ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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4話

「なぁ平家」

 

「今イベント中で忙しい」

 

「どうせ無双してんだろ? 聞きたいこ――」

 

「赤龍帝は死んだよ。いきなり悲痛な波動が飛んできたからそれは間違いない」

 

 

 時刻は放課後、場所は心霊探索同好会の部室と勝手に認定している保健室に俺達は集まっていた。

 

 このお嬢様はベッドに座っている俺の膝を枕にして横になり、スマホでハマっているアプリゲームをやってる。何が忙しいだよ……廃課金してるから無双できるくせに忙しいとか言ってんじゃねぇ。それは置いておいて先ほどの平家の言葉を信じるなら赤龍帝、つまり兵藤一誠は既に死んでいるという事になる。覚妖怪故に色んな感情や心の声を聞いてしまう平家がつまらない嘘を言うわけもないが……それだとこの数日間がおかしなことになるが特に驚くことも無い――多分、悪魔になったんだろうな。

 

 

「多分ね。リアス・グレモリー先輩が眷属にでもしたんじゃない? その割には完全に接触とかしてないみたいだけど」

 

「そりゃそうだ。赤龍帝だぞ? 雑に扱えば爆発しかねない危険物とそう簡単に接触できるかっての。大方、悪魔にして異常が無いか確かめるために泳がせてるんだろうぜ……本人は環境の変化に戸惑ってるみてぇだがな」

 

 

 そう、平家から死んだと聞かされた兵藤一誠は今も生きている。定番ネタの現在幽霊ですと言うオチでも無ければ別の誰かが殺されたというわけでもない。体に大きな怪我も一つ無い状態でこの数日間学園に通ってきている。恐らくデートしていた堕天使に殺されたか致命傷を負った所を監視役の人物に助け出されたんだろう。そして傷を癒すために悪魔の駒(イーヴィル・ピース)で転生悪魔になった……と言うのがこの現象の答えだろうな。てかそれ以外にあり得ない。

 

 

「昔の恵がまさにそれだった。あの時はお腹が痛くなるぐらいに面白かった」

 

「殆ど分からないはずだった英語とかがいきなり理解できるようになったんだもんなぁ。あの時の水無瀬は確かに面白かったが今はそれとは関係ないから話を戻すぞ。赤龍帝が悪魔陣営に来たという事は他勢力からすれば只事じゃないだろう……赤龍帝と影龍王、二天龍と地双龍の片割れが同時に所属してるんだ。いつ戦争が起きてもおかしくねぇから強引にでも崩そうとしてくるだろうぜ」

 

「当たり前だよ。二天龍や地双龍、先の大戦のせいで三大勢力がボロボロで現在立て直してる最中だもん、一つの勢力だけ核爆弾を複数持ってたら危険視するに決まってる」

 

「そう考えるとあの規格外が良い抑止力になってんだなぁ。他勢力も下手な事すれば夜空の標的にされかねないと理解してるんだろうし……本人はただ遊んでるだけだが」

 

「無自覚な悪意、子供が起こす災害」

 

『むしろそれは俺様が得意としている事なんだがなぁ!! しっかしあの赤蜥蜴、これだけしても宿主に気づかれんとはお笑いものだなぁ! 長い歴史の中で赤龍帝が悪魔になったこと自体が異常だってのによぉ! ゼハハハハ! それは俺様も同じことだがな! いったいどの駒を使ったのか気になってくるなぁ――おい宿主様、あの小娘に会いに言って聞いてこようぜ』

 

 

 なんで態々あの人に会いに行かないといけないんだよ……しかし相棒の疑問は俺も同じだ。二天龍が宿る神器を持つあいつを悪魔にできたという事は複数の駒を消費したに違いない。神滅具持ちを駒一つ消費で転生出来るほど世の中甘くはないはずだしなぁ、あの人は確か既に女王を使ってるはずだからそれ以外……となると。

 

 

「兵士の駒の可能性が高いね」

 

「だな。あの人の女王は冥界でも有名だしそれ以外の駒もこの学園では色々と有名だから残ってるのはそれしか考えられねぇ……臨機応変に対応できる赤龍帝とか悪夢以外の何物でもねぇぞおい」

 

昇格(プロモーション)出来るのが兵士の特権だもんね。対抗するためにノワールも眷属増やせば?」

 

「気が向いたらな」

 

 

 現状、空いている駒は女王、騎士、僧侶、兵士だけどなんて言えばいいのか分からないがピンと来る奴がいないんだよ。四季音も平家も水無瀬も何か感じる事があったから眷属にしたしこの感覚が来ない内は増やすことは無いな。それに下手に変なのを増やしてこいつの負担になるような事になったら本末転倒も良い所だしその辺りも考慮しねぇと……女王候補は既にいるが埋まるのは何時になる事やら。

 

 何故か平家から哀れみの視線で見られてるがお前、俺の心読んでる上にその相手知ってるだろ。だからその視線はやめなさい……断るなし。そんなコントのような事をしながらいつものように自転車の荷台に平家を乗せて家へと帰る途中、ノワールが眷属にした人ならどんなのであれ我慢できると平家が若干嬉しそうな表情で言ってきた。恐らくさっき思った事を読み取ったんだろう……それじゃあお言葉に甘えてピンときた奴を眷属にするかね。

 

 帰宅後、俺達は各々好きな事をしていたが事件は日が落ちてから起きた。

 

 

「はぁ? アイスぅ?」

 

「うんぅ~あいすたべたいからのわーるかってきてぇ~ひっく」

 

 

 水無瀬が晩飯を作っている間、暇だったから俺、四季音、平家の三人で一位がビリに命令できる権利を賭けてババ抜きしていた。命令と言ってもエロ系と本人が嫌がるようなことは無しという健全な賭け事だったが……ムカつくことに俺がビリ、四季音が一位で平家が二位という結果になった。途中から何か変だとは思ってはいたがまさかコイツら結託してやがったな!? 通りで四季音のカードを引く手つきに迷いがなくておかしいと思ってたんだよ! 恐らく平家が仕草などで四季音にカードの配置を教えていたんだろう……なんて無駄な技術を持ってんだ。

 

 隣にいる平家の顔を見るとその顔は笑顔だ。してやったりと言いたそうな顔だ、くそったれぇ!!

 

 

「弱いのが悪いんでしょ? ほらさっさとアイス買ってきなよ」

 

「のわーるもばかだなぁ~さおりんあいてにげーむとかむりげぇでしょぉ~にししぃ、わたしちょこばにらでよろしくぅ」

 

「抹茶味よろしく」

 

「……しょうがねぇな。水無瀬、お前は何かリクエストあるか?」

 

「私ですか? そうですねぇ……じゃりじゃり君をお願いします」

 

「りょーかい、なるべく早く帰ってくるが先に飯食っててもいいぞ」

 

 

 確かに夜空と口癖のように弱い奴、負ける奴が悪い的な事を言ってはいるがまさか自分が言われる立場になるとは思わなかった……! 慢心してた俺のミスかぁ、夜空に知られたら爆笑されること間違いなしだが約束は約束だ。コンビニでアイス買ってくるとしよう。

 

 着替えて財布をポケットにしまってから家を出る。辺りは既に暗いため悪魔としての血が地味に騒ぎ出していた……きっと赤龍帝も辺りから聞こえてくる声とか身体能力が向上していることに驚いているんだろうなぁ。可哀想に、早く自分の身に起きていることを主に教えてもらえると良いな。そんな事を思いながら近場のコンビニに入り、リクエストされたアイスをカゴに入れて会計を済ませる。後は帰るだけなんだが――遭遇しちまった上に思いっきり堕天使に襲われてるじゃねぇか……いや、人払いの結界の存在を感じちまったら気づくなっていうのも無理か。

 

 

「ひ、人ぉ!? いや今はそれどころじゃねぇ!? あぶねぇから早く逃げろってか一緒に逃げるぞ!?」

 

「むっ、人払いの結界を張っていたはずだが……まぁいい、恨むのであれば自分の不運を呪うがいい」

 

 

 日が落ち、暗黒の空から降りてきたのは漆黒の翼を生やした一人の男。高そうなスーツを着て殺す人数が増えるとは思わなかったなど呟いてすっげぇ余裕そうなんだけど――ぶっちゃけ下級堕天使だよな? えっ? マジで俺を殺せると思ってんの? すっげぇな今の堕天使、自分の実力に自信持ち過ぎだろ……と冗談は置いておいて慢心して光を浴びた結果、死ぬとか普通にあり得るからさっさと殺して帰ろう。買ったアイスが溶けるし。

 

 

「へぇ、俺を殺すんだ。あっ、これ持ってて」

 

「お、おう……じゃなくて逃げるんだってば!? あいつ飛ぶし羽生えてるし槍っぽいの投げてきて普通じゃないんだって!! てかお前別のクラスの黒井!? 何で落ち着いてるんだよ!?」

 

「慣れてるし」

 

「ふむ……むっ!? その顔……! まさか影龍王か!?」

 

「大正解。初めましてだね堕天使君? こんないい夜に出会えるなんて不運だとは思わないか」

 

「……ちぃ! 此処で影龍王と出会うとは運が無かったのはこちらの方か! はぐれ! 命拾いしたな! その男に感謝――ぐぅおぉぉ!?!?」

 

 

 翼を開き、空へ逃げようとしている堕天使の背後に影人形(シャドール)を向かわせて立派な翼を引き千切る。何逃げようとしてんの? あんだけ俺を殺す気満々だったのに逃げるとか面白くねぇんだよ。

 

 自慢の翼を引き千切られた堕天使は地面に落ちて激しい痛みに襲われているようだ。そりゃ腕とかを引き千切られるのと同じだもんなぁ――罪悪感とか全然ないけど。堕天使が悪魔を殺すように悪魔もまたそれと同じ、戦争にならない程度にお互いの勢力を削りあう。それが今の三大勢力の常識みたいなもんだろ? 天界も悪魔祓い(エクソシスト)を使って悪魔を呼び出して契約しようとしてる人間を殺したりしてるし、赤龍帝だって堕天使に殺された……んだよな? だから罪悪感なんて一つも感じることも無い。それにこっちだって光浴びたら死にかねないし逃げられて援軍呼ばれるとちょっとめんどくさい、最悪夜空が面白そうとか言って乱入してくる……つまり此処で死んでくれないと色んな人が困るんでさっさと死ね。困るのは俺じゃなくて上の方だけど。

 

 

「き、きさまぁ! 私に手を出せば上の者達が黙っては、ひぃぃ!? う、うでがぁぁぁ!?!?」

 

「だろうね。でも先に悪魔の領地に入ってきたのはそっちで喧嘩を売ってきたのもそっちだ。俺個人に害は無くても同胞に手を出されたら見過ごせないだろ悪魔的に。あと付け加えるなら夜空に知られて遊び(襲撃)に来られて困るのはそっちだと思うんだが……あいつの破天荒と言うか自由っぷりは堕天使陣営も理解してると俺は信じてる」

 

 

 光を放たれない様に影人形の両腕を鋭利なものに変化させて堕天使の両腕を切断。生み出した影人形は大きな一つ目で地面に転がっているゴミ(堕天使)を見下ろしている。その目に感情は無くただ俺の命令のみに従う機械的なものを感じさせていることが相手にとってさらに恐怖を感じる要素になってるみたいだ。うん……こいつ程度なら神器を使う必要もねぇな、霊操(れいそう)で作った影人形だけで十分だ。

 

 

「……お、お前、なんなん、だよ」

 

「後でお前の主に教えてもらえ。それじゃあ堕天使――恨むのなら自分の不運を呪えよ?」

 

「た、たすけ、いやぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 

 先ほどの堕天使の言葉をそのまま言い、影人形の両腕を元に戻して地面に横たわる堕天使をひたすら殴る。物凄いラッシュのせいか血が飛び、何かが壊れていく音がするも止めることは無い。ただひたすら拳の雨を叩き込んで潰していく……そして完成したのが元が人の姿をしていたとは思えないペースト状のなにか。ふぅ、アイス溶けてねぇよな? もし溶けてたらまた買い直しだしあまりあいつらを待たせたくもねぇが溶ける事は確定か。流石にこのまま放ってはおけねぇし……これぐらいはしても許されるだろ。

 

 影人形を消して赤龍帝に向かい合うと自分の目の前で何が起きているのか理解しようとしているような表情をしていた。だろうなぁ……日常から非日常になったんだから無理はない。だからと言って同情もしないけどな。

 

 

「お前の家どっち?」

 

「……え?」

 

「だからお前の家どっちだって聞いてるんだが? 流石に帰り道、またあんなのに襲われたくないだろ? 送ってやるから教えろ。先に言っておくがあんなこと(惨殺)をするのはさっきのような奴だけでお前の家族とかには手は出さねぇよ。信用出来ねぇだろうが今はしておけ」

 

「……わ、分かった……うぇ、うぇぇぇ」

 

「ついでにあれは見ないことを勧めるぞ。美味しい晩飯食いたいだろ?」

 

 

 今まで普通の生活をしてた人間がいきなり異形に襲われて挙句、人がペースト状になった姿を目撃するとか軽くトラウマになりかねん。それをやったのは半分以上は俺だが反省はしていない。悪いのあっち、あの人の領地に入ってきた堕天使が全て悪い。

 

 残っていると事件になりかねないから魔力で吹き飛ばしてからアイスを返してもらい、軽く歩くこと十数分後に無事に赤龍帝のご自宅に到着。流石にこんな目にあって手ぶらなのは可哀想だったので買ったアイスの内、一個を渡して早く寝ろと言っておいた。なんか言いたい事が沢山あるがどれを言えばいいのか分からないような顔をしてたけどきっと明日にでもあの人が説明してくれるだろ。眷属にしたならそれぐらいはするはずだし堕天使に襲撃されたら泳がせているわけにもいかねぇだろうしなぁ。

 

 

「お疲れさま」

 

「ただいま。堕天使が表立って悪魔を殺しに出てくるとは思わなかった、リクエスト通りのアイス買ってきたぞ」

 

 

 あの後、時間の経過で溶けかけたアイスを此処とは別の地域、俺が治めている領地に転移してそこの路地裏に住んでるホームレスにプレゼントしてから別のコンビニで同じのを買ってきた。勿体なかったというのもあるがホームレスというのは他よりも情報には耳が早いから仲良くしておいても損はない――と夜空が言ってたから試している。その結果は……はぐれ悪魔絡みでお世話になることもあるという素晴らしい事になってるわけで案外バカにできない事を思い知らされた。あとすげぇ仲良くなった、あの人達ってホント知識の宝庫だわ。

 

 

「にへへぇ~ちゅめたいぃ~うまうまぁ」

 

「すいません。遅かったので私たちは先に食べてしまいました……はいどうぞ」

 

「別にいいよ。それと近々、大公から討伐依頼が来そうだ」

 

「――はぐれ悪魔が殺されている? なんか凄い事になってるね」

 

「あぁ。俺の領地に住んでるホームレスの一人が数日前、変な化け物の叫び声や争っている男の声を聞いたらしい。そんでそいつが気になってその場所に行くと映画のような大惨事になってたって話だ……恐らくどっかの馬鹿がはぐれ悪魔を殺したんだろうけど放っておくとヤバい事になりそうだから上に報告したら他の領地でも同じことが起きてるんだと」

 

「同一犯、という事ですね。住んでいる人達は大丈夫でしょうか……?」

 

「俺が治めてる領地は影龍王の名がデカすぎて基本安全だから問題ないとは思うが……もし手を出されたら殺すよ。あの人達、結構いい人ばかりで面白いし」

 

「その代わり心の中は下種だけど。前に会った時、心の中で私の下着何色だろうとか思ってた」

 

「それは仕方ないだろ」

 

 

 お前みたいなアイドル級の容姿を持つ奴がやってきたらそりゃ考えるだろ。男の性だから見逃してやれよ……ついでに言うと俺と一緒の時しか会ってないから襲われることも無い上、もし襲われても簡単に殺害できるぐらいの戦闘力持ってんだろうが。ただし水無瀬は持ち前の不幸でホームレスの方々からは大天使扱いとなっています。いやぁ、サービスシーンを見せ続けたらそりゃそうなるわ。でも悪魔が大天使とかちょっと何言ってるか分かんねぇけど。

 

 

「とうばつかぁ~ねぇねぇのわーるぅ、それきたらわたしにはたからせてぇ~ひっく、さいきんうんどうしてないからあばれたいんだよねぇ~」

 

「別にいいぞ。その代わりちゃんと働けよ?」

 

「わかってるよぉ~おにさんうそつかないぃ」

 

 

 態度的に全然信用できないが戦闘時においてこいつほど信頼できる奴はいない。可哀想に……はぐれを殺してたら鬼がやってくるとか普通に考えても絶対に思わないだろう。

 

 水無瀬が作った晩飯を食べ終えてから風呂に入る。その後は軽く神器の中に意識を落としてから眠りにつく……日課みたいなものだが相変わらず薄気味悪い奴らだ。声をかけても返事なんてしないし虚ろな目だし何を考えてるのかすら分からない。これが歴代影龍王というんだから驚きだ――これ全部相棒が心砕いた奴らなんだよなぁ。よく生きてるな俺。

 

 そしていつもの朝がやってきていつも通りに水無瀬が作った朝食を食べる。平家は今日は引きこもりデー開催なうとか言って部屋から出てくる気配はない。大方ゲームを徹夜でやってるんだろう……ダメ妖怪め。今度月の課金額を増やす代わりに登校しろとか言ってみるか? いや、悩んだ挙句引きこもりを選ぶな。なんてめんどくさい引きこもりなんだろうか……俺も似たような性格してるけど。

 

 

「黒井君、少し良いかな?」

 

 

 時間は進んで放課後、特にこれと言った出来事もなく淡々と授業を受けてようやく帰れると思った矢先にある男子生徒が話しかけてきた。金髪に目元にほくろ、そしてイケメンという世の男が羨むような容姿を持っている男だが……ほらぁ、別のクラスであるこいつがやってきた瞬間に女子たちが騒ぎ出したよ。すげぇなイケメン効果、俺にも分けてほしい。

 

 

「部長からオカルト研究部と心霊探索同好会が合同に行うレクについてお話があるみたいなんだけど来てもらっても良いかな?」

 

 

 残念な事にそんなことを予定してはいないが呼び出しの口実としては十分だな。大方、昨日の堕天使の件を話したいんだろう……あの人直々だと目立つから代わりにこいつが来たって所か。こんな俺にも配慮してくれるなんてありがたいね。

 

 

「あぁ、そういえばそろそろだったな。俺達みたいな部でもない同好会と遊んでくれるなんてグレモリー先輩は心が広いよ」

 

「あはは……オカルトとホラーを探したり研究したりするから部長も面白いと思ったんじゃないかな。それじゃあ案内するよ」

 

 

 周りはともかく、生徒会所属でシトリー眷属の方々は何かを察した様子で俺を見ていた。うん、だったら少し助けてほしいんだけど良いかな……まぁ、無理だよな。でもできれば周りの女子の嫉妬っぽい視線を如何にかしてほしい、なんで男相手に嫉妬の視線を向けてんだよこいつら?

 

 イケメンに案内される事数分、駒王学園の外れにある旧校舎でオカルト研究部の部室に到着。案内してくれたイケメンが扉をノックすると中からどうぞとの声が聞こえる。声は予想通りあの人だ……そのまま扉が開かれ中に入ると数人の男女がソファーに座っていた――おぉ、赤龍帝もいるってことはちゃんと説明を受けたって事か。

 

 

「突然呼び出してごめんなさい。迷惑じゃなかったかしら?」

 

「数日前に生徒会長にも呼び出されて同じ言葉を言われましたけど迷惑じゃないですよ。座っても?」

 

「えぇ。朱乃、彼に紅茶をお願い」

 

 

 ソファーに座り、目の前の紅の髪を持つ美女――リアス・グレモリーの傍らに立っていた人が紅茶を淹れてくれた。なんという好待遇、駒王学園男子生徒が見れば嫉妬の涙を流すに違いない。なんせ目の前の二人ってこの学園ではかなり有名だしなぁ。容姿は素晴らしいに加えて巨乳、うんかなり人気が出るわ。普通なら男限定と言ってもいいのに女子からも人気があるとか流石としか言えない。そして紅茶が美味い。

 

 

「先日は私の眷属の危機を助けてもらった事、この場を借りてお礼を言わせてもらうわ」

 

「パシリにされた帰りに偶然見つけただけですけどね。襲ってきた堕天使はペースト状にして吹き飛ばしましたんで問題ないですよ」

 

「パ、パシリ……コホン。それでも危機を救ってくれたことには変わりはないわ。この子は私の眷属になって日がまだ浅くて悪魔の事をまだおぼろげにしか理解できていないの。私の不注意でもあるけれど失ってしまう危機から救ってくれたんだからお礼はしないとグレモリー家に傷が付いてしまうわ」

 

「生徒会長も同じことを言ってましたけどただの混血悪魔にお礼を言わないだけで家に傷が付くわけないでしょう」

 

「キマリス家次期当主、私と同じ王、そして影龍王。それだけで十分な理由になると思うのだけれど?」

 

「半分以上は相棒のおかげで俺は普通の混血悪魔ですよ。ただそのご厚意は素直に受け取っておきます……それからどうやら体調不良とかにはなってないようだな。流石にあんな惨劇を見せちまったから一割程度は罪悪感を感じてたが問題ないようで安心だよ」

 

 

 何が何だか分からないという表情の赤龍帝に話しかけるとハッとした顔になった。グレモリー先輩から先ほど悪魔の説明をしたばかりと聞かされて正式にオカルト研究部の部員、つまりグレモリー眷属の仲間入りを果たしたそうだ。

 

 

「えっと、昨日はありがとな……てか黒井って偉いのか? なんかさっき王とか聞こえたんだが……?」

 

「えぇ。彼は私と同じ王の一人よ。この学園には……普通の生活を楽しむために通っているんだったかしら?」

 

「そんな所です。あっ、だからって言って敬語とかやめてくれよ? 同年代、それもお前からそんな態度を取られたら周りが誤解しかねないし。普通に砕けた態度でいいよ」

 

「そ、そっか……と言うより部長と同じ王!? という事は眷属持ってるのか!? ハーレムか!? ハーレムなのか!? 顔も良いのにハーレムとか羨ましいんだよこの野郎!!」

 

「何でハーレムに拘ってんだ? 一応自己紹介するけどノワール・キマリス。黒井零樹は通うための偽名、眷属は心霊探索同好会所属の二名と実家で働いてる奴が一人。生徒会長にも言いましたけど後程、改めて紹介させていただきます」

 

「楽しみにしているわ。ならその時は本当にレクでもしようかしら? ソーナの所も一緒に集まってすれば結構面白いと思うのだけど?」

 

「周りから白い目で見られるので勘弁してください」

 

 

 近くでドジ属性持ち女教師と一年生の幻のお姫様が眷属だとぉっ! と血涙を流してる赤龍帝は放っておくとして……魔王の妹であるお二人と一緒にレクなんてしたら冥界にいる他の上級悪魔から何を言われるか分からんな。だからこの人は苦手と言うか……掴み所がないというか、つまりは苦手なんだ。多分あまり話したことがない上、俺がコミュ障なだけだとは思うけども。ついでに言うとグレモリー家は眷属に並々ならぬ慈愛を持っていることで有名でこの人も例外ではない。だから俺を除いた此処にいるメンバーに手を出せばどうなるかなんて考えなくても分かる。

 

 触れただけで消滅する能力持ちと怖すぎるだろ。戦いたくもないわ。

 

 

「さて、あまり長いをすると失礼なのでこの辺で退室させてもらいます。まぁ、あまり関わる機会は無いですが助言程度は出来ますので困ったことがあれば力は貸しますよ。俺自身、貴方と生徒会長と敵対するつもりは全然ないので」

 

「知っているわ。その時は影龍王の力を当てにさせてもらうつもりよ」

 

 

 全員に会釈をしてからオカルト研究部の部室を出る。嫌だねぇ、こう……探り合いと言うかなんというか。眷属全員が気を張っていつでも対処できますって態度が見え見えだったしさ。

 

 

『ゼハハハハ! あの程度ならば宿主様は余裕だろう。しかしあの赤蜥蜴……半覚醒状態か、完全覚醒はまだまだ先よのぉ』

 

「そうなのか?」

 

『恐らくは初めて神器を出現させるときの感情が不十分だったんだろう。今の状態では精々龍の手(トゥワイス・クリティカル)と同程度の出力しか出ねぇな。本来はそれをはるかに凌駕するほどの性能だってのによぉ』

 

「10秒ごとに自身の力を倍加、使い手次第で世界取れる能力だよな」

 

『ゼハハハハ! 俺様も負けてはいないけどなぁ!』

 

「そりゃそうだ」

 

 

 なんせ地双龍だからな。トンでも能力持ちじゃなかったらそうは呼ばれないだろう……その一端があの規格外なわけだがあれは元からおかしいしなぁ。

 

 

「――まっ、あの場では言わなかったけどようこそ、悪魔の世界へってな」

 

 

 とりあえず強くなったら殺し合いたいな、割とマジで。




影人形の出し方はスタンドっぽい感じがイメージしやすいです。
観覧ありがとうございました!

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