──ジュア=ム襲来──
ハウドラゴン、もしくはテッカマンを退けると、統夜達が予期したとおり、彼等は現われた。
「ふん、ウヨウヨいやがるぜ」
分艦隊の面々を見て、現われたジュア=ムははき捨てるよつぶやいた。
「準騎士殿。よろしいのですか? 今回我等が出た目的はあくまで調査のため。騎士様はそれ以外の行動はとるなと……」
「ふん。あいつをやっちまえば調査もなにもあるか。あいつさえいなけりゃ他の戦力を警戒するなんてしなくていいんだ。アレさえなけりゃ、こんな調査なんてしなくてすむ。そうだろう?」
この場においてもっとも位が高いジュア=ムが命令違反をすると察した従士がたしなめようとしたが、ジュア=ムはそのようなことに耳を貸さなかった。
むしろ今の事態をチャンスと捉えている。
(アル=ヴァン様はあいつと会ってから消極的になられた。いったいなにを迷われているのだ。あいつが何者か、アル=ヴァン様は知っているように見えた。だとしたら、あいつのせいだ。俺があいつを始末すれば、あの方は元に戻るに違いない!)
「ジュア=ム殿……」
「いいからお前達は言われたとおりにしていればいいんだよ! アレは我等の目的のためには存在してはいけないものだ! それを潰してお叱りを受けることなどない! 総代騎士グ=ランドン様も、機会があればそうせよとおっしゃられた! アル=ヴァン様とて認めてくださる! すべて我等が民のためなのだぞ!」
「……はっ!」
ジュア=ムの言葉を聞き、従士達は反論をやめた。
騎士の中でもっとも位の高い総代騎士からのお許しがでているというならば、反論する理由もない。
「よぉし! かかるぞお前達! いいな、目標は奴のみだ。邪魔ならあとのゴミどもも潰せ! 今日こそ、俺達で仕留めるぞ!」
「来るぞ、みんな!」
ジュア=ム達の戦いの意思を感じ取った統夜が皆に警告を行う。
戦闘が、はじまった。
ジュア=ムの率いる謎の機体を操る騎士団は強かった。
しかし、隊をわけ、半分の戦力しかなくとも、地球を守るスーパーロボット集団はもっと強かった。
マジンカイザーのターボスマッシャーパンチが。
グレートマジンガーのサンダーブレークが。
ダンクーガの断空光牙剣が。
シャイニングガンダムのシャイニングフィンガーソードが。
次々と、迫り来る敵を撃退して行く。
なにより、グランティードを駆る統夜は、以前よりさらに強さを増していた……!
「チィッ、こいつら! 無駄なあがきを!」
「行ったぞ、統夜!」
猛攻を抜け、ジュア=ムのヴォルレントが統夜に迫る。
ヴォルレントの武器とグランティードの武器がぶつかり、はじきあう。
「そう簡単にやられてたまるか! お前を倒して、お前達の正体と目的。そしてお前達が知っている俺達のことを聞かせてもらう!」
「やかましいんだよ! 娘はともかく、貴様のことなど俺が知るわきゃないだろう!」
「なに?」
「貴様が同胞だろうがなんだろうがそんなの俺の知ったことかよ! 我等の邪魔をするから消す! その機体と出来損ないと一緒に粉々に吹き飛ぶがいい!」
「彼は、統夜君のことをしらない……?」(カティア搭乗の場合)
「統夜、あいつホントに知らないんじゃ……」(テニア搭乗の場合)
「あの人、知らないんでしょうか……?」(メルア搭乗の場合)
あの日、アシュアリーから逃げた彼女達を追ってきたのはこのジュア=ムが駆る機体に間違いない。
だから、彼女達三人のことは知っている。
だが、ジュア=ムは統夜のことはまったく知らないようだった。
「どういうことだ。おい、この前のあの指揮官はどうした!」
「フン、アル=ヴァン様の手をわずらわせるまでもない。貴様らなどこの俺が始末してやるってんだよ!」
ジュア=ムが統夜を倒すため再び迫った。
「これで終わりだー!」
「誰が!」
二機の体が交錯する。
「ば、かな……」
驚愕の表情を見せたのは、準騎士の男だった。
ジュア=ムの攻撃が空を切り、統夜の一撃がジュア=ムの乗るヴォルレントを貫いていた。
信じられないとジュア=ムは目を見開く。
この瞬間、ジュア=ムと統夜の力量差は完全に逆転した……
機体の半身が砕け、ゆらゆらと地面に落ちてゆく。
「く、くそっ。まだだ、まだ動け! あいつをやれずに、帰れるかぁっ!!」
レバーをがちゃがちゃと動かすが、その機体で戦うことはもう不可能だった。
それでも彼は戦おうとする。
「そこまでだジュア=ム。私の指示を無視するとはどういうつもりだ。退け」
戦場に、アル=ヴァンの乗るラフトクランズが姿を現した。
空間転移である。
「アル=ヴァン様!? しかし!!」
「あれの始末はいずれ私がつける。今は退くのだ。それとも、この上まだ私の命令に背くつもりか。準騎士ジュア=ム」
「……ハッ」
アル=ヴァンに叱責され、ジュア=ムは悔しそうにその撤退命令に従った。
ジュア=ムの撤退により、残された従士達も次々転移で撤退して行く。
残るのは、アル=ヴァンのラフトクランズ一機だ。
現われ、残るのそれが、件の指揮官機であると統夜達は気づいた。
「おい、あんた。アル=ヴァンって言うんだろ。ずいぶん遅い到着じゃないか。あいつは俺のことを知らないって言ってったけど、あんたは俺のことを知っている。そうだな?」
「その通りだ。私は君を知っている。いや、正確には私の知っているのは別の少年だが、彼が君であるのは間違いない」
「またわけのわからないことを! だったら今度こそそれを聞かせてもらう! いったいどういうことなのか。なぜアシュアリーを襲ったのか、全部だ!」
「それは、私が倒れる時あらばと言ったはずだ」
「なら、あんたを倒す! どうせあんたはこいつを破壊しようとしているんだ。勝つ前提で俺はいかせてもらう!」
「ならばなおのこと、今ここで君達と戦うつもりはない。君と私、どちらが倒れることになるかはわからぬが、それは今、この時ではない。ならば、ここで戦うことに意味はない」
「なにが……っ!」
統夜の脳裏に、ここではない別の風景が流れこんだ。
戦う自分とアル=ヴァン。
決着の時と思われる瞬間だが、それは、この場所ではなかった。
「っ! これは……」
「……君も、見えたか。未来の断片が」
「サイトロン……」
「そうだ。私と君達は、ここではない場所で戦っている。サイトロンが運ぶ未来の断片も絶対ではないが、私はその時まで君達と戦うつもりはない。時が至るまでその刃を磨くがいい。では、いずれ、な」
一方的にそれだけ告げると、アル=ヴァンは現われた時と同じように光に包まれ消えてしまった。
「……くそっ、またか。なんなんだ。なんなんだよ!」
結局、なにもわかったことはなく、憤りだけが募った統夜であった。
皆、心配の情を見せるが、かける言葉は見つからない。
彼の求める答えを示してあげることが出来ないからだ。
それは、アル=ヴァンの言う『その時』とやらが来るまで待たねばならない……
──その名はフューリー──
ハウドラゴンとの決戦も、ソルトレイクに幽閉されていたDボウイの一件も終わりを告げ、再び艦隊が日本に集合した。
ヨコスカ基地、会議室。
「統夜さん」
「マサト、無事だったか」
ハウドラゴンとの決着でマサトと美久はゼオライマーと共に一時行方不明となった。
その際、ゼオライマーは大破したが、救いたいと願った美久によりマサトの命は救われたのだ。
大破したゼオライマーをラスト・ガーディアンにて修理する予定だが、その前にあることを伝えるため、統夜に会いに来たのだ。
「統夜、マサトがあいつらの件で話があるってよ」
マサト共にアークエンジェルに残った豹馬も顔を出す。
あいつら、というのは先ほど統夜が戦ったジュア=ム達の一団のことだ。
「あいつら? 待ってくれ。どうしてあいつらのことで、マサトが……?」
「木原マサキのことだと言ったら、わかってもらえますか?」
「木原、マサキ……?」
マサトの言葉に、カティアが首をひねる。
「どういうことなんですか?」
メルアが聞き返した。
「かつて、鉄甲龍(ハウドラゴン)でゼオライマーをつくり、そして僕の……僕の“オリジナル”である木原マサキがどういう人物であるかについては、今は重要ではありません。問題なのは、彼があの敵。未知の技術を持ち、グランティードを狙うあの敵のことを知っていた。ということなんです」
「ええっ!?」
「それってホントなの!?」
カティアとテニアが驚きの声をあげた。
誰も知らなかった敵のことを知っているのだ。驚いて当然である。
「教えてくれマサト。なんでもいい。あいつらのことを知っているなら、話してくれ。どんな小さなことでもかまわない!」
統夜が掴みかからんばかりにマサトにつめよった。
「あくまでもこれは木原マサキの知識であり、それが真実かどうかについてはわからないことは先にお断りしておきます」
「ああ」
「17年前のことです。当時『次元連結システム』を開発中だったマサキは、ある時些細な偶然から月面に時折現われる“特異点”の存在に気づきました。彼はそれを不審に思い、調査をはじめたのです……」
……
…………
「……『フューリー』?」
「はい。彼等は自分をそう呼んでいるそうです。マサキは彼等が“月の中”にいると考えました」
「月って、あの月ですよね?」
「あの月。だろうね」
メルアとテニアがうなずきあう。
「それがなんなのか、彼等がどこから来ていつからいるのかはわかりません。でも彼等はそこにいる。そして、この『自分達の星』に存在するイレギュラーな生命体。人類を排除しようとしています。マサキはそれを知り、彼等もまた自分が倒すべき敵だと認識したんです」
「つまり、そのフューリーも地球を狙う異星人ってわけか」
豹馬がマサトの説明を聞き、そう結論づけた。
「異星人。と呼んでいいのかわかりませんが。彼等が人類を抹殺しようとしているのは事実です」
「敵。か。確かに奴等は手ごわいぜ。グランティードがいなきゃ対抗できない例のシステムもある。でもよ、だったらなんで今なんだ? 少なくともそん時にはもういたんだろ?」
「そうよ。それにアシュアリーを襲撃したり、グランティードのことだってあるわ」
甲児とさやかが、思いついた疑問をマサトに投げかける。
「すみません。僕が……マサキが知っているのはそれだけで、その襲撃の理由やグランティードのことは……」
「あ、そっか」
「それもそうね」
マサキの知識は17年前のこと。
最近起きたことについて知るはずもない。
「……わからないな」
統夜がぽつりとつぶやいた。
「なにがだ?」
豹馬が聞く。
「それが俺となんの関係があるのかがだ。あいつらは俺のことを同族、同胞だって言った。でもどう考えたって、俺とそんな奴等に関係があるとは思えない。そんな覚えなに一つもない。結局わからない。いったいなにがどうなっているんだ……」
「統夜くん……」
アキトが心配そうに声をかける。
逆に謎ばかりが深まり、それにより統夜もカティア達も不安になってしまっている。
「同胞ってことは、お前の生まれに関係あるのか?」
カガリが思いついた疑問を挟む。
「母さんは5歳の時に病気で、父さんは四年前に月で事故にあっていないから聞きようがない。言っとくけど、本当の親だぞ。父さん年に1回くらいしか帰ってこなくてさ。母さんかが死んでからずっと他所に預けられてて、不安になって調べたことがあるんだ」
「そうか。言いにくいことを聞いて悪かったな」
「いや、いいんだ」
「私達もわからないわ。でも、ひょっとすると両親になにか関係があったのかもしれない。結局は、そのフューリーに直接聞くしかないわ」
「うん」
「そうですよね」
統夜と同じく、サイトロンが使えるということで当てはまる彼女達も、自分からその疑問を口に出した。
フューリーに襲われ、親を失うことになった彼女達にそれを聞くのがはばかれることを察したからだろう。
「しかしなぁ、直接聞きにいくったって、月の中だなんてそんなもんどうすりゃいいんだ? だいたい月にはグラドスの連中がいるんだしさ」
「そうね……」
「どうしようもないですねぇ」
話を遠巻きに聞いていたムウとマリュー。そしてユリカが口を開く。
マサキの情報を確かめにするにしても、肝心の月が今人類の手にないのだ。
これではその情報の信憑性を確かめる手立てさえない。
「とにかく、僕の話はそれだけです。彼等はグランティードを狙うというだけでなく、人類の、僕達の敵です。戦わなければならない」
「『自分達の星』か。なんだよ、結局やろうとしていることはDr.ヘルと同じじゃないか。なら、俺達がその野望を叩き潰してやる!」
甲児が威勢良く拳を握った。
「甲児……」
言い切った甲児を見て、統夜は呆れた。
確かに、そうまとめられてしまったら、それ以上のことはない。
「そうだな。時が来ればむこうからやってくるんだ。今はあいつらのことだけを考えている場合じゃない。マサト、お前は戻って来るんだよな?」
「うん。僕と美久はこれからラスト・ガーディアンでゼオライマーの修復を行います。出来るだけ早く戻ってくるつもりだから」
「ああ。フューリーのこと、教えてくれてありがとな」
「いいんだ。僕の、木原マサキの知識が少しでも人の役に立つのなら、それだけで嬉しいことなんだから」
マサトはもう、逃げることをやめ、自分の宿命を受け入れ、戦うことを決めたようだ。
統夜とマサトは、硬い握手を交わした。
(あいつらと俺達の関係はなんなのかはまだわからない。でも、その時が来た時、必ずその秘密を教えてもらうぞ、アル=ヴァン!)
統夜は、心の中でそう誓うのだった……!
──????──
「アル=ヴァン? 戻ったのですか?」
「シャナ=ミア様。どうされたのですか」
「いえ……。彼は……?」
「健在です。今のところは。ジュア=ムはグ=ランドン様になにか言われたのでしょう。ですが、あれを破壊するには至っておりません。そして、今回話したことで確信がもてました。やはり彼は、あの日の少年です」
「彼は亡くなったと聞きましたが?」
「エ=セルダ様は、あの日ああなることを予見し、彼を最後の切り札として残しておいたのかもしれません」
「もし本当に彼だとすれば、本物かどうか確認する必要があります。できるならば、私の元へつれてきてはもらえませんか?」
……確かに、直接会って話したわけではないから、絶対というわけではない。
世には、某原マサキのようなやり方で新たなパイロットを生み出すすべもあるのだから。
なにより、本当に生きているというのなら、ひと目会いたいという気持ちもわからないでもない。
しかし本物ならば、この場に彼をつれてくるのは致命的な失策となりえる……
だが、完全に別人で同胞が乗っているとすれば、その同胞を殺すのも忍びないということなのだろう。
「……善処いたします」
アル=ヴァンは、そうとだけ答えを返した。
第13話おわり