ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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64話

「結局、試合までには間に合わなかったね」

 

 

 豪華なベッドで横になってリラックスしている平家が退屈そうな顔をしながらこっちを見てくる。間に合わなかったというのは恐らくチョロイン筆頭(魔帝剣グラム)の事だろうな……別に間に合わなかったぁ! 畜生! ってのにはならねぇから安心しろ。てかそれよりも……これから獅子王との大事な一戦だってのに緊張感がねぇなおい。まぁ、それは他の奴にも言えるけどよ。

 

 ソファーに座りながら周りを見渡してみる。俺達キマリス眷属の待機場として与えられた凄く豪華な内装をした一室、俺達全員が集まってもまだまだ余裕という広さだ。ここまで豪華だとなんだか落ち着かない感じがするのはきっと根が貧乏性かなんかなんだろうな……どうでも良いけどね。というよりもあと少しで獅子王とのゲームが開始だってのに四季音姉は酒を飲み、四季音妹は少女漫画を読み、平家はスマホでゲーム、半常識人の犬月も漫画を読んでリラックス状態だ……やや緊張しているのなんて水無瀬と橘の二人ぐらいだぞ? まぁ、見た感じ戦闘に支障が出るほどのものじゃなさそうだけども。

 

 

「別に使う気すらなかったんだし間に合おうが間に合わなかろうがどっちでも良いんだよ。てか珍しくこの日のために特訓してたじゃねぇか? 成果はどうよ?」

 

「問題無し。きっと無双出来るよ」

 

 

 特に問題ないよとスマホに視線を落としながら答えてきやがったが……こいつの事だ、信じて良いだろう。そもそも犬月も水無瀬も橘もかなり特訓してたし前よりもはるかに強くなってるはずだ。問題は四季音姉妹だが……あれを特訓と言って良いのか判断に苦しむな。だって酒呑童子と茨木童子がガチで殺し合ったんだぞ? しかも毎日。まるで俺と夜空のように遠慮無しの全力勝負でいつものように地双龍の遊び場(キマリス領)が大変な事になったが日常的な光景だからもう気にしないようにしよう。なんせキマリス領に住む住民達からも今日はやけに静かに暴れてるねぇみたいな感じでのほほんとしてたしな。うちの住民を驚かせるには俺と夜空が殺し合うぐらいの派手さが無いとダメなのか……訓練されすぎだろ。

 

 

「王様、俺もかなり強くなった……と思いたいっす! きっちり勝利をもぎ取ってきますよ!」

 

「そうしてもらわねぇと困る。おい四季音姉妹、お前らはどうなんだ?」

 

「うぃ~? ぜんぜぇ~んもんらいなぁ~い! にししぃ~イバラもぉへいしぃになれたしあんしんしてればいいさぁ~」

 

「伊吹に悪魔の戦い方を教わった。昇格。慣れない。考えるの苦手。でも頑張った。伊吹に褒めてもらった。主様に勝利を届ける。必ず届ける」

 

「……そうかい。まっ、お前ら二人に関しては心配してねぇよ。思う存分、派手に暴れやがれ」

 

「あいさぁ~」

 

「了解」

 

 

 たくっ、呑気な声を出しやがって……まぁ、四季音妹が昇格に慣れたなら良しとするかね。さてと、問題は美乳と巨乳のコンビか。俺達と違って普通の人間だったんだから大観衆の前で戦うとなれば緊張はするだろう……もっともその程度で戦えなくなるような奴らじゃねぇけど。水無瀬はもう少ししたら慣れるだろうからスルーするとして……問題は橘か。どうも自分だけ禁手に至ってないのが気になってるのか色々と悩みまくってたしなぁ、レイチェルや水無瀬達どうするかって感じで話し合ってると平家から聞かされたけど正直な話、こればっかりは橘自身が決めないとダメな奴だから俺は何も言うつもりはない。

 

 今も俺の対面の席に座って発声練習をしているけどなんというか……悩みが表情に出てる感じがする。平家からもなんとかしたらって視線を向けてきやがったし……仕方ねぇなぁ! ちょっとは手助けしてやるか。

 

 

「橘」

 

「は、はい! なんでしょうか?」

 

「悩み過ぎだ」

 

「え?」

 

「お前、自分だけ禁手に至ってないとか自分の役割の事とか色々悩み過ぎだ。今も表情に出てるぞ?」

 

「え!? ほ、本当ですか!?」

 

 

 目の前の橘はカバンから手鏡を取り出して自分の表情を確認し始める。可愛い。

 

 

「別に支援しか出来ねぇからって見捨てたりなんざしねぇよ。そもそもお前は水無瀬と一緒で俺達には必要な存在だ、出て行かれるとちょっとだけ困るんだよ。確かにお前の周りには……まぁ、化け物しかいねぇけどさ、俺達には出来ねぇモノがお前にはある。良いか橘――お前は何だ?」

 

「……悪魔さんの僧侶です」

 

「あぁ、そうだな。でもよ? そんなもんよりももっと大切なものがあっただろ? なんでお前は歌を歌う? なんで踊る?」

 

「……私が歌う理由、踊る理由……っ! あ、悪魔さん! あの、その……」

 

 

 パアァッと悩んでいたであろう表情が一気に笑顔へと変わる。心なしか膝の上に乗っていたオコジョもうんうんとやっと気づいたかって様子を見せている。たくっ、こんな簡単な事で悩みやがって……お前らもなんだよその顔? 黙って漫画読んだり酒飲んだりゲームしてろ!

 

 

「良いか? 禁手は自分が何をしたいか、何でありたいかを表現するものだ。言っちまえば自己中心的な我儘を貫き通せって事だよ。お前は()()()()だ。俺を呼ぶために対価としてチケットを用意するだけの半端なものじゃなく、ガチで周りを笑顔にさせてた根っからのアイドルだ。だったらそれを突き進めばいい、影龍王も惚れるアイドルを目指しやがれこのやろー!」

 

「はい! ありがとうございます悪魔さん!」

 

「全く、こんな事で悩みやがって……んで水無瀬ちゃん? その表情は何かな?」

 

「ふふふ、何でもないですよ」

 

「……」

 

「ひゃん!? だ、だからいきなり胸を揉まないでくださいぃ!」

 

 

 なんというか「私、分かっていますから」と言いたそうな水無瀬にムカついたのでおっぱいでも揉んでおこう。うん! やっぱり柔らかいし良い弾力だ! もうあれじゃねぇかな……水無瀬のおっぱいの弾力をした巨大マシュマロでも作ってキマリス領の名産品にでもすればいいんじゃね? 商品名は「水無瀬ちゃんのマシュマロおっぱい」とかそんな感じで良いだろう。買うな! 絶対に買うわ! 最悪マシュマロじゃなくてプリンでも良いから親父にちょっと相談してみるか……! 自分の領地の事を考えるなんてなんて良い次期当主なんだろうか!

 

 そんな事を考えながら水無瀬のおっぱいを揉んでいると調子が戻ったらしい橘様から笑顔で呼ばれたのでそっと胸から手を離す。やっべぇ……もうちょっと落ち込んでいた方が良かったんじゃねぇかな?

 

 そのまま橘に説教を受けていると扉をノックする音が聞こえた。どうやらもう時間のようだ……と思いきやまだ少しだけ時間はあるので普通の来客らしい。

 

 

「ほっほっほ。来てやったぞ小童よ」

 

 

 扉を開けると髭を生やした爺さんと褐色の黒髪美少女が立っていた。ラフな格好をしているとはいえ感じる力の波動は流石主神様ってか? てか隣の女の子は一体どちらさんかねぇ……なんというか初対面で殺気を向けられると思わず殺したくなっちゃうからやめてほしい。そもそもなんで――駒王学園の女子制服を着ているんだ?

 

 

「主神様か……なんですか? 激励の言葉でも言いに来たとか?」

 

「なに、頼まれておったものを届けに来ただけじゃわい。アザゼル坊は仕事でおらんしのぉ、わししかおらんかったのよ」

 

「……頼まれていたもの?」

 

 

 チラリと隣に立っている褐色女を見る。背丈は俺より少し低い、胸は夜空並みに壁だけど黒髪がすっげぇ綺麗。膝裏まで伸びてるけど大丈夫? 長髪って手入れが大変って橘が言ってたけど見た感じ、その辺を意識しているとは思えねぇんだけど。だって目に生気宿ってねぇしな。エロ漫画とかでよくある事後の女がしている目って感じだな。まぁ、そもそも感情有るのかどうかすら怪しいがそれよりも何故か後ろにいる平家がうわぁって感じで俺と褐色女を見てるけど……まさか、な! まさかねぇ! なんというか俺も主神様が頼まれた物を届けに来たって聞いてそれしか思い当たりません!

 

 

「お、おい主神様……まさか、まさかとは思うがそれ、それってあれか?」

 

「そうじゃよ。お主が頼んでおったグラムの()じゃ」

 

 

 主神様のセリフの後、もう一回だけ褐色女を見る。うん、どこからどう見ても女にしか見えねぇんだけど鞘って何? 鞘って人型でしたっけ? 俺が想像してた鞘ってさ、刀身を覆うものなんだよ……こんなのを鞘って言われてはいありがとうございますってならねぇだろ!? た、確かに獅子王の所の神滅具は人型になってるけどこいつもなのか? いやいやいや! 三大勢力と北欧と京都には悪いが馬鹿じゃねぇの!?

 

 

「……鞘って何スカ? あの、俺の目にはすっげぇ美少女が映ってるんすけど……王様? 何頼んだんすか?」

 

「普通の鞘だよ……えーと平家」

 

「事実だよ。この子……ううん、これは魔帝剣グラムに間違いない。あと見た目は女の子だけど性別は()()みたい。性別グラムって感じかな。しょーじき私もビックリしてるからそっとしておいて」

 

 

 まさかの性別無し! いや剣なんだから当然か……試合前なのに頭が痛くなってきたんだが帰っていいかな?

 

 

「あのさ、頼んでおいてあれだけど俺は普通の鞘を作ってほしかったんだけど? なんで女の子型にしちゃったか分かるように説明してほしいんですけど……?」

 

「それに関してはアザゼル坊に文句を言うがよい。バアルの小僧の近くにおる神滅具も人型じゃろ? だったら同じくしようぜとのぉ~ほっほっほ! わしも八坂姫もノリノリじゃったわ。しかしのぉ……小童よ、大半はお主が原因よ」

 

「……は?」

 

「お主、魔剣を粗末に扱っておったじゃろう? それがどうも屈辱じゃったようでなぁ、雑に扱われない鞘と剣になりたいとグラムらが望んだようでな。他にも理由があるようだが一番の理由としては間違いないの」

 

 

 高笑いしている主神様が言うには材料になった魔剣四本とグラムが雑に扱われ過ぎてちゃんと扱ってもらえるように一致団結した結果がこれ(美女化)らしい。まぁ、アザゼルとか魔王様達の見解では俺が使用した騎士の駒が変異の駒だったんじゃないかとか俺の周りに女が多いから自分も愛されたかったからとか言ってるようだけど……馬鹿なんじゃないの? ちなみにこいつ(美少女鞘)は数日前には完成していて今日までは不具合というか暴走とかしないかを確かめるために動作確認もどきをしてたそうだ。ちゃんと戦えるし普通の剣にもなれるようだけど……とりあえず馬鹿なんじゃないの? あと調べたら俺の「騎士」として登録されてました! もう馬鹿なんじゃねぇかな? 後でアザゼルはおもいっきり殴る。

 

 当然だがそんな事を聞かされた俺の後ろの方々は呆れていた。何人かは「魔剣までライバルになっちゃいました」とか「ノワール君……魔剣まで守備範囲だったなんて……」とか言ってるけど違うからな? 夜空一筋! 夜空にぞっこん! 夜空以外に興味なし!!

 

 

『――ワが王ヨ』

 

 

 うわっ、こいつ話せんのかよ? いや意思があるから当然か……えー? 話す鞘とかいらねぇんだけど! というよりも声ぐらいは男か女かハッキリさせてくれない?

 

 

『ワレら、伝説のマ剣なり。このスガタならバあのヨウな扱いはしナイだろう』

 

 

 日本語を覚えたての外国人並みにちょっと聞き取り難いがこれなら雑に扱わないだろうって言ってるんだろうな。

 

 

「いや、扱うけど?」

 

『――ナゼだ? 王はオンナに弱い、我ラ魔剣はそれをミていた。ゆエにこの形へと変イしたのダ。伝説と呼バれし我らを丁寧にアツカえ』

 

「やだよめんどくせぇ……てか本当にグラムか? 中身が違うとかじゃなくてマジでグラムなら一回剣になってみろよ」

 

『御意』

 

 

 目の前の褐色女が輝いたかと思えばいきなり剣へと変化していた。見た目は完全に今まで使っていたグラムそのもの、今まで外気に晒されていた刀身には鞘がついている――わけがなく、普通に刃が丸出し状態。でもなんだろうな……前までよりもヤバい感じがする。だって今までは触れなくても呪いを放ってきてたのに全く呪いを感じないんだもんな……相棒もガチで笑ってるし多分当たってるだろう。

 

 グラムに戻っていいぞというと再び褐色女の姿へと変わる。あぁ、マジでこの姿が鞘なのね……もう分かった! もう驚かないし認めてやろう!

 

 

「……はぁ、悪魔の駒なんて使うんじゃなかった。良いか、俺らしいし! えっと、ありがとうございました。思っていたものから結構離れてますけど無事に鞘が手に入りました。感謝します」

 

「よいよい。しかし気を付けて使うんじゃぞ? それはグラムでありグラムでない。今までと同じと思っておると死ぬからのぉ」

 

「分かってる。そもそも龍殺しの呪いがある以上は相性最悪だしな……まぁ、それでも受け入れてやるけどよ」

 

「お主の良い所はそれじゃ。懐の広さと貪欲さは歴代影龍王の中でも一番、今日のゲームを期待しておるぞ。グラムのお披露目にはもってこいじゃしな」

 

 

 ほっほっほと笑いながら主神様は部屋から去って行った。さてと……どうすっかなぁこれ!

 

 

「――グラム」

 

『なンだ?』

 

「俺に従う気有るか?」

 

『我を使うに値するモノ、あのようナ扱いをしナイのであればいかなる指示デあれ従おう』

 

「了解。んじゃ、これから獅子王眷属とのゲームだ、正直……俺も含めて全員がお前の実力が分からねぇ。だから出番を作ってやるからその姿の強さを見せてみろ。それによっては丁寧に扱ってやる」

 

『了カイした。我がナはグラム。同胞の意思ヲ継し魔剣の帝王なり』

 

 

 その場で跪いて忠誠を誓う事を示し始めた。しっかし同胞の意思を継しねぇ……まさかチョロイン四本の意思もあるとかじゃねぇよな?

 

 

「……まさか魔剣が美少女化するとは思わなかったっすわ。やっぱりここはおもしれぇ!」

 

「にしし! 良いじゃん良いじゃん! 私は好きだよ、こういうのはさ!」

 

「伊吹が良いなら私も良い」

 

「わ、私も問題無いです! アイドルたるもの魔剣さんとも仲良くできないとダメですから!」

 

「アイドル関係あるんですか……? 私も部屋の端っこに置いてあるよりは良いと思いますよ。掃除とか楽ですし」

 

 

 約一名ほどお母さんのような発言をしてるがどうやら美少女鞘状態のグラムを歓迎してるようだ。ちなみに来ている服装は俺達が今着ているものと同じく強化された駒王学園の制服みたいだ。どこから用意したんだか……別に良いけどさ。

 

 そんなこんなで時間になったのでキマリス眷属専用の入場ゲートまで移動する。俺達がこれから獅子王と対決する場所はルシファー領内にあるかなりデカいスタジアムだ。観客は他と比べるとかなりの数が入れるし俺と獅子王の対決のために同盟を結んでいる神話体系や三大勢力の技術を用いて耐久性をかなり上げてるらしい……もしそれをぶっ壊したら面白そうだよなぁ!

 

 

「さてと、色々と驚いたことが起きたけどさ……お前ら、行くぞ」

 

 

 おー! と全員が気合を入れてゲートを潜る。目に見えるのは大量の観客と長い階段、その先には俺達の陣地があるんだろう。しっかし……反対側のはずなのにここまで覇気を飛ばすとは獅子王ちゃんったらやる気満々じゃねぇか! 良いねぇ! そういうのは俺は大好きだ!!

 

 

『来ました! 影龍王、ノワール・キマリス選手が率いるキマリス眷属の入場です!!』

 

「うっへ……大歓声っすね」

 

「五月蠅い……帰りたい」

 

「早織……頑張ってちょうだい。ねっ?」

 

 

 長い長い階段を昇っていくと人数分の椅子(グラムを含めた数)とテーブルが置いてあるのが見える。もう少し先に進んだところにはまた階段があり、台のようなものがある。これは……やっぱり特殊ルールはダイス・フィギュアで決まりだな。

 

 上空には観客も見やすいように凄くデカいモニターが展開されており、イヤホンマイクを付けたド派手な衣装の男が映し出されている。その横には見覚えがあるお二人が居るんですけど……気のせいですかね? 片方はまぁ、分かるけどもう片方! てか何してんだよお前!? なんでそこにいるんだよ!? 今日はいったいどれだけ馬鹿じゃねぇのって言えば良いんだよ!!

 

 

『ごきげんよう! 今回のゲームを実況させていただく元七十二柱、ガミジン家のナウド・ガミジンです! ようやく始まりました! 若手最強! サイラオーグ・バアル選手率いるバアル眷属と歴代最強の影龍王ことノワール・キマリス選手率いるキマリス眷属の対決! 実況を担当させていただく私もワクワクしております! さて今回のゲームの審判役はルシファー眷属の女王! グレイフィア・ルキフグス様! そして解説役として堕天使の総督、アザゼル様と……光龍妃こと片霧夜空様です!!』

 

『……当ゲームの審判役を受け持ちますグレイフィア・ルキフグスです。どうぞよろしくお願いします』

 

『どうも。アザゼルです。正直、隣にいる規格外系美少女が何をしでかすか分からなくて帰りたいですね。おい光龍妃? なんだってここに居やがる……? アジュカはどうした?』

 

『ん~? 変わってって言ったら良いよって言ってさ、どっか行った! あっ! ノワールぅ!! やっほぉ~解説役してやっから楽しませてねぇ? てかさぁ~解説って何すればいいん?』

 

『あの野郎……! 一人だけ逃げやがって! ええい! 解説は俺がやるからお前さんは黙ってキマリスでも見てろ! えー、皆さん。くれぐれもこいつを捕まえるような行動をしないでください。死にます。普通に消されますのでどうか普通に楽しんで見ててください』

 

 

 アザゼル……ドンマイとは言わない。ザマァとは言ってやる! あははははははは! グラムの鞘をまともなものにしなかった罰が当たったんじゃねぇの? 胃薬用意して自由人な夜空に振り回されればいいさバーカ!! あははははは! ざまぁ! マジざまぁ!!

 

 俺の背後にいる犬月達も解説役の席に座る夜空を見て絶句してるようだ。そりゃそうだ! これから楽しい殺し合いをしようって時に究極の自己中であり規格外な夜空が居るんだぞ? 言葉を失うわ! ちなみに俺も絶句して引いてるからな? お前帰れ……とは言わないがこっちこい! 俺の女王として出場しろ!

 

 

『あれぇ? まぁ~た変なのが居るんだけど? ちょっとノワール! あんた節操無し過ぎない? 女なら誰でも良いん?』

 

 

 お前以外に興味無いのでそんな事を言わないでください。

 

 

「ふざけんな! 俺だってなぁ……普通なのを期待してたんだよ! 文句は全部隣にいる元凶に言え!」

 

『えー失礼。ちょっと私語を挟みます。おいおいキマリス、元はと言えばグラムを含めた魔剣五本を雑に扱ってたのが原因だぞ? 確かに俺はサイラオーグの兵士の様に人型にしようぜとは言った! でもな、それを決めたのはそいつだ。これを機に丁寧に扱ってやれ』

 

『グラムぅ? へーふーんほーへー。ちょっと堕天使、一発ぶん殴っていい? なんかムカムカしてきた』

 

『死ぬからやめてくれ。何も分からない会場の皆さんにご説明しましょう。ノワール・キマリスと共にいる褐色肌の黒髪美少女ですが奴が手に入れた魔剣の帝王と称されるグラムです』

 

『な、なんとぉ!! キマリス眷属の中にいる見慣れない人物は魔剣のようです!! アザゼル総督! どういう事でしょうか!!』

 

『えぇ。事の始まりはノワール・キマリスがグラムの鞘を探しているというものでして……あれは馬鹿です。イッセー以上の馬鹿なんで他にも手に入れた魔剣四本を材料にして鞘を作ろうって発想に至りました。馬鹿ですね。そして何よりも恐ろしいのは鞘の作成に悪魔の駒を使用した事です。三大勢力、北欧、京都の技術を使って作り出した……いや違うな、魔剣五本の意思を悪魔の駒が拾い上げて形にした存在とでもいうべきか。いわば彼女は魔剣の帝王であり、キマリス眷属の騎士でもある存在というわけだ』

 

『なるほど! サイラオーグ選手の兵士も神滅具とのことですが同じ存在……というわけですね!』

 

『そうですね。もっともサイラオーグの兵士は神滅具のせいか常時不安定だがあっちは魔剣、暴走などはしない。まぁ、何かあってもキマリスが止めるから大丈夫だろ』

 

 

 この野郎……人の事を馬鹿っていうんじゃねぇよ? 普通だろ! 誰だって思いつくだろ!

 

 

『開始前から面白い事を聞けて私! 興奮しております! さてそろそろ進行をしないと観客の皆さんから怒られちゃいそうですので進めたいと思います! まずはフェニックスの涙についてですが禍の団の連続テロによって需要が跳ね上がりました……しかし! フェニックス家のご厚意によって両眷属に一つ、配布することができます! 本当にありがとうございます!』

 

『ノワールには必要ねぇから二個ともバアルにあげればいいのにねぇ』

 

『光龍妃、お前さんは喋らなくていい。口を閉じてなさい、お菓子上げるから。なんなら好きなものを頼みなさい』

 

『うっそマジで!? なんだよぉ~堕天使の癖にやっさしぃじゃん!』

 

『……え、えーと続けます! 今回のゲーム内容ですが両眷属が一つのフィールドを駆け回るタイプではなく短期決戦で決めるものとなっております。気づいている人もいるでしょうがそう! ダイス・フィギュアです!』

 

 

 実況の男の指示に従い、俺は台の所まで移動する。そこで会場の方々に分かるようにダイス・フィギュアの説明が始まるが俺達にとっては二回目だし聞き流しても良いな……というよりも解説役の席に座ってる夜空が気になりすぎて言葉が耳に入ってこねぇ。いやぁ! なんで居るんだろうなあいつ! 確かに乱入されないようにしてやんよ! って感じで言ってたがまさかあの場所に居るとは思わねぇって!

 

 ちなみに王の駒価値は俺も獅子王も「12」だ。当然と言えば当然……か? あと今回は連続出場は無理らしいがこの辺もどうでも良いな。

 

 

『ではここで今回のゲームにおける特別ルールをご説明しましょう。まずサイラオーグ・バアル選手の兵士、レグルス選手の扱いですが両眷属の王が全力で戦う事を望んでいること、レグルス選手が不安定であることを考慮し、レグルス選手はサイラオーグ選手の()()として扱う事が出来ます。仮にダイスの出目の合計が「12」としましょう、本来であればサイラオーグ選手が出場となれば他は出られません! しかしレグルス選手に限り共に出場することが許可されます! しかし条件としてその際ですがレグルス選手は「兵士」として扱われません! あくまでサイラオーグ選手の神器として扱われます! 分かりやすく説明させていただきますと兵士の駒の特徴である「昇格」を行う事は出来ません。しかし本来の姿で戦う事は問題ありません! あくまで「昇格」を行えない事だけを覚えておいてください!』

 

 

 なるほど……そうきやがったか。まぁ、確かに元が神滅具なら「兵士」として扱うよりも獅子王の神器として扱った方が色々と楽だし周りも盛り上がるだろう。となるとバアル眷属は王、女王、戦車、騎士、僧侶の面々で戦う事になるから数的には結構互角だな。

 

 

「配慮感謝する。俺もレグルスを単独で出場させる予定は無かった。神器であるためか酷く不安定でな……唯一制御できる俺が傍に居なければ危険だからな。しかし……俺の神器として扱うか! これならば影龍王殿と本気で戦える!」

 

「こっちとしてもありがたいわ。文句を言わなくても済んだしな……あー審判役?」

 

『はい! なんでしょうか?』

 

「うちのチョロイン筆頭……あーいやグラムだがついさっき受け取ったばっかりで獅子王の兵士と同じく本当に安全に戦えるのか俺も分からん。だからこいつが暴走したら俺が止めるし、その試合は負けで良い。あとこいつ(魔帝剣グラム)は一回しか出場させない。覚えておいてくれ」

 

『分かりました! キマリス眷属の騎士、魔帝剣グラム選手は一回しか出場しないですね!』

 

「あぁ。原理的には獅子王の兵士と似たようなもんだしな……というわけだ、グラムと戦えるのは一回だけだが良いよな? 北欧の主神様も大丈夫とは言ってたが勝手に暴れられて台無しにされたくねぇしよ」

 

「構わぬ。レグルスと同存在ならばその苦労が分かるのはこの場では俺だけだ。異論はない」

 

『ハなしが違ウぞ? 堕天シの総督はたのシく戦えるとイっていた。何故いチどしかたたカえん?』

 

「俺の所にやってくるのがおせぇんだよ。ちなみに拗ねて手を抜きやがったら前以上に雑に扱うから覚えておけよ?」

 

『ヌぅ!』

 

 

 背後から殺気を飛ばして抗議してきやがったが無視だ無視。別に普通の鞘にならなかった事に文句を言いたいからじゃないよ? 危険だからね! 仕方ないね!

 

 

『ではそろそろ試合を開始しましょう! サイラオーグ・バアルチームとノワール・キマリスチームのレーティングゲームを開始します! ゲームスタート!!』

 

『それでは両「王」の選手はダイスを振ってください』

 

 

 審判役の指示に従って俺と獅子王はダイスを振る。互いの出目が巨大モニターに映し出されると俺が「3」で獅子王が「3」となっていた。つまり出目の合計は「6」だから俺達だと四季音妹単独か騎士と僧侶、兵士の組み合わせか……どうすっかねぇ。

 

 実況役が俺達の出目を声高々に宣言して誰が出てくるのかと煽り始める。実況慣れしてねぇかこいつ……? まさか名実況者とかじゃないよな? 審判役から選手を決めるのは五分、それまでは各陣営の周囲を結界で覆われるなどの説明が入る。勿論平家対策で読心系の能力も無効化されるらしいが別段問題ねぇな。

 

 

「6っすか……俺はいつでもいけますよ!」

 

「だったら出て良いよ。私は出たくない」

 

「早織……もうっ、ちゃんとしないとダメですよ? あの、ノワール君……私もいけますよ」

 

 

 普通に考えて出目の合計が「6」なら犬月と僧侶、騎士の組み合わせで投入するのが普通だな……四季音妹単独でも問題ねぇがなんか普通すぎて面白くねぇ。そんじゃ宣言通りに行ってもらおうかね!

 

 制限時間が終わり、俺が選んだ選手が別空間に作られたバトルフィールドに転送される。どうやら毎回ランダムでフィールドが選ばれるみたいで今回は森林地帯のようだ。なんだよ……毎回変わるんなら考えてた戦略が出来ねぇじゃねぇか……しゃーねぇ! 別の事を考えるとするかね。てかコイツを選んだ時にうん知ってたって感じで見られたのがちょっとイラってした……なんなんだよ水無瀬も平家も四季音姉も! 俺ってそんなに分かりやすいか?

 

『第一試合の出場選手がフィールドに到着しました! ノワール・キマリスチームからは……なんとぉ! 魔帝剣グラム選手! しかも一人です! 対するサイラオーグ・バアルチームからはラドーラ・ブネ選手! こちらも一人です! まさかのタイマン勝負! これは目が離せませんよぉ!!』

 

 

 俺が選んだのはついさっき加入したばっかりのチョロイン筆頭(魔帝剣グラム)。なんせこいつがどこまで戦えるかは俺も分からねぇしさっさと出番与えて引っ込んで貰わねぇと困るんだよ……運良く「3」以上が出たから()()が出ない一人で出場させたけどまさか相手も一人とはねぇ。まぁ、読みやすかったよなぁ……あんだけ堂々と言ったんだ。俺の事を知ってる奴なら簡単に読まれるか。

 

 目の前のモニターには褐色肌の黒髪美少女とひょろ長い男が向かい合っている。なんというかガリガリって表現できる奴だ……ちゃんと飯食ってんのか?

 

 

『我、魔テイけングラムなり。汝ガなを名乗ルがいイ』

 

『ラドーネ・ブネ。元七十二柱、ブネ家の血を引く末裔だ。今回の戦い、我が主に許しを得てこの場に参上した――魔帝剣グラムとの一騎打ちをするために』

 

『了解シた。汝からドらごんのにオいがする。ワガ王から一度シか戦エぬため――全力で殺してヤろう(愛してやろう)

 

 

 チョロイン筆頭(魔帝剣グラム)は美少女顔なのにも関わらず酷い(良い)笑顔を浮かべて自らの片腕を()へと変えた。服の袖で良く分からないが恐らく肘先からは全て剣の刃だろう……なるほどな、戦う術を持っているとは言ってたが自分の体の一部を刃に変えれるってわけか。そりゃあ、材料になったのは魔剣だもんな! にしても相手が元七十二柱とはねぇ、確か獅子王眷属の中には俺と同じで混血で断絶した奴らが居るみたいだけどよく見つけたな? 殆どは人間界の秘境やらに隠れてるっぽいのに……ブネ家は悪魔でありドラゴンでもある特殊な一族だってのは知ってるがマジでそうなのか?

 

 俺の疑問に答えるようにガリガリ君の体がムキムキに膨れ上がっていき、姿を変えていく。鋭利な爪、雄々しい翼、そして尻尾……そう、ドラゴンだ。

 

 

『うっわ! ドラゴンだよドラゴン! すっげぇ!! あーでも雑魚だわ。なんだよビックリして損したじゃん!』

 

『そりゃお前さんに比べたらそうだろうよ……にしてもサイラオーグの奴、思い切った事をしやがって』

 

『うんうん。そりゃあさぁ! ノワールって分かりやすい性格してっけど本気でドラゴンぶつけてくるなんて良い性格してんじゃん。ポップコーンうんめぇ~!』

 

『……ねぇこれって経費で落ちない?』

 

『落ちません。し、しかしお二人はノワール選手がグラム選手を選ぶ事を分かっていたんですか?』

 

『うん。言ったっしょ? 一回しか出さないって。ノワールって自分の眷属大好きだからさぁ~自分も安全か危険か分かんねぇ奴を一緒に出すわけねぇの。だから3以上が出た時点で魔剣を出すのはとーぜん、そこで勝とうが負けようが関係ねぇって感じなんだよねーどうどう? 当たってるぅ? ちょっとノワール! こっちむけー!!』

 

 

 お前は黙ってアザゼルの財布と貯金をすっからかんにするまで食べてなさい。

 

 

「……王様、グラムって確か龍殺しの呪いがあるんすよね? 分かってたんならなんでドラゴンを出してきたんすか?」

 

「今後のためだろ」

 

「へ?」

 

「龍殺しなんざ滅多に見られるもんじゃねぇ。脅威を知っているのと知らないのとじゃ戦い方も変わってくる……だからチョロインが出てくるのを分かった上であいつを出してきやがったんだよ。龍殺しの恐ろしさを体験させるためにな」

 

 

 もっともあの感じはここ最近になって変化が出来るようになったっぽいけどな。龍のオーラがかなり低いしもっと鍛錬してからにしても良かったんじゃねぇか? あと構ってもらえないからって叫ぶなばーか! あとで遊んであげるから黙ってなさい!

 

 

『――いザ、勝負なリ!』

 

 

 チョロイン筆頭(グラム)の姿が消え、元ガリガリ君の足先を片腕を変化させた刃で切り裂いた。見た感じ、騎士の駒の特徴である速度も反映されてるっぽいな……しかもあの形、ノートゥングか?

 

 

『速い! しかし龍の呪いとやらが無いぞ! 帝王と称された魔剣の名が泣いているのではないか!!』

 

『戦いはハじまったばかリよ、焦ルでない』

 

 

 周りに生えている木々を利用して高速で移動しながら元ガリガリ男を翻弄している。確か相手は戦車だったはずだから攻撃力と防御力がかなり高いはずなのに何でもないように斬ってるなぁ……まぁ、回転して威力を上げてるんだろうけどなんでそんな戦い方を普通の「剣」だったお前が知ってんだよ?

 

 元ガリガリ男も斬られ続けるだけではなく辺りの木々を破壊してダメージを与えようとしている。下級ドラゴンと言えども戦車だから一発を受けたらまずアウトだろう……さてチョロイン筆頭(グラム)、お前はどう戦う?

 

 

『カたいナ』

 

『俺はサイラオーグ様の戦車! そう簡単には負けんぞ帝王!!』

 

『ならばコれなラどうよ』

 

 

 変異していない片腕を刃へと変え、高速で元ガリガリ君に接近したチョロインは回転しながら足首を切り裂くと同時に氷の柱を生み出した。あの能力はダインスレイブの……ドラゴンの鱗すら切り裂いた刃はノートゥング、そんでダインスレイブときたら残った二本の魔剣の力もあるっぽいな。鞘にした影響か……? 確かにデュランダルもエクスカリバーの能力を使用できるってことは言ってたがまさかグラムもとはねぇ!

 

 氷の柱に足首を拘束された元ガリガリ男は雄たけびを上げて強引に抜け出した。さっすが戦車、やることが派手だねぇ!

 

 

『これが魔剣の力か! だがこの程度ぉ! 俺は……俺はサイラオーグ様の夢を! 未来を共に進む! その程度では……止まらんぞぉ!!!』

 

 

 口から龍のブレスを吐きだし、チョロイン(魔帝剣グラム)を捕らえようとするが騎士(ナイト)特有の速度で範囲外まで移動して回避する。でも妙だな……さっきから手探り感がありすぎる。まるでどこまでやれば壊れないかと確かめる職人のような……あぁ、そういう事かよ。たくっ、余裕じゃねぇか。

 

 回避されたと認識した元ガリガリ男は翼を広げて空を飛び、上空から一気に地上にいるチョロイン(魔帝剣グラム)に拳を叩き込もうと急降下した。あの巨体だ……躱さねぇと大ダメージだろう――もっとも躱す必要すらないようだけども。

 

 

『――な、に』

 

 

 ドスンッと轟音が鳴り響いた。上空から急降下をしたんだから地面に激突するのは当然……でも地面に激突したような音が()()響き渡った。元ガリガリ男は一人、分裂なんてしたわけじゃない。ならグラムが吹き飛ばされたからと思うだろうがそれも違う……なら何故か? 答えは簡単だ――

 

 ――ラドーネ・ブネの片腕が見事なまでに切り落とされたからだ。

 

 

『すマぬな、このかたチになって殺しをシたことがナい。加減がワからぬ状態だッた。全力でヤってモ良いのか。詫びよウ、愛すべきドラゴンよ』

 

『……ぐぅぅ!! まだだぁっ! 片腕が切り落とされようと俺は止まらん! 拾っていただいた恩を返すまで! 夢を共に見るために勝たねばならんのだぁ!!』

 

『知らぬ』

 

 

 向かってきたドラゴンの足元に一瞬で移動して高速回転しながら片足を切り落とす。その姿はまるで舞っているような印象を持たせる綺麗な動きだ……顔がヤバいけど。

 

 

『汝ラのゆメなど知らぬ。ワレらは魔剣として使われルためだケに此処にイる。汝にハ分からぬだろう……伝説と称サれたワレらが味わった苦しみを……! 鞘がナいというリゆウで踏みつけられ! 投ゲすテられ! 邪魔と言われホウちされる! 何故ワレらがあのヨウな目に合わねばナらぬ!! 抗議をしタ! しかし帰ッてきた答えはゴみのようニ雑に扱われたのダ! 帝王と称されたワれが何故だ!!』

 

「ノワール、あんな事を言ってるけどどうするの?」

 

「知らん。だってマジで鞘無かったし邪魔だったんだもん」

 

「……あの魔剣は泣いて良いっすよ? てかあれ、泣いてません?」

 

 

 気のせいだ。

 

 

『シかし! 剣として使わレるだろうと我慢をシた! だが……我が同胞を! 兄弟ヲ! ワが鞘のザいリョうにしようというアクマの所業にハ耐えられん!! ユエに我らの答エは決まった!! わレらが一つとナりて我が王の剣とナる! いーヴぃるピースとやらが応えてクれた! 叶えてくれた! 女のスがた()ならばあのヨうな扱いはナイだろうと我ラは至った! 汝ハただの踏み台ヨ、我らガ願いを叶えるタメのナ!』

 

 

 すっげぇカッコいい事を言っているようでかなりダメな発言をしてるっぽいのは気のせいか? てかなんだよお前ら……その視線は? いやいや待て待て! 確かに雑に扱った! 遠くに投げたり放置したり踏みつけたりダーツごっこしたりしたよ? でも結構丁寧に扱った方だぜ? なんでそんな目で見られねぇとダメなの?

 

 てかあいつ、やっぱり魔剣四本分の魂を受け継いでんのかよ……しかも全員が「剣」として扱われることを願ってるって馬鹿なんじゃねぇの? もっと違う事を願おうぜ!

 

 

『愛スべきドラゴんよ! 汝の気迫、しカと見届けた――では消えるガいイ』

 

 

 片腕の刃に極悪な龍殺しの呪いを集めたグラムは酷い笑顔のまま元ガリガリ君を一閃。その一撃により全身に呪いの波動が散らばって巨大な体から鮮血が飛び散った。かなりのダメージと判断されたのかリタイアの光に包まれてフィールドから消えていったが……なんか、ごめん。うちの鞘が変なこと言って本当にごめん。まぁ、そんな終わったことは置いておいてだ……あの状態でも龍殺しの呪いも放てるのね。見た感じ、グラムを含めた魔剣五本の力を行使可能な動ける鞘って感じだな。うーん、見た目美少女だけどさぁ……顔ひでぇ! もっと笑顔の練習した方が良いぞ?

 

 

『――我は魔剣の帝王であり、龍を愛する(殺害)モノなり』

 

 

 血の雨を浴びて笑う(グラム)はまさに魔剣の帝王と呼ばれるに相応しい姿だった。




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