長から聞いてたけど聖書の神って俺の神器や黒井の神滅具を生み出した存在なんだろ? そんな奴が封印した能力を引っ張って来るとか凄すぎるだろ……」
「あの神の事だ。封印の解除キーになにかしらの事を仕込んでいてもおかしくは無い。何か心当たりはねぇか?」
「あるわけねぇだろ……もし気付いていたらとうの昔に完全な再生能力を手に入れてるっての」
とか言ってみたがどう考えても夜空関連ですありがとうございました。いや、あの……助けられた時に一目惚れして昔っから夜空の事を考えてたからきっとそれしかねぇんだよな。つまり「愛」が解除キーですね! うわっ、ありえねぇ。きっとただの偶然だろ……初めて禁手に至った時からかなりの年数が経ってるけど未だに欠損以外で再生できる気配がしないし。
「情報が圧倒的に不足してるから想像でしか言えねぇが……お前さんは俺から見ても歴代の影龍王とは違う成長をしている。今代限りで何が起きるか分からねぇから一応注意だけしとけ」
「りょーかい。んじゃ、さっさとヴリトラ復活祭を始めようぜ? 相棒の事を深く理解できるのは俺しかいない。こっちはこっちのペースでやらせてもらうさ。だから今は悪神戦の事を考えようぜ? というよりさっさとヴリトラと会いたい」
「俺としては帰りたいけどな!」
「残念だがそれは無理だ。さてとまずは移動するか」
そんなこんなで匙君を引っ張りながら少し広めの部屋へと移動する。てっきりゲームやアニメでよくある拘束して埋め込むとか考えてたがどうやら違うようだ……アザゼルが言うにはこの部屋は訓練室になってるようで簡単には壊れない仕組みになってるらしい。なるほど、もし暴走しても力で抑え込めるようにって感じなのか。さて……既に逃げられないと判断したのか死んだような目になっている匙君だがどんな声を掛けようか? 頑張れとか死ぬなよ? う~ん……なんか俺らしくないからやめよう。
アザゼルに促されるまま、匙君は魔法陣の中心、俺とアザゼルは匙君と向かい合うように魔法陣の外に立つ。
「匙、キマリスにラインを繋げ」
「は、はい……」
匙君の神器、黒い龍脈から一本の線が伸びて俺の手――影龍王の手袋の宝玉と繋がる。さてと……俺の役目は眠っているであろうヴリトラの意識を表に引っ張ってくる事だが正直な所、さっきまでアザゼルと話していた内容のせいで既に帰りたい気分になってる。というよりも今すぐにでも神器の奥底に潜り込みたいし歴代の奴らを脅したい! でも対価を貰っちまったから断れねぇ! 畜生!! 仕方ねぇからさっさと終わらせて自分の特訓を始めるか!
アザゼルは何やらポイポチと魔法陣を操作すると三つの箱が匙君を囲むように現れた。透明な四角いキューブ、中が光っている事から黒い龍脈以外のヴリトラ系神器だろう。それが現れるのと同時に匙君の足元に展開されている魔法陣が輝き出し、神器が収められているキューブが開き――匙君に吸収されるように消えていく。さて……ここからは俺の仕事か。
「相棒」
『何時でも良いぜ! 久しぶりに黒蛇ちゃんに会いに行くとすっかぁ!!』
目を閉じ、意識を神器に潜り込ませると真っ黒の世界が見える。普段神器の中に潜りこんだ時に見るようなものではなく無機質であり、異質な空間だ。俺は相棒の意識と共に深く、深くと潜り込んでいくと何者かの意識を感じ取った……バラバラの人形を無理やり繋ぎ止めたような不気味さ、ドラゴン特有の威厳に満ちた声色、深淵の底から俺達を見つめる眼がそこにはあった。
『久しいじゃねぇの……! なぁ、ヴリトラッ!!』
『我を呼ぶのは誰だ……その声はクロムか……? 何故我の意識がある……?』
『物好きな奴がいてなぁ、そいつが散らばったテメェの魂、神器を一人の人間に埋め込んだわけよ。ゼハハハハハッ! いくら眠っていたとはいえ感じたはずだぜぇ? 赤蜥蜴――ドライグの存在を! 良いからさっさと起きてこいや? 俺様もドライグもアルビオンもタンニーンも居るぜ! 俺様達がこうして手を取り合って神とフェンリルと殺し合いが始まるからよぉ! テメェも昔みてぇに暴れようぜ!』
『……そうか、懐かしいはずだ……ドライグと接触したか……クロム、この宿主に伝えろ……弱すぎるとな』
『ゼハハハハハ!! ちゃんと伝えてやるぜ? んじゃ、アバヨ!』
何やらドラゴン同士の会話が終わったようなので神器の奥底から戻ると妙な事が起き始めた。神器を埋め込まれた匙君の体から黒い炎が漏れ出してこの部屋全体を覆い、姿を龍へと変化させた。なるほど……ヴリトラが弱すぎるって言った理由はこれか。複数の神器に魂を封じられていたものを一つに結合、相棒とドライグと接触した事で眠っていたヴリトラの意識が目覚めた……ここまでは良い! 問題は完全なヴリトラの力を匙君自身が抑えきれないってところだ……やべぇ、どうしよう? このまま放って置くと確実に死ぬし生徒会長やシトリー眷属の奴らも匙君を死なせたら五月蠅いだろうなぁ。仕方ねぇからやるか。一応クラスメートだし同じ邪龍仲間だしな!
「キマリス!」
「ヴリトラの意識は戻った。あとの問題は匙君がヴリトラの力を抑え込めるかどうかだ……このまま行くと確実に匙君の体と魂を生贄にヴリトラが復活するぞ」
「天龍と双龍の力で一気に活性化か! 仕方ねぇ! キマリス! 死なねぇ程度に気絶させろ! 本体の意識さえ失えばなんとかなるはずだ!」
「だろうな……しっかし神とフェンリルと戦う前にドラゴンと戦う事になるとはなぁ!」
即座に禁手化、影龍王の再生鎧を纏う。生前の相棒が保有していたと思われる不死身の再生能力……その一部がこの鎧に宿っている。恐らく結構前に夜空から言われた欠損無しの再生も鍛え上げれば可能になるかもしれないな……ありがとよアザゼル! たとえその考えが間違ってたとしてもさらに強くなる道標にはなった! 歴代の思念を染める、再生能力の強化、北欧の魔術の習得と数えるのは簡単だがかなり難しいかもしれねぇな……でもやるけど! 昔から困難な道しか進んでこなかったんだし今更増えても問題ねぇんだよ!
そんな大事な事だけど今は置いておいて黒炎の龍となった匙君を助けようか。黒炎が蛇のように長く、そして龍を模した姿になってるからこれがヴリトラの姿なんだろう……確かに蛇だな! 相棒が黒蛇ちゃんと呼ぶ理由も分かるわ。さて問題は殺さないよう戦わないとダメって事だが……まぁ、やるだけやってみるか!
「匙君? 先に言っておくけど死ぬなよ?」
返答なんてものはあるはずもなく代わりに黒炎が飛んでくる。影人形を生み出してラッシュタイムを放つと威力が高くないのか即座に吹き飛ばされた……そう言えばヴリトラはパワーよりもテクニック、搦め手を得意としている邪龍だったっけ? 下手にあの炎に触れるとヤバそうだ。
『宿主様! あの黒炎にあまり触れねぇ方が良い! 全盛期のヴリトラよりもかなりパワーダウンしてるが激痛を味わう事になるぜ! なんせ呪いの炎だからな!』
「そりゃまた怖い怖い――だけど俺も邪龍だぜ? そんな炎にビビってられるかよ」
『それでこそ俺様の宿主様よぉ! ゼハハハハハハ!』
迫りくる呪いの炎を影人形で消し飛ばしながら匙君に接近する。どうやら相棒の言う通り、あの炎に触れれば確実に呪われるらしい……さっきから影人形の体に纏わりついて力を奪い取ってるしな。恐らくこの力はヴリトラ系神器の一つ、
そんな事を思いながら黒炎の体となった匙君を殴る――すると俺の腕に黒炎が纏わりついて激痛と力が抜ける感覚を同時に味合わせてきた。なるほど……今まで俺が相手にしてきたことはこんな感じなのか! 確かにこれは恐怖もんだな! でもヴリトラ……一つだけ言わせろ!
「――力を奪うのがお前だけだと思うな」
『ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!!』
全身から無限と表現できるほどの影を生み出してこの部屋全体を包み込む。どこからか「俺まで巻き添えにする気か!?」というおっさんの声が聞こえた気がしたが気のせいだろう……うん! 気のせい!
放たれる黒炎を影で覆い無力化しながら目の前の匙君を影で締め上げる。「捕食」と称される影に触れた存在の力を奪う能力を発動してヴリトラの「力」を根こそぎ奪い取る……今は暴走状態だからおおもとの力が無くなれば大人しくなるはずだ。その考えが当たっていたのか巨大な黒炎の龍の姿が徐々に小さくなっていき……普通の匙君に戻りました! 勿論死んでません!! ちゃんと生きてます! 生きてるはず!! きっと!
「……く、黒井……?」
おぉ! 生きてた! 流石俺!
「おう。ちゃんと意識あるか?」
「……なん、とかな……いきなり何かが体の奥から出るような、感覚になって……それから、それから……」
「無理すんな。今は休んどけ。ヴリトラの力に翻弄されて暴走したんだ……かなり疲れてるはずだ。おいアザゼル、あと任せた」
「あいよ。しっかしキマリス! 俺まで巻き込もうとしてやがったなこの野郎! とりあえずヴリトラの力を完全とまではいかなくとも暴走しない程度には扱えるようにしないとダメか……もし暴走してもイッセーとキマリスが居るから抑えられるとは思うが戦闘中にそんな事はしてられん。当日までには鍛え上げねぇとダメだな……まぁ良い、キマリス、まずはお疲れさん」
「別に愉しかったから良いさ。あっ! 匙君? もし完全に操れるようになったら殺し合おうぜ!」
「こ、ことわ、る……げふぅ」
倒れた匙君をアザゼルに任せて俺は自宅にある自分の部屋へと転移する。目的は勿論、アザゼルから受け取ったこの書物を読むためだ……黄昏の日、悪神ロキが襲撃してくる日までに初歩的な防御魔法ぐらいは覚えておきたい。欲を言えばそれを影人形や影人形融合に使用しても問題ないぐらいまで研磨したいがな。
「おかえり」
「ただいま。今から勉強すっからさっさとどっか行け」
「ヤダ。ほら、早く膝枕してよ? それしながらでも北欧の魔法くらいは覚えられるでしょ?」
「残念な事に俺は白い龍を宿した天才系イケメンじゃないんでな……はいはい、やれば良いんだろ」
先に侵入していた平家に急かされてベッドに座ると俺の膝に頭を乗せてくる。猫のように丸くなりながらスマホでゲームをする姿は何と言うか……あの黒猫ちゃんを敵視しているようにも見える。流石依存率ナンバーワン! 一歩間違えばヤンデレですね分かります。
軽く腹を叩かれながらアザゼルから貰った書物に目を通していく。流石に一発で書かれている内容を理解できそうには無いが読み解いていけば何とかなりそうだ……精霊術式の応用で何とかできるか? 取り合えず当面の目的は俺の防御力向上だから一つでも覚えたらそれを高めて行けば良いだけだな。問題は影人形に使用できるレベルまで到達できるかどうかだが……まぁ、何とかなるだろ。
「――相棒」
『ゼハハハハ。俺様の再生能力の事だろぉ? 事実だ。生前の俺様はいかなるダメージも無意味になる再生能力を有していた! 体が吹き飛ぼうが魂が消えかけようがなにも無かったかのように元に戻る不死身ボディだったのよ! それをあの聖書の神は奪い取りやがった!! 影生成と捕食の能力だけを残してな!』
「だけど俺の亜種禁手で再び発現したと……」
『あぁ。俺様が封じられている影龍王の手袋の奥底に眠ってるはずだ! 今度からはそっち方面で調べるのも良いかもしれねぇぜ? ついでに言っておくが別に騙してたわけじゃねぇ! 言うのがめんどくさかっただけよ!』
「知ってる。別に隠してたから怒るとかするわけねぇだろ? 何年一緒に居ると思ってんだよ……でも、相棒の能力さえ完全に発動出来れば――」
『――あぁ! 宿主様は名実ともに最強で最悪の影龍王と成る! ゼハハハハハハッ! 俺様もヴリトラが目覚めて機嫌が良いからなぁ! さらに教えておこうか! 俺様とユニアが封じられることになった戦いだが――手を抜いていたぜ? 信じる信じないは自由だが言いたい事は分かるよなぁ?』
つまりまだ隠している能力があるって事だろ? うわぁ、全盛期の相棒ってどんだけ化け物だったんだよ……そしてそれを倒して封じた聖書の神の化け物っぷりが今になって実感できるんだが? マジでおかしいだろ! 全盛期地双龍を相手にした後で二天龍と戦ったんだろ? しかも死んだとはいえ魂を神器に封印する事に成功してるから本当に化け物だな……そしてそれに勝てる存在であるオーフィスとかはもっと化け物だな!
そんな事を思いながら滅多にする事のない真面目な勉強を始める。ヴァーリもアザゼルから俺と同じように書物を受け取ったという事は悪神に対抗するために魔法を覚えようとしているんだろう。それが分かってるから負けられねぇって思いもあるし自分だけ先に進むんじゃねぇって嫉妬心もある! だから一つでも多く防御魔法を覚えてドヤ顔したい! すっげぇしたい! 悪神とフェンリルとの戦いに乱入してくるであろう夜空を驚かせたい! くくく、よっしゃ! やる気出てきたぁ!!
しかし平家……構ってもらえないからと言ってノワール君のノワール君を触るのはやめてくれません?
観覧ありがとうございました!