スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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第09話 月へ向かうルート(ナデシコ)

──ルート選択/月へ向かう選択──

 

 

 

「月へ行こう。はじまりは月だからな。期待は出来ないけど、なにかあいつらの手がかりがあるかもしれない」

 

「りょーかい」

 

 統夜の決断にテニアがうなずいた。

 

 

 こうして、統夜達はアキトを迎えに行くため、月へ向かう。

 

 

 

──宇宙──

 

 

 

 アキトをむかえに月へ行くため宇宙に出たナデシコ。

 

 その最中、回収したゲキガンタイプのロボットの中には人がいたことが判明する。

 有人機であったそのコックピットにはすでに人影はなく、ナデシコの中に潜入している可能性もあった。

 

 少数精鋭での探索の結果、ミナトとメグミに匿われていた敵パイロット、白鳥九十九は確保される。

 

 

 その九十九の口から、木星トカゲはグラドス軍などではなく、実は大昔に地球を追われ、木星付近まで逃げた地球人で組織された木星連合であることがあかされる……

 

 

 

──テニア──

 

 

 

「え? もくせいけんがに……え?」

 

 九十九が名乗った名前があまりに長くて早口言葉のようで、さっぱり覚えられなかった。

 

 

「木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパおよび多衛星小惑星国家間反地球協同連合体。略して木連ね」

 

 

 すごっ! カティアすごっ!

 さらっと覚えてさらっと言えるって!

 

 えーっと、木星けん、がにめ……

 

 アタシは木連でいいや。

 

 

 でも、まさか木星トカゲがグラドスじゃなく元は地球人だったなんて……

 

 

「これで、エイジがチューリップを知らなかった理由も納得がいくな」

 統夜が火星であったやりとりを思い出し、うなずいた。

 

 そういえば、エイジチューリップのことこっちに来て初めて知ったって言ってたっけ。

 

 そりゃ当然だよね。だってあれは、グラドスの技術じゃなかったんだから。

 

 

「そうね。そして、連合がグラドス軍の存在をすぐ認めた理由も納得がいったわ」

「どゆこと、カティア?」

 

「連合は木星トカゲの正体に気づいていたのよ。だから、グラドス軍としてまとめて異星人の侵略にしておいた方が都合がよかった。きっとそういうことよ」

 

 そっか。元は地球圏を追い出されたのが敵ってバレたら連合政府はなにを言われるかわからないもんね。

 それなら、異星人の侵略者ですってしておいた方が都合がいい。

 

 

「それに、エイジが言っていたグラドスが地球人同士を争わせてっていうのも、連合とプラントじゃなくて木連と地球だったのかもしれない」

「木連も実は利用されているということね」

 

「言っても相手は認めないだろうけどな」

 

 

 統夜とカティアが九十九の話にあわせてなにか推測している。

 

 アタシもそれを聞いて、したり顔でうなずく。

 どうりでねー。やっぱりねー。

 

 

「無理にうなずかなくても誰も責めないぞ」

 

「う、うっさい!」

 

 

 

 九十九から話を聞いていたら、ナデシコに救援要請が入った。

 

 今からアタシ達がむかうネルガルのドックが木連に襲われているというのだ。

 

 

 捕まえた九十九は部屋に閉じこめることにして、アタシ達は月へ全速力でむかう。

 

 

 まってて、すぐ助けに行くよ!

 

 

 

──これは「僕たちの戦争」だ──

 

 

 

 月ではネルガルの研究所を狙い、九十九の仲間、元一郎率いる優人部隊が攻撃を開始していた。

 

 アキトはそこで作られた新型エステバリス、月面フレームで戦いに出るが、敵の攻撃は激しく、そこで建造されていたナデシコ2番艦、シャクヤクは破壊されてしまう。

 

 

 一方、月へ急行していたナデシコの内部から、捕虜となっていた九十九が逃げ出してしまう。

 なんとミナトとメグミが逃走を手引きしたのだ。

 

 ゲキガンタイプの頭部は脱出ポットとなっており、それに乗り三人はナデシコを去ってしまった。

 

 

 月が襲われている今、彼を追っている余裕はなく、まずはアキトを救うため、ドックを目指すのだった。

 

 

 アキトは到着したナデシコと共に、研究ドックを襲っていた木連を撃退し、ドックへ入港する。

 

 ナデシコはボロボロになったドックから生存者を救出し、さらに破壊されずに残ったYユニットを装着しようとする。

 

 ユリカいわく、「もったいない!」

 ウリバタケいわく、「同型艦につくものがナデシコにつかないわけがない!」

 

 

 しかし、木連の目的はシャクヤクだけでなくこのYユニットの破壊でもあった。

 

 再び現われた木連の前に、逃げ出した九十九がミナトとメグミを連れ戻ってきた。

 

 

「どうして戦いを続けるんですか!?」

 

 

 そう問いかけるメグミに、アキトは「この戦いはもう、僕達の戦争だ」と答えを返した。

 

 過去がどうだったではない。

 火星において木連が罪のない人々を殺して回った時点で、この戦いはもう過去のものではなく今を生きるアキト達の問題となったのだから。

 

 アキトとて戦いたくはない。

 グラドス人のエイジだって。

 

 だが、戦いをやめてくれと言っても相手は攻め続けている。

 この現状で、自分達だけ矛を置けるわけがなかった……

 

 

 九十九もそれを理解していた。

 だから彼はミナトとメグミを解放し、ナデシコから去っていく。

 

 

 その心に、小さな波紋を生みながら……

 

 

 

──テニア──

 

 

 

 木星トカゲがグラドス軍じゃなく元々は地球人だったって衝撃の事実が判明するハプニングはあったけど、当初の目的だったアキトの回収も無事終わり、アタシ達は月から地球へ戻ることになるのかと思ったら、そうはならなかった。

 

 なにやら連合軍からの要請で月での作戦に参加することになったんだって。

 

 月の裏側にはまだ多くのチューリップがあって、敵の勢力圏になっているんだ。

 軍としては、そのチューリップの掃討作戦を計画していて、その先駆けとして、ラダム獣に占拠された基地を奪還して最前線基地にするんだって。

 

 で、その奪還作戦に選ばれたのが、アタシ達ナデシコ。

 

 

 なんでもあのコルベットが計画、立案したんだってさ。

 そりゃアタシ達なら成功率は他より高いだろうけどさ。手柄は自分のものにするって魂胆が見え見えで嫌になるね。

 

 でも、おかげで上機嫌でアキトが戻ってきてもなにも言わなかったのは運がよかったのかも。

 

 

 作戦の開始は数日あと。

 だから、休養もかねて1日半舷上陸が認められたんだ。

 

 

 やったー!

 

 

 地上だと誘拐騒ぎとかで迂闊に出歩けなかったから、これはいい機会だよね。

 月の食べ物ってなにがあるんだろう。

 

 前に来た時は全然食べられなかったから、すっごく楽しみ!

 

 

「統夜! アタシ達はどうする!? せっかくだからどっか行こうよ!」

 

「俺は別にこれといってしたいことはないなぁ。のんびりできるだけでもいいかな」

 

 

 むむっ。反応が鈍い。

 これは一日ゴロゴロしたいって厄介な状況だ。この状態の統夜を外に連れ出すのはとっても大変なんだ。

 

 でも、統夜がいないとアタシの三本目の手がなくなっちゃう。買い食いでたくさん物がもてなくなっちゃう!

 

 あくまで、食べ物持ちなんだから、勘違いしないよーに!

 

 さてどうしよう。

 どうすれば、統夜を連れて行けるかな……

 

 

「わたし、大きいチョコレートケーキ食べに行きたいです」

 

 

 あんまり自己主張しないメルアが、いきなりそんなことを言い放った。

 

 

「は?」

 

 いきなりのことに、統夜が目を丸くする。

 

 

「連れてってください」

 

 ずいっと、統夜に上目遣いで詰め寄るメルア。

 

 

「つ、連れてけって、どこに行ったらそんなの食えるんだよ。俺知らないぞ」

 

 

「連れてってください」

 

 目をそらそうとする統夜に、さらに詰め寄るメルア。

 

 

「いや、だから……」

 

 

 こ、これは、効いてる!

 いけるよメルア! このまま一気に押すんだ!

 

 

「チョコレートパフェも食べたいです。連れてって」

 

 

「……カティア、頼むよ」

 

 統夜が、折れた。

 

 

「しかたないわね。調べておくわ」

 

 カティアが苦笑いしながら、そううなずいた。

 

 

「やったぁ!」

 

 メルアと一緒に喜ぶ。みんなで食べ歩きだー。

 

 

「さすがメルア。計算だかいねー。このこの」

 

「え? わたしは素直に言っただけだよ?」

 

 きょとんと、純粋な視線で返された。

 

 あれを計算じゃなく天然でやったっていうの。メルア、恐ろしい子っ!

 

 

「?」

 

 アタシの言った意味がホントにわからないようで、首をかしげている。

 ええい、かわいいなー。アタシが男ならほっとかないぞー。

 

 

「店が見つかったから行くぞー」

 

 

「はーい」

「わわっ、待ってー」

 

 アタシとメルアは、地図を見ているカティアと、呼ぶ統夜を追いかけた。

 

 

 月の街を回って色々食べたり飲んだり楽しんだりした。

 

 

 ちなみにだけど、お金の面は大丈夫。

 アタシ達一応エースパイロットだから、お給料は、「嘘!?」って5回くらい数字を確認しちゃうくらいに貰ってる。

 

 まあ、命かけてるから当然かもしれないけどね。

 

 だから、いくら食べても大丈夫なのだ!

 

 

 ……ま、その分別のところが増えるけど。

 

 

 

 月の街を歩いていたら、買い物中のミリー(テッカマンブレード)とアキ(テッカマンブレード)さん。ついでに荷物もちの雅人(ダンクーガ)の一団と会った。

 

 雅人、ホントに荷物持ちさせられたんだ……

 

 

 せっかくだから、アタシ達も一緒になにか買おうかということになったんだ。

 

 

「ま、まだ買うの……?」

 

「諦めましょう」

 

 雅人と統夜がなにか言ってたけど、女の子の買い物についてきたのが運のつきだよ!

 

 

 一緒に買い物をしていると、ミリーが人ごみの中にDボウイを見つけた。

 

 声をかけたんだけど、アタシ達に気づかなかったのか、そのままどっか行っちゃった。

 

 

「一人で街に出てくるなら一緒に来ればよかったのに」

「ねえ」

 

 アキさんも少し残念そうだ。

 

 雅人と統夜も。

 こっちは多分別の意味だろうけど(荷物持ち欲しい)。

 

 

 ナデシコに戻って聞いたらDボウイは今日外に出てないって言われちゃった。

 みんなとトレーニングしていたんだから、そんな暇ないって。

 

 じゃあ、人違いだったのか。

 

 他人の空ににしては雰囲気からなにまで良く似ていたと思うんだけど……

 

 

 でも、それを聞いたらDボウイはなにか考えこんじゃった。

 そんなに自分のそっくりさんのことが気になるのかな。

 

 あ、でも確かに自分とそっくりな人がいるって言われたら会いたくなるかも!

 

 

 この時、まだアタシ達は気づいていなかったんだ。

 Dボウイの異変に……

 

 

 

──華麗なるル・カイン──

 

 

 

 短い休息も終わり、コルベットがたてたという鳴り物入りの奪還作戦がはじまった。

 

 ラダム獣に占拠された基地の奪還。

 それが静かにはじまる。

 

 基地外のラダム獣の排除が終わると、中の排除は志願したブレードにまかされた。

 

 コルベットは素直に従うブレードに上機嫌であったが、ブレードにはある予感があった。

 かつて、ダガーが現われた時と同じ予感。

 

 すなわち、新たなテッカマンがここにいるという感覚だ。

 

 予感は当たる。

 そこには彼の双子の弟、テッカマンエビルがいた。

 

 

 戦いながら基地の外へと出たブレードとエビル。

 

 

 たいしたダメージも与えておらず、戦いはこれからだというのに、どこか苦しそうなブレードを見て、その理由を悟るエビル。

 それを利用し、よいことを思いついたエビルは一度この場から撤退するのだった。

 

 その考えを実行するに相応しい舞台が整うまで……

 

 

 ブレードの異変はナデシコの面々も気づいた。

 どうしたのかと問うと、彼はなにも答えず変身を解き、ナデシコに戻ってきてしまった。

 

 格納庫内では、疲弊したDボウイが倒れる。

 

 

 一体どういうことだと同乗していたコルベットが怒りをあらわにするが、木連が現われたことによりそれについて問答している暇はなくなってしまった。

 

 しかも、月軌道でチューリップ掃討作戦に参加するため集結していた第8艦隊がグラドス軍に襲撃を受けたと知らせがはいる。

 

 なんとしても救援にむかえとコルベットはのたまうが、目の前には木連がいる。

 それを倒さずして救援に行くのは無理な話だった。

 

 

 当然、簡単には通してくれない。

 現われた木連との戦いがはじまった。

 

 

 また現われた有人機を撃破し、木連を撤退に追いこむことに成功したが、その時すでに第8艦隊は壊滅してしまっていた……

 

 

 ナデシコが木連と戦っているという短い時間だというのに、旗艦であるメネラオスは沈み、提督の脱出は確認されなかったという。

 

 

 その艦隊を壊滅させた一団。グラドスの地球制圧部隊の本隊がナデシコの前に現われた。

 

 先頭にいたのは金色のSPT。第8艦隊のメネラオスと対チューリップ用に配備された月面フレームをたった1機で破壊したという機体だった。

 エイジさえ知らぬ最新の機体である。

 

 

 エイジはそのグラドス艦隊総司令に話があると交渉を求めた。

 彼はしばらく前、グラドス創世の秘密をレイズナーのコンピュータから得ていたのだ。

 

 それをもって、グラドスの地球侵攻をやめさせることが出来るかもしれないと考えていたからだ。

 

 

 しかし、その総司令は先の金色のSPTを駆る、ル・カインという男だった。

 ル・カインは自信と自惚れのつかぬほどの天才的な腕前を持つパイロットであり、優秀な自分達が下等な生き物を管理してやることこそが他星の奴等の幸せだとのたまうほどの自信家だった。

 

 そんな男が、地球人とのハーフであるエイジの話をまともに取り合うわけがない。

 エイジとの交渉は決裂し、彼は配下をナデシコに差し向ける。

 

 グラドスの大軍が迫る。

 ナデシコ一隻の戦力では艦隊を打ち破るほどの物量は相手に出来ない。

 

 ゆえに、この場から撤退すること選択する。

 

 

 グラドス軍の数を減らし、穴が開いたところを一気に突破する。

 

 

 そうしてグラドス軍の数を減らす中、再びル・カインが部下を伴い姿を現した。

 そこには、元連合軍将校シャピロの姿もあった。

 

 グラドスにくだった地球人がいたことに驚くナデシコの面々。

 だがシャピロは、「地球に寝返るグラドス人がいるのだから、その逆を考える者がいても不思議はないだろう」と言ってのけた。

 

 エイジとお前を一緒にするなと誰もが思うが、今の戦力差ではシャピロを倒すこともかなわない。

 

 

 さらにナデシコは敵の数を減らし、敵陣を突破。月面を脱出するのに成功した。

 

 

 追っ手はない。

 月面にグラドス軍が現われたということは、その目的はナデシコではなかったのだから……

 

 

 

 ……その日、月は、グラドスの手に落ちた。

 

 

 

──テニア──

 

 

 

 グラドスの地球侵略の総司令って奴が現われた。

 

 金ぴかのPSTに乗って、とんでもない自信過剰な奴だ。

 エイジが軍を引いてもらおうとそいつと話をしたけど、やっぱりダメだった。

 

 

 そもそもなんなんだよ。

 こっちを見て下等な存在って。地球人が争いをやめないから統治するって建前があるんなら、もっと言い方とやり方があるだろ!

 

 そっちが圧倒的に上等な存在だっていうのなら、アタシ達に争わずに済むような叡智を授けてみろってんだい!

 

 それをしないで武力で制圧するなんて、どっちが争いをやめられない存在だよ!

 

 

 思いっきり憤ってみたけど、逃げてきたアタシ達じゃ負け犬の遠吠えにしかならない。

 エイジが言うには、ル・カイン相手じゃ交渉は不可能だから、奴等を一度叩き返して、そこから本国との交渉に望みをつながなきゃいけないということだった。

 

 エイジ。

 必死に頑張って地球とグラドスの戦いを避けようと頑張ってきたあんたはまた辛い立場になっちゃったね。

 

 でも、アタシ達はみんなエイジの味方だよ!

 

 ……これ、何度か言ってる気がするけどね。

 

 

 それと、Dボウイの方も心配。

 

 ずっとなにも言ってくれないのは、きっとなにか言いたくないことがあるんだと思うけど……

 

 

 Dボウイ、アタシ達はエスパーじゃないんだから、言ってくれないとなにもわからないんだよ。

 

 辛いのなら、辛いって言ってくれていいんだよ。

 みんなが、受け止めてくれるから。

 

 仲間なんだから……

 

 

 

 色々な問題が解決しないまま、アタシ達は一度、地球に戻る……

 

 

 

 第9話 月へ向かうルート 終わり

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