スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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第08話 「真実」は一つじゃない

──第三艦隊特務分艦隊設立──

 

 

 

 ついに連合艦隊特務分艦隊が正式に設立された。

 

 ナデシコとアークエンジェルを旗艦とし、そこに様々な研究所や組織の戦力が一様に集められた、地球最強の分艦隊である。

 

 ナデシコの艦長であるユリカの父、コウイチロウ率いる第三艦隊の預かりとなるが、独自で判断して行動する権限も与えられている。

 もっとも、任務そのものは今までと変わらない。現われる敵を倒す遊撃隊だ。

 

 

 新たな門出となった分隊の中、アキトだけは必要ないと軍側から解雇されることになった。

 

 確かに多くの組織が集まり、戦力は充実している。

 パイロットとして特出した力を持つわけでないアキトは戦力として必要ないかもしれない。だが、ナデシコのコックまでを首にする必要はないはずだと、皆疑問に思った。

 

 なにか裏に隠された思惑があるのではと勘ぐるが、アキトの去る意思は固かった。

 

 皆で必死に引きとめようとするが、その声に耳を貸さず、通信士のメグミと共にアキトはナデシコを去っていってしまった。

 

 

 自分は半端者で役立たずだと落ちこむアキト。

 そこにネルガルの回し者がやってくる。

 

 君でもやれることがあると、生体ボソンジャンプの被験者となることを勧誘するエリナ。

 しかし、その実験を察知していたグラドス軍は、木星トカゲと最新人型兵器を送りこんできた。

 

 

 緊急出撃をする分艦隊の面々。

 

 

 その最中、統夜はこの場にアル=ヴァンが現われる未来を見た。

 皆に敵の出現を警告し、サポートパートナーを選んで出撃する。

 

 木星トカゲと共に現われた通称ゲキガンタイプの人型兵器は短距離のボソンジャンプを繰り返し次々と位置を変え攻撃してきたが、パターンをつかまれ、撃破されることとなった。

 

 爆発せず機能停止したソレは、のちにナデシコによって回収される。

 

 

 木星トカゲとの戦いの最中、グラドスのSPTも増援に現われた。

 その中に、かつて撃墜したゲイルの機体と同じものが混じっていた。

 

 エイジはそれにむかい、何者かと問うが、答えは返ってこなかった。

 

 

 グラドス軍を追い払う。

 

 

 誰もがほっと気を抜いたその時。

 

 一機のゲキガンタイプがボソンジャンプで現われた。

 攻撃をするわけでもなく、防御を固め、なにかを待っている。

 

 それは自爆兵器。

 

 自機をふくめた広範囲を転移させ、消し去ってしまうというものだった。

 アキトはとっさにチューリップクリスタルと呼ばれるボソンジャンプに必要なシロモノを手に取り、それが自爆する前に、それだけを別の場所へ移動させ、ヨコスカの街を救うのだった……

 

 ……ただし、自分ごとの転移で。

 

 

 アキトの自己犠牲に心を揺り動かされている時間はなかった。

 

 統夜の警告どおり、正体不明の機体群が転移して現われたのだ……

 

 

 

──ラースエイレムキャンセラー──

 

 

 

 木星トカゲもグラドス軍も追い払った直後、決着がつくのを見計らっていたかのように現われる未確認機が空間転移で現われた。

 ボソン反応もなく、グラドスの技術でもない。

 

 そう、奴等がやってきたのだ。

 

 

「やっぱり来たか。あいつらは知っているはずなんだ。なんで俺がこいつに乗れるのか。なんでお前達がこれを動かせるのか。誰にも使えないサイトロンを使えるのか。確かめてやる」

 

「ええ」(カティア搭乗の場合)

「うん!」(テニア搭乗の場合)

「はい!」(メルア搭乗の場合)

 

 

 確かめること。

 それは、現われたアル=ヴァンの方にもあった。

 

 

「さて、試させてもらおうか。サイトロン・サイティング終了。オルゴン・エクストラクター出力上昇。ラースエイレム駆動開始」

 

 

 アル=ヴァンの乗るラフトクランズから光がほとばしる。

 アフリカで起きたラースエイレムの不調。

 

 それが外部からの要因であるかの確認。

 

 

「これは……!」

 統夜が周囲の異変を感じ取る。

 

 アフリカの時と同じく、なにかが固まって行くような違和感。

 それは、あの時と同じだった。

 

 

 ソレを感じ取ったのは、彼の後ろにいる彼女も同じ。

 

「あの時と同じだ。頼むぞ!」

 

 統夜の言葉に答え、彼女はオルゴン・エクストラクターの出力を臨界まで引き上げた。

 

 

 統夜の機体から、逆回転の渦を描くような光が瞬いた。

 

 

 

「っ!」

 

 アル=ヴァンの乗るラフトクランズのエクストラクター出力が低下する。

 これは、あのアフリカでラースエイレムが使えなくなった時と同じ現象。

 

 すなわちそれは……

 

 

「もはや、間違いない。あの機体にはラースエイレムを阻害するシステムが存在する。あれ1機のために、すべてが無に帰すかもしれん!」

 自軍における究極の武器を破るシステム。

 

 数が圧倒的に劣る彼等にとって、それは生命線ともいえるもの。

 それが無効化されるとは、全ての作戦の根幹が崩れてしまうほどのことである。

 

 

(あなたは、なんというものを残したのです。それをあの娘達に託すとは、我等に……あなたは我等に滅びよと言うおつもりだったのですか!)

 

 

 衝撃の事実に、アル=ヴァンは拳を握る。

 みずからが手にかけた『彼』の心がわからない。

 

 ただでさえあの娘達の存在は彼等にとって致命的であるというのに、それを逃がし、あまつさえラースエイレムを破るモノまで用意しているとは……!

 

 

「ジュア=ム、破壊せよ。あれを今まで存在させてしまったのは、我々のミス。我等の計画のためには、あれは存在を許してはならないものだ!」

 

「ハッ! アル=ヴァン様! 今度は逃がさんぞ。出来損ないどもめ!」

 

 

 アル=ヴァンの命に呼応し、ジュア=ムの駆るヴォルレントが転移して現われた。

 

 出現と同時にライフルを引き抜き、グランティードめがけて撃つ!

 

「壊れろッ!」

 

 

 突然の出現による完全な不意打ち。

 アフリカで戦ったあの機体の動きでは回避などできない……

 

 

 ……はずだった。

 

 

「見えるっ!」

 

 それは、かわされた。

 まるで来ることがわかっていたかのように、ジュア=ムの一撃は回避されたのだ。

 

 

「はずしたっ!? いや、かわされたってのか!?」

 

 

 即座に統夜の反撃が放たれる。

 

 

「なっ!?」

 

 逆にかわし損ねたジュア=ムは、ライフルを持つ右腕を持っていかれた。

 

 

「バカなッ! 前よりサイトロン反応が強くなっているだと!? あの娘達にこんな適正があるなんて聞いてないぞ!」

 

 アフリカで邂逅してからまださほど時はたっていない。

 だというのに、逆に準騎士ジュア=ムに痛手を与えるとは、その成長速度は信じられないものだ。

 

 あの日逃げた三人の娘に、それほどの戦士の適正はなかったはずだ。

 

 

 ならば……

 

 

「おい、聞こえるか! お前達はなんなんだ! なんで俺達を攻撃するんだ!」

 

 

「っ!?」

「な、に?」

 

 ジュア=ムとアル=ヴァンの機体に通信が入る。

 

 グランティードとなにか関わりがあるのなら、通信も可能かもしれないと思った統夜達が試してみたのだ。

 結果、統夜の声が二人に伝わった。

 

 

「男!? 誰だ!」

 男の声が響き、ジュア=ムは思わず叫んでしまった。

 

 アル=ヴァンもその声に驚きを隠せない。

 

 

「あの娘達じゃない。まさか同族が!? アル=ヴァン様!?」

 

「どうやらあの娘達以外の者が乗っているようだ。これであの機体が戦えるのも納得がいく。だが、誰だ? 準騎士にも従士にも、そのような者は存在しないはずだ……」

 

 アル=ヴァンの把握する裏切り者は、全て処断されたはずだ。

 彼等の計画はすでに潰え、残った三人の娘を助けるような実力者はもういない……

 

 アル=ヴァンはみずからの通信を統夜に向けオンにした。

 

 

「君は、何者だ?」

 

「っ!」

 

 返答があり、統夜も驚いた。

 まさか返ってくるとは。

 

 

「ど、どういう意味だ?」

 

 

 返ってきた質問も、統夜には意味がわからなかった。

 自分達の秘密を知っているだろうと思い問いかけたというのに、逆に問いかけられるのは完全に予想外だったからだ。

 

 

「……我等以外にサイトロンが使える者は存在しない。ならば君は同胞のはずだ」

 

 

「え……?」

 

 アル=ヴァンの答えに動揺したのは、統夜だけではなかった。

 後ろに乗る彼女も同様に動揺した。

 

 我等以外にサイトロンは使えないということは、統夜だけでなく彼女達も当てはまるからだ。

 

 

「答えたまえ。君は何者なのだ。なぜ君はそれに乗っている。その機体が持つシステムが存在することの意味を考えてなのか? 君は、同胞に牙をむくというのか?」

 

「同胞に牙を……? なにを言ってるんだ。お前達が襲ってくるから、俺達はただ反撃しているだけだろう!」

 

 そうだ。統夜も彼女達も、ただ襲ってくるから逃げて、襲ってくるから戦っているだけなのだ。

 そこに、それ以上の理由はない。

 

 

(どういことだ? 自分が何者であるか、知らないというのか彼は。だが、ならばなぜ……)

 

 アル=ヴァンも困惑する。

 あの三人の少女は例外として、彼の同胞が事情を知らずサイトロン・システムの積まれた機体に乗っているというのはありえない。

 

 

「アルヴァン様、あいつが誰だろうがなんだろうが関係ありません。あれを破壊しなきゃならないなら、そうするだけです!」

 

「……そうだな。全機、聞け。ラースエイレムが作動しない以上、直接戦闘になる。私があれを破壊する。従士諸君はそれ以外の敵を寄せつけるな。あれさえ破壊できれば、あとはステイシスさせて殲滅する」

 

「ハッ!」

 ジュア=ムが勢いよく返事を返した。

 

 だが……

 

「ジュア=ム、お前は退くのだ。ラースエイレムが使えぬとわかった以上、あれを破壊するまでは1機たりとも無駄にはできん」

 

 統夜からの反撃で右腕を破壊されたジュア=ムに、命じた。

 

 

「しかしッ!」

 

「命令だ。退くのだ。ジュア=ム・ダルービ」

 

「……はっ」

 

 騎士であるアル=ヴァンにはっきりと命じられ、準騎士であるジュア=ムはそれに従い、撤退した。

 

 

 光を纏い、ジュア=ムの乗るヴォルレントは消えた。

 

 

「では、かかれ!」

 

「ハッ!」

 

 残った軍勢が、特務分隊に襲い掛かる。

 

 

「来るぞ! みんな気をつけてくれよ。あいつらはてごわいぜ!」

 

 一度戦ったことのあるムウが声をかけ、この謎の集団との戦いがはじまった。

 

 

 

 アル=ヴァンの駆るラフトクランズがグランティードに迫る。

 

 統夜は感じていた。

 迫るそれは、今までの敵と桁が違うと。

 

 

「ジュア=ムに一撃を加えたとはいえまだ未熟! これならば!」

 

 

 しかし、アル=ヴァンの攻撃は統夜に届かなかった。

 

 ラフトクランズを狙い、巨大な拳が飛び、様々な色の光線が飛来する。

 

 

 回避を余儀なくされ、その突撃は中断された。

 

 

「くっ……!」

 

 

「俺達を、忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 

 

 そう。統夜は一人ではない。

 彼の周囲には頼りになる仲間が大勢いる。

 

 

 マジンカイザー。

 グレートマジンガー。

 コン・バトラーV。

 ボルテスV。

 ダンクーガ。

 ゼオライマー。

 シャイニングガンダム。

 ストライクガンダム。

 レイズナー。

 テッカマンブレード。

 エステバリス。

 アーバレスト。

 ブレンパワード。

 

 

 これだけの数のスーパーロボットが統夜の周りにはいるのだ。

 

 いかにアル=ヴァン一人が強力な力を持とうと、結集したこの力を、たった一人で打ち破ることは出来なかった!

 

 

 次々と味方の従士達は撤退を余儀なくされ、アル=ヴァン一人では戦況を覆すことは不可能となった。

 

 

「……さすが地球でもっとも戦闘力の高い部隊だけのことはある。このような者達に守られたあの機体を、ラースエイレムなしで撃墜するのはこちらも覚悟が必要だな。機会を待たねばならんか……」

 

 そう、判断した。

 

 

(うかつだった。あの時気づいてさえいれば。あの方の行動はすべて、あれがただの機体でないと示していたというのに。サイトロンも万能ではないとはいえ、このような事態にまで発展するとは)

 

 一番最初。

 かのパイロットが乗りこむ前。あの時逃したのは本当に痛手だったとアル=ヴァンは思い知る。

 

(あの時。あの方……っ! そうか。あのパイロット。そうだ。一人だけいた。我等の血を引きながら、我等の同胞でない者が。あれが彼なら、己のことを知らぬというのも納得がいく……!)

 

 アル=ヴァンは、なにかに心当たった。

 

(だが、彼はすでに亡くなったはず……いや、それもまたあの方の思惑! 亡くなったというのは偽りだった! そうか。保険をかけられていたのか。万一のことを考え、あの娘達が全滅させられる可能性さえ考慮して! これならば、あの場に居なかった四人目のパイロットが居る不思議もなくなる!)

 

 だが、今それに気づいたところで、意味はない。

 

 

「……その正体が何者でも、あれさえ破壊できればあとはどうにでもなる。だが今は無理をして機体を無駄には出来んな。撤退する!」

 

 アル=ヴァンは、残った従士と共に空間転移を使用し、この戦場から撤退する。

 

 

「逃げる気か!」

 

 消え行くアル=ヴァンのラフトクランズに、統夜は叫んだ。

 

 

「……因果だな。そう。君は確かになにも知らない。知るはずがない。だから見逃したものだ。それがまさか、あの方亡き後にその機体のパイロットとなって私の前に現われるとは……」

 

「どういうことだ。それはどういう意味だ。答えろ!」

 

「次は確実に仕留める。だがもし私が倒されることあらば、その時教えてやろう。それが運命というのなら、君達には知る資格があるのだから……」

 

「そんなわけのわからないことを言ってないで今答えろよ!」

 

「次会う時まで死ぬなよ。我が民のことを考えれば、一刻も早くその機体が消え去ってくれるのを願うべきなのだがな……」

 

 

 そう言葉を残し、アル=ヴァンは戦場から消えた。

 

 

「待て! 今答えればいいだろ。今ー!!」

 

 

 

 謎だけを残し、その二度目の邂逅は終わりを告げた……

 

 

 

──ナデシコ/格納庫──

 

 

 

 戦闘が終わり、改めてアキトが消えたことが思い出された。

 

 ユリカは部屋に戻りさめざめと泣いていたが、肝心のアキトは実は生きており、月へ飛んでいたことが判明する。

 

 

 アキトの無事が確認され喜びに沸く中、格納庫に戻った統夜達は、より深まった自分達の謎に困惑していた……

 

 

「……俺達は、一体なんなんだろうな?」

 

「統夜……」

 テニアが困惑したようにおろおろとする。

 カティアもメルアも、同様に答えようもない。

 

 

「悪い。お前達に聞いてもわかるわけないよな。サイトロンは、あいつら以外には使えないって言っていた。同胞だって。一体、どういうことなんだ……」

 

 

 統夜も、カティアも、テニアもメルアも、同胞ということに心当たりはなかった。

 

 統夜以外の三人はアシュアリーに集められたという共通点があるが、そこに統夜が加わると、共通点はまるでなくなる。

 せいぜい歳が近いというくらいだ。

 

 しかしそれを共通点とするならば、この特務分隊に集まる多くの少年少女も当てはまってしまう。

 

 

 結局のところ、アル=ヴァンを倒し、彼の知る情報を聞き出す以外にこの疑問に答えを出すすべはなかった。

 

 

「お前等のことも気になるけど、あいつらの正体の方が問題だろ。なんなんだよあいつら」

 カガリが、もっともな疑問を口にする。

 

 完全に正体不明でかつなにやらトンでもないシステムを持っているというのだ。

 なにか手がかりが欲しいと思うのも当然だろう。

 

 

「わかっていることはほとんどない。アシュアリーを襲い、俺達となにか関係があって、俺達の知らない俺達のことを知っているってこと。そして、周り中の敵を動けなくしてしまうとんでもないシステムを持っていて、グランティードはそれを止めることが出来る唯一の機体だってことだけだ」

 

 統夜は、カガリの疑問にわかっている範囲で答えた。

 

 明確にわかっているのは、奴等がカティア達の家族を殺し、使われれば手も足も出なくなるシステムを持っているということくらいだ。

 

 その組織の目的や規模さえわからない。

 

 

「あの時確信がなかったけど、あれは見間違いや勘違いなんかじゃなかった。あの時確かに、甲児達は空中に静止させられていたんだ……」

 

 統夜は確信し、拳を握った。

 グランティードがカティア達に託した時。絶対に破壊されてはいけないと言ったその理由は、そのためだったのだ。

 

 

「しかし、本当にあの時オレ達が止まっていたっていうのか?」

 

「ああ。今だ信じられないってことは、認識さえしてないってことだよ。さっきはすぐ対応できたけど、それでむこうにもグランティードがそういうものだとわかったみたいだ」

 

 甲児の驚きに、統夜は改めてその脅威をかたる。

 

 

「それは、とんでもないではすみませんよ」

 

「やられたら手も足も出ないってことやからな」

 

 コン・バトラーチームの小介十三が信じられないと戦慄した。

 

 

「つまりあいつらが出たら、グランティードを守らないとやばいってわけだな」

 

「はい。グランティードが失われれば、誰も気づかないうちに全滅させられるでしょう」

 

 豹馬の言葉に、小介がうなずいた。

 

 

「あいつ等は、絶対ヤバイこと考えてる。それに、父さんと母さんの仇なんだ。アタシ達は、あいつらと戦わなきゃいけないんだよ」

 

「そうね。これが私達の、運命なのかもしれないわね……」

 

 テニアの決意に、カティアが同意した。

 

 

「つまりお前達は、奴等と戦う気なんだな?」

 

「当たり前でしょ」

 

「あれは悪い人達ですから」

 

 鉄也の問いに、テニアとメルアが答える。

 カティアと統夜も、改めてうなずいた。

 

 

「そうか。ならこれで、心配事が一つ減った」

 

「どういうことですか?」

 

 鉄也の言葉に、統夜が首をひねる。

 

 

「弓教授は、その敵が持つシステムの存在にうすうす気づいていた。奴等が少なくとも連合を敵にする気でいることも。最初にお前達が研究所に来た時、月面での軍の戦闘記録を調べてな」

 

「私達が逃げた後、残ったあの人と追っ手の戦闘を軍も確認していたのね」

 カティアがうなずく。

 

「そうだ。記録ではスクランブル発進したメビウスが原因不明のトラブルにより全機行動不能になり撃墜されたとあった」

 

「そんな、全機にトラブルなんてありえません」

 小介がかつて、鉄也が弓教授に聞かされた時と同じ反応をする。

 

「あのシステムに止められたんですね」

 メルアが最もあり得る可能性を口にした。

 

 

「だろうな。教授はなにかあると考え、奴等がいずれ危険な敵として現われることを予期し、お前達をかくまった。だからこそ兜やさやかさんが火星に行くことも許可したんだ。兜とお前達が友情を育み、仲間となることを期待してな」

 

「まぁ、お父さまが……?」

 

「教授の判断は正しかったということだ。あの機体がただ奴等側の兵器というだけでなく、対抗できるとなればなおさらだ」

 

 

「まいったな。ただ助けてくれただけじゃなく、そんな先のことまで考えていたなんて……」

 

「さすが、さやかさんのお父さんですね」

 

 統夜とメルアが、弓教授の慧眼に驚きの声をあげた。

 

 

 あの日弓教授の提案がなければ、火星に向かわなければ、今のこの部隊はなかっただろう。

 そう考えると、弓教授は大きなきっかけを作る一人であったと言わざるを得ない。

 

 

「艦内のみなさんにお知らせです。突然ですがナデシコはこれより月にあるネルガルのドックへと向かうことになりました。アークエンジェルはヨコスカ基地に残り、迎撃任務を継続します。正規クルー以外のみなさんは、1時間以内にうちの艦長とラミアス少佐との相談の上、どちらに乗艦するか決めてください。よろしく」

 

 

 改めて決意を固めた統夜達の元に、ルリの艦内放送が響いた。

 

 

 月に向かい、アキトを迎えに行くか。

 地上に残り、今までと同じく迎撃任務につくか。

 

 

 選択の時である。

 

 

 

 

 第8話終わり

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