ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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82話

「こちらの方は錬金術の研究……ダメですわ。この方は精霊術式における四大元素の研究……テーマは面白いと思いますが家柄がキマリス様と釣り合いません。分かっていたことですが中々条件に合う方は居ないものですわね」

 

「そりゃそうだろ。自分で言うのもあれだけど最上級悪魔、しかも影龍王だぞ? その辺で下級魔法を使ってドヤ顔してる連中と釣り合うわけないさ。だから放置してても良いぞ? 次のゴミの日に全部出すからさ」

 

「い、いえ! まだ送られてきた書類の半分も見ていないのですしもしかしたらダイヤの原石が眠っているかもしれません! キマリス様のお父様から頼まれた以上はこのレイチェル・フェニックス! フェニックス家の代表としてキマリス様に合う魔法使いを見つけて見せますわ!」

 

 

 ドドーンと背後に擬音が現れそうなドヤ顔をしながらおっぱいを揺らすレイチェル。思わず目がおっぱいに向いてしまうほどの存在感……素晴らしいね! しかもパジャマだから前かがみになった時に谷間とかが普通に見えるしもう最高だわ! 橘や水無瀬のおっぱいも最高だけど流石フェニックスの双子姫……寝間着姿もお姫様レベルですね!

 

 メフィストのジジイから魔法使い達の履歴書という名の契約書類を送られてきてから数日間、目の前にいる双子姫の片割れ様は自分に関係無いというのに俺と釣り合う魔法使いを見つけると言って送られてきた書類とにらめっこを続けている。最初は暇なのかとは思ったがなるほど……あのクソ親父が絡んでやがったか! 他所のお姫様に何頼んでんだよ?! そこまでして魔法使いと契約させたいか! いい加減にしろよマジで……帰ったら一発ぶん殴っておこう。それぐらいは許されるだろうきっと!

 

 そんなやり取りをしている時刻は真面目な学生や働いている奴らなら既に眠っている時間帯に俺とレイチェルは部屋に集まっているというなんだか怪しい感じがするが……残念な事に俺とレイチェルの二人っきりではない。何故なら――

 

 

「ノワール、お姫様はお仕事で忙しいから邪魔したら悪いよ。早くゲームの続きをしよ」

 

 

 俺の膝の上に座っている平家が居るからね! ノワール君依存率ナンバーワンでヤンデレ属性持ちのコイツは俺とレイチェルが二人っきりになる状況が気に入らないらしく、この数日間は俺の部屋を我が物顔で占領している……もうね、分りきってたから何も言わないし文句を言う事すらもはや面倒だからスルーしてるけどもいい加減さっさと自分の部屋に帰れよ? ここ数日間、ベッドに潜ればお前の匂いがするんだけどさ……マーキングでもしてんのか? 覚妖怪の癖に犬の真似をしてんじゃねぇよ。

 

 

「ノワール専用の雌犬だよ。命令されれば露出プレイもオッケー」

 

「はいはいそーですかーすばらしいですねー」

 

「……」

 

 

 先ほどの俺の返答が気に入らなかったのかゴンッと俺の胸板に自分の頭をぶつけてくる。なんかすごい音がしたが大丈夫か……?

 

 

「……いたい」

 

「そりゃそうだろ……実験がてらルーン文字を服に刻んで防御力上げてんだから。はいはい、そんな目で見てこなくてもしてやるよ……いたいのいたいのとんでけー」

 

 

 頭を撫でろと言いたそうな視線が飛んできたので平家の頭を撫でる。毎回思うんだけどコイツの髪ってさらさらしてて気持ち良いな……四季音姉や橘、水無瀬なら兎も角、コイツが髪の手入れなんてするとは思えないのにこのさらさら具合だよ! まさか隠れて手入れをしてるってか? 頷いたって事はしてるのね……はいはい、嬉しいですよーだ。

 

 

「……覚妖怪、キマリス様のお手を煩わせてそれでも眷属ですか? そ、それにめ、めめめ雌……コホン、今は私とキマリス様が魔法使いの契約の事で話をしているのですから貴方はご自分の契約の事でも考えてはいかがでしょう? キマリス眷属の一員として真面目にやらねばキマリス様にもご迷惑ですわ!」

 

「その主様が容認してるから大丈夫。くすっ」

 

「……な、なんですの、その、勝ち誇った笑みは……!」

 

「別に。ノワールに相手にされない可哀想なお姫様だなって思ってないよ。私とノワールの仲は学校でも知れ渡ってるくらい深いもん。だからこれぐらいの事はふつーだよ」

 

「ふ、普通ではありませんわ! そもそも学園での噂は他の方が勘違いしているだけのこと! 貴方とキマリス様が付き合っているわけではありませんし勝ち誇る理由にもなりません!」

 

「正義感ぶっても心の中でノワールの膝の上に座って羨ましいとかノワールの匂いくんかくんかして羨ましいとか思ってるくせに」

 

「なな、ななな!? そ、そんな事は思っていませんわ!!」

 

「残念だけど覚妖怪に嘘は通じないよ」

 

 

 はいはい修羅場修羅場。この数日間は何度も見てるからもう慣れたわ……前々から思ってたが平家とレイチェルは水と油の関係なんだよなぁ。片方は貴族としての立ち振る舞いをしないとダメなお姫様、もう片方は俺に依存してる自由主義な覚妖怪……うん! 性格的な意味でも合わないわ! むしろよく今日まで仲良く一緒に暮らせているのか不思議だね! まぁ、喧嘩するほど仲が良いって言葉もあるし本気で嫌ってるわけじゃなさそうだから今のところは俺が関わる理由も無いけどな……基本的に平家は誰が相手でもこんな感じだし。

 

 膝の上に座っている平家と床に座布団を敷いて座っているレイチェルがあーだこーだと口喧嘩をしているのを聞きながらその辺に置かれている書類の束を取って目を通す。メフィストのジジイから送られてきた書類は人間界で就職する際に使われる履歴書のようなことが書かれている……顔写真からどこの家の出身、研究テーマから得意魔法まで幅広い事が記載されているがレイチェルの言う様に俺……いや相棒が契約しても問題無いほどの魔法使いは見当たらない。それほどまでに最上級悪魔の影龍王という称号がデカすぎるわけだ……まぁ、夜空以外と契約する気は無いんだけどね!

 

 ちなみに犬月や橘、水無瀬は真面目に魔法使いの書類をにらめっこをして選別している。もっとも魔法使いが使う文字が読めなくて苦戦しているが目の前にいるレイチェルが解読したり書かれている事を分かりやすく説明したりしてサポートをしてるから今のところは問題無いようだ。なんというかスペック高すぎませんかね? 噂じゃ一誠君のマネージャーにレイチェルの姉、レイヴェルが付いてるらしいけどさ……赤龍帝と影龍王を手に入れようとしているフェニックス家の野望もどきが丸見えで絶句だわ。流石悪魔だと褒めたいね!

 

 

「……コホン。キマリス様から見て気になる方はいらっしゃいますか?」

 

「残念だがいねぇな。家柄で落とすつもりは無いけど書かれている研究テーマや得意魔法がありきたり過ぎて面白く無い……悪魔と同じで体裁ばっか気にしてるからその辺は仕方ないとは思うんだけどもう少しどうにかならないかねぇ。俺的にはなんでも良いからくっだらない事を全力でやってる奴の方が良いな。その方が付き合い方も楽だしさ」

 

「そう、なのですか……? 私は逆にちゃんとした家柄の者で納得のいく研究テーマを持っている方が良いと思いますわ。契約をして恥をかかないためにもその辺りは徹底しなければ家にも迷惑がかかりますもの」

 

「あーそっか、レイチェルの場合は周りの印象があるか……でも考えてみろよ? 仮に契約すれば数ヶ月、もしかしたら年単位でそいつと付き合ってくんだぞ? そんな長期間を真面目にやってたら疲れるしこんな事で呼ぶんじゃねぇよって思うだろ……俺はそこまで暇じゃないし真面目な事をしたいなら真面目な奴と契約しろって思ってる。むしろ馬鹿なことは大歓迎だ! 良く分からない事に人生を賭けて全力を注いでるとか面白いだろ! だから俺としてはそんな魔法使いと契約したいね」

 

 

 だって俺は邪龍だからな。真面目に世界の謎やら魔法、術式とかを研究するよりどうすればスカート捲りをバレないように行えるかとかを研究してる奴の方が良い……そっちの方が俺も楽しいしね! あと真面目な理由を言うなら冥界での俺の立場がどんなものかなんて分りきってるし、今更真面目に家のために何かをするようなことはしない。好き勝手に生きて、好き勝手に殺し合って、好き勝手に楽しむのが俺だ……だからレイチェルのようにちゃんとした家柄や研究テーマを持った魔法使いとは絶対に契約はしない。まぁ、元からするつもりも無いんだけどね!

 

 

「面白い……そんな事は考えた事がありませんでしたわ。魔法使いとの契約は悪魔として魔法使いの要望に対価を頂いて叶えるもの、そこに楽しいとか面白いとかは関係ありません……そんな事をすればたちまち噂になって次回以降に響きますから。やっぱり、キマリス様は変な方ですわね!」

 

「ん? 今更だろそれ……元から俺は変だぞ? なんせ邪龍だ、好き勝手に生きてる男だから変に決まってるだろ。それに初対面の時……あーとあの時だって俺がどんなことを言ったか覚えてるか?」

 

「……それはもう忘れるわけもありませんわ」

 

「――普通は言わないよね。人質だった女の子相手に「あんなのに捕まるとか雑魚過ぎ」ってさ」

 

 

 レイチェルとレイヴェルには大変申し訳ないがあの時は本当にイライラしてたからさ! 雑魚な誘拐犯に捕まってた双子姫様に呆れてたんだよなぁ……ホント、すいませんでした! 反省はしないけど許してください!

 

 

「あの時はイライラしてたしなぁ……あーでも、悪かったな? ガキだったとはいえそんな事を言ってさ」

 

「いえ……むしろ感謝したかったですわね。自分達がどれほど未熟だったのかを分からせてくれたのですから……で、ですけどこの私にあのような言葉を言ったことは許せません! で、ですので……その、謝罪の品と言うわけではありませんがキマリス様のひ、ひひひ、膝の上に……座ってもよろしいでしょうか……?」

 

「ノー、ダメ、許さない、此処は私のもの」

 

「貴方には聞いていませんわ!!」

 

「いや、そのぐらいで良いなら勝手に座っても良いぞ? なんせコイツ(平家)や四季音姉や橘も俺の承諾無しで座るしな。俺は椅子じゃないんだけどなぁ……まぁ、座りたいならほれ」

 

 

 膝の上に座る平家を少し横にずらしてレイチェルが座れる部分を作る。視界の端から何かを言いたそうな視線が突き刺さってくるけど無視だ無視! そもそもお前は毎回座ってんだから偶には譲れ! 良いか……俺はな! 双子姫様のおっぱいを後ろから見たいんだよ! そのために仕方なく……あぁ、仕方なく座らせてあげようとしてるんだから察しなさい。いや、あの……気に入らないからって人の大事な部分を握らないでもらえませんかねぇ……? 人質か!? 人質なのか! やめろよぉ! 夜空に童貞を貰ってもらえなくなるだろ!

 

 そんなやり取りをしていると顔を真っ赤にしながらレイチェルは恐る恐ると言った感じで俺の膝に座ってきた。うーん、柔らかい。女子の体ってなんでこんなに柔らかいんだろうね! あとおっぱいスゲェ! 後ろから見ても存在感がヤバいわ……橘もここ最近は膝の上に座ってくるけどいやー凄いけどそれに負けないぐらい凄いわ! 左を見ると山があり、右を見ると壁がある……これが同い年とは思えないぐらいの差だ。泣いて良いですか?

 

 

「泣いたらどうなるか教えてあげよっか」

 

 

 やめてください死んでしまいます。

 

 

「さ、覚妖怪……! き、キマリス様のそ、その……そんなところを触ってはしたないですわよ!」

 

「問題無い。いつも触ってるし。お姫様がしてもらえないあーんなことやこーんなこともぜーんぶしてるもん」

 

「ななな?! ゆ、許しませんわよ! それは私の……い、いえ! 何でもありません!」

 

 

 あっ! お姫様からの触れ合いなら大歓迎なんでいつでもどーぞ! ゴメンナサイゴメンナサイ! いたい、いたいから!? お、お前なぁ……! いくら再生するって言っても痛いもんは痛いんだぞ!? マジで握るな! ヤンデレ属性持ちなら刃物で刺すとか監禁するとか切り落とすとかにしなさい!

 

 この後は膝の上でじゃれ合う二人を鑑賞したり、分からない事があったのか部屋を訪ねてきた橘と水無瀬に現在の状況を見られてズルいだの交代だのと言われたり比較的楽しい状況になった。犬月? あぁ、なんか水無瀬から「書類に書かれている文字が読めなくてヤケになったのか花恋に戦いを挑んでます」とか言われたから四季音姉相手に頑張ってるんじゃないかな? きっと負けてるだろうけど。負けるな犬月、頑張れ犬月。俺を殺せるまで負け続けて強くなれよ。

 

 

「――てな事があってさぁ! 今日も楽しくなるかなーとか思ってたんだけどさー! なんで俺を呼んだ?」

 

 

 そんなわけで翌日の放課後、俺はグレモリー領の地下にあるグレモリー眷属専用の訓練スペースに足を運んでいた。なんでって言われたら目の前にいる先輩とアザゼルに呼び出されたからです! 右を見ても左を見ても上を見ても広くて耐久力がある立派な訓練スペースに俺様! 嫉妬しちゃうね! はいはい魔王特権魔王特権。こっちなんてガチの殺し合いをするときは地双龍の遊び場(キマリス領)でやってるってのに羨ましいですねー! 俺の家の地下にも訓練スペースがあるけどここまで広くないぞ? マジで可愛がられてるねぇ。他から文句言われればいいのに。

 

 俺の質問に先輩はやや困惑、傍にいる姫島先輩も困惑、何故かいるシスターちゃんも先輩の後ろに隠れて困惑、同じく何故かいるヴァルキリーちゃんも困惑、諸悪の根源ことアザゼルはあきれ顔……おかしい、ただ普通に若干だが殺気を放ってるだけじゃねぇか? そこまでビビる事かね?

 

 

「転移早々、地味に殺気を放つなっての……そこまで呼ばれるのが嫌か?」

 

「えっ、当然だろ。何が嬉しくて他の眷属の所に呼ばれないとダメなんだよ……しかもアザゼル、テメェが居るって事はどーせ依怙贔屓だろ? 帰って良いか?」

 

「待て待て……確かに贔屓になるかもしれんが大事な事だ。近くに居るドラゴンで当てになりそうなのがお前さんぐらいなんだよ」

 

「なんだよそれ? てかドラゴンならオーフィスが居るだろ」

 

 

 視線をちょっと横に向けると黒髪ロングの尋常じゃないほど露出しているゴスロリ服を着ている少女が居る。この子の名前こそ! 世界最強にしてテロリストの親玉! オーフィスちゃん! キャー無限の龍神様ー! 可愛いー! 腋ぺろぺろさせろー! と冗談は置いておいて……なんでこんな場所にいるかと言うと魔獣騒動後に行く当てが無くなったやら一誠君に懐いたやらで先輩達と一緒に住むことになったそうだ。勿論他勢力には内緒だ! だってバレたら色々と拙いしね! もっともバレても()()()したとはいえオーフィスには勝てないから問題無いだろうけどな。

 

 しっかしマジで痴幼女だな……胸が殆ど丸見えだしテープで乳首を隠すってどんだけだよ?

 

 

「クロム、我を呼んだ?」

 

「おー呼んだぞー久しぶりだな、なんだかんだで元気にやってるようで安心だ」

 

「我、この場所が好き。居心地がいい、でも無限の狭間に戻りたい。我、静寂を得たい」

 

「だったらグレートレッドを倒さねぇとなぁ……で? オーフィスが居るのに俺を呼ぶ理由って何? 何故かいるシスターちゃん絡みだってのは察したけどくっだらねぇことなら帰るぞ」

 

「分かった。話すからその殺気は鎮めろ……お前さんも知ってるだろうが俺は前線を引く。なんせオーフィスを他の連中に黙ってこの場所に引き入れたんだから当然と言えば当然だ。まっ! 俺は戦うよりも何かを研究してた方が性に合ってるし何も問題ねぇけどな! でだ……俺がファーブニルと交わしていた契約を解除してアーシアと契約させようと思ってる。それ以外にも他のドラゴンとも話をさせて契約できれば上々ってところだ……お前さんにはドラゴンとの橋渡しをしてもらいたい。流石にオーフィスだと色々と問題だからな」

 

「そりゃそうだ……呼ばれてきたら最強の龍神が居たとか悪夢だろ」

 

 

 いくら弱体化してるとは言っても龍神は龍神だ。オーフィス曰く、全盛期の二天龍や地双龍の二回りぐらい強い程度に収まってるらしいがふざけるなって言いたいね! 曹操ちゃんも面倒な事をしてくれたもんだ……弱体化させんじゃねぇよ! 何時か勝つという目標が無くなったじゃねぇか!

 

 

「我、悪夢?」

 

「そーだなー悪夢だなー。つっても橋渡しねぇ……一誠君で良いんじゃねぇの? 言っちゃなんだが邪龍(おれ)だぞ? 普通に考えてアウトだろ」

 

 

 呼ばれた先に邪龍が待ってましたとか悪夢だと思うね!

 

 ちなみに一誠君じゃないのは魔法使い絡みやら魔獣騒動で被害にあった子供達との触れ合いやらで忙しいから来れないらしい……へー、俺は良くてそっちはダメなんだ。まぁ、真面目な話をすると俺がドラゴンを使い魔にしていることと召喚したドラゴンがシスターちゃんに牙をむいた際に楽に制圧できるから俺を呼んだらしいけど……こっちは便利屋じゃねぇんだぞ? てかそもそもオーフィスが居るなら問題無いだろ。こっちだってなぁ! 嫉妬でぷくーと頬を膨らませる橘を可愛いと言う作業とか四季音姉妹と殺し合ったりとかグラムと遊んだりとか忙しいんだぞ! とりあえず帰ろう。決して便利屋扱いされた事が気に入らないとかじゃない! 忙しいからさ! ほら、最上級悪魔だし!

 

 

「アザゼル。悪いが他を当たってくれ。なんか面白そうだけど他所の戦力増強に手を貸すほど暇じゃねーんだよ。ドラゴンと契約したいならシスターちゃんが一人でやれよ……何から何までおんぶにだっこだと後々辛いぜ? あと俺は便利屋じゃないからな」

 

『ゼハハハハハハ! 良いじゃねぇの! 乗ってやろうじゃねぇか!!』

 

 

 俺の手の甲から声が響く。うわぁ、めっずらしぃ!

 

 

「ん? 珍しいな。相棒がこんなことにノリノリなんてさ」

 

『俺様も久しぶりにファーブニルと話してぇしなぁ! それによぉ! もしかしたら俺様の知り合いが召喚されるかもしれねぇんだぜ? 忘れたころに俺様の恐ろしさを思い出させるには良い機会じゃねぇか! いくら雑魚の頼みとはいえ今回だけは聞いてやっても良いと俺様は思うんだがどうよ?』

 

「……まぁ、相棒が良いなら良いけどさ。しゃーねぇなぁ……こっちも忙しいから勉強しながらで良いなら手伝ってやるよ」

 

「お、おう! それで構わん! 基本的な事は俺とロスヴァイセが行うからお前さんは傍に居てくれればいい。影の龍クロム、オーフィス、そしてアーシアの使い魔のラッセーのオーラを利用して召喚させてもらうからな」

 

「はいはいお好きにどーぞ。あー、先輩? こんだけ広いんなら一部分だけ使わせてもらっても良いですか? てかそれが対価替わりで良いんで貸してください」

 

「え、えぇ。構わないわ。ごめんなさいね……キマリス君も忙しいのにこんなことを頼んでしまって……」

 

「まぁ、俺もファーブニルと話をしてみたかったし相棒もノリノリなんで今回は別に良いですよ。ただ便利屋もどきにされてるのがイラつきますけどね……この場に夜空が居たら俺もテンション上がるんだけどなぁ」

 

 

 無いものねだりをしても仕方が無いのでアザゼル達が準備をしている間、俺は離れた場所で魔術書を読みながら影人形を生成する。数は複数、ルーン文字は「М(マンナズ)」「(イサ)」を使用して影人形の制御と安定感を高めている。サイラオーグとのゲームや寧音、夜空との殺し合いで影人形を複数生み出すと若干だが防御力が落ちる……みたいなのでその辺を克服するためだ。もっともあの三人がパワー極振りだから厳密には違うんだろうけどなんか納得いかないからさ! やれることはやっておかないとダメだろ邪龍的に!

 

 本来ならここに「(エイワズ)」と「(エオロー)」を加えるんだが今はお試しだからそれはしない。でもやっぱり一人でやるより四季音姉妹に付き合ってもらった方が良いな……あのパワーが無いと強くなってんのか弱くなってんのかさっぱり分からん。

 

 

「……相棒」

 

『そうだなぁ、確かに「М」と「I」の効果で普段使うよりは安定してるだろうな。これならば「(ウルズ)」の文字を入れても良いかもしれねぇぜ? あれはパワーを底上げするしな! 「Y」と「Z」でも問題ねぇけどよ! ゼハハハハハハ! あのクソババアからこんなもんが送られてきた時は殺してぇとは思ったが宿主様が強くなるなら甘んじて受け入れてやろう……! ムカつくけどなぁ!』

 

「だったらこれで強くなってぶっ殺せばいいだろ?」

 

『ゼハハハハハハ! 全く持ってその通りだぜぇ!』

 

 

 一通りルーン文字を付加して影人形を動かしていると先輩が俺に近づいてきた。

 

 

「……キマリス君でも特訓をするのね」

 

「いやいや……俺を何だと思ってるんですか? 普通の混血悪魔ですよ? 時間があれば殺し合いだの特訓だのしないとあの規格外には勝てないんですよ」

 

「キマリス君が普通なら私は普通じゃないわね……今度、時間があったら一緒にトレーニングをしてもらえないかしら? 本気で私を殺しに来る状況でどのように動けるか確かめたいの……どうかしら?」

 

「嫌ですよメンドクサイ。あと先輩を攻撃したらキレる人いるじゃないですか? 前のゲームの事はまだ忘れてませんからね」

 

「……うぅ」

 

 

 実際問題、仮に一緒に特訓したとしても俺達が行う特訓と先輩達が行う特訓が同じなわけ無いし、またあーだこーだ言われそうだしさ! 断るのが一番! メンドイとかじゃないよ? うん! あっ、でも一誠君と殺し合わせてくれるんなら考えても良いかもしれないな! 龍神と真龍の力が宿った体だぜ? 滅茶苦茶面白そうじゃねぇか! うん! 前言撤回して一誠君と殺し合わせてくれるならオッケーってことにしよう!

 

 そんな事を考えていると召喚魔法の準備が終わったらしい。と言っても俺とオーフィスとラッセー……? ってドラゴンのオーラを利用して龍門を開くだけだけど。

 

 

「よし、準備は終わった。ドラゴンを召喚するが問題無いな?」

 

「は、はい! よろしくお願いします!」

 

「我、アーシアをサポートする」

 

 

 やっぱり俺っていらなくね?

 

 というわけで始まりました! シスターちゃんによるドラゴンとの契約交渉! まず召喚されたのは炎のドラゴン、召喚したのがシスターちゃんだと気づいて威嚇したけど俺を見た瞬間に態度が豹変、土下座をして用件を聞き始めました。次に呼び出された水のドラゴンも呼び出したのがシスターちゃんだと気づいて見下した視線を向けていたが俺を見た瞬間に態度が豹変、土下座をし始めて用件を聞き始めました。次の獲物……コホン、召喚に応じてくれたのは風のドラゴンくん! 呼び出したのがシスターちゃん――では無く俺だと勘違いしたのか使い魔にしてくださいと土下座をして来たので俺の使い魔(ヴィル)に勝ったら考えると言って追い返しました。あれ? ドラゴンの中では土下座が流行ってんの? 毎回さぁ! 俺を見た途端に態度を変えてるんだけど何もしてませんけどぉ! てか召喚されて俺を見た途端に帰りやがった雷のドラゴン、テメェは後で覚えてろ。

 

 

「ドラゴンの中でキマリス君がどんな風に思われているのか良く分かるわね」

 

「こんなに社交的で礼儀正しい俺を見てビビるとかどうなってんだよ? グラム持って遊びに行くか」

 

「待て待て……そんな事をしたらタンニーンがキレるぞ? リアス、朱乃、アーシア、ロスヴァイセ、見て分かると思うがドラゴンでも苦手な奴がいる……それが邪龍だ。普通のドラゴンは邪龍を相手にはしたくは無い、なんせどれも頭がおかしいからな。キマリスを見て態度を変えたのは……光龍妃との殺し合いが原因か? あれだけ仲良く殺し合ってればドラゴンと言えども恐怖の対象だろう。ついでにグラムを嬉々として振るってたのも関係してるかもしれんがな」

 

『ゼハハハハハハハ! 俺様を見て態度を変える奴らを見るのは愉しいぜぇ! これだから蹂躙ってのはやめられねぇんだよ! 畜生! 封印されてなければ襲いに行けるってのによぉ!!』

 

「……影の龍、悪魔となって分かりますがやはり邪龍の筆頭格ですね。何故平然としていられるのか分かりません」

 

「うふふ、ですけど楽しそうですわね。まるで親子ですわ」

 

「そりゃ当然ですよ。俺は相棒にとって息子らしいですし」

 

『おうよ! 俺様の大事な大事な息子だぜぇ! ゼハハハハハハハハ! おい! 早くファーブニルを出しやがれ! 久しぶりに虐めてぇんだよ!!』

 

「本当ならもう少しドラゴンとの会話に慣れてからが良かったが……仕方ない、何とかなるだろ」

 

 

 アザゼルが宝玉を取り出した。確か三大勢力がまだ和平を結ぶ前に行われた会談で使った人工神器ってやつだな……ファーブニルが封じられているであろう宝玉に魔法陣を当てながら呪文を唱えると地面に龍門が開き、一体のドラゴンが召喚された。金色の鱗を持つ翼を持たない四足のドラゴン……五大龍王の一体である黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)、ファーブニルだ。さっきまで召喚されたドラゴンにも言えるけどやっぱりデカいな! 相棒も生前はこんな感じだし当然と言えば同然だけど……てかどこを見てんだ?

 

 

「ファーブニル、呼び出したのは他でもない。俺との契約を解約するためだ」

 

 

 アザゼルの言葉に興味が無いのか何も言わずにアザゼル――ではなくその隣にいるシスターちゃんを見つめてる。まさかの一目惚れか?

 

 

『ゼハハハハハハ! 久しぶりじゃねぇかファーブニルよぉ!』

 

『クロム、懐かしい。また俺様を虐めに来た?』

 

『そうしてぇが今回は別件でなぁ! テメェと契約したいっつう物好きが居るのよ! そこにいる金髪シスターちゃんだぜ! ゼハハハハハ! 雑魚だが弱いテメェにはお似合いだなぁ!』

 

『俺様と契約?』

 

「は、はい! アーシア・アルジェントと申します! 始めましてファーブニルさん!」

 

「影の龍クロムも言ったが俺との契約を解除してコイツと契約してほしい。お前が望む対価もやろう」

 

『契約……この子が俺様と契約……』

 

 

 デカい顔でシスターちゃんを舐めまわすように見つめているけどマジで何考えてるか分からねぇ……気に入ったのか嫌なのかすら分からんとは流石ドラゴン! てかまた虐めに来たって相棒……生前何したんだよ?

 

 

『――金髪、俺様と同じ金、アーシア……アーシア()()、契約しても良い』

 

「何か今、たんって聞こえたんだが……ファーブニルってあんな性格なのか?」

 

『んなわけねぇだろ! おいおいどうしたファーブニル! 宝にしか興味が無かったテメェが女にたん付けで呼ぶたぁ珍しいじゃねぇの! 確かに分かるぜ……! 金髪シスターなんざ希少も希少! 俺様も何度犯してぇと思った事か! もっとも俺様はあの男の娘(吸血鬼)が良いけどな!』

 

『クロムは変わらない。前も俺様が護っていた宝を奪いに来た時も男の娘が関係していた……俺様、契約するなら対価が欲しい』

 

「……はっ、あまりの衝撃で意識が軽く飛んでたぜ……ま、まぁ良い! ファーブニル、何が望みだ?」

 

『ぺろぺろしたい』

 

「……なんだと?」

 

 

 アザゼルがマジかって顔をしてるけど俺には分かるぜファーブニル……! 腋だな! 確かに金髪シスターの腋ってかなり希少だろうからペロペロしたい気持ちは凄く分かるぞ! なんだよこのドラゴン! 話が分かるじゃねぇか!! よっしゃ! ちょっと同じドラゴンとして手を貸してあげないとダメだな! あとすいませんが俺もぺろぺろして良いですか?

 

 

『金髪美少女シスターのアーシアたんをぺろぺろしたい』

 

「よしシスターちゃん! 脱げ! そして腋を見せれば後はファーブニルがぺろぺろして契約が完了するはずだ! いやぁ、まさかここで同じ性癖を持つ奴と出会えるなんて思わなかったわ! あっ、俺は相棒を宿してるノワールだ……出来ればシスターちゃんの腋の味を後で教えてください!」

 

『良いよ』

 

「ありがとうございます!」

 

「キマリス君、ちょっと黙って頂戴……! アザゼル!! どうなっているの!!」

 

「知るわけないだろ!? ファーブニルがこんな風になってるなんざ俺も驚きだ! てかキマリスのテンションがさっきまでと違う事にもビックリだ!!」

 

 

 いやだってさ……同じ腋好きのドラゴンだぜ? テンション上がらないわけないだろう! いやぁ、良いねこのドラゴン! 俺が使い魔にしたいぐらいだわ!

 

 

『でも俺様、もっと欲しいものがある』

 

「……一応聞こう。何が欲しい?」

 

『美少女シスターのおパンツください。それならいつでも呼んでも良い。今は脱ぎたてのおパンツが希望です』

 

「安いなこのドラゴン」

 

「あ、あぁ……確かに安いな。レアメタルやら世界中の財宝を要求されるよりも格段に安い! うはははははは! もう知らん! これほど格安で契約出来るなんざ滅多に無いぞ! なんで俺との契約の時は宝を欲しやがった!! そんなので良いなら毎回苦労しなくても済んだのによ!!」

 

『男のパンツはいらない。これ真理』

 

「俺だっていらんわ! ちゃんと女のパンツを用意したぞ!?」

 

『俺様はコレクター、金髪美少女シスターのおパンツはお宝中のお宝。他には代えられない価値がある』

 

 

 うん、凄く分かる。さて問題は……ファーブニルの発言に女性陣がガチで引いている事だな。いやいや待って待って……普通だから! 男ってのは女の子のパンツやらなにやらを欲しがる存在なんだよ! てか普通に考えてパンツ一つで契約していつでも呼んでいいとか格安も格安だろ……しかも五大龍王だぞ? そいつと契約したい奴がどれだけいると思ってんだ? 確かに恥ずかしいだろうけど夜空も平家も平然と渡してくるからきっと大丈夫だと思うぞ! いやぁ、マジで話が分かるわこのドラゴン! お友達になりたいね!

 

 

「アーシア……やめましょう。きっとこれはダメなドラゴンだわ」

 

 

 先輩が保護者のようにシスターちゃんを遠ざけてるのがガチな反応過ぎて面白いね。

 

 

「……ちなみにファーブニル、俺と契約するなら対価はどんな感じだ?」

 

『世界中に散らばったティアマットのお宝が欲しい』

 

「……やっぱりシスターちゃんの方が安いな」

 

「ドラゴンが集めていた宝とパンツか……なんだこの差は!? 酷すぎるぞ!」

 

「ファーブニル、パンツが欲しい? 我のパンツを上げる」

 

『……オーフィス? パンツくれるなら貰う。でも俺様、アーシアたんのおパンツじゃないと契約しない』

 

 

 とか言いながらオーフィスのパンツを貰って匂いを嗅いでいるところを見るとガチだな。なんか先輩からグラムであれを斬りなさいとか言ってきてるけどするわけないじゃん……メンドクサイ。つーかマジで差が酷すぎて呆れてるんだけどさ? いや、まぁ、ドラゴンだから仕方ないと言えば仕方ないんだろうけどもっと差を縮めてくれませんかねぇ!

 

 ちなみにティアマットってのは五大龍王の一体で未だに封印も討伐もされていないドラゴンだ。相棒から聞いた話だと過去にユニアとガチで殺し合った事があるとか相棒がティアマットを抱こうとして迫ったら殺し合いになったとか色々面白い話を聞かされたけど……流石だな! 欲望に忠実で俺様、憧れるね!

 

 

「あくまでアーシアのパンツじゃないとダメか……男としてそれは物凄く分かるがどうする? こんなチャンスは滅多に無いぞ?」

 

「待ちなさいアザゼル! 確かに破格の条件かもしれないけれど……召喚のたびにぱ、ぱパン……を与えるなんて女性を何だと思っているの!」

 

「いや買えばいいじゃないですか……あと先輩? わずか数千円程度で五大龍王と契約出来るなら安いと思いますよ?」

 

「女の子の下着は使い捨てじゃないの! キマリス君は黙ってて頂戴!」

 

 

 アッハイ、ダマリマス。

 

 

「キマリス……言いたい事は分かるぞ」

 

「だろ? ここまで格安だと即契約だろうになーんで悩むかねぇ?」

 

「それが女ってもんだ。服や下着に何万とかけるが着るのは精々一回やら二回、着終わったら押し入れの中で眠るんだよ。そして気づけば体形が変わって着れないからマーケットで格安で売られるんだ」

 

「良く分かんねーよなぁ? なんだってそんな無駄な事をするんだか……夜空でさえ人の財布から金をとって自分の服を買ってさ、何日も着続けるってのに……この人達は馬鹿じゃねぇか?」

 

「……お前さんも苦労してんだな」

 

「もう慣れたよ」

 

 

 女性陣が話し合っているのを見ながらアザゼルと話し合う。この瞬間だけだがアザゼルの好感度が上がった気がするね! あとオーフィス、飽きたからって子供のドラゴンと遊ぶのはやめなさい。死んだらどうするんだよ? いくら弱くなったって言ってもお前が遊び感覚でも相手は必死に抵抗してるかもしれないだろ!

 

 

「……キマリス」

 

「ん?」

 

「今回の件とは関係無いが次の休日、少しばかり時間をくれ」

 

「理由は?」

 

「リアスの僧侶、ギャスパー・ウラディの件で吸血鬼側と会談を行う予定になってる。出席者はリアス達グレモリー眷属とソーナ、俺、天界側から一人……グリゼルダっていうガブリエルの(クィーン)だ。最上級悪魔としてお前さんにも出席してもらいたい。吸血鬼側が何を言い出すか分からん状況で光龍妃の乱入もあり得る……もしもの時には好きに暴れてくれても良い」

 

「……良いのかよ? アンタがそんな事を言って?」

 

「なに、俺は総督を辞任した身だ。これぐらいは言っても罰は当たらんさ」

 

「ふーん。好き勝手にして良いなら別に良いけどさ。まーた巻き込まれたのか? 先輩も運が無いというか一誠が引き寄せているというか……了解、あとで時間を教えてくれ」

 

「助かる」

 

 

 そんな事を話しているとシスターちゃんが覚悟を決めたのかその場でパンツを脱いでファーブニルに手渡して契約を行った。目の前でパンツを脱ぐ姿がこれほど良いものだとは思わなかったよ……ありがとうございました!

 

 しっかし吸血鬼との会談ねぇ……一応、引きこもりたいとかいうだろうけど平家を連れていくか。とりあえずファーブニル――シスターちゃんの腋をぺろぺろするのは何時ですか?




観覧ありがとうございました!

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