ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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54話

「ひっぐ、えっぐ、いたいのじゃぁ!」

 

「……悪かった。殴ったことは謝るしもう何もしないからとりあえず泣き止んでくれ」

 

 

 俺の横に座って大泣きしている金髪ロリに敵意は無い事を伝えるが先ほどの戦闘の衝撃が凄かったのかひたすら泣き続けるだけだった……ですよね! だって連れてきた妖怪共は殺されるし殴られるし周囲が災害でも起きたんじゃないかと勘違いするぐらいクレーターが発生してるもんな! 最初は外見年齢詐欺(合法ロリ)かと思ったがどうやらマジで見た目通りの年齢らしい……悪魔とか妖怪とか外見弄れるから分かんねぇんだよ! あとごめんなさい! マジでごめんなさい!

 

 

「そりゃ、殺意有りで殴られたりしたら泣くだろ……黒井、少しは反省しろ」

 

 

 だって襲い掛かってきたんだから殺される覚悟はあるだろ? 痛いのが嫌なら戦わなければいいだけじゃねぇか。

 

 

「してますーすっごくしてますー! だから匙君はさっさと後始末しろよ? この惨劇を放置してたら色々と苦情来るからな。それに他の観光客とかに迷惑かかんだ、さっさと終わらせてくれ」

 

「やってるよ!! そもそもこれをやったのは黒井だろ? なんでその張本人が何もしてない……いや黒い人形がしてるけど王だろ!? 会長と同じ王だろ!! 手伝ってくださいお願いします!!」

 

「俺はこのガキをあやすので忙しいんだよ? それに死体とかは影人形で集めて魔力で消したんだからちゃんと働いたぞ? 犬月、橘は?」

 

「全速力でこっちに向かってるそうっすよ? ちゃんと子供用のパンツも買ったらしいんでとりあえずは安心ですかね。まぁ、とりあえずお説教は覚悟しといた方が良いと思いますよ?」

 

「だよなぁ……あの、だから泣き止んでくれないか? いい加減、そっちの事情を知りたい……あぁクソ! 犬月、リンゴジュースかオレンジジュース、とりあえず子供でも飲めるもの買ってきてくれ」

 

 

 後始末中の犬月に財布を渡す。普通に考えたらさっきまで妖怪を殺していたから全身が血だらけになっているが後始末を開始する前に魔力で消している。だからこのまま街に行っても何も問題ないわけだ……魔力って万能だなぁ。そして財布を渡された犬月は「三分で戻るっす!」と言って全速力で来た道を戻っていく……恐らく騎士に昇格したんだと思うが流石パシリ、心得てやがる。

 

 それはそうと戦闘終了からしばらく経ったが茨木童子が起きる気配がない件について。死んだ? いやいや鬼があの程度のダメージで死んだら色々と拙いだろ……多分隙を窺ってるとかか? ありえるな……まさか単に寝てるとかじゃないだろうな? まぁ、どっちでもいいけども。

 

 

「……あぁ、その、あれだ。とりあえず泣いてても良いからこっちの話を聞いてくれ。俺達は東京から京都に旅行に来た学生……うん! 学生だ。俺は半分が人間、半分が悪魔の混血、そこで必死に後始末している奴は邪龍を宿しているだけの元人間、現悪魔だ。京都入りもちゃんと偉い方々から許可貰ってるからお前のお母さんを誘拐とかはしていない……そもそもする理由がない。だから……何があったかだけ聞かせろ。もしかしたら犯人が分かるかもしれねぇ」

 

 

 十中八九、犯人は夜空だろうがな。

 

 

「……ほん、とうか……? おそ、った、私たちの、ひっぐ、聞いてくれるのか……?」

 

「あぁ。キマリス家次期当主、いや影龍王の名において誓ってやる」

 

「……ありが、とう」

 

 

 涙を流しながら目の前の金髪ロリは京都で起きた事件を話してくれた。

 

 事件が発生したのは俺達が京都入りをする数日前、この金髪ロリの母親である八坂姫――つまり京都を取り仕切る長が須弥山の帝釈天という神様と会談をするために護衛を連れて京都を出たらしい。普通の会談になるはずだったが会場に向かう道中、突然上空が割れるように穴が開いて八坂姫を吸い込んだそうだ。そのため行われるはずだった会談は一時中止となり、姿を消した八坂姫を探すべく京都妖怪が調査を開始した。なんというか……この金髪ロリ、あの八坂姫の娘かよ。そんな大物の娘を殴ったのは色々と問題あるよなぁ――俺は悪くないけど。

 

 まぁ、そんな大事な事だけど置いておいてだ……なんで俺達に襲い掛かってきたかというと八坂姫が消えたのと同時に京都内で禍々しいほどの気を持つ存在が動き回ったため、京都妖怪達は事件の関係者と判断して接触しようとした結果――接触しようとしていた妖怪が消滅させられたそうだ。恐らくメンドクサイのが来たなぁって感じで夜空が殺したんだろう。そんな事があったため、目の前にいる八坂姫不在時に京都妖怪を纏めていた金髪ロリは犯人と断定して同じ気質を持つ俺達の前に現れて襲い掛かってきた……というのが今回の一件の全貌だ。完全に夜空が引き起こした事件に巻き込まれただけですありがとうございました!!

 

 でも正直……気に入らない者なら煤しい顔しながら指パッチンで殺害するあの夜空が! 面白い事と自分の都合を何よりも優先するあの夜空が! こんな風に殺さず誘拐とか普通に考えてやるはずがない。なんせ俺と同じで誘拐するよりも殺した方が早いとか考えるような奴だし。だから多分……誰かから頼まれたんだろう。誰だか知らないが面倒な事をしてくれたもんだよなぁ! おかげで話を聞いて面白そうと思ったのか夜空が九尾を誘拐しちゃったじゃねぇの!! でも新幹線で話した感じだと既に飽きたっぽいけども。

 

 ちなみに話を聞いていた匙君は――泣いている。ガチ泣きである。

 

 

「母上、を慕ってくれて、いる者達からも危ない、って言われたのじゃが……イバラ殿が偶然、私達の前に来てくれたのじゃ……自分が探している人物かも、しれないと」

 

「なるほど。だから茨木童子なんつう鬼が一緒だったわけか……おい、いい加減狸寝入りはやめろ。テメェほどの鬼があの程度でダメージを受けるわけねぇだろ」

 

 

 地面に寝そべっていた金髪女――茨木童子はダメージなんて受けていませんと言わんばかりに普通に立ち上がって俺を見つめてきた。何を考えているか分からない目、美少女だというのになんというか……もうちょっと活き活きしても良いと思うよ? その点で言えばさっきの戦闘は俺的にはグッドだ! でも残念な事に態度からしてもう一度戦う気は無さそうだ。

 

 

「おはようさん。この金髪ロリとは和解……というか誤解は解けた。次はそっちの番だ、なんでこのガキに従った? 鬼が九尾の危機に駆け付けるわけねぇから何か理由があるんだろ?」

 

「伊吹が言った。京都に自分を従えている王様が来るっからそれと戦えば帰ってもいいって。だから此処にいる。その子供に従ったわけじゃない。偶然出会って目的地が一緒だっただけ」

 

 

 なるほどねぇ。とりあえず――あんの合法ロリ、何適当なこと言ってんだよ? そのせいでこの場所が酷い事になったじゃねぇか!!

 

 

「……ちょっと待ってろ」

 

 

 魔法陣で東京で待機している四季音に連絡をする。ホログラムのように姿が見えた途端――金髪女は一気に近づいてその姿を眺め始める……えっ? 何この子、怖い。

 

 

『うぃ~? どうしたのぉ~ってあれぇ? イバラじゃないか。ノワールと一緒に居るって事はちゃんと出会ったんだ』

 

「戦った。でも負けた……伊吹、帰ってきてくれない……ごめんなさい」

 

『にしし、そう簡単にノワールに勝てたら私はもうとっくの昔に帰っているさ。ノワール、どうだった? イバラ、結構面白い奴だろう?』

 

「おう。流石茨木童子、昔のお前を思い出すぐらい強かったわ……てかおい、なに人を売ってんだ? 里帰りぐらい自分で勝手にしろよ」

 

『良いじゃないか。滅多に無い事だよ? 茨木童子と殺し合えるなんてさ。それにノワールが勝とうが負けようがちゃんと帰るつもりだったさ、そろそろ帰らないと色々と五月蠅くなりそうだしね。それにこの可愛い鬼さんが嘘をつくわけないだろう? イバラ、私は悪魔になったせいでそっちに行けないからノワールの言う事を聞くんだよ。安心しな、この私に勝って従えた男だ。イバラも気に入るさ』

 

「分かった。伊吹の言う事、絶対」

 

 

 なんなんだこの主従関係……? あれか? そっち系か? ロリと中学生の絡みとか最高じゃないですか!

 

 そんな事を思っていると犬月がダッシュでこっちに向かってきているのが見えた。流石犬、早いな……しかも橘達も一緒な所を見ると飲み物を買いに行った途中で出会ったんだな。あぁ……なんだろう? 離れているのに橘様から笑顔が見えるだけど? 流石アイドル! 走っていても笑顔を崩さないとかまさにアイドルの鑑!! でも凄く怖い笑顔からもう少し優しい笑みでお願いします! あとなんというか、その、破魔の霊力が漏れていませんかねぇ? いけませんよ! そんなことしたら妖怪が滅せられて大変な事になるんだから早くしまってくださいお願いします!

 

 

「――悪魔さん? 犬月さんから聞きました。まず、正座してくれたら志保、すっごく嬉しいな♪」

 

「ハイ! ヨロコンデ!」

 

 

 そこから三十分ぐらい、地面に正座をしながら橘に説教されました。「いくら襲われたとはいえやりすぎです」から始まり「悪魔さん最低です、ちゃんと謝りましたか?」とか色々と怒られました。おかしいな……俺って王だよな? そして橘は眷属だよな? なんで立場が逆転してんだ……? でもアイドルからの説教とか俺にとってはご褒美ですありがとうございました! そして犬月、俺が説教されている最中ずっとガクガクブルブルと震えているぐらいなら助けろ。目の前にいる橘から漏れ出してる破魔の霊力が怖いからさ!! あっ! 他のシトリー眷属も金髪ロリのお着替えを手伝ったりあやしたりしてるけど……心なしか視線が痛い。襲われたから逆に殺そうとしただけなのになぁ? なんか理不尽すぎねぇか?

 

 ちなみに茨木童子は周りの事なんか気にしない態度で四季音と話をしていた。うわっ、マジで四季音以外に興味示さねぇよこいつ……平家が居たらそっち系なのかどうか分かるんだけどなぁ。

 

 

「そ、それよりさ! この子、どうするんだ……? 流石に放っておけないだろ?」

 

「ん? 裏京都まで連れていくしかないだろ。てか足イテェ……正座するんなら座布団ぐらい出せばよかった。おい、流石の俺も裏京都までの道は分かんねぇから家まで案内してくれ。護衛ぐらいはしてやるからさ」

 

「よ、よいのか……?」

 

「当たり前だろ? それにだ、ここで放置したら我らがアイドルしほりんから破魔の霊力が飛んでくる。そんで茨木童子、お前はどうする?」

 

「付いていく。伊吹から言う事を聞くように言われた。なんでも命令してほしい」

 

「えっ? だったら全裸に――スイマセンジョウダンデス。だったらこのガキの護衛でもしてろ……後で四季音に会わせてやるから」

 

「分かった」

 

 

 そんなこんなで八坂姫の娘と茨木童子を引き連れて裏京都まで向かい、無事に送り届けました! なんというか……あれだけ怖い目に合わせた張本人のズボンを掴みながら歩く金髪ロリの度胸はすげぇわ。だけど裏京都入りしてから隠れて様子を伺っていた妖怪共から変な目で見られたけども……まっ、邪龍が訪れたんだし当然か。

 

 

「――やはり八坂姫がいなくなってたか」

 

 

 京都観光という気分でもなくなったのでホテルに戻り、夜まで時間を潰した俺達は与えられた部屋に集まっていた。かなり豪華な内装、男三人でもまだ広く感じるほどの大きさだ……すっげぇなサーゼクスホテル、無駄に金かけてやがる。さてこの部屋に集まっているのは俺と犬月と匙君だけじゃない……アザゼル、ヴァルキリーちゃん、水無瀬、橘、赤龍帝達グレモリー眷属、残ったシトリー眷属も壁に寄りかかったりベッドに腰を掛けたりしている。なんでこんなに人数がいてもまだ広いんですかねぇ?

 

 

「光龍妃が新幹線内に現れてもしやとは思ったが……畜生! 折角の修学旅行を台無しにする気か!! キマリス、八坂姫の娘はなんて言ってた?」

 

「明日辺りに使いの者を寄こすらしいですよ。名前は確か九重だったかな? 今日は……その、怖い思いをしたんで休みたいとか言ってましたー決して殺すつもりで殴ったのが原因じゃありませんので安心してくださーい。こっちは被害者でーす」

 

「清々しいまでの棒読みだなおい。そんで? 影龍王としての見解を聞かせてもらおうか……今回の一件、やはり光龍妃が原因か?」

 

「でしょうね。九尾レベルの存在を引き込めるほどの転移術持ちなんて夜空ぐらいでしょうし。まっ、当の本人は頼まれたからやっただけでもう飽きてるっぽいですけども」

 

「……やっぱりあの人の事はよく分かんねぇ。なんでそんな風に攫ったり飽きたりできるんだよ……! 悲しんでる子だっているのにさ!」

 

「自分が楽しいと思ったからだろ? まぁ、ラッキーだぞ? 夜空に狙われてまだ死んでないとか一生分の運を使い果たしたって言ってもいい。この程度でいちいちキレてたら身が持たねぇぞ?」

 

「……黒井は何とも思わないのかよ! 前だって、ヴァーリが俺の両親を殺すって言ったときはあんなに怒ってただろ! なんで……他人事のように言えるんだよ!!」

 

「当たり前だろ? 他人なんだから」

 

 

 仮に今回の一件に俺の母さんが巻き込まれたんなら全力で夜空にくだらないことを吹き込んだ奴を探し出して殺すさ。でも今回は九尾、つまり俺とは何も関係ない人物だ。他人事のような態度をとって何が悪いのか逆に教えてほしいぐらいだ……そもそもあの時は『自分が行っている戦いに関係のない人物』を巻き込むような発言をしたヴァーリにキレただけだし。もし俺が関係ない所で赤龍帝の両親が殺されてもあらら殺されたんだって感じで記憶にも留める事はないさ。

 

 

「そもそも俺、悪魔。そんで邪龍だぞ? 正義の味方でもなければヒーローでも無いんだ。何か月か前にグレモリー先輩や生徒会長にも言ったが俺は最低最悪で、自分勝手で、自己中で、自己満足の塊で、他人の事なんか微塵も考えていない邪龍の宿主だぞ? 他人を他人と言って何が悪い。そんなヒーローごっこは天界勢力にでもやらせておけばいいだろ……もっとも今回はそのヒーローごっこをやらせてもらうけどな」

 

「へ?」

 

 

 なんでそこで水無瀬以外の奴らの表情が変わるのか教えてくほしいんだが?

 

 

「……俺だって母親がいなくなる恐怖は痛いほど、死ぬほど分かるってことだ。あぁクソ! アザゼル、九尾だが京都からは出てねぇ。京都全域の気、龍脈やらが乱れてねぇしな。探せば案外簡単に見つかるかもしれねぇ」

 

「あぁ。その辺も含めて部下達に探させている。キマリス、お前さんの力で探せるか?」

 

「無茶言うなよ……俺は霊体生成と霊体操作方面に極振りしてんだ。龍脈操作とかやった事ねぇっての……そもそも京都内の龍脈は九尾と契約してるはずだから部外者の俺が介入するのは現状難しいんだよ。まぁ、仮にできたとしてもどこまでやれるかは保証出来ねぇけどな」

 

 

 これが親父なら鼻歌交じりに簡単にやるんだけどなぁ……俺のような特化型じゃなくて万能型だし。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 何が何だか分かんないけど……黒井は手伝ってくれるって事、だよな?」

 

「そう言ってるだろ? なんだ? ダメか?」

 

「い、いやそうじゃないって!! ただ、驚いただけで……でもその子のお母さんが京都から出てないって良く分かったな?」

 

「九尾というのは京都の気を統括してバランスを保つ役割をしている。もし仮に光龍妃に誘拐されこの地から離れたのであれば京都に悪影響が出ているはずだ。もっとも影龍王が来た影響で幽霊達が活発化したみたいだがそれは関係ないだろう。まずは九尾、いや八坂の姫の居場所を探す事が先決か、イッセー、キマリス、匙、ドラゴンを宿しているお前たちが頼りだ。何かあれば力を借りるが今は旅行を楽しんでおけ」

 

 

 アザゼルの言葉を最後に第一回グレモリー、キマリス、シトリー連合会議は終了した。そのまま部屋で爆睡! と行きたかったが俺達には安息はない……何故なら――

 

 

「ノワール君、コーヒーを買ってきましたよ」

 

「おう。サンキュー」

 

 

 ――修学旅行というイベントでテンションが上がり、女湯を覗こうとしている馬鹿達から女子達を守らないとダメだからだ。俺としては橘の裸だけ守れればそれでいいんだがねぇ……もっとも俺は何度も見たことあるけど! 一緒に風呂入って胸とか揉んだりしてるし!! あのおっぱいの感触は良いものだ……何度も揉んでいたくなるような揉みごたえがあって最高でした!

 

 水無瀬から缶コーヒーを受け取ってそのまま一口飲む。俺と水無瀬がいるのは生徒会が調査して女湯を覗ける地点の一つで他の場所には犬月やら匙君やらイケメン君やら他のシトリー眷属が配備しているという超厳重な警備体制となっている。さらに周囲に寄ってきている悪霊やらに覗きに来た馬鹿がいたら教えるように命令しているため不審者がいたら即俺にバレる事になってます。なんだこの能力の無駄使い……!

 

 

「流石に前々から生徒会等で注意をしていたので覗こうとする人はいませんね」

 

「分かんねぇぞ? 案外、赤龍帝辺りが向かってきてるんじゃねぇの? そんで……何? 言いたいことがあるから俺と一緒になったんだろ?」

 

「やっぱり分かっちゃいました?」

 

「お前の事は手に取るように分かるしな」

 

 

 なんかフェニックス家とグレモリー家の婚約騒動辺りで同じことを言ったような気がする。そもそも分かりやすいんだよ……何年一緒に居ると思ってんだって話だ。

 

 水無瀬は自分の分の缶コーヒーを持ちながら俺の横に座り始める。なんだろうか……教員だから先に風呂にでも入っていたんだろう、シャンプーの匂いとかするから妙に落ち着かねぇ。家では何とも思わなかったんだけどなぁ……これが修学旅行の魔力か!

 

 

「ノワール君、話を聞いた時から助ける気満々でしたよね?」

 

「はぁ? 何言ってんだお前……俺様、邪龍。なんで他人を助けるなんてめんどくさい事をしないとダメなんだよ? 今回だって……あれだ、あのガキを殴っちまって可哀想なことしたなーという気分に珍しくなったからにすぎねぇ。勘違いした事を言ってると揉むぞ」

 

「そういう事にしておきますね。でもそんな他人を助けるのが面倒なノワール君はなんで龍脈とかを勉強したりお義父さんに連絡したりしたんですか?」

 

「良い機会だしなぁ。偶には霊体操作や霊体生成以外でこの力を使ってみたかったんだよ。なんせ特化してるしな……良い経験だと思わねぇか?」

 

「私は神器以外の力は無いので分からないですけど……ノワール君がそうしたいならすればいいと思いますよ」

 

 

 なんだろうか……この「私、分かっていますから」という態度は? たくっ、変に勘違いしてるっぽいが今回は普通に気まぐれ、ついでに言うと夜空に命令とか羨ましい、うん羨ましい事をした奴に文句を言いたかったからで特に理由なんてない。全くこのドМ保険医は勘違いして困るぜ!

 

 

「ノワール君」

 

「あん?」

 

「少しは素直になってもいいんですよ?」

 

「そんなの毎日素直になってるだろ? ほらっ、橘の裸が見られないように警備するぞ」

 

「はい。分かりました」

 

 

 幽霊達からいつもの二人組が覗こうとしていると言ってきたのでそいつらに憑りついて体調を崩せと命令する。なに、ちょっとだけ立ちくらみやら寒気がする程度だから死なない死なない。それに後でちゃんと除霊するから問題ないだろ。

 

 にしても……素直になるねぇ、夜空相手ならいくらでもできるんだがな。まっ、とりあえずあの金髪ロリの母親は助けるさ。意地でもな……だって母親を助けたい気持ちで俺に向かってきたんだ。その度胸に免じて今回だけは――ヒーローでも正義の味方でもなってやるよ。




観覧ありがとうございました!

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