97話~覚妖怪のデートな一日~
「突然ですが勉強会をしましょう」
夕飯を食べ終えていつもの様にソファーに座ったノワールに膝枕をしてもらいながらゲームをしていると恵が意味不明な事を言い出した。今、リビングに居るのはノワール、パシリ、花恋、志保、恵、祈里、グラム、お姫様、そして私。赤龍帝の所には白龍皇のお仲間やオーフィスが居候してるっぽいけど今のところはこっちに来るような気配はない。というよりも来させない。特にあの黒歌という猫妖怪はノワールの近くに絶対に来させないと覚妖怪として誓っても良いぐらいダメ。ノー。ダメ絶対。何が何でも絶対にノー。
手元にあるスマホを操作して課金したことにより潤沢となった石でガチャを引きながら周りを見渡してみる。ノワールは「何言ってんだコイツ……?」と本気で恵を心配、パシリは「あぁ、そう言えばもうすぐ期末テストか」と思い出し、花恋と祈里は横になってるから表情は分からないけど「さおりん……相変わらず羨ましいねぇ。も、もっとせ、攻めた方が良いのか、な?」とか「伊吹、何か考え事してる」と無関係だからか別の事を思ってるみたい。
というよりも恵の発言を真面目に聞いているのってパシリと志保とお姫様だけだね。ノワールの隣に座っているグラムは「ベンキョウカイ、知らんが我らには関係のない事か」と私のスマホをガン見してるもんね。伝説の魔剣をオタク道に溺れさせた私の手腕を誉めてほしい。今では立派なエロゲーマーだし。あっ、ノワールが「やっぱり褐色肌のちっぱいってエロイな」ってグラムの胸見てる……確かに冬だというのにタンクトップ姿で前かがみになってるからおっぱいが見えるのは仕方がない。でもイラってするのは乙女心としてとーぜんだからとりあえず死ねばいいのにって視線を向けておこう。
「平家? なんだよその視線は?」
「グラムのおっぱいをガン見してる変態を見てるだけだよ」
「いや見るだろ? 褐色肌でノーブラのちっぱいとか見えるんなら見るだろ普通?」
「変態」
「常日頃から変態行為をしてくるお前が言うな」
それはノワールを誘惑してるだけだからセーフセーフ。
「……ノワール君、早織。聞いているんですか? もうすぐ期末テストです。ただでさえテロとかで忙しくて勉強できていないんですから今回ぐらいは真面目に勉強してください」
「ヤダ」
「恵、メンドクサイ」
ノワールとほぼ同時に返答する。だって期末テストなんて教科書を丸暗記と担当教師の性格を把握して出題される問題を逆算すれば満点取れるしする必要がない。もっとも学校じゃ病弱設定の私が毎回満点を取ると周りからメンドクサイ視線とかを浴びるから手を抜いてるけど。
――病弱だからってあの子だけ簡単な問題を出したんじゃないの?
――どうせ彼氏に教えてもらったんでしょ?
――何あの態度? 簡単に高得点取ったからってこっちを見下しすぎでしょ。
うん、思い返してみれば手を抜いたところであんまり意味無かったね。クラスの男子は美少女ばっかり転校してくるから今日は誰でオナニーしようかとか考えるし女子は女子で妬みの感情を露わにしてるしさっさと卒業したい。あっ、でももう二学期が終わって三学期に入るってことはノワールは三年生に進級するってことになるね……この男、なんだかんだで成績上位組に入ってるから留年とかしないからこのまま行くと私が三年になったらノワール抜きで過ごさなきゃいけないのか。考えただけでも吐き気がするね。無理無理、予想だけどノワールが居なくなってから下心丸出して近づいてくる連中が増えそう。お姫様とか大丈夫かな? 別に変な男に騙されて処女失っても私は関係無いからどーでも良いけど。まぁ、そうなったらその連中と親兄弟親戚までノワールの手によって虐殺されるだろうけどね。この男、隠してるけどツンデレだし。なんだかんだでお姫様の事を大事にしてるし。まぁ、これは私たち全員に言える事なんだけども。
「言うと思いました……コホン、良いですか? 確かにノワール君も早織も成績は良いです。でも少しは真面目に学生をしても良いと思うんですよ! はい! もし点数が悪ければしばらく夕飯は手を抜きますので!」
「恵、前もそれを言ってノワールに全教科満点取られたの忘れたの?」
忘れてませんと返答した恵だけど覚妖怪に隠し事は出来ないよ? 最近、ノワールとイチャイチャもどきが出来ないから勉強会をしようとか言ったんでしょ? これで乗ってくれればまた虐めてもらえるとか考えてるし。でも私は空気の読める覚妖怪だからこれは黙っておこう。
「うぅ……し、仕方ないんです! こうでも言わないと二人は勉強しないんですから! 一応聞きますけどちゃんと勉強してましたか?」
「するわけねぇだろ。エロゲーやら色々と忙しかったしな」
「同じく積みゲー崩しで忙しいでござる。アプリゲーのイベントで忙しいでござる」
「……ですよね」
「あのぉ、水無瀬せんせー? 王様は兎も角、この引きこもりが真面目に勉強なんてするわけないですよ。あっ! 俺は一応勉強してるっすよ! 赤点で補習とか嫌っすからね!」
「私も歌のレッスンとかで忙しかったですけどちゃんと勉強はしてるので安心してください! 悪魔さん? 志保、分からないところがあるので良ければ教えて欲しいな♪」
嘘つき。ちゃんと勉強してるから分からないところなんて無いのにノワールと二人きりになりたいと思ってるだけじゃん。何処で仕入れたか分からないけど縦セタとかおっぱいを強調する部屋着で恥ずかしくないの? 別に肩こりしたくないから巨乳にはなりたくないけど色々と大変だね。学校の男子達が今も必死にオナニーのオカズにしてるよきっと。あともうすぐクリスマスだからそれも合わせて大変だと思うけど頑張ってね。どーでもいいけど。そして縦セタ最高だなとか思ってるこの変態をどうすれば良いんだろうか? あっ、SSR来た。
「そ、そのキマリス様。私も不安な所があるのでわた、わたく、私にも教えてもらえるとありがたいですわ……? いえ、お忙しいのは重々と承知しているのですが……ダメ、でしょうか?」
ガッデム、こっちも一緒に勉強して二人きりを狙ってた。しかもこのお姫様……私のポジションであるノワールの膝の上を狙ってるよ。赤点取って補習受ければ良いのに。指さして笑ってあげるから。あっ、またSSR来た。しかも今回実装された奴だ。いえーいあいむうぃーん。あとで掲示板で持ってない奴ら相手に煽ろうっと。
「アッ! オレハヒトリデベンキョースルンデダイジョウブッス! ハイ!」
このパシリ、志保とお姫様の気迫っぽい邪念というか欲望に恐れをなして逃げた。これだから童貞は困るんだよ。パシリなら頑張って阻止ぐらいすればいいのに。あっ、コモン。ちっ、これだからパシリは困るんだよ。
「ほ、ほらノワール君! 三人とも真面目に勉強してるんですから今回も勉強しましょう! 勉強しましょう!」
「……別に良いがテストなんざ教科書丸暗記すれば高等点とれるだろ? 駒王学園の教師は真面目しか居ないから下手なひっかけとか出さねぇしな」
「そもそも授業を真面目に聞いて教科書を丸暗記すれば平均点以上は取れるよ」
「……それが出来るのって極一部っすよね?」
そうだよ。何を当たり前な事を言ってるんだろうかこのパシリは。これだから童貞は困るんだよ。
「だろうな。まっ、偶には真面目にやるか。さて水無瀬……もし俺達の点数が良かったら何をしてくれるんですかねぇ? 言っておくがこの前のように駒王学園の制服を着て写真撮影ってレベルじゃ話にならないぞ?」
一瞬で恵の脳内がピンク色に染まったでござる。やだ、ちょっと濡れてきた……いくらなんでも直球過ぎない? とりあえず後でノワールの匂いを嗅ぎながらオナニーしよっと。勿論洗濯物とかお約束な物じゃなくて本人の匂いを嗅ぎながらだ。いつか光龍妃に殺されるんじゃないかなーとは思うけどこればっかりはしょーがない。いい加減さっさと童貞捨ててくれれば気兼ねなくエッチ出来るのに。手とか腋とか髪とかふとももとか下着でコスるとか色々やってるけどそろそろノワールの
若干ムラムラしながらガチャをしているとメールが届いた。もっとも個人的なメールじゃなくてゲーム内のだけど。送り主はこのゲームを始めた時から……いや他のゲームでも常に一緒に遊んでいるフレンドだった。多分職業はニートなんだろうね。だってあり得ないぐらいゲームやってるし。
「――うそ」
どうせまたこのゲームが面白いとか言ってくるんだろうなぁ、という程度の事を思いながらメールを開くと驚くべきことが書かれていた。うそ、ほんとうに? 冗談だったら悪魔パワーで住所氏名年齢から職業、家族構成まで調べるよ? ノワールが管理している土地に住んでるホームレス達にも協力させてでも必ず突き止めて見せる。よし、明日は運良く休日だから問題無し。いえーい。
「ノワール」
「あん? どした?」
「デートしよう」
空気が凍った。先ほどまで和気藹々と話をしていたはずなのに全員無言になった。いきなり何を言ってるんだろうこの子は的な感じの事が全員から……いや祈里とグラム以外から感じ取れるけどそんなのはどーでも良い。重要な事じゃないし。そもそも重要なものはお店にあるんだもんしょーがない。
「ノワール、デートしよう。逢引しよう。肉欲に溺れよう」
「いきなり何言ってんだお前? ヤダ、めんどくせぇ、てかなんでお前とデートしないとダメなんだよ?」
「外に買い物がある。だから付き合って。あと彼氏彼女の仲になろう?」
「後者はお断りだ。お前が彼女とか自殺したく……いってぇなおい! 横っ腹抓るなっての。はいはい、外に買い物ねぇ? んなのいつもみたいに通販で買えばいいだろうが」
「出来るんならとっくの昔にやってるよ。でも残念な事にお店でしか売ってないから買いに行きたい。デートしよう? 前に花恋としてたんだから私ともデート希望なう」
「何時の話してんだお前……いや自発的に外に出たいって言ったことを褒めるべきか? まぁ、良いか。だが寒いか買い物終わったら即効で帰るが良いな」
「問題無し。しかもこれはノワールにも関係ある――女神の血液シリーズの新作が店に並んだんだって」
「よし行くぞ」
「がってん」
これを言えば確実にデートできると思ってた。ありがとう顔も知らないニートのフレンド。お陰でノワールとデートできるよ……さてと、花恋とか恵とか志保とかお姫様とかから嫉妬の感情が飛んできてるけど負け犬には用が無いから勝ち誇っておこう。悔しかったらエロゲーしてから出直して来ればいいよ。それよりも運が良いね、だって今回発売される「女神の血液~ゴエティア大戦編~」の初回限定版は完全少数生産で予約しても運が悪かったら買えないものだったし。なんでも特典に歴代シリーズに登場したキャラの新規イラスト及び新規エロシーン、さらにさらに初回限定版を買った人限定で過去作キャラを使用できるという超豪華な一品。だから発売が決定した時は荒れたね、大荒れだったよ。それでもなお押し通したメーカーって凄いと思う。私もノワールもこの作品をやりこんでるから発売したら買おうみたいなことを言ってたけど残念な事に地双龍パワーをもってしても抽選に当たる事が出来なかった。勿論私も抽選が外れた一人なう。
ノワールと一緒に部屋に戻ろうとすると恵から「ちゃ、ちゃんと勉強はしてくださいね!」と言われたので「勉強はするよ、ただし保健体育だけど」と返答しながら勝者の笑みを浮かべておいた。悔しがってたのは志保とお姫様の二人で花恋は流石さおりんと褒めてた。もっと褒めても良いんだよ?
そこからはノワールの部屋でノワールの匂いをオカズにオナニーした後、そのままベッドでばたんきゅー。何故かついていたグラムも合わせて三人で川の字……なんだけど魔剣だからか基本的に近くに居られると悪夢見る確率が高いから出来れば志保かお姫様の所に行って欲しいのは内緒。
「――寒い、引きこもりたい」
「テメェが買いに行きたいとか言ったんだろうが……!」
翌朝、朝一で駅まで向かうけど冬の寒さのせいで足が動かない。この時期にスカートなんて基本的に死ねるからズボンだけどそれでも寒い。だからノワールの腕にくっ付いても何も問題はない。大丈夫だ問題無い。うん。きっと光龍妃がどこかで見てるんだろうけどどーでもいい、悔しかったらさっさとノワールとくっ付いてエッチしてほしい。
それはそれとして周りからの視線とかがウザったい今日のこの頃。まぁ、ノワールがイケメンで私も自称したくはないが美少女らしいので仕方ないと言えば仕方がない。だからと言って可愛いけど胸が小さいなぁとか思った奴ら、冬服とかコートとかで隠れてるだけだし。これでも光龍妃よりはあるもん。光龍妃よりはあるもん。何度も言うけど光龍妃の真っ平な壁よりはあるもん。あるもん。
「……んで? 売ってる場所はどこにあるんだよ?」
「フレンドのメールだと此処みたい。どうする? 早めに着くけどどこかでご飯食べる?」
「水無瀬が作った朝飯食う時間が無かったしなぁ。たくっ、魔法陣で転移すれば早いってのに電車で行こうとかいうどっかの覚妖怪のせいで腹減って困るな」
「えっへん」
「無い胸でいば、はいはい……冗談だよ冗談。周りの奴らの声がウザかったら俺の心の声だけに絞れ。良いな?」
「りょーかい」
ホントに困るね。普段は腋好きな変態なのにこんな時だけ優しいんだもん。何度も思うけど覚妖怪相手に自分の心を好きなだけ読んでいいって発言はどうかと思う。私達は好きで心を読んでいるわけじゃない、むしろ読みたくないし聞きたくもない。人間なんて偽善で、自分勝手で、自己中心的で、男は可愛い女の子を見れば勃起しながら下種な事を思い浮かべるし、女は女でドロドロのギッスギッスなエグイことを平然と思い浮かべて実行する生き物の心なんて吐き気がする。普通だったら思ってる事を聞かれることは嫌悪されるはずなのにこの男は例外だ……頭がおかしい。というよりも志保とかなんであんなに人間関係を円滑に出来るんだろうね? 周りにいる男たちはおっぱいガン見してるし下種なこと考えてるのに。私だったら無理。普通に無理。ノワールが学校に居なかったらガチの引きこもりになってるぐらい無理。
すれ違う一般人の心を読まないようにノワールの心だけ耳にして腕に強くしがみ付く。傍から見ればカップルが朝からイチャついているに見えるだろう……さっさとコーヒーでも飲めばいいよ。ざまーみろ。
「……狭い」
「我慢しろっての。朝一で行くのは良いがこれの事をすっかり忘れてたぜ……っ、おい、大丈夫だな?」
「問題無い」
駅で切符を買った後、電車に乗ったは良いけど出勤ラッシュと言われるものと遭遇した。そのせいで電車内はギューギュー、人が多すぎて逆に熱くなってくるぐらいこの電車内の気温は高いと思う。普通だったら魔法陣で転移、はいしゅーりょーとなるけど折角のノワールとデートだからそれっぽいことしたかったのにこの様だよ。でもまぁ、うん。偶には良いねこういうのも。
私の目の前にはノワールの顔……というよりも喉? まぁ、胸がある。あまりにも人が多すぎるから乗った瞬間にドアの所に立たされてノワールが護るように両腕をドアとかに置いてる。だからなんでこの男、こんな時だけ紳士的なのか意味分かんない。でも助かってるけど。非常に助かってるけど。ノワールの心を読んでるから普通に分かるけど……私に痴漢とかの被害に合わせたくないとか何事も無いかのように思っているのが本当に意味分かんない。絶句だよ。ついこの間にお義母さんを巻き込んだからって理由で魔法使い達を虐殺した張本人とは思えないほどの紳士っぷりだよ。本当にさ……普段はあんなに変態なのにどーしてこーなった。流石ツンデレ。よっ、ヒロイン体質。とりあえず暇だからノワールの匂いをクンカクンカしておこうっと。あっ、何してんだお前って思ってる。答えてあげましょう、クンカクンカしてます。覚妖怪が良く使うマーキングだよ。
そんなこんなで無事に目的地の駅へと到着。軽く周りの声を聞いてみたけど若干後悔したのは内緒。だってノワールと私の近くに居た連中はあの窮屈さを利用してどうにか触れないかとか考えてたし。これだから男は困るんだよ。死ねばいいのに。
「――で?」
「なにが?」
フレンドから教えられたお店が開店するまでかなり時間があるので近くのジャンクフード店で若干遅めの朝御飯を食べることにした。勿論ノワールの奢りなう。この男、私が奢ってという前に代金払ってたけどなんでこんなに紳士なの? 馬鹿かな? うん、ここ最近の忙しさとかで頭が馬鹿になってるに違いない。流石元お坊ちゃんと言えば良いのかな? お義母さんの教育が行き届いてますねと言ったら怒られそう。
私とノワールは向かい合う様に座る。テーブルには頼んだマフィンとかナゲットとかコーラが置かれている。もぐもぐと食べ始めるとテーブルに肘をついて何か言いたそうな顔をしたノワールが声をかけてきた。
「惚けんな……お前、エロゲー買うだけが目的じゃねぇだろ?」
「エロゲー買いたいだけだよ、と言うのはじょーだん。うん、目的なんてたった一つだよ。最近、ノワールが忙しそうだったから休ませないとっていう乙女心が働いただけだよ」
「アホか、変な気を遣うんじゃねぇよ」
私の事を理解してるノワールだから嘘はつかない。そもそも昨日の時点、私がデートしようって言った辺りから察してたからね。察し良すぎて若干引くんだけど……自慢じゃないけど私って光龍妃や恵達にも負けないぐらい美少女だと思うんだけど普通はデートしようって言ったら警戒しないで喜ぶんと思うんだけど? まぁ、ノワールだから仕方ないけどね。この男、自分と光龍妃と影の龍とお義母さん以外は敵だって本気で思ってるし。過去にお義母さんを殺されかけたせいでそう思う事にしたみたいだけどお義父さん……敵だって思われてるのはなんだか泣けてくるね。
「だって忙しいのは事実でしょ? D×Dに参加したせいでグレモリー、シトリー、バアルと一緒に特訓とか誘われるようになったし妖怪連合がノワールと盃を交わしたってことでそっちからも色々とアプローチが来るようになった。花恋と祈里の二人と婚約とか八坂の姫の娘との婚約とか色々と大変だね。よっ、ハーレム王」
「全部断ってるけどな! ホント、悪魔共と違って回りくどくないから個人的には好みなんだが直球過ぎるだろ……! なんだよ双龍千年計画って! なんで了承した覚えが無いのに鬼の里じゃ四季音姉妹の旦那扱いになってんだよ! 東の大将も近い将来、俺達のところにくるぜぇ~みたいなことを宣言しやがったし! あーもう無理……流石妖怪、肉食系過ぎて泣けてきたぞ」
「ざまぁ」
「犯すぞテメェ……!」
いつでもウェルカムだからドンと来い。
「私を抱いてくれるならいつでもウェルカム」
「はいはい、夜空を抱いた後でなら何時でも抱いてやるよ」
嘘。口ではそんな事を言っても抱く気なんか一切無いくせに……一途って凄いね。一人の女にそこまで惚れ込めるなんて今の時代、中々無いよ。勿論、私もノワール一筋だけど。
コーラを飲みながら目の前に居るノワールを見つめる。私の受け入れてくれた主、私を理解してくれた男の人、私を見てくれる大切な存在。うん……何度も思った事だけど辛いね。私が抱いているこの好意が永遠に叶わないんだもん。私も、恵も、花恋も、志保も、祈里も、お姫様も、ノワールに好意を抱く全ての女はどれだけ好意を伝えても光龍妃に敗北する。相思相愛、どっちも好きだって自覚してるに加えてどっちもその事に気が付いてるのに未だにくっ付くことはないのがムカつく。いい加減さっさとくっ付いてくれないと諦める事が出来ない……まぁ、私は諦めることは死ぬまで無いだろうけど。恋人じゃなくても良い、妻じゃなくても良い、肉便器でも奴隷でも都合のいい女でも何でもいい……ノワールの傍に居られるならそれぐらいで済むなら安いもんだ。ノワールが居るから私は居る、ノワールが居るから私は歩ける、ノワールが居るから私は前に進める、ノワールが居るから戦える、ノワールが居るから頑張れる、ノワールが居るから私は私でいられる。ノワールの声が好き、ノワールの心が好き、ノワールの生き方が好き、ノワールの髪が好き、ノワールの指が好き、ノワールの目が好き、ノワールの足が好き、ノワールの
「ねぇ、ノワール」
「あん?」
「好き」
「……外に出ておかしくなったか?」
「いつも通りだよ。ただ言ってみたくなっただけ」
「そうかよ。はぁ、前々から思ってたがお前、男を見る目が無さ過ぎるぞ?」
「覚妖怪だもん。見る目が無くてとーぜん」
「全世界の覚妖怪に喧嘩売ったなおい……」
覚妖怪なんて基本的にちょろくて重くて病みやすい種族だもん。問題無いよ。
「……お前」
「嫉妬してるよ?」
「何も言ってねぇだろ……平家、お前さ」
「殺すよ。ノワールが殺してほしいって言ったら何が何でも殺して私も死ぬ。ノワールが居ない世界なんて興味無いし、ノワールが世界を滅ぼしたいって言うなら勿論ついていく。それが私……だからノワール、死なないでね?」
「……そんなの俺も知らねぇから適当に祈っておけ」
「そーする」
しょーじき、最初っからムリゲーかつバッドエンドしかないんだけどね。ノワールが光龍妃に勝った場合、光龍妃は死ぬ。あれって多分だけど女王の駒で転生とか無理だもん。だからどう考えてもノワールは一人になる……逆に光龍妃が勝った場合、ノワールは死ぬ。いくらなんでも光龍妃とはいえ死人を生き返らせたりは出来ない……なんだろうね、出来そうと思えてしまうのが規格外として普通なのかな? 愛の力でどっちもなんとかなる? 分かんない。ただ一つだけ言えるのは――どっちかが死んだら世界がヤバいってことだけ。なんてメンドクサイカップルなんだろうね。
そんな事を思いつつ、ご飯を食べ終えて適当に時間を潰してからお店へGO。勿論、学生である私達がエロゲー売り場なんて入ったらメンドクサイ事になるので二十代後半ぐらいに見えるように術を使うのも忘れない。妖怪達から教えてもらった奴だから雑魚だったら欺ける自信はある。実際にぬらりひょんの近くに居た猫又を欺いたからだいじょーぶだと思う。
「――買えたな」
「買えたね」
というわけで目的の品を手に入れたのでもはや外にいる理由は無いので即効でノワールの部屋に転移。恵達は……あぁ、特訓してるんだ。D×Dに入ったからって真面目じゃない? あんなのただのパシリなのにね。まーいーや。今はエロゲーだ、エロゲーなう。
女神の血液。悪魔を主人公に天界に居る清く美しい女神たちを
「あー、基本的には催眠編とかと一緒か。てかキャラ多すぎねぇかおい……? 主要キャラ72人以上ってどういうことだよ」
「頑張ったんだよ」
「そのせいで容量がヤバいけどな。特注の俺のパソコンだったから良いが一般の奴らは容量開けねぇときついぞこれ」
「端末課金すれば良いだけだよ」
「それもそうか」
廃課金勢にとって端末課金は普通だよ。
「さてと、インストールも終わったしやるか。名前は……なんだよその顔?」
「別に。主人公の名前をノワール、側近の名前を光龍妃にしようかとか思ってる変態を見てるだけ」
「悪いか?」
「私の名前にするんだったら嬉しい」
「……勃たなくなるが良い、ってぇなおい! はいはい分かった分かった! 二週目な! 一週目は夜空の名前で進めさせろ!」
「……しゃーない。それで許す」
その言葉を言った後、私はノワールの膝の上に座る。既に部屋着に着替えているから大好きなノワールの匂いがする……大好き。パソコン画面を見ながらノワールに身体を預けているとトンデモナイ事が聞こえてきた。「やっぱりコイツと居ると落ち着くな、ありがとう」という心の声が私の耳に、心に聞こえてきた……流石に驚いたので振り返ってみると「どうした?」と言いたそうなノワールの表情。気のせいかと思ったけど今まで何度も聞いてきた声だから聞き間違うなんて絶対にない。
「……今、落ち着くとかありがとうって思ったでしょ」
「……悪いか」
「……別に」
いえーいあいむうぃーん! 恵に花恋に志保にお姫様が近くに居たらドヤ顔したい。勝った、勝ったね。自分でもちょろすぎだとは思うけどしょーがない。うん、しょーがない。
「結構隠してたつもりなんだぜ? 疲れとかなんかその辺りな……たくっ、簡単に気づきやがって」
「だってノワールは分かりやすいもん。あと私だけじゃなくて花恋と恵も気づいてたよ?」
「……マジか?」
「本当と書いてマジと読むレベルでマジ」
伊達にノワールの眷属初期メンバーを名乗ってないよ。志保に祈里にグラムにパシリ、そしてお姫様はノワールと一緒に居た期間が短いから分かってないだろう。長く居た私達だからこそ分かる事だ。妖怪達の長と盃を交わした事で発生する問題とかD×D――対テロリストチームに参加した事で発生した他眷属との馴れ合い、光龍妃と最近会ってない事による寂しさとかまー色々と大変だったからね。主に他眷属達が調子に乗って一緒に訓練だのなんだのと言ってくることが非常にウザい。自分達だけでやればいいのに。
「……やっぱ、お前らって良い女だよな」
「当たり前だよ」
「それもそうか」
「うん、そうだよ」
その言葉を最後に私もノワールもエロゲーに集中し始める。花恋や恵みたいにキスマークを付けられることは無かったけど……私はこれで良い。後ろから抱きしめてくれるだけで私は嬉しいから。
観覧ありがとうございました!