ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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79話

「よぉ。折角のパーティーだってのにこんな寂しい場所で何してんだ?」

 

 

 冥界を騒がせた事件――通称魔獣騒動から数日が経過し、俺達キマリス眷属は魔王が主催した兵藤一誠帰還と事件終結を祝したパーティーに参加していた。場所はルシファー領で超豪華なホテルを丸々貸し切っての催しに参加メンバーである堕天使、鬼、京都妖怪の三勢力は大盛り上がり……パーティーと言っても大宴会と言った方が良いかもしれない。もっともこれが行われる原因を作ったのは俺だけどね! 戦闘中に宴会やるぞって言ったら魔王達がノリノリで会場をセッティングしやがった……! そこはスルーしろよと思ったが新しく和平を結ぶことになった鬼勢力との交流の場を設けたかったんだろうね。しかも冥界を襲撃して着た怪物達――超獣鬼と豪獣鬼を俺達キマリス眷属と一緒に殺しまわってたから逆に宴会……じゃなかったパーティーを開かなかったら色々と問題だろう。

 

 そんなわけでパーティーに参加した俺達だったが平家は数の多さにダウンして家で引きこもり、水無瀬はパーティーに参加して楽しむというよりも裏方作業(料理作成)に専念、四季音姉妹は鬼と妖怪達と共に楽しく酒を飲んで騒ぎ出し、橘は生ライブを披露して堕天使、鬼、京都妖怪を楽しませている。橘に関してはなんというかもう凄いとしか言えないね! 同じく参加していたグレモリー眷属、シトリー眷属、フェニックス眷属からは一誠と匙君とライザーが鬼達と混ざってしほりんコールしてるし、挙句の果てにはバアル眷属の男子勢も同じことしてるもんなぁ……どういうことなの? バアル眷属の事はあまり知らないが真面目な連中だと思ってたんだけどもしかしたら違うのか? あとグラムだが夜空との共闘時に放り投げた事が気に入らなかったのか我が王よ我が王よって五月蠅かったから家に置いてきた。今頃は平家と一緒に積みゲーと化していたゲームでもしてるだろう。なんだかんだで仲良いしな。

 

 ちなみにサイラオーグは何故か知らないが鬼と腕相撲をして連勝記録を伸ばし、グレモリー先輩と生徒会長はセラフォルー様の手によって橘と一緒にライブをする羽目になってた。とりあえず可愛らしいアイドル衣装を身に纏ってた二人をカメラで撮ったのは悪くないと思う。そして戦力(おっぱいの)差に涙を流したのも悪くないだろう。

 

 

「……あれ? 王様じゃないっすか。なんでこんな場所に居るんです? しほりんのライブが始まってるでしょうに……見てあげないとぷんぷんって怒りますよ?」

 

 

 現在、俺が居るのはパーティーが行われているホテルの屋上。なんでこんな場所にいるかと言うと酒の匂いで気持ち悪くなった……わけでもなく単にこいつ(犬月)の様子を見に来ただけだ。俺としても先輩と生徒会長と橘による大小大なユニットを見ていたかったがここ数日間の犬月がどうも危なっかしいのでさっさと元に戻してやろう思っただけだ。決して……決して! 戦力差がありすぎるおっぱいをガン見して涙を流していたことに気づいた生徒会長から後で覚えてろよ的な視線にビビったわけじゃありません! ホントだよ?

 

 

「だろうなぁ。でも一緒に踊ったり歌ったりしてるのが先輩と生徒会長なんだよ」

 

「あーなるほど。そりゃ見ない方が良いっすね」

 

「だろ? ついでに言うとな……酒の匂いがヤバくて吐きそう」

 

「その程度で体調崩すほど繊細な性格はしてないでしょうに……えっと、心配かけてました?」

 

「まぁな。ほら、俺って一応(キング)だしぃ? 眷属の面倒も見ねぇとさ! なんか文句言われそうだもんね! んで? こーんな人気のない屋上に一人で何してんだよ? 自殺か? 馬鹿野郎! そんなに死にたいなら殺してやるから俺に言えって!」

 

「んなわけないでしょ!? そもそも眷属の面倒を見るって言ったのに何で殺そうとしてんすか!?」

 

 

 なんでってお前が自殺したくなるぐらい無気力になってるっぽいから解放してやろうという邪龍(おれ)なりの優しさ? まぁ、気持ちは分からなくもねぇけどな。

 

 

「冗談だよじょーだん。まぁ、心配してたってのは本当だ……お前、魔獣騒動が終わってからボーっとしまくってるだろ? 此処には俺しかいねぇから愚痴ぐらいは聞いてやるよ。ほれ、飲み物も持ってきてやったから好きなだけ吐け」

 

 

 会場から拝借した瓶を犬月に手渡す。中身は酒――ではなく普通の水だ、流石に未成年も参加してるからその辺は徹底されていたのが非常にムカつくね。それを受け取った犬月は蓋を開けて匂いを嗅ぎ、酒じゃないことを確認してからそのままラッパ飲み……なかなかいい飲みっぷりじゃねぇか。

 

 俺と犬月は地面に座り、壁を背にして水を飲む。なんともシュールな光景だが俺達以外に誰も居ないから問題無いだろう。互いに冥界の空を見ながら水を飲む……ビル内では橘達のライブが行われているとは言っても防音対策がされているのかかなり静かだ。むしろ静かすぎてかなり不気味だね。

 

 

「……王様」

 

「ん?」

 

「俺は……アリス・ラーナを殺しました」

 

 

 独り言を呟くように犬月は口を開いた。あの女を殺したことぐらい知ってるよ……言われなくてもな。

 

 冥界を怪物達が襲撃していた間に禍の団のテロリストやら主に反逆した眷属悪魔やらが暴れ回ってたらしい。俺としてはどうでも良いがその中には犬月が恋い焦がれ、夢に何度も見たであろうアリス・ラーナも居たのはあの時のコイツの様子から簡単に予想できる。俺達から離れて親の仇であるアリス・ラーナの元へと向かい――殺した。それ自体は何も問題無いしよくやった、お疲れさんと褒めたいがそれで済む問題じゃなくなったらしい……そうじゃなかったら今のコイツの様子が説明出来ないしな。

 

 

「殺したくて殺したくて何度も夢にまで見た女を殺した。この手で、この口で、ヤツの血を飲んでぶっ殺した。でも……空しくなったんすよ。あんなにも殺したかったはずなのに……潰して、引き裂いて、噛み殺して、何が何でもぶっ殺したくてたまらなかった女を殺したら――弱すぎて泣きそうになった。いや普通に泣きましたね……自分の部屋で大泣きっすよ。おかしいっすよね……殺したかったのに自分の手で殺したら泣いてるんすから。でも違うんすよ……俺が望んだのはあんな低級な殺し合いじゃない……俺が本気を出さないで楽に勝てる殺し合いなんかじゃなかった……本気を出しても勝てなくて、地面を這いずりながらヘラヘラ笑いながら立ち上がって……狂った笑い声を上げながら戦いたかった! でもそれが出来なかった! 求め続けた俺の敵は簡単に殺せるぐらい弱くなってた……これからどーすれば良いんすかね? 残されたのは空虚のような思いだけで何を目指して前に進んでいけば良いか全然分かんねぇ! ヤツの死に顔が呪いの様に脳裏に焼き付いて離れねぇ!! 殺したいと思える相手がいないのが辛い……なんでなんすか! なんで強くないんだ! 俺だって……俺だって! 王様と光龍妃のような殺し合いがしたいのになんでなんすかぁ!!」

 

 

 溜まっていたものを全部吐き出すように犬月は言葉を出し続ける。コイツが求めていたアリス・ラーナとの殺し合いは俺達と戦うときと同じくボロボロにされながらも立ち向かいたいという夢みたいな願望だ。自分がどれだけ異常な奴らと一緒に居て、一緒に特訓して、どれだけ強くなっているかも気づかないで前に進み続けた結果……いつの間にかアリス・ラーナを追い抜いてこの様だ。明日は何をするかとかこれから何しようとか一切考えられない状態に犬月は陥っている……正直、殺し合いにそんな「夢」や「理想」を持ち込むもんじゃねぇんだけどね。まぁ、俺も夜空も感情を込めて殺し合ってるからそんな事は言えねぇけど。

 

 

「んなもんお前が強くなっただけだろ」

 

「……そうっすね。強くなったんだ……ヤツを殺せるぐらいに強く……! 王様……これから俺はどうしたらいいっすかね? 殺したい相手もいない……強くなる理由の殆どが終わっちまった……! ホント、どうすれば良いんだろうな」

 

「お前の好きなようにすれば良いだろ? 死にたいなら殺してやるし生きていたいならそのまんま放っておいてやる……がお優しい水無瀬ちゃんとレイチェルが気にしてたし特別に昔話でもしてやるよ」

 

「……昔話?」

 

「おう。特別だぞ? 誇りに思え」

 

 

 瓶の中に入っている水を飲んで空を見上げる。冥界の空は嫌いだ……本当の()()が見えないし光り輝く星も人間界よりも劣る。こんな場所なんてさっさと滅んだ方が良いとさえ思えるぐらいだ。

 

 

「前に言ったよな? 俺がキマリス家に殺されかけて夜空に助けられたってさ」

 

「まぁ、はい」

 

「その時にな、夜空に一目惚れしたんだよ。光を操って俺と母さんを襲ってきた悪魔を消滅させた時は女神かと思ったぐらいだ……んだよその顔? まるで知ってましたとか言いたそうだな?」

 

「いやだって王様の態度見てたら誰だって気づきますって。多分ですけどしほりんとか姫様とかも察してると思いますよ?」

 

「……だろうな。まぁ、今はこっちの話を続けるぞ。俺は夜空が好きだ、殺したいほど愛してる、好きで好きで気が狂うほど夜空が欲しい……と同時にアイツを笑わせたいんだよ。初めて会ったアイツは感情なんて捨てたって顔でさ、無表情だぞ? 服だって誰かに犯されましたって言ったら信じられるぐらいボロボロ。初対面の時は確実に俺の方が弱かった……今だってアイツに追いついて、殺したくて、俺の女王(クィーン)にしたくて、心の底から笑顔にしたくて、アイツを護りたくて、色んなことを思いながら生きてる」

 

 

 思い出すのは夜空に助けられたあの時だ。興味無さそうな表情で俺を見てたった一言……これが私のライバルなん? 弱すぎという言葉は今でも心の奥底に突き刺さっている。今日まで前へ、前へ、ひたすら前へと突き進み続けているがアイツを笑顔に出来ているかは分からねぇ……楽しんでいるのは確かだがアイツは心の底から笑わないからなぁ。 だから意地になっちまう。

 

 

「それは夜空も同じでさ。殺したいほど俺の事が好きで、自分を受け入れてくれる俺を護りたいって言うんだよ。俺は夜空を護りたいし世界が敵になったとしても夜空の味方であり続ける。たとえその先に両親が敵になったとしてもな……でも俺は惚れた女に護られたくは無いし夜空も同じことを思ってる。だから殺し合う。どっちが上かを決めるために、どっちが護るかを決めるためにな。その行為の果てに今のお前と同じ状態になったとしても俺達はやめるつもりはない。先に言っておくが……俺は夜空が居なくなったら冥界を滅ぼして死ぬぞ? その頃には母さんも寿命で死んでるだろうし思う存分! おもいっきり暴れられるってもんだ!」

 

「いやいや!? なんとなくそーだろーなーとは思ってましたけどダメでしょ!? てか女王!? そもそも転生できるんすか!? こっちもなんとなーく察してましたけど出来るんすか!?」

 

「多分無理じゃね? アイツが普通の女王の駒程度で転生出来たら規格外だなんて呼ばれねぇし。でも変異の駒ならワンチャンか? あーでも覇龍の進化形態なんて編み出しやがったし変異の駒でも無理かもな」

 

「……だったらなんで殺し合うんすか? どっちも護りたいって思ってて相思相愛なら互いに護れば良いでしょ?」

 

「無理」

 

「……なんでっすか?」

 

「だって俺は我儘で自己満足の塊だぜ? そんなもんで満足できるわけねぇだろ。それに言っただろ? 殺したいほど好きでアイツを笑顔にしたいって。だからだよ……アイツは今を楽しんでる。俺との殺し合いを、俺が巻き込まれる事件を、夜空が俺を巻き込んで起こすなにかを見て楽しんでるのにやめられるわけねぇだろ? 俺は夜空を受け入れる……それが善意であろうと悪意であろうと関係ない。夜空だから受け入れるだけだ。だって好きだしな! その程度も受け入れられないんじゃ恋愛なんて出来ねーよ」

 

 

 その言葉を聞いて犬月は呆れた表情になりながら瓶の中に入っている水を飲む。てか惚れた女に護られるとか死ぬほど嫌だ……俺が夜空より強いってアイツ自身に分からせなきゃダメなんだよ。自分がどれだけ異常な存在かなんて夜空自身が知っている……だったらそれよりも上がいるってのを分からせれば良いだけだ。どれだけ自分が()()の女なんだって理解させれば笑って死ねるだろ……きっとな。

 

 そのためなら俺はどこまでも走り続ける。夜空を楽しませて、笑わせて、今以上に受け入れるためにもこんなところで立ち止まるわけにはいかないんだ。歩いている道が地獄に進んでいたとしても俺は止まらないし止まる気すらない。この手で夜空を殺す事になっても後悔はしないし逆に殺されても文句は言わない! なんせ悪魔で邪龍だからな! 滅ぼされるのが宿命みたいなもんだし気にしてたら何もできないだろ!

 

 

「犬月、今のお前の状態はいずれ俺がなるものだ。夜空が死んだらきっと……殺してくれる誰かを待つだけの存在に成り果てる。だからだ……そのだな、お前が生きる理由を持てないって言うなら俺が与えてやる。俺を殺してくれ。夜空が居なくなって悪に堕ちた俺に終止符を打ってくれ。何年掛かっても良いからさ、俺を殺せるぐらいまで強くなってくれ。たった一人の雑魚を殺して立ち止まるなんざ許さねぇ! 俺の我儘でこれからも強くなってくれなきゃ困るんだよ! なんでお前を眷属にしたと思う? あの時のお前の目が気に入ったからだ! コイツは絶対に強くなるって感じさせるものだった……俺を殺す権利は早い者勝ちだからな! もし参戦するならさっさと前に進め! 妖怪の血が混じってるなら自由に生きてみろ! 俺という檻を壊してみせろ!」

 

 

 俺を殺してくれるのはお前か、四季音姉妹か、平家か、水無瀬か、橘か、それともぽっと出の英雄か、もしかしたら夜空に殺されてるかもしれないが早い者勝ちだ。

 

 

「……王様」

 

「お前は俺の兵士(パシリ)だろう? 邪龍が率いる眷属の一番槍ならこんなところで立ち止まってんじゃねぇよバーカ」

 

「……普通は自分を殺してくれなんて言わないっすよ? それと……励ましたいなら普通にさっきの言葉言えばいいじゃないっすか。話は長いし光龍妃との惚気を聞かされるこっちの身にもなってくださいよ?」

 

 

 失礼だなおい! 夜空とのイチャイチャっぷりを自慢して何が悪いって言うんだ?

 

 

「だったら彼女の一人でも作ればいいだろ。惚気を聞かされたくなかったら分かってるだろ?」

 

「はい! 立ち止まるなって言いたいんでしょ? そうしますよ……王様! その命令、必ず果たします。必ず王様を……いやアンタを殺す! 酒飲みにも引きこもりにも邪魔させねぇ! 俺がアンタを殺す! だから待っててくれ……きっと王様がいる場所まで辿り着きますから!」

 

「それで良い。あーもう疲れたー! たくっ、この数日間はお前が沈んでたせいで調子が狂ってたわ。いやマジで。馬鹿で悪魔で妖怪だろ? 好き勝手に生きろよ。さてと! そろそろ戻らねぇと我らがしほりんが怒って破魔の霊力パンチを浴びる羽目になりそうだ。犬月」

 

「はい?」

 

「――期待しているぜ、俺の飼い犬(へいし)君」

 

「――うっす。期待しててくれよ、俺の飼い主(あるじ)様」

 

 

 飲み干した瓶をその場に放置して俺と犬月は屋上を後にした。そのまま橘達がライブをしている場所へと向かうと何故か知らないがセラフォルー様が単独ライブをしている光景が飛び込んできた。嘘だろ……! 大小大のおっぱいの格差あり過ぎユニットのライブが終わってんのかよ!? いや、これはこれで有りだと思うんだよね! おっぱい揺れてるし! これで生徒会長の姉とかちょっと信じられない……なんでここまで差があるんだ? 悪魔の謎だね!

 

 

「おっと最後の主役の登場だ。全く、どこほっつき歩いていやがった」

 

 

 声の主は先ほどまで居なかったアザゼルだ。その周りには八坂姫、鬼の頭領、魔王サーゼクス、天使長が居る。あれ? 天使は堕ちる可能性があるから参加はしないんじゃなかったっけ? あーでもそういえば話し合いがあるとか何とかって言ってた気がするからそれには参加してたのか。

 

 

「いやーおっぱいの差があり過ぎて密かに泣いてたんだよ。あんなのタダの公開処刑だろ?」

 

「ソーナが聞いたらブチギレるぞ? あとセラフォルーもな。サーゼクス、全員揃った事だし始めるか」

 

「そうだね」

 

 

 一体何を始める気だ? てか気づいたらグレモリー眷属にシトリー眷属、フェニックス眷属にバアル眷属、何故か参加している転生天使に双子姫、母親に付いてきたであろう九重と今回の魔獣騒動で活躍したメンバーが全員集結している。勿論俺達キマリス眷属もな! 平家とグラム? そんなのは知らん、きっとゲームで忙しいんだろう。

 

 セラフォルー様のライブも終わり、次にステージに上がったのはなんと我らがシスコン魔王ことサーゼクス・ルシファー! まさか俺の歌を聞けって奴?

 

 

「お集りの皆さん、冥界を治める魔王の一人、サーゼクス・ルシファーです。この度は冥界を襲撃してきた魔獣との戦いに参加していただき、誠にありがとうございます。新たに和平を結ぶことになりました鬼の方々、援軍に駆けつけていただいた京都妖怪の方々、堕天使の方々、種族の特性上、止む無く参加できなかった天使の方々、本当にありがとうございます」

 

 

 あれ? なんか真面目モードなんだけどなんか悪い物でも食ったのか?

 

 

「さて堅苦しい挨拶もこれぐらいにさせていただき、この場を借りて報告させてもらいたい事があります。まず数々の戦いに参加していたグレモリー眷属から兵藤一誠君、木場裕斗君、姫島朱乃さんが無事に中級悪魔へと昇格した事をお伝えしたいと思います」

 

「名前を呼ばれた子はステージへGOよ☆」

 

 

 魔王に呼ばれた一誠達はマジかって顔をしながらステージに上がって表彰状みたいな紙を渡されている。てか中級悪魔の試験に受かったのか……この分だと上級悪魔になるのも時間の問題か。まぁ、一誠の場合はグレートレッドとオーフィスの力で作られた肉体になってるから雑魚相手なら無双できるぐらい強くなっているだろう。ドラゴンベースの悪魔か……殺し合ってみたいね!

 

 

「そしてもう一人、ノワール・キマリス君。こちらへ」

 

「……なんか行きたくない。帰っていい?」

 

「ダメに決まってるでしょ!? いくらなんでもちゃんと行った方が良いですって! でも怒られて逆ギレしないでくださいお願いします!」

 

「そうですよ! その……お説教かもしれませんけど悪魔さんは一回だけ真面目に怒られた方が良いです! あとで慰めてあげますね!」

 

「……否定しようにも心当たりになることが多すぎて否定できません。ノワール君、諦めましょう」

 

「おっこらっれるぅ~にししぃ~ざまぁ~だぁねぇ」

 

 

 なんだろう……俺の味方が居ない件に付いて。なんでどいつもこいつも俺が怒られるって思ってんだよ! もしかしたら冥界を破壊してくれてありがとうとか言ってくるかもしれないだろ! そんなわけないですよね! 魔王がそんなこと言ったら冥界が滅びますもんね! てか真面目になんで呼ぶんだよ……先輩と生徒会長をチラリと見れば早く行きなさいって感じの視線が返ってきたし! ライザーを見ればざまぁとか言いたそうな表情だし! マジで死ねば良いのにコイツら!

 

 本当は今すぐにでも帰りたいが寧音と八坂の姫がガシッと俺の腕と自分の腕を絡ませてステージへと歩き始める。うーん、片方は弾力のある良いおっぱいでもう片方はマジで最高なおっぱいだな! てかなんで二人とも笑ってるんですかねぇ? 人妻の笑みとかエロいんでやめてもらっても良いですか?

 

 

「……呼ばれたんで人妻二人に連れてこられましたがいったいなんですかねぇ?」

 

「ノワール・キマリス君。私達四大魔王と冥界上層部の承認により、キミに最上級悪魔の称号を与えたいと思う。受けてもらえないだろうか?」

 

 

 今、なんて言った? 最上級悪魔の称号を与える? 誰に? 俺に? えっ、いらねぇ。マジでいらないんですけど! そもそも上級悪魔の称号すらいらないのになんでそんなの与えてくるのか意味分かんねぇ。あれか? 自分の好感度上げようとか考えてんのか? いやー無理無理! そのシスコンを治さない限りは絶対無理! チラリと後ろを見ると犬月達はマジかよって顔、先輩達もパチパチと何度も瞬きをしているからかなり驚いているんだろう。その中でもサイラオーグだけはやはりかって感じで納得してるのがなんかムカつく! 俺の代わりに受けません? あげますよ?

 

 

「ちなみにだがキマリス、拒否権はねぇぞ」

 

「ふざけんな! んな称号いるわけねぇだろ! ただでさえ上級悪魔の称号すらいらねぇってのになんでそんな好感度上げみたいな態度でそんなもん寄こすんだよ! 馬鹿じゃねぇの!?」

 

「馬鹿も何も今回の魔獣騒動、コカビエルが起こした事件、悪神ロキが起こした事件、若手悪魔同士のゲームの戦績と上げればキリがないがお前さんは上級悪魔という立場じゃ収まらん。それにだ……鬼の頭領と八坂の姫もお前さんが最上級悪魔になる事を望んでるんだ。断られるとこっちが困るっての」

 

「……おい、どういうことだよ?」

 

「かっかっか! 簡単な事さね、私らが従った存在が単なる上級悪魔ってのじゃカッコつかないのさ。鬼のメンツにも関わるからね。だから黙って受ければいい。いずれ私の娘と結婚するなら最上級、いや魔王になってもらわないとねぇ」

 

「ほっほっほ。それはこちらも同じ事よ。我ら京都妖怪を従えた存在が上級悪魔ではのぉ、いずれ来るであろう双龍御子千年計画……これは関係無いの。それにじゃ、わらわを押し倒したほどの強者が今の立場で満足されては困るなぁ」

 

「その通りさ。それにだ、あたしの腕を切り落とした男なら受けるだろう?」

 

 

 やべぇ、逃げ道が一切見当たらない! なんでこの人たちは俺に期待してんだよ!? つーか双龍御子千年計画ってなんだ!? すっげぇ気になるワードが出てきたぞ! きっとロクでもないことなんだろうね! あとすいませんが橘とレイチェルからの視線がヤバいです。なんか後でお話ししましょうって感じで見られてて本当に怖いです! でも四季音姉にはざまぁって言うぞ! 精々水無瀬からお話しされればいいさ! いやそんな事よりもマジでどうしよう……いらねぇのに受けるしかねぇよ! どうしよう! 保留? うん無理! 逃げる? 良しこれだ! これは敵前逃亡ではない……戦略的撤退だ!

 

 

「影龍の。逃げたら初物を貰おうかねぇ」

 

「若い男を味わうのは久しぶりよのぉ」

 

 

 無理でしたスイマセン! 逃げないのでその捕食者的視線をやめてください! 俺の童貞は夜空に捧げるんです! 差し上げれません!

 

 

「……こ、ココロよ、ク、う、ウケトら、させてい、ただきまス」

 

「おいおい……どこまで嫌なんだよ? 普通はイッセー達の様に喜ぶところだぞ?」

 

「ざけんな! 混血悪魔が最上級悪魔なんかになったらまーた陰口言われんだろうが! 気にしねぇけどめんどくせーんだよ! ぶち殺したくなるから! でも俺の童貞を奪われるわけにはいかないからね! 仕方ねぇから受け取ってやるよ……でも魔王様、これだけは言わせてもらいますよ」

 

「なんだい?」

 

「俺はどんな立場になっても変わらない。最低最悪で、自分勝手で、自己中で、自己満足の塊で、他人の事なんか微塵も考えないで好き勝手に生きては死んでいく。誰にも文句は言わせない……俺は俺だ。邪魔だったら殺して、ムカついたら殺す。後悔しないでくださいよ? こんな俺を最上級悪魔なんかにしたら何をするか分からないですからね」

 

 

 ニヤニヤ顔の寧音と八坂の姫の間を通ってステージから降りて犬月達の所へと向かう。犬月も、橘も、水無瀬も、四季音姉妹も喜んだ表情で俺を見つめてくる。たくっ、何嬉しそうにしてんだよ……変な奴らだな。

 

 

「相棒」

 

『なんだぁ?』

 

「楽しいな」

 

『――あぁ、楽しいなぁ!』

 

 

 この日、俺は普通の上級悪魔から最上級悪魔になった。とりあえず……夜空に自慢でもするかねぇ!




「影龍王と骸骨神」編の終了です。

ノワール・キマリス
上級悪魔 → 最上級悪魔 にジョブチェンジです。

観覧ありがとうございました!

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