ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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55話

「――うざってぇ」

 

「我慢しろ。お前さんが八坂の娘を殺そうとしたことが原因だろうに……良いか? 先にセラフォルーが今回の一件は双方の勘違いって事で話をつけてる。また暴れるんじゃねぇぞ?」

 

「流石に事情が分かってんだから暴れるわけねぇだろ。まっ、あっちが敵討ちだって襲ってきたら殺すけどな」

 

「だからそれをやめろって言ってんだ……イッセー、なんかあればこいつを止めるのを手伝え」

 

「いやいやいや!? 黒井に勝てるわけないだろ!? そ、そりゃまぁ……いつかは勝ちたいけどさ! でも頼む黒井!! 部長からも京都を破壊するようなことはするなって言われてるんだ!! あとで秘蔵のエロ本あげるからマジで頼む!!」

 

 

 修学旅行二日目、その早朝に俺、赤龍帝、アザゼルの三人は裏京都を訪れていた。何故かと言えば京都を収める八坂姫――の代行をしてる金髪ロリこと九重からお呼び出しがあったからだ。出会って殺しかけた際に修学旅行で訪れている事を含めて説明したおかげで京都妖怪側が観光を邪魔してはダメだと空気を読んでくれたらしく、こうして早朝に裏京都を訪れる羽目になった……マジ眠い。龍脈やらその操作の仕方やらを勉強してたら一睡もしてねぇんだよ……相部屋の犬月や匙君が熟睡できるように別の場所でしてたから二人は快眠だっただろうけども。

 

 そんなわけで早朝から大人数で訪れるのもあれなのでキマリス眷属からは俺、グレモリー眷属からは赤龍帝、同行者としてアザゼルが裏京都入りをしている。シトリー眷属から人が来ない理由はアザゼルが言ったように先にセラフォルー様が向かわれているから……あの人も一応シトリーだしね。

 

 

「甘いな赤龍帝。エロ本なんかでこの俺様が興奮するわけねぇだろ? どれだけ……どれだけ俺が夜空のパンツやら平家の裸やらでオナニーしてると思ってやがる? はっ、エロ本程度でこの俺が満足すると思ってんのか? ちゃんと寄こせよ」

 

「貰う気満々じゃねぇか!! てか! なに羨ましい、羨ましいことしてんだよ!! あれか!? 大天使水無せんせーやしほりんの裸も毎日見てるのか!?」

 

「とーぜんだろ? 日替わりで一緒に風呂に入る仲だよ」

 

「……王って、王ってそんな事をしても怒られないんだな……!! あぁ! 羨ましいぃ!! ドライグ!! もっと強くなって早くハーレム王になるぞ!!」

 

『相棒も似たようなことをしているだろう……だが強くなるのには賛成だ。俺もこの影龍に負けたままでは気が済まん』

 

『別に俺様は構わねぇぞぉ? 何度も掛かってこいやおっぱいドラゴンちゃん!! 俺様、何度でも返り討ちにしてやるぜ!!』

 

「こっちとしては赤龍帝と影龍王の殺し合いは勘弁なんだがなぁ」

 

 

 そんな微笑ましいやり取りをしながら裏京都内を歩く。隠れている京都妖怪の視線、幽霊共の構って構ってという声が地味にうざったいが今のところは敵意も無いし殺すほどでもないだろう。恐らく昨日、あの金髪ロリを殺そうとしたから警戒しているか夜空と同じ気――ドラゴンのオーラを持ってるから監視しているかのどっちかだろう。いや……今回の場合は両方かな? まっ、どっちでも良いけどね。

 

 

「……でも黒井は普通にしてるけど驚かないのか?」

 

「何がだ?」

 

「いやだって……此処って妖怪達の住処みたいなものなんだろ? 冥界とも違うしさ、やっぱり王ってこういう事じゃ驚いたりしないもんなのか?」

 

「さぁな。そもそも妖怪なら眷属にいるし敵意が無いなら冥界だろうと人間界だろうと裏京都だろうと関係ないさ。というか夜空がいないなら心底どうでも良い」

 

「相変わらず光龍妃ラブだ事で。いい加減あの規格外をどうにかしろ……あれを手懐ける事が出来るのはお前さんぐらいなんだしな」

 

「そう簡単に手懐けれたらとっくの昔に他勢力に負けてるって」

 

 

 そもそもアザゼルに言われなくても夜空に勝って眷属にする気満々だっての! さっさと女王にして……楽しみだなぁ!! とりあえず脇ペロペロしたい。

 

 

「だな。おっと、イッセー、キマリス。到着だ……仮にも代表として来てるんだ、ちゃんとしろよ」

 

 

 どうやら話をしている内に到着したらしい。デカい鳥居、その先にあるこれまたデカい屋敷に入ると先に到着していたセラフォルー様と金髪ロリ、茨木童子と他側近らしき奴らが待っていた。しっかし……セラフォルー様が真面目な服装をしているのに違和感を感じる。なんせ冥界の特撮……あれ特撮だよな? 魔王少女レヴィアたんだったかそんな感じの奴。あのコスチュームの何が良いって脇が見えている事だと思うんだよ。やっぱり脇って素晴らしいわ。

 

 そんな事は置いておいてだ。部屋の中心で正座している金髪ロリがお姫様に見える件について。いや服装が豪華な着物で昨日のような泣いている表情じゃないからだろうけども……マジでお姫様だったかぁ。

 

 

「この度はこちらのお呼び出しに応じていただき、誠に感謝いたします。私は表と裏の京都に住む妖怪達を束ねる長、八坂の娘、九重と申します。影龍王、先日はこちらの勘違いによりご迷惑をおかけした事、此処にお詫びいたします」

 

 

 物凄くきれいなお辞儀というか土下座というか……謝られたんだがどう反応すれば良いか困る。他の側近達も同じように頭を下げているし……あっ、茨木童子だけは興味ないのか頭を下げることはしてないようだ。流石鬼。

 

 

「――こちらこそ、勘違いとはいえそちらの同胞を手にかけた事、謝罪いたします。罪滅ぼしとなるか分かりませんが行方不明となった八坂姫の救出を影龍王、キマリス家次期当主の名においてお手伝いいたします」

 

 

 俺も目の前のお姫様に倣って床に座り、頭を下げる。何故か背後から驚いている表情が見えるがこれぐらいは普通にできるぞ? お前らは俺を何だと思ってんだ? 一応キマリス家次期当主だぞ? この程度の作法ぐらいはセルスに叩き込まれてるっての――普段は絶対にしないけどな!!

 

 頭を上げて金髪ロリの視線を見ながら言葉を続ける。

 

 

「――と、こっちとしては互いの勘違いで終わらせたいと思ってるが良いか? 不服なら腕の一本や二本を切り落として献上しようか?」

 

 

 どうせ再生できるし。

 

 

「い、いらぬ! そもそも今回は私達の勘違いで起きた事じゃ……影龍王、そちらの申し出、こちらからお願いしたい……いや、お願いします」

 

「任された。そもそも……八坂姫を誘拐した奴を知ってるから手伝わないわけにはいかねぇんだよ」

 

「ほ、本当か! 誰なのじゃ! 母上を……母上を攫ったのは!!」

 

「光龍妃。そっちは知ってるかどうか分からんが通称自由気ままな規格外様」

 

「……なんと! あの光龍妃ですと!!」

 

 

 おぉ、流石に京都妖怪達でも知ってたか。そりゃそうだよなぁ……あれだけ世界中を飛び回って遊んでんだし裏京都にも来た事あるかもしれねぇな。まさか九尾と殺しあってないよな? なにそれ面白そう! あの野郎……! もしそうなら呼べよ! 俺も人妻九尾に会いたいんだからさ!!

 

 

「そっ。自分が楽しいならそれ優先、他人の事なんて微塵も考えてない規格外様が八坂姫を攫った張本人だよ。もっとも今回は誰かに頼まれたみたいだけどな……魔王様? その辺の調査とかは終わってますよね? まさかまさか魔王様という役職の方が遊んでいたなんて言いませんよね?」

 

「と、とーぜんよ☆ ちゃーんと調査してきたんだから!! あぁ~! その目は信じてないって目だね!」

 

「はい」

 

「ひどーい! これでもちゃんとお仕事してるんだからね☆ コホン、今回の一件は恐らく禍の団の仕業ね。光龍妃ちゃんに接触できる人物なんてキマリス君か白龍皇君、そして禍の団ぐらいだもん。調査の結果、どうやら京都内に英雄派と思われる人物が潜入していることも分かったからまず間違いないわ☆」

 

「でしょうね。ヴァーリなら夜空に頼まずに自分で戦ってでも手に入れるだろうし……だから夜空にこんなくっだらない事を頼む奴なんて確実に禍の団しかいない。さてここで九重様、少しばかりご相談があります」

 

「く、九重で良い! こちらの頼みを聞いてもらえるのじゃ、何でも言ってほしい!」

 

 

 では脇を見せてください……と言ったらこの場は凍るな。やめておこう。

 

 

「八坂の姫が契約している龍脈を一本、俺が干渉出来るようにしてほしい。キマリスの血には霊に関するものを操る力があってな、それを応用すれば龍脈から八坂姫の居場所が分かるかもしれない」

 

「な、なんと! で、では昨日突如現れたあの黒い人影は影龍王が操った霊体なのか!!」

 

「おう。残念な事に普通の混血悪魔なんであんな芸投しか出来ないんだよなぁ。なんせ夜空にも真似されたし……きっとあの銀髪イケメン尻龍皇もきっと出来る。やらないだけでやろうと思えばできるはず。半減人形とかそんな感じで。全くよぉ、これだから規格外と天才は嫌なんだよ……まぁ、良いや。龍脈に関しては勿論悪用はしない事は約束する」

 

 

 どうやら俺の龍脈干渉させてくれ宣言は受け入れられたようで目の前の金髪ロリが直々に龍穴に案内してくれるそうだ。なんという好待遇! 昨日殺そうとした相手にしていい事じゃないぞ? 大丈夫かこの女の子……将来悪い男に騙されたりしない? こうもチョロ、純粋だとお兄さん心配になっちゃうよ!

 

 ちなみに向かう先は清水寺とのこと。これは神聖な気よりも龍の気が強いという事で邪龍を宿してる俺でも問題ないだろうという京都妖怪側の配慮だ……確かに邪悪だし神聖な気なんて浴びたら俺様、どうなっちゃうんだろうとか思ったしありがたい。ただ文句を言わせてもらえるなら赤龍帝達と一緒の場所というのが嫌です。どう考えても五月蠅い二人組がいます本当にありがとうございました! まっ、一緒に行くわけじゃねぇし犬月に相手してもらって俺は橘とデートしてよう。うんそれが良いな!

 

 

「清水寺っすか? 別に良いですよ。龍脈を借りるんならさっさと終わらせた方が良いし昨日の子が案内してくれるんなら文句も出ないですって」

 

 

 裏京都からホテルに戻り、清水寺に向かう事を犬月に伝えると嫌な顔せず了承してくれた。流石パシリ、主人の言う事は絶対なんだな!

 

 

「でも清水寺となるといっちぃ達も向かうとか言ってたような……一緒には、行かないっすよね」

 

「五月蠅くなっても良いなら別にいいぞ? それかお前だけあっち行くか?」

 

「いやいやいや! 王様を放置してたら何しでかすか分かんないんで付いていきますよ! そもそも俺は王様の兵士ですし!! あっ、そういえばげんちぃ達シトリー眷属は魔王様の命令で調査に向かうみたいっすよ? しほりんを誘って一緒に行きましょう! 是非そうしましょう!!」

 

「お、おう……別に良いぞ」

 

 

 犬月が真剣な表情で言ってきたけどそんなにアイドルと観光したかったのか? だよなぁ! 男ならアイドルと一緒に修学旅行したいよなぁ!! 俺もしたい。でも夜空がいるなら夜空と一緒に観光したい。

 

 それは置いておいてぼっちになりかけていた橘に清水寺に一緒に向かおうぜと伝えると笑顔で了承された。それはもう可愛らしいアイドルスマイルで見惚れちゃったぜ! 流石アイドル! まぁ、橘は女子達から嫌われているわけじゃないから俺のようにぼっちになる事はないけどね。ちなみにあのオコジョもヌイグルミとして同行してます!! 今もカバンの中で大人しくしているようだ……何なんだよあの狐! 芸達者だなおい!

 

 そんなわけで俺、犬月、橘の三人でホテルを出た後、そのまま清水寺まで向かう。犬月の言った通り、赤龍帝達グレモリー眷属二年生組とその他三名も一緒らしいが今回は一緒には向かわない……だって新幹線内で夜空と一緒に居た事で五月蠅くなりそうだし大っぴらに悪魔関連の話ができないのはムリ。だからあっちからの視線を感じてもスルーして目的地まで向かう事にしました! あとあんまり遅いと金髪ロリに失礼だしな。

 

 

「悪い。待たせたか?」

 

 

 そんなこんなで清水寺に到着。入口に付近に金髪ロリと茨木童子が待っていたが……遠目から見ても美少女だなおい。大丈夫? ナンパとかされてない?

 

 

「大丈夫じゃ! 後ろの者達にはまだちゃんとした挨拶はしておらんかったな。この地を収める八坂の娘、九重と申す。先日は誠に申し訳なかった……」

 

「あっ、いや、こっちの方こそ俺達の王様が大変ご迷惑をおかけしまして申し訳ないっす!!」

 

「ちゃ、ちゃんと悪魔さんには言い聞かせましたので安心してください! えっと、橘志保です。悪魔さんの僧侶をしています。昨日は本当にごめんなさい!」

 

「い、犬月瞬っす! 悪魔と妖怪のハーフで王様の兵士してます!」

 

 

 小学生と高校生が頭を下げるという良く分からない光景が目の前で行われている。いったい誰のせいでこんな風になってるんだろうな? 相棒? そいつのこと知ってる? そうかーしらないかーこまったなー!

 

 

「悪魔さんが原因ですからね?」

 

「……お前は平家か? はいはい、ちゃーんと分かってますよー反省してますよーだからこうして九尾捜索の手伝いをしてるんだろうが。そんで茨木童子、今回は金髪ロリの護衛って事でいいんだな?」

 

「そう。貴方が八坂の娘の護衛をしろと言った。だからこうして付いてきている。何があってもちゃんと守る。言う事を聞かないと伊吹に嫌われるからちゃんとやる」

 

「まーた伊吹、いや四季音か……お前、自分の考えとかその辺は無いのか? 言っちゃなんだが天下の茨木童子が十数年しか生きてない混血悪魔の言う事を聞いてるのは異常だぞ?」

 

「問題ない。私は伊吹がいれば良い。私は茨木童子、伊吹の傍で支えて一緒の世界が見られれば満足。伊吹の頼みは貴方に従う事、だからそれは必ず守る」

 

「……なぁ、茨木童子ってこんなのばっかなのか?」

 

『知らんなぁ。鬼っつうのは良く分からん考えを持つ奴が多いもんよ! 宿主様に従うってんなら黙って言う事聞かせていればいいさ!』

 

 

 それはそうなんだけどな。でも対して知らないやつが従いますなんでも言ってくださいとか胡散臭くて警戒しないとダメなんだよ……普通の人間ならスルー安定だが目の前にいる女は茨木童子、鬼の中でも酒呑童子に次いで知名度があり、鬼の代名詞としても有名な存在だ。しかもかなり強い……転生前の四季音とほぼ同じとか周りの奴らは泣きたくなるレベルだぞ? まっ、四季音と一緒に居たいんなら勝手に東京まで付いて来いって話だ。俺は気にしねぇし。

 

 

「……犬月さん、伊吹さんって誰ですか?」

 

「えーと、うちの酒飲みぽいっす。なんつうか、かなり慕ってるというか主人と犬の関係というか……なんかそんな感じっぽいっすね!」

 

「……どうして悪魔さんの周りには女の子が増えるんでしょう?」

 

「ドラゴンだからじゃないですかね? し、しほりん! 俺は応援してるっすよ!!」

 

「影龍王? あの者達はどうしたのじゃ?」

 

「さぁな。とりあえずさっさと龍穴まで案内してくれると助かる」

 

「勿論じゃ!」

 

 

 俺達を案内するために金髪ロリは一番前で歩き出したので俺達も一緒に歩く。しかし何故だ……? 昨日自分を殺そうとした相手に対して距離が近くないかい金髪ロリさんや。やっぱりこの子危ないわぁ! 平家並みにチョロすぎて将来心配になっちゃうわー! もっともあのヤンデレ属性とはかなり真逆になるだろうけども。

 

 

「うっへぇ……こんなところがあったのかよ」

 

「凄いです……霊力が満ちてて、体がすっごく軽くなります!」

 

 

 俺達が今いる場所は清水寺――の真下、つまりテレビでよく見る舞台から落ちた場所だ。別に飛び降りたとかじゃなくて妖怪……というよりも八坂姫と近い者しか通れない通路を歩いてここまで下りてきたんだが橘の言う通り、霊力が満ちてて浄化されそうなんだが大丈夫かな? でもここで影人形を生み出したらかなりの出力になりそうだ……流石にやらないけども。ただこの空間自体が裏京都のような異空間で仮に舞台から飛び降りたとしても俺達と出会えるわけじゃない……まっ、そうでもしないと龍穴が壊されかねないしな。

 

 そして金髪ロリに案内されて目的地に到着。目の前には石碑がある……かなり古くから置かれているようでボロボロだが神聖な気を絶えず放出しているところを見ると石碑が置かれている場所に龍脈があるという事だな。でもまさかこうして龍脈を操作する日が来るなんて思いもしなかったよ……さて、ちゃんとできるかなぁ!

 

 

「これが龍穴じゃ。今より此処の龍脈を影龍王に貸し出す手続きを行う。すまぬが前に出てもらえぬか?」

 

「あいよ」

 

 

 金髪ロリに言われた通り、一歩前に出る。それを見届けると石碑の前で正座をし、呪文を唱え始める。覇龍のような呪いの呪文とは違い、単に儀式として唱えられるような類のもの……そこに神聖さとか禍々しさとかは感じられないが唱えているのが見た目小学生、中身も小学生の女の子となれば地味に驚かされる。だってかなり真面目にやってるんだもん! 俺様、びっくり。

 

 そして呪文が唱え終わると俺の足元に霊力が集まりだした。それは少量というレベルではなくこれ一つでパワースポットが作れるぐらいの量……言ってしまえば龍脈一本丸々俺に明け渡したぐらいの質と量だ。おいおいちょっと待て! 俺は干渉出来るようにとは言ったが一本丸々貸せとは一言も言ってねぇぞ!? どうすんだよこれ!! ここまでされて操作できませんでしたとかだったら笑いものなんだけど? やだーキマリス家次期当主様ってこんなことも出来ないのーとか言われちゃうだろ!!

 

 

「――終わりじゃ。京都に流れる龍脈の一本を影龍王に貸し与えた。神々も了承しておる。京都にいるならばどこでも龍脈から力を引き出せるはずじゃ」

 

「らしいな。力が溢れてくるし京都全域をまるで見てるように把握できる……これなら行けそうだ。でもよく神様も許したな? あいつら、俺の事を知ってるはずだぞ?」

 

「そのようじゃ……しかし母上が不在のままでは京都の流れが乱れてしまう事を危惧してか今回だけ特例で貸して頂けたようだ。母上が戻り次第、龍脈は返してもらうとのことじゃ」

 

「そうしてくれ。流石に此処までの霊力はいらねぇ……さて、それじゃあ九尾探しを始めるとするか。とりあえず上に戻ろうぜ? 此処だと神聖な気が邪魔して集中できない」

 

 

 犬月、橘、金髪ロリ、茨木童子を引き連れて上へと戻るとちょうど到着したらしい赤龍帝達御一行と鉢合わせしてしまったが……まぁ、良いだろ。

 

 

「おっ、いっちぃ!」

 

「黒井! 犬月! そ、そしてしほりんも!! き、奇遇だなぁ!!」

 

「まさかここでしほりんと出くわすとは! しかし黒井! 貴様!! 聞いたぞ!! 幻のお姫様こと平家早織と付き合っているくせに別の女子とも付き合ってらしいな!!」

 

「浮気なんぞしよって! 平家さんに謝るがいい!!」

 

「――ぁ?」

 

「黒井っち! 落ち着いて! 深呼吸深呼吸!」

 

「そ、そうだって! 松田と元浜もあれは……そう! 黒井の親戚のお姉さんなんだよ!! だから違うらしい!! なっ! なっ!!」

 

 

 犬月と赤龍帝が必死にフォローというか二人を死なせないようにしているが……別に殺してもいいんじゃないかと思い始めている。だって覗きとか盗撮してる奴らだろ? 別に消えてもいいと思うんだがなぁ。まっ、面倒だからしないけども。

 

 

「……影龍王。イッセーから聞いたが龍脈を借りに此処に来たそうだが……終わったのか?」

 

「ん? おう。ご丁寧に龍脈一本借りれたから今から九尾探しをするつもりだよ」

 

「そうか。うん、手伝える事があれば言ってほしい。色々と迷惑をかけたからな、イッセーも影龍王や他に任せている事を気にしている……だから、頼む」

 

「ふぅん。まっ、勝手にすればいいんじゃねぇの? どうせなんかあれば共闘する事になるんだしな」

 

 

 それを言い残して清水寺から出て人通りが少ない場所へと移動する。龍脈の流れは把握している……毛細血管のように幾重に分岐してはいるが元は一本だ。しかも到着点は契約者の九尾――八坂姫。地面に座り、瞳を閉じて全意識を龍脈制御(霊操)に充てる……この広い京都の中で最も力が集中している部分、この広い京都の中で最も気が安定している場所、それを探し出す。ちっ、いくら霊力を含む龍脈とはいえ俺の霊操程度じゃ難しい芸当は無理か……! やっぱり霊体生成と霊体操作に極振りしてるのはダメかねぇ?

 

 

『ゼハハハハハハッ! 宿主様! そう小難しい事は考える必要はねぇぜ? 俺様を思い出せ、力を奪う感覚でやってみな!』

 

 

 なるほどな! 存在の力を奪う「捕食」の応用パターンか! 再度意識を集中させて影龍王の手袋の能力を発動しているときと同じ感覚で霊脈を辿っていくと――見つけた。なるほど、そこか! そこにいたか!!

 

 

「見つけ――ちっ! あっちにもバレたか!!」

 

 

 俺の体に生暖かい何かが纏わりついた感覚がした瞬間――目の前の光景が変化した。まず人の気配が俺達以外……いや、離れた所に赤龍帝達もいるな。それに違う場所には水無瀬にアザゼル、ヴァルキリーちゃんもか……あと匙君達シトリー眷属もこれまた違う場所にいるっぽいなぁ。それは置いておいて足元にある霧のせいで俺達は此処に飛ばされたと考えていいだろう……俺達悪魔関係者しかいない世界、見た目はさほど変わってはいないが足元に立ち込めている霧だけ先ほどまでの光景と違うし。確かそういう神器があったはずだ……名前忘れたけど。

 

 

「っ! 王様!」

 

「狼狽えるな。茨木童子、俺の命令を聞くなら金髪ロリの傍から離れるな。怪我一つ負わせんじゃねぇぞ?」

 

「了解した」

 

「犬月、嗅覚と聴覚で周囲の探索、橘も神器を出して警戒しろ。金髪ロリ、茨木童子から離れるな」

 

「はい!」

 

「う、うむ!」

 

 

 もっとも――警戒しても遅いけどな。

 

 

「――そこにいるんだろ? 隠れるならせめて夜空並みになってからした方が良いぞ?」

 

「――流石、影龍王殿。この程度では気づかれるか」

 

 

 物陰から出てきたのは一人の男、手には槍を持ち服装はどこかの学ランだ。ただしその上に中国の服っぽいものを羽織ってるどっからどう見ても怪しい奴……あの槍、この感覚が確かなら犬月と橘には傷一つつけさせるわけにはいかねぇな!

 

 

「当たり前だ。どんだけあの規格外と殺しあってると思う? さて――禍の団って事でいいんだよな?」

 

「いかにも。一応、英雄派を纏めている曹操という。初めまして、影龍王殿」

 

 

 どうやら俺達の目の前に現れたのは――英雄派のトップだったようだ。




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