ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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68話

「ノワール」

 

「あん?」

 

「もう学園祭が始まってるね」

 

「だな」

 

「サボっていいの? 心霊探索同好会の部長さん」

 

「ちゃんと偽物が出席してるから俺はサボってはいないな。副部長様はサボって良いのかよ?」

 

「病弱だから仕方がない」

 

 

 カチカチと俺の膝の上に座って積んでいるエロゲーをプレイしている平家が当たり前の様に答えるが……何が病弱だよ? 普通に健康じゃねぇか。病弱だっていうならさっさと自分のベッドで横になって寝てろよ?

 

 

「ヤダ。昨日、私を怖がらせた罪を償ってもらわないと困る」

 

 

 ジト目で俺を見てくるがその表情は本気で心配しているものだ。昨日……つまり俺達キマリス眷属とバアル眷属のゲームで俺と獅子お、いや違うな……サイラオーグとの最終決戦時に使った漆黒の鎧が今の現状を作った元凶だと思う。

 

 影龍王の漆黒鎧(プルシャドール・ジャガーノート)()覇龍融合(オーバーフュージョン)。暴走形態である覇龍に代わるモノにして俺が編み出した影龍王の再生鎧ver影人形融合2の強化形態。歴代全ての呪いを受け入れた上で俺の呪いに染め上げた結果、覇龍の力を鎧に纏わせることが出来た状態……当然圧倒的な力を引き出せる代わりに使用後は体力の殆どを消費と意識を強く持っていないと精神力が削られて廃人コースに一直線というデメリットがあるけどな。サイラオーグ相手に死ぬ危険性は無いが下手をすると死ぬといった理由はこれの事だ……肉体的には死なないが精神的に死ぬ、それがこの漆黒の鎧の恐ろしさだ。なんせマジで意識を強く持ってねぇと歴代共の呪いで精神力が削られて相棒に身体を明け渡す事になるからなぁ! 邪龍を受け入れるってのはそういう事だ……と相棒は言ってたけど俺としては後悔は全然していない! これが俺が選んだ道――覇王になる道だからな!

 

 そんなわけで昨日はマジで大変だった。平家は呪いの声のせいで酷く不安定になったし、俺は俺で体力の殆どを消費したから死んだように眠りにつく羽目になった。その結果! こうしてサボれたんだけどね! きっと今は俺の姿に化けたヴィルが何とかしてくれてるだろう……俺の使い魔だしきっと大丈夫!

 

 

「それを使ったノワールの身体にいくつもの呪い()があった……殺したい、壊したい、生きたい、犯したい、憎い憎い憎い全てが憎い! ってね。覚妖怪を殺す気? あんなの私じゃなかったら精神的に死んでたよ」

 

「そりゃそうだろ? なんせあの状態はガチで呪いの集合体だ。近くに居れば身体を汚染するし魂が穢れる……力が弱い奴や仙術を得意としている者は意識を強く持たなければ対処出来ずに死ぬって相棒が言ってたぐらい極悪な形態だぞ? むしろ常日頃から俺に慣れてて良かったと感謝しろ」

 

 

 そうじゃなかったら今頃こいつは廃人同然になってただろう。普段から俺の心を読んで、俺を理解して、高校生という欲望丸出しな奴らが多い学園に通ってなければこいつはもう使い物にならなかっただろうな。基本的に影龍王の漆黒鎧・覇龍融合――長いから漆黒の鎧にしようか。こいつはタイマンで使う事が前提になる……そもそも呪いの集大成と言っても良い形態だ、下手をすると視界に入れただけで、傍にいるだけで味方を壊しかねない。だから誰かと協力して敵を倒すとか絶対に考えられないんだよね! だってドラゴンだし。

 

 

「……ノワール」

 

「ん?」

 

「勝手に死んだら許さないから」

 

 

 自分の体を俺に預けながら小さく呟いた。たくっ、心配しなくても勝手に死ぬわけねぇだろ? そもそも俺が死ぬ時は夜空に負けた時か夜空が死んだ時だけだ。もしフラれたら……その時はお前らに慰めてもらうから多分生きていけると思う。たとえ夜空にフラれてもあいつの顔が見れるんなら多分生きていける……だけどもし見られないなら普通に死ぬかも。そう考えると俺も人のことは言えねぇな……ここまで夜空にぞっこんなんだしさ。

 

 

「さっさと告白してフラれれば良いよ」

 

「おいこら……そこは応援しろよ」

 

「ヤダ。そもそも女って恋愛を応援するとか絶対にしないし。知ってる? 女が他の女にあの子の事が好きなんだって言うのは狙ってるから手を出すなって意味なんだよ? 他にも恋愛相談するのってその人物が自分のライバルなのかどうか確かめるためにするものだし。それにノワールって光龍妃と付き合ったらもうぞっこんのぞっこんで私の事を見ないかもしれないしね……だからフラれてくれない?」

 

「この野郎……! 一番じゃなくても良いって言ったのはお前じゃなかったか?」

 

「それはそれ、これはこれ。一番じゃなくても良いけどちゃんと私を見てくれなきゃヤダ」

 

「……物好きめ」

 

「それほどでもない」

 

 

 なんで嬉しそうな顔をするのか俺には理解できん。そもそも橘もなんだって俺の事が好きって宣言しちゃったのかねぇ? そのせいで今日の朝刊……あっ! 人間界じゃなくて冥界の方な! それに『影龍王を巡る女の戦い勃発! 本命はいったい誰なのか!』って書かれちゃったし! とりあえずそれを書いた所は謎の光によって跡形もなく消えたらしいけど……誰がやったんだろうねー! 俺様、全然心当たり無いわー!

 

 まぁ、そんな記事が書かれちゃったから橘はもう大変! 朝から顔真っ赤で平家の様に引きこもろうとしてたしね! でもなぁ……朝っぱらから夜這いならぬ朝這いしてきた時点でもうアウトだと思うのは俺だけか? ビックリしたわ! 誰かが忍び込んできたなと思って対応したら橘だったんだもん。パジャマ姿だったからノーブラでさ、押し倒した状態で胸を揉んだら滅茶苦茶柔らかかった! そのまま数分間ぐらい揉んでたら目をトロンとさせてウェルカム状態になってさぁ大変! 俺様の鋼のような理性が無ければ即死だっただろう。

 

 

「元々志保って淫乱気質だから。ノワールに見られたいし触ってほしいのに周りの目があるから我慢してたけど昨日のゲームで見られなければ何も問題無いって発想に至ったみたい。だから二人きりになったら攻めてくると思うよ」

 

「……俺にどうしてほしいんだよ」

 

「襲ってほしいんだと思うよ。勿論私も同じだけね。今だってパジャマの下はノーブラノーパンだし何時でも抱かれる準備はおっけー。このまましちゃう? この硬くなってるものを気持ちよくしてあげるよ?」

 

「俺にだって選ぶ権利があるんでノーサンキュー。ところで……これどうすんだよ?」

 

 

 視線を横に向けると褐色黒髪美少女となったグラムが全裸になってベッドで寝ている。今の状況を説明するなら俺達三人はベッドの上にいる。ただし俺と平家は横にならずに座ってエロゲをしているから純粋に爆睡しているのはグラムだけだ。褐色肌ってマジエロイ。

 

 そして平家? 断られたからってノワール君のノワール君を指で弄らないでもらえませんかねぇ? お前の柔らかい体に触れて反応しちゃってるだけだからマジでやめてくれない? 流石の俺も朝からは……うん、夜なら良いけど朝からだと賢者タイムがヤバい事になるしね!

 

 

「ノワールがちゃんと扱えば何も問題無いと思うよ」

 

「んなめんどくせぇことするわけねぇだろ……てかお前、性別は無いって言ってたよな? 全裸のこいつを見たが普通に女だったぞ?」

 

「うん言ったよ。だって()()に性別なんてあるはずないよ。それにこの姿って変化の術みたいなものだし性別なんて可変式だよ? 男になりたいと思えば男になるし、女になりたいと思えば女になる。今はノワールに剣と鞘として扱ってほしい、雑に扱われたくないってだけで女の身体()になってるけどノワールが男になれって言ったら普通に変化すると思うね」

 

「……なんだそのメンドクサイ仕様は?」

 

「だって魔剣だもん。性別なんて曖昧、声だって男か女かなんて分かんないんだからしょーがない」

 

『つまり男の娘になれって言ったらなるんだな、ゼハハハハハ! テンション上がってきたぁ!』

 

「流石に男の娘はねぇわ」

 

『――マジデェ?』

 

 

 だって男か女かどっちが良いって聞かれたら普通に女の子が良いです。腋好きとはいえその辺は普通の男ですし……でもちょこっとだけ興味があるのは認めても良いかもしれないがあくまで女の子優先な! てかなんでコイツは俺の部屋で爆睡してんだ? 普通にサボって平家とエロゲしてたら部屋に入ってきて「我が王よ、我らは寝る」と言って俺のベッドで寝始めたし……とりあえず空いている手で褐色肌ぷにぷにしたりちっぱい揉んだりしてるけど反応が無いのがムカつく。女の快感に悶えるグラムちゃんとか見たいのに!

 

 

「変態」

 

「そのセリフ、お前も当てはまるからな? 今やってる事は女としてダメだろ」

 

「ダメじゃないよ。女の子は好きな男のモノの匂いを嗅いだり触ったりするのが大好きな生き物だし。ズボン越しだけど気持ちいいでしょ?」

 

 

 滅茶苦茶気持ち良いです。

 

 

「だったら問題無いよ」

 

「アホ。ほれ、そろそろ退け。飯作ってくるから」

 

「カップラーメン希望」

 

「元からそのつもりだよ」

 

 

 なんで俺が飯を作らないとダメなんだって話だ。い、いややろうと思えば作れるよ? でも料理というか台所って基本的に水無瀬の領域だから迂闊に入れないんだよ。それに水無瀬は俺好みの味付けをしてくれるからマジで良妻候補だわ! 不幸だけど!

 

 そんなぐっだらない事を思いつつ送られてきたカップラーメンを求めて居間へと降りるが誰も居ない。学校に通っていない四季音姉妹はどうやらグラムと同じように爆睡中のようだ……だって静かだし。きっとお部屋の中ではゆりっゆりな光景が広がっているだろう。覗きたいけど殴られたくないから妄想だけで留めておこうかね! 台所の片隅に山のように積んであるカップ麺の山から適当に三つを持って部屋へと戻る。なんとこのカップ麺の山は昨日の夜中にヴァーリから送られてきたものです! しかもエロエロな黒猫ちゃんが態々足を運んでまで届けてくれた素晴らしいものだ! なんでカップ麺と聞かれたら爽やか系イケメン(美猴)が安売りしてたのを大量に買ってきたらしく処分に困ってたらしい……お前らの食生活は大丈夫か? こっちとしてはありがたいけどさ!

 

 

「昨日あれだけ飲んでたから二人とも寝てるよ。絡み合ってるとかはしてないっぽい」

 

「なんだ面白くねぇ……てかこの野郎、飯の時だけ起きてきやがって。てかお前……魔剣の癖に食えるのかよ?」

 

『問ダいない。こノすがタは人とおなジなり。食じも可能デあリコも宿せる。先のかいワも聞コえていタぞ。ワガ王が望むのデあれバオトこになってヤろう』

 

「そのままで良いっての……俺は男好きなわけじゃねぇし。一応お前の分の飯を持ってきたからさっさと食うぞ」

 

 

 そんなわけで三人仲良くカップラーメンをもぐもぐして食い終わったらまたベッドの上で積みゲー消化。先ほどまで爆睡していたグラムも俺の隣で興味深そうにプレイしていた純愛系じゃなくて……まぁ、所謂発散目的のエロ満載な奴をガン見していた。どうやら過去にグラムを使ってた奴らの営みを見てたからその辺の動作は知ってるらしい。行為の意味までは理解できてないようだけどな……というかそりゃ過去のグラム所有者も見られてるとは思ってなかっただろうな! 普通に剣として扱ってただろうし。

 

 ちなみに今の姿は過去に自分(グラム)を使ってた女の姿を真似てるらしい。こんなエロい体をした奴が魔剣の使い手だったとかすげぇなおい……まっ、最後は弱ってるところを狙われて奴隷コースだったらしけども。

 

 

『わガ王よ』

 

「んぁ? なんだー? 今レベル上げで忙しいんだが?」

 

『早ク我らヲ使え。先のゲームでハいチどしか戦えていナいのだ、血ガたりヌ! ワれらは生まれカわったのダ! さァ、使うガいイ!!』

 

「ヤダめんどい。はぁ? なんだよこのスキル持ち……馬鹿じゃねぇの!」

 

「このキャラの特徴だよ。全属性耐性で貫通持ちじゃないと突破不可能。でも貫通攻撃したら倍のダメージが帰ってくるクソゲー仕様。前々のシナリオで反射ダメ無効能力持ちが仲間になったからそれを上手く使わないと突破出来ませーん」

 

「エロシーン見たいだけなのになんでレベル上げと戦闘があるんだよ! あーめんどくせぇ! んなもん使わなくても突破してやらぁ!」

 

『わガ王よ、早くワレらをつカえ! 我らハ伝せツのまケんだ! 何故誇りに思ワぬ!!』

 

「ただの剣だろうが? だから今は忙しいって言ってるだろ……構ってほしかったらそこでオナニーでもしてろ。平家、ちょっとだけ操作独占するぞ」

 

「りょーかい、終わるまでノワールの首筋舐めてるね」

 

『おナにーだと? ぬゥ、わかラぬが先ほどノ場面とおなジ事をすレばいいノだな』

 

 

 そんなわけで始まりましたノワール君によるエロゲー攻略大作戦! 何故か知らないが俺の首筋を舐め続ける平家と隣でオナニーし始めた魔帝剣グラムちゃんが物凄く気になりますが今は戦闘に集中しよう。てか無表情でしないでもらえませんかねぇ? せめて声を出すとかその辺を真面目に……いいやめんどくせぇ! とりあえずこのクソ仕様なボスを突破することに専念すっか!

 

 

「――悪魔さん♪」

 

「――キマリス様、フェニックス家代表としてお伝えしたい事がありますわ」

 

 

 数時間後、俺は橘とレイチェルの前で正座をしている。なんでかと言われたら帰ってきた二人に先ほどまでの光景を見られたからです! エロゲー相手にマジになってる俺、発情したのかオナニーし始めた平家とそれを真似るグラム。なんという事でしょう……カオスな状況をえっちぃの禁止委員会のお二人に見られました! 約一名ほど淫乱ですがえっちぃの禁止委員会です!

 

 

「……あのさ、なんで正座させられてんの?」

 

「分からないんですか?」

 

「ハイスイマセンサキホドノコウケイデスヨネゴメンナサイ」

 

 

 やべぇ、橘がガチでキレてやがる……! 禁手化して破魔の霊力を混ぜた破魔の雷をバチバチと見せつけてるしね!! やめろよぉ! 隣にいるレイチェルが涙目になってるじゃねぇか!!

 

 

「てか王様……サボってエロゲーはギリセーフかもしれないけど他がアウトっすわ。何してんすか?」

 

「いやだってグラムが我らを使えとか血が足りないとか構ってちゃんオーラがウザかったから適当にオナニーしとけって言った結果がこれだよ。平家に関してはいつも通りだ」

 

「い、いつも通り……! ちょ、ちょっと覚妖怪……! あ、ああ貴方はいったいキマリス様の前でな、ななな何を!!」

 

「だって襲ってほしいんだもん。でもあんなに誘惑してるのに襲ってこないのはどうかと思う、あれだけ硬くしてるのにね」

 

「お前で童貞卒業とか死んでもごめんだわ――いってぇ!? だから蹴るんじゃねぇよ!!」

 

「虫が止まってた」

 

 

 この野郎……! 自分だけ安全圏にいるからやりたい放題かよ! こっちはなぁ! 破魔の霊力が目の前にあるから怖いんだよ! 死なないけど死にかねないからマジでヤバい。くっ! 雷電の狐の禁手はここまで強力なものだったとはな……! これはこれで有りだわ! 狐耳! 尻尾! 腋出し巫女服! そしてアイドル! これほどの属性てんこ盛り状態で説教されるとかもうご褒美だわ!

 

 

「悪魔さん?」

 

 

 はいごめんなさい、反省してまーす。

 

 

「……こ、コホン。き、キマリス様! 殿方なのですからあまり、その、あのような物を目にするのはいけませんわ! 由緒正しきキマリス家次期当主なのですからちゃんとしてもらわないと困りますわ!」

 

「そうですよ悪魔さん! えっちなゲームに夢中になるなら私を見てください! 悪魔さんが大好きな腋も見せますから!」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

 橘もレイチェルも互いにこの人はいったい何を言っているんだろうと思ってそうな表情で見つめ合っている。うーん! いつも通りだな!

 

 そんな光景が続くと思っていると突然離れた場所に魔法陣が展開してとある人物が転移してきた。紅髪のイケメンと銀髪のメイド――現魔王サーゼクス・ルシファーと最強の女王グレイフィア・ルキフグスだ。あのさぁ……なんで勝手に転移してくんの? 普通は前もって言わない? 此処に来るとか全然聞いてないんですけどー!

 

 

「ノワール・キマリス君。いきなりの転移で申し訳ない……なにやら取り込み中だったかな?」

 

「いえ全然。こんな場所に何の用でしょうか? 特にこれと言って魔王様方のご迷惑になるような事はしていないつもりなんですけども?」

 

「あぁ、すまない。本来であれば午前中にリアスの部室で伝えようと思ったんだが不在だったみたいでね。あまり堅苦しくしないでもらって構わないさ、こちらはいきなりやってきた無礼者だからね」

 

「んじゃ遠慮なく。で? 伝えたい事って何ですか? こっちはうちのアイドルとフェニックスの双子姫からご褒美という名の説教貰わないとダメなんで出来れば手短にお願いします」

 

 

 背後から「王様ぁ!? 相手は魔王っすよぉ!!」とか「ノワール君! ちゃんとしてください!!」とか「早く帰ってもらってね」とか色んな視線を浴びてるが無視だ無視! でも帰ってほしいのは俺も一緒だ! だってめんどくさいもん。

 

 

「あはは。なら手短に言わせてもらおうかな。先のゲーム、素晴らしいものだったよ。今回の結果と今までの功績を踏まえて平家早織くん、犬月瞬くんの二人に中級悪魔の昇格の話が出ている。キマリス眷属からは戦車、四季音花恋くんが中級悪魔へと昇格しているが日を開けずに同じ眷属内から昇格の話が出るのは異例だろうね……でもそれほどの活躍をしているのだからこの評価は当然だと思う」

 

「俺が、中級に……」

 

「……」

 

 

 後ろにいる犬月はかなり戸惑ってる様子だ。平家は……あの顔だと嫌だって感じだな。そりゃそうだよな……嫌われ者とか言われてる覚妖怪が中級悪魔の試験を受けに行ったら何を言われるか分かったもんじゃねぇし。

 

 

「――魔王様、発言しても良い?」

 

「どうぞ」

 

「その話、お断りします」

 

 

 デスヨネー。

 

 

「さ、早織!?」

 

「早織さん!?」

 

「……理由を聞いても構わないかい?」

 

「しょーじき中級悪魔も上級悪魔も興味無いです。私はノワールの傍に居れたらそれで良い。これを断って一生下級悪魔でも私は困らない。それに今の冥界で上に行っても面倒な事になりそうだもん」

 

「……えっと、魔王様。俺も発言、良いですかね?」

 

「うん。構わないよ」

 

「ありがとうございます……えっと、俺も、断らせてください。俺は普通の人間一人にすら勝てない悪魔っす……そんな奴が中級悪魔の試験なんて受けても肩書だけが立派になりすぎてなんていうか、王様にも周りにも迷惑がかかります。中級悪魔になるならこの手であの女を……アリス・ラーナを殺して因縁全部を無くしてからっす! たとえ何年、何十年、何百年かかってもその時は必ずなります! でも一生下級だって言われたら自分が選んだ道なんで素直に受け止めますけどね……あと、俺なんかよりも水無せんせーやしほりん、茨木童子の方が中級悪魔に向いてますよ! だからホント、すいません!」

 

 

 頭を下げる犬月に目の前にいる魔王は若干だけど困惑した様子だ。背後に立っている女王ですら表情を崩したんだしマジかよとか思ってると思う……デスヨネ! だって中級悪魔に昇格できるかもしれないよって言われて断ったんだもんそうなるわ! でも他人の思惑なんかよりも自分の欲望優先なのは俺の眷属らしいな……普通の王なら意地でも受けさせるのが当然なんだろうけどこいつらがそれで良いって言うなら俺は何もしない。俺の眷属なんだから好き勝手に生きて、好き勝手に死んでいっても文句は言われねぇだろ! だって王自らが行ってるしな!!

 

 

「――ノワール・キマリスくん」

 

「はい? なんでしょうか?」

 

「良い眷属に巡り合えたね。自分の意見を素直に言える悪魔は少ない……この話は()()にしておくよ。その時期になったら再びこの話をさせてもらおうかな」

 

 

 魔王様と女王の二人はさようならの挨拶をしてから再び転移していった。はぁ……もう来ないでくださいお願いします! 訪れるなら良い子ちゃんばっかりなグレモリー先輩たちの方にお願いします!

 

 

「……王様」

 

「ん?」

 

「あの、怒ってたり、します?」

 

「んなわけねーだろ? 俺達は悪魔だぞ? 自分の欲望優先にして何が悪い。俺がいつも言ってるだろ? 好き勝手に生きて、好き勝手に死んでいくとかってな……悪魔なんて自己中心的で我儘な奴らだ。自分がやりたいと思ったらそれをすれば良いだけの事、だから俺は怒ってねぇぞ? むしろ――褒めたいぐらいだ。誰に何を言われても良い、文句とか陰口とか言わせておけばいい。ただ自分の意見だけは曲げるな……って俺が言っても意味ねぇな」

 

「だね。コロコロと意見変えたりしてるもん」

 

「とーぜんだろ。だって俺様、邪龍だぜ? 自己中で自己満足の塊でやりたい事だけやれば良いと本気で思ってる最低最悪の影龍王だ、それぐらいは許せっての」

 

 

 自分のやりたいようにやったり自分の欲望に忠実になったりするのが悪魔ってもんだろ? だったらそれで良いさ。魔王の思惑も他人の考えもどうでも良い――自由気ままに、自分が思うままに生きれば良い。俺の眷属ならそれぐらいはしてくれよ?




影龍王の漆黒鎧・覇龍融合《プルシャドール・ジャガーノート・オーバーフュージョン》
ノワール・キマリスが編み出した覇龍に代わる存在にして影龍王の鎧ver影人形融合2の強化形態。
歴代影龍王の呪いを受けいれつつ、自分の呪いに染め上げているためか発動する際に聞こえる歴代の思念の声、纏うオーラは邪悪そのもので聞くだけで吐き気を催し、寒気が止まらなくなるほど禍々しい状態になる。

形状は影龍を象徴する棘がさらに禍々しく目立ち、濃密な負の邪念をオーラとして身に纏う漆黒の全身鎧。
イメージ元はデジモンのドルゴラモンの姿を鎧風に変化したもの、またはモンハンのアカム装備(剣士)。

これで「影龍王と獅子王」編が終了です。
観覧ありがとうございました!

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