ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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96話

「――さて、全員揃ったな」

 

 

 ルーマニア、吸血鬼達が住む町で起きた騒動から数日が経ち、引きこもり以外の一般人なら既に寝ているであろう深夜に俺達キマリス眷属とレイチェルは一誠の家へと訪れていた。大人数が訪れても問題無いぐらい広い一室内に俺達キマリス眷属+レイチェル、先輩達グレモリー眷属+転生天使&レイヴェル、生徒会長達シトリー眷属、サイラオーグ達バアル眷属、何故か居るアガレス眷属とヴァーリ。これだけでも結構豪華なメンツだって言うのになんという事でしょう……まだ居るんだよね!

 

 まず目につくのは幼稚園児ほどの背丈しかない年老いた猿っぽい爺さん。なんとこのお方! 闘戦勝仏……またの名を孫悟空だそうだ。結構前に夜空が戦って押されかけたって言ってたが確かにヤバいわ……強すぎる。持久戦に持ち込めば勝てそうだが短期決戦だとちょっと分が悪いな。まぁ、そんな事は置いておいてお次は何と規格外パート2と勝手に呼ぶ事にした幾瀬鳶雄という奴だ。大学生ぐらいの年齢だろうがこっちもヤバイ。ガチで夜空と同じ匂いがする……うわぁ、殺し合いてぇ! 此処に来た時には既に待機してたからその時に殺し合いしませんかって言ってみたら普通に断られたのは凄く悲しかったね! さてさてお次に気になるお方は神父服に身を包んだ男か……なんでも神滅具の一つ、煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)を所有しているらしい。なんだろうね! コイツからも夜空と同じ匂いがするんだが……よし、規格外パート3とでも思っておこう。巷ではジョーカーやらと呼ばれてるらしいけど。

 

 あとはまぁ、グリなんとかって奴とアザゼルか。うーん、この面々だったら大抵の奴相手だと鼻歌交じりで殲滅できそうだ。

 

 

「集まってもらったのは他でもない……数日前に起きたルーマニアの件についてだ。既に耳にしているだろうが……前ルシファーの息子、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーが色々とやりやがった。吸血鬼側……ツェペシュとカーミラ両方共に崩壊状態の上、その殆どが邪龍へと変化したらしい。今回はその件について話し合おうと思う……あとキマリス! 今日こそ聞かせてもらうぞ! お前、一体何やりやがった!!」

 

 

 今日こそって聞かせろって言われてもなぁ……別に悪いことした記憶は無い気がするんだけど? ただ普通に同窓会してただけだし。てか聞きたかったら事件が起きた翌日にでも聞きに来ればいいのに。

 

 

「ここ数日間、邪龍や光龍妃と殺し合ってたの忘れたの?」

 

「あー、そう言えばそうだったな。んだよ……別に殺し合いをしてる最中に来てもよかったんだぜ?」

 

「アホか。そんな事をしてみろ……お前ら、逆切れして襲ってくるだろうが。ただでさえ手が付けられない地双龍に加えて復活した邪龍の相手はしたくねぇよ」

 

「おっ、分かってんじゃん。さっすがアザゼル! 伊達に大戦を生き残ってねぇな!」

 

「アハハハハハハ! 褒めるぐらいなら色々と聞かせてもらおうか……! キマリス、ルーマニアで何してた? サーゼクスやミカエルからも説明しろとか五月蠅かったんだぞ! お前と匙が殺し合った後始末やら吸血鬼との和平やら結構大変だったってのにお前は……! 部下から邪龍と殺し合ってると聞かされた俺の気持ちがわかるか!? もう倒れそうだったっての! 絶対に禿げたぞ! 禿げたらお前のせいだからなキマリス!!」

 

「いや禿げたのを俺のせいにされても困るんだが? つーか説明ねぇ……しなかったっけ? 同窓会に参加してたって? てか元士郎から聞いてなかったのか?」

 

「既に聞いている。だが一応お前の口からも聞いておかないとな……さぁ吐け! 色々吐け!」

 

 

 うわぁ、なんか知らないけど周りからの視線がスゲェ。興味無さそうにしてるのなんてヴァーリぐらいだぜ? てか説明しろって言われてもなぁ……ぶっちゃけると困る。うん。だって普通に殺し合って~菓子食って~あーだこーだ話して~そして殺し合っての繰り返しだった気がするし。後ろに並んでいる犬月達からお願いします真面目にはしてください的な視線が飛んできてるがマジでどうしよう……平家、どう説明すれば良いと思う?

 

 

「適当に嘘でも言えばいいと思うよ」

 

「その手があった……はいはい、じょーだんですよ。と言われても説明が難しいんだが? 単に菓子食ったり殺し合ったり話をしただけだぜ? 内容ぐらい元士郎から聞いてるだろ? それが全てだよ」

 

「……匙からは蘇った邪龍、大罪の暴龍グレンデル、宝樹の護封龍ラードゥン、外法の死龍ニーズヘッグ、三日月の暗黒龍クロウ・クルワッハ、魔源の禁龍アジ・ダハーカ、原初なる晦冥龍アポプスという面々にキマリス君、光龍妃、そして匙……言葉にしてみると頭が痛くなりますね。これほどの存在が一か所に集まるなんて悪夢でしかありません。匙が生きて帰ってきて本当に良かったです……」

 

「ホントだよ! いや、マジで死にかけてたからな!! ま、まぁ……殺し合ったのは俺が原因というのもあるんだけどさ……最初は本当に怖かったんだからな! あと後始末ぐらい手伝えって!!」

 

「ヤダ」

 

「あーもう!! ですよねー! だってお前ってブレないもんなぁ!! 邪龍としては間違っちゃいないけどこの場くらいは嘘でもハイとか言えよ!? え? なにそのお前、何言ってんの……頭大丈夫かって顔!? 大丈夫だよ! 全然大丈夫だよ!! アーシアさんのお陰で完全回復してるよ!」

 

 

 うーん、なんか禁手に至ってから元士郎がツッコミ役として輝き始めた気がする。これは犬月の最大のライバル出現だな! 頑張れ犬月! 負けるな犬月! ツッコミ役として元士郎に負けるなよ! 俺の兵士なんだから勝たないとダメだぜ?

 

 

「……なんか、すっげー無茶ぶりされた気がするんすけど?」

 

 

 おぉ! 鬼の四天王との殺し合いをしたせいか察しが良くなってるな!

 

 

「気のせいだよ気のせい。まっ、話の内容なんざありふれたものだぜ? リゼちゃんがムカつくから裏切ってやっただの聖杯が三つあったから一個奪っただのってな。あー、多分だがリゼちゃんに協力してるのはクロウだけじゃねぇかな? アポプスにアジ・ダハーカ、グレンデルにラードゥンはリゼちゃんに従うのが嫌だってことで裏切ってるみたいだしな。ニーズヘッグに関しては知らん……いつの間にかどっか行ってたしな」

 

「……蘇った邪龍の大半が離反とは恐ろしいことになってやがるな。グレンデルにラードゥンに関しちゃ各勢力相手に暴れてやがる。先日、サーゼクスの兵士、ベオウルフに殺し合いを挑んで再起不能に近い半殺しをしやがった……倒そうにも傍に居るラードゥンが張る結界のせいで大半の攻撃が通らん上に飽きたと言って別の所で暴れ始めやがる」

 

「現世を謳歌してんなぁ。あーベオウルフって奴に関しちゃ自業自得だろ? 殺し合いしようぜって言ってきた相手と戦ったんだしな……命があるだけありがたいと思っておけばいいさ。だけどこっちに被害来たのはムカつくからソイツ殺していい?」

 

「んな事すればサーゼクスがガチでキレるっての……そっちの状況も耳に入ってるよ。かなりの頻度でキマリス領に現れてるらしいじゃねぇか?」

 

 

 アザゼルの言う通り、ルーマニアで行われた同窓会以降、グレンデルとラードゥンは結構な頻度でキマリス領の観光地こと地双龍の遊び場に転移してくるようになった。グレンデル曰く「神レベルが出てこなくて暇だ」、ラードゥン曰く「クロムと殺し合っていた方が楽しいから」とかまぁ……そんな理由だ。お陰でうちの領地に住んでる悪魔達は「あらま~最近は派手に殺し合ってますね~」みたいな感じでのほほんとしてるがちょっと頭大丈夫か? 自分で言うのもあれだが住んでいる領地内で邪龍が殺し合ってたら取り乱すと思うんだけど……いや、常日頃夜空と殺し合ってたら日常化もするか。ヤダ、うちの領民って逞しい!

 

 

「こっちとしては楽しい殺し合いが出来る上、眷属の鍛錬になるから比較的助かってますけどね」

 

「……王様、何の脈絡もなくいきなりコイツと殺し合えって言われた俺達の気持ちがわかります?」

 

「楽しかっただろ?」

 

「楽しかったっすけどあれを相手にするぐらいだったら鬼の四天王と戦ってた方がまだ心に余裕が出来るんすけど!? 酒飲みとか茨木童子とかグラムとか引きこもりは何事も無いかのように普通に戦闘態勢入りましたけど水無せんせーとしほりんなんて絶句してましたからね!? いや泣いてましたよ!」

 

「それはきっと嬉し泣きって奴だな。流石俺様、眷属思いの良い王じゃねぇか! んじゃ逆に聞くが嫌だったか?」

 

「どーでも良い」

 

「アイツは鬼の里で暴れたからねぇ、その礼もしたかったところだから私としては問題は無かったさ。にしし! 全力で殴っても怯まずに向かってくる相手なんてノワールや光龍妃ぐらいだから結構楽しんでるよ!」

 

「前に戦った時苦戦した。だから勝ちたかった。伊吹と一緒。主様に褒められたいから頑張ってる」

 

『わレは龍をアいする覇王のケんなり。めのマえに現れタのでアれバ殺すノみ!』

 

 

 後ろに並んでいる面々に聞いてみると特に不満の声は上がらなかった。何故か知らないが先輩達と生徒会長達とアガレス眷属が言葉を失ってるような感じがするがきっと気のせいだろう。だってサイラオーグが羨ましい限りだとか言ってるし! あっ! 混ざりたかったら何時でも来てくれても良いぞ! 死んでも自己責任だけどな!

 

 

「……やっぱりこいつらあたまおかしいなぁ」

 

「私としては瞬君も片足、いえ下半身ぐらいはドップリと浸かってると思うんですけどね……いつものことながらノワール君の無茶ぶりが……うぅ、ふこうですぅ!」

 

「悪魔さん♪ 志保、すっごく怖かったけど頑張ったよ! でもあとでお話ししたいな♪」

 

「勿論、その時は私も一緒ですわ! キマリス様と契約している者としてきっちりと躾……コホン、お説教させてもらいます!」

 

 

 え? 美少女二人からの説教とかご褒美ですか? いやぁ~モテるって辛いわ! マジで辛いわ! 出来れば夜空に説教されたいけどアイドルと金髪ツインテ巨乳お姫様からお叱りを受けるとか最高だね!

 

 しっかし犬月に水無瀬に橘……なんだかんだでお前らも楽しんでただろ? あのグレンデルとラードゥン相手に悲鳴を上げたりせずに戦ってた気がするんだけどなぁ。鬼の里で特訓したせいかかなり強くなってたし……橘も歌ってる最中の隙を雷狐やら妖術で補えるようになったし水無瀬も同じように妖術を覆えたからテクニックタイプとして急成長、犬月も鬼との殺し合いで鍛えられたせいか巨大化してないグレンデル程度の拳だったら受けても沈まなくなった! おかしいな……あの状態でも大抵の奴らは死ぬと思うんだけど? 現にベオウルフが数発でノックアウトしたらしいし。まぁ、俺としては平家の戦闘力がかなり上がってて気持ち悪かったけどな! 多分だが一対一で戦えばかなり苦戦するだろう……気が付けば近くに居るしな。コイツ曰く、ぬらりひょんの技を覚えてきたらしいが東の大将の技を覚えてくるとかちょっと意味分からない……ドヤ顔してるところ悪いが褒めてないからな?

 

 四季音姉妹? あぁ、うん。こいつらいい加減に上級悪魔か最上級悪魔になった方が良いんじゃないかってぐらい出鱈目になってたよ。グラムは知らん。

 

 

「噂には聞いてたが影龍王の近くに居る面々は面白いね~というより頭大丈夫なのかな?」

 

「それよりも犬月……鬼の四天王が相手の方が安心できるって大丈夫か?」

 

「……げんちぃ、そう思わないと此処じゃ生きていけないんすよ」

 

「――いぬつきぃ!!」

 

 

 元士郎、ガチ泣きなう。

 

 

「……キマリス君の話を聞いていると私達がしている特訓って甘いんじゃ……と思えてくるわね」

 

「リアス、思うだけで実際は常軌を逸してます。キマリス君達だからこそ出来る事ですよ……私達が同じような事をすれば恐らく、数分も経たずに死ぬでしょう」

 

「だろうな。リアスもソーナも影龍王殿とは違い後衛タイプだ。近接タイプの俺ぐらいならまだ……と言ったところか。しかし邪龍との戦い……! 俺のこの拳が何処まで届くか試してみたいものだ! いずれ魔王となる身、邪龍を自らの拳で倒せなくてどうする!」

 

「……もうっ、サイラオーグもなの! イッセー、男の子ってみんなこうなのかしら?」

 

「い、いやぁ~一部だと思いますよ? 特に黒井とか黒井とか黒井とか! いやそれよりもそんだけ仲良いなら止めろよ!」

 

「ん? 邪龍が暴れる事の何が悪い? ただ殺し合いをしてるだけだろうが? いい加減、学んだ方が良いぞ。これが邪龍……いやドラゴンなんだよ。他人の都合なんてお構いなしに暴れ回る連中だ、一誠が宿しているドライグだって三大勢力が行ってる大戦中に自分の都合で乱入して大暴れしただろ? それと一緒だよ」

 

 

 俺の言葉に一誠は何かを言いたそうな顔になったが結局、言い返す事が出来なかった。だって事実だしなぁ……だからこそ相棒と同じように封印されたわけだし。

 

 

「……ほんと、口じゃ勝てそうにねぇ……!」

 

「諦めろイッセー、ルーマニアでも言ったが自分を貫いている奴ほど厄介なものはない。誰が何を言おうと自分が決めた事をトコトン突き通すから迷いがない……俺としてはいい加減大人しくして欲しいもんだけどな」

 

 

 それは無理だな。何度も言ってるが俺は好き勝手に生きて、好き勝手に殺し合って、夜空とイチャイチャ出来ればそれで良いだけだし。周りの奴らが喧嘩を売ってきたりするから面倒な事になるだけでそれさえなければ基本的に無害だぞ? こらそこ、他人の事なんて気にしてない時点で無害じゃないよって言いそうな顔はやめなさい。誰に言ってるってお前に言ってるんだよ引きこもり……!

 

 

「さて、話しを続けようか。なんでお前達に集まってもらったかというと――リゼヴィムや邪龍、いや色んなものを全部ひっくるめて対テロリストに対抗するチームが必要になったからだ。現状、ヴァレリー・ツェペシュが保有していた幽世の聖杯の一つを強奪、さらには吸血鬼を邪龍化させて次に何をするか分からん状況に加えて滅んだはずの邪龍が同じように聖杯を強奪したせいで俺達三大勢力も他の神話勢力も今後に備えて対応せざるを得なくなった。現在暴れているのはグレンデルとラードゥンのみだが……まぁ、二体並んでいる状態だと神クラスでなければ倒すことは不可能だろう」

 

「そこまでなのね。ベオウルフが負けたことに驚いたのに……アザゼル、私達で倒せる相手なのかしら?」

 

 

 先輩の質問にアザゼルは周囲を見渡す。そしてはぁ、と軽いため息をついた。

 

 

「正直に言おう。この中でグレンデル、ラードゥンを倒せるメンツは一握りしかいない。イッセー、ヴァーリ、サイラオーグ、キマリスに酒呑童子、鳶雄、ジョーカーに初代……あとは練度は低いが匙とバロールの力を解放したギャスパーか。名を上げた面々から分かるように神滅具持ち、もしくはそれに近い力を持っている奴らしか現状、対抗できないだろう。詳しくは殺し合ったキマリス達に聞け」

 

「うわっ、丸投げしてきやがった……」

 

「それぐらいは許しやがれ。お前から見てグレンデルとラードゥンはどうだ?」

 

「どーと言われてもなぁ。ぶっちゃけるとすっごく硬い。マジで硬い。グラムぶっぱしたけど死なないぐらいタフだし夜空や四季音姉の一撃すら喜んで受けてカウンターしてくるから……うん。先輩や生徒会長みたいな後衛タイプが戦えば即効で死ぬな。あっ! ラードゥンに関しては最悪な事に防御だけなら俺以上だわ……ムカつくことにな」

 

「黄金のリンゴを守護していたドラゴンだ、防御に秀でていてもおかしくは無いだろう。さて、邪龍の情報という事でアジ・ダハーカに関して俺からも情報を提供しよう。ヤツは戦の魔法を操る邪龍、正面から挑めば返り討ちは確実だな。もっともダメージを与えても怯むことなく戦闘を続行するから一瞬でも気を抜けば逆に殺されるだろう」

 

 

 沈黙を保っていたヴァーリが壁に寄りかかりながらアジ・ダハーカの事を教えてきた。なんでも世界を旅している時に殺し合ったらしい……羨ましい! どの勢力にも属さずに動けるとかズルくないですかねぇ? 俺だってさっさと悪魔陣営から抜け出したいんですけど!

 

 

『滅ぼされるその瞬間まで護りを貫いた奴だからなぁ! ただでさえ強固な結界だってのに聖杯で強化されてるからテメェらレベルの攻撃なんざ豆みたいなもんよ! ゼハハハハハハハハハハ! 殺し合いすら知らねぇ奴らじゃあいつらは殺せねぇよ!』

 

『否定したいところだがその通りだな。我が持つ呪いを受けたとしても奴らは高笑いしながら戦いを続けるだろう。クロムの宿主の様にな……我としては屈辱だったぞ。動きが鈍るどころか嬉々として受け止めているのを目の当たりにしてしまった以上、さらなる高みへと進まねばならぬ』

 

『生憎だがなヴリトラちゃん! 俺様の宿主は今のテメェ程度の呪いなんざ効かねぇのよ! 悔しかったら覇龍レベルの状態になりな!』

 

『我が分身は禁手に至ったばかりだ。此処から少しずつ進んでいくさ。ドライグ、アルビオン、お前にユニアと我の先を突き進むのは我慢ならん』

 

『……少し、昔に戻ったかヴリトラ? お前が闘争心を露わにするなど珍しいな?』

 

『なに、我が分身の成長が嬉しくてな。少しぐらいはやんちゃしても良いだろうと思っただけだ。それよりもドライグ、静かだったな? クロムの挑発に乗ると思っていたのだが?』

 

『あぁ、先ほどまでアルビオンと話をしていた。クロムの言葉など耳にするだけ無駄だからな、聞き流していたんだよ』

 

『左様。ヴァーリ、無理を言ってすまなかったな。もう、大丈夫だ』

 

「そうか」

 

 

 アルビオンの言葉を聞いたヴァーリは部屋から出ていこうとしたがそれを見たアザゼルは引き留めるべく声を出す。

 

 

「待てヴァーリ、話を聞いてなかったのか? 此処にいるメンツで対テロリストチームを結成すると言っただろうが……無茶を言うつもりは無いがお前にも参加してもらいたいんだよ」

 

「フッ、俺が素直に聞くと思っているのか?」

 

「いーや。だからこそ鳶雄を呼んだんだよ……くっくっく!」

 

 

 うわぁ、なんかゲームのラスボスっぽい表情になったよ……ヴァーリは鳶雄と呼ばれた男、規格外パート2を見ると若干だが表情を引きつらせた。あん? 珍しいな……あの天才系銀髪イケメンがあそこまで表情を変えるなんて明日は夜空の光でも降り注ぐのかねぇ? てか規格外パート2の方も頬をかきながら若干半笑いでいるところを見るとヴァーリの弱みでも握ってるってところか。

 

 よし! 土下座するんでそれを教えてください!

 

 

「……アザゼル!」

 

「ハーッハッハッハ!! 何年お前を世話してきたと思ってやがる! 弱みの一つや二つ! 握ってるに決まってるだろ!」

 

「まぁ、アザゼルさんを困らせないようにしろよ? じゃないと、呼ぶぞ?」

 

「……くっ!」

 

『ヴァーリ、諦めろ』

 

 

 ぷ、ぷ、ふ、ふははははははははははは!!! あのヴァーリが! 銀髪でイケメンで女なんでいくらでも抱き放題なあのヴァーリが脅されてる! 何このレアな光景!! ちょ、やべっ! はらいてぇ!! あははははははははは!!! 無理! 無理無理! 写真撮りてぇ! これ夜空に見せたら爆笑するだろきっと!! てかざまぁ! まじざまぁ!! カッコつけてるから罰が当たるんだよ!! いやそれ以上に夜空を追い回してた罰が当たったにちがいねぇ!! ホントザマァ!! いやー良いもの見れたわ! でも無理笑いが止まらねぇ!!

 

 机を叩き、指をさしながら爆笑し始めた俺をヴァーリが睨んでくるがお構いなしに笑い続ける。最高だろこれ! 何を握ってるか分かんねぇけどあのヴァーリが! あのヴァーリがアザゼルに脅されるって!! うわぁ、腹いてぇ!!

 

 

「よし! これで問題児その一は解決だ! 清々しいほど良い顔で笑ってる所を悪いが話を聞けよ? お前も関係あるからな。何故対テロリスト用のチームが必要になったかを説明するとだな……ぶっちゃけると神や魔王レベルの奴らを戦場に出せねぇからだ。なんだかんだ言っても俺達三大勢力も他の神話勢力も「魔王」や「神」として信仰されてるからな、それを失った時の被害が尋常じゃねぇんだ……だからこそ戦場に向かおうとすれば引き留められるし軽い怪我でも即撤退になっちまう」

 

「……つまり身動きがとりやすい部隊が必要という事ですね」

 

「そうだ。俺達も若いお前達ばかりに負担をかけたくはねぇが……頼む! 危険だというのは重々承知している! 一瞬の判断が死を招くというのも分かっている! だが平和のため……いや楽しい明日を拝むためにも力を貸してほしい!」

 

 

 アザゼルが俺達全員に頭を下げた。まぁ、簡単に言うと三大勢力及び他勢力のパシリになれって事か……うわぁ、めんどくせぇ。

 

 

「アザゼル、そんなの頼まれなくても私達で良いなら協力するわ。勿論、死ぬかもしれないというのも分かっているわ……でも誰かがやらないとダメで被害が少なくなるなら喜んで戦うわ。皆も、良いかしら?」

 

 

 先輩が背後に並んでいる一誠君達をチラリと見ると強く頷いた。

 

 

「私達も協力します。匙以外は前線に出ることは難しいですが後方支援ならリアスやキマリス君達を超えていると自負しています。皆さんが生きて帰ってこられるように精一杯努力させてもらいます。

 

 

 生徒会長の言葉にシトリー眷属の面々も強く頷き始めた。

 

 

「元より俺はこの拳、戦う事以外は何も出来そうにない。多くの者の笑顔が護られるなら喜んで戦場を駆けよう」

 

 

 流石若手最強、威風堂々の宣言だな。

 

 そこからアガレス眷属、規格外パート2(幾瀬 鳶雄)規格外パート3(ジョーカー)、グリなんとかも協力を宣言する。なんでも天使長ことミカエルから対テロリスト用のチームが結成されることを知らされていたようで元から協力するつもりだったらしい。さてさてヴァーリはというと……かなり嫌そうな表情をしていたがアルビオンの言葉もあって無事……無事か? まぁ、無事という事にしておこう! 何故アルビオンが宿敵であるドライグと協力することを承諾したかというと――仲直りしました! 仲直りしました!! なんと仲直りしました!!! 正直に言わせてもらうと絶句だよ……この場にいる全員が言葉を失ったからな! だっていきなり『俺達』『私達は』『『仲直りしました!』』とか聞かされてみろ……はぁ? とかなるだろどう考えても!

 

 なんでも俺や夜空と会うたびにヒップドラゴンなどと呼ばれ続けた事と冥界中で放送されているおっぱいドラゴン絡みで心が引き裂かれるほどの苦しみを味わい続けたアルビオンは三蔵法師からの助言を実行するしかないと思い立ったそうだ。そして俺達が此処に集まってからずっとドライグと心が癒えるまで語り合っていたようだ……え? そんなんで仲直りして良いの?

 

 

「……あのさ、ドライグ? 本当に良いのか?」

 

『勿論だとも! アルビオンと苦しみを分かち合ったことで理解したのだ! 俺にはアルビオンが必要だとな! 心が軽いぞ相棒! 今ならばおっぱいビームを受けても正気を保っていられそうだ!』

 

「……アルビオン」

 

『何も言うなヴァーリ。長く続いた因縁が終わりを告げただけの事……私にはドライグが必要だったのだ! あぁ、心が軽い! 今まで感じた事がないほど清々しい気分だ! 今ならばクロムやユニアからケツ龍皇と呼ばれても聞き流せるぞ! ドライグ! 今日より手を取り合い、敵を倒そうではないか!』

 

『そうだなアルビオン! 俺達が手を取り合えば倒せない相手などいないのだ! 乳の群れでもや尻の群れでもドンと来いと言うのだ!』

 

『『そう! 絶対に乳と尻には負けないもんねー!』』

 

 

 もう絶句だわ。なんだこの二天龍……てか言わせてほしい! 乳の群れと尻の群れってご褒美じゃないかな?

 

 

「……ここにきて二天龍の和解だと? おいおい、ふざけすぎだろ……まぁ、良い。今代の地双龍も似たようなもんだ、あぁ、そうだ。まだ大丈夫、まだ大丈夫だ……おかしい……シャムハザに総督を譲ったのになんで俺が苦しんでんだ……? いや気のせいだ! 気のせいに決まってる! さぁキマリス!! 答えは分かってるが聞いておこうか! 勿論ハイだよな! ハイだな! 言っておくがハイしかねぇぞ!!」

 

「えっ? ヤダ」

 

 

 なんか別の意味で空気が凍った気がするが気のせいだな!

 

 

「……あの~王様? これって協力する流れだったんじゃないですかねぇ? 皆が分かっていたけどやっぱりあり得ないって感じで見てますけど?」

 

「気のせいだろ。つーかパシリなんざなりたくねぇっての……考えてみろ? テロが起きたら俺達が動く。この辺りは今までと変わらないが今回は別だ。神滅具持ちが複数に二天龍、地双龍の片割れ、天界勢力と混成になってる……つまりだ、仮に失敗したとしようか……安全な場所で酒飲みながら観戦してる奴らからこう言われる可能性があるんだぞ――これだけいてなぜ失敗するんだ間抜け共ってな」

 

「いや、まぁ……言われるでしょうね」

 

「だろ? テロに間に合わなかったら俺達の責任、失敗しても俺達の責任。自分達は戦わないのにあーだこーだと文句を言ったり酷評したりするんだぞ……ガキを戦場に送り出して長生きしてる自分達は安全圏で観戦だ、何が起きてもそれは俺達が悪いと言われる可能性があるってのになんでそんなめんどくせー事をしないとダメなんだよ。もっとも、俺達には関係無いだろ? リゼちゃんが異世界行こうがアポプス達が暴れようがアイツらがやりたい事をやってるだけなのになーんで防がなきゃダメなんだよ。ついでに言うぞ……戦いもしないで護ってもらえると思ってる奴らのために戦うなんざ死んでもごめんだ」

 

「……予想通りの返答をありがとよ。それに関しては全責任は俺やサーゼクス、ミカエルが持つ。お前達に被害はいかないから安心しろ……と言っても納得はしないよな」

 

「当然だ。何年、悪魔の醜い部分を見てきたと思ってやがる? 俺達の中で気にくわない奴が居たら問答無用で責任を押し付けるのが悪魔だろうが。まぁ、殆どは俺だろうけどな。今まで好き勝手にやってきた分、その辺りは心得てるよ。あとアザゼル? もし俺がここで良いぜ協力してやるよとか言ったらどうしてた?」

 

「そんなの決まってるだろ……熱でもあるんじゃないかとか裏があるんじゃないかって思ったな。恐らく、誰もが同じように思えるだろう……我が道を行く影龍王が何の見返りもなく協力しているのはおかしいと」

 

 

 そりゃそうだ……なんて言ったって自分勝手な俺が正義の味方っぽい事をし始めたら世界が驚愕するはずだ。夜空にすらお前頭大丈夫かって言われるぞ……アザゼルが言うには他にも対テロリスト部隊を結成して俺達だけが動くことが無いようにするとは言っているが正直、足手まといだろ。俺以外の最上級悪魔の中でまともに戦えるのって魔獣騒動でダメージを与えていたディハウザー・ベリアルぐらいだろうしな……多分だがラードゥンの結界を破ることなくグレンデルに殺されるね! 邪龍を舐めてるんなら何十回か死んどけって話だ。

 

 つまりどう考えても俺達が動く羽目になる……神すら殺せる神滅具持ちが複数に四季音姉、ヴァーリの所に居る聖王剣、バロールが宿ったハーフ吸血鬼に元士郎と一つの部隊が持つには過剰過ぎる戦力だ。上層部も喜んで戦場に送り出す事だろう……自分達の安全を守るためにな。マジで死ねばいいのに。

 

 

「だから()の答えは嫌だ、という事になる。いやーざんねんだなー見返りがあれば動くんだけどなー」

 

 

 チラリと背後にいるとある人物を見る。そいつは俺の意図に気づいたのか眩しいほどの笑顔になり、一瞬で真剣なものへと変えた。他の面々――まぁ、アザゼルとヴァーリ、規格外パート2と3、そして先輩に生徒会長も何かを察したのか地味に笑みを浮かべている。あとついでに背後にいる犬月とか橘とか水無瀬とかもな……うーん、分かりやすかったかねぇ?

 

 

「――キマリス様」

 

「ん? どうしたレイチェル?」

 

「つまり、見返りがあれば動いてくださるという事で間違いないですわね?」

 

「当たり前だ。ドラゴンだぜ? ファブニールみたいに対価でも貰わないと動くわけねぇだろ……そもそも俺自身が好き勝手に生きてるしな。それぐらいはしてもらわないとやる気が落ちるってもんだ」

 

「分かりましたわ……ではキマリス様と契約しているこの私、レイチェル・フェニックスの名においてキマリス様及びその眷属の皆さんには対テロリストチームへの参加をしてもらいます。勿論対価として……その、わ、わたく、私の……わ、腋を好きにしても構いませんわ!!」

 

 

 その時、俺の心の中に何かが突き刺さった。腋を好きにしても良い……腋を好きにしても良い! なんだその素敵な言葉は! スゲェな日本語! そんな心が踊って胸が熱くなるような素敵な単語があるのかよ! 半分とはいえ日本人として生まれてよかったぁ!! 待て待て……好きにしても良いとは言ったがどこからどこまでというのはまだ分からないから確認しなければならない……あぁ、これは大事な契約で俺が貰う対価だからそこは真剣にならないとダメだろう。真剣にならねばならないだろう! 何度も言おう! 真剣になっても良いだろう!! よしそうなれば善は急げで確認しなければ! 平家辺りから死ねばいいのにとか言いそうな視線を感じるが無視だ無視!

 

 

「……レイチェル、確認なんだがその好きにしても良いって言うのはNGが無いと思っていいんだな?」

 

「も、勿論、で、すわ! このレイチェル・フェニックス! 女に二言はありません!」

 

 

 いつものお姫様服に身を包んでいるからかたゆんとおっぱいが揺れる。素晴らしい! 若干引き気味ではあるがドヤ顔も可愛い! 流石お姫様!

 

 

「つまり運動した後の蒸れた腋の匂いをかがせてほしいとか汗を舐めさせてほしいとか言っても断らないんだな? 断らないですよね!」

 

「……も、ちろん、です……わ」

 

「擦りつけたり挟んだり、夜のオカズとして写真撮らせてくれたりしても良いですか!」

 

「まてぇぇっ!? お前、お前!! 何言ってんだこんな場所で!? レイヴェルだっているんだぞ!?」

 

「うるせぇ! 俺にとっては死活問題なんだよ!! 夜空がしてくれるんなら対価無しで参加してやるがいない以上は仕方ねぇだろ!! 腋を好きにしても良いって言われたんだぞ! テンション上がるだろうが!」

 

「分かる! 分かるが少しは我慢しろよ! 周りの視線が分かんねぇのか!?」

 

「知るか! 男には必要な事だ! じゃぁ聞くがもし先輩がお前に向かって自分のおっぱいを好きにしても良いと言ってきたらどうする!」

 

「決まってるだろ……テンション上がるわ!! 吸うし突くし揉むわ!」

 

「それと一緒だ! 大事な事なんだよこれは……! 俺としてもグレンデルやラードゥンがキマリス領に現れた際に母さんが転んだって聞いてあぁ、これはもうサッサと殺すか的な感じの事を考えてたけどな! ぶっちゃけ俺が簡単に動くと裏があるだの何か目的があるだのと言われっから仕方なく……仕方なくこんなめんどくせぇことをしてんだよ! だから何も言うな! 大事な事だ! 決してレイチェルの腋ペロペロしたいとか腋の匂いを嗅ぎたいとか思ってるけどそれを表に出さずに対価としてもらおうと頑張ってんだ! 金髪ツインテお姫様の腋だぞ!? 最高だろうが! それが分かったら黙ってろ一誠!」

 

「黒井! 隠してないぞ! 言ってる! 自分で言ってるし暴露してる!!」

 

「気のせいだ!」

 

「そうか!!」

 

 

 あぁ、そうだ。俺は何も言ってないし何も思ってない。レイチェルが自分の腋を好きにしても良いと言ってくれたことにテンションが上がっただけだ……何も間違ってはいない。ぶっちゃけ平家の腋を使ってのオナニーとかなんかマンネリ化してきたしそろそろ新しい刺激が欲しいとも思ってない。いやでも平家の腋って夜空と比べるとかなり下だがそれでも最高なんだよぁ……! 何度お世話になった事か。いやしかし此処は心を鬼にして、邪龍として対価はきっちりと貰わないとはダメだろう。しかしなんでだろうなぁ~女性陣からの視線が痛い気がする。なんかこう、気持ち悪い犯罪者を見るような感じだな! やめろよ……ゾクゾクするじゃねぇか! これが夜空だったらもう、ヤバいね!

 

 

「――キマリス様のお好きに、しても構いません」

 

 

 ……ふぅ。

 

 

「よしアザゼル! 一緒に世界のために頑張ろうぜ!」

 

「……リアス、俺は少し休む。どう考えてもキマリスは参加しないだろうと思って色々と説得案を考えてきたってのに腋、腋を対価に参加だと……俺も男だ、キマリスの趣味も把握してたがマジでそれをするとは思わねぇよ……このためだけに寝ずに考えたってのに二天龍の和解とキマリスのチーム参加だと? 夢か。あぁ、夢かぁ。なんだこの夢は……無茶苦茶すぎるぞ」

 

「気持ちは分かるけど倒れないで頂戴。貴方が倒れると誰がキマリス君を止めるのよ……」

 

 

 きっと夜空だったら止められると思いますよ?

 

 

「と、まぁ冗談のような本気は置いておいてだ。参加にあたっていくつか条件がある」

 

「……聞こう」

 

「一つ、俺達は自分の意思とレイチェルの指示で動く。まぁ、これは確定事項だ。アザゼルや魔王、天使長や冥界上層部、他勢力のトップに参加チームのメンバーの指示なんざ絶対に受けない。契約者のレイチェルの判断とその指示しか受け付けない。二つ、レイチェルの命令しか動かないと言って彼女に危害を加えて無理やり命令させない事。まぁ、これも確定事項だ。あー勿論、レイチェルだけじゃねぇぞ? レイヴェルやライザー、つまりフェニックス家に対して危害を加えるな。三つ、キマリス領の奴らにも危害を加えない。他にも後々増やすだろうがこれだけは言っておく――もしレイチェルやレイヴェルといった面々に危害を加えてみろ。殺すぞ」

 

 

 この場にいる全員に殺気を放つ。冗談抜きで殺すと分かるぐらいの濃さをはなっているからか何人かは冷や汗をかいたり息をするのが難しくなってるみたいだ。まぁ、関係無いけどね。誰であろうと危害を加えるなら殺すだけだ……冥界が滅ぼうと、天界が消滅しようと、他勢力が消え去ったとしても俺には関係ない。俺の楽しみの邪魔をするなら神だろうと魔王だろうと関係無く殺す。勿論、夜空に手を出したなら――世界を滅ぼそうか。

 

 

「――分かった。お前達キマリス眷属はレイチェル・フェニックスの判断と自分達の判断で動く。邪龍らしく好きに暴れろ。そっちの方がこっちも助かる」

 

「了解。んじゃ、契約成立って事で……あーそうそう、マジで俺の邪魔するなら殺すから精々気を付けておけよ?」

 

 

 それを言い残して犬月達を連れて自宅へと帰る。何故かってそんなもん決まってるだろ……レイチェルの腋を拝むためだよ! ぶっちゃけ一緒に風呂入る時に見てるけどそれはそれ、これはこれだ。自分の意思で腕を上げ、腋を晒すという恥ずかしい状態が見られるんなら正義の味方ごっこでもやってやるさ。まっ、母さんが転んだ云々は事実で殺そうと思ってたのも事実だ。でもアイツらのお陰で犬月達の特訓相手には困らなくなったから一応我慢してたけど……うーん、今にしてみればあいつらのせいで夜空との触れ合いが減った気がする。よし殺そう。決して夜空と一緒に居られることに嫉妬してるわけじゃない、嫉妬してますのでどうか夜空様! 一緒に殺し合いをしませんか!

 

 とか思いつつレイチェルに対価を貰おうとするとすっごく可愛い笑顔の橘とこれまた素晴らしいほど良い笑顔の水無瀬、そして何故かグーパーと握っては開いてを繰り返している目が笑っていない四季音姉の面々に正座しろと言われた。どうやらレイチェルの気持ちを考えろとか公衆の面前で色々と言い過ぎですとかいい加減にしろということらしい……畜生! 自分の欲望を隠してたはずなのになぜバレたし……! 結局、説教のせいでレイチェルの腋を見たり舐めたり匂いを嗅いだりできなかったのは普通にショックだ。

 

 

「――悪い、遅くなった」

 

 

 対テロリストチーム参加を表明してから数日後、俺は四季音姉妹を引き連れて再び鬼の里へとやってきていた。前と同じように山道を進み、古い町並みを通ってデカい屋敷へと来たがグレンデル達が暴れたせいで結構酷い事になっていた。でも鬼達は文句を言っている感じではなく、討伐された邪龍と戦えたって事で逆に喜んでいるのを見てちょっとだけ好感度が上がったのは内緒な?

 

 とまぁ、そんな事は置いておいて広間へと到着した俺の前には鬼の頭領こと寧音と側近の芹、京都妖怪の長こと八坂の姫と九重、そして東の大将ことぬらりひょんと言った面々が座っていた。いきなり呼び出されてみれば大妖怪がお待ちかねとか……何かしたっけ? ぶっちゃけ心当たりが多すぎてどれが原因か分かんねぇぞ?

 

 

「構わないさ。そっちだって色々と大変なんだろう? 邪龍と殺し合ったり対テロのチーム参加だのってさ。かっかっか! 相変わらずやることが豪快だねぇ? 影龍の」

 

「……なんだ、耳が早いな?」

 

「これでも京都妖怪の長じゃ、その手の事はすぐに耳に入る故に気にする出ない。影龍王はわらわ達京都妖怪でも注目の的じゃ、行動一つが士気に関わるほどにのぉ」

 

「うむ! 邪龍達と戦うと聞いて皆、気合を入れなおしておったぞ! 勿論、私もじゃ!」

 

 

 京都妖怪の士気に関わるってどんだけ俺の事注目してんだよ……てか九重、俺の膝に座り始めたがおかしいな? 修学旅行で拳一発叩き込んだ相手だぞ……? 警戒することはあっても懐くことはしないと思うんだが? しかし尻尾がもふもふで気持ちいいなおい! いや、モフることはしてもそれ以上は何もしねぇよ……だからその人を殺しそうな視線はやめろ。これだから少女趣味は……!

 

 

「さてと、今回は俺の呼び出しに応じてくれてありがとよ八坂に寧音に坊主。こっちのゴタゴタが解決したんでな、さっさとことを進めたくてよぉ」

 

「構わないさ、東の御大将がしようとしたことは既にこっちもやる気だったしねぇ。八坂の姉さんとも何時しようかって話してたぐらいさ」

 

「ほっほっほ。配下の者達からもまだかまだかと急かされてのぉ。今回の申し出はわらわとしてもありがたいことよ」

 

 

 うわぁ、目の前に居る奴らが笑顔になりやがった。帰りてぇ……絶対にめんどくさい奴だよこれ!

 

 

「……何企んでやがる?」

 

「カッカッカ! そっちにとっても損はさせねぇってのは約束してやらぁ。坊主、俺達東の妖怪は三大勢力と同盟を組むことにした。年寄りには期待しちゃいねぇが今の若い奴らは気合と根性がある。良い目だ、だったらあーだこーだと古いことに固執するのをやめてやらぁってな。どーせ俺の方も次の大将に座を譲ることになるんだ、今の内から若い奴がやりやすいようにしとくってのも悪かねぇと思ってよ」

 

「まぁ、そっちがそれで良いなら良いんじゃねぇか? ただおすすめはしねぇぞ? なんてったって俺が居る勢力だぜ? 同盟結んだ途端に色々と口出ししてくるぞ?」

 

「そうなったら戦争するだけってな! テメェみてぇに分かりやすい奴らなら喜ぶんだがよ、無駄に年取ると悪知恵が付いちまう。なに、殺し合いになったら楽しませてもらうさ。でだ……こっからが本題よ」

 

 

 東の大将、ぬらりひょんがどこからともなく床にあるものを置いた。それは酒のような瓶と盃だ……ん? なんか嫌な予感がするのは気のせいか? 寧音や芹、八坂の姫もニヤニヤしてるし絶対に嫌な予感がする!

 

 

「――影龍王、いやノワール・キマリス。俺と盃をかわしちゃくれねぇか?」

 

「――は?」

 

 

 このジジイ頭大丈夫か? とうとうボケやがったか……平家の奴! 一体何しやがった!? 頭でも殴ったか!? あんの引きこもり……! 自分が構ってもらえないからってここまでするか! よし、帰ったら虐めてやろう。なんかご褒美になりそうだがとりあえずモフッとこう。

 

 

「生憎だが本気だぜぇ? 隠さず言おう、俺達東の勢力はお前の力が欲しい。引き抜けるんならさっさと引き抜きてぇぐらいにな。まだ若いが俺の目から見てもこっから先、まだまだ伸びる。今の状況に満足してるって目じゃねぇしよ。だから先行投資って奴だ……こっちの力をテメェにやる、だからテメェの力をこの老いぼれにくれねぇかい?」

 

「……たった十数年生きた程度のガキと盃を交わすってのがどれだけ馬鹿な事か分かってんか?」

 

「知ってらぁんなこと。だが知るか。言っただろぉ? 古いことに固執しねえってよ。これがその第一歩って奴だ! それにな、盃を交わしてくれりゃこっちとしても大助かりってもんよ。テメェの逆鱗ってのに触れる事が出来なくなるからこっちの安全は保障される。邪龍ってのは契約には敏感なんだろ? だったらそれだ。お前の力が欲しいからこっちの力をやる。どうだ、受けてはくれねぇかい?」

 

「影龍王、わらわとも盃を交わしてはもらえんだろうか? わらわを含めた京都妖怪、その全ての力を託そう。代わり影龍王の力を貰いたいのじゃ」

 

「こっちも姉さん方と同じさ。かっかっか! 影龍のと一緒に居ると楽しめそうだしねぇ! それにだ、うちの娘と結婚するなら遅かれ早かれこうなったんだ、それが未来なんかじゃなく今になっただけのことさね。私ら鬼も影龍王の力が、アンタ自身の力が欲しいんだ。受けてくれないかい?」

 

 

 うーん帰りたい。帰ってオナニーしたい。なんだこの状況……なんで大将の地位にいる奴らが一斉に盃を交わそうとか言ってくるの? そもそも俺個人はあんまり強くないぞ? なんせ殆どが相棒の力頼りだしな! 神滅具が無くなったら非力な混血悪魔になるってが分かってんのかねぇ? よし、四季音姉。どうすればこの場を切り抜けられ……うわぁ、さっさと受けろって顔してやがる。今までで一番可愛らしい笑顔じゃねぇか……流石鬼、チャンスは逃がさいってか? その隣にいる四季音妹の分かってるのか分かってないのか分からない微妙な表情だけが癒しだよ!

 

 

『宿主様、受けようぜ』

 

「……相棒?」

 

『良いか宿主様、お前は弱く何かねぇ! この俺様が息子って思ってる奴が弱いわけねぇだろうが! 俺様がここまで来れたのは俺様が強いからじゃねぇ……宿主様、お前が居たからだ! もし別の奴だったら俺様は今も誰かを護りたいって思いを探してただろうさ! 宿主様だったからこそ答えを得られたんだ! 誇れ! 胸を張れ! 俺様の力は宿主様のものだ! ()達は一心同体、どっちも欠けちゃならねぇんだよ! ゼハハハハハハハハハハ! こうして妖怪の長から盃を交わせと言われるなんざ初めてだ! 男だろ宿主様よぉ! 良い女が! うさんくせぇジジイが力を寄こせって正面から言ってんだ! ここで受けずに何が影龍王……いや何が覇王だ!!』

 

「……はぁ、後悔するなよ? 数十年後には世界を滅ぼすかもしれない超危険人物だぜ? それでも良いのか?」

 

 

 俺の問いにお三方は笑いながら頷いた。あぁ、クソが……正面から言われたら受けないとダメだろ悪魔的に! しょうがねぇなぁ! もうっ!

 

 

「影龍王、キマリス家次期当主ノワール・キマリス。その申し出を受けさせてもらおう。ただこれだけは言わせてもらうぜ? 俺の楽しみの邪魔をしたらたとえお前らでも殺すからな!」

 

 

 この日、俺は妖怪勢力と盃を交わした。




これで「影龍王とぬらりひょん」編の終了です。

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