ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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51話

「――へぇ、あの後そんなことが起きたのか」

 

「全くイッセーには驚かされるばっかだっての。乳神っつう得体の知れねぇ神を呼んじまうんだからな。そういうお前さんも派手に暴れたねぇ、戦場になったキマリス領がトンでもねぇ事になったらしいじゃねぇか」

 

「別にいつも通りだけどな。まぁ、親父はあの辺り一帯の惨状を見て呆然としてたけど俺達は何も悪くない」

 

 

 駆王学園旧校舎、オカルト研究部の部室に呼び出された俺は姫島先輩が淹れてくれた紅茶を飲みながらアザゼルと話している。ロキとフェンリル、そして夜空との殺し合いから既に数日が経過し、当初の目的であった日本神話と北欧の主神オーディンによる会談は無事に終わった……らしい。いや、らしいというよりロキが襲撃してきた会談当日から約三日間ほど夜空と殺しあってたからいつの間にか終わってたというのが正しい。俺も夜空もテンションが最高潮に達し、どちらも相手を殺すまで辞めるつもりはなかったから仕方なかったけどまさかここまで続くとは思わなかったなぁ……なんせ互いに覇龍使って殺し合い、限界になったら一旦やめてキマリス領の俺の実家に二人で帰って飯食う寝る、そしてイチャイチャする(殺しあう)とかを繰り返してたらいつの間にか三日間経ってた。いやぁ、楽しいと時間の感覚って薄れるもんだなぁ。

 

 

「しっかしお前さんも光龍妃も止めに入った四大魔王の眷属全員に喧嘩売るとはなぁ。まぁ、正確には戦闘開始直前だが普通はやらねぇぞ?」

 

「俺と夜空のイチャイチャを邪魔しに来たあいつらが悪い」

 

「……そのせいでキマリス領に隣接する他の悪魔の領地が大変なことになりかけていたのだけれど?」

 

「うちの領地に住んでる悪魔たちは『あぁ、今回は少し長い殺し合いだな』って感じでスルー気味だったんですが? 全く、キマリス領に住んでいる奴らを見習って忍耐力とかその辺をつけた方が良いんじゃないですか?」

 

 

 反対側に座っているグレモリー先輩がジト目で言ってきたが俺達は悪くない。ただ普通に殺しあってただけだしな。

 

 そもそもあの時の俺達のテンションだったらあと一週間ぐらいは続く予定だったんだだよ! それが三日で終わった理由はアザゼルが言った通り、ルシファー眷属やらレヴィアタン眷属やら……とりあえず四大魔王の眷属全員が邪魔をしてきたからだ。どうやら俺と夜空が殺しあってた地双龍の遊び場(キマリス領)からかなりの衝撃やら破壊音が発生、そのせいで隣接している別の悪魔の領地にまで影響を及ぼしたらしく軽い災害もどきが起きたようだ。そんなわけでこれ以上はいけないぞと動けない四大魔王に代わってその眷属達総出でストップをかけてきたわけなんだが……本当に空気読めねぇよなぁ。

 

 さて、そんな災害もどきを引き起こしていた元凶こと俺達は――

 

 

『はぁ? なんでこんな楽しい殺し合いをやめねぇとダメなんだ? おいおい最強の女王様も歳取りすぎてボケ始めたか?』

 

『てかテメェら邪魔なんだけど? 今ノワールと楽しく殺しあってんの見えねぇの? 邪魔すんの? へぇ、死にたいんだ』

 

『悪いが今回は夜空を止める気は一切ねぇからな。つーかただの悪魔如きがドラゴンの、地双龍の殺し合いを邪魔すんじゃねぇよ』

 

 

 とまぁ、うん。はぁ? マジでふざけんじゃねぇぞと逆切れしました。仕方ないね! だって夜空との殺し合いを邪魔しに来たんだし! 最初は四大魔王様の眷属の乱入にテンションが上がったんだが突如巨大化した男が戦闘開始と同時にガス欠もどきをし、それを夜空が見て萎えたのか「飽きた」と言ってどっかに行っちまったから結局殺し合いには発展しなかったけども……どうやらガス欠した男は俺達がいる場所に来るまでにテンションが上がりすぎてペース配分を考えるのを忘れてたみたいだ。良かったな、もしそれが無かったら魔王眷属の半分以上は死んでただろうぜ? 主に夜空の光でな。

 

 

「そんで? こんなくっだらない話をするためにここに呼んだんですか?」

 

「んなわけねぇだろ。ちょっとした確認とサーゼクスからの伝言をな。さてまずどうでもいい事だが……お前さん、ヴァーリの行動を分かってたな?」

 

 

 ヴァーリの行動……ねぇ。俺はロキとフェンリルとの殺し合いの途中で離脱して三日間ぐらい夜空と殺しあってたからあの後どうなったかとかは入院している犬月達から聞いたが……あれぐらいは誰だって分かるだろ?

 

 俺が離脱した後、ヴァーリ達はロキとの対決をやめてグレイプニルで捕縛されているフェンリルと共にどこかへ消えたらしい。残ったロキと小型フェンリルは獅子王、グレモリー眷属、キマリス眷属、ヴァーリ以外の残りメンバー、バラキエル、ヴァルキリーちゃん、そして調整が終わった匙君で対処したそうだ。もっとも匙君は半分暴走状態だったようだけどな……その辺は宿主である匙君の実力不足が原因のようで鍛えれば問題ないらしい。さて、この戦いで犬月が入院する羽目になったがその原因は化け犬状態で小型フェンリルの喉元に噛みついて動きを止めていたところをもう一体の小型フェンリルに背中から噛みつかれたからだ。いやぁ、平家とかから聞いたときは笑ったな! なんせ噛みつかれても泣き喚かずに小型フェンリルの片方を拘束し続けたんだからな! まぁ、その結果、獅子王と四季音のパワーコンビによって叩きのめされたわけだが……やっぱりアイツ根性あるわ。

 

 ちなみに入院と言っても傷自体はシスターちゃんの回復を受けて治っているが魔物に噛まれた事で体に何か影響が出ていないか検査を受けるためのものでもう少ししたら退院できる。とりあえず退院したら退院祝いとして水無瀬に豪勢なものを作らせようかねぇ。

 

 

「前々から何かやる気だなぁってのは感じてましたよ? そもそもヴァーリが見返りもなく協力するわけないし、そんな善人だったら禍の団に入ってねぇでしょ?」

 

「だな。だがそのせいで神を殺せるフェンリルがテロリストの手に渡ったわけだ。ヴァーリの事だ、悪用することはないだろうが用心しとかねぇと何が起こるか分かったもんじゃねぇ」

 

「だろうな。それよりも乳神ってどこの神なんだ? 相棒に聞いても知らん、分からんって感じなんだが?」

 

「そんなもん俺たちが知りたいっての。まっ、そのおかげでロキを倒せたが各神話体系でも謎の神格の登場に色々と調査を始めたようだぜ……呼び出した本人もなにがなんだかわからんって感じだがな」

 

 

 アザゼルが呆れた声色でコーヒーを飲んだ。だろうな……俺も聞かされたときは少しばかり固まったし。

 

 俺、ヴァーリが抜けた状態で悪神と戦っていた赤龍帝だが何をしたか知らないが乳神という各神話体系すら知らない神格の意識を呼び寄せたらしく、いろいろと波紋を呼んでるそうだ。まぁ、悪神も自身が倒されないように小型フェンリルの他に量産型ミドガルズオルムという魔物も呼びよせたみたいだが我らが歌姫しほりんこと橘の破魔の霊力、目の前にいるグレモリー先輩の滅びの魔力、獅子王と四季音の怪力とかで一掃。そして残ったロキも乳神パワーを手に入れた赤龍帝の一撃で倒されて事件解決! もっとも俺としてはどうでもいいけどな。だって夜空との殺し合いに夢中だったし。

 

 

「まっ、確認ってのはその事だけだ。さてノワール・キマリス、現魔王サーゼクス・ルシファーから伝言を頼まれた。なに、先の光龍妃との大喧嘩の件に対する処罰じゃねぇから安心しろ。お前さんの眷属、四季音花恋に中級悪魔へ昇格する試験を受ける許可が下りた。近日中に書類が届くからちゃんと受けさせろよ? 流石にこれを蹴ったらいろいろと問題もんだからな」

 

「……いや、流石に叩きのめしてでもちゃんと受けさせるが、急だなおい」

 

「むしろ遅すぎるぐらいだ。若手悪魔同士によるレーティングゲーム、そこでの戦績と今回の一件でただの下級悪魔では拙いと現魔王と上層部が昇格試験を受けることを許可した。そもそも分家とはいえあの酒呑童子だ、実力なら上級悪魔以上だろう……全く、よく転生させれたもんだ」

 

「まぁ、うちの眷属で俺を除けば最強ですからね。しかもフェンリルと殺しあった事で前以上に妖力が上がってましたよ? これは犬月もそうだが……上昇率は天と地の差だ。こればっかりは鬼だからって納得するしかねぇけどな」

 

 

 夜空との殺し合いから帰ってみたらもうビックリしたぜ……元々、相手が強いほど自分の力を跳ね上げる気質を持つ四季音だが数日前よりもさらに強くなってたんだもんなぁ。鬼ってのはおっかねぇよ、ほんと。

 

 あっ、鬼と言えばそういえば四季音の奴が変なことを言ってたな……なんか見つかっちゃったとか言ってたが何に見つかったんだ? 聞いても面白い子だよと言って教えてくれねぇし……平家にでも聞いてみるか。

 

 

「鬼ってのは昔から戦闘に関しちゃ悪魔や天使、堕天使以上だからな。それ故に気に入った奴しか相手をしない。まっ、あの実力なら試験は簡単にクリアできるだろうよ」

 

「問題なのは筆記ですけどね。その辺は水無瀬や平家に教えさせますよ……あぁ、そういえば先輩? あのヴァルキリーちゃんを眷属にしたんでしたっけ? うちの水無瀬が同僚ができたとかって喜んでたんで仲良くしてやってください」

 

「えぇ。こちらこそお願いするわ」

 

 

 どうやらあのヴァルキリーちゃんは悪神戦終了時に仕えていた主神様に置いて行かれて帰る事が出来なくなり、途方に暮れていたところを目の前にいるグレモリー先輩がスカウトして転生悪魔になったようだ。しっかしよく転生できたもんだ……でもあの魔法は地味に厄介だし次に戦うときは優先的に倒さないとダメだな、ただし最優先はシスターちゃんだ! あの回復は放っては置けねぇ……夜空との殺し合いで回復の恐ろしさをこれでもかと体験したしな!!

 

 そんなこんなで談笑を終えて保健室で待機していた橘と共に家に帰る。犬月は風邪という名目で休み、平家は悪神やフェンリルとの殺し合いで疲れたのか堂々とサボり……羨ましいかぎりだ。

 

 

「え? 花恋が中級悪魔になれるんですか?」

 

 

 水無瀬が晩飯の準備をしながら俺に聞いてきた。にしても犬月がいないとどうも静かすぎる……さっさと退院してくれねぇかなぁ。

 

 

「おう。なんでも今までのレーティングゲームの戦績、そんで今回の一件で下級悪魔のままだと拙いみたいでな。近々書類が送られてくるんだと……おい、というわけだからちゃんと勉強しろよ? もし落ちたら酒禁止にするからな」

 

「にししぃ~もんだいなぁ~いよぉ~? こうみぃえてぇもぉ~あたまはぁいいんだからぁ~」

 

 

 さて、毎日酒瓶片手に酔っぱらっては俺にセクハラしてくるこの合法ロリを如何すれば大丈夫、試験は楽勝だと思えるようになるんだろうかねぇ? 普通に考えて無理だな。だが酒禁止にして真面目に取り組むように言っても聞かねぇだろうし……どうすっかなぁ。

 

 

「花恋に勉強しろって言っても無駄だと思うよ」

 

「やっぱり?」

 

「うん。花恋に酒を飲むのをやめろって言っても無駄でしょ?」

 

「……だなぁ」

 

「あ、あの! ちゃ、ちゃんと勉強をした方が良いと思いますけど……? 中級悪魔に昇格する試験は簡単には受けられないんです、よね? だ、だったらちゃんとやるべきです!!」

 

「――だそうだぞ?」

 

「うぃ~? しょぉ~がないねぇ――ちゃんとすればいいんだろう? ところで試験ってのは何をするんだい? ただ単純に戦って昇格するわけじゃないんだろう?」

 

「当たり前だ。やることは筆記試験と実技試験、そしてレポート作成だな……内容は今後の目標とかその辺を書いておけばいいさ。俺も手伝うが基本的には自分でやれよ? あぁ、でも平家達も今後に備えて一緒にやっておいてもいいかもしれねぇなぁ……とりあえず頑張れよ」

 

 

 四季音の中級悪魔昇格の話をしながら晩飯を食べて自分の部屋へと戻る。恐らくだが四季音は中級悪魔になればあまり時間をかけずに上級悪魔に昇格する事ができるだろう……言っては何だが鬼故のカリスマも持ってるし実力も十分だしな。そうなると四季音が率いる眷属と殺し合いができるな……おぉ! なんか良いなそれ! あいつがどれだけ面白い奴を集めるのか今から楽しみだ!

 

 

「その分、周りが色々と大変そうだけどね」

 

 

 俺の膝の上で風呂上がりの平家が体を預けながら早く早くと言いたそうな目で俺を見つめてくる。なぜこうなっているのかと言えば……悪神&フェンリル戦でモフってやる宣言をしたせいだ。結局夜空をもふもふペロペロすることができなかったのに何で平家をもふもふしないとダメなんだろうな?

 

 

「約束は約束。志保から怒られたとはいえちゃんとしてくれないとダメ」

 

「ここ最近の橘はますますえっちぃのはいけません委員長になってるしなぁ。んで? どこしてほしい?」

 

「ノワールの好きなところでいいよ。ちゃんとノーブラノーパンだから舐めるのも弄るのも自由。そのままエッチしても私は良いぐらい」

 

「夜空で童貞捨てた後だったら好きなだけ抱いてやるよ。ところで……四季音が昨日辺りに言ってた面白い奴云々ってのはなんだ?」

 

「花恋が実家にいた時に一緒にいた子に見つかったんだってさ。レーティングゲームとか神との殺し合いとかで有名になったせいみたい」

「なるほどな。まっ、面白い奴だったらなんだっていいか」

 

「うん。さぁ、ノワール。早く早く」

 

 

 この後、何やら分からないところがあったらしく聞きにきたえっちぃの禁止委員会委員長の橘に全裸の平家をもふもふしているところを見つかり、正座で説教される羽目になった。

 

 あれ……俺が王で橘が眷属だよな? なんかおかしくねぇか?

 

 

 

 

 

 

「う~ん! 楽しかったぁ!! あいつらの邪魔が入らなかったらもっと楽しめたんだけどなぁ」

 

『次がありますよ。しかし新しく発現した能力は使い勝手が良いですね。今後も伸ばしていきましょう』

 

「うんうん! さっすが私! そんで――何の用?」

 

 

 光り輝くマントを羽織る少女は無表情である人物を見つめている。どこかの学生服の上から漢服を羽織った男、その手には槍が握られているが少女を見つめる彼の様子からして戦いに来たというわけではなさそうだ。

 

 

「愛しの影龍王との一戦で高ぶっているところを申し訳ないが今日は貴方に面白い事を伝えに来た」

 

「ふ~ん。どうでもいいけどさぁ、今の私ってノワールとの殺し合いを邪魔されて結構キレかけてんだよねぇ……つまんない事だったら殺しちゃうよぉ?」

 

 

 常人であれば息すらできないほどの濃厚な殺気を少女は放つが男は涼しい顔をしながら言葉を続ける。

 

 

「――グレートレッドに会いたくはないか」

 

「――なにそれすっげぇ会いたい!! ちょー会いたい! マジで会えんの? あのでっけぇドラゴンに会えんの?」

 

「英雄派で龍喰者(ドラゴン・イーター)がかの赤龍神帝にどれほどの影響を与えるのかを確かめるために事件を起こそうと思っている。もしよければ光龍妃、貴方にも手伝ってもらいたい。勿論タダでとは言わない、必ず愛しの影龍王が止めに来るだろう……言いたいことは分かるだろう?」

 

「うん。運が良かったらグレートレッドとサマエルの殺し合いが見れる、それが起きなくてもノワールと殺しあえるってんでしょ? うーん、最高じゃん! ぶっちゃけユニアからサマエルは相手にすんなって言われてっから出てきた瞬間に逃げるけどグレートレッドとサマエルの殺し合いが見れるかもしんないなら手伝うしかねぇじゃん! にひひ! さっすが曹操! このイライラが一気に吹っ飛んだよ!」

 

 

 無表情だった少女が年相応の笑みを見せる。たとえそれが世界に悪影響を及ぼすかもしれない事だったとしても彼女には関係ない。ただ楽しければ、自分の半存在がどんな行動を起こしてくれるのかを見られるのであればそれで良いからだ。

 

 

「それはよかった。さて、手伝いと言っても簡単だ。もうじき、帝釈天と八坂の姫が対談を行う。必要なのは姫――いや九尾でね。貴方には九尾を俺達の所まで転移させてほしい」

 

「んっ、それぐらいならいいよぉ? 簡単だし」

 

「助かる。こちらの用事は以上だ。時間を頂いて感謝するよ光龍妃」

 

 

 自らの用事が終わったことを告げ、男はその場から立ち去る。

 

 静まり返った空間には少女一人が残されたが羽織るマントから女性のような声が鳴り響く。

 

 

『――珍しいですね』

 

「そう? だってグレートレッドだよ! サマエルだよ! 見れるかもしれないなら手伝うしかないでしょ! それにノワールもやってくるかもしんないしさ、この前の殺し合いの続きができるかもしれないし……あぁ! もう楽しみだなぁ!! でもつまらなかったら帰ろっと」

 

『相変わらずですね。しかしそれが良い……クフフフフ』

 

 

 その場にはマントから聞こえる声――陽光の龍ユニアの笑いが響き渡った。




「影龍王と悪神」編が終了です。
次回からようやく……ようやくあれが出せます!

観覧ありがとうございました!

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