ハイスクールD×D~地双龍と混血悪魔~   作:木の人

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影龍王と劣等生
98話


「ゼハハハハハハハハハ!! ヴァーリィッ!!」

 

『ShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShadeShade!!!』

 

 

 俺の叫びと音声が周囲に響き渡る。もはやお馴染みとなった能力発動の音声が鳴るたびに通常の鎧を纏った俺の身体から無限ともいえる影が生まれ、そこから真っ黒の人形が産声を上げるかのように目の前に居る敵へと向かって行く。無数の影人形が迫りくる光景を目にした敵――ヴァーリは取り乱すことなく自らの背から生える光翼を広げ、音声を鳴り響かせる。

 

 

『Half Dimension!!!』

 

 

 ヴァーリの周囲の空間が歪む。俺が生み出した影人形がヴァーリへと近づくごとにドンドン小さくなっていき……まるで最初から無かったかのように消滅する。ちっ、やっぱり反則過ぎるだろ……! 殺し合ってから数十分、俺が影人形を生み出してもヴァーリが半減の力を周囲に広げて防がれるしよ! しかも一発でもアイツの拳を受けたら俺自身の力が半減されてアウトとかマジでチートだなおい! あとついでにこれで終わりか? みたいな感じで俺を見てくるからなおさら腹が立ってくる! マジでこの中二病系銀髪イケメン死なねぇかなぁ。

 

 光翼から黒の粒子を放出させながらヴァーリは高速で移動し始める。狙いは勿論俺だ……当然と言えば当然だな。なんせこの場所――地双龍の遊び場(キマリス領)には俺とヴァーリしか居ないからな! きっとどこかで夜空とかグレンデル達も俺達の殺し合いを見てるだろうが今のところは乱入してくる気配が無い。ありがたいと言えばありがたいんだが乱入してきても良いんだぜと思うこの気持ちは何だろうね! まっ、今はそんな余計かどうか分からない事を考えてても仕方がないけど!

 

 

『ヴァーリ、クロムが生み出した影には触れるなよ。一度触れれば力を奪われ、無限の痛みが襲ってくるぞ』

 

「あぁ、分かっているさアルビオン。しかし相変わらず凄いな、防いでもキリがない」

 

『こちらの攻撃は影で防がれ、僅かな隙を見せればその瞬間に影から人形が生まれて向かってくる。パワーで押す戦い方ではなく完全なテクニック主体の戦い方だ。聖槍保有者の曹操と同じにするなよヴァーリ? それはお前が一番分かっているはずだ』

 

「勿論だ。もっとも、一撃を入れればこちらが有利になるのは変わらない。これは影龍王も分かっているだろうけどね」

 

 

 北欧の魔術と波動状に変化させた魔力を飛ばしながら仲良く談笑とは余裕すぎねぇか? まぁ、こっちも攻めきれてねぇから仕方ないんだけどな……なんと言うか俺はこの手のタイプとは相性が悪い気がする。いやヴァーリに関しては能力的な意味でだけどな……俺から攻めようにも白龍皇の反射鎧へと変異してアルビオンが持つ本来の能力「反射」が厄介だし、「半減」も普通に使えるから接近できないのが現状だ。現に俺の影人形のラッシュタイムを目の前で攻撃を放ってくる銀髪イケメン様は拳一つを叩きつけただけで防御が自慢の影人形の腕を吹き飛ばしやがったしな! 多分だが殴った際の発生した威力やら衝撃やらその辺りを全て反射して叩き込んだんだろう……うわぁ、ムリゲーだろ。今は昔の俺のように「両腕の籠手部分」に触れなければ発動できないっぽいが完全開放されたなら恐らく……誰もヴァーリにダメージは与えられないだろう。

 

 脳内で不敵に笑いながらカッコつけているヴァーリが浮かんだのでイライラを発散するように影人形を生み出す。半減領域で防がれるならそれを上回ればいい、攻撃を反射されるんなら反射されない物量で攻めれば良い。自分の事は自分が良く知ってる……馬鹿だからこそ正直にやるだけだ!!

 

 

「おいおいこんなもんかよ! 天下の白龍皇様がこんな低レベルな攻撃ばっかとか舐めてんのか!? 俺の防御を突破したかったら夜空並みの攻撃力で来やがれ!」

 

『ゼハハハハハハハハハハハッ! ヒップドラゴンごときが俺様に勝てる気でいるとは笑いもんだ! 良いぜ、来いよ! 反射の力が十分に発揮できねぇ雑魚龍皇ちゃん! 俺様達が与える痛みでその余裕をぶっ壊してやるからよぉ!』

 

 

 ヴァーリから放たれる攻撃を影人形のラッシュタイムで防ぎつつ、力を奪う。そのまま生み出した影人形の群れをヴァーリへと向かわせるが先ほどと同じように『Half Dimension!!』という音声と共に半減領域を使われて影人形達が同時に小さくなっていく……が関係ねぇ! 防げるもんならドンドン防いでみろってんだ! テメェの弱点なんざ相棒からとっくの昔に聞いてるからなぁ! ゼハハハハハハハハ! 俺の影人形生成を甘く見るんじゃねぇ!

 

 

『ッ! ヴァーリ。その技はしばらく使うな、オーバーロードするぞ!』

 

「……すまないアルビオン、俺の力がまだ足りないようだ」

 

『気にするな。生前の私ならば兎も角、神滅具として存在している限りこの状態は必ず起こるというものだ。それにだなヴァーリ、歴代白龍皇でもここまでの数の力を半減させ、力を吸収できたものは居ない』

 

「その言葉だけで救われるというものだ。しかし、防ぐ手段を無力化されると対処に困るな」

 

 

 半減領域を使わなくなったヴァーリは魔力や北欧の魔術、魔法などで影人形を迎撃するがその程度で破壊されるほど俺の影人形は甘くない……よし、思った通りだ。白龍皇の光翼は触れた相手の力を半減させて自らの力の糧とする。聞いた限りじゃ無敵に近いものだが弱点は存在する……それは所有者のスペックによって力の上限が決まっていることだ。勿論、半減だけして力を吸収しないって方法も出来るだろうが俺の影人形を突破するために上限ギリギリまで保たないとダメだからこの線は薄い。つまり半減領域を使えば使うだけ数百以上の影人形から奪った力を全て吸収しないとダメなはずだ……流石に神滅具といえどもそれだけの数から奪った力を処理するには限界があるはずだと思ったが大当たりって感じかねぇ?

 

 純白ともいえるオーラを放ちながら高速で移動して影人形の群れから逃れようとするがそんなことは俺が許さない。言っておくがこの場所全てに影を伸ばして休むことなく影人形を生成してるから逃げ場なんてどこにもねぇぞ! てかそろそろ頭痛くなってきた……鼻血とか出てないよな? 数百数千数万と休まずに生み出し続けるなんざ夜空以外じゃ殆どやらねぇしよ!

 

 

「ゼハハハハハハハハハ! どうしたヴァーリ? ご自慢の半減領域は使わねぇのか! 遠慮せずにドンドン使えって!」

 

「生憎、その手の挑発は無意味だぞ?」

 

「そんな事は言われなくたって分かってるっての!」

 

「そうか。なら、この状況を打破するとしようか! 影龍王でなければこの力を()()で使えないからな!」

 

「――へぇ、だったらこっちも同じものを使わせてもらおうか!」

 

 

 ヴァーリがはるか上空へと飛翔したのを確認した俺は即座に影人形達の動きを止め、身に宿す呪いを解き放つために呪文を唱える。

 

 

「――我、目覚めるは」

《始まりだ!》《始まるか!》

 

「――我。目覚めるは」

《覇王の声だ!》《我らを求める声がする!》

 

 

 上空からは夜空とは別の光が降り注いでいる。純白であり白銀ともいえる色合いだ……それからは呪いとか祝福とかは感じられない。あるのは純粋な闘志だ。

 

 

「――律の絶対を闇に堕とす白龍皇なり」

《敵は影龍王!》《相手にとって不足は無し!》

 

「――万物の理を自らの大欲で染める影龍王なり」

《敵は白龍皇!》《誰であろうと我らは変わらぬ!》

 

 

 上空から降り注ぐ光を黒く染め上げるように俺の身体から醜悪な呪いが放たれる。周囲に響く歴代達も歓喜の声を上げているのが余裕で分かる……ゼハハハハハハ! あぁ、そうだ! 誰が相手だろうと関係ねぇ! 俺達は俺達の殺し合いをするだけだからな!

 

 

「――無限の破滅と黎明の夢を穿ちて覇道を往く」

《あらゆる呪いであろうとも!》《世界を呪う呪詛だとしても!》

 

「――獰悪の亡者と怨恨の呪いを制して覇道へ至る」

《呪え! 呪うのだ!》《我らの怒りを! 我らの呪いを思い知るが良い!》

 

「――我、無垢なる龍の皇帝と成りて」

 

「――我、魂魄統べる影龍の覇王と成りて」

 

《白龍皇が歩む覇道の前には有象無象でしかないのだ!》

《我らが覇王に勝利あれ! 我らが呪いにて朽ち果てろ!!》

 

 空間が、地上が、周囲全てが俺達が発するオーラによって吹き飛ばされていく。

 

 

「「「「「「「「汝を白銀の幻想と魔道の極致へと従えよう――」」」」」」」」

「「「「「「「「汝を漆黒の回廊と永劫の玉座へと誘おう――」」」」」」」」

 

『Juggernaut Over Drive!!!!!!!』

『PuruShaddoll Fusion Over Drive!!!!!!』

 

 

 天より舞い降りたのは白銀の閃光を放つヴァーリだ、近くに居る影人形達が何かをされたわけでも無いのに半分に折りたたまれ、さらに半分とどんどん小さくなっていく。対する俺は漆黒の影と世界を呪う瘴気を周囲に放ち、無数の影人形を生み出し続ける。あれがヴァーリが至った覇龍の先か……! ゼハハハハハハ! 楽しくなってきた! あぁ、最高じゃねぇか!!

 

 

「さて、まずは邪魔なものを消し去ろうか!」

 

『Compression Divider!!!』

 

 

 ヴァーリが両腕を広げると音声が鳴り響く。その瞬間、俺が生み出した影人形の全てがまるで圧縮されたかのように一気に小さくなり……消滅した。さっきの半減領域の強化版か! てかマジで全滅させられたんだが!? あぁ、もう! さいっこうだな!!!

 

 影人形を全滅させたヴァーリは白銀の閃光となり俺へと接近してくる。先ほどの絶技によって周囲に展開していた影人形が存在していないため障害物なんて無く、真っすぐ俺へと向かってくる……強く拳を握り、直撃するなら即死するだろうという威圧感と共に俺へと殴りかかってきたので()()()で迎え撃つ。漆黒の鎧を纏った影人形――影法師は迫りくるヴァーリの拳を迎え撃つべく正拳突きを放つ。互いの拳が直撃した瞬間、俺達の周囲が面白い様に吹き飛んだ……呪いを浴びた地面は草木一本生えない大地へと変化し、飛び散った岩などは瞬く間に折り紙のように折られていく。ちっ、「Reflect」っていう音声が鳴ったから反射の能力を使いやがったな……危うく影法師の拳が吹き飛ぶところだったぜ!

 

 

「……防がれたか、これでも全力だったんだがな」

 

「『生憎、俺の防御は鉄壁だぜ? ゼハハハハハハハハ! その程度の攻撃で突破しようなんざ百年早いってな! 悔しかったら夜空並みの威力でも出してみろや白龍皇ちゃん!!』」

 

 

 ヴァーリの拳を受け止めている影法師だが腕があり得ない方法に曲がろうとしたり、首が即死するレベルで折られたりとしているが何事も無かったかのように再生させる。存在するだけであらゆるものを圧縮とかやめてくれませんかねぇ? まっ! 今の俺達にはその程度の圧縮なんざ通じねぇけどな! 夜空の覇龍強化版なんざ問答無用で浄化してくるし……なんでアイツ、あれで人間なんだろうな!

 

 互いに拳を突き合わせたまま数十秒間硬直し――同時に元の姿へと戻る。当然と言えば当然だ……これ以上は本気で死人が出るしね。ヴァーリはリゼちゃん、俺は夜空と勝たなければならない相手が居る以上、ここから先は進むことは無い。惜しいと言え惜しいが……多分、相棒の再生能力があったとしてもさっきの半減領域強化版を喰らったら流石に死ぬ一歩手前まで行くと思う。というよりも下手すると死ぬね! きっと!

 

 

「……感謝するよ影龍王、極覇龍は訓練で使うには人を選ぶ代物だ。キミレベルでなければ仲間を殺してしまう」

 

「それはお互い様だ。こっちの漆黒の鎧だって下手すると廃人を作りかねないしな……ほい」

 

「貰っておこう」

 

 

 戦闘態勢を解き、俺達は近場の岩に腰を下ろす。改めて見ても周囲は酷いありさまだ……俺の鎧から漏れ出した呪いによって地面が汚染されてるしヴァーリの圧縮によって色んなものがぺしゃんこ状態、うーんこれは酷いな! でもこれはこれで味があって良い気がするから観光地としてそろそろ本格的に動き出そうかねぇ?

 

 俺から飲み物を受け取ったヴァーリだが飲む仕草もイケメンだ。死ねばいいのに!

 

 

「つーか反射とかチート過ぎるだろうが……」

 

「キミの方こそ常軌を逸した再生能力、一度ダメージを受ければ永遠の痛みを与える呪い、そして当たり前のように使っているが無数の人形生成能力、その言葉が当てはまると思うが?」

 

「んなわけあるか……数百数千数万と生み出してもお前や夜空相手だったら簡単に消される代物だぞ? チートだなんだって言われても俺にはこれしかないんだよ。親父みたいに万能じゃねぇしな」

 

「俺としては羨ましい限りなんだがな。俺の身体に流れるルシファーの血、その力を未だに理解していない。アルビオンの力だけで戦っているだけだ……兵藤一誠や光龍妃、そしてキミのように自分だけの力というものが無い」

 

「そんなのなくったってアホかってレベルの魔力を持ってるだろうが? まぁ、ぶっちゃけルシファーの力がどんなものか分からないがもし使われたら流石に負けるぞ? 俺はそこら辺に居る混血悪魔だしな……で? どうだった?」

 

「そうだな。これからも相手をしてもらえると助かるとだけ言っておこう。あの男が動き出した以上、俺は今よりも先へと進まなければならない……残念な事に極覇龍込で全力を出せる相手は限られていてね。極覇龍の先というものに進むためにはこのような戦いをしなければ分からない。それはキミも同じだろう?」

 

「……まぁな。俺の方もぶっちゃけると伸び悩んでるのが現状だしな。影龍王の漆黒鎧・覇龍融合、俺が編み出した影人形融合の強化形態なのは良いがその先が未だに分からねぇ……お前と殺し合ってヒントぐらいは得られると思ったが全くと言って良いほど出てこなかった」

 

 

 水を一口飲みながら今日までの特訓を思い返す。鬼の里では芹と殺し合ったりした、こっちに戻ってきてからも四季音姉妹と殺し合った、眷属全員と殺し合ったりもした、神器の中に意識を落として歴代達と語り合った……というか呪いをぶつけてきたので逆に呪いを放ってやったりもした。でも全然先に進めている気がしない……強くなったかと言われたらまぁ、多分強くなっているとは思う。多分、きっと。だけど先に進めているかと聞かれたら答えはノーだ……影龍王の漆黒鎧・覇龍融合は言ってしまえば通過点のようなものだ。これがゴールなんて絶対に認めねぇ! この程度で満足してたら夜空に瞬殺されるってな!

 

 

「影龍王」

 

「あん?」

 

「戦った俺が感じた事を言わせてもらおうか。あぁ、なんだろうな……焦り、に似た何かを今の戦いの中で感じたな」

 

「……焦り、か」

 

 

 腕を組んで少し考えてみる。焦り……焦りか、まぁ、うん。焦ってるかもしれないと言えばそうかもしれねぇな……一誠や元士郎、俺と同じドラゴンを宿した奴らが後ろから迫ってきてるから無意識に焦ってたのか? いや、それとも夜空に負けるって勝手に思ったからか? あー、他にも色々と心当たりがあるような無いような……焦りか。

 

 

「一度、自分を見つめ返してみたらどうだい? 俺はキミがこのままでいるとは到底思えない。必ず、俺が知らない何かを見せてくれると確信しているからね。勿論、これは兵藤一誠にも言えるな」

 

「……そっか。とりあえず助言ありがとうとだけ言っておくよ」

 

「別に助言をしたつもりはないさ。伸び悩んでいるのは俺も同じだからね、アルビオンとドライグが和解した事によって聖書の神が封じた能力が解放されると思ったが中々苦戦しているよ。参考までに聞かせてもらいたいがどうすれば能力が完全に解放されるんだい?」

 

「いや、俺に聞かれても困るっての……再生能力だって漆黒の鎧になったらいつの間にか解放されてたし、苦痛の能力だって……まぁ、なんだ、逆鱗に触れたら勝手に解放されたんだぜ? 相棒、なんか知らないか?」

 

 

 俺の質問に相棒は活き活きとした声色で答えてくれた。

 

 

『そうだなぁ! この際だからぶっちゃけようか! 宿主様よ、俺様とユニアが自らの意思で聖書の神に封印された事は知っているな? だからよぉ! ヤツの目的や能力の解放条件ってのを知らされてるのよ! ゼハハハハハハハハハハハハ! 良いかよく聞けよ? 俺様の能力が解放された条件は――俺様の事を真に理解し、俺様が共に戦っても良いと思える奴と出会う事。そしてもう一つが心から守りたいと思える奴のために逆鱗状態になる事だ! ゼハハハハハハハハハ!! 宿主様という最高の相棒と宿主様の母上様がいたからこそ!俺様はここまで来れたってわけだ!!』

 

『……改めて聞かされると信じられん。最低最悪とも言われた貴様が護りたいだと? にわかに信じられん……が実際に能力が解放されているところを見ると本当のようだ。だが信じられん……!』

 

『おいおいアルビオン、それは心外ってもんだぜぇ? 俺様だって護りたいと思っても良いだろうがよぉ! 気になっちまったんだ! 俺様とユニアを相手にしていた聖書の神の言葉がな! 護りたい気持ちってのは何だ、それはどんなものだってよぉ! だったら確かめるしかねぇだろうが!』

 

「――と、まぁ、こんな感じらしいぞ?」

 

「なるほど。母親か……」

 

「あん?」

 

「いや、何でもないさ。やはりこれは俺自身が解決しなければならないらしい」

 

 

 なんか良く分からんが勝手に納得したらしい。しっかし改めて思うんだが……母親のために逆鱗状態になるってマザコンすぎねぇか? やだーノワール君ってばマジマザコーン! とか夜空や平家辺りに言われかねないぞマジで!

 

 ヴァーリの話を聞いてみるとどうやら歴代白龍皇の方々が赤龍帝被害者の会なるものを結成したようで二天龍が和解した今でも赤龍帝への怒りが解けていないらしい……ちょっと待って、赤龍帝被害者の会って何!? ぷ、ぷ、ぷはははははははは!! 被害者の会! 被害者の会!! 被害者の会ってなんだよそれ!!! どんだけおっぱいを嫌悪してんだよ歴代白龍皇!! ちょっと待って腹痛い……マジで腹痛い……! 真剣な表情で赤龍帝被害者の会とか言うのやめろって! 笑いが、とまらねぇ!!

 

 心の底から爆笑しているとヴァーリから若干怒りの視線が飛んできたので頑張って笑いを堪える。いやぁ、無理無理! 歴代白龍皇全員が赤龍帝被害者の会を結成しているのを想像すると本当におかしいしな!

 

 

「いや~悪い、真剣な顔して何を言うかと思えば赤龍帝被害者の会とか言うから……あー腹痛い……と、まぁ、冗談は置いておいてかなり難航してるようだな?」

 

「……あぁ。二天龍が和解した事については俺個人は何も思う事は無い。だが歴代白龍皇は違うみたいでね……赤龍帝が起こした行動によって白龍皇の名を穢し、アルビオンを苦しめたという事で怒っているようだ。アルビオンやドライグの説得も今のところは効果が無い以上、時間をかけるしかないだろう」

 

「だな。まー頑張れ頑張れ。あっ、そう言えば話が一気に変わるが……お前、今度の休みって暇か?」

 

「まさかキミから何かを誘われるとはね。用件だけは聞いておこうか」

 

「いや、グレモリー、シトリー、バアル、アガレス、フェニックス、キマリスの面々が出資した学園の体験入学があるんだが……参加しない?」

 

 

 生徒会長ことソーナ・シトリーの夢であった誰でもレーティングゲームを学べる学校がようやく完成らしい。そのせいで俺達キマリス眷属、サイラオーグ達バアル眷属、先輩達グレモリー眷属といった面々が教師となってガキ共相手に色んな事を教えなければならなくなった……というよりも好き勝手に生きてる俺を教師とか生徒会長の頭は大丈夫かと本気で心配になるな! 絶対逆効果だろ! まぁ、断ろうにもキマリス家が出資している上、レイヴェルとレイチェル、橘や水無瀬からお願いしますと笑顔という名の圧力で強制参加させられてるから逃げれないというね!

 

 ちなみに純血主義の冥界に誰でもレーティングゲームを学べる学校なんて建てたら色んな所から反対の言葉が飛ぶと思う……いや実際には飛んでいた。夢物語だとか冥界に合わないだのと老害や頭の悪い貴族共が声を上げていたってのは親父やセルスから聞いてたしね。だけど……えーなんと言いますか! 俺、いやキマリス家が大々的に出資しますと宣言したらなんと言う事でしょう! 反対の声が無くなりました! そのお陰かどうかは分からないがバアル家やグレモリー家、フェニックス家と言った面々も便乗してシトリー家を応援できるようになったようです。おかしい……そこは反対意見を出せよ! そうしたら問答無用でグラムぶっぱ出来たものを……!

 

 あとかなりどうでも良いがとある誰かさん達によって虐殺されてもはや希少種となった魔法使い達がこの学園に集まって会議をするらしい。何の会議かは知らんが俺絡みじゃないだろうきっと!

 

 

「何故俺なんだ?」

 

「だってお前、学校行ったこと無さそうじゃん。俺や一誠、元士郎も参加するし夜空にも声をかける予定だし白龍皇のお前も参加したら盛り上がるだろ? ついでに学生ってのを味わってみたらどうだ?」

 

「断ると言ったらどうするつもりだい?」

 

「何もしねぇよ。参加不参加は個人の自由だ。でも一誠の日常を一回じっくりと見ておくのも一つの手だぜ? お前に足りないものを持ってるかもしれないしな」

 

 

 それらしいことを言ってるが実際は俺達だけ参加でお前だけ不参加はふざけんなって言う怒りによるものだけどな! マジで不参加とか許さねぇぞおい! こっちはなぁ……参加したくないのに強制参加でイラついてるんだよ! まぁ、嘘だがな。レイチェル達から頼まれなくてもこっちからあーだこーだと理由付けて参加したっての……とりあえずお前は黙って参加しろ! お願いだから参加してください! だって二天龍と地双龍の面々が一か所に集まってガキ共に何かを教えるとかかなり盛り上がるだろ! 体験入学に来るガキ共は俺みたいに純血主義の冥界に迫害された奴らばっかだ。魔力が低い、身分が低い、能力が低いとかってな……あんな思いをガキ共がしなくて済むなら喜んで教師だのなんだのやってやらぁ! あとついでに夜空にも学生ってのを味合わせてみたいしな……こっちは完全に俺の我儘だけども。

 

 ヴァーリに体験入学の事を話すと表情を若干だが変えた。よしよし……良いぞ良いぞ! そのまま参加するって言え! 良いから言いなさい何か奢ってあげるから!

 

 

「――すまないがこの場では返答は出来ないな」

 

 

 知ってた。

 

 

「あっそ。まぁ、暇だったら来いよ。別に除け者なんかにはしねぇから」

 

「……そうか」

 

 

 この後、俺達は何かを話すことなく飲み物を飲みながら消費した体力を回復するために休息をとり、再び殺し合った。

 

 

 

 

 

 

「ひっ、たす、たすけ!」

 

 

 女の声が周囲に響き渡る。朝か夜か分からず無機質な建物が幾重に並んでいる場所をゴスロリ衣装を着た二十代ぐらいの女が必死の表情で助けの声を上げながら走っている。しかしどれだけ大声を出そうともその声に答えるものは誰も居ない……何故なら彼女が居るこの空間はとある存在によって作られた別世界だからだ。

 

 

『おいおい、いい加減鬼ごっこはやめようぜ? そろそろ飽きてきやがった』

『つーか飽きた!』

『さっさと殺そうぜ!』

 

 

 邪悪と表現できる三つ首のドラゴンが逃げ惑う彼女を追い詰めるべく、指先を軽く曲げる。すると何も無かった空間に数百と言った魔法陣が展開され、あらゆる属性の魔法が一気に放たれる。当然、逃げ続ける彼女も自らの武器である紫炎や魔法を駆使して反撃しようとするが……互いの実力差があり過ぎるため全くの無意味となった。彼女――ヴァルブルガははぐれ魔法使い達で結成された魔女の夜の幹部という立場にいるほどの実力者のため操る魔法は一般の魔法使いと比べてもはるかに上回り、身に宿している神滅具の力もあって本来であればここまで取り乱すことなど無い。しかし相手にしているのは無数の魔法を操る魔源の禁龍と称されるアジ・ダハーカであるため放たれる魔法を防ぐことなど出来ずに傷を受けていく。鋭い魔法が足を、腕を、体を切り裂いていくが致命傷ともいえるほどのダメージは一切無い。ヴァルブルガ自身も遊ばれていると認識しながらも逃げ続けるしかない。

 

 追いかけるのに飽きたのかアジ・ダハーカはヴァルブルガを四角い牢屋に閉じ込める。いくら叩こうと、いくら攻撃しようとヒビすら入らないほどの強固な檻。完全に逃げ場が無くなったと認識した彼女は涙を流しながらドラゴン達へと視線を向けた。

 

 

「ひぃっ! な、なん、なのよん……! いきなり、なんなのよ!!」

 

《お初にお目にかかる。私の名はアポプス、お察しの通り邪龍だ。今回、貴方をこの空間へと招いた理由は一つです。その身に宿す神滅具を提供していただきたい。抵抗しなければこの場から解放してあげますよ》

 

「……す、するわ! 渡す! だ、だからた、たすけてほし、いのねん!!解放して!!」

 

 

 ヴァルブルガは悩むことなく司祭服を着た男――アポプスに神滅具を渡す事を了承する。この状況から逃れることができるなら、生きることができるなら希少な神滅具を失っても構わないとヴァルブルガは本気で考えている。迷いのないその返答にアポプスとアジ・ダハーカは満足そうな表情をし、彼女を捕えていた檻を消して足元に魔法陣を展開した。

 

 本来、神器を抜き出すことは所有者の死を意味する。しかし術を操る者がアジ・ダハーカのように魔法を得意としているならば話は別だ。所有者の命を奪わずに神滅具を抜き出すことなど造作もない……現に今も痛みすら無くヴァルヴルガの体内から神滅具――紫炎祭主による磔台を取り出した。本来であれば独立具現型神器に属される紫炎祭主による磔台は自らの意思で別の所有者へと転移することが出来るがアジ・ダハーカによる術の影響で転移することなく彼の手の中に納まっている。今まで頼りにしていた武器が消えた事にヴァルブルガは後悔の念など抱くことなく、この場から逃げられることやこれからも生きていられると逆に歓喜してた。

 

 

『よし回収したぜ。確かに八岐大蛇の魂が入ってるな』

 

《分かりました。提供、感謝しますよ魔法使いヴァルブルガ》

 

「え、えぇ! だ、だからもう満足よねん!! は、はやく、助けてよ!!」

 

《――えぇ、分かりました。契約は成立しましたので()()してあげましょう》

 

 

 その声の直後、鮮血が舞った。赤い、赤い噴水がヴァルブルガの首から溢れ出し、地面を血で染めていく。落ちた頭は何が起こったのか分からない表情をしており、自分が殺された事にすら気づいてはいないようにも見えた。

 

 彼女の首を落としたのは黒髪の男だ。その手には剣が握られており、禍々しい何かが漏れ出している。

 

 

『あーあ、少し考えりゃ分かる事だろうに。俺達邪龍が簡単に助けると本気で思ってたなら爆笑もんだ』

 

《契約を交わした以上は解放しなければなりませんがそれが「この場」からなのか「この世」からなのか、確認を怠ったのが間違いでしょう。さて、本当によろしいのですか? 私達はノワール・キマリスが提案した完全な八岐大蛇の蘇生が望みです。このまま聖遺物にその剣に封じられた八岐大蛇の魂を埋め込めば済む話、貴方が人柱になる必要は無いのですよ?》

 

「――僕は力が欲しい! 僕は、絶対に奴らを殺さないといけない……! そのためなら蘇ったこの命すら惜しくは無い!! 必要なんだ……力が!!」

 

 

 拳を強く握り、怒りの形相で語られた言葉に二体の邪龍は笑みを浮かべる。

 

 

《分かりました。では八重垣正臣、今からこの神滅具に完全な八岐大蛇の魂を埋め込みます。何が起こるか分かりません……八岐大蛇の意識が目覚め、宿した貴方を食い殺すかもしれない。しかしそれに耐えられたのであれば――貴方の復讐に協力しましょう》

 

『まー頑張れや。人間の意地ってのを俺達に見せてくれよ』

『頑張れー!』

『応援してるぜ!』

 

「……勿論だ!」

 

 

 八重垣と呼ばれた男が握っていた剣から魂のようなものが抜かれ、紫炎祭主による磔台へと押し込められる。その瞬間、紫炎の炎を放っていた聖十字架が禍々しい何かへと変化し始める。普通なら危険だと判断する事態だが黒髪の男――八重垣正臣は戸惑うことなく聖十字架を自らの体内へと誘った。

 

 刹那、この空間全てに響き渡る叫びが木霊する。呪いを帯びた紫炎が八重垣の体を焦がし、強い心を汚染する。しかし八重垣はそれに耐える、耐える、終わりなど見えない苦痛にひたすら耐え続ける。その眼には復讐の炎を灯し、その心には必ず殺すという強い決意が存在している……全ては愛する彼女のために。

 

 

『それよりもユニアはどこ行った? アイツが蘇るところが見たいとか言ってたから動いたってのによ』

 

《彼女ならノワール・キマリスの行動を見ているようだ。既にこの遊びには興味を示してはいないでしょう》

 

『あのやろー、俺達をタダで動かしやがったな? まぁ、良いけどよ。面白いもんが見れてるしな』

 

《えぇ。どの時代でも人間は恐ろしい生き物です。恐らく――耐えきるでしょうね。心の底から決意している人間は邪龍の誘惑にすら打ち勝てます……むしろこちらとしてもそうであってもらわねば困りますがね》

 

『だな。俺にお前にグレンデル、ラードゥンにニーズヘッグ、まだまだ数は足りねぇ。リゼ公みてぇに量産型邪龍を使うって手もあるがそれだと俺達のプライドが許さねぇ』

 

《クロムとユニア、そしてクロウの協力が得られるなら正面から戦えるでしょうね。今から楽しみですよ本当にね》

 

 

 アポプスはもだえ苦しむ八重垣の姿を見ながら静かに嗤う。

 

 

《――黙示録の獣との戦いはどれほどの苦難があり、どれほどの激戦があるのか。私は、私達はそれを確かめたい。その過程で世界が滅ぼうと私達には関係無い……この身は一度、既に滅んでいますからね》




「影龍王と劣等生」編の開始です。

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