ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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50話

「ん~もっふもっふぅ~♪ ねぇねぇノワール!! こいつらすっげぇもふもふしてんだけど!」

 

「狼なんだから当たり前じゃね? てかお前……マジで何してんだよ?」

 

「はぁ? だからもふもふしてんじゃん。なに? フェンリルと殺し合いして頭がバカになった?」

 

「んなわけねぇだろ。つーか夜空、お前が今もふってるその狼共の飼い主様が何か言いたそうだぜ?」

 

 

 上空に佇む夜空と小型フェンリルから悪神へと視線を向ける。先ほどまで赤龍帝とヴァーリと殺し合いの末、攻撃を受けて若干ボロボロ状態の悪神は目の前の現実を受け入れられないようだ……当然だよなぁ! 自分がこの状況を打破するために呼び出した援軍に世界各地を遊び歩いている光龍妃――夜空がくっ付いてきたんだからよ。夜空、いや光龍妃の名を知っている奴だったら誰だって今の悪神のように唖然とするに違いない! なんせ俺の周りも絶句状態だしな!! ちなみに俺も若干引いてる。

 

 まぁ、そんなことは置いておいてだ……あの小型フェンリルはちょっとばかし気に入らねぇ。誰の許しを得て夜空にもふもふされてんだ? 俺だってなぁ! 夜空にくっ付いてスリスリとか脇ペロペロとかえっちぃ事とかしたい、すっげぇしたい! いや……逆にしてもらうというのもありだな! 兎に角、俺だってまだしていないのにあの二匹は狼という理由だけで夜空にもふもふしてもらえるとか羨まし、あぁ羨ましいんだよ!!! とりあえず殺そう。フェンリルよりも小型だしきっと殺せるだろ。そもそもこれは影龍王というかキマリス家次期当主として何が何でもやらねばならないことだろう。きっと、たぶん。とりあえず八つ当りじゃないのかと言いたそうな平家ちゃん? あとでもふもふしてやるから黙ってろ。

 

 

「……こ、光龍妃、だと!? 貴様! 何故我の(しもべ)と共にいる!! スコル! ハティ! 何故それを噛み殺さない!!」

 

 

 我に返った悪神が小型フェンリルに向かって叫ぶが二匹の狼はどうしようという表情……と言っていいのか分からないがとりあえず困惑してるらしい。というよりさ……あの二匹、なんかビビッてねぇか?

 

 

『無駄ですよ。この二匹は夜空の威圧によって牙を抜かれた獣同然となっていますからね』

 

 

 悪神の問いに答えるように夜空が羽織るマントから声が響いた。なるほど……威圧したからビビッてるってわけか――マジで規格外だなおい。

 

 

「な、なに……! スペックは親には届かないとはいえ仮にもフェンリルの子供だぞ! それを、威圧しただと!!」

 

「相変わらず出鱈目なことしてんなぁ」

 

「だってさぁ! こっちはもふもふしたいだけだってのに牙見せつけてきて噛みつこうとしてきたんだよ? 噛まれたくねぇから牙へし折って上下関係叩き込んだらこうなった! だから私は悪くない!! てかよく見るとフェンリル死にそうじゃん! へぇ~倒したん?」

 

「穴におびき出して水攻めして出てきた所を捕まえて現在解体作業中だ。倒したかどうかって言われたら微妙だがな……んで? お前がここに来たってことは――殺し合いか?」

 

「――当然じゃん。何のためにここに来たと思ってんの?」

 

 

 周りにいる奴らが片膝をつく音が聞こえる。当然だ……呼吸すら困難になるほどの濃厚な殺意がこの場を支配したからな。この場で普段通りになってるのは慣れている俺とヴァーリ、四季音、獅子王ぐらいか……それ以外は大なり小なり体を震わせたりして夜空を見ているだけで動くことすら出来ていない。相変わらず出鱈目な殺気で惚れ惚れするなぁおい!!

 

 

「神とフェンリルとの大喧嘩! そんな面白いことが起きてるのに私が黙ってるわけねぇじゃん! しかも赤龍帝とヴァーリが、二天龍が共闘だよ? すっげぇ面白いじゃん! だから私が混ざってもなにも文句ないっしょ? そんなわけだからノワール! 殺ろ? もう身体が疼いてしょうがないんだよ!! ノワールが欲しくて欲しくてもうどうしようもないんだよ! あっ! ちなみに前は私が驚かされたけど今度はこっちが驚かせる番だからね! すっげぇ驚くよぉ?」

 

「そりゃ楽しみだ。てかそんなに混ざりたかったんならこっちに来ればよかっただろ? 天龍と双龍の共闘で神殺しも面白いと思うぜ? まぁ、俺としてはこれはこれで面白いから文句はねぇけどな……悪いがここからは俺は離脱させてもらうぞ。平家、犬月達の指揮を頼んだ」

 

「任された。ノワール、ちゃんと帰ってこないとダメだから。もふもふしてくれるんでしょ?」

 

「はいはい……ちゃんと帰ってきたらお前の体の隅々までもふってやるよ」

 

 

 影の翼を形成して夜空と向かい合うように空へと昇る。たくっ、水無瀬も橘も犬月も心配しすぎなんだよ……何度夜空と殺しあってると思ってんだ? この程度はお遊びの範疇なんだからそんな顔すんじゃねぇよ。あとすいませんが橘様、そんなえっちぃのは禁止ですと声を大にして言いたそうな笑顔はおやめください。怖いです。本当に怖いです。ま、まぁそんなことは後回しにして……なんか変な感じなんだよなぁ。夜空から感じる威圧感、龍のオーラが前までと地味に違うような気がする……規格外だから何が起きてても不思議じゃないがマジで何しやがったこいつ?

 

 

「夜空、場所変えるぞ。折角のお前との殺し合いに邪魔者がいるのは我慢ならねぇ」

 

「がってん! でもさぁ~せっかく二天龍と獅子王、酒呑童子がいるのにこのままってのも面白くないよねぇ? よぉ~し! ほら、解放してやっからあいつらと遊んできなよ。ついでに――」

 

『Luce Dragon Balance Breaker!!!』

 

「――あんたらの親、治してやっから」

 

 

 小型フェンリルから飛び上がるように空へジャンプした夜空は山吹色の鎧を身に纏った。その姿は何度も見てきた美しいとさえ表現できる全身鎧だが――ここで初めて夜空が言った驚かせるという言葉の意味を理解した。確かに姿は同じだ、しかしこれまでと比べてある一点だけ違いがある……オーラ、いや生命力と言える気が炎のように夜空の全身を包んでいる。仙術や気に疎い俺ですら異常と思えるほどの膨大な質量――あは、あははははは! 夜空! お前、お前! いったい何をしやがった!!

 

 俺の喜びに応えるように夜空は地上で捕獲されているフェンリルに向かって光を放つ。当然、解体作業中のデュランダルとイケメンメガネは距離を取って回避する。誰もがフェンリルが致命傷を負ったと思っただろう……しかし実際は違った。逆だ。()()したんだ……先ほどまで俺たちが与えていたダメージがまるで無かったかのように治りやがった。もっとも潰された目は治ってないから俺のような再生能力を与えるというモノじゃなさそうだが……マジかぁ!

 

 

「嘘だろ……! フェンリルの傷が……!」

 

「治った、ですって……! キマリス君!! 光龍妃はアーシアのような回復能力を持っていたの!?」

 

 

 地上から赤龍帝、グレモリー先輩の驚きの声が聞こえるが……そんなの決まってんだろ――

 

 

「――持ってなかったに決まってるだろ……! 回復すると言っても仙術で自分の体を治すだけ……光を放って他人を回復する能力を持ってるなんて今の今まで知らなかったっての! あ、あははははは!! 確かにこれは驚くわ! マジで驚いた!! おい夜空ぁ!! その鎧、前と違うだろ? 何しやがった?」

 

「――にひひ! 気づくなんて流石じゃん!! 何をしたって言われてもさぁ! 禁手が変化したって言うしかないんだよねぇ」

 

「……は?」

 

「だからぁ! 禁手が変化したんだってば! ノワールの影人形融合と同じようなモノを開発しようといろいろと試してたらさぁ! なんか知らないけど禁手が変化したんだよねぇ! ちなみに名前は――光龍妃(グリッター・オーバーコート)()生命鎧(ライフメイル)だよぉ! どうどう? おっどろいたぁ?」

 

 

 鎧のせいで顔は分からないがきっと満面の笑みなんだろうなぁ。全くよぉ! いろいろと規格外だなんだと思ってたがここまでとはな! まさか自分の禁手を変化……亜種化させるなんて普通じゃねぇだろ! 見ろよ真下の連中の顔を! 絶句してるぞ! 笑ってるのなんてヴァーリと獅子王と四季音ぐらいだぞ? マジでこの連中頭おかしいわ……俺も現在進行形で笑いが止まらないからお相子だけどな!

 

 しっかし光龍妃の生命鎧ねぇ……よくよく考えてみれば夜空は禁手に至るための苦労はしてはいない。なんせ初めて発動した時には既に至っていた……つまり神器自体に自分の経験を与えていないとも考えれるわけだ。恐らく俺が影人形融合を見せなければ禁手が亜種化しなかっただろうなぁ……なんせ夜空自身が今のままでいいとか考えてそうだしよ。とりあえずフェンリルの傷が癒えた所を見ると亜種化した影響で回復系の能力に目覚めたと考えていいか……ふざけんじゃねぇよ! ただでさえどうしようもねぇのに回復能力なんて手に入れやがって! どうやって倒すんだよ! いや倒すけど! 俺が倒して女王にするけど!!

 

 

「たくっ、本当にお前を相手にしてると面白いことしか起きねぇなぁ。驚いたかって? 驚いたに決まってんだろ! なんだよそれ? 禁手を亜種化させるなんざ驚かないわけねぇだろ! 最高だぜ夜空!! ますます好きになったわ! 俺もお前と同じようになぁ……お前が欲しくて欲しくてたまんねぇんだよ! さぁ、殺ろうぜ? 今回で決着がつくか、相打ちになるか、それとも飽きるか、ククク、あははははは!! どうでもいいよなぁそんなことは!! どうせ殺しあってれば楽しくなるんだしよ!」

 

「うんうん! どうせ殺り始めたら私もノワールも止まんないもんねぇ! それじゃあ! 私達の戦いの舞台へとご招待だぁ!!」

 

 

 夜空が片腕を上げると巨大な穴が出現した。この中に飛び込めば俺と夜空しかいない場所に出るだろう……つまりそこでお互いが満足するまで殺しあう事になるな。

 

 

「ま、待て!! まさか我を無視する気か! 影龍王! 貴様は我を止めるために戦っていたのではなかったのか!!」

 

「はぁ? 馬鹿じゃねぇの……お前と夜空、どっちが大切かなんて分りきってるだろ。フェンリルしか取柄のない神なんざ最初から興味ねぇんだよ」

 

「……っ! 影龍王ぅ!!!」

 

「そういうわけだ。平家、水無瀬、四季音、犬月、橘。俺がいなくても頑張れるって所をそいつら(悪神とフェンリル共)に見せてやれ。キマリス眷属は影龍王頼りじゃないと周りに見せつけろ」

 

 

 地上にいる眷属達に言い残して穴に飛び込む。勝手な王と罵るか恨むかは自由だが俺は夜空以外には興味ないんでな……嘘、冗談だ。俺がいなくてもお前らなら、周りにいるヴァーリや獅子王がいるなら何も問題ねぇよ。だから文句は帰ってからじっくりと聞いてやる……だから死ぬんじゃねぇぞ?

 

 そんなわけで穴に飛び込んだ俺達は誰もいない無人の空間に出た。なんというか、そのぉ、見覚えがある地形ですね! うん! そこの大穴とか前に四季音が全力の拳を放って作った大穴じゃありませんこと? いやぁ、どこだろうなぁここは! 俺様、見当がつかないぜ!

 

 

「とうちゃ~く! うんうん! やっぱり私達の戦いの舞台はここしかないっしょ!」

 

「お前なぁ……ここ最近、親父が此処の地形がヤバくなっていくところを見て白目になりつつあるんだぞ? 禿げたらどうしてくれんだ?」

 

「仙術で髪生やしてやるから安心してって言えばいい?」

 

「おっ、マジで? だったら禿げさせても安心だな」

 

 

 もっとも悪魔だから禿げになることはねぇけどな。なんせ自分の容姿を好きに変更できるし。

 

 

「まっ、親父が禿げようが俺は関係ねぇしさっさと始めるか。見てただろうがこっちは既に全力形態だ。生半可な光は効かねぇから覚悟しとけよ?」

 

「にひひ! そっちこそ私の新しい力を見て心が折れないでねぇ!」

 

「そんなもんで折れてたらここには立ってねぇよ」

 

「だよね!」

 

「あぁ。だから――死ねよ夜空ぁ!!」

 

「殺してやるよ! ノワールゥ!!」

 

 

 眼前に見えるのは極大な光の柱。数秒もかけずにここまでの光の柱を生み出すのは何度も見てきた。即座に影法師を生み出して迫りくる光の柱へラッシュタイムを放ち防ぎきる……前とは違い、今の俺は北欧の魔術を行使しているからこの程度の光なら簡単に防ぎきれるぜ!!

 

 

「あはははは! やっぱり硬くなってるぅ! いいよいいよぉ! そ~れそれそれぇ!!」

 

 

 山吹色のオーラを纏いながら夜空は縦横無尽に動き回り、光を生み出しては俺に放ってくる。それは極大の光で構成された柱ではなく、小さな弾丸……いや光の雨というべき大きさだ。一発でも被弾すれば第二第三と連続で被弾することは間違いねぇなこりゃぁ……!

 

 通常時、普通の禁手状態の俺なら防ぎきれないほどの量だが――影人形融合2状態なら話は別だ!!

 

 

「影法師ァ!!」

 

 

 自分と同じ姿をした影法師を数体生み出し、周囲全てにラッシュと放つ。お前(夜空)が雨を降らすなら俺は傘になってやる。お前が退屈なら俺が楽しませてやる。だから笑え! もっと、もっと、もっと楽しそうに笑え! そのためなら俺は貪欲なまでに強さを求めよう……お前の事が大好きだからなぁ!!

 

 

「ゼハハハハハハ!!」

 

「アハハハハハハ!!」

 

 

 周囲が光の雨が降り注いだ影響で見るも無残な後継へと変化していく中、俺と夜空は互いにぶつかり合う。黒のオーラと山吹色のオーラ、殆ど真逆とも言っていい色同士が冥界の上空で衝突を続けている。夜空が降らせた光の雨による被弾は影法師で防いでいるから俺はダメージはない……が夜空本人による蹴りのダメージは別だ! 十の防御魔術、影の膜で覆われた俺の拳をへし折るほどの威力だからな! マジで人間が出していい蹴りじゃねぇぞおい!!

 

 即座に片腕を切り落として再生。俺の気力が続くまで何度でも、何度でも再生してやらぁ! この程度じゃ俺の精神を壊すことは出来ねぇんだよ!!

 

 

「硬いぃ! あはははは! すっげぇ! なになに!? 北欧の魔術ってそんなこともできんの!」

 

「防御に特化してっからなぁ!! お前の蹴り程度なら何発でも受け止めれるぞ!!」

 

「言ったなぁ!! それじゃ~今度はおもいっきり行くよぉ!! ひぃ~さぁつ! ロリータキィック!!」

 

 

 体の一部、つまり夜空の足が光となった回し蹴りを拳で迎え撃つ。たったそれだけで離れているはずの地上が抉れるほどの衝撃……腕イテェ! てか全身鎧の半分を吹き飛ばすんじゃねぇよ! 鎧の下は全裸なんだよ! ノワール君のノワール君が見えちゃうからマジでやめろや!!

 

 そんな変な怒りを込めてがら空きとなった胴体に無事な腕で殴る。前までなら打撃を受けた周辺が吹き飛ぶ程度だったがどういうわけか鎧の前面が軽く吹き飛んでいる……俺の防御力が上がったせいか? いや、それにしてはこの強度はおかしい……あぁ、そうか! そういう事かぁ!!

 

 

「なんだなんだ? 亜種化したせいで鎧の強度が落ちてんのか?」

 

「いったいなぁもう!! うんそうだよ! なんか知んねぇけど鎧の強度がガタ落ちだよ! もう紙装甲だよ! 鎧の意味なしてねぇの! はい! 折れた骨修復完了!」

 

 

 腕で被弾個所をなぞるだけで何も無かったかのように元に戻られると何とも言えない敗北感になるな……どんだけ回復力あるんだよ? グレモリー先輩の所にいるシスターちゃん以上は確実にあるな。防御力が落ちたから楽になったとかそういうレベルじゃねぇ……! 確実に落とさねぇと即回復されてダメージが無かったことにされるってことか。あははははは! 本当に楽しいわ! 楽しすぎてイキそうだ!!

 

 

「自慢したいからぶっちゃけるとね! この光龍妃の再生鎧の能力は『生命力を回復する』だよ? 生命の根源、それが回復するんだからこの程度は簡単なんだよねぇ。だから私を倒したかったら覇龍以上の出力で来ないとダメだよ? そんな拳一発で落ちるわけねぇじゃん!」

 

「むしろそれで落ちたらこっちが驚きだ……生命力の回復か、なるほど。それを使ってフェンリルの傷を回復させたってことか。ただフェンリルの目が治ってなかった所を見ると回復には限度があるって感じか?」

 

「まぁね。流石にノワールみたいに再生させるほどの回復は……出来るけどやりたくないだけ。てか他人を回復させるなんて初めてやったからどこまでやればいいか分かんなかったのが本音ね! あぁ、でも確かなのは元から無かった部分はどうしようもねぇよ? う~ん、やる気無かったとはいえフェンリルの目も治しておけばよかったかなぁ? まっ、いっか!」

 

『ゼハハハハハハ! 生命力の回復と来たか! これは厄介だぜ宿主様! 人間の生命力ってのは高まると傷の治癒力が増したり体調がよくなったりしやがる! その逆もな! ユニアの宿主以外が持ってるなら高い回復要因で済むがその保有者が規格外なら話は別だぜぇ!』

 

「あぁ……こっちのダメージは無意味になるほどの回復力持ちの規格外とかどうしようもねぇな」

 

『元からスペックが規格外のユニアの宿主だ! 持久戦はこっちが不利になりやがった! でも、楽しいなぁ! ゼハハハハハハハハッ! こんなに楽しいのは久しぶりだぜぇ!! まさかユニアが持っていない能力を発現するとはなぁ! 歴代の光龍妃ですらなかったことだぜ!!』

 

 

 その言葉には同意だよ相棒! これだけ楽しい殺し合いは久しぶりだ!

 

 

「ん? これユニアが持ってたものじゃねぇの?」

 

『クロムの言う通り、私の能力ではありませんよ。そもそも私は攻撃しか出来ませんからね』

 

『ゼハハハハハ! 俺様が影を生み、全てを防ぐ盾となり、ユニアが光を生み、全てを滅ぼす矛となる。それが地双龍よ! 回復なんていう女らしい能力をユニアが持つわけねぇんだなぁ!』

 

『えぇ。そんなことをするよりも血を流しながら楽しんだ方が良いですし。しかしそう考えると今代の影龍王は別格ですね。まさかクロムの能力を一部分だけとはいえ引き出していますし……夜空にも期待したのですがまさか別のものが発現するとは思いませんでしたよ』

 

『俺様の宿主様だからなぁ! 特別に決まってんだろぉ! さて、ユニア――語らいは終わろうぜ? さっさと続きをしようじゃねぇのぉ!』

 

『クフフフフ、えぇ、そうですねクロム! これほど楽しい殺し合いは中々無いですから思う存分楽しみましょう! 夜空!』

 

「おっけ~!」

 

『宿主様!! 負けるわけにはいかねぇぜぇ!』

 

「当たり前だろ!!」

 

 

 無数の影法師を生み出し、夜空にラッシュタイムを叩き込むべく向かわせる。それを見た夜空は嬉しそうに光り輝く流星のように高速で移動し、迫りくる影法師を消滅させていく。俺の分身ともいえる影法師をいとも簡単に消滅させるほどの質量……いや光力はおっかねぇ! 消滅させられては生み出し、生み出されては消滅させられる。俺の体も夜空の蹴りや手刀、光で吹き飛んでは再生、夜空の方も普通なら死んでいるレベルの骨折でさえ即座に回復しやがる。マジでおっかねぇ。

 

 そんなことを何度も繰り返していると夜空が「ろり~たすーぱぁあたーっく!」という名前らしい技を放ってきたので影法師で応戦するが……なにこれ? 一瞬で夜空の周りに夜空と同じ姿をした光が生み出されて突進してきたんだけど? 恐らく俺が生み出す影人形や影法師を真似たものなんだろうけどさ……多いんだよ! たった一瞬で十数から数百の光人形(夜空ちゃん)が突進してくるとか怖すぎるわ!! 威力も地上に落ちた光人形のせいで大穴とか空いてるし。なんという物量攻め……誰だよ! 夜空にこんな技教えたのは!!

 

 

「あはははははは! もっともっと激しくいくよぉ!!」

 

「ドンドンきやがれ夜空ぁ!! この程度じゃフェンリルの方が怖かったぞ! 人間の力ってのはその程度か!? もっと本気出せやおらぁ!!」

 

「なにをぉ! そんじゃぁもっともっともっとぉ! テンション上げてくよぉ!!」

 

 

 オーラをまとった俺と夜空は正面からぶつかる。夜空の拳が俺の顔面を捉えると圧倒的な光力によって防御魔術、そして影の膜の上から俺の頭部を吹き飛ばす……だから、まだまだだって言ってんだろうがぁ!!

 

 即座に影を集めて再生、お返しに夜空の顔面を殴る。身に纏う炎のような生命力で殴った腕が焼けるが知ったことか……! 炎を突き抜け打撃を与えると前よりも強度が落ちた鎧では防ぎきれずに兜が崩壊し、鼻が折れたのか鼻血を出しながら俺を睨み付け――もう一度俺の顔面を殴ってきた。

 

 再生、回復、再生、回復。体が吹き飛ぼうが骨が折れようが知ったことかと俺と夜空は至近距離で殴り合う。痛みすら快楽に変換し、高笑いしながら殴り合う。既に周りは前以上に地形が変形しており、恐らくだがこの異常事態に他の悪魔達が遠くから見ているのだろう……だが知らねぇ! そんな観客の事より目の前の女が大切なんでな!!

 

 

「相変わらずしぶてぇなぁおい! いい加減俺に倒されろ!」

 

「ばっかじゃねぇの!! ノワールこそいい加減あきらめて私に敗北しなよ!」

 

「うるせぇ! テメェに負けるなんざ最強の影龍王として、いや俺が許さねぇんだよ!!」

 

「こっちもアンタに負けるなんて光龍妃として、ううん! 女として許せないんだぁ!!」

 

「死ねぇ!」

 

「死んじゃえぇっ!」

 

 

 お互いが放った拳同士がぶつかり、周囲が吹き飛ぶ。その衝撃で俺達は背後に飛ばされるが……まだ終わらない。終わらせない。折角、夜空の禁手が亜種化したんだ! この程度で終わらせてたまるかよぉ!!

 

 

「――夜空」

 

「――ノワール」

 

 

 目の前の(夜空)の目を見る。なんだよ……やっぱり相思相愛だな! 考えることが一緒とは嬉しいぜ!!

 

 

「我、目覚めるは――」

《始まるか》《あぁ、始まるな》

 

「我、目覚めるは――」

《始まってしまう》《始まりだよ》

 

 

 周囲に老若男女の声が響き渡る。気色悪い声色だがそれは歓喜の感情を込めて叫びだす。

 

 

「自らの大欲を神により封じられし地双龍なり――」

《闘争は終わらぬ!》《自らが滅ぶまでは決して!》

 

「自らの大欲を神により奪われし地双龍なり――」

《互いが満足するまでは決して終わらぬ》《それこそが彼女の望みなり》

 

 

 俺の体が、夜空の体が変化する。膨大な悪意と怨念の海に抗うように意識を保ち、その身に宿す龍へと変わる。

 

 

「夢幻を断ち、無限を望む――」

《もっとだ! もっと寄こせ!》《我らが王はまだ足りぬと叫んでいる!》

 

「夢幻を恨み、無限を願う――」

《まだ、まだ足りない!》《我らが女王はまだ足りないと叫んでいる!》

 

「我、影の龍王の覇道を求め――」

《我らが王の望みこそ我らの願い! 光龍妃に敗北を!!》

 

「我、爛爛と輝く龍の妃と成りて――」

《我らが女王の望みこそ我らの願い! 影龍王に敗北を!!》

 

 

 さぁ、行くぜ夜空ぁ!!!

 

 

「「「「「「汝を理性を捨てた狂気の世界へと導こう」」」」」」

 

「「「「「「汝を金色に満ちた幻想の極みへと誘おう」」」」」」

 

 

 呪文、老若男女の歓喜の叫びが終わったこの場には圧倒的なまでの暴力が存在している。この身を影龍へと近づけた俺、そして目の前にはその身を光龍へと近づけた夜空がいる。体は俺と同じぐらいにまで巨大化し、禍々しい棘の鱗が目立つ俺とは真逆と言っていいレベルの美しい山吹色の鱗。背にはマントのように見える複数の光の翼……もし、他人がこの状況を見たなら俺を悪と呼び、夜空を善と呼ぶだろう。それぐらいに真逆な印象を持たせるのが夜空の覇龍形態だ。

 

 存在するだけで地形すら崩壊させるほどの暴力……いや災害って言った方が良いな。相変わらず覇龍同士で殺しあうと命なんてちっぽけなものだって錯覚させられるな!

 

 

「そういや、フェニックスの婚約パーティーの時もこうして覇龍を使おうとしてたよな?」

 

「そうだっけ? まっ、どうでもいいじゃんそんなこと! 言っとくけど加減しないから覚悟しといてね! 今の私は超絶好調!! なんだからさ!!」

 

「うるせぇ! こっちだってテンションが最高潮だ! 眠たいとか言っても寝かせねぇぞ!!」

 

 

 俺と夜空は向かい合った状態から動き出す。互いを殺すために、楽しむために。周りなんて関係ないと言わんばかりに行動を起こす。

 

 

「「死ねぇ!!!」」

 

 

 それが地双龍……いや、俺と夜空の関係だからな。




禁手 光龍妃の生命鎧《グリッター・オーバーコート・ライフメイル》
形状 背中に光り輝くマント、山吹色の鱗を持つドラゴンを模した美しいと表現できる全身鎧。全身から漏れ出した生命力が炎のように噴き出している。
能力 「10秒間、自由自在に光を生み出す」「光を浴びる事で自身の力を上昇させる」「生命力を回復する」

片霧夜空が保有する光龍妃の外套の禁手「光龍妃の鎧」が亜種化したもの。
「生命力の回復」により夜空は自身の回復、他者の回復を会得しています。
イメージ的にはMP0消費でベホマを連打です。

遅くなって申し訳ありませんでした!
観覧ありがとうございました!!
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