──対決! デビルガンダム軍団!──
ジョルジュ達新シャッフル同盟を救ってから今だ身を潜め続けるデビルガンダム。
そのため、改めて身も心も引き締めるべくドモン達はしばらく山にこもることにした。
修行中、ドモンの前に謎の覆面男、シュバルツが現われた。
格好は実に怪しいが、彼はかつて、ジョルジュの執事、レイモンドを救い、デビルガンダムの罠を暴いてドモン達を助けた男だ。
その彼がドモンの前に姿を現し、さびついた刀で大木を切り裂くなど、ドモンに技の極意をいくつか見せつける。
だが、ドモンはそこからシュバルツの意図を察することはできなかった。
今の状況でも東方不敗は倒せると豪語するドモン。
ならば! と突然シュバルツはドモンに襲いかかってきた。
それは、本気でドモンを倒す攻撃。
命さえ奪われかねない猛攻だった。
その最中、命の危機を覚えたドモンは明鏡止水に目覚め、シュバルツの猛攻を跳ね除ける。
己の力に驚くドモンを確認すると、シュバルツは攻撃をやめる。
シュバルツは、ドモンに真のスーパーモード、明鏡止水を引き出すため、心を鬼にして攻撃していたのだ……
東方不敗マスターアジアに勝つには怒りのスーパーモードでなく、それを使いこなす以外にないと忠告し、シュバルツは再び姿を消すのだった。
修行を終えた五人が集結する。
修行の成果やシュバルツが今ここにいなかったかなどを話していると、周囲に敵の気配があることに気づいた。
姿を現すデスアーミー。
孤立した彼等をデビルガンダムが狙ってきたのだ。
デスアーミーと戦う中、統夜達もドモン救出に現われる。
現われたデビルガンダム細胞に侵されたミケロ、チャップマンを退け、ドモン達はデビルガンダムと東方不敗を引っ張り出した。
東方不敗の乗るマスターガンダムに一騎討ちを迫るドモン。
迎え撃つ東方不敗に対し、宿敵を目の前にしたドモンは平静を保てず、怒りのスーパーモードを発動させ東方不敗に挑んでしまう。
シュバルツの言葉どおり、怒りのスーパーモードは東方不敗には通じず、逆に手痛い一撃を食らってしまうドモン。
とどめをさされようとするところに、シュバルツがその攻撃の間に入りドモンをかばった。
シュバルツにかばわれ、仲間が共にいると諭されたドモンは冷静さを取り戻す。
改めてとどめをさそうとする東方不敗。
だが、死を目前としたドモンは再び真のスーパーモード、明鏡止水を発動させ、カウンターの一撃を東方不敗へ食らわし、絶体絶命のピンチを切り抜けるのだった。
明鏡止水を習得したドモンは仲間と共にデビルガンダムを撃破することに成功し、東方不敗の乗るマスターガンダムに迫る。
しかし、あと一歩というところでシャイニングガンダムに限界がきてしまった。
このままではドモンがやられてしまう。
そこに、黒騎士アラン(ダンクーガ)がシュバルツが用意させていたドモンの新たな機体、ゴッドガンダムを届けに現われた。
ドモンは戦いの中それに乗り換え、ついに東方不敗を撃破するのだった!
デビルガンダムを倒し、ドモン達の戦いはひとまず終わりを告げる。
しかし、デビルガンダムと東方不敗を倒しても地球が守られたわけではない。
地球を狙う敵はまだまだ多い。ドモン達は引き続き統夜達と共に戦うことを改めて決意するのだった……
──お料理教室──
デビルガンダムとの激闘も終わり、ヨコスカ基地に戻ったナデシコ。
その食堂が、にわかに騒がしくなっていた。
何事か。と顔を出す分艦隊の面々。
そこでは、皆が疲れているだろうからと、元気づけるための料理を作るという体の料理教室が開催されていた。ナデシコ艦長ユリカが言い出して。
中華料理を特意とするサイ・サイシー(Gガンダム)や千鳥かなめ(フルメタルパニック)を教師として、志願者が各々料理を作っていた。
結果、ユリカ(ナデシコ)とリョーコ(ナデシコ)はこの世の物とは思えない毒を生み出し、アキト(ナデシコ)とボス(マジンガー)をメディカルルーム送りにする。
シモーヌ(レイズナー)、レビン(テッカマンブレード)、さやか(マジンガー)は十分な及第点を得たが、あまり料理をしないアキ(テッカマンブレード)はイモやニンジンの皮もまともに剥けず、具が少ないスープを作ってしまった。
仲間からは最初の二人よりはマシ。と慰められたが、それはフォローになっていなかった。
アキは、これではDボウイに食べさせられないと、精進することを決意するのだった。
一方、騒ぎから外れた食堂のすみで。
「ふう」
ことんと、テーブルの上に、にくじゃがが盛りつけられた皿が置かれた。
置いた統夜が、布巾で自分の手を拭っている。
「あ。これなにー?」
見つけたテニアがよってきた。
「なんですかこれ?」
「確か、肉じゃがって、ニッポンの料理だったかしら」
「あ、知ってます。女の子に作ってもらいたい料理ですよね! 甘くて美味しいって聞きました!」
「……そういう覚え方なの、メルア」
メルアの答えに、カティアが呆れる。
「おいしそう! これ誰が作ったの?」
ほかほかと浮かぶ湯気と、おいしそうな香りにテニアが作った人を探しあたりを見回す。
さすがに無許可で食べるということはしないようだ。
「俺だよ」
キョロキョロするテニアの前でそう申告したのは、皿を運んできた統夜だった。
「へ?」
「え?」
「まあ」
テニア、カティア、メルアが驚く。
「ホント?」
「嘘ついてどうする」
「うそっ、統夜が!?」
「統夜さん、女の子だったんですか!?」
「なんでそうなる。一応ここくるまでは一人暮らししてたんだぞ。簡単な料理くらいは出来るさ」
「そういえば、そうだったわね」
カティアが納得したように声をあげる。
両親はすでに亡くなったことを聞いているし、親戚に預けられ、高校に通うのは一人暮らしだったのも知っている。
でも、こうして料理を目の前にするとなぜか意外。という言葉が出てきてしまった。
「コンロと材料が余ってたからさ。使わせてもらったんだ」
「へー。統夜料理できたんだ。じゃあ、食べてもいい!?」
「いいぞ。お前達の口にあうかはわからないけど」
「わーい」
三人は取り皿を持って統夜の肉じゃがを口にする。
「美味しい!」
「ええ。これが肉じゃがの味。甘くて、しょっぱい。不思議な味ね」
「美味しいです。統夜さん、私これ、一番好きな味つけかもしれません!」
「あ、ああ」
メルアに言われ、統夜は思わず視線を外した。
「どうしました?」
「いや、なんでもない」
メルアが首をひねっているようだが、すぐ食べることに意識を戻したようだ。
統夜は、おいしそうに食べる彼女を直視できなかった。
(一番好きって……)
統夜は思わず困惑してしまった。
普通に聞けば、メルアの発言はなんともないただのお世辞の言葉だ。
だが、雪原で甘いものが好きな逸話を聞かされたあと、甘い味付けのモノを一番とか言われたらそりゃ意識もするものだろう。
その意味はひょっとして……と勘ぐってしまう。
だが、視線を戻し、おいしそうに、幸せそうに食べるメルアを見て、きっとそんな深い意味はないのだろうと統夜は改めて思った。
「どうしました?」
視線に気づいたメルアが、改めて聞いてきた。
「いや、なんでもないよ」
同じ言葉だが、意味の違う会話が繰り返された。
──真実の侵略者──
激戦の続く特務分艦隊に新たな任務がかせられた。
かつてクリムゾン財団が所有していたという太平洋の島に、木星トカゲを吐き出す、通称チューリップがある。
それは今、活動を休止しており、連合のバリアによって封印されているのだが、そこをちょっと偵察してきて欲しいとのことだった。
行って見てくるだけ。それだけの任務であり、場所は南国。それはすなわち、実質的な南国バカンス同然の指令だった。
Dr,ヘルにハウドラゴン。さらにはデビルガンダムと大物を立て続けに撃破した統夜達に与えられた、しばしの休息という名の命令が下ったのだ。
つまりは、海で水着でキャットファイトなのである!
うーみー!
ということで砂浜で英気を養う統夜達。
水着に砂浜ビーチバレーにバーベキュー。ついでに修行と南の島もりだくさんの中、ミスリルの司令官テッサ(フルメタルパニック)はマオと模擬戦を行い、ついでにアキト(ナデシコ)はこの島の所有者。マリン・クリムゾンと無理心中させられようとしていた。
森の奥へとむかうアキトを見つけ、追ってきたジョルジュ(Gガンダム)に命を救われるが、心中を邪魔された彼女は怒り、チューリップを覆っていたバリアを解除。
その中からバッタをあふれさせるという結果になった。
南国バカンスも模擬戦も突然の乱入者により中断せざるを得なくなる。
統夜達が艦へ戻る中、外で待機していたマオとボン太君とリョーコ(ナデシコ)、そしてムウ(ガンダムSEED)は木星トカゲのバッタを撃退するため武器を取り出した。
あふれたのはバッタが少数。
統夜達が機体を準備して出るより前に、決着はついてしまった。
念のためチューリップの周囲を確認するが、それはもう機能を完全に停止していた。
かわりに、空から降ってくる人影をレーダーはとらえることになった。
それは、テッカマン。
なんとエビルの本拠地から逃げ出したレイピアを追い、テッカマンエビルとアックス達がこの島に降り立ったのだ。
レイピアは裏切り者ブレードを探し、そのブレードを探すための餌としてエビル達が追ってきたのだ。
レイピアを救うためエビル達ラダムを迎撃に出る統夜達。
争いそのものは小規模であり、アックス、ソード、ランスは順調に撃退され、エビルはブレードの新しい力、ハイコートボルテッカにより退けられ、レイピアはナデシコに収容された。
兄妹の再会もつかの間。レイピアことミユキの命はそう長くはないだろうと告げられてしまう。
彼女は不完全なテッカマンであり、無理に体を改造された結果、体の方が耐え切れないのだ……
ここでついに、Dボウイの記憶喪失の謎が明かされる。
妹が現われたことにより、その正体に気づいていたフリーマンがもういいだろうと、Dボウイ。アイバ・タカヤの名を呼んだのだ。
それは、Dボウイの本名。
かつてアルゴス号と呼ばれる調査船に乗り宇宙に旅立った乗組員の名前だった。
そして、今まで敵として現われていたテッカマン。
それはすべて、そのアルゴス号の船員であり、Dボウイの家族と言える人達だったのだ!
つまり、Dボウイは家族と言える人達が敵となり、殺し合いをしていたということになる!
思い出したくないのも当然だろう。
そんな残酷な事実、忘れてしまいたいに決まっている。
それでも彼は、ずっと一人でそれを抱え、戦ってきたのだ……
衝撃の事実に、統夜達は心を揺さぶられる。
そこで、レイピアが目を覚ます。
寝ていなければダメだと言われながらも、彼女は伝えたいことがあると体を起こした。
それは、ラダムの地球侵略が、間もなく本格化するということだった。
ミユキは言う。
「ラダム樹の花が開く時、地球は全てラダムの物になる……。そして、開花の時期はもう間もなくです……」
暗示めいていたが、それが事実ならば大変なことだった。
フリーマンは彼女が逃げてきた本拠地の場所を聞く。
ミユキは、どこかの廃棄コロニーから逃げてきたのだと語ったが、今の彼女では正確な位置はわからなかった。
地図などを使い、位置が把握できればそれも可能かもしれないが、体の弱った彼女はその前に意識を失ってしまう。
これ以上の話を聞くのは危険だということで、彼等は病室を追い出された。
自分の無力さに憤るDボウイ。
それを見て、アキはDボウイのかわりに涙を流すのだった……
ナデシコとアークエンジェルは一路日本へ艦を向ける。
この事実を一刻も早く上層部に伝えねばならないからだ……!
──テニアの心配──
「……」
テニアは一人、ナデシコの展望室にいた。
「ああ、ここにいたのかテニア。カティアとメルアが探してたぞ」
「あ、統夜。どしたの?」
「どうしたじゃない。Dボウイの話を聞いてから、お前の様子が変だって二人が言ってたんだよ」
「ああ、うん。やっぱりDボウイは大変だったんだなぁ。って思ってさ。似合わず考えてたら、心配させちゃったかな」
あはは。と統夜を見て笑った。
テニアはDボウイが色々秘密を抱えていることに気づいていた。
記憶喪失ではないとも口にしていたが、まさか彼も家族と戦わねばならないというのは想像していなかったのだろう。
なにより、エイジやキラ達とは違い、ラダムは説得もなにも通じない……
「……ったく」
空元気で笑うテニアを見て、統夜は苦笑して近づいた。
隣に来て、頭にぽんと手をのせる。
「ちょっ、なにすんのさ!」
テニアは背が低い。だからそこに手が乗せやすい。というわけではない。
「また空元気出てるぞ。どうせ悩んだって答えは出ないんだ。お前はさ、俺達と一緒にいれば、不安はないって言ったろ」
「うん」
それは、雪原での会話。
二人で飛ばされた時の会話だ。
「ならさ、Dボウイにだって同じ人はもういると思う。アキさんやノアルさん。ミリーだっている。それに、俺達もな。みんながいるんだから、Dボウイだってきっと大丈夫さ」
「そうかな?」
「お前はそうなんだろ? なら、Dボウイも同じじゃないのか?」
「そっか。そうだよね!」
統夜の言葉を聞き、テニアは笑顔を取り戻した。
「アタシ達がDボウイを支えてあげなきゃいけないのに、アタシ達が沈んでいたらダメだね。わかった。元気出た!」
「ならよかったよ」
「うん。それじゃ、ご飯いこ! なんかお腹すいちゃった!」
「その前にカティアとメルアを探さないとな。お前のこと心配してくれたんだから」
「はーい!」
そうして、二人は笑顔で展望室を後にした。
──慟哭の空──
テッカマンレイピアことアイバ・ミユキによってもたらされたラダム侵略対策のため、一路日本への帰還を急ぐ特務分艦隊。
急ぎ戻らなければならないというのに、その行く手にはザフトが罠をしかけ待ち構えていた……
不意打ちによりアークエンジェルの動力部がやられ、動けぬナデシコがザフトの猛攻から盾となり、身動きがとれなくなってしまった。
迫るザフトの軍勢に防戦一方となるが、それでも多くの敵勢力を退けた統夜達を倒すには至らなかった。
デュエルはあっさり撤退に追いこまれ、バスターガンダムは撤退に失敗してアークエンジェルに投降するハメとなる。
ザフトが次々と撤退する中、イージスガンダムに乗るキラの親友、アスランはストライクガンダムに乗るキラへ特攻を仕掛けていた。
なんと彼は、ストライクに組み付き、自爆を図ったのだ。
ストライクの信号が途絶する。
ちなみに、トールの特攻? そんな無駄なものなかった。
ザフトを退け、キラを探そうとする統夜達だったが、そこにグラドスが宇宙より降下する。
ゴステロや死鬼隊にまじり、エイジの姉ジュリアの姿もあった。
エイジは必死に彼女を説得する。
エイジの必死さが届いたのか、ジュリアはやっとその言葉に耳を傾けようとしてくれた。
だが、直後撤退したはずのゴステロが現われ、ジュリアを巻きこみエイジを狙う。
エイジへの攻撃ははずれ、味方であるはずのジュリアのみを撃墜してしまう結果となった。
海へ沈むジュリア。
エイジは兄になる人だけでなく、実の姉までもを失うことになるのだった……
全ての敵を退けたが、そこにさらなるザフトとグラドスの援軍が現われることが報告された。
このままここにとどまれば、動力部がやられたアークエンジェルは逃げ切れない。
この現状から、統夜達はキラを探すことが出来ず、脱出することになるのだった……
──未来の欠片──
戦場を脱出した分艦隊。
しかし、一部のパイロットが戻らぬキラを心配し、あの場へ戻ろうと再出撃を口にする。
「キラが戻らねえんだってな。ちょっと戻って探してくらあ」
「そっちは先に行っててくれよ」
忍、甲児が口を開いた。
甲児、豹馬、忍。ムウ。
多くのパイロットがキラを心配し、その身の危険などかえりみず戻ろうとしている。
コックピットからは降りず、補給を受けそのまま引き返そうとしているのだ。
だが、そこはすでにザフトとグラドスが入り乱れる戦場と化している。
戻ったところで今度は彼等が無事に帰ってこれる保証はどこにもない。むしろ行方不明者が増える可能性さえあった。
それでも甲児達は助けに戻ろうとする。
それが、彼等だからだ……
「待ってくれみんな!」
通信に統夜が割りこんだ。
「なんだよ統夜。急がないとキラが!」
「そうだぜ、時間がもったいねえ。止めるなら聞かねぇぞ!」
甲児と忍が食って掛かる。
「そうじゃない。キラは生きてる。生きて戻ってくる。だから、今無理して戻る必要はないんだ!!」
「統夜、どういう……?」
「まさか、なにか見えたのか?」
甲児が困惑する中、ムウがなにかを察した。
何度か統夜が見た未来の断片。
そうして白昼夢のような光景を見て、何度か敵の奇襲を予期したり人の命を救っている。
そのことをムウは言っているのだ。
「はい。キラは生きてアークエンジェルの所に戻ってきます。でも、それは今じゃない。もう少しあと、別の場所なんです」
「ホントか?」
「はい。だから、今ここで飛び出してもみんなを危険にさらすだけです。我慢しましょう」
忍が睨むが、統夜は自信を持ってうなずいた。
それを、大勢のパイロットが固唾を呑んで見守る。
「ならしかたねーな」
「わかった」
「ああ。ここは、我慢しようぜ」
忍がうなずき、甲児も豹馬も、統夜の言葉に納得し、出撃を思いとどまった。
統夜は何度か未来を言い当てている。
その実績から、キラが生きて戻ってくるという言葉は信用された。
「ありがとう、統夜君」
「ありがとうございます、統夜さん」
艦長二人が、パイロットをいさめてくれたことに礼を口にした。
「いえ、根拠のない俺の言葉を信じてくれたんですから、お互い様です」
あはは。と、今度の統夜は自信なく笑みを浮かべた……
……
…………
「統夜君!」
「ん? カティア、どうした?」
コックピットを降りた統夜を、カティアが追ってきた。
「さっき言った、キラ君が戻ってくるのが見えたって、本当なの?」
「……」
統夜は、なにも答えなかった。
さっき共に乗っていたカティアにはその未来は見えなかった。
今まで確かに統夜だけが一方的に未来を見ることもあったが、今回のはなぜか違和感を感じたのだ。
万一これが嘘なら、この嘘は全ての不審を彼が背負いかねない危険な嘘だ。
これでキラが帰ってこなければ、統夜はこれまでの信頼全てを失うことになりかねないからだ……
カティアはそれを心配している。
優しさからついた嘘で、統夜が潰れてしまわないかを。
(心配なのよ私は)
これは、自分のことをおもんばかってのことではない。
ただ、純粋に、統夜の身を心配してのことだった。
「未来が見える、見えないなんて関係ないさ。キラは生きてる。みんながそう信じられることが大切だろう?」
統夜は振り返り、にこりと笑った。
それは、どこか儚げな、うつつを感じる笑顔だった。
(確かにあなたの言葉でみんな希望を持てた。キラ君の心配でなく、他のもっとやらねばならないことに目を向けられた。でも、あなたは違う。キラ君の生死を一人で背負って、あなたはそれでいいの……?)
「……」
じっと、統夜を見る。
「そもそも、あなたはそういう人だものね」
そして、どこか呆れたように、悟ったようにため息をついた。
「ねえ、統夜君」
「ん?」
「私、どんなあなたも信じるから、あなたも、私のことを信じてね」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。嘘でも本当でも、私は統夜君の味方だから」
カティアは、そう言い、統夜に微笑みかけた。
たとえキラが帰ってこなかろうと、信頼を失おうと、カティアだけは統夜の味方でいよう。そう思った。そう覚悟した。
倒れようとする統夜を支えよう。
その言葉には、その覚悟がこめられていた。
(抱きしめるのは恥ずかしくてできないけど、これくらいなら……!)
これはカティアの、精一杯の宣言だった。
一方統夜は、その微笑に、別の意味で驚かされた。
どきりと、不思議な高鳴りを感じたのだ。
「わ、わかった。ありがとう」
統夜は思わずカティアから顔を背け、視線を彼女から外した。
「こら、人が大事なことを話しているのに、目を見ないで逃げるとは何事ですか」
「い、いいじゃないか。ちゃんと聞いているんだから!」
「聞いているからいいなんて理屈は通じません。ちゃんとこっちを見なさい!」
「いや、今はちょっと……」
お姉ちゃん魂に火がついたのか、視線をそらし逃げる統夜をカティアが追う。
だが、今の状況で統夜はまともにカティアを見れず、ただひたすらに逃げることとなるのだった。
逃げる統夜を追うカティア。
なんだか珍しい構図は、他の二人がそこにやってくるまで続くのだった……
──ボソンジャンプ──
急ぎ日本に戻った分艦隊だったが、アークエンジェルはしばらく修理せねばならず、身動きが取れない状態になってしまった。
その上あまりに眉唾なラダム侵略本格化な話なもので、上層部の動きも鈍い。
というかまともに取り合えってもらえていない。
彼等に見えているのは目先のことのみで、北太平洋に残るチューリップの掃討作戦の方が大事のようだった。
このままではいかん。とユリカは決断を下す。
ナデシコはその『北太平洋チューリップ掃討作戦』に参加し、さっさと終わらせ、修理の終わったアークエンジェルと共にラダムをやっつけに行こうというのだ。
上層部が頼れないというのなら、自分達で。ということである!
こうしてナデシコは、北太平洋チューリップ掃討作戦に参加することとなった。
ちなみにだが、その作戦前にゼオライマーの修理を終えたマサトが復帰し、ボロボロなレイピアは医療施設の整った外宇宙開発機構の本部に移された。
作戦が、開始される。
戦闘力が高い上、幾度となく木連を退けてきたナデシコはそこで集中的に狙われていた。
なぜか味方の連合軍からも手助けをしてもらえず、内部からの軋轢も感じられる中、ナデシコは短距離ボソンジャンプを利用して爆弾を送りつけるというボソン砲の攻撃を受けた。
こんなこともあろうかととウリバタケが用意していたピンポイントバリアで事なきを得たが、フィールド内に跳びこんでくる一撃は厄介で、ナデシコは他の艦に被害が出ないようそれをひきつけながら、宇宙までそいつを引っ張り逃げることになる。
ボソン砲の射程距離は長くはなく、距離をとって逃げ続けていれば送りつけられることはないが、ジリ貧だった。
それを打開するため、ボソンジャンプにはボソンジャンプ。アキトがボソンジャンプを行い、敵艦に備えられたボソン砲の破壊に向かうのだった。
アキトのジャンプとボソン砲の破壊は見事成功し、木連の戦艦は部隊を展開する。
そうなればあとはいつも通り。ナデシコも部隊を展開し、互いに殴りあう展開となった。
しかし、木連に手痛い打撃を加えていると、今度はラダム獣を率いるテッカマンアックスとランスがやってきた。
木連はその襲撃に乗じ、撤退してしまう。
襲い来る二体のテッカマンもブレードによって倒され、チューリップ掃討作戦も無事完了したナデシコは再び地球へ戻ろうと機体の収容をはじめる。
その時、アキトが救命カプセルを拾い、開けてみるとなんと中にはかつて捕虜とした木連の将校、白鳥九十九の妹が入っていた。
なんと彼女は和平の特使であり、木星の九十九と通信した結果、木連には和平交渉の準備があることを知る!
さらに、地球と木連が和平を結べれば、木連、グラドスのラインを使いエイジと木連とでグラドス軍との交渉も可能になるかもしれない。
姉を失ったエイジの心に、希望の光がさしこんだ。
地球に戻ったナデシコは、ネルガル本社やミスマル提督、ミスリルやオーブ政府に協力を求め、和平を実現させたいと残ったアークエンジェルの面々に伝えた。
しかし、修理が終わったアークエンジェルはアラスカ基地への召還を受けていた。
和平を実現するにも、ラダムを倒しに行くにしても、命令があるのでは迂闊に動けない。
特に和平に関しては、主戦派が占めてきた連合に知られればどんな妨害を受けるかわからないからだ。
ここは命令に従いつつ、裏で手を広げるしかないようだった。
というわけで、アラスカにむかうアークエンジェルと残るナデシコ。
統夜はどちらへ乗りこむのか。ということになった。
すなわち、ルート選択である。
第14話終わり