ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

78 / 140
77話

「あははははははははははははは!!」

 

『GlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlow!!!』

 

 

 山吹色の全身鎧に身を包んだ夜空が高笑いと共に無限に光を生み出し、周囲を光線で薙ぎ払う。俺達の目の前に居るのは見上げなければならないほど超巨大な超獣鬼と呼ばれる怪物……ソイツの体から無限に生まれてくる小さな怪物は夜空が放つ光に巻き込まれて幾度も消滅、また生み出されては消滅を繰り返す。既にこのやり取りを何度行ったかなんて覚えてねぇし数える気すらねぇ! てか楽しい! 何が楽しいかってそんなもん決まってんだろ――

 

 

「――ゼハハハハハハハハハハハ!!!」

 

『ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!!』

 

 

 生み出されたミニ怪物達から放たれる光線や超獣鬼が吐き出す炎を俺が影を生み出して防ぐ。何が楽しいかって夜空の「盾」になっているこの状況が滅茶苦茶嬉しいしすっごく楽しい!! 何度も妄想しては諦めていた光景を行えてるんだから楽しいに決まってる!! 周囲を黒に染めるほどの影の盾が夜空を護るように展開して攻撃を防ぎ、その隙に夜空が一瞬で極大の光を生み出して周囲のミニ怪物達を一掃。俺が防いで夜空が攻撃する……過去の地双龍が行っていたやり取りを俺達が行っているからマジでテンション上がるわ! 楽しい! ありがとう! 冥界を襲ってきてくれて本当にありがとう!!

 

 

「夜空ぁ!! 楽しいなぁ!!」

 

「うん! すっげぇ楽しいぃ!! あははははははは! ワクワクが止まんない! ほんっとうに楽しい! すごく楽しすぎて一生忘れられそうにない! ノワール!! これ好きになりそう!!」

 

「俺もだ! 滅茶苦茶楽しいから偶には共闘も悪くねぇな! てか今後も何回かやろうぜ!」

 

「さんせ~! いっくよぉ~!! ピカッとドッカーン! ろり~たふらっしゅ~!!」

 

 

 俺の背後に移動した夜空が嬉しそうな声と共に自身の前方に極大の光を集める。その光力は並みの天使、堕天使が扱う物を超えている……当然だ! 無限に光を生み出し、光を浴びるたびに力が増す神滅具を持ってるのは人間の中でも規格外な夜空……どう考えても天使長(ミカエル)を超えてるに決まってる! もっとも天使長本人の光を味わった事ねぇけどな!

 

 俺達を取り囲むほど生まれ出たミニ怪物達は夜空に向かって攻撃を仕掛けるがそんなものは通すわけがない。俺は即座に影の海を作り出してそれら全てを飲み込んで雑巾を絞るように潰す……ついでに力を奪う事も忘れない! ゼハハハハハハ! 既に何度も同じことを繰り返してるから俺の力はかなり高まってるしテンションもアゲアゲ状態だ! どんな攻撃だろうと今の俺を殺せるわけがねぇ! だから――殺れ!! 夜空ぁ!!

 

 

「――あはははははははははは!」

 

 

 前方に集めた光を砲撃の様に放つ。勿論! 当然の様にその射線上には俺も存在しているがお構いなし撃ちやがった! 背中から極大な光を浴びた事によって体が溶け、意識が朦朧となりそのまま消失しかけるが……俺を誰だと思っている!

 

 

『UndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndeadUndead!!!』

 

 

 全身の宝玉から音声を鳴り響かせて消失する体を再生させ続ける。体が消滅しては即座に再生、また消滅しては再生。それを繰り返しながら俺は意識を飛ばさないように食いしばる……なんというかこうも何かに引っ張られる感覚は気色悪いの一言だな。相棒が生前持っていたこの能力に目覚めてからこの感覚がさらに強くなった気がするぞ……! 俺を呼ぶのは女の声……多分だが妖艶な美女だろうね! 声の印象からそう感じるし! そいつがこっちに来いと魂と呼べるものを引っ張ってきやがるが……んなもんに引っ張られるわけねぇだろうが!! そもそもなぁ! この程度で死ねるんならとっくの昔に死んでるさ! でも俺は生きてるし此処で戦ってる!! だからこんなもんでは死なねぇし死ぬ気すらねぇんだよ!! ゼハハハハハハハハハハ! どこの誰だが知らねぇがナンパしたいんなら俺の前にその姿を見せてからしやがれ!! てか夜空ぁ! 俺を殺したいならもっと強いの放って来いよ! 受け止めてやる! 何度も……何度も! お前を受け止めてやるからドンドンきやがれぇ!!

 

 背後にいる夜空が放った光の砲撃は俺を除いたミニ怪物の集団を一掃し、大本である超獣鬼の太もも部分を抉る。もっとも即効で再生されたけどね……なんだよあの再生速度! 俺の真似するんじゃねぇ!! 見下した上に俺の真似をするとはマジで死にてぇらしいな……!

 

 

「すっげぇ! マジで再生してんじゃん!! あはははははは! ノワールだいすきぃ! てかずるいぞぉ! なんで自分だけ能力昇華させてんのさぁ!!」

 

「それは俺がお前より強いって証拠だっての! 悔しかったらテメェもユニアの能力を引き出してみろよ!」

 

「いったなぁ!! じゃあすっげぇーの見せてやんよ! ユニア! やるよぉ!」

 

『クフフフフフ! えぇ! 見せてやりましょう! このユニアの力を彼に、クロムに、目の前で見下してくる愚か者に叩き込みましょう!』

 

『ゼハハハハハハハハハハハハッ! てことは()()が来やがるかぁ! 宿主様! 今から放たれる一撃はユニアが持つ絶技の一つだぜぇ!! 気合入れろよ!!』

 

「分かった!」

 

 

 ユニアが持つ絶技とやらを放つ体勢に入った夜空を護るべく、影を生み出す。何故なら本能的に危険だと判断したのか超獣鬼自体が命令したのかは知らないが周囲を取り囲んでいるミニ怪物達は一斉に夜空へと攻撃し始めたからだ。色んな獣やらを模して生み出されたミニ怪物達の口から光線が放たれるがそれら全てを影で防ぎ、影人形のラッシュで本体を沈めていく。本当ならグラムぶっぱ安定なんだが……その辺に捨てちゃったんだよね! なんか邪魔だったし俺と夜空の共闘に他人が混じるのは何か違和感しかなかったから仕方ないね! そんなわけでこの戦場には俺と夜空以外の味方はいません! そもそも俺達が参戦した時に超獣鬼を攻撃してた悪魔達は俺達の攻撃に巻き込まれて死んでるから無理はないけど。つーか乱入と同時にこの場を離れたディハウザー・ベリアル眷属は流石だわ……危機察知能力が高いですね! まっ! どうでも良いけどさ!

 

 目の前で俺達を見下している超獣鬼ちゃんは自身の目を光らせてビームもどきを放ってくる。巨大な体格から放たれるそれを受ければ一瞬で消滅、冥界すら崩壊しかねないものだろう……普通なら。俺は鎧から音声を鳴り響かせて影を生成、夜空を護るべく前方から迫るビームを防ぐ。既に何度もミニ怪物から力を奪っているから俺の力がかなり上昇しているから確実に防ぎきれるだろう……ついでに言わせてもらうとなぁ! 夜空を護る盾なんだから何があっても通すわけねぇだろ! 超獣鬼ちゃんが放つビームもどきを防ぎつつ「捕食」の能力を使用してビームもどきの威「力」を奪う……なんだなんだ? 最初はやべぇかとは思ったが全然大したものじゃねぇな! てか夜空が放つ光の方が強いから余裕で防げる! あとさ……背後にいる夜空の手に集まってる光が尋常じゃない光が圧縮されてて若干怖い! やり投げのような構えを取りながら光を生み出す能力と光を浴びるたびに力を上昇させる能力を同時に使用してるけどさ! 鎧越しですら怖いと感じるほどの槍を作らないでもらえますかねぇ! 流石夜空ちゃん! 大好き!

 

 

『GlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlow!!!』

 

『RiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRise!!!』

 

「ノワール! じゅんびおっけ~!」

 

「はえぇなおい!? その構えになって一分も経ってねぇぞ!? ゼハハハハハ! ぶっ放せ夜空ぁ!!」

 

「おっけー! いっくぞぉ! ろり~たメガあたっくぅ!!」

 

『Starlight Spear!!!』

 

 

 夜空の手には一つの槍、穂先が五つに分かれている何とも奇妙な形をしているが……見ているだけでもとてつもない威力を秘めているのが余裕で分かる。そんな代物を高笑いと同時に投擲すると一瞬で前方に展開されていたミニ怪物達を消滅させ、その余波で周囲を取り囲んでいた奴らとついでとばかりに俺を吹き飛ばして超獣鬼へと向かって行く。光の熱さと気色悪い声に負けず、相棒が持つ再生の力で完全復活した俺が見た光景は……なんとも物凄い事になっていた。だってかなりの巨大な超獣鬼ちゃんの片足が完全に無くなってんだぞ? しかも遠く離れた場所に着弾したのかとてつもない轟音を鳴り響かせてる。きっと着弾した領地は吹き飛んでるだろうなぁ……キマリス領でもフェニックス領でも無いからどうでも良いけど。だって他の領地の事なんて考えてる暇ないしーどうでもいいしーてか冥界滅んでくんねぇかなーとか思ってるしーうん仕方ないねー! まっ! そんなことよりもキャー夜空ちゃーん! 素敵ー! 結婚してくれー!! エッチさせろー!

 

 

「あー!! また再生した! もう駄目だよノワール? ちゃんと死んでくれなきゃ撃った意味ねぇじゃん!」

 

「ざけんな! あの程度で死ねるわけねぇだろ!! 俺を殺したいならまだまだ出力が足りねぇんだよ!」

 

「言ったなぁ!! じゃあもう一回撃ってやんよ! ちゃんと護ってくれなきゃだめだぞぉ?」

 

「そんなもん言われなくたってやってやるさ! てか……夜空と楽しい会話してんのにうぜぇんだよテメェら!! シャドールッ!!!」

 

 

 片足が吹き飛んだことで超獣鬼ちゃんはそのまま地面へと倒れるが立ち上がる動作と同時に消滅した足を再生させている……触手みたいなものを伸ばしては互いに絡ませ、足と言う形へ変化しているのは気持ち悪いの一言だと思う。しかし触手か……夜空ちゃん? ちょこっとあれに両手両足掴まれて全身まさぐられたりしてみない? きっと気持ち良いと思うんですがどうでしょうか! あっ、ダメだわ……俺以外の奴が夜空に触れるのは我慢ならねぇ。よし殺そう! 夜空の体をまさぐったりペロペロしていいのは俺だけだぁ!!

 

 そんな比較的大事なことを思っていると超獣鬼ちゃんは個人的に見飽きたミニ怪物を生み出す作業を開始する。体感的には十秒で数百のミニ怪物が生み出している気がする……流石神滅具で生み出された存在だな! 創造系神器の頂点だって言っても規格外すぎるだろ! まぁ、でも残念ながら生み出すことは出来てもそれ以外は出来ないんだけどね。だって地面に倒れた時点で超獣鬼ちゃんと同じ大きさの影龍人形を生成して押し倒してますし! ゼハハハハハハ! さっきから見下しやがってムカつくんだよ! 夜空の一撃でも喰らって反省しやがれ!

 

 

「夜空!」

 

「あいっさ~! メガあたっくぅ!」

 

『GlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlowGlow!!!』

 

『RiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRiseRise!!!』

 

『Starlight Spear!!!』

 

 

 夜空の鎧から音声が鳴り響き、再び手に槍が生成されて放たれる。起き上がろうとしている超獣鬼を影龍人形で押さえつけているところに放たれたからさぁ大変! 防御力はかなりあると自負していた影龍人形を簡単に貫通し、超獣鬼の片腕諸共、その周囲を消滅させました! うーん、さっきも思った事だがかなりの威力だな……あんなもん喰らったら大抵の神は死ぬんじゃねぇか? つかそれ以前にあんなもんをポンポンと連発して体力減ってない夜空に若干引くんだけど……どうせ新しく発現した回復能力で全快してんだろうけどさ! 相変わらず出鱈目だなぁおい!

 

 

『ん~? おやおやぁ~! どうしちゃったんだよぉユニアちゅわ~ん! ご自慢の()の威力が低すぎじゃありませんことぉ~? ゼハハハハハハハハ! やっぱりテメェが持つ本来の力が封じられてると滅茶苦茶弱いじゃねぇか!』

 

 

 この威力を見て弱いと言える相棒にビックリだよ。

 

 

『クフフフフフフ。相変わらず単細胞ですね、いつ夜空が全力で放ったと言いましたか? 確かに私の能力はいまだに封じられたままですがこの状態でも最大出力ならば主神レベルは殺せる威力を叩き出せますよ。貴方の影迷宮など簡単に突破可能ですからご安心を』

 

『なんだよなんだよ! 図星突かれて意地になってんじゃねぇか! 俺様の影迷宮を突破するだぁ? ばーか! んな事は無理無理! ゼハハハハハハ! 何なら試してみるかぁ?』

 

『良いでしょう。夜空、準備をお願いします』

 

「おっけー! ドンドン行くから覚悟しろぉ!」

 

『宿主様!! というわけだ! 負けたら承知しねぇぞ!!』

 

「了解!! 防ぎきってやらぁ!」

 

 

 なんだかよく分からないが俺が使用するシャドーラビリンスと先ほどの放った夜空の放ったスターライトスピアの二つの内、どっちが上なのかを決めるため勝負することになったようだ。普通の奴ならこんな状況で何やってんだよと文句を言ってくると思うが……俺達は楽しいから全然問題無し! 冥界が滅ぶ? 皆協力して敵を倒そう? 無理無理! そんなもんをするぐらいなら夜空と殺し合いしたい。だってそれは天界勢力とか先輩達の仕事だろ? つーか悪魔が好き勝手にやって何が悪いんだって話だ……そもそも俺達は邪龍、自分の欲望優先なんだから仕方ないね! そもそも勝負を挑まれてしないとか普通に無理! やるからには全力で防ぎきるぞ! 頑張っちゃうよ俺様! ここで防ぎきってドヤ顔したいしな!

 

 とか思いつつ気合を入れていると一瞬で夜空が傍まで近づいてきて俺の胸に手を置いた――その瞬間、今まで消費した魔力やら体力やらが一気に戻ったかのように体が軽くなる。お、おぉ! 回復してくれるとか優しいすぎて泣きそうだ……てかなんだよこの回復能力! 先輩の所に居るシスターちゃんが涙目になるレベルなんだが? だってあの子の神器って傷は治せるけど体力は無理とかそんな感じだった気がするし……まぁ、規格外(よぞら)だし良いか!

 

 

「おっ、サンキュー。愛してるぜ夜空」

 

「私も愛してるよ、ノワール。ふふん! 私に感謝しろよぉ? 今まで失った寿命やら魔力やら体力やらぜーんぶ元通りにしてやったんだからさ!」

 

「マジかよ……てか寿命削れてたんだな? 今初めて知ったわ」

 

「そりゃグラム使ってればそうなるっしょ。あれって一応、最強の魔剣だし私らを殺す呪いを持ってんだからさ。てーかそんなのを使っててなんで気づかないのさ?」

 

「え? だって呪いなんて日常茶飯事だろ?」

 

「そりゃそうだけどさぁ~私が殺す前に寿命で死ぬとかやめてくんない? 死ぬなら私に殺されてから死んでね。そんなわけで死なれたらすっげぇ困るからさ! これからも暇だったら治してやるから本気で感謝しろよぉ? どうどう? 嬉しい?」

 

「すっげぇ嬉しい。え? 心配してくれてんの? 女神かよお前! 他勢力の女神よりも女神じゃねぇか! マジでありがとう! 感謝してるからエッチさせてくれ」

 

「ヤダ」

 

 

 うん、知ってた。

 

 

「……さ、さてと! お前のおかげで完全回復状態だ! いつでも良いぜ?」

 

「にひひ! そうこなくっちゃ!!」

 

 

 俺と夜空は互いに向かい合う。地面に倒れている超獣鬼の存在なんてどうでもいい……再生している? 好きにしろよ。こっちはこっちで忙しいからそのまま俺達を無視して首都リリスに向かって歩きたいなら勝手にしてくれ。さてと……問題は先の槍の威力か。影の檻……いや相棒曰く影迷宮の防御力で防ぎきれるかどうかは微妙って感じだな。なんせ使用するのが規格外筆頭の夜空だから普通に貫通してくる可能性も十分にあり得る! そもそも影龍人形を貫かれた時点でその威力は桁違いだってことは良く分かってる……! でも俺にだってプライドはある! 男としてのプライドが……盾役としてのプライドがな! そもそもアイツに惚れたんだ……このぐらい防ぎきれないで何が影龍王だ! 受け止めると決めたんだ……だから防いでやるさ!

 

 

「――あ゛?」

 

「――はぁ?」

 

 

 気合十分、お互いに必殺の矛と絶対の盾を放とうとした瞬間、邪魔をするように地上からビームが放たれる。それは俺と夜空を狙ったものだが俺は影を、夜空は光を生み出して相殺する……が何してんの? 片腕と片足を再生させながら俺達を見上げてお前はいったい何をした? 折角さぁ、見逃してやるって空気を出してやったのに俺達の戦いを、楽しみを邪魔するのか? そっか。そっかそっか! そんなに死にたいか。

 

 

「夜空」

 

「ノワール」

 

 

 俺達の視線の先には地上で起き上がろうとしている超獣鬼。怒りに満ちた俺から漏れ出す呪いと激怒している夜空から漏れ出す神々しい気に恐れを抱いているのか体が竦んでいる様にも見える……どうでも良いな。どうせこいつは俺達に殺されるんだから。

 

 

「俺の盾が上か」

 

「私の矛が上か」

 

「そんなもんは後回しだ」

 

「今はそれよりもやることがある」

 

 

 絶対零度ともいえる視線で地上にいる超獣鬼を見下す。他人からすれば逆切れか理不尽だと文句を言うほどの怒りだが俺達には関係ない。さっきまで真剣にどっちが上かどうか決めようって俺も夜空も楽しんでたんだ。それを邪魔するならどんな奴であろうと容赦はしない。

 

 

「私達の戦いを邪魔する奴は殺す」

 

「俺達の楽しみを邪魔する奴は殺す」

 

「冥界が滅ぼうと」

 

「世界が滅ぼうと」

 

「私が楽しかったらそれで良い」

 

「俺が楽しかったらそれで良い」

 

「「だから邪魔する奴は許さない!」」

 

 

 殺気を放ち、俺が濃厚な呪いを放出すれば夜空は神々しい気を放出する。それは周囲を漆黒と()()に染めるほど巨大なものだ。

 

 

「我、目覚めるは――」

《何故邪魔をする》《我らが覇王の邪魔をするな》

 

「我、目覚めるは――」

《何故邪魔をするのですか》《我らが女王の邪魔をするな》

 

 

 俺と夜空の鎧から老若男女の声が鳴り響く。俺から聞こえる声は憎悪に満ち、呪いを秘めたもの……しかし夜空から聞こえる声は対極とも言っていいほど――純粋だった。

 

 

「万物の理を自らの大欲で染める影龍王なり――」

《我らの戦いを邪魔するな》《光龍妃との戦いを邪魔するな》

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――」

《我らの楽しみの邪魔をするな》《我らは影龍王と我らが女王を見ていたいのだ》

 

 夜空の呪文は今までとは違う物だ。歴代所有者達の思念の声は怨念を秘めてはいない……ただ純粋に夜空と一緒に楽しんで、夜空を祝福しているような声だ。

 

 

「獰悪の亡者と怨恨の呪いを制して覇道へ至る――」

《それでも邪魔をするというのならば》《覇王の逆鱗を受ける覚悟があるとみた》

 

「絶対の真理と無限の自由を求めて覇道を駆ける――」

《覇王に恋い焦がれる女王の邪魔をするというのなら》《我らは手を取り合い貴様を滅しよう》

 

「我、魂魄統べる影龍の覇王と成りて――」

 

「我、闇黒を射止める耀龍(こうりゅう)の女王と成りて――」

 

《自らの行動を後悔せよ! 我らが覇王は貴様を許さない!!!》

 

《自らの行動を後悔せよ! 我らが女王は貴様を許さない!!!》

 

 

 俺達の楽しみを邪魔した罪は重いぞ!!

 

 

「「「「「「「「汝を漆黒の回廊と永劫の玉座へと誘おう――」」」」」」」」

 

「「「「「「「「汝を金色の夢想と運命の舞台へと誘おう――」」」」」」」」

 

『PuruShaddoll Fusion Over Drive!!!!!!』

 

『Juggernaut Queen Over Drive!!!!』

 

 

 周囲を漆黒の影と金色の光が染め上げる。俺が呪いを放出する漆黒の鎧へと変化しているがが夜空が神々しさを放つ金色の鎧に変化している。マントをなびかせ、金色の龍を模した全身鎧……姿形も先ほどまでと比べて流麗なものとなり、各所に宝玉が埋め込まれて美しいと表現できるだろう。山吹色だった鎧も金色へと変化しているが俺も黒から漆黒に変化してるし今更驚くことはない。そもそも夜空だしな! これぐらいはやるだろうとは普通に思ってたぐらいだもんね! あと光龍妃の外套の歴代所有者達はきっと今を楽しんでいる夜空を理解したんだろう……夜空の思いが俺に流れ込んでくるようなもの感じだったしな。呪いではなく祝福、純粋な思いへと昇華した結果、発現した形態って感じか……俺とは真逆も良いところじゃねぇの! ますます惚れた! 好きになった! 愛してるぞ夜空ぁ!!

 

 

「『――ゼハハハハハハハハッ! なんだなんだよぉ! 金色とはえらく変わったじゃねぇの夜空ちゃんよぉ!』」

 

「ふっふ~ん! どうよぉ! これが私だけの覇龍……ううん! 覇龍昇華形態!! 耀龍女王の金色鎧(ティファレト・ジャガーノート)()覇龍昇華(グロリアス・クィーン)だぁ! てかノワールとクロムの声が重なってるとどっちがしゃべってんのか分かんないからどうにかしろぉ!」

 

「『そんなもん無理に決まってんだろうが! 俺は俺様で俺様は俺なんだからよぉ! しっかし流石だな! この瘴気を浴びて無事でいられんだしよぉ! ゼハハハハハハハ! テメェが放つ()()のオーラもなかなかいい塩梅だ! 最高に気持ちいいぜぇ!!』」

 

「でっしょ~! いっとっけど今の私に触れられんのはノワールみたいに異常な再生能力を持ってる奴だけだから! 私の体に触れていいのはノワールだけだしね。てなわけでさ――殺ろ」

 

「『あぁ! 俺達の邪魔をした愚か者に罰を与えようじゃねぇか!』」

 

 

 俺達が見つめる先には既に再生を終えた超獣鬼。横たわっていた体を起こし、俺達を潰すためにその巨大な腕を引き、一気に突き付けてくる……殴る速度は遅い。しかもただ巨大なだけで対して威力があるとは思えないものだ。そんな代物を雄叫びと同時に放ってきやがるが……ふざけてんのか? その程度で俺様を、夜空を、地双龍を倒せると思ってんなら勘違いも良いところだ!

 

 

「『なんだなんだぁ? 獅子王ちゃんの方がパワーも速度もあったぜ? ふざけんなよクソ雑魚が!!』」

 

 

 放たれた拳を()()で止める。俺の目の前にあるのは巨大な壁、触感は人間の肌に近いものだ……俺の手に触れている部分は漏れ出す呪いによって浸食され、朽ちていくが目の前の雑魚は腕を離そうという行動を起こそうとしない。当然だ、逃がさないように影で腕自体を捉えてるんだからな。目の前にある壁のような腕に指を突き刺して瘴気を帯びた影を体内に流し込み、一気に力を奪う。先ほどまで極太だった腕は一気に枯れ果てた木々の様に細くなり、体内を突き進んでいった影によって切り落とされる。

 

 

「ノワールが右かぁ~だったら私はひっだりぃ!」

 

 

 魔を滅する浄化の力を帯びた金色のオーラを放出しながら夜空は反対側の腕へと向かって行く。辺り一面が金色に染まるほどの光力を人間が放っているとしたら恐ろしいが……夜空だしあまり違和感がない。その本人は怒りを発散するように笑いながら超獣鬼に向かって蹴りを放つと足が触れた部分が溶けていくように超獣鬼の腕が消滅していく……先ほど夜空が言った通り、触れられるのは俺達みたいな再生能力を持つ者だけだろう。破魔の霊力よりも雷光よりも格上な浄化の力を簡単に使えるのは仙術の応用かねぇ? どうでも良いけど!

 

 超獣鬼の両腕を奪った俺達は高笑いしながら今度は足を狙う。俺は呪いを帯びた影、夜空は浄化を帯びた光。相反するもの同士が(超獣鬼)を境にぶつかり続ける。再生しようが雑魚を生み出そうが俺達の動作一つで吹き飛び、ドンドン体格が小さくなっていく。周囲を汚染する呪いが巻き散らされれば祝福の光によって浄化され、光が周囲を照らせば影によって黒に染まる。俺と夜空による一方的な蹂躙は長くは続かない……なんせ敵が雑魚だから。

 

 

「『雑魚ちゃん雑魚ちゃん! 豆粒みてぇな奴らに蹂躙される気分はどうよぉ! 最悪だろ?』」

 

「それもこれも全部テメェがさっさと通り過ぎねぇのが悪い」

 

 

 既に頭部のみとなった超獣鬼を見下しながら高笑いをする。この鎧を発動してたった数十秒しか経ってないにも掛からずこの様とはな笑えるな……さっきまでデカかったのが嘘のように小さくなって可哀想だ! でもこれがテメェが選択した結果だから理不尽だとか文句は言わねぇよな? そもそも言えるほどの知能がねぇか。

 

 

「『遊びも終わりだぁ! ゼハハハハハハハハ!!』」

 

「さっさと消えろ。ウザい!!」

 

 

 周囲の土地から力を根こそぎ奪い、呪われた大地へと変化させながら片腕に影を集める。夜空も金色のオーラを輝かせ、周囲を焦土へと変化させながら片腕に光を集める。片や醜悪な呪いを放つ影龍、片や純粋な祝福ともいえる浄化を放つ光龍、それらが互いに並び立ち、手を握り合う。光が影を打ち払い、影が光を侵食する、相反する存在同士を混ぜ合わせるように俺達は繋がれた手に向かって力を流し続ける。夜空の思いが宝玉を通じて俺に流れ込み、俺の思いが宝玉を通じて夜空へと流れていく。楽しい、嬉しい、殺したい、愛している、殺したい殺したい殺したいと自分の欲望を相手に流し込む……至福の時と言うのはきっとこういう事を言うんだろうな! たとえ握っている俺の手が消滅しては再生を繰り返しているとしても俺は離さない。なんせ呪われたら浄化を繰り返している夜空が離さないんだから当然とも言える……何があってもこの小さな手は離さない。世界が夜空の敵になるならば俺は迷わず世界を殺そう。だからもっと笑えよ、心からな。

 

 

「『雑魚が作る聖魔剣なんつうもんがあるならよぉ!』」

 

「私の光とノワールの影。それを合わせる事も可能だよね!」

 

「『光栄に思えよ雑魚ちゃんよぉ! ぶっつけ本番! 地双龍による共同作業によって死ねるんだ! 文句も言わずに黙って受けやがれ!』」

 

「あははははははははは! 次があるか分かんねーからありとあらゆるものに刻み込んで死ね!!」

 

 

 繋がれた手には金色と漆黒が混ざり合ったなにかが集まっている。それを高笑いしながら前方に突き出し、再生すらしなくなった超獣鬼へと放つ……混じり合ったそれは周囲を根こそぎ蹂躙し、汚染し、浄化し、消滅させるのは金色と漆黒が混じり合った極大な砲撃。射線上にいる超獣鬼を飲み込んで光と影、浄化と呪い、相反する属性が衝突し合う渦に巻き込まれ肉の一片、細胞すら残さず存在が消滅した。下手をすると各神話の主神すら簡単に殺せるかもしれない一撃に俺も夜空も互いの顔を見つめて――笑う。腹の底から、心から、目の前で起きた光景を見て面白おかしく笑い続ける。ホント、偶には共闘も悪くねぇな……こうして夜空と一緒に笑えるんだからさ。

 

 

「『夜空』」

 

「どったん?」

 

「『お前の手は小さいな』」

 

「違うし! 逆にアンタの手がデカすぎんの」

 

「『そうかぁ? まぁ、良いか。夜空……今だけはこうしていたい』」

 

「うん? うーん、明日からは元通りになるから……うん、今だけはこうしていよっか」

 

 

 繋がれた手は消滅しては再生、呪われては浄化を繰り返す。でも俺達は離そうとはせずさらに強く握りあう。

 

 

「『夜空、俺はお前を殺したい』」

 

「ノワール、私はアンタを殺したい」

 

「『殺したいほど愛してるぜ』」

 

「殺したいほど愛してるよ」

 

「『でもまだ獲物が残ってるな』」

 

「私らの邪魔をする奴がまだ残ってる……だからさ」

 

「『少し休んだら邪魔なハーデスを殺しに行こうぜ』」

「少し休んだら冥府滅ぼそうっか!」

 

 

 目の前に広がる焦土を眺めながら俺達は笑い続けた。

 

 

 

 

 

 

「――サーゼクス。超獣鬼が消滅した。肉片すら残ってねぇとよ」

 

「そうか……倒したのは彼らかい?」

 

「あぁ。キマリスと光龍妃の二人だ、たくっ! 周囲の事なんざ考えずにやりたい放題しやがって! まっ、それがあいつ等なんだけどな……俺達の都合も周りの都合も関係無い、ただ自分のやりたいようにやる。ドラゴンらしいよホントな」

 

 

 先ほど冥界にいる部下からの報告を読み、隣にいるサーゼクスに伝える。俺が命名した豪獣鬼と超獣鬼、それぞれが冥界を滅ぼすほどの力を持った怪物は既に半数以上を失い、リーダー格だった超獣鬼も先ほど地双龍によって倒された。全くアイツには頭が上がらねぇぜ……冥界に侵攻したと思ったら妖怪達を纏め上げて次々に倒してくんだもんな。まぁ、それが出来たのはキマリスの異常な精神力と魔帝剣グラムの力が大きいがな。

 

 

「……悪いな」

 

「いきなりどうしたんだい? アザゼル、キミが謝罪するとは珍しい」

 

「俺だって自分の蒔いた種でこんな事になって反省してんだぜ? キマリスが居なかったら冥界の被害は今以上のものだっただろう……なんせ今分かっている被害の大半は最強最悪の影龍王様による攻撃の余波だもんな。サーゼクス、アイツはもう上級悪魔なんつう肩書で収まるような存在じゃねぇぞ?」

 

「だろうね。この件が片付き次第、魔王として彼に最上級悪魔の地位を与えようと思う。ただ、彼が望むとは到底思えないけどね」

 

「だな。きっとうわーうっぜー好感度上げに来やがったよこのシスコンとか普通に思うだろうが……無理にでも通しやがれ。光龍妃のおかげでお前さん達もやりやすくなっただろ?」

 

「嬉しい事にね。彼女の存在によって古い考えを持つ者達が声を上げる事が少なくなっている。大王派がその筆頭に近いね……彼女自身はやりたいからやっているだけと思っているだろうけどね」

 

 

 そりゃそうだ。キマリスの言葉を借りるなら好き勝手に生きて、好き勝手に殺し合って、好き勝手に死んでいくか? 相思相愛でなによりだ。その被害を被るのは俺達だけどな! 悪魔だろうが妖怪だろうが魔王だろうが神だろうが関係ない……ただ自分が楽しかったらそれで良いと本気で考えてるのがあいつ等だ。だが俺もサーゼクスには賛成だ、アイツは既に上級悪魔という枠を……いや若手悪魔として収まるような存在じゃねぇ。

 

 キマリスの父、キマリス家現当主と話したことがあるが親から見てもアイツ(ノワール)は異常らしい。もっとも嫌悪感とかは一切無いみたいだけどな……自慢の息子だって言ってたが良い親父さんじゃねぇの。恐らくだが将来はサーゼクス、アジュカ、そしてアイツと同じく超越者と呼ばれる存在になるだろう……これに関しちゃヴァーリも同じだけどな。そもそも今代の二天龍と地双龍は歴代と比べて異常な面々が揃ってやがる! 神器研究家としちゃ嬉しい限りだけどな。

 

 俺とサーゼクスは今後の冥界をどうするかなんて話をしながらとある場所へと入っていく。俺達が今居る場所は冥府、ギリシャ神話の三柱神の一角、ハーデスが支配する領域だ。異空間から戻ってきた俺はすぐにサーゼクスに洗いざらい全て話した……オーフィス来訪からイッセーの死亡もだ。もっともイッセーに関しちゃアジュカが龍門で転移してきた駒を調べて魂は消滅していないと判明してるし何よりも先ほど、グレートレッドに乗って冥界に帰還してきたらしいからな! もはや万事解決も良いところだぜ! 隣を歩くサーゼクスはこの場所に来る前、俺が隠していた話を聞いて表情は変えたが何も言わずにこの場に一緒に来いと言ってきたのには驚いた……リアス達がイッセーの死で戦えなくなっても魔王として裏で手を引いた奴を抑える行動を起こしやがったのはコイツ自身がイッセーの生存を強く信じていたからだろう。

 

 

《ファファファファファ、貴殿らをこの場所へ呼んだ覚えは無いのだがな》

 

 

 冥府、その中でも一番豪華な建物の中を進んでいくと目的の人物――いや神が待ち構えていた。司祭服にミトラといういで立ちの骸骨神、ハーデスが死神を傍に並べている。その中には俺が異空間で戦ったプルートもいやがる……ちっ! 相変わらず不気味な連中だぜ。

 

 

「突然の来訪、誠に申し訳ない。冥界の魔王の一人、サーゼクス・ルシファーです。この度はハーデスさま、貴方にお話がありましたのでこの場の出向いた次第です」

 

《なるほどな。コウモリとカラスの首領がこの場に来たか、ファファファ、これは面白い余興だ》

 

 

 何が余興だクソ野郎……! 本来なら狗神を連れてきたかったが俺にも考えがあったからこうして俺達二人で冥府入りしたんだが……自分は悪くないとでも思ってんのかこの骸骨神さまはよ! ミカエルじゃねぇが天罰でも当たれってんだ!

 

 

《それで何用だ?》

 

「えぇ。冥界、グラシャラボラス領にて我が妹とその眷属達が死神の襲撃を受けたと報告がありまして。それに冥府の奥底で封じられているサマエルを英雄派が使用していたとも。どういう理由があってそのような事をされたのか確認させてもらいたい」

 

《なるほどの。理由としてならばかのオーフィスと密談をしていると情報があってな、和平を強く主張するアザゼル殿がそのような裏切り行為をするとは思えなくてなぁ。死神達に命じて調査していただけのこと。聞けば冥界には好き放題に暴れ回る影龍王がいるからな、もし仮にテロリストと結託でもしたら恐ろしい事になるだろう? ファファファ、故にいざという時のためにサマエルの封印を弱めておったがどうやらテロリスト共に奪われてしまってなぁ。なに、今は取り返しておるから安心しろ》

 

 

 適当な理由だな……! そんなもんで納得するとでも思ってんのか! だがここで勢力を率いるトップの俺達が何かをすればハーデスの思惑通りになっちまう……! ちっ、くえねぇ骸骨だ。

 

 

「なるほど……影龍王とオーフィスが結託するのを恐れていたわけですね」

 

《私とて死にたくはないからな。警戒は必要だろう》

 

「しかしサマエルの封印を弱めるのはいささかやり過ぎでは? あれの封印は厳重にすると各勢力で決められていたはずでは?」

 

《何度も言わせるな。警戒のためだ、多少の無理は必要だろう》

 

 

 ちっ! 分かっちゃいたがこの骸骨神さまは話し合う気はゼロだ! 警戒だなんだと言っておけば済むとでも思ってんのか? あんなのを外に出しやがったら世界が滅ぶってのによ……!

 

 内心でハーデスに対する怒りで頭が沸騰しそうになった俺だったが建物の外から鳴り響いた轟音で一気に怒りが静まった。くくく! きたきたきた!! 俺の予想通りに動いてくれたな!! だからこそ狗神を連れてこなかったんだよ……! この場に居たら絶対にハーデスを無視しやがるからな!!

 

 先ほど俺達が通ってきた通路からさらに轟音が響き渡る。何かを殴っている音だ……その正体を俺は知っている! むしろ知らない奴が居たら教えてやりたいぐらいだぜ!!

 

 

「――ノックしてもしも~し! あっそびにきたぜ? てか夜空……お前の回復能力って凄すぎねぇか? 漆黒の鎧を使ったのに体がすっげぇ軽いんだけど?」

 

「――ん? だって生命力が回復してんだしとーぜんじゃんってあぁー! いたー!! やっと見っけたぁ! ほらノワール! 骸骨いんぜ骸骨! キモ」

 

「うわぁ、なんで骸骨のくせに司祭服着てんだよ? 隠す部位ねぇだろ……つーかお前があっちやらこっちやらって言ったから迷ってたんだろうが? まぁ、死神ぶっ殺せたから文句は言わねぇけどよ」

 

「じゃあ良いじゃん」

 

「それとこれとは話が別だろ? てかさぁ、なんでいんの?」

 

 

 先ほどの轟音を起こしていたであろう元凶達は俺とサーゼクスを見て何故この場に居るんだという疑問を持ったらしい。その疑問はきっとこの冥府を支配するハーデスが思ってる事だろうな! というよりもお二人さん? なんで仲良く手を握って登場してんだ!? まさかまさかの地双龍同士のカップル誕生か! おいおい勘弁してくれよ……ただでさえ俺達が色々と苦労してるってのにさらに大変になるとか俺は嫌だぞ! もっとも総督を辞任するつもりだから関係ないけどな! シャムハザも俺がどれだけ苦労してたか分かるだろう……!

 

 

《……これは貴殿らの差し金か?》

 

「さて、それは私にも分かりませんね。今代の地双龍の動きは読めませんから」

 

《……ッッ!》

 

 

 サーゼクスの野郎……仕返しのつもりか! ハーデスの奴も外の状況を知ったのかかなり怒りを露わにしてるらしい。と言うよりも外で何をしてきやがった?

 

 

「仕方ねぇ。俺が代わりに聞いておいてやるよ。キマリス、光龍妃。一応聞くが何しに来た?」

 

「え? ハーデスをぶっ殺しに来たんだけど?」

 

「ついでに冥府を滅ぼしに来たけどさ~文句ある?」

 

「ん~少しは隠す努力はしような。何事もハッキリ言うのは先生は感心しません!」

 

「マジで? あーじゃあさ! 日帰り旅行しに来たって事にしといて」

 

「え~? 何日か滞在しようぜ? どーせすぐには終わんねーんだしさ」

 

「それもそうか。あっ、初めましてー影龍王のノワール・キマリスって言いまーす。いやー先日はうちの身内の身内がお世話になりましたー! 何してくれてんだよクソ骸骨。なーにうちにホームステイしてるお姫様の身内に手を出してんだ? そのせいでヒーローごっこする羽目になっただろうが! どうしてくれんだよ」

 

「ついでにさー! なにサマエル使っちゃってんの? 赤龍帝が死んだんだけど。折角さ、成長してきて楽しくなるって思ってたのに一気に台無しにされた私に謝れよ。許さねぇけど。ついでに赤龍帝は死んでねぇけどさ、兎に角、謝ってくんない? 土下座しろよキモ骸骨」

 

 

 一応お前ら二人の目の前にいる骸骨は冥府の神様なんだけどなぁ……確かにキマリスと光龍妃の性格ならハーデスが絡んでると分かれば此処に来るとは思った。だがまさかあそこまでキレてるとは思わねぇっての! 纏ってる鎧から神々しい気やら醜悪な呪いが漏れ出てるぞ? 良いぞもっとやれ! 俺が許す!

 

 まぁ、冗談は置いておいてだ。気になるのは光龍妃を見るハーデスが何かを察したような様子を見せてる事だ。なんだ? ハーデスしか知らない事でもあるってのか……?

 

 

《ファファファ、威勢が良い龍共だ。これはコウモリによる襲撃と判断してもよいな?》

 

「先に襲ってきたのはそっちなんですけどー? ついでに此処に来た瞬間に襲われたから応戦しただけなんですけどー?」

 

《それならば先にオーフィスと密談をしようとしていたのはそちらであろう?》

 

「ドラゴンがドラゴンに会いに来てなんか文句あんのかよ? テメェ何様だよ。まさか会いに行くのにテメェの許可が必要ってか? うわーこの骸骨自己中すぎんだろ。世界は自分で回ってるって本気で思ってんのか? 死んだ方が良いぞマジで」

 

「前々から胡散臭いとかキモイとか思ってたけどここまで来ると本気で邪魔。ノワール! 共闘二回戦目始めよっか!!」

 

「よっしゃ! 喜んで――と言いたいんだけどさ。なんかこのまんまだと襲撃した感じがして面倒な事になりそうだ。それに魔王様もやめろとか言いたそうな目をしてますしー! だからさ夜空ちゃん?」

 

「うん? なにさ?」

 

「――俺の盾が上か、お前の矛が上か。この場で決めようぜ」

 

「――大賛成!」

 

 

 ……なるほどな。キマリスは基本馬鹿だが悪知恵が働く。先ほどの態度もハーデスを怒らせて先に攻撃させようとか思ってたんだろう……だが態度を変えずに動く気配がないからやり方を変える事にしたって感じだな。まっ、キマリスの考えなんざ読めねぇけどな……単に面倒だったとかもありそうだがまさかその手で来るとはな思わなかったぜ。確かに()()ならば俺もサーゼクスもミカエルも関係無いと言い張れる! 良いぞやれやれ! 思う存分イチャつきやがれってんだ!

 

 

《魔王サーゼクス、貴殿の配下の者ならば止めるのが筋であろう?》

 

「ハーデスさま。お言葉ですが――止める理由がどこにありますか?」

 

《――なに?》

 

「確かに先ほどのハーデスさまに対する物言いに関しては魔王として謝罪しましょう。しかし戦いを止める理由などあるはずがない。何故なら地双龍は戦う運命にある。それが()()この場所であっただけのこと……もし私達が邪魔をすればドラゴンの逆鱗に触れてしまう恐れがあります。私達が暮らす冥界にこれ以上の被害を出したくはありませんからね。止めたいのであればハーデスさまご自身でお願いしたい」

 

《……若造風情が良く言うな》

 

 

 さっきの仕返しだ馬鹿野郎! 俺達は過去の大戦でドラゴンの逆鱗を嫌と言うほど味わってるからこそ関わらないという選択肢を使えるがハーデスは別だ。このまま行けば冥府は崩壊、死神達も無事じゃすまないだろう……下手をするとハーデス自身もな。もっとも冥府の神であるハーデスが死ぬとは思えねぇが。

 

 

《プルート》

 

《かしこまりました。地双龍と戦えるとは……長生きはしてみるものです。では申し訳ないがハーデスさまの命令により、このプルートが――》

 

 

 そこから先の言葉は聞こえなかった。何故なら体の半分は光龍妃の光で吹き飛ばされ、もう半分はキマリスの影人形のラッシュで潰されたからだ。おいおい……最上級死神を一発で殺すか! どこまで強くなれば気が済むんだお前達は!

 

 

「邪魔すんじゃねぇよ格下風情が」

 

「私とノワールの戦いの邪魔すんな」

 

「お前らも邪魔するか!」

 

「それならこっちも容赦しねぇよ!」

 

「ゼハハハハハハハハハ!!」

「あははははははははは!!」

 

 

 ハーデス。お前はミスをした。それはリアスやイッセー達に手を出したこと……どうせ嫌がらせ程度に考えてたんだろうが冥界には自分の思うまま、好き勝手に生きるドラゴンがいるんだよ。だからよ、一回痛い目にあってみろ……俺達はこの場でゆっくりと観戦させてもらうからよ。




耀龍女王の金色鎧・覇龍昇華《ティファレト・ジャガーノート・グロリアス・クィーン》
片霧夜空が編み出した覇龍の強化形態。
形状は光り輝くマントをなびかせ、各所に宝玉が埋め込まれている美しいと表現できる金色の龍を模した全身鎧。
発動する際には歴代所有者の声が宝玉から鳴り響くが禍々しく無く、純粋な夜空自身の思いを尊重させるものや楽しさを現しているものになっているのが特徴。
イメージ元はデュークモン。

地双龍の新婚?旅行in冥府開催。

観覧ありがとうございました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。