ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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58話

「なぁ犬月……」

 

「どうしたいっちぃ?」

 

「あのさ――さっきからバンバンと轟音を響かせる何かを飛ばしてるのって黒井だよな?」

 

 

 若干だが顔色が悪いいっちぃが俺に聞いてくる。ははははは! 当然じゃないかねいっちぃ! あんな轟音と呪い染みた何かを巻き散らす輩が敵にいるとでも思ってるのかね! あの、王様……ここまで届いてます! 呪い関連の何かが届いてます! というよりもついさっきだけど此処に来る途中で飛んできた波動っぽいのに当たりそうになりました!! 本当に勘弁してくださいよ王様ぁ!! 近くにいるいっちぃとげんちぃなんて顔色が悪くなって今にも吐きそうな感じなんですからせめて鞘に入れて大人しくさせてください!! いくら見当外れの方角に飛ばしてるっていっても限度がありますって!!

 

 そもそも王様? なんで反対方向に向かって行ってるんですか!? こっち! 二条城はこっちですよ!?

 

 

「それ以外に誰がいると思う? この中であんな事するのってうちの王様ぐらいっしょ? あと、大丈夫?」

 

「いや、なんて言うんだろうな……遊園地でコーヒーカップに乗ってさ、おもいっきりグルグルと回して目が回ったような感じなんだよ……あと寒気もする」

 

「お前もか兵藤……俺もだよ、さっきから寒気が止まんなくて風邪引いたんじゃないかって思うぐらい体調がヤバい」

 

『恐らく魔剣が放つ龍殺しの呪いのせいだろう。あれは俺達を目の敵にしているからな。しかしクロムめ……離れていても相棒達に影響を出させるほどの呪いを巻き散らしおって! これだから奴は嫌いなんだ!』

 

『左様。我も奴らとは一括りにされたくはない。あれは(地双龍)邪龍の中でも特に頭がイカレたドラゴンだ。我が分身よ、奴のようにはなるなよ? 奴らは宿主を真っ当な王にはせん、至るのは狂った覇王の座だ』

 

「分かってるさヴリトラ……俺は、黒井のようにはなれない。まず隣に立つのも無理だしな」

 

 

 先ほどから聞こえていた声はいっちぃの籠手からのともう一つ、げんちぃの腕から現れた黒い蛇だ。これがドラゴンの中で龍王って呼ばれている存在――黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)のヴリトラ、王様のドラゴンやいっちぃのドラゴンと比べると格下らしいけど俺からすれば全部一緒だ。あの日々は絶対に忘れないだろう……! 夏休み、ドラゴンが住む領地で特訓したあの日々を! 妖魔犬状態の俺の攻撃すら鼻で笑って押し潰してきたりブレスを吐いてきたり酒飲みがぶっ飛ばしてきたドラゴンに当たって死にかけたり友達になった奴もいたり……俺、なんで生きてるんだろう? 思い返してみたら百回ぐらいは死んでるような気がするぞ……と、兎に角! 二天龍とか地双龍とか龍王とか関係なくドラゴンは強い!

 

 そもそも周りを見渡してみても戦力の異常さが良く分かる。まず鎧状態のいっちぃ、なんか強そう。隣のげんちぃ、蛇を生やしてすっごく不気味。ちょっと離れた所にいるデュランダルことゼノヴィア、なんか聖剣が変わってる。木場っちはあまり変化が無いがもし戦ったら王様と同じくテクニックタイプだから戦い難い。転生天使はとりあえず天界側だからどうでもいい。ロスヴァイセせんせーは……美人! すっげー美人! 鎧の露出凄くないかな? 王様だったらガン見してセクハラしそう。あれ? なんか足りない……って茨木童子ぃ!? どこ行ったあいつ!! 迷子か!? 迷子っすね!! 鬼は自由だから嫌なんだよぉ!!

 

 

『諦めるな、という言葉は言わんぞ我が分身よ。奴の宿主は我から見ても異常だ、そもそもクロムの奴がたった一人の人間……いや悪魔か。どちらでも良いが一人に固執し、力を合わせようとするなどありえん』

 

『そうだな。昔のクロムは口調そのものだった。殺したいから殺す、犯したいから犯す、戦いたいから戦う。見逃してやると言いながら掌を返して殺害など普通にしていたからな。ユニアと共に幾度も村を滅ぼし、他種族を蹂躙した正真正銘の悪。そんなクロムが混血悪魔相手に従っているのはおかしい……奴が生きているならばクロムも少しは大人しくなるのだがな』

 

『うむ。奴は我と同じ邪龍でありながら頭がイカレていなかったからな。我が討伐される前には姿を消してはいたが滅ぼされたと聞いている。奴とて真の英雄の類には勝てなかったのだろう』

 

「……やっぱ、ドライグ達が生きてた時の英雄って強かったんだな?」

 

『元はただの人間だったがな。例として出すならば今代のユニアの宿主か、あれが複数存在していたと考えて良い。それほど過去の人間は強かった。もっとも奴らからすれば近くにいて邪魔だったとか……そんな理由だ。英雄とは本人が死に、長い時を経て言われるようになったにすぎん。当時は英雄では無く悪と呼ばれていたからな』

 

『強い力を持つ者を恐れるのは過去も現在も同じよ。そう考えれば人間というものは変わらない生き物と言えるだろう。ドラゴンである我からは理解できぬがな』

 

 

 王様の宿敵……というか大好きオーラ全開で殺しあってるあの人みたいな人間が複数存在していたとか聞きたくなかった! きっと名のある魔物や妖怪達もそいつらに駆逐されたんだろう……昔の世界、まさに魔境なり!

 

 

「……イッセーくん、どうやら招かれたみたいだよ」

 

 

 木場っちが目の前の門を見ながらいっちぃを呼んだ。ここに到着した時は閉まってたのにどういうわけか今頃開きやがった……罠か。こういう時、王様なら俺達がいる場所から二条城に向かって攻撃しそうだ……絶対する! 魔帝剣なんていう馬鹿なんじゃないかって思える剣を手に入れたから絶対にする!! なんであの呪いを受けて生きてるのか俺は理解できない……ただあれを引きこもりの前で出さない方が良いと思うっすよ? きっと怒るし。いや怒ってセクハラ展開に発展かなぁ? あいつって見た目は美少女だから地味に、地味に羨ましいんだよね……! 胸は壁だけど。やっぱりおっぱいはデカくないとな!!

 

 俺を含めた全員が警戒をしながら門の中へと入る。あの、王様? 早く来てくれませんかね? 傍にいないってだけでものすっごく不安なんです! この不安は何をするか分からないって方ね!

 

 

「ようこそ。無事に禁手使い達を倒してきたか。それぐらいはしてもらわないと困るな」

 

 

 気持ち悪いぐらい神々しい槍を握りしめ、英雄派のトップが姿を現した。それだけじゃない……背後に数人、似たような奴らがいる――アハ! そうかそうかぁ……! テメェもいるのかぁ!!!

 

 

「影龍王以外では初めましてかな? 英雄派を纏めている曹操という。そして隣にいるのがお探しの九尾さ」

 

 

 男の隣にはすっげぇ美人の女性が立っている。胸もデカいし着物も似合っている! 狐耳も最高! 王様曰く最強の属性の人妻――九尾。でも正気じゃなさそうだ? なんていうか目に光が宿ってないしね。

 

 

「……おい! その人を返してもらう! その人がいなくなって悲しんでる子がいるんだ!」

 

「それは困る。今からちょっとした実験をするのでね、あぁ、そうだ。影龍王の乱入を期待しているかもしれないが彼は来ないよ」

 

「……あぁん? うちの王様がこんな面白い事を黙って放置するわけねぇだろ? さっきだって見当違いの方角に……あれ? そういや、いつの間にか静かに……?」

 

 

 今すぐ奴に向かって行きたい衝動を抑えつつ、外の音に集中する。先ほどまで馬鹿なんじゃないかってぐらい轟音がしていたのに今は真逆、シーンとお笑い芸人がスベッた場面のように静かだ……えっと、なんかを殴ってる音は聞こえてるんだけどきっとあれは茨木童子だろうね! あいつに関しては酒飲みと一緒で心配するだけ損だから放置放置っと……ていうかぁ! あの王様が! あの頭がおかしい王様が静かに何かをするなんてあり得ねぇ!? 何をしやがったあいつら!!

 

 

「ジークフリートがその命を懸けて影龍王を捕らえる時間を……ね。まぁ、後から決めたことだけどさ。なんて言えばいいかな? 剣士でもない相手に自慢の剣を奪われて我慢できなくなったから飛び出していったのを利用させてもらった。俺としてもジークフリートほどの剣士を失うのは痛かったがそれ以上にこの実験を邪魔されたくは無いという気持ちもある。なんせ、彼がいると俺が相手をしないといけなくなるし折角の赤龍帝と戦える場だ、ちょっとは黙っててもらわないと困るんだ」

 

「黒井を……捕らえた?」

 

「影龍王を捕らえたか。いや、無理だ。あれはそう簡単に罠に引っかかるような頭をしていない。イッセーなら……うん、言いたくは無いが引っかかっても疑問には思わないが」

 

「ちょっと待てゼノヴィア!? 確かに俺は頭は良くないけどさ! 酷くないか!?」

 

「漫才してる場合じゃねぇって! 黒井抜きで戦うなら……あいつをどうにかしないとダメだろ……!」

 

 

 げんちぃの疑問も当然。王様と殺し合って五体満足、普通に生きてる奴と戦えって言われたら……ビビる。恐らくこの場の誰もがそう思ってるだろうね。だってあの異空間で王様と奴が戦ってるのを見てるからな! 絶対に言わないけど俺は奴とは戦わない。だって俺が殺したい女が奴の後ろにいるしなぁ……!

 

 

「うんとヴリトラか。その疑問だけど安心……安心してと言って良いのか分からないな。とりあえず俺は赤龍帝と戦うつもりだからキミ達の相手は別さ、そこにいる妖魔犬は俺なんて眼中に無いみたいだし早く始めようか。ゲオルグ」

 

「分かっている。捕らえた影龍王、八坂の姫、そして京都の龍脈があれば可能だ。それにこの場には赤龍帝と龍王もいる、あれを呼ぶには十分すぎる」

 

「そうか。それじゃあ、始めてくれ」

 

 

 (曹操)の言葉に後ろにいる魔術師みたいなローブ野郎……声からして男だから野郎で合ってるはずだ。そいつが魔法陣のようなものを展開すると俺達の足元に巨大な紋様が現れた。あれを呼ぶって何を呼ぶ気なんだよ!? というよりも王様ぁ!? なんで黙ってつかまってるのぉ!? このあほーばかー!

 

 

「お、おい!! 何をする気だ!!」

 

「あぁ、呼ぶんだよ。赤龍神帝グレートレッドをね。これだけいるんだ、奴も次元の狭間から呼べるだろう。これのために光龍妃に九尾を連れてきてもらったんでね」

 

『グレートレッドを呼ぶだと? 奴は基本的には次元の狭間を漂うだけで無害な存在だ、仮に呼べたとしても聖槍程度ではあれは倒せん。オーフィスでも居なければな』

 

「知っているさ。とりあえず呼んでみて、そこから龍喰者をぶつける。そこで何が起きるかを確認したらあとは自由だ。そのためだけに事件を起こしたんでね――怒ったかい赤龍帝?」

 

「――あぁ。よく分かんねぇけどくっだらない事で悲しんだ子がいるってのはハッキリした!! 曹操! 望み通り相手をしてやる!! そこ動くんじゃねぇぞ!!!」

 

「ははは! 元よりそのつもりさ。変化しつつある赤龍帝の実力を測っておかないと今後に響くんでね。それにだ、俺達は人間。その欲深さは元人間のキミだって理解してるだろう? あれが欲しい、あれが憎い、あれが羨ましい、そう思うのと一緒だよ。それがあるからこそ人間なんだ。それにこれから怪物の相手をするんだ、これぐらいの非人道的行いは見逃してほしいね」

 

「ざけんな!!」

 

 

 いっちぃが吠えるように叫ぶとデュランダルが行動を起こした。前のゲームでは鞘なんて無かったが今は新しく取り寄せたのかそれを刀身に付けている……がなんとその鞘がゲームに登場する機械剣みたいにスライドして吐き気がするぐらいの光のオーラを放った。それを外へ放出させながら一閃、極大の斬撃が奴らに向かって飛んで行った。

 

 しかし当然とばかりに霧っぽい何かがそれを阻み、斬撃が消滅……あれを消すってやっべ! 王様レベルがまだいるってのか?

 

 

「曹操。こっちは影龍王の拘束に魔法陣制御、色々と忙しい。防げるのなら自分でやってくれないか」

 

「悪いな。ちょっと受けてみたくてさ。さてと……グレートレッドが来るまで時間はある、死合をしようか! 俺は赤龍帝、お前達――」

 

 

 突然息が出来なくなった。呼吸ってなんだと、空気とはどんなものかと、まるで死んだと錯覚するぐらい体が冷えて、震えて、そして動かない。この思考もどうやって出来ているか分からないぐらい怖い……いる、あれがいる、人間が(規格外)

 

 

「ふーん、グレートレッド呼ぶん? そっかぁ! やっぱ面白そうじゃん!!」

 

 

 奴らの背後にある建物の屋根の上にそれは居た。子供のような体格で眩しいマントを羽織った女がペットボトルを片手に持って俺達を見下していた。声は笑っている、子供のように楽しんでいる――でも無表情だ。その視線で射抜かれただけで心臓が止まりそうなぐらい殺気を放って見ている……! 声が出ない、出せるわけがない……立ってるのすら、いや、既に両膝が地面にをついている……!! いっちぃも、げんちぃも、デュランダルも、木場っちも、転生天使も、ロスヴァイセせんせーも、現れた災害(人間)によって声も出せずに膝を地面につけるしかなかった……なんで、なんで! あんなのと普通に話せるんだようちの王様は!!!

 

 

「……光龍妃」

 

「そうだよぉ? 超絶美少女の夜空ちゃんとーじょぉ! グレートレッドが見たくて東京から来ちゃった♪ えへへ~やっぱりさ! 面白い事は見逃せねぇじゃん? でもさ、その前にちょっと聞きたいんだけど――何してくれてんの?」

 

「……何がかな? 俺達は貴方に危害を加えた記憶は無いが?」

 

「へーそーなんだー。ふぅん、あのさぁ~私だってこう見えてもって言うか見た目通りふっつぅの女の子なんだぜ? 暇だなーって思ったらノワールの所に行って遊んだり(殺し合ったり)ご飯奢ってもらったり色々と楽しい事(殺し合い)してんのよ。今日だって家に行っても覚と鬼しかいねぇし、あの覚……ノワールのベッドでオナニーしてやがって殺したくなったけど我慢して遊び場(キマリス領)に行ったら魔剣有ってさ、なんか呼ばれたとか抜かしやがったんで送ってやったんよ? 自分でも偉いなぁって思った矢先にさ――マジで何してんの? おい」

 

 

 どんだけ王様のこと好きなんだよ……ストーカーされてますよ王様? あっ、でもあの人だったら喜びそうっすね……王様も目の前の人間(規格外)が大好きですし。

 

 あとやべぇ……胃の中の物が全部出そうだ……! 見れば奴らの大半、聖槍使いの男以外は座り込んで汗を流しながらあいつを見ている……なにを、したんだよ、おまえらは……!

 

 

「……光龍妃、まさか影龍王を捕らえた事に怒っているのかい?」

 

「別に。罠に引っかかろうがぶっ壊そうが私は関係ねぇし。たださ、ノワールがなんか大人しくなって変だなぁとか思って見に行ったら――偽物の私とイチャイチャしてたんだけど。なにあれ? 何してんの? なに人の偽物作ってノワールの前に登場させてんの? あいつ、偽物だって分かった上で楽しんでるからさぁ……こっちは余計に腹立つんよ。自分で探せるけどあえて聞いてあげる――あれ作った奴はどこにいる?」

 

 

 ――王様ぁぁぁっ!!! 何してんだよこんな時に!! アンタの行いで俺達が滅茶苦茶ピンチなんですけどぉぉぉっ!! イチャイチャするんなら本物としてくださいぃぃぃぃ!!!! ほんとうになにしてるんですかこんなときにぃぃぃ!!! きっと! いや確実に此処にいる全員がおんなじ事を思ってるって!!! あとその程度でガチギレする人間(規格外)ってなんなんだよぉぉっ!!! 嫉妬するならもうくっつけよぉぉ!!

 

 

「……そんな、ことで俺達の前に現れたと?」

 

「うん? そんな事って言った? へぇ~そっかそっか。うんうん! やっぱり乙女の心とか野郎には理解できねぇよね! しゃーないなぁもう! 消えろ」

 

『クフフフフフフ、乙女の思いを踏みにじる愚か者には天罰を』

 

『Luce Dragon Balance Breaker!!!』

 

 

 神々しいほどの光力を放つ山吹色の鎧を纏ったそれは空を飛んだ。たった一瞬、瞬きしただけで周囲が明るく照らされた……上空には太陽が現れている。降り注いでいる熱い光が皮膚などを焦がすんじゃないかってぐらい明るくて綺麗だ……でも悪魔の俺達にとっては毒に近いね。あぁ、しぬのか、またしぬのかぁ――

 

 ――と思った矢先、太陽が真っ二つに両断された。聖槍使いじゃない……あんな事が出来るのはこの世でたった一人だけだ。

 

 

「――何回、このチョロイン魔剣を使えばいいんだ? 流石に疲れてきたぞおい……」

 

 

 もう一人の規格外、俺の主しかいない。

 

 

 

 

「……相棒」

 

『なんだぁ?』

 

「何この空気?」

 

『知らねぇなぁ』

 

 

 ちょっと遊んでたら全滅の危機だった件について。

 

 待て待て……色々と整理させろ。白髪男を瞬殺して~チョロイン魔剣が増えて~此処に向かってたらモンスターもどきが襲ってきたからチョロイン魔剣(魔帝剣グラム)で薙ぎ払ってぇ~なんか夜空の偽物が誘ってきたから練習台として脇ペロペロしてぇ~うん! 何も無かったと思うんだけどなぁ? なんで本物の夜空が居てガチギレしてんだ? おうおう嫉妬か? 嫉妬かい夜空ちゃん? 良いぞ良いぞ! 自分にはやらないのに偽物にはやってるのを見て嫉妬したんだったら俺的には大成功だ! なんせグラムを放り投げてきた時点で夜空が近くにいるのは分かってたしな!! だから偽物()が出てきた時点でぶっ殺すのをやめて遊んで正解だったぜ!! 今日はぐっすりと寝られそうだ。

 

 

「ちょ!? あっぶねぇじゃん!! なに魔剣ぶっぱしてんのさ!!」

 

「こっちのセリフだ馬鹿野郎。悪魔が大量にいるこのフィールドで太陽なんざ作りやがって……周りを殺す気か? せめて犬月と曹操ちゃんと匙君だけ生かしてくれるんなら良いがこのフィールドごと吹っ飛ばそうとしてただろ?」

 

「とーぜん!! だって曹操が乙女の心情をそんな事とか言ったしさ! 吹き飛ばすのは当たり前っしょ!! んで? この美少女夜空ちゃんの偽物相手に変態行為してたノワールは何しに来たのさ?」

 

「お前に会いに来たに決まってんだろ? 流石の俺も偽物相手に童貞捨てれるかっての……脇ペロペロすら吐き気がしたわ」

 

「じゃあやんなし」

 

「だってお前の姿で脇見せてきてさ! 舐めて良いよとか言ったしさぁ! やるしかねぇだろ悪魔的にぃ!!」

 

 

 決して! 決して騙されたとかそんなんじゃない。ただ夜空が普段言わない事だったんで変なテンションに入っただけだ! 幻術で良かったわ! これが別の女のをペロペロしてたら京都滅ぼしてたし。

 

 

「――キモ」

 

 

 態々鎧を解いてゴミでも見るような視線を向けてきやがったよ……興奮するじゃねぇか。ドSの夜空とか俺的にはご褒美ですのでドンドンお願いします!

 

 

「男なんだから仕方ねぇだろ……ほい、あのくっだらねぇ幻術作った神器使いだ。俺の方でも半殺しにしてるけど――せめて何か言えよ」

 

 

 影人形が引きずってきた(ゴミ)を手に持って夜空に見せた瞬間、俺の腕ごと消滅した。確かにさ! グラムを持たせて呪いを与えてから両手両足の骨を折って髪の毛を一本一本引き抜いた上でチョロイン魔剣四本で頭部を突っついたりとかしてたよ? 精神崩壊してたとはいえ何か言おうぜ? 感想ぐらい言おうよ!

 

 吹き飛んだ腕を再生させるが掴んでいた男は蒸発したらしい。流石の光力だ! 惚れ惚れする!

 

 

「うーんすっきりしたぁ? でもなんかムカムカする!! すっげぇムカムカするぅ!!」

 

「そんなにムカムカすんなら相手してやるぞ? ちょうどチョロイン魔剣っつう物を手に入れたんだ、こいつの凄さを確かめたいだろ?」

 

「――にひひ! さっすがノワールぅ! 話がわっかるぅ! そんじゃさ! いつもの様に――」

 

『大変申し訳ないですがノワール・キマリス。夜空はこれからデートなのです』

 

「ちょ!? いきなり何言ってんのさユニア!?」

 

 

 ……ほ、ほ、ほぉ! で、デートと来たか……! 別に気にしないけど誰とするんでしょうね? いや! 気にしてないよ? 気にしてない! 全然気にしてない!! おい、デートってなんだよ? 銀髪イケメンか? またあいつか? よしそうだな!! まっ、嘘だろうけども。

 

 というよりなんでコソコソと話してんだ? いや嘘って気づいてるけど気になるんだよ男の子だから!

 

 

「……ほんとに? ノワールだよ? あのバカに効く?」

 

『問題無いですよ。彼ならば必ず気にして夜空しか見ません。幾度も男を食べてきた私を信用してください』

 

「……今回だけね。そんなわけでさぁノワール! ちょっとヴァーリと遊んでくっから殺し合いはまたあとね~? 良いよね別に? だって偽物相手にデレデレしてたんだしそっちで発散しなよ。そんじゃ帰るってその前にぃ! 曹操? 良い事教えてやんよ」

 

「……何だろうな、ここまでやられたらもう何を聞かされても驚くことは出来ないんだがね」

 

「飛び出してったっていう剣士もどきだけどさぁ~あれ、ノワールが持ってる魔剣が呼んだっぽいよ? 自分の汚点を消したいとかそんな感じで。勘違い野郎(ジークフリート)は何にも理解してなかったようだけどさ、魔剣だよ? 中毒症状ぐらい簡単に起こせるんだよねぇ。はい! 終わり!! そんじゃねーノワール! 次はちゃんと殺し合おうねぇ?」

 

 

 そのまま夜空はニヤリ顔をして消えていった。恐らく相棒曰くビッチらしいユニアが夜空に何かを吹き込んだんだろう……きっと仕返しとかそんな感じで。ククク、あははははは! この俺様にそんな小手先というか嘘が通用するとでも思ってんのか? 普通に通用するんでもうしません、許してください。

 

 

「――今度からは光龍妃の偽物を作らないようにしようか。影龍王ならば面白がって引っかかってくれると考えて作らせたが裏目に出たな。彼女の愛は深いな」

 

 

 すっげぇ面白かったです。

 

 

「あれって愛と呼べるの? お姉さん、同じ女として彼に同情しちゃうわ。嫉妬深くて独占欲が強いなんて何も出来なさそうじゃない」

 

 

 曹操の背後から一人の女が前に出てきた。金髪で外国人っぽい奴だが夜空の殺気で膝をついていたところを見ると雑魚なんだろう。あと可哀想とか言ってるけどさ? 俺的には嫉妬深くて独占欲強い夜空とか最高にテンション上がるんで有りなんですがダメですか?

 

 

「さぁね。影龍王ならば喜んで受け入れそうだけどな。なにせグラムすら受け入れ、ジークフリートが保有していた魔剣四本にも認められているぐらいだ。あの豹変ぶりはグラムによるものだったとは想定外だ。意思のある魔剣は厄介だ、だからこそ魔剣と呼ばれているんだろうが俺達人間からすれば弄ばれているようで嫌だね」

 

「悪いな、あの雑魚が持ってた魔剣全部寝取っちまった。返してほしいなら返すぞ? ぶっちゃけるとこの四本いらねぇし」

 

「返してほしいが使い手がいないんでね。そのままキミに渡しておくとしよう。その方が俺としても楽しみが出来て非常に嬉しい。影龍王、グラム、魔剣四本、うん良いね。人間が相手をする存在としては最高だと思う。しかし魔法陣の出力が上がらないのは何故だ……ゲオルグ、どうなっている」

 

「……やられたよ。九尾に集まっている龍脈が乱れている、外でグラムを使用していたことが原因だろうな。偶然か、それとも狙ってやったのであれば恐ろしいとしか言えない。曹操、グレートレッドは呼べそうにない」

 

 

 当たり前だろ? だからこのチョロイン魔剣で手あたり次第には波動やら呪いを放ってたんだし。異空間とはいえ九尾の力を上げるためか龍脈までこっちに来てたのは分かってたからその流れを一時的に乱させてもらったよ……最初はいらないと思ったが雑魚散らしにはもってこいで如何しようとか思ってるのは内緒な!

 

 

「そうか。元々あの存在が興味を示すかどうかすら怪しかったし特に気にする必要もないか。まぁ、なんだ。光龍妃の登場で色々と予定が狂ったがここで一戦してから撤退しようじゃないか。何もしないで逃げるってのも変な感じだもんな」

 

「やれやれ……付き合わされる俺達の身にもなってくれ。レオナルドは茨木童子の足止めで忙しいからこっちにはアンチモンスターは寄こせない。全く……何故鬼までこの空間に呼ばないとダメだったんだ?」

 

「いずれ鬼とも戦う事になるんだ。少しでもデータは欲しいだろう?」

 

「ハーハッハッハ! ちげぇねぇ! 鬼と殴り合ってみたかったがモンスターに夢中なら仕方ねぇ! そんじゃよぉ! 誰が誰を相手をする?」

 

「影龍王には悪いが今回は赤龍帝と戦わせてもらいたいね。流石に連続して戦い難い相手はご免さ」

 

「そりゃ残念。だったら九尾とやらせてもらおうか、あの金髪ロリに助けるって言っちまったし……で? 赤龍帝はどうする? あいつ、強いぞ?」

 

 

 夜空の殺気が消えたからか立ち上がって曹操ちゃん達を見ている赤龍帝に聞いてみる。なんかさ、グラムの呪いのせいで体調悪そうだけどごめんね? まぁ、そんな事は置いておいて普通に考えればパワータイプの赤龍帝とテクニックタイプの曹操が戦えば負けるだろう。なんせ攻撃を逸らされて聖槍の一撃を喰らえば即アウトだし。あんなもんをまともに受けたら即成仏だっての……厄介だよなぁ。

 

 

「――分かってる。でも、戦うさ! 黒井は言ったよな……? 正義の味方でもヒーローでも無いってさ。でもな、夏休みに小猫ちゃんに言われたんだよ……優しい赤龍帝になってくれってさ。そして今も九重って子が悲しんでるんだ……一発ぶん殴んないと気が済まない! 黒井、俺はおっぱいドラゴンだ。冥界の子供達が俺をヒーローって言ってくれるんなら俺はヒーローになる! それに子供を笑顔にできない奴がハーレム王になれるわけがない!!」

 

「……そうかい。自分で決めたんだったらやればいい。ドラゴンってのは誰かに命令されるよりも自分勝手にやった方が良いしな。まぁ、あいつはかなり強いから死ぬなよ」

 

「……お、おう!」

 

「イッセーくん! アーシアさんから受け取ったカードがあるからいつでも昇格できるわ!」

 

「頼んだぞイリナ! 悪いけどちょっと離れた所で見ててくれ!」

 

 

 そっか、先輩が居ないから代理の奴が居ないと昇格できないのか。てか天使にそれ(カード)持たせて大丈夫か? い、いや二人が良いなら良いけども。

 

 

「俺と赤龍帝、九尾と影龍王か。ゲオルグ、偶には戦えよ? 運動しないととっさの時に動かなくなるからな」

 

「魔法使いなんて引きこもりの集団だ。活発な奴の方が珍しい、しかし戦うのならば戦乙女には興味がある。北欧の魔法をこの目で拝見できるチャンスだ」

 

「それじゃあ私は剣士二人かしら? デュランダルと聖魔剣、お姉さん頑張っちゃう!」

 

「だったら俺はヴリトラだ! 邪龍の炎なんて吹き飛ばしてやるぜ!!」

 

 

 魔法使いっぽい奴がヴァルキリーちゃん、金髪女がイケメン君とデュランダル、人間かと思うぐらい巨体な男は匙君をご指名か……巨体男、死んだな。邪龍の炎が人間程度に吹き飛ばされたらドラゴンじゃねぇっての。さてさて……残った犬月はおめでとう! よかったな! 再戦できるチャンスだぞ?

 

 

「残ったキミは彼で良いんだよな?」

 

「肯定。犬月瞬は私の獲物です」

 

「上等! こっちこそテメェを譲る気はねぇってなぁ!!」

 

「お熱い事で何よりだ。それじゃあ――始めよう! 俺達が死ぬか、逃げれるか、またはこのフィールドが壊れるか……うん、どれでも良いね。さてさて、赤龍帝の実力はどれほどのものか堪能しようか!」

 

 

 それぞれの相手が決まったらしいので殺し合いが始まるようだ。しっかし曹操ちゃん……ノリノリである。俺の騎士にならない? 今ならなんとヴァーリや夜空とかと戦えるよ? まっ、良いか。とりあえず九尾を死なせないように戦わないとなぁ……めんどくせぇ。




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