ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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お久しぶりです。
FGOとかFGOとかFGOとか色々と浮気してたらかなりの時間が経ってました……


94話

「……おいおい、なんか知らないが吸血鬼の町が動物園もどきになってるぞ」

 

 

 先ほどまで仲良く遊んでいたアジ・ダハーカが作り出した空間から外へ出た俺の視線の先にはかなり面白い光景が映っている。他者を嫌い、自らの種族以外は信用しない吸血鬼達が暮らしている町を何処から現れたか分からない怪物が暴れ回っているからだ……相棒と同じ黒い鱗に鋭利な爪と牙、猛々しい翼と尻尾を持つ()()は遠く離れた俺達にすら聞こえるほどの咆哮を上げて周囲を蹂躙している。何処からどう見ても邪龍ですありがとうございました! てか普通にアジ・ダハーカが邪龍が現れたとか言ってたし間違いないだろうな……でもなんだろうな? 感じる龍のオーラは俺や夜空、ヴァーリに一誠、タンニーン様とか近くに居るアポプスやアジ・ダハーカとは何かが違う気がする……例えるならキンキンに冷えた未開封のコーラと何時間も放置された上に炭酸が抜けきってるコーラって感じだな。うーん、なんか無性に炭酸が飲みたくなったから後で犬月にポテチと合わせて買ってこさせようかねぇ?

 

 まぁ、そんなどうでも良いことは置いておいて俺の背中にくっ付いている夜空のテンションがヤバい件について。もうね……目の前の光景を見た瞬間からただでさえ可愛い笑顔がさらに輝きだしてもう大変です! さっきから「すっげー!!」とか「見てよノワール! ドラゴンだぜドラゴン!!」とかはしゃぎまくってるし……そのおかげで俺の背中に夜空のまな板の様に真っ平なちっぱいが押し付けられるんですがご褒美ですかね? ノワール君のノワール君がご起立するんでそろそろやめてもら……いや、やめないでくださいお願いします!

 

 ちなみに匙君だけど目の前の光景を見て絶句してます。これはどうでも良いか。

 

 

「リゼ公の奴、予定を早めやがったみてぇだな」

「仕方ないね! アイツ待つこと嫌いだし!」

「聖杯奪ったんだから当然とーぜん!」

 

《そのようですね。本来であれば吸血鬼と交友を深め、彼らの作戦が成就するその瞬間に行う予定でしたが我らが聖杯を強奪した事で予定を変更したらしい。しかし知ってはいたものの、我らを模倣した生物を見るのは聊か苛立ちを覚えます》

 

「だな。真似るんならもうちっと真に迫れって話だ」

 

 

 同じ光景を見ているアポプスとアジ・ダハーカの声色にやや苛立ちを含んでいるところを見ると吸血鬼達が住む町で暴れている邪龍が気に入らないらしい。話を聞いてみると何でもリゼちゃんが聖杯を使って吸血鬼達の体を邪龍に変異させる術式を埋め込んだとか何とか……なるほど、だから感じるオーラが変なのか。

 

 アポプス達に向けていた視線を再び町で暴れる邪龍もどきへと移す。悪魔だからか遠く離れた場所であろうと何とか見えるこの視力のおかげでどんな風に暴れているのか余裕で分かる……が見れば見るほど先ほどまで上がっていたテンションが徐々に下がってくる。なんだろうな……暴れている邪龍もどき達には自分の欲みたいなものが全然見当たらない気がする。普通に考えて町を破壊や蹂躙すれば興奮のあまり笑みを浮かべたりすると思うのに目の前の奴らはそんなものは一切していない。ただ目の前にあるから破壊する、目の前に居るから殺す、楽しいとか快感だとかそんなものじゃなくて業務的に行ってるように見える……恐らくリゼちゃんが埋め込んだ術式によって操られているんだろうなぁ。うわぁ、死ねばいいのに。

 

 

《さてクロム、そしてその宿主であるノワール・キマリス。これを見て何か思う事はあるか聞いておこうか》

 

「特にねぇな。まぁ、強いて言えば邪龍なら命令されるんじゃなくて自分の欲望で暴れろよとは思ったぐらいか? 操り人形の奴を邪龍とは言いたくないな」

 

「へぇ。んじゃユニア、テメェらはどうよ?」

 

「ん~最後らへんはノワールと一緒! 他はどーでも良い! つーか吸血鬼の町が破壊されても私には関係ねぇ~しぃ! てかてかぁ! それよりもお腹すいたぁ!!」

 

『――という事ですよアジ・ダハーカ。私も夜空も吸血鬼を邪龍へと変異させたことに関しては何も思う事はありません。矮小な存在如きを気にかけるぐらいならクロムと殺し合っていたいですからね』

 

『それに関しちゃぁ俺様も同意見よ! 良い話には裏があるってのは昔からあった事じゃねぇか! ゼハハハハハハハ! 自分の種族しか興味のねぇ奴らが悪魔と手を組んだ結果がこれってのは嗤えるぜぇ!! 腹が痛くなるぐらいになぁっ!!』

 

 

 デスヨネ! 普通に考えたら誰でも分かるだろ……悪魔だぞ? 人を堕落させ、誘惑し、聖ではなく魔へと誘う存在と手を組んで何も無いなんざあり得ない。こればっかりは他種族と友好関係を築こうとしなかった吸血鬼が悪いね! だからまぁ、うん。リゼちゃんによる授業料としてありがたく受け取っておけばいいさ……この場所で邪龍もどきが暴れようが俺には関係無いし。

 

 

「……けんな」

 

 

 そんな事を考えていると絶句していた匙君が立ち上がって何かを呟いた。おいおい……! 良い殺気じゃねぇか!!

 

 

「あー、ゴメン匙君。今なんか言ったか?」

 

「……あぁ、言ったよ!! ふざけんなってな!!!」

 

「ふーん。で? 何がふざけんなって? まさかとは思うが同盟すら結んでない吸血鬼の町で邪龍もどきが暴れてる事が気に入らないってか?」

 

「そうだよ!! ついでに……あれを見て何食わぬ顔でいる黒井達が信じられねぇ!! 兵藤達がどれだけの思いで吸血鬼の町に向かったか分かってるのかよ!! その聖杯を持ってた女の子を助けようとしてるってのに……ただムカついたからとか! 気にくわないからとかで奪い取るお前達の神経が分かんねぇ!!」

 

《と、言われましても返答に困りますね》

 

「これが俺達だからしか言えねぇんだよなぁ。グレンデルにラードゥン、テメェらはなんか良い返答できそうか?」

 

『んなの出来るわけねぇだろうが! ムカついたら殺して! 気にくわなかったら殺して! 気に入ったら殺す邪龍(おれたち)が答えれるわけねぇってな!!』

 

『えぇ。これが私達ですからね』

 

 

 怒りの匙君が放った言葉は残念な事にあまり意味を持たないことになった。だろうね! だって一誠君達の気持ちなんて分かるわけねぇじゃん……覚妖怪じゃないんだし。そもそも邪龍だぜ? 自分勝手に生きて、自分勝手に殺し合って、自分の欲望を優先する俺達が他人の事なんざ気にするわけがない。むしろ逆に褒める場面じゃないかねぇ? 流石邪龍だ! とか良いぞ良いぞもっとやれ! とかそんな感じでさ!

 

 

「匙君匙君。なんで分かんないんだとか言われてもえーと、そのだ……うん、分かるわけねぇんだわ」

 

「つーか私達って自分の欲望優先だしね~今更相手に気持ちがなんで分かんないんだとか相手が可哀想とか言われても逆に引くんだけど。てか普通にウザい」

 

 

 濃厚な殺気がこの空間を支配する。発生源はもちろん夜空だ……うわぁ、ガチの殺気じゃねぇか! 何か匙君が可哀想に思えてきたぞ……でもなぁ! うん、無理。他人がどうなろうと俺には関係ない。背中に居る夜空と殺し合って、普通に話をして、くだらない事で笑って、また殺し合って、そんな普通の日々が過ごせれば俺は満足だしな。だから俺と夜空以外がどうなろうが関係ない……勝手に死ねばいいし、勝手に生きれば良い。俺達の楽しみの邪魔をしなければ世界すら滅んでも構わないね!

 

 勿論――邪魔をするなら神だろうと魔王だろうと殺すけどな。

 

 

「……っ、それ、それでも!! ダチの気持ちを踏みにじられて黙ってられるか!!! たとえ、たとえ!! 負けると分かっていても俺は戦う!! お前たち全員とだ!! 舐めるんじゃねぇぞ……! 俺は、俺はっ!! シトリー眷属の兵士だ!! 死んでも蘇ってお前達を呪い殺す!!!」

 

 

 夜空の殺気に屈しそうになった匙君だが強い決意と殺気を放ちながら俺達を見つめてくる。その顔は何を言われても曲げたりしないものだ……なんだよ、自分だってやってるじゃねぇか! 俺達の気持ちなんざ無視して自分の欲を押し付ける! 邪龍だと証明できる唯一の方法を実践してるじゃねぇかよ!! ゼハハハハハハハ! あぁ、やっぱり呼んで良かったわ! あーだこーだ言っても匙君、お前はこっち側(邪龍)なんだよ……仕方ねぇなぁ!! こんなの見せられたら楽しくなっちまうじゃねぇの!!

 

 

「――そっか。じゃぁ、殺し合うか」

 

「……あぁ! 望むところだ!!」

 

 

 俺の言葉に匙君は決意した表情で返答した。それを見ていた夜空やアポプス達はやれやれって感じで何かを察したのか俺達から離れていく……うわぁ、何この連帯感。お前ら仲良すぎない?

 

 

「それじゃあ匙君、行くか」

 

「い、行くってどこにだよ! ここ、で殺し合うんだろ……?」

 

「おいおい……流石に同窓会の会場で大暴れするわけにはいかねぇだろ? 俺達が殺し合う場所はあそこだ」

 

「……なぁ、黒井。俺の目が確かなら指さしてる場所って邪龍が暴れてる所じゃないか?」

 

「おう。邪龍らしく精一杯暴れようぜ! それにだ――仮に巻き込まれてもそれは逃げなかった奴らが悪いだろ?」

 

 

 俺の言葉の意図を察したのか匙君は一気に涙目になりながら頷いた。イヤーシカタナイネー! 殺し合う場所が偶然邪龍もどきが暴れてる場所なんだもんねー! これは仕方がないわー! 誰にも文句言われないわー! つーか普通に俺達邪龍です! よろしくお願いしますって感じで暴れてる偽物がウザい。操られてる分際で俺達と同じ名を語るな……テメェらなんざ邪龍でも何でもねぇ、ただの吸血鬼だろうが!

 

 

《クロウ、アジ・ダハーカ》

 

「あぁ。蘇って本当に良かったぜ。中々楽しめそうだ」

 

「……」

 

 

 俺と匙君は殺し合うために今居る場所から吸血鬼が暴れている場所へと向かう。なんか夜空がつまらないって顔になってたが暇なら混ざっても良いんだぜ? 俺様、大歓迎だからさ!!

 

 

「さてと匙君。準備は良いか?」

 

「あぁ! 何時でも良いぜ!!」

 

『……クロム』

 

『なんだよヴリトラ? 今更ビビったってかぁ? おいおいそりゃねぇだろうよぉ! テメェも邪龍なら覚悟決めろや!! 昔は嬉々として呪いを放ってただろうが!』

 

『そのようなこともあったな。いや、違う。クロム、そしてその宿主であるノワール・キマリス。礼を言おう。我が分身は一歩、前へと進むことが出来そうだ』

 

「礼を言われるようなことはした覚えはねぇよ。つーかそれは元々お前らが持ってたもんだろ? んじゃ、始めるか!! 恨みっこなしの殺し合い! ゼハハハハハハハ!!! 死んでも恨むんじゃねぇぞ!!」

 

 

 龍へと変異した吸血鬼が暴れている町の上空にたどり着いた俺は即座に黒い鎧――普段纏う鎧を身に纏う。正直なところ、ちょっとワクワクしてる……だって向かい合った先に居る匙君が笑ってるしな。俺のやり方が呆れたのかは分からないがさっきまでの匙君じゃないってのは確かだ! 惚れ惚れするな全く……! 心地良い呪いを巻き散らす匙君と殺し合えるなんて滅茶苦茶楽しみだ! 俺と夜空、同じ邪龍としてどんな道を進んだのか見せてくれよ――元士郎!!

 

 

「……ヴリトラ」

 

『どうした我が分身よ』

 

「俺さ、馬鹿だよな」

 

『あぁ、大馬鹿だ』

 

「でも……これが俺だ。クロウ・クルワッハも言ってただろ? 邪龍なら貫き通せってさ。ずっと心のどこかで思ってたんだよ……兵藤や黒井みたいになりたいって。でも違ったんだ、俺は――俺だ。誰でもない匙元士郎っていう男なんだ。さっきから黒井達を見ていてさ、二人と同じようになるなんて絶対に出来ないって悟っちまった……当たり前だよな……最初っから同じ場所に立って無いんだしさ。だけどそれで良いんだよな……兵藤には兵藤の考えと生き方が、黒井には黒井の考えと生き方があるんだ」

 

『そうだな。この世に同じ考えを持つ存在は居ない。似たような道だとしてもその先は別だろう。同じ道を歩んだとしてもそれはほんの僅かだけだ……一つの考えが道を分ける、それが生きるという事だからな。我が分身よ、気合を入れろ! 臆せば死ぬぞ! 目の前に居るのは最強の影龍王! 我と同じ邪龍にして狂った王だ! 勝利するためには何をすれば良いか分かっているな?』

 

「当然だ! 俺は俺だ! 会長の兵士、匙元士郎! 自分の夢を叶えるために全力で目の前に居る奴を殺す!!」

 

『その意気だ! あぁ、なるほど。生前では感じる事が出来ぬ思いだ。心地良いぞ……あぁ、心地良い!!』

 

「相棒」

 

『あぁ、宿主様。ゼハハハハハハハハ!!! 気を抜けば死ぬぞ? 本気のヴリトラの呪いは魂すら殺すからな!』

 

 

 それは楽しみだ!

 

 

「ヴリトラ!!」

 

『我が分身よ!!』

 

「『禁手化!!』」

 

 

 暴風が俺を襲う。呪いを帯びた風だ……自分の魂すら穢されそうなほど濃い呪いが目の前から放たれた。俺は目の前に現れた存在に笑みを隠し切れなかった。深い暗黒の鎧に周囲を焦がすほどの邪炎放ち、呪いを帯びた触手を生やす元士郎が居るからだ。これがお前の禁手か……夜空が見たら爆笑するんじゃねぇかな! だって、だって! 滅茶苦茶カッコいいじゃねぇかよ!!

 

 

罪科(マーレボルジェ)()獄炎龍王(ヴリトラ・プロモーション)。やっと至れた俺の、俺達の禁手……! 悪いが加減はしないぜ? 殺したらごめんな!!』

 

「ハッ! 逆にこっちが言わせてもらうぞ! 殺したらマジでゴメンな!!」

 

 

 元士郎の鎧から生えた触手が俺へと向かってきたので影人形を生成し、ラッシュタイムを放って粉砕する。しかし殴っても殴っても諦めという言葉を捨て去ったかのように何度も、何度も、何度も何度も何度も伸ばしてくる。触手に触れた影人形の拳が呪いの炎によって燃やされ体を徐々に侵食している……ちっ、相棒が言った通り一度触れたら文字通り死ぬまで消えることは無いだろうな。自分の信念を、生き方を、考えを曲げることが無いという強い思いによって生み出された良い攻撃だ……それでこそ殺しがいがあるってもんだ!!

 

 

『ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!!』

 

 

 鎧から音声を鳴り響かせて影を生成し、地上に居る吸血鬼達を飲み込ませて力を奪う。突如として始まった俺と元士郎の殺し合いによって逃げ惑う吸血鬼も暴れ回る吸血鬼達も足を止めて俺達を見ていたお陰で簡単に呑み込めたぜ! さてと……簡単に殺されたくないから本気で行こうかねぇ!!

 

 町全てを染め上げるようとしている影から影人形を生成して元士郎へと向かわせる。数は無数、威力は強大、一度近づかれれば死ぬがどうやって乗り越える?

 

 

『お得意のシャドール生成か! でも悪いが全部燃やすぜ!!』

 

「ゼハハハハハハハハ! やってみろ! お前が殺したい男は此処だ! ほらほら、早く殺さないと逃げようとしている吸血鬼も殺されるぜ?」

 

『あぁ、だからサッサと殺してやるよ!!』

 

 

 触手と邪炎を伸ばし、迫りくる影人形を次々と呪い殺していく。おいおい……呪殺力半端ないな! 俺の影人形が簡単に燃やされてるぞ……あぁ、最高だ! これがヴリトラか! 楽しい、あぁ、楽しいぞ! もっと楽しませてくれよ! もっと、もっと、もっと! ゼハハハハハハハハハハ! アジ・ダハーカの誘いに乗って本当に良かった! 連れてきて本当に良かった! だってこんなに楽しい殺し合いが出来るんだぜ? それだけでも同窓会に参加して良かったと思えるぐらいにな!!

 

 無数の影人形を邪炎で燃やしながら元士郎は俺へと迫ってくる。それを見た俺は高笑いをしながら元士郎へと向かい――拳を叩き込んだ。俺の拳は元士郎の頬を、元士郎の拳は俺の頬へと叩きつけられるが痛みの声を上げずに第二、第三と殴り合う。邪炎と触手が俺に纏わりつくたびに気が狂いそうになるほどの激痛が襲い掛かってくる……おいおい、その程度か? 散々期待させておいてこの程度なのかよ元士郎!!!

 

 

「ゼハハハハハ! この程度か! 自慢の邪炎は! 触手は! 呪いの力ってのはこの程度なのかよ! だったら興ざめだ! さっさと死にやがれ!」

 

『ふざけんな! まだ全力なわけねぇだろ! この程度で殺しきれるなんて思ってねぇよ! 黒井!!』

 

「なんだよ!!」

 

『最初はおっかない場所に巻き込みやがってふざけんなって思ったけど! でも! 今は感謝してる!! これが無かったら俺は今も悩み続けてたはずだからな!!』

 

「知るかそんな事!! テメェも邪龍なら自分の欲で動きやがれ! あれがやりたいこれがやりたい! どうでも良い事でも全力でな!!」

 

『分かってる! それが俺達だ!! だから感謝してるよ黒井!! 俺は! 会長の夢を叶える! 会長の作った学校で先生になって! 会長に自慢の兵士だって褒められて!! そして――最後は会長と出来ちゃった結婚してやらぁ!!』

 

「ゼハハハハハハハ! それで良いんだよそれで! くだらねぇこと考えんな! 自分がやりたい事を後回しにすんじゃねぇ! 誰に言われても自分の欲を優先しろ! ムカつくなら殺せ! 自分勝手に、自分の意思でな!! あとあれだ! お前の夢を聞かせてくれたお返しに俺の夢っぽいものを聞かせてやるよ!」

 

『なんだよ!!』

 

「――絶対に俺は夜空を手に入れる! そしてエッチしてやる!!」

 

『応援してる!!!』

 

「ありがとう!」

 

 

 信念が込められた拳によって俺と元士郎は背後へと吹き飛ばされる。ハハ、最高だ。自分の体を染め上げるほどの呪いの炎を浴びたおかげでテンションが変な感じになりやがった! 指を動かせば激痛が、足を動かせば今にも千切れそうになる。でもなぁ……足りねぇ、足りねぇぞ! この程度だったら夜空の光を浴びた方がもっと痛いしな! 指も足も、体もまだ動くなら問題ねぇ! 全然物足りねぇんだよ!! 俺を呪い殺したいんだったら覇龍以上の呪いを持ってこい!!

 

 体勢を立て直した俺達を翼を広げたドラゴン――もとい吸血鬼が襲ってきたのだ影を生み出して潰す。目の前に居る元士郎は邪炎と触手を使って呪殺してるけどその勢いがヤバい件について……これさ、冷静になって考えると亜種と仮定しても普通の禁手であの威力は反則じゃねぇかな? あの呪いだとその場にいるだけで周囲を汚染できるレベルだぞ? まぁ、俺には効かないけどね! 絶賛激痛状態だけど全然効いてないからね!!

 

 

「邪魔すんじゃねぇよ偽物風情が!」

 

『邪魔すんなよ! 俺と黒井が戦ってるだろうが!』

 

「俺達の楽しみを邪魔するってことはどういう事か分かってるんだろうな?」

 

『そう言えばお前ら……町で暴れてたよな? じゃあ、呪い殺す!!』

 

 

 無数の影人形と邪炎、触手が一斉に周囲を取り囲んでいた吸血鬼へと襲い掛かる。自我を持たないであろう吸血鬼達はラッシュタイムで潰されたり呪殺さえたりで次々と殺されていくが俺達はそんな事を気にしないとばかりに再び殴り合う。身を焦がすほどの邪炎が俺の魂を削り続けるが関係ない……! この程度で殺されたら夜空には届かねぇからな! 耐えれる! 全然耐えれる! 痛みなんざ度外視して元士郎と殴り続ける。相手「苦痛」の能力を発動させてるせいか徐々に動きが鈍くなっていくが拳を放つことをやめる気配はない……それで良い! もっと頑張れよ! まだ俺は死んでねぇぞ!!

 

 

「黒井ぃぃぃっ!!!」

 

「元士郎!!!」

 

 

 互いの拳が胴体へと叩きこまれる。俺の方は軽いヒビが入った程度だが元士郎の方は完全に鎧が壊れている……仕方ないか。禁手に至ってすぐだもんなぁ、でも楽しかったわ! 周囲を見渡してみると俺達の戦いによって吸血鬼が住む町が完全に吹き飛んでいるのが余裕で分かる……けど俺達は悪くない。ただ普通に殺し合っただけだしね! ここで暴れていた奴らが悪い!

 

 

「――見覚えがあるヤツが暴れてると思ったら何やってんだ全く」

 

 

 元士郎を抱えている俺に近づいてきたのはアザゼルだ。それに追従するように先輩や一誠達も現れたけど全員の表情が何故か引きつっていた。うーん、なんでかねぇ?

 

 

「えーと、殺し合い?」

 

「だろうな! いきなりお前さんの影が迫ってきてビックリしたっての……それよりも相手は、ヴリトラか。見ていたが禁手に至ったって感じだがまさかそのためだけに暴れたってわけじゃないだろうな?」

 

「さぁな。俺も元士郎も互いにムカついたから殺し合っただけだ。禁手に至ったのはコイツ自身の強い思いによるものだよ……なんせさっきまで普通に同窓会してたしな」

 

「……おい、なんだその同窓会ってのは? お前、お前……また俺達に黙って何かしてやがったな!?」

 

「いや普通の同窓会だっての。まぁ、参加した面々が夜空とかアポプスとかアジ・ダハーカとかその辺りだけど」

 

「……リアス。俺は少し休む。また、コイツ……頭痛の種を残しやがった!」

 

 

 おかしい。なんであり得ないって顔をされるのかマジで分からない……だって邪龍達による同窓会だよ? 参加するに決まってんじゃん!

 

 

「……兵藤」

 

「さ、匙! 大丈夫かよ?」

 

「あ、あぁ……へへ、俺も、禁手、になったぜ……すぐに、追いついて……」

 

 

 一誠を見ていた元士郎は限界が来たのか意識を失った。多分死んでないとは思うが……駒王町に居たシスターちゃんが何故か此処に居るからダメージはすぐに回復するだろう。しっかし元士郎の禁手はヤバいな……呪いに慣れてる俺ですら体を動かすだけで激痛とはな。今後、さらに研磨されていったならきっと神や魔王ですら呪い殺せるだろう……その時が今から楽しみだ!

 

 

「さてと――そろそろ姿を現したらどうだ?」

 

 

 チラリと背後を見る。最初は誰も居なかったが魔法陣が突如として出現し、とある奴が転移してきた。

 

 

「呼ばれて飛びててなんちゃらほいってね~お久しぶりかなぁ~? ノワールきゅんのお声に応じて即参上したリゼヴィムおじちゃんですよぉ♪ アザゼルおじちゃんや赤龍帝きゅんは数日ぶりかなぁ?」

 

 

 銀髪に髭を生やしたおっさんことリゼヴィム・リヴァン・ルシファーが生理的に受け付けない声と笑みを浮かべて俺達の前に現れた。




観覧ありがとうございました。

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