スーパーロボット大戦J ムーンデュエラーズ   作:YSK

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第15話 新たな騎士。その名はフー=ルー

──「故郷」と呼べる場所(ナデシコルート)──

 

 

 

 和平交渉に向かうを選択。

 

 

 アークエンジェルと別れたナデシコ。

 残ったナデシコの方は、これからどうしようかと方針を決めようとする。

 

 まずは味方を増やすためユリカの父、第三艦隊の提督、ミスマルコウイチロウに連絡を取ろうとする。

 

 しかしこちらから通信するまでもなく、コウイチロウは通信の回線を開いた。

 

 

 なんと連合軍は木連の和平特使、白鳥ユキナの存在を察知し、それを引き渡すよう要求してきたのだ。

 

 

 引き渡せといわれても連合にとって不都合な人物であることが間違いない彼女を渡せるわけがない。

 ユリカはそれを拒否し、ナデシコを飛び立たせようとするが、実はネルガルの現会長だったアカツキにナデシコのマスターキーを抜かれ、ナデシコは航行不能とされてしまった。

 

 彼が連合と取引をし、ユキナの情報を流したのだ。

 ネルガルの目的は火星の遺跡。

 

 木連と和平されると、それを手に入れる際問題になると感じたのだろう。

 

 利害の一致したネルガルと連合は、白鳥ユキナを手にいれようとやってきたというわけだ。

 

 

 だが、ミスリルの工作員、宗介達の助けが入り、ネルガルの野望はナデシコのクルー達に明かされ、さらにミスマル提督の手助けもあり、ユリカ、統夜達も脱出に成功する。

 

 

 ナデシコ停止からしばらくの日が流れた。

 

 

 光子力研究所などの研究所の拠点を持つ者達は連合軍の監視がつき、身動きが取れない。

 ナデシコから逃げ延びた統夜達は、追っ手を完全に振り切り潜伏生活を続けていた。

 

 アキト達は手に職を生かしラーメン屋でバイトをし、エステバリスのパイロットは公園で。統夜達は山奥の湖畔でキャンプ生活を続けている。

 彼等はたくましく、この逃亡生活をエンジョイしていた。

 

 そうして彼等は待っているのだ。

 ナデシコが奪還できるチャンスがやってくるのを。

 

 ミスリルのテスタロッサ大佐とルリの協力により、奪還準備が整った。

 

 

 通信機から声がする。

 楽しかったキャンプもここまで。オペレーションスイートホームのはじまりだ。

 

 

 連合軍の新型量産機、ストライクダガーが守るところへエステバリスとミスリルのウルズチームが突撃を開始した。

 

 ユリカを乗せたアキト機がナデシコの元へと向かう。

 無事ナデシコへ到着したユリカは、ボルテスVの紅一点。くのいちである岡メグミがアカツキのところから内緒で貰ってきたマスターキーを託されたプロスペクターとルリに出迎えられた。

 

 手渡されたマスターキーをつきさし、ナデシコは再び浮かび上がるのだった。

 

 

 浮かび上がったナデシコと連合軍の前にボアザン軍が姿を現した。

 人員がいなくなり動かなくなったナデシコを破壊するためにやってきたのだ。

 

 ボアザンと連合に挟まれ、手が足りないと感じた時、援軍でGガンダムの面々とゼオライマーが現れる。

 

 これでこちらも戦力が整い、動き出したナデシコと連合。そしてボアザン軍の三つ巴の戦いがはじまるのだった。

 

 

 ボアザン軍を追い払い、連合軍も叩き出した。

 しかし、連合軍の増援がまた現われる。

 

 きりがない。

 

 そう思った時、ゼオライマーに乗るマサトがある存在の接近に気づいた。

 

 

「ゼオライマーがなにかに反応している?」

 

「マサト君、これは!」

 

「間違いない。みんな、フューリーが来ます! それも、今まで会ったことのない奴だ!」

 

「ええっ!? フューリーって、あの!?」

 マサトの言葉にユリカが驚いた。

 

 

 光の球体を生成し、一機のラフトクランズが転移して現われた。

 

 それは、新たなフューリーの機体。

 今まで現われたアル=ヴァンとも、ジュア=ムとも違う騎士の機体がここに現われたのだ。

 

 

「あらあら、グランティードはまだいらっしゃらないの? 少し急いで来すぎたかしら」

 

 

 あたりを見回し、女は言った。

 

 現われた新しいフューリーの騎士の名はフー=ルー・ムールー。

 女の騎士だった。

 

 

「新手か!? 撃墜しろ!」

 

「だめっ! だめです、その相手は!」

 

 

 突然現われたラフトクランズに、連合軍の増援が喧嘩を売る。

 ユリカがやめろと声をあげたが、光が瞬いたかと思った瞬間、すべての連合軍機、ストライクダガーが爆散する。

 

 一瞬の出来事どころではない。

 まさに、時間が止まり、その間が吹き飛んだかのような状態。

 

 それこそが、時間兵器、ラースエイレムの力。

 

 その脅威を目の当たりにし、ナデシコの面々は統夜達がいなければ手も足も出ないのだと改めて理解させられた。

 

 

「なっ!?」

 ドモンが驚く。さすがのガンダムファイターも、時を止められては動きは見切れない。

 

「……連合軍、全滅です」

 ルリが平静を装い、状況を口にする。

 

「また時間を止めやがったのか! くそっ、反則だっての!」

 これを食らうのは二度目となるリョーコがはき捨てた。

 

 

「……不作法なことね。雑兵がいちいち名乗りを上げろとは言わないけど、戦にも礼儀が必要だとは思いませんこと?」

 

 全ての邪魔者を排除したフー=ルーがナデシコ達に問う。

 今回のラースエイレムで彼女達が破壊されなかったのは、フー=ルーの礼儀に触れなかったからだ。

 

 

「私の名は、フー=ルー・ムールー。今日は、かけた保険を確かめるつもりで来たのですけど、グランティードがいないのなら話は別。あなた達のことは我々にとっても最重要課題。あなた達がいなければ、グランティードとてただの一兵器。ですから、その戦力をここで始末させていただくわ。悪く思わないでね」

 

 フー=ルーの自己紹介が終わった直後、彼女の従士達が乗るフューリー機が転移して現われた。

 

 たった一機でも勝てない兵器を持っているというのに、さらに数で押されたら勝ち目はない。

 

 

「マサト君……」

 

「ダメだ。次元連結システムでも、こいつらと直接戦うのは無理だってはっきりしてる」

 

 無限のエネルギーを得られる次元連結システムを搭載したゼオライマーでさえ対抗出来ないとマサトが断言する。

 でなければ、木原マサキはグランティードを手に入れようなどとは考えなかったはずだ。

 

 

「さあ、せめてもの情けです。苦しまずに殺してさしあげますわ」

 

 

「畜生、ここまでかよ!? せっかく戻ってきたのに、そんなのって……」

 アキトが悔しさをにじませる。

 

 まだやるべきことがたくさん残っている。

 木連との和平。ラダムの討伐。グラドスとの戦争終結。

 

 こんなところで終われないことばかりだ。

 

 だが、アキトがどれだけ叫ぼうと、彼女の力に抗うことは出来なかった……

 

 

 絶体絶命。

 

 

「そうはさせない!」

 

 まさにその瞬間、統夜が現われた。

 

 

「なにっ、グランティード!?」

 

 統夜が現われたことにより、その機体に搭載されたラースエイレムキャンセラーが発動。フー=ルーのラフトクランズもラースエイレムが使えなくなった。

 これで、アル=ヴァン、フー=ルーのを使用不能にした。

 それはつまり、このキャンセラーは全てのラースエイレムを停止させられると証明されたと言っても過言ではない。

 

 

「統夜!」(アキト)

 

「ま、間に合ったのかよ! ったく、ヒヤヒヤさせんなって!」(リョーコ)

 

「……寿命が縮んだぜ。勘弁して欲しいね」(クルツ)

 

 

 場にいた全員が、ほっと安堵の息をはく。

 これでやっと、フューリーとの互角の戦いが出来るようになった!

 

 

「はじめて見る機体だ。あんたも、フューリーなのか?」

 

「ええ。初めまして。私はフー=ルー・ムールー。フューリーの騎士よ。……それにしても、確かに面影があるかしらね」

 モニターに映し出された統夜の姿を見て、フー=ルーはつぶやいた。

 

 

「あんたも俺のことを知っているのか!? だったら言え、フューリーってなんだ! 俺に、俺達になんの関わりがある!」

 

「ジュア=ムが余計なことを言って混乱させたみたいね。でも、知ったところでどうしようもありませんわ。どうせあなたにはなにも出来ないのだから……」

 

「……そうか。答える気はないか。なら、あんたを討って、無理にでも聞き出してやる!」

 

「ふふっ、いい闘気を放つわね。惜しいわ。さぞ凛々しい騎士になられたでしょうにえ。でも、むかってくるのなら私がここで殺して差し上げます。それも一興」

 

「誰がっ!」

 

 

 フューリーとの戦いが、はじまった!

 

 ナデシコをふくめた統夜達の戦力は少ない。

 しかし、以前より格段に成長した統夜はその数の差さえ埋められるほどになっていた……!

 

 次々とフューリー機を撃退し、統夜はフー=ルーのラフトクランズへ迫る。

 

 

「カティア、あいつは強い。加減なんてしていられないから全力でいくぞ!」(カティア搭乗時)

「テニア、あいつは強い。加減なんてしていられないから全力でいくぞ!」(テニア搭乗時)

「メルア、あいつは強い。加減なんてしていられないから全力で行くぞ!」(メルア搭乗時)

 

「統夜君、動きをおさえて! あなたの要求に、駆動系がついて……」(カティア搭乗時)

「統夜、無茶な動きしないで! 動きに駆動系がついて……」(テニア搭乗時)

「統夜さん、速すぎます! これじゃ駆動系がついて……」(メルア搭乗時)

 

 

「来させるんだ! じゃないと、勝てない!」(三人共通)

 

 

 相手は騎士を名乗る強敵。

 戦力も少ない中、加減をしていて勝てる相手ではなかった。

 

 しかし、戦いの中成長を続けた統夜の技量は、ついに機体の限界を超えつつあった。

 

 統夜の思考と要求に、サイトロンを通じて動く機体がついてこなくなってきていたのだ……!

 

 

 統夜の渾身の一撃が、フー=ルーを捕らえる。

 

 

「……やりますわね。アル=ヴァン殿がこだわるのも、個人的な事情ばかりではなかったということかしら。だとしたら、少し安心しましたわ」

 

 まだ闘えるはずだが、フー=ルーのラフトクランズは光に包まれた。

 それは、撤退の予兆。

 

 

「待て! 逃げる気か!」

 

「騎士にとってその言葉は屈辱ね。でも、そうも言っていられないわ。私はここで死ぬわけにはいかないの。あなたはそれだけの脅威となった。悪いけど、引かせてもらうわ」

 

「くそっ、勝手なことを!」

 

 だが、統夜が手を伸ばし相手を捕らえる前に、その姿は光に溶けて消えた。

 

 

「生きていたらまた会いましょう。坊や」

 

 

 その言葉だけを残し……

 

 

「待て、フー=ルー! ……くそっ、結局今度も、なにもわからずじまいか!!」

 

 

 フー=ルーの撤退と共に、フューリー機も全機転移で撤退する。

 

 

「今です、今度こそ逃げますよ! みなさん、早くナデシコに!」

 

 ユリカの号令が響く。

 

 敵機が全ていなくなったことにより、ナデシコは統夜達の機体を収容し、この場から逃げ出した。

 

 

 自由の身となったナデシコは連合の接収に抵抗していた各研究所を回り、ロボットと人員を回収し日本を脱出する。

 とうとう彼等は、連合から追われる身となってしまうのだった……

 

 

 

 

──舞い降りる剣(アークエンジェルルート)──

 

 

 

 アラスカ基地に向かうを選択。

 

 

 アークエンジェルについてアラスカへ行くことに決めた統夜達。

 

 アラスカには何事もなく到着できたものの、なぜか艦内待機で基地に上陸することは許可されなかった。

 

 さらに命令として、連合軍総司令部からムウ・ラ・フラガ少佐、ナタル・バジルール中尉、フレイ・アルスター二等兵の三名は辞令受け渡しのため人事局へ出頭せよとのことだった。

 それは、この三人はアークエンジェルから降り、別の仕事が与えられるという意味だった。

 

 それ以外の人員は別名あるまで待機ということで、あつかいの悪さに連合への不信が募る。

 

 

 その中、Dボウイと外宇宙開発機構の面々はその本部への移動が決まった。

 なんと先日宇宙でのテッカマンアックス達との戦いのあと、Dボウイは熱を出して倒れ、今だ昏睡状態のままなのだ。

 

 そのため彼はアークエンジェルでアラスカに運ばれ、フリーマンの根回しでミユキが世話になっている外宇宙開発機構本部の医局へ入院することとなる。

 アキやノアルは、その付き添いとしてアークエンジェルを降りたのだ。

 

 

 それからしばらく。

 統夜達の現状は変わらなかった。

 

 しばらく人事の件で牛歩戦術をとったが、ついにそれもかなわなくなり、ムウ。ナタル。フレイの三人に加え、シモーヌ(レイズナー)までもが艦を降りることになってしまう。

 なんとシモーヌはヨーロッパの名家、ルフラン家のお嬢様だったのだ。

 

 今までシモーヌが戦艦に乗っていても彼女の意志が尊重され、文句の一つも言われなかったというのに、突然の要請に違和感を覚える統夜達。

 その不自然さに疑問を感じた統夜達は、シモーヌにあえて艦を降りてもらい、外で情報収集をしてもらおうと考えたのだ。

 

 

 四人の退艦時刻が迫る。

 別れは惜しいが、四名はアークエンジェルから外へ出るのだった。

 

 艦を出て、ナタルとは別の船に乗るムウ達は移動をはじめる。船に乗るため列に並んでいる際、あたりを見回したムウとシモーヌは違和感に気づいた。

 

 今までずっとアークエンジェルの中に閉じこめられていたがゆえわからなかったが、この基地の兵力がなにかおかしい。

 

 いくらパナマに増派中とはいえ、ここは仮にも連合司令部。

 

 だというのに、新鋭艦と呼べるのはアークエンジェルだけで、他は旧式。機動戦力もモビルスーツはすでに量産体制に入っているというのに、ある戦闘車両も航空機も一世代前の旧式がほとんどだった。

 

 いくらなんでもこれはおかしいと、二人はフレイを列に置き、基地の中へと走った。

 

 

 一方、人数が減って寂しくなったアークエンジェルのブリッジ。

 そこでレーダーを見ていたサイが、無数の敵機反応があるのに気づいた。

 

 ザフト軍の急襲。

 

 パナマへ進軍すると思われたザフトが、このアラスカへ大部隊を送りこんできたのだ!

 

 

 味方が頼りない中、応戦に出るアークエンジェル。

 次から次へと押し寄せるザフトのモビルスーツを、少ない戦力で撃退して行く。

 

 

 そのころ、ムウとシモーヌは基地の中を走り回っていた。

 いたるところの扉を開け、中を確認する。

 

 司令部となるはずのそこ。

 そこには人が誰もいなかった……

 

 明らかにおかしい。と悟る二人。

 しかし、更なる違和感を感じたムウは、司令部の地下へと走るのだった。

 

 

 さらに、このアラスカ基地の中にはザフト軍に属するクルーゼの姿もあった。

 

「ふん……アズラエルのよこした情報は確かだったようだ。生贄に供されたのは、残存部隊と例の彼等というわけか。ふっ。面白い構図だな。それにしてもフューリーか……バカバカしいと思ったが、まさかな」

 

 状況を見て、つぶやく。

 そこに、アークエンジェルへ戻ろうとして基地の中をさまようフレイが顔を出してしまった。

 

 クルーゼと鉢合わせしてしまったフレイは、そのままクルーゼに連れ去られてしまうのだった。

 

 

 ザフト軍の猛攻の中、アークエンジェルは単艦大奮闘を重ねる。

 獅子奮迅の戦いを見せ、次々と侵入するザフト機を撃退してゆく。

 

 

 その中で、統夜と共に乗るパートナーはまた未来の断片を見る。

 

 ここに、フューリーが来る未来が見えたのだ!

 

 

 さらにザフトを追い払う統夜達。

 

 

 すると、統夜達の予見どおりフューリーが姿を現した!

 

 

 光の球体を生成し、一機のラフトクランズが転移して現われる。

 

 それは、新たなフューリーの機体。

 今まで現われたアル=ヴァンともジュア=ムとも違う機体がここに現われたのだ。

 

 現われた新しいフューリーの騎士の名はフー=ルー・ムールー。

 女の騎士だった。

 

 

「あらあら、グランティードがここにいるなんて聞いてませんでしたわよ。ちょっと保険をかけておいただけなのに、こんなにことを大きくするなんて。あのアズラエルって坊やといい、先ほどのクルーゼといい。地球人はよほど滅亡したがっているのかしら」

 

 

「はじめて見る機体だ。あんたも、フューリーなのか?」

 

「ええ。初めまして。私はフー=ルー・ムールー。フューリーの騎士よ。……それにしても、確かに面影があるかしらね」

 モニターに映し出された統夜の姿を見て、フー=ルーはつぶやいた。

 

 

「あんたも俺のことを知っているのか!? だったら言え、フューリーってなんだ! 俺に、俺達になんの関わりがある!」

 

「ジュア=ムが余計なことを言って混乱させたみたいね。でも、知ったところでどうしようもありませんわ。どうせあなたにはなにも出来ないのだから……」

 

「……そうか。答える気はないか。なら、あんたを討って、無理にでも聞き出してやる!」

 

「ふふっ、いい闘気を放つわね。惜しいわ。さぞ凛々しい騎士になられたでしょうにえ。でも、むかってくるのなら私がここで殺して差し上げます。それも一興」

 

「誰がっ!」

 

 

 フューリーとザフト軍。そして連合軍をふくめた三つ巴の戦いが、はじまる。

 

 戦力も通常の半分となっている中、自分達だけを狙うフューリーと基地を攻めるザフトを相手に統夜達の手数は圧倒的に不足している。

 

 ……そのように、見えた。

 

 だが、以前より格段に成長した統夜は、その数の差さえ埋められるほどになっていた……!

 

 

 次々とフューリー機とザフト機を撃退し、統夜はフー=ルーのラフトクランズへ迫る。

 

 

「カティア、あいつは強い。加減なんてしていられないから全力でいくぞ!」(カティア搭乗時)

「テニア、あいつは強い。加減なんてしていられないから全力でいくぞ!」(テニア搭乗時)

「メルア、あいつは強い。加減なんてしていられないから全力で行くぞ!」(メルア搭乗時)

 

「統夜君、動きをおさえて! あなたの要求に、駆動系がついて……」(カティア搭乗時)

「統夜、無茶な動きしないで! 動きに駆動系がついて……」(テニア搭乗時)

「統夜さん、速すぎます! これじゃ駆動系がついて……」(メルア搭乗時)

 

 

「来させるんだ! じゃないと、勝てない!」(三人共通)

 

 

 相手は騎士を名乗る強敵。

 戦力も少ない中、加減をしていて勝てる相手ではなかった。

 

 しかし、戦いの中成長を続けた統夜の技量は、ついに機体の限界を超えつつあった。

 

 統夜の思考と要求に、サイトロンを通じて動く機体がついてこなくなってきていたのだ……!

 

 

 統夜の渾身の一撃が、フー=ルーを捕らえる。

 

 

「……やりますわね。アル=ヴァン殿がこだわるのも、個人的な事情ばかりではなかったということかしら。だとしたら、少し安心しましたわ」

 

 まだ闘えるはずだが、フー=ルーのラフトクランズは光に包まれた。

 それは、撤退の予兆。

 

 

「待て! 逃げる気か!」

 

「騎士にとってその言葉は屈辱ね。でも、そうも言っていられないのよ。時間がないの。悪いけど、引かせてもらうわ」

 

「くそっ、勝手なことを!」

 

 だが、統夜が手を伸ばし相手を捕らえる前に、その姿は光に溶けて消えた。

 

 

「生きていたらまた会いましょう。坊や」

 

 

 その言葉だけを残し……

 

 

「待て、フー=ルー! ……くそっ、結局今度も、なにもわからずじまいか!!」

 

 

 フー=ルーの撤退と共に、フューリー機も全機転移で撤退する。

 

 

 

 しかし、戦いは終わらない。

 

 

 

 ザフトの援軍が大挙として押し寄せてきたのだ。

 

 その中に、かつて盗まれた4機のガンダムの最後の1機、イザークが乗るデュエルガンダムの姿もあった。

 彼はストライクを失ったアークエンジェルにとどめを刺すため、あえてここに乗りこんできたのである。

 

 

 激戦の最中、スカイグラスパーに乗ったムウとシモーヌが戦場に現われ、この領域から早く離れろと叫んだ。

 

 

 なんとこの基地の地下にはサイクロプスと呼ばれる半径10キロ以内を巨大な溶鉱炉に変える広域破壊兵器がセットされていたのだ。

 連合はザフトの目的がパナマではなくアラスカだと気づいていたのだ。

 

 ゆえに、アークエンジェルとアラスカ基地を囮とし、ザフトの大部隊の一掃を図ったのである!

 

 シモーヌの父が知った情報とはまさにこのこと。

 絶対に死ぬような作戦に娘を参加させるわけがないのは当然の話だった。

 

 

 その作動の時間が間近に迫っている。

 フールーが時間がないと言っていたのは、このことなのだ。

 

 それを伝えられたアークエンジェルは、この基地の防衛を破棄し、戦闘領域外への離脱を決めた。

 

 広域通信で残った僚艦や味方にその事実を伝える。

 

 

「これよりこの領域を脱出する。我に続け!」

 

 

 と。

 

 

 しかし、そのようなこと知る由もないザフトは攻撃の手を緩めない。

 

 特に、先ほど現われたデュエルはアークエンジェルが逃げようとする隙を見逃さなかった。

 一気にアークエンジェルとの間合いをつめ、必殺の間合いで撃破するため、ビームライフルを構えた。

 

 その一瞬の隙。そのエースパイロットの一瞬の反応に、皆も反応しきれなかった。

 イザークも伊達にエースパイロットをしていない瞬間である!

 

 

 とどめの引き金が引かれようとしたその刹那。

 

 

 空から舞い降りる一機のモビルスーツの姿があった。

 引き金を引こうとしたデュエルのライフルを撃ちぬき、アークエンジェルの傍らに滞空する。

 

 

「アークエンジェル、無事ですか!?」

 

 その声に、皆聞き覚えがあった。

 

 

 そこに現われた機体の名は、フリーダムガンダム。

 乗っていたのは、死んだと思われていたキラ・ヤマトだった……!

 

 皆が、その姿を見て驚く。

 

 当然だ。

 いくら生きていることが予告されていても、実際に無事な姿で突然現われれば驚きもする……ッ!

 

 

 突然現われた見たこともないモビルスーツに驚き、一瞬動きを止めたデュエルに更なる一撃を加え、イザークを撤退に追いこんだ。

 

 

「こちらキラ・ヤマト、アークエンジェルを援護します! みんな、今のうちに!」

 

「おい、キラだと!? あの野郎、本当に生きてやがったか!」

 

 キラの声に反応を返したのは、ムウだった。

 他の皆は、生きて戻ったキラを見て、ぽかんとしている。

 

 喜びと驚きで、頭がまだ働いていないのだ。

 

 

「統夜、お前の言うとおり生きてたな!」

 

「あ、ああ」

 

 キラの生存に、コン・バトラーチームのリーダー、豹馬が喜びの声をあげる。

 その声に、統夜はどこか戸惑ったような声をあげた。

 

「つーか、ここがそうならそうって先に言っとけってんだ!」

 

「わ、悪い。ここにきてからずっと艦内に閉じこめられてたし、今はそれを思い出してる余裕もなかったからさ!」

 

「……確かにそりゃそうやな」

 

 豹馬が統夜を責めるが、最もな答えが返ってきて十三が納得したようにうなずいた。

 

 

「とにかく、無事に戻ってきてよかったぜキラ!」

 

 

 こうしてキラは、統夜が予見したとおり、五体満足で無事帰ってきたのだ!

 

 

 

──カティア搭乗時──

 

 

 

「……統夜君?」

「な、なんだよ?」

 

 サブシートから統夜に向け、冷たい声が響く。

 

 キラ生存の喜びが広がる中、カティアは統夜が最初戸惑ったのを見逃さなかった。

 

 彼女はあの反応で、悟ってしまったのだ。

 その、優しい嘘に。

 

 だが、結果オーライだったからよかったものを、一歩間違えればとんでもないことになっていた、とてもとても危険な嘘だ。

 

「まったくもう」

 カティアはため息をついた。

 

 

「次やったら許しませんからね」

 

「わかった。次はもっとうまくやる」

 

「統夜!」

 

 しれっと言う統夜を、カティアは叱る。

 

 

「ごめんごめん。でも、カティアは俺の味方でいてくれるって言ったから、俺はあれからずっと不安を抱えずにいられたんだ。ありがとう」

 

「……もう。本当に本当に、次は許さないんだから!」

 ぷくっと頬を膨らまし、カティアは目を吊り上げた。

 

「わかったわかった。じゃあこれは、俺達だけの秘密な」

 

「当たり前です。誰が口に出来ますか」

 

「それもそうだ」

 

 

「ふふっ」

「ははは」

 

 

 グランティードの中に、小さな二つの笑い声が響いた。

 

 

 

──テニア搭乗時──

 

 

 

「統夜! キラだよ。キラが戻ってきた! 統夜の言ってたことはやっぱりホントだったね。ここでキラが戻ってくるって教えてくれたのなら、ついでにサイクロプスのことも教えてくれればよかったのに!」

 

「サイトロンが見せる未来も万全じゃないってことさ。あまり頼っていると痛い目を見るぞ」

 統夜は確信したように言う。

 どうやらこの場合の統夜は、本当にサイトロンでキラが無事の未来を見ていたのかもしれない……

 

「むぅ、確かに。そもそも自由に使えないしね」

 

「ああ。断片しか見えないし、見たいものも見れるわけじゃないからな」

 

 

 統夜の言葉に、テニアは納得したようにうなずいた。

 

 

 

──メルア搭乗時──

 

 

 

「統夜さん、キラさんです! 統夜さんの言ったとおり、生きてました。生きてましたよ!」

 

 メルアがサブシートで生きていたキラを見て、大喜びする。

 当然だろう。

 

 無事な姿を確認できたのだから。

 

 

「ああ。無事でよかった。俺も、ああ言った手前ちょっとドキドキしてたからな」

 

「ドキドキ、ですか?」

 

「未来の断片だからといって、それは絶対じゃない。火星の時みたいに回避も出来るんだから、キラが戻って来れない可能性もゼロじゃなかった。でも、そんなこと言い出せる雰囲気じゃなかったからな。秘密だぞ」

 

「は、はい。秘密ですね!」

 

 統夜の言葉に、メルアはうなずいた。

 

 そして、口の中で小さくつぶやく。

 

 

「二人だけの秘密ですね」

 

 

 と。

 

 

 

──サイクロプス起動──

 

 

 

 マリューにサイクロプスの作動が間近だと聞かされたキラは、フリーダムを走らせ、敵味方関係なくこの場が危険だと呼びかけた。

 

 この呼びかけにより、敵も味方も少しだが、それでも多くの命が救われることになる……

 

 

 サイクロプスが起動した。

 半径10キロの周囲に生存者はなく、見事な焼け野原と化す。

 

 無事その範囲から逃げ切ったアークエンジェルだったが、敵前逃亡をした事実は変わらない。

 連合の基地へむかえば、捕まり、軍法会議にかけられ未来は銃殺刑だ。

 

 そこまでの義理は今の連合にはない者達が多い統夜達は、そのままトンズラすることを決める。

 

 しかし、補給がなければ生きてゆけない。

 

 

 そこで彼等は、オーブを頼ってみることにする。

 

 こうしてアークエンジェルは逃亡艦として連合に追われる立場となってしまった……

 

 

 

 

 第15話終わり

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