スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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第11話 雪降り積もる森の中で

──雪が降り積もった森──

 

 

 

 バイタル・ネット作戦後、飛び出したナッキィ(ブレンパワード)を追い、クインシィ(ブレンパワード)の急襲に巻きこまれた勇(ブレンパワード)と統夜達。

 

 彼等は攻撃の衝撃でバイタル・ネットにひっかかり、北欧の雪が降り積もる森に飛ばされてしまっていた。

 

 

 そこで勇と統夜は、ネリーという女とネリー・ブレンというアンチボディ(ブレンパワード)に出会う。

 

 

 彼等が飛ばされた場所はバイタル・ネットがクロスする場所であり、オーガニック・エナジーによって結界が張られたような状態になっていた。

 それが弱まり解除されるまで、その結果意から外に出ることはかなわず、彼等はこの雪が降り積もる土地に閉じこめられることとなる……

 

 

 

──カティア搭乗時──

 

 

 

 雪が降り積もる森の中、統夜とカティアはコックピットに籠り作業をしていた。

 ここに墜落した際、その衝撃でバランサーが来るってしまい、その調整をしているのだ。

 

 

「ここで出来る調整はこれくらいかな。ラダムや木星トカゲが出ても、これならなんとかやれるだろ」

 

「……ええ」

 サブシートで作業をしながら、カティアがどこか不機嫌そうに答えを返した。

 

 怒っているように、ぷくっと頬を膨らませている。

 

 

「どうした?」

 

「……どうしてあんなことをしたの?」

 

「あんなこと?」

 

「ユウ君の身代わりになろうとしたことよ。こうしてバイタル・ネットに飛ばされたよかったけど、一歩間違えれば一緒に破壊されていたかもしれないのよ」

 

 怒りの視線が、統夜を貫く。

 その視線に、統夜は思わずひるんでしまった。

 

 逃げるようにカティアから視線を外し、言い訳に口を開く。

 

 

「し、しかたないだろう。他に思いつかなかったんだ」

 とっさに体が動いてしまったといってもいい。

 

 とどめを刺されようとする勇とユウ・ブレンを守ろうとしてあの時出来たのは、間に割りこむことだけだったのだ。

 

 

「しかたがないで済むことではないわ。やり方は他にもあったはずよ。例えば、あのグランチャーを攻撃するとか!」

 

「それじゃあ、勇の姉さんを傷つけることになる。そうしたら勇が悲しむだろ」

 

 

「っ!」

 

 統夜はあの瞬間、そこまで考えていた。

 それがわかり、カティアの頭に血が上る。

 

「あなたは、またっ……!」

 

「……また?」

 

 

「どうしてそんなに他人のことまで抱えこもうとするの! 前にも言ったじゃない。あなたはなんでも一人で抱えこみすぎるって! そのままじゃ、潰れてしまうって! 今回のこれは、一歩間違えればそうなっていたことなのよ!」

 

「……」

 

 怒鳴り声をあげたカティアを見て、統夜はぽかんと口をあけた。

 

 

「だから、だから……うぅ……」

 

 カティアの瞳に涙がにじみ、彼女はそれを拭った。

 

 

「……カティアでも、そんな風に怒鳴ったり泣いたりするんだな」

 

「統夜!」

 

 統夜から出てきた的外れな感想に、また怒鳴る。

 

 

「ごめん。いつも冷静なところしか見てなかったから」

 

「……」

 

 

「でも、そこまで俺のことを考えていてくれたのか……」

 

 

「……いいえ。違うわ。きっと、違う。そうじゃないの。私はきっと統夜君のことなんて考えてない。私は、私のことしか考えてないの……」

 

「? どういうことだ?」

 

 

「私が恐れているのは、統夜君とグランティードが失われること。私に残されたのは、グランティードで戦うこと。それしか残されていない。他にはもう、なにもない。だから、あなたを心配してる。無茶をやめさせようとしてる。これはきっと、私の保身でしかないの……!」

 

 カティアは床に視線を落とし、冷静に、そう、自分を分析した。

 

 統夜の重荷を心配したのも、それでパフォーマンスが落ちれば撃墜される可能性があがるから。

 そうなれば、グランティードは失われ、カティアに残されたすべても失われる。

 

 だから、カティアは統夜のことを心配していた。

 自分の行く末が心配だから、統夜を心配した。

 

 彼女は、そう自分で自分を分析したのだ……

 

 

「……なんだ、そんなことか」

 

「そ、そんなこと!? 私は、統夜君を私のためだけに利用していたのよ。それを、そんなことだなんて!」

 

「そんなことだよ。自分のことしか考えていないというのなら、もっともっとわがままに生きなきゃダメだろ」

 

「……え?」

 

「それを言い出したら、俺だって自分のためにお前達に乗ってもらっている。俺だって、グランティードがなければなにも出来ないし、行くとこだってない。そもそも、俺達はグランティードに一緒に乗る運命共同体なんだから、その破壊を心配するのは当然の話だ」

 

 

 唖然とするカティアに、統夜は言葉を続ける。

 

 

「むしろ、保身だっていいじゃないか。人間なんだから当然じゃないか。そんな当たり前のことを、カティアは謝っているんだ。それはおかしな話だろう? それより、このまま俺達にはなにもない。という考えで終わらせる方が間違っていると思う。他になにもない。というのなら、なにかを見つければいいんだ。生きるために、生きていくためのなにかを」

 

「……」

 

「こいつに乗っている限り、俺達は同じ道を往くしかない。ならさ、一緒に探せばいい。俺とカティアで。テニアとメルアだっている。そうだろ?」

 

「……そう、ね。その通りだわ。私はいつの間にか、諦めていたのかもしれない。考えるのを、やめていたのかもしれない。ありがとう統夜君。そのなにか、一緒に探しましょう」

 

「もちろんだよ」

 

 

 顔を上げがカティアに、統夜は手を伸ばした。

 

 

「そろそろネリーの小屋に戻ろう」

 

「ええ」

 

 

 二人は一路、ネリーの小屋へ戻るため、コックピットを出る。

 外は、一面銀世界だ。

 

 

「ああそうだ」

 

「なに?」

 

「例え自分のためとカティアが言っても、俺はカティアに取り乱すほど心配してもらえて嬉しかったよ。ありがとな」

 

 

「……い、いまさらそれ蒸し返さないで!」

 

 

 真っ赤になったカティアは、一人ネリーの小屋へ歩いて行ってしまうのだった。

 

 

 

──テニア搭乗時──

 

 

 

 雪が降り積もる森の中、統夜とテニアはコックピットに籠り作業をしていた。

 ここに墜落した際、その衝撃でバランサーが来るってしまい、その調整をしているのだ。

 

 

「ここで出来る調整はこれくらいかな。ラダムや木星トカゲが出ても、これならなんとかやれるだろ」

 

「そうだね!」

 

 

 調整も終わり、二人は外に顔を出した。

 外は一面の銀世界。

 

 しんと静まり返った、静寂の世界だった。

 

 

「おおー。統夜見て見て。雪だらけでキラキラしてる」

 

 雪が月明かりに反射し、白と黒のコントラストに輝きを与えている。

 それを見て、テニアはとても楽しそうに笑った。

 

 

「なんだよいきなり。なんでそんなに楽しそうなんだお前」

 

「えへへー。だってさ、こういうのって滅多にないもん。二人でのんびり出来るのってさ」

 

「のんびりってお前。状況わかってるのか?」

 

「わかってるよ。しばらくここから出られないんでしょ?」

 

 だというのに、テニアは本当に楽しそうだ。

 

 

「なら、なんで……? あ……」

 

 そこで統夜は、あることに思い当たった。

 

 テニアは火星に行った当初、不安を押し殺すため、虚勢を張って空元気で明るく振舞っていた。

 それと同じく、今もワザと明るく振舞っているのではないか。と。

 

 

「……ひょっとして、お前」

 

 

「ううん。違うよ。アタシは全然不安じゃない。ごまかしてなんていないよ」

 

 

 テニアはぴょん。と雪原に飛び降り、大きな足跡をそこに残す。

 

 

「今、怖くないんだ。全然平気。だって、統夜も一緒だもん」

 

「どういうことだ?」

 

「統夜がいて、グランティードがあるなら、なにも問題はないんだって。アタシはそう信じてるんだ」

 

 

 テニアは、くるりと回り、統夜に背を向け空を見た。

 

 

「Dボウイのことだけどさ、やっぱり記憶喪失なんかじゃないと思うんだ」

 

「いきなりなんだよ?」

 

「たぶん、嫌なことがいっぱいあったんだと思う。今のアタシ達も、統夜と一緒にグランティードに乗って戦う以外なんにもない。逃げる場所も、これからどうなっちゃうのかもわからない。アタシね、そのこと考えると怖くて怖くてどうにかなっちゃいそうなこともある。きっと、Dボウイもそういうグチャグチャをいっぱい抱えてるんだよ」

 

「……」

 

「でも、アタシにはカティアとメルアがいて、なにより統夜がいてくれるから。アタシ達と命を共有して、いつも側にいて一緒に戦ってくれる人が」

 

 

 彼女はくるりと振り返り、統夜に振り返った。

 

 

「だから、アタシは信じるの。統夜が一緒にいてくれる限り、なにもかもがいい方向へいってくれる。統夜が一緒にいて、グランティードで戦い続けている限り、なんにも心配することはないんだって!」

 

 そして、にぱーっと笑った。

 八重歯が出て、満面の笑顔というヤツである。

 

 そこには確かに、不安の種というものは欠片も感じられなかった。

 

 

「お前……」

 

「えっへっへー。どう?」

 

 

「……ホント、バカだなぁ」

 

 

「なんだとー!?」

 

 

 統夜は笑った。

 テニアも笑った。

 

 

 二人の笑いは、不安なんてその場にない、心底楽しいと思える笑いだった。

 

 彼女はもう、大丈夫。

 不安に押しつぶされたりなどしないだろう。

 

 

「ま、お前の言うとおりだ。当分ここにいるハメになるなら、余計な心配をしてもしょうがないよな。のんびりしなきゃ損だ。そろそろ戻ろう。ネリーさんが起きてたら、なにか食べ物をわけてもらおう。お腹減ってるだろ?」

 

「うん!」

 

 

 元気良く返事をしたテニアと共に、統夜はネリーの小屋を目指す。

 

 

 

──メルア搭乗時──

 

 

 

 雪が降り積もる森の中、統夜とメルアはコックピットに籠り作業をしていた。

 ここに墜落した際、その衝撃でバランサーが来るってしまい、その調整をしているのだ。

 

 

「ここで出来る調整はこれくらいかな。ラダムや木星トカゲが出ても、これならなんとかやれるだろ」

 

「……」

 

 作業も終わり、顔を上げた統夜だったが、サブシートに座るメルアから反応が返ってこなかった。

 

 

「メルア、どうした? なにかおかしいところでもあったか?」

 

「え? あ、違います。大丈夫ですよ」

 

 統夜に声をかけられ、メルアははっと視線をモニターから統夜にあげた。

 その瞳には少し、涙がにじんでいるように見えた。

 

 

「……どうしたんだ?」

 

 

「……ちょっと、思い出したんです。雪を見ていて、お父さんと、お母さんのことを。私が甘い物を好きなのは、お父さんの影響なんです。お母さんが作るチョコレートケーキや、クッキー。そして、雪のように白いアイスが大好きだったから……」

 

 だから、雪を見て、思わず思い出してしまった……

 

 

「そうか。父親の影響か」

 

「わたしとお母さんは地球でいつも暮らしていて、お父さんはいつも月にいて、わたし達はたまにしか会えませんでした。会える時はいつも、お父さんが好きなお菓子をお母さんが用意していたんです」

 

「メルアの母さんもアシュアリー・クロイツェルの社員だったのか?」

 

「はい。わたしを生んだ後は在宅勤務になったんです」

 

「そうか……」

 

 

 そのままあの日、メルアと共に月へ来なければ……いや、そのもしもを考えても意味はない。

 その過去は、変えられないのだから。

 

 

 沈黙が、場を支配した。

 

 

 あるのは、月明かりを反射し、キラキラと光る雪だけ……

 

 

「……なんだかとっても静かですね、統夜さん」

 

「そうだな。この平穏が、ずっと続けばいいのにな」

 

 

 そうするわけにはいかないのはわかっている。

 

 統夜達はまだ、自分達がなにものなのか知らない。

 自分達の正体を知るあの男から、その謎を聞きださなければならない。

 

 そのために、立ち止まってはいられないのだ……

 

 

「メルアはさ、こいつに乗って戦うの、平気か?」

 

「……この子に乗るのは、戦うためだから。それはあまり好きじゃないです。でも、わたし達がわたし達であるために、やらなくちゃいけないことだから、ガマンできます」

 

「……」

 

「けれど、サイトロンはわたし達や統夜さんが戦うところを見せてくれても、その先のことは教えてくれません。これから、わたし達がどうなるのかも……」

 

「……ごめんな。俺はお前達になにもしてやれてない」

 

「そんなことはありませんよ。統夜さんは、こうしてこの子に乗ってくれています」

 

「それはメルアだって同じじゃないか。むしろ俺は、自信がない。最後までこいつやお前を守っていけるかどうか。全力でやるつもりでいるけど、今回みたいな危ない目にあわせてしまっている……」

 

「いいえ。統夜さんは、いつもわたし達を守ってくれてます。勇気をくれます。カティアちゃんもテニアちゃんもきっとそんなことはないと言うに決まってますよ。むしろ、わたし達の方が統夜さんの支えになっているか不安なくらいです」

 

「お前達は十分俺の支えになってるよ。一人だったら間違いなく逃げ出して、どこかでのたれ死んでいたよ」

 

 

「ふふっ。なら、安心です」

 

 

「俺がお前達を守り、お前達が俺を守る。このグランティードはその契約の証ってとこだな」

 

「はい」

 

「戦わなくてはならないという呪縛……呪いの証かもしれないけどな」

 

「そんなこと言ったらこの子が可哀想ですよ。いつも頑張ってくれているのに」

 

 

「そうか?」

 

「そうです」

 

 

「そっか」

 

「はい!」

 

 

 二人は、笑いあった。

 

 

「そろそろ戻ろうか。あとは明日にしよう。俺達が出れないなら、敵も入ってこれないわけだしさ」

 

「はい。あ、そうだ。ネリーさんとユウさんにも、チョコわけてあげますね」

 

「……どこに入れてた。バレたらテニアが怒るぞ」

 

「統夜さんももう共犯です。一緒に怒られましょう!」

 

「証拠隠滅する以外に道はない。か……」

 

 

 音を吸いこみ生まれた雪の静寂の中、二人の笑いが木霊した。

 

 

 

──カーテンの向こうで──

 

 

 

 雪もおさまり、バイダル・グロウブの力も弱まり、結界がゆらきはじめ、いよいよ脱出できるようになった。

 

 ネリーはこのままここに残るといい、統夜達は帰るための準備をはじめる。

 

 

 しかし、突如ネリーの小屋が吹き飛んだ。

 バロンズゥを駆るジョナサンがネリーを狙い襲撃してきたのだ。

 

 新たに現われたバロン・マクシミリアンの命により、バロンズゥを操るジョナサン。

 ネリーを守るため、不調の残る機体で戦うが、統夜達は苦戦を強いられる。

 

 統夜の機体は再びバランサーが狂い飛行不能となり、ユウ・ブレンとネリー・ブレンの身体は大きく傷ついた。

 

 

 とどめをさそうと迫るバロンズゥに対し、ユウ・ブレンとネリー・ブレンの間に光が生まれる。

 

 それは、リバイバルの光。

 二体のアンチボディがプレートに戻り、再リバイバルをしようとする光だった。

 

 その光に巻きこまれてはたまらないと、バロンの命によりジョナサンはバロンをつれその場から飛び去り、再リバイバルが終わった。

 

 

 そこにいたのは、一体のアンチ・ボディ。

 ユウ・ブレンとネリーをとりこみ、新たなブレンパワードが誕生したのだ。

 

 

 雪原に、静寂が戻る……

 

 

 不調だったバランサーを再調整し、再び飛べるようになった統夜達の元にグラドスの無人機が姿を現した。

 それは結界が完全に解けたという証であったが、無人機は容赦なく統夜達に襲い掛かる。

 

 

 無人機を蹴散らす中、統夜達を探しに来たナデシコが雪原に現われた。

 

 さらにオルファン浮上による異常現象の調査にやってきたシャピロ達グラドス軍のSPTまで現われ戦うこととなるが、それを全部叩き返し、統夜達は無事ナデシコと合流をはたすことができたのだった。

 

 

 こうして、統夜に与えられたほんの少しの休息の時間は、終わりを告げる……

 

 

 

 

 第11話終わり

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