ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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83話

「なんつーか、こんな風に集まって飯食うの久しぶりじゃねぇか? キムチラーメンネギメンマ多めの大盛と餃子」

 

「そうかもしれないな。魔獣騒動が起き、俺達の方もある人物によって組織に反逆者扱いされてしまったからね。ふむ……味噌ラーメン大盛、チャーハンを頼もう」

 

「ヴァーリ、それは嫌味かな?」

 

「さぁ、どうだろうな」

 

「ぶっちゃけさぁ~なーんにも縛られることなく自由になったんだし問題無くない? あっ! メニューの端から端まで全部ちょーだい! 勿論大盛ぃ!」

 

 

 休日のお昼頃、俺はとあるメンバーとラーメン屋に訪れていた。俺の目の前には圧倒的イケメン力を放つ銀髪の超絶イケメンで死ねばいいと思っているヴァーリ、隣の席には圧倒的な壁力(ちっぱい)を持つスーパー規格外の美少女の夜空ちゃん! どちらも俺と一緒にここまで歩いてくる最中に女の子や野郎連中から何度も見られていたのは言うまでもない……現に今も俺達()()に周囲の客たちからの視線が集中しているしな。流石イケメンと美少女……! ヴァーリだけ死ねばいいのに! 少しぐらいはイケメン力を分けてくれても良いと思うんだがどうだろうか!!

 

 

「端から端って……相変わらずよく食うなぁ」

 

「なに? 文句あんの? 女の子は食べなきゃ動けない生き物なの! ノワールのおごりっしょ? だったら食わなきゃダメじゃん!」

 

「確かに奢るとは言ったが限度があるだろうが……まぁ、今更お前に言っても聞かないだろうけどよ。つーわけだ、()()ちゃんも遠慮しないで頼んでいいぜ?」

 

 

 ヴァーリの隣の席に座っている男に視線を向けながら話しかける。帽子をかぶり、どこかの学生服を着ている男の名は曹操、はい! 英雄派のトップだったお方です! いやーあれだね? 帽子をかぶって顔が見えなくても爽やか系イケメンってのは隠せないもんだわ! 死ねばいいのに。ヴァーリに殺されて死ねば良かったのにマジで! というよりも俺の目の前にいるイケメン二人は滅んでいいと思います。

 

 なんで全世界で指名手配中の曹操とヴァーリがこの場にいるかと言うと……隣にいる夜空が連れてきた。もうビックリしたわ! いつもの様にノワールおなかすいたーって転移してきたから昼飯食いに行くかって話になったらさ! なんか俺に用事がある奴が居るとかで連れてきたのがこの二人だよ! この場所が駒王町じゃなくて良かったわマジで!! だってあの町って周囲を変な結界で覆っているから侵入者が居ると即効で三大勢力のスタッフにバレるんだよね……この規格外は例外だけど。

 

 

「――おかしいな。本来であれば影龍王、キミは俺達を捕らえなければいけない立場なはずなんだがな」

 

「だって此処、俺が管理してる場所で先輩が管理してる駒王町じゃない。つーかメンドイからするわけねぇっての……それに仮に捕らえようとしたら全力で抵抗するだろ? 俺的にはそれでも全然問題無いけどさ! 飯食うだけなんだしそんな面倒な事はしねぇよ」

 

「……そうか。ならお言葉に甘えて注文をさせてもらおう。醤油ラーメン大盛、餃子とチャーハンだ」

 

「りょーかい。すんませーん、えーとメニューの端から端まで全部とキムチラーメンネギメンマ多めの大盛、味噌ラーメン大盛、醤油ラーメン大盛、餃子二人分、チャーハン二人分」

 

「ほう。初めてだぜそんな注文はよ……なんだったらこれはどうだい?」

 

 

 俺の注文を聞いた店長らしいおっちゃんが手に持ったパネルを見せてきた。そこには大食いチャレンジと書かれており、5kgのラーメンを三十分で食べきれば代金は無料で賞金一万円、ムリなら逆に一万円を支払うという内容だった。ふむ、夜空だったら余裕な気がする……なんせコイツの胃袋は規格外だからな! 食っても食っても体形が変わらない不思議仕様だ! この程度なら十分もかからないだろう。いったいこの体のどこに入ってんのか分からないぐらい食うから店長のおっさん……覚悟しておけよ!

 

 店長が見せたパネルを見た夜空はにへらと笑いながらよだれを流して俺を見つめる。その目には食いたい、食わせろ、食って良いよねと言ってる気がする……いや確実に言ってるね! あの、夜空ちゃん? 食いたい気持ちは分かるけど口から流れているよだれを拭いて顔を戻そうか! 美少女がしてはいけない顔になってるからさ!

 

 

「ラーメンでこの量は多いが……光龍妃は食べる気か? あとすまない、その顔は女性としてはどうだろうか」

 

「にへへ……おいしそぉ! とーぜん! 食うぜー! めっちゃ食うぜー! てかー曹操! なに人の顔を馬鹿にしてんのさぁ! どっからどう見ても超絶美少女じゃん! 殴るよ?」

 

「それをされたら俺は死ぬな」

 

「てか自分で美少女って言うならせめてよだれを拭けよ……おっちゃん、それ頼むわ」

 

「あい分かった。ちと待ってろ」

 

 

 俺達の注文を聞き終えたおっちゃんは厨房の方へと入っていく。周りの客も大食いメニューに挑戦する夜空を見てマジかって顔をしてるが数分後には嘘だろって顔に変わるだろう……絶対にキブアップなんてしないからな!

 

 

「ところで曹操ちゃん? 英雄派が解体したっぽいけど今何してんだ? 夜空からはヴァーリと殺し合いをして死にかけてたとかってのは聞いたんだけど?」

 

 

 前に夜空と勉強会をした際に目の前にいるヴァーリと曹操が本気の殺し合いをしていたと聞いた時は驚いたぜ……ズルイぞ! なんで俺を呼ばないんだ! こっちはなぁ! 冥府を崩壊させたり死神ぶっ殺したり童貞を人質に最上級悪魔に昇格させられたり勉強したりしてたってのになんで殺し合いをしてんだよ! 俺も混ぜろ! 聖槍と白龍皇相手に殺し合いしたいんだよ! まぁ、夜空曰く「私が見つけなかったら二人共死んでたねー」とか言ってたから本気も本気の殺し合いだったんだろう……羨ましい。それに比べて俺達はここ最近は殺し合ってないしなぁ……別に今まで通りだけど魔獣騒動のあの感覚を知っちまったら体が落ち着かないんだよね! 流石悪魔で邪龍! 相棒の気持ちは痛いほど分かるね!

 

 

「……何をしている、か。そうだな……自分探しの旅と言えばいいかな?」

 

「中二病か? 良い病院知ってるぜ?」

 

「生憎、これまで病気になった事は無いさ。それに中二病ならばヴァーリとキミも当てはまるだろ? その話は置いておいて禁手が()()化したヴァーリと殺し合ってまぁ、引き分けになったんだがこれから何をしようか分からなくなってさ。光龍妃は好きにすればいいと言うしヴァーリも思うがままに生きれば良いと言うんだ。影龍王、キミは俺になんて言うのかな?」

 

「好き勝手に生きれば良いんじゃねーの?」

 

「……あぁ、予想通りだ。うん、だから自由気ままに旅してこれからの目標を見つけようと思っている。俺は英雄では無いからな……ただ聖槍に選ばれただけのちっぽけな人間で先祖が英雄だっただけの存在だ。そもそも英雄派という組織自体が俺の我儘だったのかもしれない……英雄の血筋だから英雄だという勘違いが作り出した集団。やってる事自体は楽しかったけどね」

 

「そりゃそーじゃん。英雄って死んでから言われるもんっしょ? そー呼ばれたいなら死ねばいいんじゃねーの?」

 

「そうだな。時に曹操、あれは俺の勝ちだ。勝手に引き分け認定するのは我慢ならないな」

 

「それこそそっちの勘違いだろう? 覇輝(トゥルース・イデア)でボロボロ、立ち上がることすら出来ていなかったはずだが?」

 

「お前こそ全身の骨が折れて戦闘続行が不可能だったはずだ。立ち上がる気力があった俺の方が勝っていたぞ」

 

「いや、まだ戦えていたさ。よわっちぃ人間とはいえドラゴン相手に戦意を喪失するほど弱くは無いつもりだ。なら……もう一度殺し合おうか」

 

「構わない。俺もヤツが動き出したと聞いて力を高めなければいけないからな」

 

「あのさー私が見つけなかったらテメェら死んでたってこと忘れてない? この美少女で女神な夜空ちゃんに感謝の言葉とかないん?」

 

「……ヴァーリ、この話題は無かった事にしよう」

 

「そうだな」

 

 

 ジト目になった夜空の視線に耐えきれなかったのか軽い口喧嘩状態だったヴァーリと曹操が会話をやめた。そこまでして感謝の言葉を言いたくないってわけね……知ってた! お前らって基本的に自分主義だもんな! あとジト目な夜空ちゃん可愛い!

 

 まぁ、そんな大事な事は置いておいてだ……聞き逃してはいけない単語があったぞ? 亜種化? ヴァーリの鎧が亜種化したってか? うわーこの銀髪イケメン白龍皇様死ねばいいのに! なんで夜空みたいに禁手を亜種化させてんだよ!! お揃いか!? お揃いだな! よっしゃ俺と殺し合え! 今すぐぶっ殺してやるからさ! あと曹操ちゃん……人間なんだから好きに生きれば良いと思うぞ? 俺も悪魔で邪龍だから好き勝手に生きてるし何がしたいかなんてその時によって変わるだろ? 長生きしたいなら世界の端っこで細々と生きれば良いし殺し合って死にたいなら笑いながら戦えばいい。もし英雄になりたいなら俺達を殺せばいいしヒーローになりたいなら色んな人を助ければいい……何をしたいかなんて曹操ちゃんの自由だ。まっ、夜空みたいにあれがしたい、これがしたいで好き勝手にしていれば問題無いと思うけどね。

 

 

「まー曹操ちゃん? 俺や夜空みたいに好き勝手に生きれば良いと思うぜ。んで? そんな事を言うために此処に来たわけじゃないだろ?」

 

「まぁね。今更こんなことを言うのもあれだが影龍王、最上級悪魔に昇格、おめでとう。お祝いの品と言うわけじゃないが一つだけ面白い話をしようと思う」

 

「面白い話ねぇ……なに?」

 

 

 どーせ禍の団の残党がリゼちゃんかその他の奴の元に集まってるとかっていう話だろうけども。

 

 

「――邪龍が復活した、と言ったら驚くかな?」

 

「――へぇ。詳しく聞かせろよ」

 

 

 なんだかおもしろい話になりそうだ……! 邪龍が復活した? 相棒とユニア、ヴリトラ以外の邪龍が! マジかよ!! おいおい曹操ちゃん! お祝いの品にしては豪華すぎるぜ!

 

 

「ヴァーリと殺し合いをして今後の目標を探す旅に出ていたという事はさっき話したよな? その過程でいろんな場所を歩き回ったよ……過去、人間を滅ぼすために暴れ回った魔物や邪龍、そして人間。それらが倒された場所や関連するところを歩き回っていると……声が聞こえたんだ。とあるドラゴンが滅ぼされた場所でね。聞いた事はあるはずだ、邪龍を宿しているキミならね――そのドラゴンの名はグレンデル、大昔に討伐された邪龍の声を俺は耳にしたというわけさ」

 

『――ゼハハハハハハハハハッ! おいおいマジかよ! あのグレンデルが蘇ったってか!? アイツは初代ベオウルフに討伐されたはずだぜぇ? ゼハハハハハハ! 最高だ! 最高過ぎるぜぇ!! また殺し合いてぇなぁ! 何度俺様を殺そうと襲ってきたか忘れちまったけどよ! かなり強いぜ? この時代に生きる奴らならヤツは鼻歌交じりで殺せるだろうな!』

 

『あぁ! なんて嬉しい報告なのでしょうか……あの逞しい――(ピー)で突かれていたあの頃を思い出しますね! クフフフフ! 肉体さえあればまたお相手してもらいたかった……!』

 

『おいおいマジかよグレンデル……こんな性悪ビッチを抱いてたとか黒歴史も良いところだぜ。出会ったら慰めてやらねぇとな!』

 

『男相手に欲情する変態に慰められたら泣くと思いますよ?』

 

『あぁん!? テメェ分かっちゃいねぇなぁ! 前々から言ってると思うがよぉ! 男の娘は……男なのに女なんだよ! 俺様が抱いた男の娘はそれはもう即快楽落ちだったんだぜ? ゼハハハハハハ! 聖書の神め……俺様を封印しやがってぇ!! 男の娘が抱けねぇじゃねぇか!!』

 

 

 はいはい男の娘好きは分かったから黙っててくれませんかねぇ? 隣にいる夜空からキモって感じで見つめられてるのがすっごく興奮するけど同じ男好きって感じで見られたら……それはそれで有りと言えば有りか! ほら! 私が女好きに治してあげるとかっていう展開があるかもしれないしさ! どっちに転んでも最高とか良くない?

 

 

「――死ねよ」

 

 

 だからなんで俺が思ってることが分かるのか教えてくれませんか?

 

 

「グレンデル……邪龍の一体か。その件と関係しているか分からないが俺達も曹操と同じく魔物が滅ぼされた土地などを巡っている。その最中に魔法使いと出会うこともあったな、ヤツに従っている輩だとは思うがまさか……邪龍を復活させるか。中々面白い事をしている」

 

「可能性としては一つだけある。神滅具の中でも生命を操ることが可能な幽世の聖杯(セフィロト・グラール)ならば滅んだ邪龍の意識を読み取り、肉体を再生することも可能だろう。他の生物とは違い、邪龍は普通に倒した程度では完全には滅する事は出来ないからな」

 

「生命ねぇ……おい夜空、俺に黙ってなんか面白い事とかやってないよな?」

 

「んー? するわけねーじゃん。そりゃ~リゼなんとかってのと話はしたけどなーんにもしてないっての。つーかこの私がノワールに黙って何かすると思ってんの?」

 

「うん」

 

「即答すんじゃねーよ」

 

 

 だって京都の九尾拉致事件とか思い当たる部分はいくらでもあるしな。まっ! お前が何をしようと俺は喜んで巻き込まれるだけだからドンと来い! 思う存分楽しんでやるさ!

 

 

「まぁ、お前が何をしようと俺は愉しいからそれはそれで問題無いけどな。これからも好き勝手に何かやってくれよ? 何度も言ったが俺はそんなお前でも受け入れてやるからさ」

 

「……ふん、ばーか、カッコつけんな変態」

 

「ひっでぇなおい」

 

「相変わらず仲が良くて見てて飽きないよ。ついでに教えておこう……英雄派と旧魔王派の残党は一人の悪魔の下に集まったようだ。これから色々と起きると思うから頑張れ、と言えばいいかな?」

 

「さぁな。あーてかヴァーリ? お前の爺ちゃんなんだけどさー? もし殺し合う事になったら殺していいのか?」

 

「……可能ならね。知っているとは思うがヤツには神器は通じない。異例な成長をしている俺や影龍王、光龍妃、兵藤一誠でさえヤツにダメージを与えれるかどうかすら現状では分からない。だが殺してくれるのなら殺しても良いさ……もっともキミがヤツを殺すよりも先に俺がヤツを殺しているから奪い取るなら早い者勝ちだ」

 

「そーかい。まっ、リゼちゃんがこっちに手を出さない限りはスルーするつもりだよ。んじゃ、飯食おうぜ? いやーなんで俺が奢ることになってるんだろうな!」

 

 

 隣から私の財布だからに決まってんじゃんと夜空からツッコミが入る。しかし視線は俺の方を見てはいない……何故なら自分の目の前に置かれたバケツのような大きさの丼に入ったラーメンに向けられているからだ。なんかすっごく美味しそうって感じでよだれを流しているけどさ? 美少女がそんな顔をしたらダメだと思うんだよ! ヴァーリは何とも思ってない様子だけど曹操ちゃんを見ろよ! 呆れてるぞ! つかマジでナニコレ……? 野菜、メンマ、肉、餃子が麺の上に盛り付けられて見てるだけで胸焼けしそうなんですけど? なんで餃子がスープの中に入っているのかというツッコミの前に何故これを美味しそうと思えるのか意味分かんない!

 

 そんなわけで始まりました超絶美少女で女神のような愛らしさとちっぱいを持つ夜空ちゃんによる大食いチャレンジ! 俺達男三人は実況する事もしないで自分が頼んだ分を食べながら夜空を見続ける作業に入りましたが……えーなんと言いますか……開始十分で食い終わったんだよね! 周りもマジかよって感じで絶句状態なのにこの規格外様は「足りないからもう一個ちょーだい」と言いやがってさー大変! 周りが唖然とする中、見た目ロリな夜空ちゃんはなんと5kgのラーメンを三つ食ってやっと飽きました! ホクホク顔で賞金の三万円を手に入れてたけど俺達は何も言えない状態だったよ……だって店長らしいおっちゃんが真っ白に燃え尽きてたもん! ど、ドンマイ!

 

 

「――帰っていい?」

 

「席に座って茶まで飲んでるくせにそのセリフか? 自由すぎるぞ」

 

 

 ヴァーリと曹操ちゃん、そして夜空と楽しい楽しいお昼を過ごして適当に時間を潰し、何故か参加することになった吸血鬼との会談まであと少しというところで俺は帰りたくなっていた。遅れてはいけないと水無瀬と橘から言われたのでこうして早めにオカルト研究部の部室までやってきたけどさぁ……そもそも俺は関係無いし。なーんで他を巻き込むかなぁ? 偶にはアザゼルとか生徒会長とか俺とかを頼らないで自分でやってもらえませんかねぇ?

 

 

「だって俺は関係ないだろ? いくら最上級悪魔だって言っても先輩の眷属絡みでしょ? だったら一人でやってくれよ……こっちだって忙しいんだよ」

 

「それは分かってるっての……いや待て、キマリス! この前はノリノリだっただろ!? なんだ!? いつもの掌返しか!!」

 

「おっ、分かってんじゃん」

 

「……少しは否定という言葉を覚えろ」

 

 

 だってあの時は参加しても良いかなぁ~とか思ってたんだけど曹操ちゃんから邪龍復活の話を聞いてそっちに集中したくなったんだよね! いやー残念だなー! 仕方ないねー! だって吸血鬼と邪龍だったら邪龍の方に興味持っちゃうよねー!

 

 

「……噂で自由な方だとは聞いていましたがまさにその通りです。それに座っているだけだというのに体から漏れ出す邪気……和平を結んでいなければ真っ先に滅する対象となっていたでしょう」

 

 

 何やら俺を見つめてくるのは良く分からん外人さん。えーと誰だっけ……アザゼルから名前だけ聞いてたような気がするけどマジで誰だっけ……? えーとあーと、おぉ! グリ、グリ、グリ……グリなんとかさんだ! 正直、視線がウザくて殺したいし真っ先に滅する対象とか言ってきたから殺したいんだけど良いかな?

 

 

「ま、待ってく、れ……影龍王相手にその言い方は、ダメ、だ……!」

 

「そうです! えっと、怒って……ますよね! ごめんなさい! 違うんです悪く言ってるわけじゃないので怒らないでください!」

 

「シスター・グリゼルダ。言いたい事は俺も良く分かるがそれは胸の内にだけで留めておけ。キマリス、拘束を解け……ただの冗談だ」

 

「拘束……? ッ!!」

 

 

 グリなんとかさんが着ている修道服の隙間から(もや)のような何かが漏れ出す。それは俺が霊操で作り出した相棒の影が混じっていない人形もどき……さっきなんかムカつくことを言われたから死角になっているテーブルの下から伸ばしてグリなんとかさんの足先からバレないように拘束してたんだが……どうもアザゼルには普通にバレてたらしい。デスヨネ! だってルーン文字使ってたら誰だって分かるもんなぁ。

 

 

「別に滅する云々はどーでも良いけどさ、手を出してくるならこっちもやり返すから覚えておけよ? つーか気づかねぇってマジで雑魚……まっ! ルーン文字の実験台にはちょうど良かったから感謝してるけどな」

 

「全く……和平を結んでいる相手の体に霊体を這わせて拘束とか普通はしねぇぞ? サーゼクスが文句言われるんだ、少しは自重しろ」

 

「ん? 魔王特権のし過ぎで文句言われるなら当然じゃねーの? てか本当に暇なんだけど……やっぱり俺もはぐれ討伐行けば良かったかなぁ」

 

 

 現在、この部屋に居るのは部室の主である先輩達グレモリー眷属、生徒会長と副会長、アザゼル、グリなんとかさん、そして俺……本当なら平家を連れてきたかったんだが「嫌でござる、引きこもりたいでござる」と言って俺の部屋に立てこもりやがったから置いてきた。橘と水無瀬は魔法使いの契約絡みで忙しい、グラムと四季音姉妹と犬月は冥界ではぐれ悪魔討伐やらキマリス領の復興やらで忙しいから現状、動けるのが俺しかいなかったわけだ。おかしいな……なんで王の命令を拒否ってんだよあの覚妖怪! いつもの事だけどなんか腑に落ちねぇぞおい! 多分今頃はレイチェルと一緒に積みゲーと化してた奴をやってんじゃねぇかな? なんだかんだで仲良いしね!

 

 そんなこんなで待つこと十数分、俺達が居る部屋にとある人物達が訪れた。豪華なドレスに身を包んだ色白の美少女、ウェーブがかかった長い金髪に赤い瞳はまるで人形と表現できるほど美しい……と言って良いか知らんがアイドルだったら余裕で人気が出るだろう。ただ肌の色が白すぎて大丈夫かって心配されるのと()が無いから騒がれるかもしれないがな。

 

 

「――ごぎげんよう。エルメンヒルデ・カルンスタインと申します。魔王さまの妹君、最上級悪魔の影龍王さま、堕天使の前総督さまとお会いできて光栄です」

 

 

 なんとも噛みそうな名前だな。

 

 

「カルンスタインっていうと……確かカーミラ派の家だっけ?」

 

「あぁ。それも最上位に位置するほどの家だ。純血の吸血鬼、しかもカーミラ派の者と会う事になるとはな」

 

「同じく。まさか吸血鬼と話をすることになるとは思わなかったが……アンタだけ? トップの立場っぽいカーミラはどこにいんだ?」

 

 

 イケメン君に連れられてこの部屋に入ってきた人数は三人、目の前にいるエルメンなんたらって奴とボディーガード二人、この建物の全てに影人形を忍ばせているから隠れて潜入何かは殆ど無理。つまりこの三人だけでこの場にやってきたって事になるが……マジで? 嘘だろ……今回みたいな会談ってトップの奴が来るんじゃないのか? 和平を結ぶ前の三大勢力も魔王や天使長やアザゼルが集まったし、八坂の姫や寧音だって自分の足で赴いてるんだぜ? うわぁ、吸血鬼舐めてるな……まっ! 今回は俺は一切関係無いんだけどな! むしろなんで参加させられてるのか不思議なぐらいだ!

 

 

「カーミラさまはご多忙のため、代わりに私がこの場に出向いた次第です」

 

「ふーん」

 

「……コホン。早速で悪いのだけれど今回の用件は前もって伝えられているわ――私の眷属、ギャスパー・ウラディの力を借りたいとの事だけどどういう事かしら?」

 

 

 え? そんなことは全然教えられてないんですけど? 今初めて知ったんですけど!

 

 

「私たち吸血鬼の世界を崩壊させるほどの代物がツェペシュ側に現れました。神を殺せるほどの力を持った神器――神滅具の類です。その名称は幽世の聖杯、生命を司るとされる代物であり、私たち吸血鬼の弱点すら無くすことが可能な杯をツェペシュは使用しています。それと同時に私達カーミラ派の吸血鬼に攻撃も行っているためそちらのギャスパー・ウラディの力をお貸し願いたい」

 

「……厄介な事になってやがるな。確かにあれならば生物の弱点を克服する事なんざ造作も無いだろう……光龍妃が発現したとされる「生命力の回復」に近い能力を持ち、ありとあらゆる生物を蘇生も所有者次第で行えるトンデモナイ神滅具だ。今代に入って行方が分からなかったが……まさか吸血鬼、しかもツェペシュ側が持ってやがったとはな」

 

 

 幽世の聖杯か……邪龍を復活させることも可能だろうと曹操ちゃんが言ってたけど吸血鬼側が持ってんのかよ。つーことはあれか? ドラゴンが吸血鬼如きに弄ばれてるってことになるわけか……ハハハハハ、死にたいのか? 俺達ドラゴンを矮小な存在程度が従えていいわけがない……事と次第によっては潰すか。邪龍として、ドラゴンとしてそれはあまりにも許せねぇ。まぁ、一誠君みたいに自分が好きで傍に居るとか邪龍自らが従ってんなら文句は言わないけどさ!

 

 もっともそれは()が関わっていたらの話だ。今回の件は良く分からんが先輩と吸血鬼側(エレなんとか)が話をする場で俺やアザゼル、生徒会長にグリなんとかさんは見届け人の立場だろう……さて先輩? 自分の可愛い眷属の力を要求する奴を相手にどうするつもりか見せてもらおうじゃねぇか。

 

 

「いくつか質問をさせてもらうわ。私の可愛い下僕(かぞく)のギャスパーの力を借りたいというのは……この子に秘められた力が関係していると考えて良いわね?」

 

 

 ギャスパー・ウラディ。グレモリー先輩の僧侶のハーフ吸血鬼の男の娘、魔獣騒動時に謎の力が発現したとは犬月達から聞いてたけどそれが関係しているのは分かりきってる……なんせ先輩の問いにエレなんとかは表情すら崩さずに頷いたしな。畜生! その時は冥府で遊んでたから見れなかったけどかなりヤバいことになったのはなんとなく察してたけどさ! もう一回見せてくださいお願いします!

 

 

「当然です。それ以外に彼の力を借りる理由はありませんよ。何故なら私達の問題ですからね、吸血鬼の問題は吸血鬼が解決する。それ以外の手は借りることなどありません」

 

「……そう。では次の質問よ、この子の力を貸したとしてこちらに戻ってくる保証はあるのかしら?」

 

「それは彼次第ですね」

 

「お、おい! 力を貸せって言ってギャスパーの安全を保障しないってどういうことだよ! 同じ吸血鬼なんだろ!? いくらなんでも安全は保障するのが筋なんじゃないのかよ!」

 

 

 あまりの態度に先輩の後ろで立っていた一誠君が叫びだした。ヒーローらしく背後に男の娘な吸血鬼君を隠しながら堂々と文句を言う姿はドラゴンらしくて俺は好きだぜ! ゼハハハハハ! 良いぞ良いぞもっと言え! そっちの方が俺は面白いしな!

 

 

「……あぁ、そちらの方は赤龍帝の方でしたね」

 

「お、おう! リアス・グレモリーの兵士! 兵藤一誠だ! それでどうなんだよ!! ギャスパーの安全を保障するのか!」

 

「――口を慎みなさい。ただの下僕に発言の権利を与えてはいませんよ」

 

「ッ!!」

 

「イッセー、落ち着きなさい。大丈夫よ」

 

「……は、い……!!」

 

「リアス・グレモリーさま、下僕の躾はしっかりと行ってもらわねば困ります。そちらの影龍王なら兎も角、赤龍帝とはいえ下級……いえ中級悪魔でしたね。その程度で発言が出来るわけがありません。さて、ギャスパー・ウラディ、こちらに手を貸してもらえますね? いえ、こちらに手を貸すしかないのですよ」

 

「どういう、意味かしら?」

 

「問題の聖杯はツェペシュ家の者から現れました。所有者の名は――ヴァレリー・ツェペシュ」

 

「……そんな、ヴァレリーが……! 嘘だ! だ、だって僕みたいに神器を持ってなかったのに!」

 

 

 うーん、ハーフ吸血鬼君の取り乱しようからすると知り合いっぽいな。悪魔に転生する前に一緒に過ごしてたとか遊んでたとかそんな感じかねぇ? てかその時は持ってなくても今になって発現したとかじゃねーの? なんせ俺もそれだし一誠だってそうだ……あとすっげー関係無いけど目の前のゴミを殺していいよな! 格下の分際でドラゴンを下に見てんじゃねぇよ。よし! 次に俺をキレさせたら問答無用で好き勝手しようか! むしろそうするべきだろう邪龍的に!

 

 

「ハーフ吸血鬼くん? 昔は無かったけど今は違うもんだぜ。俺だって生まれた時は相棒が宿ってるなんか知らなかったしな。一誠だってその口だ、神器ってのは切っ掛け次第で発現する代物だから不思議じゃねぇぞ」

 

「そうだ。今になって発現したか……それとも意図的に隠されていたか。それは当事者でなければ分からん問題だ。エルメンヒルデ、吸血鬼側は聖杯を使用していると言っていたが間違いはないな?」

 

「勿論です。そのような嘘を言う理由がありません」

 

「だとすると拙いな……禁断症状を発症しているかもしれん」

 

「なんだそれ?」

 

「幽世の聖杯は使用するたびに所有者を壊していくんだよ。元々生命の理を弄るような代物だ、既に死んでいる亡者の声を聞き、触れ合い、そして死んでいくだろう……同じ「霊」を操るお前さんならそれがどれほど危険かは分かるはずだ」

 

「あー確かにそれはやべぇな。歴代思念ほどじゃないにしろ悪霊の声を聞いてたら普通に心が壊れるだろうぜ。とりあえずそれは置いておいてだ……ちょっと気になったから質問おっけー?」

 

「えぇ。貴方は発言をする権利がありますので。どうぞ、お好きな質問をしてくださいませ」

 

 

 マジで好きな質問して良いなら俺様、頑張っちゃうよ!

 

 

「んじゃ遠慮なく……えーとエレなんとかさん? スリーサイズ教えて」

 

「――申し訳ありません。もう一度、仰ってもらっても?」

 

「いやだからスリーサイズ教えてくれねぇか? すっげぇ……気になってたんだよ! いや割とマジで。だって見た目から推測すると……小さくね? だから気になってたんだ――ってぇなおい!! いきなり何すんだよアザゼル!?」

 

「それはこっちのセリフだ! お前……お前……! こんな大事な場で何を聞いてるんだ!」

 

「スリーサイズ?」

 

「やっぱり馬鹿だろお前!」

 

 

 失礼な……こっちは比較的真面目に聞いてたつもりなんだけどさぁ! いや、あの、ね! だって俺関係無いじゃん! 確かに目の前のエレなんとかちゃんの言葉にイライラはしてたけどさ! それはそれ、これはこれだろ? ついでに言わせてもらうと――吸血鬼が解決するって言ったんだし俺達が頑張らなくても良いじゃん。

 

 しっかしあれだね! 俺を見る女性陣から絶対零度の視線を向けられるってすっごくゾクゾクします! でも出来れば夜空にしてもらいたいですね!

 

 

「なーんてな、じょーだんじょーだん。邪龍ジョークって奴だっての……んじゃ真面目な質問な、この吸血鬼君の力を貸すとして先輩方はどーすんの?」

 

「……申し訳ありません。あまりにも場違いな質問だったもので思考が飛んでしまいました。えぇ、その質問に対する返答であれば簡単です。特に必要ありません。先ほども言いましたが吸血鬼の問題は吸血鬼で解決します。リアス・グレモリーさま、及び下僕の方々には申し訳ありませんが手を出さないでください。勿論、タダとは言いません――どうぞ、こちらをご覧ください」

 

 

 エレなんとかちゃんはボディーガードから何かを受け取り、それを俺達に見せてきた。ほーへーはーなるほどねぇ、そう来たか。

 

 

「……和平だと? おいおい、順序が逆だろうに? これじゃあまるで――」

 

「ギャスパー・ウラディを貸して頂けないのであれば和平には応じない、と言っているようなものと仰いたいのでしょうがそんな事はありませんわ。ただ彼をお貸しいただければ全て解決する事ですもの」

 

 

 すっげぇドヤ顔してるけどさ……初っ端の発言でこの会談自体が意味をなしてない事に気づいてるのか?

 

 

「さてリアス・グレモリーさま、彼をお貸しいただけますわよね?」

 

「――えぇ、勿論。お断りさせてもらうわ」

 

「――申し訳ありません。もう一度、仰ってもらえますか?」

 

「何度でも言ってあげるわ。お断りよ、私の可愛いこの子を一人で吸血鬼側に渡すわけがないわ」

 

「これが良く理解できていないようですね。私はカーミラさまの代理としてこの場に来ています。勿論、私の言葉はカーミラさまの言葉でもあります。ここで和平を断ればどうなるか分かっているでしょう? 各勢力に和平を結ぶことを主張する三大勢力の信用が落ちるでしょう。貴方のたった一つの我儘でこちら側との和平を拒めばそうなるのは明白……それは魔王の信用を著しく落とす行為に等しい。えぇ、ですからもう一度お尋ねします。彼を貸して頂けますね?」

 

「何度も言わせないで。ギャスパーを一人で貴方達に貸せないわ。それに私達の信用を落とす事を心配されているようだけど安心して頂戴――この場は和平を結ぶ場ではなく、この子の力を貸すかどうかを決める場よ。そちらから聞かされたことは私の可愛い下僕(かぞく)の力を借りたいという事だけ……和平を結ぶなんて初耳よ。それに関しては私達の一存では決められないし正式に申し込むならお兄様……いえ魔王様に直接お願いしたいわね」

 

 

 ……おいおいマジでぇ? ゼハハハハハハハハハ! マジか! マジかぁ! 断ったよこの人! しかもごり押しで! キャーセンパーイ! カッコイイー! でもカッコつけるなら体の震えぐらいは隠した方が良いですよ? しょーがねーなぁ! こんな面白い場面を見せられたら力を貸したくなっちゃうじゃん!

 

 

「そりゃそうだ。つーかエレなんとかちゃん? お前さ、自分の言葉はカーミラの言葉だって言ったよな?」

 

「……えぇ、そうですわね」

 

「だったら「吸血鬼の問題は吸血鬼で解決する」という言葉もカーミラの言葉だよな? なんで俺達「悪魔」の力を借りようとしてんの? あっ! ちなみにだがコイツが吸血鬼の血が流れているってのは無しな。だってそんな理由で通るんなら他の理由だって通るだろ? なんせこのハーフ吸血鬼君は悪魔と人間と吸血鬼だ、その理由が通るんなら俺達が手を貸してもなーんにも問題無いよねぇ?」

 

「そりゃそうだ。俺の方でも聞かされたのはギャスパー・ウラディに関する会談ってだけだ。和平を結ぶんなら前もって言いやがれっての……サーゼクスもミカエルもシャムハザも居ない状況でんなことを言われても困るんだよ」

 

「……だから断ると? そんな事をすれば――」

 

「どうなるんだよ?」

 

 

 俺の言葉にエレなんとかちゃんは体を震わせる。ん~殺気を放ってるけどさ、ビビりすぎじゃない? 夜空が見たら笑われるぐらい弱いのに何でビビってんの?

 

 

「いやさ、俺が今まで見てきた会談って基本的に勢力を率いているトップが足を運んでたんだよ? 北欧の主神様とか京都の八坂の姫とか鬼の頭領とかさ。で? カーミラどこに居んの? 和平を結ぶって言っておいて書類だけとか馬鹿だろ……和平を持ち出せば要求が通るとでも思ってんの? ばーか、んなわけねーだろ……確かに和平を持ちかけてるのは俺達三大勢力、これを断れば各勢力から不信感を抱かれるのも事実。で? だからなに? そもそも和平を持ちかけてる時点で不信感抱かれまくりなのに今更一個増えた程度で何かが変わるわけねーんだよ」

 

「……その発言は私達吸血鬼を侮辱していると捉えますわよ……! この件をそちらに報告すれば貴方は今の地位を失う、いえそれだけではありませんわね……投獄もあり得ますわよ?」

 

「えっ? マジで! いやー最上級悪魔ってクソみたいな肩書から解放してくれるってお前っていい奴だな! んじゃ調子に乗ってもっと好き勝手するけど良いよな? はい手が滑ったー!」

 

 

 テーブルに置かれた和平を結ぶなんて嘘しか書かれていない書類を魔力で吹き飛ばす。なんというか周りからマジかよって顔されてるけど仕方ないねー! 手が滑ったんだから仕方ないんだよねー!

 

 

「あっ、ごめーんアザゼルー! 手が滑ったー!」

 

「そうかーてがすべったかーそれはしかないなーよしえるめんひるでさんや、こんどはかーみらとともにはなしあいをしようじゃないか。あぁ、もちろんさーぜくすやみかえるにしゃむはざもいっしょだぞーうははははは――好き勝手にして良いとは言ったがここまでするとは思わねぇっての馬鹿野郎……!」

 

「やべぇ、アザゼルが壊れた……まぁ、良いか。んで? この件も報告する? 良いぞ良いぞ! 最近暇だったからさ! 吸血鬼との全面戦争も悪くねぇんだわ! つーか殺し合おうぜ。さっきの()()()()の発言で俺様、非常に頭にきております。何かってそりゃ決まってんだろ……テメェみたいな格下がドラゴンを下に見たことだよ。あとさ……俺の事を良く分かって無いようだから教えてやるよ」

 

 

 立ち上がってエレなんとかちゃんの近くまで歩き、人差し指で顎をくいっと上へと向けさせる。

 

 

「冥界が滅ぼうが信用が無くなろうが俺の知った事じゃねぇんだよ。お前らが冥界を滅ぼしてくれるんなら笑いながら観戦しててやる。俺は俺が楽しかったらそれでいいんだよ……好き勝手に生きる悪魔で邪龍だからな。だからさっさと報告しろよ? 自分たちの言い分を断れないように和平を持ち出したけど断れました! コイツらは詐欺集団ですってさ。ほら、早く早く。お前の言葉はカーミラの言葉なんだったら可能だろ? 楽しみだなー! どれだけの人数がお前の言葉で死ぬんだろうな?」

 

 

 きっと今の俺は愉しすぎて嗤っているだろう。マジで愉しい! どこかでやり過ぎとか言われた気がするけど絶対に気のせいだと俺様は信じてる! ちなみにだけどこの行動で冥界が滅んでも俺は痛くもかゆくもないしむしろいいぞもっとやれって言うと思う。母さん? やっべーどうしよう……あーきっと大丈夫か。多分。なんかあったら世界滅ぼすし問題無い問題無い。

 

 

「……分かりました。和平に関する事はまた別の日に改めて行わせてもらいます……それとギャスパー・ウラディの力だけではなく、その他の方の力もお借りしましょう。それ、でよろしいでしょう、か……?」

 

「さぁ? 俺の眷属じゃねーし先輩が決める事だろ? こんなこと言ってますけどどーするんすか?」

 

「――えぇ。私達で良ければ力になるわ」

 

 

 そんなわけで俺が楽しかっただけの会談は終了した。なんか知らないけどグリなんとかさんは呆れた表情になりながら帰って行ったけどなんでかなー?

 

 

「……もうっ、自分が何をしたか分かってるの? 一歩間違えれば大変な事になったのよ?」

 

「それはお互い様でしょ? ついでに助けてあげたんだから感謝してくださいよ」

 

 

 この部屋に残ったのは俺と先輩の二人だけ。生徒会長やアザゼルは今後に備えて話し合うとかで席を外しているし一誠君達も先輩の命令で吸血鬼君を連れて家へと帰って行った。つーかこれ以外になかったしな……きっと夜空が見てたら爆笑してたと思う。

 

 

「それに言ったでしょ? 冥界が滅ぼうが信用が落ちようが俺はどうでも良いんですよ。俺が楽しかったらそれで良いですし。てか邪龍(おれ)がやったなら誰も文句は言わないと思いますよ?」

 

「……その結果、貴方が不幸になるだけよ。自分を慕う子達が居るのだから少しは落ち着いた行動をしても罰は当たらないわ」

 

「生憎、俺の眷属の奴らには世界の敵になる予定だから俺を殺せるように頑張れって宣言済みですよ。今も俺を殺せるように頑張って特訓に励んでるから……よほど俺を殺したいっぽいです! でも、まぁ、さっきの行動は先輩がなんか頑張ったっぽいですしー? 俺なりの援護射撃って事で納得してください」

 

「……そうね。私が何を言ってもキマリス君は変わらないわよね。だってドラゴンだもの、自分の好きなように生きてるんだから何をしようと誰も文句は言えないわ」

 

「大正解。最低最悪の邪龍、世界を滅ぼすラスボス系ドラゴンの影龍王様なんで仕方ないですね。でもカッコよかったですよ。なんつーか……頑張ってんなぁってのがすっげぇ分かりましたしね。これからも楽しませてくださいよ――先輩」

 

 

 もっとも一誠が傍に居る限り、色んな事には巻き込まれるだろうから俺的にはそれで十分なんだけどね!




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