ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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92話

「おいおい、そんな手で良いのかい? ほれ王手、詰みって奴だ」

 

「げぇ、またかよ……少しは若者に花を持たせるとかしろよ。何連勝するつもりだ?」

 

「そりゃ勿論、俺が満足するまでだなぁ。にしても坊主よ、良かったのか? 堕天使の長からの連絡をブツ切りなんざして後で怒られても知らねぇぞ」

 

「良いんだよ。どーせまた便利屋もどきにされかねない案件だったしな。そもそも吸血鬼の問題に関しては俺達側は全くと言って良いほど関わる理由が無いからお断り安定なんだよ」

 

「顔に面倒だって書いてるぜ」

 

「当然だろ」

 

 

 四季音姉妹の実家がある鬼の里で修行を始めてから数日が経過した今日、俺は屋敷の縁側で東の御大将ことぬらりひょんと将棋を打っていた。本当ならここ数日間の日課である寧音や芹との殺し合いを行ってる時間帯だが流石に鬼の頭領ともなると毎日殺し合いが出来るほど暇ではないらしく、今日は京都妖怪の長である八坂の姫との会談で里の外へと出てしまっている。そのため急遽暇になったわけだが……なんか物凄く嫌な予感がするのは気のせいですかねぇ? あの人妻達が何かを企んでる感じがしてすっごく怖いです! だって肉食系のお二人が話し合いとかちょっと警戒するわ! 此処で生活を始めてからも風呂に入れば偶然と言い張って四季音姉妹と芹を引き連れて乱入、一杯付き合えと言われて部屋に行けば未成年なのに酒を飲ませて意識を潰そうとしてくるのがお決まりになってる……もうね、積極的過ぎて逆に逃げたくなるわ! もう一人の人妻こと芹の方も四季音妹の生活を聞かせてほしいと部屋に呼んでくるけど同じように酒飲ませて潰そうとしてくるし……人妻の肉食っぷりがあまりにもヤバいので平家や水無瀬、橘に四季音姉妹、そしてグラムという面々と防衛という名目で一緒の部屋で寝ることになってます! 哀れ犬月、一人だけ別の部屋とかちょっと悲しいな……! 人妻の方々、うちの眷属にはもう一人童貞がいるんでそっちにも行ってあげてください! 多分だけど一瞬で食えると思いますんで本当にお願いします!

 

 まぁ、そんな事は置いておいてなんでこんな状況になっているかというと……寧音と芹が居ないので暇になったから偶には犬月達の相手でもしてやろうかなと思っていたんだが目の前にいる東の御大将がいきなり将棋しようぜ! みたいなことを言ってきたので付き合う羽目になったわけだ。勝率で言うなら普通に負けてます。というよりも一回も勝ててません! いや、違うんだよ……俺ってこの手のゲームは苦手なだけなんだよ! うん! だから負けても何も問題無いんだ! 畜生……なんで勝てねぇんだよ……! チェスではライザーに惨敗して将棋では東の御大将に惨敗とか泣けてくるな!

 

 

「生憎、俺達は吸血鬼側と関わる理由が無いし、毎回毎回メンドクサイお手伝いとかご免なんだよ。たくっ、何が悲しくて友達ですらない奴らの手伝いをしないとダメなんだって話だ……ロクに仕事もしない魔王共の特権で色々と楽してるんだしこれぐらいは自分で解決してもらわないと困るんだよ。ついでに断ったところでこっちには被害は無いしな」

 

「カッカッカ、ちげぇねぇ。ちょいとした事情があってけっこー前から赤龍帝の所にもお忍びでお邪魔してたがありゃダメだ。甘やかされてばっかで将来はダメになるだろうぜ。確かに数多くの殺し合いを潜り抜けて実力は十分にあるのは俺も保証してやる。しかしなぁ、組織の長があれやこれやってなんでもやるっつーのはいただけねぇ」

 

「それに関してはシスコンだからで解決するぜ? だってうちのトップの内、シスコンが二名、ニートが一人、良く分からんのが一人だしな。だから言うだけ無駄だよ、死ぬまで治らねぇさ」

 

「自分とこの長だろうが? 良いのかぁ、んな事を言ってよ」

 

「常日頃から言ってるからセーフセーフ。先輩……あーとグレモリー家次期当主にもハッキリと言ったこともあるしな」

 

 

 まぁ、でもここ最近は自己鍛錬とかで頑張ってるらしいけどね。前まではケルベロス相手に無双できなかったぐらい弱かったのに一誠達と一緒に特訓して実力が上がってるから今なら余裕だろう。ついでに言うと吸血鬼側との会談でも先輩なりの頑張りを見せてもらったから俺としてはこれからもその調子で頑張ってほしいというのが本音だ。ついさっきも吸血鬼の本拠地にいるアザゼルから吸血鬼勢力で厄介な事が起きたから手を貸してほしいと連絡があったけどヤダメンドイお断りしまーすって即効で切ったけどさ……赤龍帝を従えてるんならこれぐらいは自分で解決してもらわないとね。決して向かうのが面倒とか思ってない。うん全然思ってない!

 

 

「そんな事よりも御大将、そっちの事情は解決しそうなのかよ?」

 

「……何のことか分かんねぇな」

 

「惚けんな、アンタの配下共が俺達を見る目が何かを見定めてるような感じだったしな。どーせ和平絡みだろ? 大方、俺達を鍛えて恩を売るってのが建前で本音は和平を結ぶ相手である俺達の事を知る事だろ?」

 

「――なんだ、バレてたか」

 

「むしろ隠しきれてると思ってたことにビックリだっつーの。初日に厳密には違うとか言ってただろうが」

 

「カッカッカ。そりゃあれだ、思わず口が滑っちまっただけの事よ」

 

 

 目の前に座っているぬらりひょんはこりゃ参ったって感じで笑い出す。普通に考えて覚妖怪が傍に居るってのに隠し事なんて出来るわけないだろ……あと視線くらいは隠せよ。最初から何か企んでるとは思ってたから平家に確認したけどまさか和平絡みだったとはなぁ。確かに悪魔や天使、堕天使と妖怪は似て非なる存在……考え方も価値観も違うから和平を結んで同盟関係になるのは躊躇するだろう。なんせ妖怪勢力からすれば俺達悪魔勢力に自分達の同胞を玩具感覚で悪魔に転生させられたり、人に仇なす存在だから滅ぼすって感じで天界勢力からは仲間を殺されたりしてるしね。だから和平を結ぼうと言われてはい分かりました! とはならないのは考えなくても分かる。でもなぁ、俺達を観察しても意味無いと思うぞ? なんせ王の俺自身が好き勝手に生きる事を信条としてるし、ムカつく奴がいたら殺すとかも普通にするからむしろ逆効果だと思うんだよね!

 

 でもまぁ、平家からは無視しても良いって感じの事を言われたから今後も無視し続けるけどね。もし危害を加えてきたら殺せばいいだけだしさ。

 

 

「坊主の言う通りだ。俺んところも色々と厄介でよぉ。悪魔や天使達と和平を結ぶことを望んでる奴らもいれば和平を結ぶのを反対してる奴らもいる。どっちの言い分も分かるから長としては大変なんだっつー話よ。今回の一件は悪魔の中でもとびっきり頭がいかれてるって噂のキマリス眷属を見て、手合わせをして、話をして、考えが変わるかどうか確かめるためにやらせてもらったぜ。文句があるなら聞いてやるぜ、それをいう権利ぐれぇ坊主にはあるしよ」

 

「特に無いな。こっちとしても犬月達の特訓に付き合ってもらってるし組織の長としては間違った事はしてないだろ? まぁ、俺達を基準に考えたら和平反対派が増えそうだがそっちが良いなら此処にいる間は続けてくれても構わねぇよ。ただ襲ってきたら問答無用で殺すからそれだけは覚悟しておけ――勿論、此処にいる奴ら全員だけじゃなくて別の場所にいる配下の妖怪達もな」

 

「カッカッカ! その目は脅しじゃなく確実に殺るって言ってやがるな? 分かってる、何度も言うが手は出しはしねぇよ。魔法使い共を虐殺した件は俺らのところにも届いてやがるしよ。同じ目に合うかもしれねぇってんでビクついてる奴が殆どだ。だから一応は安心しておけって言っておくぜ」

 

「了解。でさぁ~話が変わるんだけどうちの騎士……えっと覚妖怪はどんな感じだ? 剣で殺し合ってんだろ? 本人に聞いても内緒とか言って教えてくれねぇんだよ」

 

「どうもなにも中々肝が据わってる女だぜ。この俺の首を遠慮なく落としに来る妖怪なんざ最近じゃいねぇしよ。剣も迷いがねぇ上、技量もあるときた。カッカッカ! 俺んところにも覚妖怪はいるがそいつらとは全然ちげぇ。実力的にも申し分がねぇ、配下に欲しいぐれぇよ。参曲の奴が教えてる二人も呑み込みがはえぇときた、全く恐ろしい奴らだぜ」

 

「やらねぇぞ?」

 

「そりゃ残念だ。ま、覚妖怪や嬢ちゃん達は坊主の下から離れるって選択肢は奴さんにはねぇだろうがよ」

 

 

 だろうな。なんせノワール君依存率ナンバーワンだし。俺としても平家が傍に居てくれれば指揮系統やらなにやらを任せられるし何より! 俺の考えを理解してくれる奴だから傍に居てくれないと困る。うーん、王が指揮しないってどうなんだって思うけどね……でも適材適所って言葉があるからきっと大丈夫だろう! 橘や水無瀬も居てくれないと色々と困るから手放したくはない……平家にはバレるだろうがこれは絶対に内緒だ!

 

 この後は適当に雑談しつつ将棋を打ち、昼飯の時間になったので広間へと向かう。ちなみに今日の昼飯()和食だ……昨日も一昨日も和食、晩飯も和食、というよりも和食しか食ってない。確かに鬼の里の雰囲気的には合ってると思うがここまで和食が続くと偶には洋食が食いたくなるね! まぁ、食う専門の俺が文句を言うのは筋違いだけども。てか言えません……! だって美味いんだもん! 白米は美味いし、味噌汁も美味いし沢庵は最高だし魚も野菜も何もかも美味すぎる……! 四季音姉から聞いた事だが力の塊とさえ言える鬼でも武力が優れない面々もいるらしい。そういった奴らは妖術に手を出したり、里全体を支えるべく農業やら建設業やらで活躍してるみたいだ。すげぇなおい、ちょっと何人かうちの領地に来ない? 歓迎するよ? ただし頻繁に地震とか衝撃とかが起きるけど問題無いよね!

 

 

「いやぁ~水無せんせー達が作った飯は相変わらず美味いっすね! あっ、おかわり良いっすか?」

 

「食い過ぎて吐くなよ?」

 

「王様……最後の晩餐になるかもしれないから今食わなきゃ何時食うんすか?」

 

「明日?」

 

「鬼に殺されて明日を迎えられないかもしれないでしょうがぁ!? 王様みたいに不死身じゃないんで痛いんすよ!? 死ぬんすよ!? なんで今も生きてるか分かんないくらいボッコボコにされてるんですよ! いや自分から望んで喧嘩してるから文句は無いし特訓を始める前に比べて妖力とか結構上がったから感謝ものだけどさ……! 金熊童子とか星熊童子とかとりあえず四天王の拳とか普通に死ねるんですよ!! もう水無せんせーが居なかったら死んでるね!」

 

「お前……鬼の四天王と殺し合いしてんのかよ? 変われよ、今日は寧音も芹も居ないから暇なんだよ」

 

「やっぱり頭おかしいわこの人。なんで笑顔になってワクワクしてんの? 気持ちは分かるけどやっぱおかしい」

 

 

 だって四天王が相手だぞ? 普通に楽しくなるに決まってんじゃねぇか! 隣に座ってる犬月は呆れ顔で自分がどれだけ幸運かを分かってないらしい。なんせ鬼の中でも四天王と称される熊童子、虎熊童子、星熊童子、金熊童子の四人に加えて腕自慢の鬼達と喧嘩三昧という名の特訓を受けてるんだぜ? 最高じゃねぇか! 妖力が上がったと言ってるがそれは間違いなさそうだな……何度も死ぬ一歩手前まで叩きのめされてもなお立ち上がり、そしてまた同じように叩きのめされることを繰り返してたら嫌でも上がるわ。四季音姉妹も毎日寧音や芹と殺し合ったり、精神修行したりしてるから同じように妖力が跳ね上がってるから爆笑ものだ。うん! 中級悪魔と下級悪魔ってレベルじゃないね!

 

 

「酒呑童子と茨木童子が中級や下級で収まるわけないよ」

 

「だよな。で? 毎日ぬらりひょんと殺し合うという幸運を味わってるお前はどうなんだよ?」

 

「言った方が良い?」

 

「いらね」

 

 

 聞かなくたって妖力が上がってる事は分かるしな。東の妖怪を束ねるあのぬらりひょんが配下に欲しいというレベルだしな……いや、その「私はノワールから離れるつもりはない」的な視線を向けなくても分かってるっての。誰にもお前は渡さねぇよ。

 

 

「……」

 

 

 若干嬉しそうに飯を食い始めたけど照れてるのか? おうおう照れてんのか平家ちゃ――いてぇ?! 横っ腹に貫手を放つんじゃねぇよ!

 

 

「……あ、あの悪魔、さん? 私も頑張ってるので褒めて、欲しいな♪」

 

「勿論褒めるに決まってるじゃないか! いやぁ、頑張ってるみたいで俺様すっごく嬉しいわー! だからお願いなんだけど今後、笑顔と一緒に破魔の霊力を出さないでほしいな! ダメ?」

 

「ダメです♪」

 

 

 流石アイドル! 笑顔が可愛い! いや、無視してたわけじゃないからな? ぬらりひょん勢力に属している猫妖怪達の教えを受けて破魔の霊力や禁手を鍛えていることは遠くから眺めていたから知ってるしな。多分だが特訓前に比べて破魔の霊力の威力は格段に上がってるだろう……師匠的な存在である参曲って猫妖怪の教えが上手いというのもあるが橘自身も犬月達に負けてられないって感じで全力で臨んでいることが大きい。水無瀬も禁手を鍛えつつ妖術を教わってテクニックタイプとして成長してるから橘と一緒に後ろは任せても大丈夫だな……まぁ、最初っから任せてるけども。

 

 てかちょっと待ってほしい……犬月も四季音姉妹も平家も橘も水無瀬も成長してる。これは素直に嬉しい! 将来殺し合うのが楽しみだな! グラムは知らん、アイツは剣だから良く分からん。そんな事はどうでも良いが……俺って成長してる? あ、あれぇ? 待った、待った! 成長してるよな……? 漆黒の鎧は使ってはいないがルーン魔術とか苦痛の能力には慣れたから今後の殺し合いでも問題無いと思う! でもこれって成長か? ただの慣れじゃね? まさかこの特訓で強くなってないのは俺だけか!? うっそだぁ! ヤバイ、ちょっとヤバいから本気を出そう……ノワール君が本気を出せばきっと成長できるはず!

 

 

「……祈里のお母さんを苦戦することなく倒してる時点で成長してるよ」

 

 

 きっとそれは攻められ続けて芹が疲れてたんだな! うん!

 

 

「そもそも夜空に勝つには寧音や芹相手でもグラム無しで殺せなきゃダメなんだよ。あのチョロインに頼ってるようじゃまだまだ弱い……アイツは俺が一歩前に進んだと思えば階段飛ばしでさらに先に進んでやがる。もっと強く、もっと先へ、もっともっと……だから今で満足してたらダメなんだよ。なんだよその顔……? まるで知ってたって言いたそうじゃねぇか?」

 

「うん。覚妖怪だもんノワールの心の中から夜のオカズまで何でも知ってるのはとーぜん」

 

「俺のオカズなんて知って何するんだよ?」

 

「知りたい?」

 

「聞いたら橘から説教されそうだから遠慮しとく」

 

 

 だって構ってもらえないことが不満なのかぷくーと頬を膨らませて俺を見つめてきてるしね! アイドルの嫉妬顔が見れるとか最高だな! まぁ、流石に放置しておくのもあれだしフォローしとこうか……決して破魔の霊力が怖いとか思ってないよ? むしろドンドン嫉妬してほしいとは思ってるけどさ! だってこの数日間、毎日平家と一緒に夜這いしに来てるしね! いやぁ、アイドルが寝間着姿で夜這いしに来るとかファンの奴らにバレたら殺されるんじゃねぇかな? とりあえずノーブラおっぱいは最高です。毎日素敵な夢を見れるぐらい柔らかいです!

 

 そんなどうでも良いかと言われたら微妙な事は置いておいて……橘と水無瀬に式の使役方法などで分からなかったら聞きに来い、暇だったら教えてやると伝えると橘はぱあぁっと笑顔になり、水無瀬も隠してるようだが普通ににやけ始めた。分かりやすいなぁおい……俺に教えてもらってもあんまり役に立ちそうにない気がするんだけどな。

 

 

「水無瀬、橘。滅多に無い機会だから張り切って特訓に励めよ。四季音姉妹もだ、お前らはうちの切り札っぽい立ち位置なんだから強くなれませんでしたとか言いやがったら……俺の前でオナニーさせるからな」

 

「ば、ばば馬鹿じゃないの!? す、するわけないじゃないかそんな恥ずかしい事!! もしそんな事を言ってきたら、ななな、殴るかんね!」

 

「主様も命令なら従う。伊吹と一緒なら嬉しい」

 

「イバラ!! しなくていいから!!」

 

「ノワール、あんまり花恋を弄ると拳が飛んでくるよ」

 

「それこそ知ってるっての……でもそれぐらいの罰ゲームは無いとダメだろうが? つーわけだ、マジでさせるから頑張れ――」

 

 

 頑張れよと言おうとした瞬間、先ほどまで青色だった空が冥界にいるような暗い空へと変わった。それだけではなく使用人達や外から聞こえていた鬼達の声が無くなり、この世界に()しか存在していないと錯覚させるぐらい静かになった。おいおいマジかよ……? こっちは楽しく昼飯食ってたってのにどこの誰だよ? この場所を治める寧音や芹はいねぇってのに厄介ごとを起こすんじゃねぇっての!

 

 

「相棒」

 

『安心しやがれ! ゼハハハハハハハ! まさか会いに来やがるとは思ってもいなかったぜ――アジ・ダハーカ!!』

 

 

 俺の手の甲から相棒の嬉しそうな声が響き渡る。広間から見える庭の地面に魔法陣が描かれ、そこから二つの影が現れる。一つは祭服を着た褐色肌の男……前に病院で会ったアポプスだ。そしてもう一つの影は――ドラゴンだった。黒い鱗と六枚の翼、そして何よりも目立つであろう三つ首がそれぞれ意思を持つように俺に……いや相棒に話しかけてくる。

 

 

『よー、会いに来たぞクロム。久しぶりと言っておこうか』

『会いに来てやったぜ☆』

『元気にしてたかコノヤロー!』

 

《食事中のところを邪魔をして申し訳ない。しかし邪龍の我らだ、多少の無礼は大目に見てほしい》

 

 

 文句を言いたくても言えるわけねぇだろ。なんせ俺もこいつらも邪龍だ、自分優先で他人の迷惑なんて考えない存在……だからあーだこーだと言うつもりは無いけどせめてあと一時間くらい経ってから来てくれませんかねぇ? まだ食ってる途中なんだよ!! つかあの時は逆鱗寸前だったから大して気にしてなかったけどこいつら……ヤバいな。強い! やべぇ、殺し合いたくなってきた!! これが邪龍の筆頭格の二体か! ゼハハハハハハ! 残ったクロウ・クルワッハにも早く会いたいぜ!

 

 

「別に文句は言うつもりはねぇよ。俺だって邪龍だ、他人の迷惑なんて関係ねぇしな。自分が良ければ問題無いだろ? さて、初めましてと言っておく……ノワール・キマリス。相棒、影の龍クロムを宿してる普通の混血悪魔だ。会えて光栄だぜ、邪龍の筆頭格さん」

 

『知っているさ。先の魔法使い虐殺の件は俺達の耳にも入っている。名乗られたのであれば名乗り返そうか、アジ・ダハーカだ』

『邪龍様だぜー!』

『よろしくー☆』

 

《先の一件では失礼をした。アポプスという、久しぶりに逆鱗を見せてもらった。中々良い演劇だった、次回は何時になるのか教えてもらいたいぐらいだ》

 

『ゼハハハハハハハ! 次があるなら特等席で見せてやるよ! アポプス、アジ・ダハーカ、何の用だぁ? ただの気まぐれでこんな大仕掛けをしてまでやってこねぇだろ?』

 

『勿論だ。此処に来たからにはちゃんとした理由がある。なぁ、クロム。俺達邪龍が蘇った事は理解しているな? でだ、人間界には古くから存在するしきたりがあるだろう? 邪龍と言えど蘇ったからにはそれを行わないのはどうかと思ってな』

『つーか暇なんだよ!』

『リゼちゃんに従うのめんどくせー!』

 

《今回は殺し合いに来たわけではない。あぁ、だがこの場で戦うというのも悪くは無い。どうだ、クロム? 久しぶりに殺し合わないか?》

 

『おいアポプス、殺るなら俺が先だ。こっちも白いのと殺し合って以来暇だしな』

『強い奴と戦いてー!』

『これこそドラゴンの本能!』

 

《アルビオンと殺し合っただけでも良いだろう。此処は譲れ、アジ・ダハーカ。過去よりクロムとは殺し合っていた仲だ、久しぶりに痛みを味わうのも悪くは無い》

 

『知らねー! 何度も戦ったんなら俺に譲れ、アポプス』

『そーだそーだ!』

『イチャつくなら後でしろ!』

 

 

 あのさぁ、なんでいきなりやってきて俺を無視して殺し合う寸前になってんだ? いや、これはあれか? 待って! 俺のために争わないで! 的な感じか!! やべぇ、俺って何時からヒロインになったんだ? とりあえずしきたり云々がちょっと気になってるから話を戻そう――殺し合うならその後でも良いしな。

 

 

「おい。殺し合うのは良いが無視するんじゃねぇよ……殺るなら俺達三人で殺し合えば良いだけじゃねぇか。で? 何やるって?」

 

『ん? あぁ、それもそうだな。いやいや、ほらなんつったっけなー? おぅ! 思い出した――同窓会しようぜ』

 

 

 いきなり何言ってんだよお前……?

 

 

「……はぁ?」

 

『人間界じゃ数年毎に会うしきたりがあんだろ? だったらやろうぜ。俺もアポプスもグレンデルもラードゥンもニーズヘッグも蘇ってる、ヴリトラの奴も意識があんだろ? じゃー久しぶりに会って話そうや。ルーマニアでリゼ公がくそったれな事をしでかすしよ、それ見て嗤ってようぜ』

『アイツむかつく!』

『殺してー!』

 

《と、ただその誘いに来ただけだ。ユニアにも伝えたが参加すると言っていた。ヴリトラの方もユニアが連れてくる手筈になっている。クロム、キミはどうだ?》

 

「あっ、参加しまーす! 絶対に参加しまーす!! 何が何でも参加します!! 相棒、良いよな? 良いよね!」

 

『当然だぜぇ! 久しぶりにグレンデルやラードゥン、ニーズヘッグに会えるんだろう? 行くしかねぇじゃねぇか!! ゼハハハハハハハハッ! テメェらにしては面白れぇ催しを考えやがったな!』

 

《偶には邪龍同士で語り合いたくもなる。我らを下に見る者共に呆れ果てているからな》

 

 

 アポプスの声的にはマジっぽいな……あーなんかどの首の声か分からんがアジ・ダハーカもリゼちゃんを嫌ってるような感じの事を言ってたしそれ関連かねぇ? まぁ、どうでも良いけど。夜空が参加するなら参加しないという選択肢は存在しないんだよ! あとついでに邪龍による同窓会とかかなり面白そうだから絶対に参加しよう! 特訓? そんなものは知らん。同窓会に誘われたんだから行かないとダメだよねー!!

 

 

『参加すんならさっさとルーマニアへ来いよ! 何だったら連れてってやろうか?』

 

「いらねぇよ。こっちで何とかするし借りとか作りたくねぇ。とりあえず即効で向かうから現地で待っててくれ……あと同窓会するのは良いけど暇になったら殺し合おうぜ。さっきからお前達と殺し合いたくてウズウズしてるしな!」

 

『ほう、良いじゃねぇのその殺気! んじゃ待ってるぜ、ノワール・キマリス、クロム。久しぶりにたんまり話そうぜ』

『殺し合っても良いぜー!』

『むしろそうしようぜ!』

 

《ではルーマニアでまた会おう》

 

 

 それを言い残してアポプスとアジ・ダハーカは龍門と思われる転移術で消え、それと同時に空が割れて先ほどまでの光景へと戻る。なるほど……さっきまでの空間自体はアジ・ダハーカ辺りが作ってたか。相棒からその手の魔法は鼻歌交じりで数百から数千は使えると聞いてたから間違いないだろう。しっかし邪龍の筆頭格がやってきて殺し合いするわけでもなく同窓会しようぜか……大丈夫かおい? 別に夜空が参加するなら文句は無いし絶対に参加させてもらうから良いんだけどさ、もっとこう、無かったか?

 

 

「――あれ、いつの間にそっちに移動したんすか?」

 

 

 広間の方から犬月の声が聞こえる。その顔はなんで移動してるんだって表情をしているがマジかよ……別空間に転移していたことすら気づかれてないってか? うわぁ、すっげぇな! 流石邪龍!

 

 

「ちょっとな。あぁ、四季音姉。悪いが出かける」

 

「別に良いけど何処へだい?」

 

 

 いや、何処って言われてもなぁ……うん、こう言うしかないわ。

 

 

「ちょっと同窓会が開かれるっぽいから参加してくる」

 

 

 俺の言葉に平家以外は「はぁ?」みたいな表情になったけど当然だよな! だっていきなり同窓会参加してくるとか頭大丈夫かってなるだろうし! でも俺は悪くないぞ? だって招待された側だからな! あとすっげぇスルーしてたけど匙君……大丈夫かな? きっといきなり変な穴に放り込まれてるような気がするけど安心してほしい! ただの同窓会だから! うん! 何も怖くないと思うから安心してくれ!!




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